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計算書類作成に関する“うっかりミス”の事例と防止策 【第43回】「金額表示単位のミスの見つけ方」
計算書類作成に関する “うっかりミス”の事例と防止策 【第43回】 「金額表示単位のミスの見つけ方」 公認会計士 石王丸 周夫 1 「千円」を「百万円」と表記したミス 計算書類にはうっかりミスがつきものです。 実際、こんなミスが起きています。 【事例43-1】 金額表示単位の表記ミス。 (出所) 株式会社SIGグループ「第31期定時株主総会招集ご通知」 【事例43-1】は、連結注記表の「剰余金の配当に関する事項」の記載でのミスです。金額の表示単位を「千円」とすべきところを「百万円」としてしまったというミスになります。 この事例の会社は、2022年6月14日に本事例を含む定時株主総会招集ご通知を公表し、同日に当該誤記載の訂正を公表しています。 会社法決算書の表示単位については、この連載の【第22回】で解説したとおり、一円単位、千円単位又は百万円単位のいずれかを会社が選択することになります。「剰余金の配当に関する事項」は連結株主資本等変動計算書に関する注記であり、【事例43-1】の会社は、連結株主資本等変動計算書を千円単位で作成していることから、この注記も千円単位で作成することになります。【事例43-1】では、数字は正しかったのですが、表示単位の表記を間違えてしまったというわけです。 2 どうしてここで間違えたのか 【事例43-1】は見るからに単純なミスですが、連結計算書類等の作成実務を担当している人からすると、なぜそこで間違ってしまったのか不思議かもしれません。間違った箇所は定型フォームの一部であって、一度正しく作成してしまえば翌年度からはそこに手を加えることはなく、間違うはずがないからです。実際、よくあるミスは配当額の数値に関するミスです。参考までに1例紹介しておきます。 【事例43-2】 配当金の総額の記載ミス。 (出所) 株式会社ヨータイ「「第124回定時株主総会招集ご通知」の一部修正について(2022年6月1日)」 【事例43-2】では、修正前と修正後の期末配当の注記が上下に並べてあり、下線が引かれてあるところが修正箇所です。配当金の総額の数字が間違っていたことがわかります。この欄は毎年書き換える箇所なので、間違うこともあるわけです。 では、さきほどの【事例43-1】のようなミスはなぜ起きたのかというと、【事例43-1】の会社の株主総会招集通知を見てみると、あることに気づきます。この会社は連結計算書類をこの年度から作成し始めたのです。前年度までは子会社がなく、連結決算が不要であり、単体の計算書類のみを作成していました。 連結計算書類作成初年度においては、連結計算書類のフォームを一から作成することになります。その際、ひな型や他社の連結計算書類を見ながら作成するものと思われ、それらが百万円単位で作成されていれば、うっかりそのまま写してしまった可能性が考えられます。もちろん、筆者の推測にすぎませんが、こうした書類の作成初年度は間違いが発生しやすいことは確かです。 3 このミスの見つけ方 【事例43-1】のようなミスを公表前に発見することは、それほど難しくはありません。データの検索機能を使えば見つかるからです。千円単位で連結計算書類を作成している会社であれば、原稿データの段階で「百万円」で検索してヒット箇所を確認してあげればよいでしょう。 これに加えて、このミスが起きる特有のタイミングがあることも頭に入れておくと、ミス発見につながります。【事例43-1】のように連結計算書類作成初年度に起こることは理解できたと思いますが、これ以外のタイミングでも起きています。それは、無配が続いた後に復配した年度とその翌年度です。 無配になると、「剰余金の配当に関する事項」の記載が削除されます(もしくは、該当ない旨を記載します)。いったん削除した定型フォームを復配時に復活させるため、定型フォーム部分で間違う可能性が出てくるのです。復配時及びその翌年度に、この注記の記載を落としてしまうケースを【第9回】及び【第19回】で解説していますが、落とさないまでも【事例43-1】のように誤記載をしてしまう場合があることを覚えておきましょう。 〈今回のまとめ〉 金額表示単位のミスは検索機能を使うと比較的簡単に見つけることができます。連結計算書類作成初年度等、ミスが起こりやすいタイミングにも留意しましょう。 (了)
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〔相続実務への影響がよくわかる〕改正民法・不動産登記法Q&A 【第16回】「新設された具体的相続分による遺産分割の時的限界の概要」
〔相続実務への影響がよくわかる〕 改正民法・不動産登記法Q&A 【第16回】 「新設された具体的相続分による遺産分割の時的限界の概要」 司法書士 丸山 洋一郎 弁護士 松井 知行 【Q】 相続開始から長期間が経過した場合の遺産分割について、どのような見直しが行われたのか教えてください。 【A】 具体的相続分による遺産分割の時的限界が設けられ、相続開始(被相続人の死亡)時から10年を経過した後にする遺産分割は、一定の場合を除き、具体的相続分ではなく法定相続分(又は指定相続分)により分割することとされた。 -《解説》- 1 改正の経緯 相続が開始して相続人が複数存在する場合、遺産(相続財産)に属する土地や建物、動産、預金などの財産は、原則として相続人により共有されることになる(民法第898条)。このような遺産共有関係にある場合、各相続人の持分権が互いに制約し合う関係に立つことから、遺産の管理に支障を来すおそれがある。とりわけ、遺産分割がされないまま相続が繰り返されて多数の相続人による遺産共有関係となると、遺産の管理・処分が困難な事態が生じる。また、このような状態の下で相続人の一部が所在不明になり、所有者不明土地が生ずることも少なくない。 よって、遺産分割による遺産共有関係の解消は、所有者不明土地の発生予防の観点からも重要であるといえる。 他方で、具体的相続分の割合による遺産分割を求めることについては、これまで時的制限がなく、長期間放置をしていても具体的相続分の割合による遺産分割を希望する相続人に不利益が生じないことから、相続人が早期に遺産分割の請求をすることについてインセンティブが働きにくい状況であった。また、相続開始後遺産分割がないまま長期間が経過すると、生前贈与や寄与分に関する書証等が散逸し関係者の記憶も薄れることから、長期間が経過すると、具体的相続分の算定が困難になり、遺産分割の支障となるおそれがある。 そこで、今回の改正により、遺産分割をできる限り早期に実施し、遺産共有関係を円滑に解消するために、具体的相続分による遺産分割に時的限界が設けられることとなった。 2 改正の内容 (1) 原則 相続開始の時から10年を経過した後にする遺産の分割については、下記(2)の場合を除き、民法第903条から904条の2までの規定は適用しないこととされ、具体的相続分ではなく法定相続分(相続分の指定があるときは、指定相続分)により遺産分割を行うこととされた(新民法904条の3)。 (2) 例外 ① 相続開始から10年を経過する前に、相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき ② 相続開始の時から始まる10年の期間の満了前6ヶ月以内の間に、遺産の分割を請求することができないやむを得ない事由が相続人にあった場合において、その事由が消滅した時から6ヶ月を経過する前に、当該相続人が家庭裁判所に遺産の分割の請求をしたとき 3 相続開始から10年経過後の法律関係 (1) 共有物分割ではなく遺産分割 相続開始から10年の経過により遺産分割の基準は法定相続分(又は指定相続分)によることとなるが、分割方法は基本的に遺産分割であって共有物分割ではない。 (2) 具体的相続分による遺産分割をする旨の合意 相続開始から10年が経過し、法定相続分等による分割を求めることができるにもかかわらず、相続人全員が具体的相続分による遺産分割をすることに合意したケースでは、10年経過後であっても、具体的相続分による遺産分割が可能である。 なお、相続開始から10年が経過する前に、相続開始から10年を経過した後も具体的相続分による遺産分割をする旨の合意をした場合については、このような合意を有効なものとすると具体的相続分による遺産分割に時的限界を設けた趣旨が没却されてしまうことや、消滅時効においても時効完成前に予め時効完成の利益を放棄することはできないとされていること(民法第146条)から、当該合意には効力が認められないと解される。 4 経過措置 改正法の施行日前に被相続人が死亡した場合の遺産分割についても、改正後のルールが適用されることになる(令和3年法律第24号附則第3条)。 ただし、この場合には、経過措置により、少なくとも施行時から5年の猶予期間が設けられている。 具体的には、以下の図のとおり、(A)改正法施行時に相続開始からすでに10年が経過しているケース及び(B)相続開始から10年を経過する時点が施行時から5年を経過する時点よりも前に来るケースでは、改正法施行時から5年を経過した時点が基準になり、(C)相続開始から10年を経過する時点が施行時から5年を経過する時点よりも後に来るケースでは、相続開始から10年を経過した時点が基準となる。 (※) 法務省民事局作成『令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント』48頁より抜粋 (了)
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2023年株主総会における実務対応のポイント
2023年株主総会における 実務対応のポイント 三井住友信託銀行 ガバナンスコンサルティング部 部長(法務管掌) 斎藤 誠 いよいよ本年3月より、株主総会資料の電子提供制度に対応した株主総会が開催され、令和元年改正会社法での対応事項の仕上げの年となる。また、本年5月8日には新型コロナが季節性インフルエンザと同様の「5類」に見直されることが予定されており、これまでの株主総会運営にも影響が想定される。 ここでは、制度改正対応だけではなく運営面での対応についても留意が必要となった、本年株主総会における実務対応のポイントについて解説する。 1 株主総会資料の電子提供制度対応 (1) 株主あて送付物の対応 株主総会資料の電子提供制度における株主あて招集通知(アクセス通知)の様式については、全国株懇連合会よりモデル(※1)が公表されているので、それらも参考にして作成することとなる。 (※1) 全国株懇連合会「電子提供制度における招集通知モデル(電子提供措置事項の一部を含んだ一体型アクセス通知)の制定について」参照。また、経団連からも株主総会資料の電子提供制度に対応した招集通知(アクセス通知)のひな型が公表されているので、そちらも参照されたい(2022年11月1日「会社法施行規則及び会社計算規則による株式会社の各種書類のひな型(改訂版)」)。 全株主あてに招集通知(アクセス通知)と議決権行使書を送付し(※2)、書面交付請求株主にはこれに、電子提供措置事項記載書面を同封することになる。 (※2) 議決権行使書も電子提供措置事項となったが、当面は株主あてに招集通知(アクセス通知)とともに送付する会社がほとんどであると考えられる。 2022年9月から電子提供制度が施行されて書面交付請求の受付はすでに始められたが、実際に書面交付請求を行った株主が極めて少ないので、実務の感覚からはまだ制度の周知自体が進んでいないと考えられる。招集通知(アクセス通知)の送付を受けて、初めて電子提供制度対応であることに気づいて、従来の紙ベースでの招集通知情報の送付を要求する株主が多数出てくることが事前に懸念される。 基準日経過後の書面交付請求株主に、もれなく電子提供措置事項記載書面を発送することは実務的にも困難なため、いわゆるフルセットデリバリーとして、任意ではあるが全株主に招集通知情報を送付する会社も過半程度は存在するようである。その次に招集通知(アクセス通知)に株主総会参考資料を追加する会社と、招集通知(アクセス通知)のみを送付する会社の概ね3パターンとなっている。 まず初年度はフルセット対応が過半を占めるが、今後は制度趣旨を踏まえてウェブでの情報開示を充実させ、発送物を徐々に削減していく方向で進められていくものと考えられる。 (2) 議事運営上の対応 電子提供制度は株主総会運営にも影響がある。これまで報告事項の報告や議案の説明に際し、議長のシナリオ上で言及していた「お手元の招集ご通知」の配布が必要でなくなってしまうので(制度上はウェブサイトに掲載された電子提供措置事項を参照することになる)、同様に書面の配布を前提としないで、報告事項や議案を説明し、議事を進めていくかが課題となる。 ただ、フルセットデリバリーとして招集通知を全株主に送付するのであれば、当該書類をこれまでどおり来場株主に配布することで、従来ベースでの議事運営が可能である。もちろんフルセットデリバリーでも総会場で配布しない扱いも考えられるので、その場合には、「会場で投影する動画を充実させる」「ウェブに掲載している情報を参照する」等が考えられる。ウェブに掲載している情報を参照する場合には、株主総会シナリオを以下のとおりとすることが考えられる。 〈当日資料を配布しない場合のシナリオ例(参考)〉 いずれにしても、本年は適用初年度となるので、制度内容をよく認識していない株主に対して情報提供のレベルを落とさずに総会運営を行いつつも、真に書面による株主総会情報を必要とする株主には書面交付請求を促すことで、制度趣旨に則った総会運営を模索していくこととなる。 2 バーチャル株主総会対応 (1) 本年の動向 バーチャル株主総会については、発言や議決権行使のできない、いわゆるライブ配信の参加型が引き続き大勢を占めている状況である。 当社調べでも2022年6月総会での参加型の実施は、377社(6月総会の上場企業のうち16.4%)となっており、質問や議決権行使のできる出席型の17社(同0.7%)を大きく引き離している。本年においてもこの傾向に大きな変動はないと思われる。なお、参加型のバーチャル株主総会を実施した会社のうち、株主から事前の質問受付を行った会社は166社で、参加型バーチャル株主総会を実施した会社の44.0%に達した。前年の2021年6月総会での事前の質問受付からは79社増(14.1ポイント増)と、大幅に増加したことが注目される。 株主からの事前質問は、株主総会に対する株主の意見を幅広く取り込むことが期待でき、株主の関心事項を事前に把握したうえで株主総会に臨むことができるため、内容の濃い、より効率的な対話に繋がるものと期待できる。仕組的には株主からの意見表明の機会がない参加型のデメリットを補う取組みとして注目される。 (2) バーチャルオンリー型株主総会 「産業競争力強化法等の一部を改正する等の法律(以下「改正産競法」という)(令和3年法律第70号)」が2021年6月16日より施行され、リアル会場の設営を要しないバーチャルオンリー型株主総会の開催が可能となった。なお、改正産競法附則3条1項により、同法の施行から2年を経過するまでの間、改正産競法66条1項に基づく経済産業大臣・法務大臣の確認を経れば、みなし定款としてバーチャルオンリー型株主総会の開催が可能となったが、その期限も本年6月16日までとなり、その後はリアルの株主総会を開催し、定款変更を実施したうえでバーチャルオンリー型株主総会を開催することとなる。 2022年6月にバーチャルオンリー型株主総会を開催した会社は8社であり、まだまだ少数である。しかしながら、バーチャルオンリー型株主総会の開催を可能とする定款変更を実施した会社は、2022年6月総会で147社(前年比6.0ポイント増)となっており、着実に増加している。 ただ、ISSは、バーチャルオンリー型株主総会の開催を目的に「場所の定めのない株主総会」の開催を可能とする定款変更については、「バーチャルオンリー型株主総会の開催を感染症拡大や天災地変の発生に限定する場合」を除き、原則として反対を推奨するとしている(※3)。 (※3) ISS「2023年版 日本向け議決権行使助言基準」 この方針を意識して、定款変更に際してバーチャルオンリー型株主総会の開催を、パンデミックや自然災害の発生等でリアルでの株主総会の開催が困難になった場合に限定しているケースも多い。バーチャルオンリー型株主総会は、リアル会場の設営が不要で、効率的に多数の質問を受け付けることが可能となるなどのメリットがあるものの、当面は緊急避難的な場合の開催と位置づけられることになりそうである。 3 株主総会運営について 新型コロナが本年5月8日に、感染症法上の位置づけが季節性インフルと同様の「5類」に見直されることとなった。これにより外出自粛などの行動制限が課せられなくなることとなり、それに先立ち本年3月13日以降はマスク着用について個人の判断に委ねられることとなった(※4)。 (※4) 厚生労働省「マスクの着用の考え方について」 これまで3年もの間、密を避けるための座席間隔の確保や入場制限、来場者へのマスク着用のお願いなどの感染防止対策を徹底して行ってきた株主総会運営をどのように見直していくかが本年の課題となる。 これまでコロナ禍での株主総会運営は、経済産業省及び法務省から公表されている「株主総会運営に係るQ&A」が、実務上のガイドラインとして活用されてきた。同Q&Aは、パンデミック下での感染防止対策を最優先とする状況のものであることから、5類となり特段の行動制限等が課せられない状況では、その適用の可否については変化が生じることになると考えられる。とはいえ、5類への見直し以降も感染防止対策はなされるべきであろうから、どの程度まで運営や来場株主への依頼事項を緩和させるのかが悩ましい。 まだ5月・6月株主総会での対応を即断するわけにはいかないが、これまで招集通知に記載していた来場自粛の依頼文言等については特段記載しないことが考えられる。マスク着用についても社会一般の状況を見つつ判断することになろう。ただ、株主総会は比較的年配者の来場が多いこともあるので、緩和については通常のイベント等よりは慎重スタンスで対応することが望ましいであろう。 (了)
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プラス思考の経済効果 【第13回】「2023年WBC優勝の経済効果」
プラス思考の経済効果 【第13回】 「2023年WBC優勝の経済効果」 関西大学名誉教授・大阪府立大学名誉教授 宮本 勝浩 1 はじめに 2023年3月9日から日本では第5回のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が開催しました。今回は大谷翔平選手やダルビッシュ有選手などMLBの4選手、そして三冠王の村上宗隆選手、完全試合の佐々木朗希選手、2年連続投手5冠の山本由伸選手などが出場する予定で、「史上最高の侍ジャパン」と言われていましたので、優勝が期待されます。 本記事では、2023年WBCで「侍ジャパンが優勝した時の経済効果」を分析します。 2023年WBCで「侍ジャパン」が優勝した時の日本国内における経済効果は、約596億4,847万円と推定されました。2017年の第4回WBCにおいて優勝すると想定した時の経済効果は約343億4,588万円(残念ながら優勝しませんでしたが)でしたので、それと比べると約253億259万円も増加すると想定されます。 ただし後述するように、今後のWBCの発展には、 が必要だと思います。 2 直接効果の項目 本記事では、次の項目をWBCの直接効果とします。日本国内での収入は、「日本国内で全額消費、使用できるもの」と、「日本国内で一部は消費、使用できますが、大部分はアメリカのWBCの開催本部であるワールド・ベースボール・クラシック・インク(WBCI)に納めなければならないもの」に分けられます。 【A】 日本国内で全額消費、使用できる直接効果 【B】 日本国内の収入であるが、一部しか日本国内で消費、使用できない直接効果 3 日本国内で全額消費、使用できる直接効果の詳細【A】 日本国内で全額消費、使用できる直接効果の詳細な分析は省略しますが、【A】の計算結果は下表のように合計約172億922万円となります。 〈【A】の直接効果額〉 4 日本国内の収入であるが、一部しか日本国内で消費、使用できない直接効果の詳細【B】 日本国内でのWBCに関する収入、売上ではありますが、そのかなりの割合をアメリカのWBCIに納めなければならない収入、売上の直接効果は、上記2で述べた【B】の3項目です。 試合のチケット代、グッズ代、放映権収入、スポンサー料などについては日本での売上ですが、それらの金額のかなりの割合はアメリカのWBCIに納めなければなりません。しかし、その詳細な金額は全く公表されていません。2009年の第2回WBCでは、スポンサー収入全体のうち約70%は日本の負担であったと言われています。しかし、WBCの収益の66%がMLBと大リーグ選手会に配分されましたが、日本にはたった13%しか配分されず、「運営の負担と収益の分配」は非常に不公平でした。 本記事では、日本での試合ですが、WBCIの管轄のもとで開催される強化試合、1次ラウンド、2次ラウンドの試合の売上は、日本の観客が支払った金額であり、日本国内の経済効果に貢献すると考えています。そして、放送権料、スポンサー料の大部分は、日本を通り越してアメリカのWBCIに渡ると仮定します。 以上の考察から、【B】の項目で日本国内の経済効果に貢献する金額は、次に述べるように約104億581万円となります。 〈【B】の直接効果額〉 5 日本における直接効果の項目の合計額 3及び4における計算から、日本における直接効果の項目の合計額は約276億1,503万円となります。 6 経済効果 これまで計算してきた2023年の第5回WBCの直接効果の合計額約276億1,503万円を基にして、総務省内閣府が作成した最新の「全国の産業連関表」(2019年に発表した2015年版の「全国の産業連関表」の修正版)を用いて経済効果を分析します。 〈経済効果〉 分析の結果、2023年の第5回WBCの日本国内における経済効果は約596億4,847万円となりました。 7 まとめ 2023WBCで「侍ジャパン」が優勝した時の日本国内における経済効果は、約596億4,847万円と推定されました。2017年の第4回WBCにおいて優勝すると想定した時の経済効果は約343億4,588万円でしたので、それと比べると約253億259万円も増加すると想定されます。 また、2022年にヤクルトスワローズが優勝し、村上宗隆選手が三冠王を取った時の経済効果(約451億円)と比較しても、短期間でそれを大幅に上回る経済効果をもたらす侍ジャパンのWBC優勝は、日本人に素晴らしい感動を与えてくれるでしょう。これだけ経済効果が増加するのには以下のような理由が考えられます。 WBCの今後の課題としては、 だと思います。 新型コロナ、ロシアのウクライナ侵攻、インフレの進行など暗い話題が多い時に、日本を元気にしてくれる侍ジャパンの優勝を多くの日本人は期待していることでしょう。 (※) 本記事は2023年2月21日に公表したものに基づいています。 (了)
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《速報解説》 「連結財務諸表規則」等の改正が確定~法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準等の改正を受け、一部文言を変更~
《速報解説》 「連結財務諸表規則」等の改正が確定 ~法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準等の改正を受け、一部文言を変更~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 令和5年(2023)年3月27日、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第22号)が公布された。 これにより、令和4(2022)年12月27日から意見募集されていた内閣府令(案)等が確定することになる。内閣府令(案)等に対するパブリックコメントの概要及びそれに対する金融庁の考え方が公表されている。 これは、「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(企業会計基準第27号)等の改正を受けたものである。 なお、国際会計基準審議会が2022年12月31日までに公表した国際会計基準(国際財務報告基準第16号「リース」の修正、国際会計基準第1号「財務諸表の表示」の修正)を、連結財務諸表規則第93条に規定する指定国際会計基準とする改正も行う。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 2022年10月28日公表の「包括利益の表示に関する会計基準」(企業会計基準第25号)及び「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(企業会計基準第27号)を受けて、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」を次のように改正する(アンダーラインが改正点)。 Ⅲ 施行期日等 公布の日(令和5年3月27日)から施行する。 改正後の「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」第69条の5第4項及び第69条の6第1項の規定は、令和6(2024)年4月1日以後に開始する連結会計年度に係る連結財務諸表について適用し、同日前に開始する連結会計年度に係る連結財務諸表については、なお従前の例による。 ただし、令和5(2023)年4月1日以後に開始する連結会計年度に係る連結財務諸表については、これらの規定を適用することができる。 比較情報、四半期連結財務諸表などに関する経過措置に注意する。 (了)
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《速報解説》 「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」が公布される~監査報告書の報酬関連の記載事項に係る改正~
《速報解説》 「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」が公布される ~監査報告書の報酬関連の記載事項に係る改正~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 令和5(2023)年3月27日、「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第21号)が公布された。「「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令」の取扱いに関する留意事項について(監査証明府令ガイドライン)」も改正されている。 これにより、令和4(2022)年12月23日から意見募集されていた内閣府令(案)等が確定することになる。内閣府令(案)等に対するコメントはなかったとのことである。 これは、監査報告書の記載事項に公認会計士又は監査法人が被監査会社等から受領する報酬に関連する事項を追加するものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 監査証明を受けようとする会社その他の者を「被監査会社等」と規定する。 「「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令」の取扱いに関する留意事項について(監査証明府令ガイドライン)」も改正する。 1 監査報告書の記載事項の追加 監査報告書の記載事項として、次の規定を設ける(「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令」4条1項1号リとして追加)。 2 記載不要となる報酬関連事項 報酬関連事項は、次の有価証券届出書・有価証券報告書に係る監査報告書には記載不要となる。 3 省略できる報酬関連事項 次の場合には、参照文言を記載することなどの要件を満たすことにより、報酬関連事項の記載を省略できる。 Ⅲ 施行期日等 令和5(2023)年4月1日から施行する。 この府令による改正後の「財務諸表等の監査証明に関する内閣府令」4条の規定は、この府令の施行の日以後に開始する事業年度又は連結会計年度に係る財務諸表等の監査証明について適用し、同日前に開始した事業年度又は連結会計年度に係る財務諸表等の監査証明については、なお従前の例による。 ただし、当該財務諸表等の監査証明のうち同日以後に終了する事業年度又は連結会計年度に係るものについて適用することを妨げない。 (了)
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《速報解説》 令和5年3月期以降の有報の作成・提出に際しての留意事項及び有報レビューを金融庁が公表~令和5年度の重点テーマ審査は「サステナビリティに関する企業の取組みの開示」~
《速報解説》 令和5年3月期以降の有報の作成・提出に際しての留意事項及び有報レビューを金融庁が公表 ~令和5年度の重点テーマ審査は「サステナビリティに関する企業の取組みの開示」~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 令和5(2023)年3月24日、金融庁は次のものを公表した。 令和5(2023)年3月期以降の有価証券報告書の作成に当たっては、これらに記載されている事項に特に注意し、適切に作成する必要があると考えられる。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項について 令和5(2023)年3月期以降の事業年度に係る有価証券報告書の作成・提出に際しての留意すべき事項として、以下のことを述べている。 1 新たに適用となる開示制度に係る留意すべき事項 2023年3月期以降に適用される開示制度に係る公表・改正のうち、主なものは次のとおりである。 2 有価証券報告書レビューの審査結果及び審査結果を踏まえた留意すべき事項 令和4(2022)年度の有価証券報告書レビューに関して、現在(2023年3月24日時点)までの実施状況を踏まえ、複数の提出会社に共通して識別された事項に関し、今後の有価証券報告書の作成にあたって留意すべき事項について述べている。 当該事項を記載している別紙1は、表紙を含めて33ページある。 記載内容が不十分であると認められた事項には、会計監査の対象となる財務諸表等に関わるものも含まれているため、留意すべき事項等については、提出会社だけでなく、監査を実施する公認会計士又は監査法人においても、十分に留意いただきたいと記載されているので、改めて有価証券報告書の作成に際しては注意が必要である。 令和4(2022)年度の有価証券報告書レビューでは、以下の事項に着目して審査を実施している。 3 法令改正関係審査関係 4 重点テーマ審査関係(「収益認識に関する会計基準」関係) 「収益認識に関する会計基準」関係について、全般的な留意事項として、次の問題が識別されている。 付録として、「収益認識に関する会計基準の主な好開示例」が記載されている。 個別の留意事項は、次のとおりである。 Ⅲ 重点テーマ以外の主な項目に関する留意事項 Ⅳ 有価証券報告書レビューの実施について(令和5年度) 1 法令改正関係審査 次の法令改正事項について、令和5(2023)年3月期以降の事業年度に係る有価証券報告書の全提出会社を対象として審査を行う。 有価証券報告書提出会社は、別添の「調査票」に回答することが求められているので、有価証券報告書の作成に際して注意が必要である。 2 重点テーマ審査 次のテーマに着目し、令和5(2023)年3月期以降の事業年度に係る有価証券報告書の提出会社の中から審査対象会社を選定するとのことである。 令和5(2023)年1月に施行された企業内容等の開示に関する内閣府令等の一部を改正する内閣府令の適用に伴い、有価証券報告書において開示される「サステナビリティに関する考え方及び取組」に関する記載内容について自主的な改善に資するよう審査するとのことである。 財務局等からの質問状には、次の観点も反映していると述べられており、本3月期の有価証券報告書の作成に際しても、下記の観点を十分に考慮し、開示の要否を判断すべきものと解される。 (了)
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《速報解説》 金融庁、「記述情報の開示の好事例集2022」を更新~新たに求められる「コーポレート・ガバナンスに関する開示」の参考となる開示例も記載~
《速報解説》 金融庁、「記述情報の開示の好事例集2022」を更新 ~新たに求められる「コーポレート・ガバナンスに関する開示」の参考となる開示例も記載~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2023(令和5)年3月24日、金融庁は、「「記述情報の開示の好事例集2022」の更新」を公表した。 これは、新たに「コーポレート・ガバナンスの概要」、「監査の状況」、「役員の報酬等」及び「株式の保有状況」に関する開示の好事例を追加するものである。 2023(令和5)年1月31日に公布された「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第11号)により、新たに求められている「コーポレート・ガバナンスに関する開示」の参考となる開示例も記載されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ コーポレート・ガバナンスの概要(取締役等の活動状況を含む)の開示例 1 主な開示のポイント 例えば、次のことが記載されている。 2 好事例として取り上げた企業の主な取組み 投資家に自社の取組みを理解してもらえるような開示を意識し、取締役会の実効性評価について、評価手法及び評価結果、それらを踏まえた今後の取組みをナラティブな形で丁寧に開示することを心掛けたことなどが記載されている。 3 好事例のポイント 例えば、次のことが記載されている。 Ⅲ 監査の状況の開示例 1 主な開示のポイント 例えば、次のことが記載されている。 2 好事例のポイント 例えば、次のことが記載されている。 Ⅳ 役員の報酬等の開示例 1 主な開示のポイント 例えば、次のことが記載されている。 2 好事例として取り上げた企業の主な取組み 長期インセンティブ型報酬のKPI及び評価ウェイトについて、近年の外部事業環境の変化等を踏まえ、どのようなESG関連指標を採用するかを含め、その設定や変更について投資家に説明していく必要があったことなどが記載されている。 3 好事例のポイント 例えば、次のことが記載されている。 Ⅴ 株式の保有状況の開示例 1 主な開示のポイント 例えば、次のことが記載されている。 2 好事例として取り上げた企業の主な取組み 投資家及び取引先との対話を行い、政策保有株式の持ち合いの解消は、取引先との関係維持、買収防衛等にほとんど影響を与えることはなく、資本効率の改善等を通じて、企業価値の向上に繋がると理解したことなどが記載されている。 3 好事例のポイント 例えば、次のことが記載されている。 Ⅵ 記述情報の開示に関する充実化の動向 1 開示の充実を期待するポイント 例えば、次のことが記載されている。 2 好事例として取り上げた企業の主な取組み 経理担当役員が、外部の研究会等に参加し、有価証券報告書を含め、ESG課題への取組みについて価値創造ストーリーとの繋がりを開示することが投資家から強く求められていることを認識したことなどが記載されている。 3 開示の充実化が進展している企業の事例 例えば、次の事例が紹介されている。 4 開示の充実化が進展していない企業の事例 (了)
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《速報解説》 金融庁が「監査法人のガバナンス・コード」の改訂を公表~監査品質の持続的向上に向け、独立性を有する第三者の知見の活用にも言及~
《速報解説》 金融庁が「監査法人のガバナンス・コード」の改訂を公表 ~監査品質の持続的向上に向け、独立性を有する第三者の知見の活用にも言及~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 令和5(2023)年3月24日、監査法人のガバナンス・コードに関する有識者検討会は、「「監査法人の組織的な運営に関する原則」(監査法人のガバナンス・コード)の改訂について」を公表した。 これにより、令和4(2022)年12月26日から意見募集されていたパブリック・コメント案が確定することになる。パブリック・コメント案に対するコメントの概要及びコメントに対する考え方も公表されている。 これは、令和3年11月に「会計監査の在り方に関する懇談会(令和3事務年度)」で取りまとめた論点整理や、令和4年1月に「金融審議会公認会計士制度部会」で取りまとめた報告書などを受けて検討したものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 上場企業等の財務書類について監査証明業務を行う監査事務所に関する登録制度の導入等を内容とする「公認会計士法及び金融商品取引法の一部を改正する法律」が令和4年5月に成立・公布されている。 また、これに伴う関連政府令が令和5年1月に公布・施行され、上場企業等を監査する監査事務所は、監査法人のガバナンス・コードに沿った業務を実施する体制や充実した情報開示を行うための体制を整備することなどが義務づけられている。 1 監査法人が果たすべき役割 上場企業等の監査を行う監査法人には、その規模にかかわらずより一層高い会計監査の品質を確保するための組織的な体制整備が求められる。 また、法人の構成員による職業的懐疑心が十分発揮されるよう、適切な動機づけを行う人材育成の環境や人事管理・評価等に係る体制の整備に留意する。 グローバルネットワークへの加盟や他の法人等との包括的な業務提携等については、会計監査の品質の確保への効果が期待される反面、監査法人の意思決定に影響を与え得ることなどにより、会計監査の品質の確保やその持続的向上に支障をきたすリスクを生じさせる可能性もある。 指針において次のことが記載されている。 2 組織体制 上場企業等の監査を担う監査法人は、無限責任監査法人や有限責任監査法人といった法人形態その他の形式的又は実質的な違いにかかわらず、会計監査の品質の確保及びその持続的向上を図る観点から実効的な経営機能を有することが必要である。 例えば、監督・評価機関を設け、独立性を有する外部の第三者の知見を活用することが記載されている。 指針において次のことが記載されている。 3 透明性の確保 指針において、監査法人は、品質管理、ガバナンス、IT・デジタル、人材、財務、国際対応の観点から、規模・特性等を踏まえ、以下の項目について説明することを示している。 また、グローバルネットワークに加盟している監査法人や、他の法人等との包括的な業務提携等を通じてグループ経営を行っている監査法人は、以下の項目について説明することを示している。 (了)
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《速報解説》 会計士協会が「監査ツール」の改正案を公表~倫理規則の改正等に対応して多数の様式を変更・新設~
《速報解説》 会計士協会が「監査ツール」の改正案を公表 ~倫理規則の改正等に対応して多数の様式を変更・新設~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2023年3月20日、日本公認会計士協会は、「監査基準報告書300実務ガイダンス第1号「監査ツール(実務ガイダンス)の改正」(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。 これは、2022年6月の「監査事務所における品質管理」(品質管理基準報告書第1号)などの改正や、2022年7月の倫理規則の改正に対応するものである。多くの様式が見直されている。 意見募集期間は2023年4月21日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 重要な虚偽表示リスクの識別と評価の区別、固有リスクと統制リスクの評価を、様式上、より明確にするなど、次の様式の見直し又は新設が行われている。 (了)
