公開日: 2024/03/27
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《速報解説》 ASBJ、「中間財務諸表に関する会計基準」等の改正を公表~四半期開示義務の廃止に対応。同日、JICPAからは資本連結実務指針の改正案も~

筆者: 阿部 光成

《速報解説》

ASBJ、「中間財務諸表に関する会計基準」等の改正を公表

~四半期開示義務の廃止に対応。同日、JICPAからは資本連結実務指針の改正案も~

 

公認会計士 阿部 光成

 

Ⅰ はじめに

2024年3月22日、企業会計基準委員会は、次のものを公表した。

 「中間財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第33号。以下「中間会計基準」という)

 「中間財務諸表に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第32号。以下「中間適用指針」という)

これにより、2023年12月15日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。公開草案に対する主なコメントの概要とその対応も公表されている。例えば、中間会計基準の適用初年度における比較情報の取扱いを明確化すべきとのコメントを受けて(論点の項目5)、後述するように、中間会計基準等を遡及適用すると規定したものがある。

2023年11月29日に公布された「金融商品取引法等の一部を改正する法律」(令和5年法律第79号)により、四半期開示の見直しとして、上場企業について金融商品取引法上の四半期開示義務(第1・第3四半期)が廃止され、開示義務が残る第2四半期報告書を半期報告書として提出することになった。

これにより、改正後の金融商品取引法上、半期報告書において中間連結財務諸表又は中間個別財務諸表(以下合わせて「中間財務諸表」という)が開示されることになる。

今回の中間会計基準等は、当該改正に対応するものである。

なお、同日、中間会計基準等の公表を受けて、日本公認会計士協会は次のものを公表し、意見募集を行っている(意見募集期間は2024年4月22日まで)。

  • 会計制度委員会報告第7号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」の改正について(公開草案)

文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。

 

Ⅱ 適用会社

中間会計基準等は、次の会社が半期報告書制度に基づき作成する中間財務諸表に適用する。

 金融商品取引法24条の5第1項の表の第1号に掲げる上場会社等

 金融商品取引法24条の5第1項ただし書きにより、同項の表の第1号に掲げる上場会社等と同様の半期報告書を提出する第3号に掲げる非上場会社

金融商品取引法上、四半期報告書制度は廃止されるが、上場会社においては引き続き取引所規則に基づき第1・第3四半期決算短信の報告が行われるため、今後、期中財務諸表に関する会計基準等の開発が行われるまでの間、四半期会計基準等は適用を終了しないことを予定しているとのことである。

 

Ⅲ 開発にあたっての基本的な方針と主な内容

中間会計基準等は、期首から6ヶ月間を1つの会計期間(中間会計期間)とする中間財務諸表に係る会計処理について規定する。

中間財務諸表の記載内容は、従前の第2四半期報告書と同程度の記載内容となるように、基本的に、「四半期財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第12号)及び「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第14号)(両者を合わせて、以下「四半期会計基準等」という)の会計処理及び開示を引き継いでいる。

このため、中間会計基準と企業会計基準第12号との比較を見ると、「四半期財務諸表」が「中間財務諸表」に、また、「四半期会計期間」が「中間会計期間」に置き換わっていることがわかる。

期首から6ヶ月間を1つの会計期間(中間会計期間)とした場合と、四半期会計基準等に従い第1四半期決算を前提に第2四半期の会計処理を行った場合とで差異が生じる可能性がある項目については、従来の四半期での実務が継続して適用可能となる取扱いを規定する。

次の項目である(からは経過措置による)。

 原価差異の繰延処理(中間会計基準17項)

 子会社を取得又は売却した場合等のみなし取得日又はみなし売却日(中間会計基準20項)

 有価証券の減損処理に係る中間切放し法(中間適用指針4項)

 棚卸資産の簿価切下げに係る切放し法(中間適用指針7項)

 一般債権の貸倒見積高の算定における簡便的な会計処理(中間適用指針3項)

 未実現損益の消去における簡便的な会計処理(中間適用指針28項)

 

Ⅳ 適用時期等

中間会計基準等は、「金融商品取引法等の一部を改正する法律」(令和5年法律第79号)の附則3条に基づき、同法により改正された金融商品取引法24条の5第1項の規定による半期報告書の提出が求められる最初の中間会計期間から適用する(中間会計基準37項)。

適用初年度においては、開示対象期間の中間財務諸表等(中間会計基準8項、9項)について本会計基準を遡及適用する(中間会計基準38項、BC22項~BC24項)。

中間会計基準等が適用される中間財務諸表においては、これまでに公表された会計基準等で使用されている「四半期会計期間」、「四半期決算」、「四半期財務諸表」、「四半期連結財務諸表」又は「四半期個別財務諸表」という用語(会計基準等の名称を除く)は、「中間会計期間」、「中間決算」、「中間財務諸表」、「中間連結財務諸表」又は「中間個別財務諸表」と読み替えるものとする(中間会計基準39項、BC25項)。

これまでに公表された会計基準等には、日本公認会計士協会が公表した企業会計に関する実務指針(Q&Aを含む)のうち会計処理の原則及び手続を定めたものが含まれる(中間会計基準BC25項)。

 

Ⅴ 資本連結実務指針の改正案

前述のの「② 子会社を取得又は売却した場合等のみなし取得日又はみなし売却日(中間会計基準20項)」を受けて、資本連結実務指針7項において、「この場合の決算日には四半期決算日中間決算日又はその他の適切に決算が行われた日が含まれる。」とする改正を提案している。

「その他の適切に決算が行われた」とは、子会社において中間会計基準に準じた決算が行われたことを想定している(中間会計基準BC18項、資本連結実務指針(案)54-3項)。

(了)

《速報解説》

ASBJ、「中間財務諸表に関する会計基準」等の改正を公表

~四半期開示義務の廃止に対応。同日、JICPAからは資本連結実務指針の改正案も~

 

公認会計士 阿部 光成

 

Ⅰ はじめに

2024年3月22日、企業会計基準委員会は、次のものを公表した。

 「中間財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第33号。以下「中間会計基準」という)

 「中間財務諸表に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第32号。以下「中間適用指針」という)

これにより、2023年12月15日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。公開草案に対する主なコメントの概要とその対応も公表されている。例えば、中間会計基準の適用初年度における比較情報の取扱いを明確化すべきとのコメントを受けて(論点の項目5)、後述するように、中間会計基準等を遡及適用すると規定したものがある。

2023年11月29日に公布された「金融商品取引法等の一部を改正する法律」(令和5年法律第79号)により、四半期開示の見直しとして、上場企業について金融商品取引法上の四半期開示義務(第1・第3四半期)が廃止され、開示義務が残る第2四半期報告書を半期報告書として提出することになった。

これにより、改正後の金融商品取引法上、半期報告書において中間連結財務諸表又は中間個別財務諸表(以下合わせて「中間財務諸表」という)が開示されることになる。

今回の中間会計基準等は、当該改正に対応するものである。

なお、同日、中間会計基準等の公表を受けて、日本公認会計士協会は次のものを公表し、意見募集を行っている(意見募集期間は2024年4月22日まで)。

  • 会計制度委員会報告第7号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」の改正について(公開草案)

文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。

 

Ⅱ 適用会社

中間会計基準等は、次の会社が半期報告書制度に基づき作成する中間財務諸表に適用する。

 金融商品取引法24条の5第1項の表の第1号に掲げる上場会社等

 金融商品取引法24条の5第1項ただし書きにより、同項の表の第1号に掲げる上場会社等と同様の半期報告書を提出する第3号に掲げる非上場会社

金融商品取引法上、四半期報告書制度は廃止されるが、上場会社においては引き続き取引所規則に基づき第1・第3四半期決算短信の報告が行われるため、今後、期中財務諸表に関する会計基準等の開発が行われるまでの間、四半期会計基準等は適用を終了しないことを予定しているとのことである。

 

Ⅲ 開発にあたっての基本的な方針と主な内容

中間会計基準等は、期首から6ヶ月間を1つの会計期間(中間会計期間)とする中間財務諸表に係る会計処理について規定する。

中間財務諸表の記載内容は、従前の第2四半期報告書と同程度の記載内容となるように、基本的に、「四半期財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第12号)及び「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第14号)(両者を合わせて、以下「四半期会計基準等」という)の会計処理及び開示を引き継いでいる。

このため、中間会計基準と企業会計基準第12号との比較を見ると、「四半期財務諸表」が「中間財務諸表」に、また、「四半期会計期間」が「中間会計期間」に置き換わっていることがわかる。

期首から6ヶ月間を1つの会計期間(中間会計期間)とした場合と、四半期会計基準等に従い第1四半期決算を前提に第2四半期の会計処理を行った場合とで差異が生じる可能性がある項目については、従来の四半期での実務が継続して適用可能となる取扱いを規定する。

次の項目である(からは経過措置による)。

 原価差異の繰延処理(中間会計基準17項)

 子会社を取得又は売却した場合等のみなし取得日又はみなし売却日(中間会計基準20項)

 有価証券の減損処理に係る中間切放し法(中間適用指針4項)

 棚卸資産の簿価切下げに係る切放し法(中間適用指針7項)

 一般債権の貸倒見積高の算定における簡便的な会計処理(中間適用指針3項)

 未実現損益の消去における簡便的な会計処理(中間適用指針28項)

 

Ⅳ 適用時期等

中間会計基準等は、「金融商品取引法等の一部を改正する法律」(令和5年法律第79号)の附則3条に基づき、同法により改正された金融商品取引法24条の5第1項の規定による半期報告書の提出が求められる最初の中間会計期間から適用する(中間会計基準37項)。

適用初年度においては、開示対象期間の中間財務諸表等(中間会計基準8項、9項)について本会計基準を遡及適用する(中間会計基準38項、BC22項~BC24項)。

中間会計基準等が適用される中間財務諸表においては、これまでに公表された会計基準等で使用されている「四半期会計期間」、「四半期決算」、「四半期財務諸表」、「四半期連結財務諸表」又は「四半期個別財務諸表」という用語(会計基準等の名称を除く)は、「中間会計期間」、「中間決算」、「中間財務諸表」、「中間連結財務諸表」又は「中間個別財務諸表」と読み替えるものとする(中間会計基準39項、BC25項)。

これまでに公表された会計基準等には、日本公認会計士協会が公表した企業会計に関する実務指針(Q&Aを含む)のうち会計処理の原則及び手続を定めたものが含まれる(中間会計基準BC25項)。

 

Ⅴ 資本連結実務指針の改正案

前述のの「② 子会社を取得又は売却した場合等のみなし取得日又はみなし売却日(中間会計基準20項)」を受けて、資本連結実務指針7項において、「この場合の決算日には四半期決算日中間決算日又はその他の適切に決算が行われた日が含まれる。」とする改正を提案している。

「その他の適切に決算が行われた」とは、子会社において中間会計基準に準じた決算が行われたことを想定している(中間会計基準BC18項、資本連結実務指針(案)54-3項)。

(了)

筆者紹介

阿部 光成

(あべ・みつまさ)

公認会計士
中央大学商学部卒業。阿部公認会計士事務所。

現在、豊富な知識・情報力を活かし、コンサルティング業のほか各種実務セミナー講師を務める。
企業会計基準委員会会社法対応専門委員会専門委員、日本公認会計士協会連結範囲専門委員会専門委員長、比較情報検討専門委員会専門委員長を歴任。

主な著書に、『新会計基準の実務』(編著、中央経済社)、『企業会計における時価決定の実務』(共著、清文社)、『新しい事業報告・計算書類―経団連ひな型を参考に―〔全訂第2版〕』(編著、商事法務)がある。

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