件すべての結果を表示
お知らせ
会計
会計情報の速報解説
監査
税務・会計
速報解説一覧
《速報解説》 JICPA、「監査法人の計算書類及び監査報告書の文例に関する研究文書」を公表~廃止となった研究報告の内容をベースに一部変更・新設~
《速報解説》 JICPA、「監査法人の計算書類及び 監査報告書の文例に関する研究文書」を公表 ~廃止となった研究報告の内容をベースに一部変更・新設~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2024年10月16日、日本公認会計士協会は、「監査法人の計算書類及び監査報告書の文例に関する研究文書」(監査基準報告書700研究文書第1号)を公表した。 これは、監査法人が作成する年次報告書「業務及び財産の状況に関する説明書類」に含まれる計算書類の作成及び開示に当たり、参考となる内容を取りまとめたものである。また、一定の要件を満たした有限責任監査法人は、公認会計士法において当該計算書類の監査が求められていることから、当該監査において使用する監査報告書の文例も示されている。 研究文書の公表に伴い、監査事務所情報開示検討プロジェクトチーム「監査法人の計算書類及び監査報告書の文例に関する研究報告」は廃止された。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 研究文書は、プロジェクトチーム研究報告の内容を基本的に引き継いでいるが、次の変更・新設が行われている。 (了)
お知らせ
その他お知らせ
プロフェッションジャーナル No.590が公開されました!~今週のお薦め記事~
2024年10月17日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.590を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
税務
税務・会計
解説
解説一覧
日本の企業税制 【第132回】「労務費の転嫁促進など取引価格適正化に向けた取組み」
日本の企業税制 【第132回】 「労務費の転嫁促進など取引価格適正化に向けた取組み」 一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴 自民党の石破総裁は、10月1日、第102代の内閣総理大臣に選出され、石破内閣が発足した。10月9日には衆議院が解散、第50回衆議院選挙は10月15日に公示され、10月27日が投票日である。 各政党の選挙公約も公表されているが、多くの政党で、中小・中堅企業における賃上げの促進とそのための取引価格の適正化が掲げられている。 例えば自民党の「総合政策集2024 J-ファイル」では、次のような記述がある。 〇買いたたきの規制 下請代金支払遅延等防止法(以下、「下請法」)上禁止されている買いたたきとは、「下請事業者の給付の内容と同種又は類似の内容の給付に対し通常支払われる対価に比し著しく低い下請代金の額を不当に定めること」とされている(下請法4①五)。 「通常支払われる対価」は通常「市価」と解されているが、下請取引は個別性の高い委託取引が多く、「市価」の把握が困難であることから、従来、運用上の工夫として、市価の把握が困難な場合には「従前の対価」を「市価」として取り扱う運用が行われてきた。 しかし、近年のような労務費、原材料価格、エネルギーコスト等の上昇局面や、生産量が減少するなどの場合においては、下請代金が引き下げられていなくても、問題のある事態が生じている。例えば、コスト上昇局面においても価格が据え置かれる場合や、下請代金が引き上げられたものの、その上げ幅がコストアップに見合ったものではない場合、発注数量が大幅に減少しているにもかかわらず、単価が見直されることなく、量産時の発注数量を前提とした単価が継続している場合などである。 公正取引委員会は、本年5月27日に公表した「下請代金支払遅延等防止法に関する運用基準」では、上記の価格据え置きのケースを念頭に、「主なコスト(労務費、原材料価格、エネルギーコスト等)の著しい上昇を、例えば、最低賃金の上昇率、春季労使交渉の妥結額やその上昇率などの経済の実態が反映されていると考えられる公表資料から把握することができる場合において、据え置かれた下請代金の額」を明示し、労務費等のコスト上昇局面では取引価格の据え置きも買いたたきに該当することが明確化されたところである。 また、7月22日から検討が開始された公正取引委員会と中小企業庁との共催の「企業取引検討会」では、適切な価格転嫁をわが国の新たな商慣習としてサプライチェーン全体で定着させていくための取引環境を整備する観点から、優越的地位の濫用規制の在り方について、上記のような買いたたきの規制の一層の見直しも含め、下請法の改正も念頭に検討が進められている。 〇下請代金等の支払条件 下請法では、「下請代金を支払期日の経過後なお支払わないこと」が禁止されている。「支払期日」は、「給付を受領した日(役務提供委託の場合は、下請事業者がその委託を受けた役務の提供をした日)から起算して、60日の期間内において、かつ、できる限り短い期間内において、定められなければならない」とされている。この規定が制定された昭和37年当時の国会審議では、下請代金の支払いは現金払いが原則である旨の考え方が示されていた。 しかし、昭和40年の下請法の改正では、当時の金融情勢のひっ迫を踏まえ、手形での支払いを容認する運用を前提に、一般の金融機関による割引を受けることが困難と認められる手形を交付することを禁止する規定(下請法4②二)が設けられ、現在に至っている。 公正取引委員会及び中小企業庁は、昭和41年3月以降、繊維業は90日、その他の業種は120日をほぼ妥当と認められる手形期間(サイト)として、これを超える長期の手形を割引困難手形として指導してきた。平成28年には、公正取引委員会から、下請代金の支払いはできる限り現金によるものとすること等の要請も公表されてきた。令和3年には、公正取引委員会事務総長及び中小企業庁長官の連名の文書をもって関係事業者団体に対して、下請代金の支払いに係る手形等のサイトについては60日以内とするよう要請が行われた(手形通達の見直し)。 さらに、公正取引員会は、下請代金の支払手段に関して定める指導基準等を本年4月に変更し、本年11月1日以降に手形期間が60日を超える長期の手形等を交付した場合、下請法上の割引困難な手形等に該当するおそれがあるとし、10月1日、親事業者約600者に対し、下請代金の支払いにおける手形等のサイトを60日以内に短縮するよう求める注意喚起を実施した。 また、前記の「企業取引検討会」では、電子記録債権や一括決済方式(ファクタリング)についてもサイトについて同様の問題があるとしている。ファクタリングについては、利用手数料が差し引かれた金額しか受け取ることができないとの指摘もある。類似の問題として、民法上は債務者(発注者)負担が原則(民法485)とされている振込手数料を債権者(受注者)に負担させる商慣習も挙げられている。 〇振込手数料の消費税の取扱い インボイス発行事業者が国内で行った課税資産の譲渡等につき、返品や値引き、割戻しなどの売上げに係る対価の返還等を行った場合には返還インボイスの交付義務があるが、その金額が税込1万円未満である場合には、返還インボイスの交付義務が免除される(消法57の4③、消令70の9③二)。 受注者が負担する振込手数料相当額を売上値引きとして処理している場合も、振込手数料相当額が1万円未満であれば、これに該当すると考えられるが、振込手数料を受注者が負担する商慣習が改められれば、こうした取扱いも不要となるのかもしれない。 (了)
法人税
税務
税務・会計
解説
解説一覧
〈ポイント解説〉役員報酬の税務 【第66回】「功績倍率と功労加算」
〈ポイント解説〉 役員報酬の税務 【第66回】 「功績倍率と功労加算」 税理士 中尾 隼大 ○●○● 解 説 ●○●○ (1) 裁判例にみる功績倍率法の起源 今日では、税務上の役員退職給与の過大性判定において、代表取締役の退任であれば功績倍率を3倍以下とすることが無難である旨が実務上浸透していることは、本連載の各所で触れてきた通りである。ここで、功労加算の検討のため、昭和40年における法人税法の大改正以降の裁判例にいくつか触れる。なお、その当時は旧法人税法36条「内国法人が各事業年度においてその退職した役員に対して支給する退職給与の額のうち、当該事業年度において・・・・・・損金経理をした金額で不相当に高額な部分の金額として政令で定める金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。」という規定が争点となっていたことに留意したい。 判例データベース上、功績倍率という用語が初出として確認できるのは、おそらく東京地裁昭和46年6月29日判決であると思われる(※1)。 (※1) 税務訴訟資料62号1002頁、TAINS:Z062-2753。 この裁判例は、課税庁側が同業類似法人を抽出し、功績倍率法を用いて更正処分等をしたことに対し、地裁が、旧法人税法36条等が設けられているのは、退職給与の損金性を決定する尺度となる役員の会社に対する貢献度を測る基準がなく、「個々具体的な退職給与金額には多分に益金処分としての性格を有する支出の含まれている事例が少なくないところから、・・・法人の行為計算のみにとらわれることなく、その合理性の検討について特に注意を喚起せんとするにとどまり、損金としての要件を具備する役員退職給与であっても、当該事案における特殊事情をすべて捨象して同業種、同規模の他の会社の役員退職給与の支給金額をこえる部分の損金算入をすべて否定せしめんとする趣旨に出たものではないと解すべきである」とし、役員の貢献度は設備投資の有無や功罪によっても異なるとし、損金算入の是非は支給実態による旨を示して、課税庁が同業類似法人を抽出した上で功績倍率法の主張をしたものの退けられた事例である。 これに対し課税庁が控訴した東京高裁昭和49年1月31日判決では(※2)、課税庁側が同業類似法人を抽出したうえで平均功績倍率法にて更正処分等をしたことは、旧法人税法36条の趣旨に合致する旨を示し、一転して納税者の主張が退けられている。 (※2) 税務訴訟資料74号293頁、TAINS:Z074-3261。 この当時、この事例を皮切りに、課税庁側が同業類似法人を抽出し、功績倍率法によって不相当に高額な役員退職給与を否認するという事例が相次いでみられる(※3)。 (※3) 例えば、東京高裁昭和51年9月29日判決(税務訴訟資料89号777頁、TAINS:Z089-3861)、東京高裁昭和52年9月26日判決(税務訴訟資料95号597頁、TAINS:Z095-4057)、長野地裁昭和62年4月16日判決(税務訴訟資料158号104頁、TAINS:Z158-5909)等がある。 この中でも、判決文の中で当時の企業の状況が垣間見える事例として、東京地裁昭和55年5月26日判決がある(※4)。 (※4) 税務訴訟資料113号442頁、TAINS:Z113-4599。なお、納税者によって控訴・上告がなされているが、高裁・最高裁ともに地裁の判断を支持している。 地裁は、旧法人税法36条の合理性について、「株式会社政経研究所が昭和47年6月20日現在で全上場会社1,603社及び非上場会社101社を調査したところ、何らかの形で役員退職給与金額の計算の基準を有しているものが682社、そのうち右基準を明示したものが265社あったが、265社のうち167社が退任時の最終報酬月額を基礎として退職金を算出する方式をとっており、さらに、そのうち154社が最終報酬月額と在任期間の積に一定の数値を乗じて退職給与金額を算出する方式をとっていることが認められるのであるから、退職給与金額の損金算入の可否、すなわちその相当性の判断にあたって原告と同業種、類似規模の法人を抽出し、その功績倍率を基準とすることは、前記法令の規定の趣旨に合致し合理的であるというべきである」と示し、民間企業が最終報酬月額や勤続年数、そして一定数値を採用して役員退職金を算定していることから、功績倍率法が合理的であると示しているのである(※5)。 (※5) 課税庁が納税者の所轄税務署を含む5税務署管轄内の同業類似法人を抽出し、その結果をもって「当時の全上場1,603社の実態調査の結果から算出される功績倍率の平均が社長3.0、専務2.4、常務2.2、平取締役1.8、監査役1.6であるところからみて相当な基準といえるものである。」と主張していることから、この裁判例が、代表取締役が3倍まで認められる根拠であるという見解も散見される。 なお、この裁判例は、対象となった納税者の取締役が昭和47年8月25日に退職していた状況を踏まえ、納税者が「同業種、類似規模の法人について算出した功績倍率を用いることは一般に是認されていない」と主張している。この点、この取締役の退任日が、上記で触れた東京地裁昭和46年6月29日判決で功績倍率を採用した課税庁の主張が退けられた後であり、かつその控訴審の判断が示される前だったことに鑑みると、当時の状況として、企業が役員退職金を算定する際に勤続年数や一定倍率を採用する傾向はあったものの、それを理由とした功績倍率法として役員退職給与の過大性を判断することは一般的ではなかったように思われる。 このような状況であったために、この当時は、法人が支給した役員退職給与についての過大性判断について争われた事例は、功績倍率法自体が認められるかどうかという点が中心となっており、功績倍率と功労加算の関係まで言及されているものは見当たらない。ここで、この裁判例が取り上げた株式会社政経研究所は、昭和39年にも『40年度版 役員退職慰労金の決め方』(以下「役員退職慰労金の決め方」という)を刊行しており、法人税法の大改正時の企業の状況が分かる資料となっているため、以下(2)にて触れる。 (2) 「役員退職慰労金の決め方」より 役員退職慰労金の決め方では、大東亜戦争時の経理統制令に触れ、理論的な役員退職慰労金の算定方法を示している。具体的には、役員退職慰労金について、経理統制令には「最終の受けた報酬の半年分に、任期の年数を乗じたものの範囲において支給すべきである」とする枠があったとし、昭和39年当時の大企業において、大体これを追っている企業が多いという言及がある他(5頁)、算定の基礎となる金額について「形としては退職時における報酬をとるのが一番望ましいと思う。それはその人の企業に対する貢献度を、現時点において最も正しく表現している報酬であると認められるから、その人が退職するときには、退職時点における報酬額の1年分の2分の1にしたものに在任年数を乗じたもの」が望ましいとしている(5頁)。 上記によると、この当時から役員報酬の額を基礎とした一定の額に勤続年数を乗じるという考え方自体は企業に浸透していたと思われる。また、企業を対象としたアンケート調査や取材等の結果、「退任時の報酬月額 × 在任年数(又は在任期数)× 役職別倍数」によって役員退職金の額を計算している企業が最も多かったことも明らかにされている(21頁)。 つまり、役員退職慰労金の決め方によれば、役員退職慰労金の算定方法は、経理統制令が色濃い役員報酬の半年分の額に勤続年数を乗じる形から、退任時の報酬月額に勤続年数と一定の役職別の倍数を乗じる形へと、主流の算定方法が変化していったことが示唆されていると思われる。なお、功労加算を規程として設けることについては、「退職役員の効労度(※6)については、取締役全員で判定できる問題である。従って功労加算を加えるかあるいは減額をするかという基準を、あらかじめ内規としてきめておくということはおかしなこと」として否定的な見解が示されている(8頁)。 (※6) 原文ママ。 これらのことから、当時から、多くの企業が現在の功績倍率法と同様の方法によって役員退職慰労金を算定していたため、これらの企業が同業類似法人として抽出される対象となるとともに、裁判所が功績倍率法を是認する根拠の1つともなり、これらの裁判例が蓄積された結果、課税庁が同業類似法人を抽出した功績倍率が3倍であれば過大ではないという現在の認識に収斂していったように思われる。 この点、国税庁が昭和57年、役員退職給与の適正額について不相当に高額なものをチェックするために「退職前適正報酬額 × 在任年数 ×『功績倍率』= 適正退職金額」という算式を作成したと説く見解がある(※7)。これによっても同業類似法人の平均率、つまり3倍程度までが適正とされているが、「国税庁の3程度(※8)というのは、・・・ポスト等から固定的に判定すべきものではない」とし、外形的なポストだけで功績倍率を判断すべきではないという注意喚起もなされている。 (※7) 吉牟田勲「役員退職金の不相当高額の判定-判例の分析から基準まで-」税務事例研究16号(1993)2頁。 (※8) 原文ママ。 (3) 功労加算をどのように考えるべきか (2)のように、功労加算については、加算することを基準として設けるべきではないとする見解が昭和39年当時から存在していた。また、課税庁が功績倍率3倍を採用して更正処分等を行い、その結果不服申立てに移行して、納税者が特別功労加算金を加算すべきだと主張した裁決例として、国税不服審判所平成23年5月25日裁決がある(※9)。 (※9) 裁決事例集等未登載、TAINS:F0-2-514。 これによると「当該役員退職給与の額には、その支出の名目のいかんにかかわらず、退職により支給される一切の給与が含まれるのであるから、・・・特別功労加算金相当額は、本件同業類似法人の功績倍率に反映されているものと解され、これを基礎として算定した役員退職給与相当額(審判所認定額)は、特別功労加算金を反映したものというべきである」として、功労加算部分は既に功績倍率に含有されている旨が示されている。 また、【第12回】で触れた東京高裁平成25年7月18日判決においても(※10)、納税者が最高功績倍率3倍に功労加算30%を加えた額を裁判時点で主張したところ、平均功績倍率法が採用されて納税者の主張が退けられている。なお、本件裁判例についても、更正処分時には3倍が採用されていたため、当初申告で功績倍率を3倍として役員退職給与を計算していれば税務調査で否認されることはなかったという見解がある(※11)。 (※10) 税務訴訟資料263号順号12261、TAINS:Z263-12261。 (※11) 山下雄次『三訂版 オーナー会社のための役員給与・役員退職金と保険税務』(税務研究会出版局、2024)116頁。 これらのことから、実務上、課税庁は功績倍率が3倍までなら認めている実態があると思われるが、功労加算部分を含めたところで判断されている。したがって、功労加算を反映させる場合には、功労加算を含めたうえで3倍以内に収めた倍率で役員退職給与を計算すべきだといえる。 (了)
法人税
税務
税務・会計
解説
解説一覧
基礎から身につく組織再編税制 【第69回】「適格株式移転を行った場合の申告調整」
基礎から身につく組織再編税制 【第69回】 「適格株式移転を行った場合の申告調整」 太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター 税理士 川瀬 裕太 今回は、適格株式移転を行った場合の申告調整の具体例について解説します。 1 適格株式移転を行った場合の株式移転完全親法人の処理 (1) 前提条件 【株式移転完全子法人A社の株式移転直前の貸借対照表(会計)】 会計上の資産・負債と税務上の資産・負債には差異が生じていません。 【株式移転完全子法人B社の株式移転直前の貸借対照表(会計)】 会計上の資産・負債と税務上の資産・負債には差異が生じていません。 (2) 会計処理 株式移転完全親法人C社の会計処理は、下記のとおりです。 会計上、取得企業の完全子会社の取得原価は、適正な帳簿価額で算定し、被取得企業の完全子会社の取得原価は、時価により算定することとされています。 (3) 税務処理 株式移転完全親法人C社の税務処理は、下記のとおりです。 ① 株式移転完全子法人株式の取得価額 適格株式移転により株式移転完全親法人が取得する株式移転完全子法人株式の取得価額は、次のとおりです(法令119①十二)。 株式移転の直前においてA社の株主は、50人以上のため、株式移転完全親法人C社が取得するA社株式の取得価額は、A社の前期末の簿価純資産価額の9,000となります。 株式移転の直前においてB社の株主は、50人以上のため、株式移転完全親法人C社が取得するB社株式の取得価額は、B社の前期末の簿価純資産価額の5,000となります。 ② 資本金等の額 株式移転完全親法人において株式移転により増加する資本金等の額は、株式移転完全子法人株式の取得価額(取得のために要した費用を除く)となります(法令8①十一)。 株式移転完全親法人C社において増加する資本金等の額は、14,000(9,000+5,000)となります。 ③ 利益積立金額 適格株式移転の場合には、株式移転完全親法人C社の利益積立金額は増加しません。 (4) 会計処理と税務処理の調整 会計処理と税務処理を比較すると、差異が生じているため、調整する必要があります。 調整仕訳は、次のとおりです。 上記の調整仕訳については、損益項目が含まれないため、別表4での申告調整は行わず、別表5(1)のみで調整することとなります。 (5) 別表5(1)の処理 別表5(1)の処理については、次のとおりです。 (注)※印は調整仕訳により生じたものであることを表示するために記入しています。 ◆ポイント◆ 株式移転完全親法人C社において増加する利益積立金額が0、増加する資本金等の額が14,000となっているかを別表5(1)で確認することが重要です。 2 適格株式移転を行った場合の株式移転完全子法人の処理 適格株式移転の場合には、株式移転完全子法人A社及びB社が有する資産について時価評価を行う必要はなく、特段の課税関係は生じません。 3 適格株式移転を行った場合の株式移転完全子法人の株主の処理 (1) みなし配当 適格株式移転が行われた場合には、株式移転完全子法人の利益積立金額は株式移転完全子法人の株主に交付されないため、株式移転完全子法人の株主においてみなし配当を計上する必要はありません。 (2) 譲渡損益 投資が継続していると認められる場合には、譲渡損益の計上を繰り延べることとされています(法法61の2⑪)。「投資の継続」とは、株主が金銭等の交付(株式以外の交付)を受けていないことをいいます。 株式移転完全子法人の株主はC社株式のみの交付を受けているため、譲渡損益は生じません。 (3) C社株式の取得価額 株式移転完全子法人の株主が対価として株式移転完全親法人株式のみを交付された場合のその株式移転完全親法人株式の取得価額は、株式移転完全子法人株式の帳簿価額に付随費用を加算した金額とされています(法令119①十一)。 株式移転完全子法人の株主は株式移転によりC社株式のみを交付されているため、C社株式の取得価額は、A社の株主であったものは、株式移転直前のA社株式の帳簿価額、B社の株主であったものは株式移転直前のB社株式の帳簿価額となります。 (了)
相続税・贈与税
税務
税務・会計
解説
解説一覧
相続税の実務問答 【第100回】「先順位の相続人が相続を放棄したことにより相続人となった者の相続税の申告期限」
相続税の実務問答 【第100回】 「先順位の相続人が相続を放棄したことにより相続人となった者の 相続税の申告期限」 税理士 梶野 研二 [答] 相続税の申告書の提出及び納付は、被相続人に相続の開始があったことを知った日の翌日から起算して10ヶ月以内に行わなければなりません。あなたと叔母様の場合には、それぞれが甲の相続放棄を知った日の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告及び納税をしなければなりません。 ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 相続の放棄 (1) 相続が開始した場合、相続人は次の3つのうちのいずれかを選択できます。 (2) 相続人が、相続放棄又は限定承認をする場合には、家庭裁判所にその旨の申述をしなければなりません。この申述は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内(注)に、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所にしなければならないと定められています(民法915①本文)。相続放棄の申述は、被相続人の住民票除票又は戸籍附票、申述人(放棄する者)の戸籍謄本など所定の資料を相続放棄申述書に添付して行います。相続放棄申述書を提出した後、家庭裁判所から「照会書」が送られてきます。照会に対して回答を行い、その回答に特段の問題がなければ、「相続放棄申述受理通知書」が家庭裁判所から送られてきます。 (注) 相続人が、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内に相続財産の状況を調査してもなお、相続を承認するか放棄するかを判断する資料が得られない場合には、利害関係人が相続の承認又は放棄の期間の伸長の申立てをすることにより、家庭裁判所はその期間を伸ばすことができることとされています(民法915①ただし書き)。 2 相続税の申告書の提出期限等 相続税の申告書は、被相続人に相続の開始があったことを知った日の翌日から起算して10ヶ月以内に被相続人の住所地の所轄税務署長に提出しなければなりません。また、原則として、同日までに申告書に記載した相続税額を納付しなければなりません。 この「相続の開始があったことを知った日」とは、自己のために相続の開始があったことを知った日をいうものと解されています(相基通27-4)。すなわち、被相続人に「相続の開始があったことを知った日」とは、被相続人が亡くなったことを知ったという事実だけでは不十分であり、自分がその被相続人の相続人であることを知ったという事実も必要です。 通常、自分が相続人であるにもかかわらず自分が被相続人の相続人であることを知らないということはないだろうと考えられます。しかしながら、先順位の相続人が相続を放棄したことにより、後順位の者が相続人となった場合には、先順位の相続人が相続を放棄して自分が相続人となったことを知った日が、その者が被相続人に相続の開始があったことを知った日となると考えられます。 3 ご質問の場合 甲の相続放棄は、その申述が受理された日に効力が生じることとなります。この申述が受理された日は、家庭裁判所から申述者に送付された相続放棄受理通知書に記載されています。あなた及び叔母様は、この申述が受理された日に伯父様の相続人になります。 つまり、あなたが、被相続人に相続の開始があったことを知った日とあなたが伯父様の相続人となったことを知った日は同じ日ではありません。ご質問の場合、あなたが伯父様の相続人になったことを知った日は、あなたが甲の相続放棄を知った10月15日となります。同様に、叔母様の場合には、10月20日となります。 したがって、あなたの相続税の申告書及び相続税の納税は、10月15日の翌日から10ヶ月を経過する日である令和7年8月15日、叔母様の相続税の申告書及び相続税の納税は、10月20日の翌日から10ヶ月を経過する日である令和7年8月20日となります。 (了)
税務
税務・会計
解説
解説一覧
暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第53回】
暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第53回】 東洋大学法学部准教授 泉 絢也 (6) 受益権と本件持分 ア 概要 イ 本件持分の発行方式等 ウ 本件持分の譲渡方式等 (7) 米国連邦所得税の課税関係 ア スポンサーの意図 イ 信託課税 ウ 米国持分所有者に対する課税 (8) 非米国持分所有者への課税 (9) 米国における情報申告とバックアップ源泉徴収 (了)
国際課税
税務
税務・会計
解説
解説一覧
〈一角塾〉図解で読み解く国際租税判例 【第56回】「中央出版事件-旧信託法下における外国籍の孫への海外信託贈与-(地判平23.3.24、高判平25.4.3、最判平26.7.15)(その1)」~(平成19年改正前)相続税法4条1項、2項4号、5~9条、(平成18年改正前)信託法1条、(平成18年改正後)信託法2条~
〈一角塾〉 図解で読み解く国際租税判例 【第56回】 「中央出版事件 -旧信託法下における外国籍の孫への海外信託贈与- (地判平23.3.24、高判平25.4.3、最判平26.7.15)(その1)」 ~(平成19年改正前)相続税法4条1項、2項4号、5~9条、 (平成18年改正前)信託法1条、(平成18年改正後)信託法2条~ 税理士 中野 洋 1 事案の概要 X(原告・被控訴人)の祖父Fは、平成16年8月4日に米国ニュージャージー州法に準拠して、Fを委託者、米国の信託銀行G社を受託者(以下単に「G」)、Xを受益者とし、券面額500万ドルの米国債を信託財産とする信託を設定したところ、処分行政庁(以下「Y」)はこの信託行為につき平成19年改正前相続税法4条1項(以下、単に「4条1項」)を適用して贈与税の決定処分等をしたことから、Xがその取消しを求めて提訴した事案である。 Xの母Bは、日本を出国した直後に米国でXを出産し、Xは米国籍のみを取得している。Xは、信託行為時において生後約8ヶ月の乳児であったが、本件信託契約後に日本に帰国している。日本国籍を有する父A及び母Bとの間には、Xの他にも長男C、三男Dがおり、Xは二男である。FはAの父親であり、Xからみれば祖父にあたる。 本件信託契約書によれば、本件信託は解約不能の永久信託であり(1条)、Fの子孫らのために設定され、受託者であるGは、自己の裁量により、Xが生存する限りにおいて、Xの教育、生活費、健康、慰安及び安寧のために妥当と思われる金額を、元本及び収益から支払う(同4条1項)。 一方で、4条1項にかかわらず、限定的指名権者である父Aは、新たに受益者となる者を指名する権限を有し(同4条3項)、限定的指名権が行使されたときは、Gはそれらの者のためにも信託財産を保有、管理、分配する(同4条2項1号)。さらに、Gは信託財産をあらゆる種類の投資対象に投資できる旨(同6条8項)、Fは本目的を満たすための適切な投資戦略は生命保険証券への投資であると信ずる旨(同7条1項)、投資顧問としてXの父Aを指名する旨(同8条1項)が記載されていた。 これを受けて、父AはGに対して本件生命保険の契約締結を指示し、Gは同年9月に父Aを被保険者とし、Gを保険契約者兼保険金受取人とする生命保険契約を6社と締結し、一時払保険料として440万ドルを支払ったが、残りの60万米ドルについては米国債として運用されていた。なお、Gの報酬等に関しては、信託より支払われる旨(同条11項)が記載されていた。 本件信託契約において受託者であるGには、信託財産の運用に関して広範な権限が認められている。また、Gは信託財産の分配に関して裁量権を有しており、父Aが死亡し本件生命保険の保険金を受領したとしても、これを直ちに全額Xに支払わなければならない義務を負っておらず、適宜の方法で支払うことが認められている。さらに、限定的指名権者である父Aは、X以外の者を受益者と指名することができる。 本件は平成18年信託法改正及びそれを受けた平成19年相続税法改正前の事案である。当時の4条1項には「信託行為があった場合において、委託者以外の者が信託の利益の全部又は一部についての受益者であるときは、当該信託行為があった時において、当該受益者が、その信託の利益を受ける権利(略)を当該委託者から贈与(略)に因り取得したものとみなす」と規定していたが、4条1項にいう「信託行為」については、相続税法に定義規定が置かれておらず、さらに、4条1項の「受益者」については、相続税法と旧信託法のいずれにも定義規定がなかったところ、原審は、受益者を「利益を現に有する地位にある者」と解し、受益者該当性を否定した。一方、控訴審においては、受益者を「受益権を有する者」とし「受益権」の範囲を広く解することで、受益者該当性を肯定した。 2 争点 Fの相続税対策スキームのフローにあわせて争点が形成されており、簡潔に説明すると、以下のような流れになる。 また、これをフローチャートにすると下記の図のようになる。 (※) 仲谷栄一郎・田中良「海外の信託を利用した租税軽減策~名古屋地裁平成23年3月24日判決~」国際税務31巻9号(2011年)77頁のフローチャートによる説明図を基に筆者一部改変の上作成。 3 原審 原審は、本件信託の設定が信託行為に当たるとしたが(争点1)、Xの受益者該当性(争点2)についてはこれを否定した。 (1) 争点1 ① Xの主張 「信託法1条の規定によれば、(略)受託者に受益者を選定する権限を認めておらず、まして、第三者にその裁量により受益者を選定する権限を与えることは想定されていない」として、わが国の信託法に規定されていない「指名権」や「裁量権」が付加されていることをもって、本件信託がわが国の信託法上の信託ではないと主張する。 ② Yの主張 これに対しYは「信託とは、委託者が信託行為によって、受託者に財産権(信託財産)を帰属させつつ、同時にその財産を一定の目的(信託目的)に従って、受益者のために管理・処分すべき拘束を加えるところに成立する法律関係」であると主張する。 ③ 原審の判示 本件信託の設定が、信託行為に該当するか否かについて、原審は借用概念(統一説)により結論を導いた。曰く「4条1項の『信託行為』については、同法にはこれを定義する規定は置かれていない。このような場合、納税者の予測可能性や法的安定性を守る見地から、税法上の用語は、特段の事情のない限り、通常用いられる用法により解釈するのが相当である。本件においても、信託行為は、信託法により規定されている概念であるので、4条1項の『信託行為』は、信託法による信託行為を意味するものと解するのが相当である。そして、信託法1条によれば、信託とは、委託者が、信託行為によって、受託者に信託財産を帰属させ、同時にその財産を一定の信託目的に従って受益者のために管理処分すべき拘束を加えるところにより成立する法律関係であると解されるところ(略)、委託者であるFが、本件信託の設定行為により、受託者であるGに本件信託財産である本件米国債を帰属させ、受益者とされる原告のために管理処分すべき拘束を加えたものと認められるので、本件信託の設定行為は、4条1項にいう『信託行為』に当たると認められる」とした。 (2) 争点2 ① Xの主張 Xは、4条1項に規定する受益者については、相続税法における他のみなし贈与規定(同法5条ないし9条)と同様に解し「実質的に見て贈与を受けたのと同様の経済的利益を享受している事実がある」ことが必要であるなどと主張した。 ② Yの主張 「4条1項は、委託者が他人に信託受益権を与えたときは、信託行為をした時に信託受益権を贈与又は遺贈したものとみなして課税する方法(信託行為時課税)を採用している。そして、Fが本件信託の信託行為をした時は、Fが本件米国債を本件信託財産としてGに引き渡した平成16年8月26日である」などと主張する。 ③ 原審の判示 判示は、信託行為があった場合のみなし贈与の規定(4条1項)を、相続税法における他のみなし贈与の規定と同様に解釈した上で、Xが現実に利益を享受していないことから、4条1項の「受益者」に当たらないとした。 すなわち、同法5条から9条の規定が「いずれも、受贈者とされる者が贈与とみなされる行為によりもたらされる利益を現に有することになったと認められる時に、贈与があったものとみなすと規定されていると理解できる。これらの規定と、通則法15条2項5号を併せて読めば、贈与税は、受贈者とされる者が贈与による利益を現に有することに担税力を認めて、これに対して課税する制度であると理解できる。したがって、相続税法5条ないし9条と同様に、みなし贈与の規定である4条1項にいう『受益者』とは、当該信託行為により、その信託による利益を現に有する地位にある者と解するのが相当である」とし、「Xは、本件信託の設定時において、本件信託による利益を現に有する地位にあるとは認められない」とした。 ((その2)へ続く)
会計
税務・会計
解説
解説一覧
〈経理部が知っておきたい〉炭素と会計の基礎知識 【第7回】「炭素に価格を付けるってどういうこと?」
〈経理部が知っておきたい〉 炭素と会計の基礎知識 【第7回】 「炭素に価格を付けるってどういうこと?」 公認会計士 石王丸 香菜子 〔PNパッケージ社の登場人物〕 * * * カーボンプライシングは、企業などの排出する二酸化炭素に価格を付け、これによって排出者の行動を変化させて、排出量の削減を促す手法です。カーボンプライシングには、政府によるものと民間によるものとがあり、政府によるカーボンプライシングの代表は「炭素税」と「排出量取引」です。 日本では、2023年5月に「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」(GX推進法)が成立しました。このGX推進法は、同年2月に閣議決定された「GX実現に向けた基本方針」のうち、成長志向型カーボンプライシング構想などの実現・実行に関する内容を定めたものです(※1)。この成長志向型カーボンプライシング構想でも、炭素税と排出量取引のしくみが掲げられています。 (※1) 経済産業省「「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定されました」 経済産業省「「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律案」が閣議決定されました」 なお、GXは、グリーントランスフォーメーション(Green Transformation)を指す。幅広い文脈で用いられるが、経済産業省は、GXを「化石燃料をできるだけ使わず、クリーンなエネルギーを活用していくための変革やその実現に向けた活動のこと」としている。 経済産業省 METI Journal ONLINE「知っておきたい経済の基礎知識~GXって何?」 * * * * * * 経済学では、企業などによる経済活動が、市場取引によらずに第三者に不利益や損害を与えることを外部不経済といいます。環境汚染はその典型です。たとえば、企業がある製品を製造することで環境汚染が生じ、社会全体がそのコストを負担することになっても、企業はそれを自社の費用とは考えません。結果的にその製品は過剰に生産され、社会的に最適な資源配分は実現されません。 温室効果ガスも、それを排出する者と、それによって不利益や損害を被る者とが異なり、外部不経済と考えることができます。 * * * * * * こうした問題を解決するための方策として、経済学ではピグー税やボーモル=オーツ税といった環境税の考え方が論じられてきました(※2)。環境税を課すことにより、排出量を削減するインセンティブを企業に持たせることができます。 (※2) ピグー税は、外部不経済を発生させる製品に対して、限界外部費用分の従量税を課す考え方をいう。ボーモル=オーツ税は、政府が限界外部費用の額を把握することは現実には困難であることを考慮し、一定量の排出量削減を社会にとっての最小費用で実現することを目標として、排出量1単位につき一定額を課税する考え方をいう。いずれも提唱者の名前に由来する。 カーボンプライシングの1つである炭素税は、この環境税に通じるものです。排出量取引も、ボーモル=オーツ税と同じように、社会にとって最小費用で二酸化炭素排出量の総量を一定水準にコントロールしようとする考え方に基づきます。 * * * * * * 炭素税は、石油や石炭などの化石燃料に対し、その二酸化炭素の含有量に応じて税金を課すしくみです。国によって税制の細かい部分は異なりますが、1990年にフィンランドが世界で初めて炭素税を導入して以降、さまざまな国・地域で導入されています。 日本では、炭素税に相当する税として「地球温暖化対策のための税(温対税)」が2012年以降導入されていますが(※3)、その水準は諸外国の炭素税に比べて低いものとなっています。 (※3) 温対税は、石油・石炭・天然ガスといった全ての化石燃料の使用に対し、二酸化炭素排出量に応じて課されるもので、石油石炭税に上乗せする形が採られている。 環境省「地球温暖化対策のための税の導入」 そこで、先述の成長志向型カーボンプライシング構想では、2028年度から化石燃料の輸入事業者等に対し、化石燃料に由来する二酸化炭素排出量に応じて「炭素に対する賦課金」を課すこととされています(※4)。 (※4) 経済産業省「脱炭素成長型経済構造移行推進戦略」(GX推進戦略) * * * * * * 一方の排出量取引制度(ETS:Emissions Trading System)は、各企業の二酸化炭素排出量の上限を決めておき、それを超過した企業と下回ることのできた企業との間で、排出枠を取引するしくみです。 【排出量取引のイメージ】 * * * * * * 排出量取引制度は、EUで2005年から開始されているEU-ETSが知られるほか、中国や韓国でもすでに導入されています。 日本では、東京都と埼玉県が、大規模な事業所を対象として温室効果ガス排出総量削減義務と排出量取引制度を導入しているものの(※5)、全国規模での排出量取引制度はこれまでありませんでした。 (※5) 東京都「総量削減義務と排出量取引制度について」 埼玉県「目標設定型排出量取引制度」 いずれの排出量取引も相対取引で、取引価格は当事者間の交渉・合意により決定される。 * * * * * * 日本でも、排出量取引制度の導入に向けた試行的な取組みとして2023年度からGX-ETSが開始されており(※6)、知見やノウハウの蓄積、必要なデータ収集などを行ったうえで、2026年度より排出量取引を本格稼働させる予定とされています。また、2033年度頃からは、発電事業者に対して排出枠の有償オークション(※7)を段階導入することが計画されています(※8)。 (※6) GX-ETSは、GXリーグの参加企業により行われる自主的な排出量取引の枠組みである。GXリーグは、GXに取り組む企業群が官・学と協働する場で、2024年度は747の企業等が参加している。 GXリーグ「GXリーグとは」 経済産業省「GXリーグに2024年度から新たに179者が参画し、合計747者となります」 (※7) 発電事業者に対し、二酸化炭素排出量に応じた排出枠の一部又は全部を、政府からオークションで購入することを義務づけるしくみをいう。 (※8) 経済産業省「脱炭素成長型経済構造移行推進戦略」(GX推進戦略) * * * * * * カーボンプライシングの施策に積極的に取り組む国や地域に所在する企業は、コストの増加を避けるため、生産拠点を規制の緩い国や地域に移転する懸念があります。その場合、移転先で排出量が増えてしまうこととなります。いわゆる「カーボン・リーケージ(漏洩)」です。 カーボン・リーケージを回避する方法として考えられているのが、「炭素国境調整措置」です。炭素国境調整措置は、国境で、輸入品に対して国内と国外の炭素価格の差額分の支払いを課す措置をいいます。 【炭素国境調整措置のイメージ】 EUは、世界に先駆けて、炭素国境調整措置(CBAM:Carbon Border Adjustment Mechanism)を2026年に本格導入する予定で、それに向けた移行期間が2023年10月から開始されています(※9)。 (※9) 移行期間は、本格適用に向けた準備や情報収集を目的とするもので、対象品を輸入する輸入者に、輸入品に含まれる炭素排出量などの報告義務が課される。移行期間中は費用の支払い等は求められない。 欧州委員会「Carbon Border Adjustment Mechanism」 * * * * * * Q 炭素に価格を付けるってどういうこと? A 企業などの排出する二酸化炭素に価格を付け、これを通じて排出者の行動を変化させて、排出量の削減を促す手法をカーボンプライシングといいます。カーボンプライシングは、企業などの排出する二酸化炭素に価格を付け、これを通じて排出者の行動を変化させて、排出量の削減を促す手法をいいます。政府によるカーボンプライシングの代表は「炭素税」と「排出量取引」で、日本でもこれらの本格導入が予定されています。 (了)
会計
税務・会計
解説
解説一覧
〔まとめて確認〕会計情報の四半期速報解説 【2024年10月】第2四半期決算(2024年9月30日)
〔まとめて確認〕 会計情報の四半期速報解説 【2024年10月】 第2四半期決算(2024年9月30日) 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 3月決算会社を想定し、第2四半期(中間期)決算(2024年9月30日)に関連する速報解説のポイントについて、改めて紹介する。基本的に2024年7月1日から9月30日までに公開した速報解説を対象としている。 公開草案及び適用時期が将来のものは、基本的に記載の対象外としている。 具体的な内容は、該当する速報解説をお読みいただきたい。 Ⅱ 会計関係 企業会計基準委員会は次のものを公表している。 〇 移管指針「移管指針の適用」等(内容:日本公認会計士協会の実務指針等について、会計に関する指針のみを企業会計基準委員会に移管するもの) 2024年9月13日、企業会計基準委員会は、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」等を公表している。 当該会計基準等は2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からの適用であり、早期適用として2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することができるとされていることから、本稿では記載していない。 Ⅲ 金融商品取引法関係 次のものが公布されている。 〇 「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則及び連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第70号)(内容:「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」(実務対応報告第46号)を受けたもの) Ⅳ 監査法人等の監査関係 監査法人及び公認会計士の実施する監査などに関連して、次のものが公表されている。 ① 「2024年度品質管理レビュー方針」(内容:品質管理レビューの方針を示すもの) ② 「2023年度 品質管理レビュー事例解説集Ⅰ部・Ⅱ部」(内容:のれんを含む固定資産の減損会計に係る改善勧告事項などを解説している) ③ 「倫理規則」の改正(定期総会に付議する予定の改正案の公表)及び「倫理規則実務ガイダンス第1号「倫理規則に関するQ&A(実務ガイダンス)」」の改正(内容:国際会計士倫理基準審議会の倫理規程の改訂等を踏まえた対応。2024年7月18日に開催された第58回定期総会において、「倫理規則の一部変更案」が承認されている) ④ 中小事務所等施策調査会研究報告第9号「第1種中間連結財務諸表等を含む半期報告書に関する表示のチェックリスト」(内容:表示の確認を実施する際の参考となるチェックリスト) ⑤ 中小事務所等施策調査会研究報告第10号「第1四半期又は第3四半期の四半期決算短信に含まれる四半期連結財務諸表等に関する表示のチェックリスト」(内容:表示の確認を実施する際の参考となるチェックリスト) ⑥ 「監査役等と監査人との連携に関する共同研究報告」の改正(内容:倫理規則、四半期開示制度の見直しなどに対応するもの) ⑦ 監査事務所検査結果事例集(令和6事務年度版)(内容:公認会計士・監査審査会による監査事務所の検査で確認された指摘事例等を取りまとめたもの) ⑧ 四半期開示制度の見直しに伴う監査基準報告書等の改正(内容:今般の四半期開示制度の見直しを受けて、関連する監査基準報告書等について所要の見直しを行うもの) ⑨ 監査基準報告書260「監査役等とのコミュニケーション」、監査基準報告書700「財務諸表に対する意見の形成と監査報告」、監査基準報告書700実務指針第1号「監査報告書の文例」及び関連する監査基準報告書等の改正(内容:2023年10月に国際監査・保証基準審議会(The International Auditing and Assurance Standards Board:IAASB)から公表された、IESBA倫理規程の改訂により会計事務所が社会的影響度の高い事業体(PIE)に対する独立性に関する要求事項を適用している場合の開示要求に伴う狭い範囲の改訂を受けたもの) Ⅴ 監査役等の監査関係 監査役等の実施する監査などに関連して、次のものが公表されている。 ① 「監査役等と監査人との連携に関する共同研究報告」の改正(内容:倫理規則、四半期開示制度の見直しなどに対応するもの) ② 改定版「会計監査人との連携に関する実務指針」(内容:倫理規則、四半期開示制度の見直しなどに関連し、監査人との適切な連携について記載) ③ 「主要監査業務のポイントと事例研究-監査の実効性と効率性の向上を目指して-(最終報告)」(内容:監査役スタッフの誰もが関わる重要業務を対象にして、その趣旨・目的、業務上のポイント及び留意点、実務上の課題に対応した工夫事例について研究したもの) Ⅵ 過年度に公表されている会計基準等 過年度に公表されている会計基準等のうち、2024年4月1日以後に適用されるもの(早期適用を含む)として、次の会計基準等がある。 ① 「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(2022年10月28日、改正企業会計基準第27号)等(内容:税金費用の計上区分(その他の包括利益に対する課税)及びグループ法人税制が適用される場合の子会社株式等(子会社株式又は関連会社株式)の売却に係る税効果についての取扱いを示すもの。2024年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。ただし、2023年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することができる) ② 実務対応報告第46号「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」等(内容:グローバル・ミニマム課税について、法人税及び地方法人税の会計処理及び開示の取扱いを示すもの。補足文書がある。2024年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用) ③ 企業会計基準第33号「中間財務諸表に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第32号「中間財務諸表に関する会計基準の適用指針」(内容:改正後の金融商品取引法上、半期報告書において中間連結財務諸表又は中間個別財務諸表が開示されることに対応するもの。「金融商品取引法等の一部を改正する法律」(令和5年法律第79号)の附則3条に基づき、同法により改正された金融商品取引法24条の5第1項の規定による半期報告書の提出が求められる最初の中間会計期間から適用する) ④ 会計制度委員会報告第7号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」の改正(内容:「中間財務諸表に関する会計基準」等を受けた改正) (了)