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プロフェッションジャーナル No.677が公開されました!~今週のお薦め記事~
2026年7月16日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.677を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
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日本の企業税制 【第153回】「カリフォルニア州の税制改正による日系企業への影響」
日本の企業税制 【第153回】 「カリフォルニア州の税制改正による日系企業への影響」 一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 魚住 康博 カリフォルニア州の税制改正に関する懸念は続いている。6月末までに州議会で議論されている法案にはWater‘s Edge Election(水際選択方式)の廃止提案は含まれず、ひとまずの懸念は後退したと言える。しかし、将来的に同様の改正提案が出てくる可能性も十分に考えられることから、今年11月に予定される州知事選を含めて、引き続き動向に注視が必要な状況は続くと考えられる。 こうした中、現地の日本経済界である北カリフォルニア日本商工会議所(JCCNC)と南カリフォルニア日系企業協会(JBA)は共同で会員に対してアンケート調査を行い、その結果を集計した上で、6月に連名で意見書を作成した。「AB 1790:世界規模の統合報告 カリフォルニア州の日系ビジネスコミュニティからの視点」と題し、その概要は以下の通りである。 〇概要 日本とカリフォルニア州は強固な経済的結びつきを有している。2026年の最新データによると、日本はカリフォルニア州における外資系企業の雇用創出源として最大規模で、130,008人の雇用を生み出しており、この数字は2023年以降、数万人規模で増加している。外資系企業全体では、カリフォルニア州民を100万人近く雇用している。日本は、カリフォルニア州における外資系企業の事業所数で第1位を占めており、3,501の事業所が推定156億ドルの賃金を生み出している。また、日本はカリフォルニア州にとって第4位の輸出相手国でもある。本意見書では、AB 1790が日・カリフォルニア州のビジネス環境に及ぼす潜在的な影響を検証した調査について考察する。 〇調査データ 2026年3月27日から5月29日にかけて、JCCNC及びJBAは、カリフォルニア州で事業を展開する103社の日系企業を対象に調査を実施した。回答企業の事業体制はさまざまで、日本本社の下にカリフォルニア州に拠点を置く企業もあれば、米国内に複数の拠点や海外子会社を持つ企業もある。本調査では、回答者に対し、AB 1790が自社の税務及び事業運営に与える影響について推定するよう依頼した。 〈図1:予想される税制への影響〉 このグラフは、法案による税制への影響に関する回答を示している。回答者のほぼ半数が、自身の税負担が「中程度から大幅」に増加すると予測している。回答者の約6分の1は影響が「限定的」または「ごくわずか」であると予測しており、残りの回答者は「わからない」と回答した。 * * * 〈図2:予想される事業への影響〉 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 この図は、同法案が事業に及ぼすと予想される影響について尋ねた際の回答状況を示したもので、回答者は複数の回答を選択可能であった。予想される影響の上位三つには、「税額予測の不確実性の高まり」、「コンプライアンスコストの大幅な増加」及び「本社における報告負担の増加」が含まれていた。その他の潜在的な影響としては、カリフォルニア州への投資の減少、採用や人員配置計画の変更、及び州外への移転の可能性などが挙げられる。 * * * 自動車、食品・飲料、及び半導体分野の日本の大手企業の代表者らは、AB 1790法案が、カリフォルニア州におけるこれらの企業の事業継続において考慮すべき要素となるだろうと回答した41の回答者に含まれていた。一方、日本の大手航空会社やIT企業の代表者らは、同法案により本社への報告負担が増大すると予測した。さまざまな業界を代表する計36社の回答者が、同法案によりカリフォルニア州への投資が減少する可能性があると指摘した。 また、本調査では、調査時点における同法案に関する主な懸念事項について回答者に記述を求めた。上位三つの懸念事項には、コンプライアンス負担の増加、同法案の影響に関する不確実性、及び二重課税のリスクが含まれていた。AB 1790に関連するコンプライアンスコストの詳細については、下記「付録A」を参照。 〇調査結果 本調査は、カリフォルニア州における日本のビジネスコミュニティ全体に懸念が広がっている実態を浮き彫りにしている。貿易や投資をめぐる国際情勢が不確実性に満ちている中、このデータは、AB 1790法案が、同州への進出や投資拡大を検討している企業にとって、さらなる障壁となることを示している。増税や二重課税の可能性に加え、コンプライアンスコストなどの負担が、特に中小企業にとって大きな懸念材料となっている。 このデータは、カリフォルニア州の国際的なビジネス関係の全容を反映しているわけではない。同州の最大のパートナーの一つであり、州内で12万人以上の雇用を創出している日系企業から寄せられた懸念は、広範な国際ビジネスコミュニティの一部に過ぎない。しかし、これらのデータは、AB 1790法案が、すでに世界的な不確実性に直面している企業にとって不確実性をさらに高めるだけでなく、企業が他州へ移転する可能性も生じさせることを示唆している。 〇付録A 〈図3:コンプライアンスのプロセス〉 この図は、AB 1790に基づき、税額計算プロセスで必要となる新たな手順を詳細に示している。 * * * 〈図4:コンプライアンス負担の増加〉 このグラフは、事業体の数と年間コンプライアンスコストの関係を示している。1事業体あたり年間50,000米ドルの基本コストを想定すると、世界中に50の事業体を持つ企業の場合、コンプライアンスコストだけで約250万米ドルとなり、コストはリニアに増加する。200の事業体を持つ企業では、コンプライアンスコストとして約1,000万米ドルを支払うことになる。 * * * カリフォルニア州の日系企業界が負担するこれらのコストの総額はおよそ4,000万ドルに上り、州内の約800の日系関連団体から毎年その資金が流出することになる。この圧力により、コンプライアンス関連の破産リスクが高まり、小規模なカリフォルニア州の子会社でさえ、突然、年間500万~1,000万ドルの費用が発生する可能性がある。また、これらのコンプライアンスコストは、調査で指摘された移転などの他の懸念事項にもつながっている。納税義務を証明するためのコストが税額そのものを上回る場合、過度なコンプライアンス負担を課さない州への移転は、カリフォルニア州での事業継続の可否を検討する企業にとって、合理的な措置となる。 (了)
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税理士が押さえておきたい「社宅」の税務と周辺知識 【第3回】「従業員用の借上げ社宅③」~固定資産税と使用料徴収の実務管理~
税理士が押さえておきたい「社宅」の税務と周辺知識 第3回 従業員用の借上げ社宅③ ~固定資産税と使用料徴収の実務管理~ 公認会計士・税理士 桝井康弘 〇固定資産税額の確認 【参考】新築建物課税標準価格認定基準表 〇固定資産税額の変動への対応 【負担調整措置】 (※) 令和6年、令和9年など3の倍数年に行われます。 〇使用料の給与天引きについて 〇プール計算の活用 (次回に続く)
法人税
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〈ポイント解説〉役員報酬の税務 【第82回】「役員個人所有住宅を借り上げて役員社宅とすることの可否」
〈ポイント解説〉 役員報酬の税務 【第82回】 「役員個人所有住宅を借り上げて役員社宅とすることの可否」 税理士 中尾 隼大 ○●○● 解 説 ●○●○ (1) 社宅家賃の設定 法人が居住用不動産を所有又は借り上げて、社宅として従業員に対して貸与することで、法人側では減価償却費や借上げ家賃等を損金算入でき、従業員側では福利厚生にもなるということは、一般によく知られている。 同様に、当該法人の役員に対して貸与することで、役員社宅として運用することも一般に行われているだろう。この場合において、以下の計算式にて計算した賃貸料相当額を、役員から受け取っていれば、給与として課税されない(所法36、所令84の2、所基通36-15、36-40~41)(※1)。 (※1) 床面積が240平方メートルを超えるもののうち、取得価額、支払賃貸料の額、内外装の状況等各種の要素を総合勘案して豪華社宅と判定されれば、通常支払うべき使用料に相当する額が賃貸料相当額となる。 このうち、小規模な住宅でない場合の賃貸料相当額の計算における②では、法人が他者から借り受けた住宅等を貸与する場合に、法人が家主に払う家賃の50%の金額(又は自己所有の場合の賃貸料相当額の多い方)を受け取れば、給与として課税されないとされている。 (2) 借上げと賃貸を同時に行うことの是非 上記の取扱いの利用を想定したのが、今回の質問である。具体的な金額を当てはめると、役員が元々所有して居住している住宅につき、法人が借り上げて相場家賃30万円を支払い、その支払家賃の50%である15万円を役員から収受すること等が想定される。この場合、事実上はその差額である15万円を法人が負担する家賃として所得の圧縮ができるようにも思われる。これが叶うのであれば、役員にとっても住宅維持費が軽減されることとなる。 このようなことを実行した場合に、税務上の取扱いはどのようになるのだろうか。筆者が調査した限り、直接これを示す法令、通達又は裁決例や裁判例を確認することができないため、社宅の趣旨や沿革を確認し、そのリスクを検討する。 福利厚生としての社宅の起源を確定的に示すものはないものの、「いつの時代も、何らかの事業を進めようとする者がその働き手の衣食住などを用意するのは自然なこと」として、身分制社会の時代からそれがみられるとした上で、戦前から戦後、そして現在に至るまで、寄宿舎や住宅の存在感が大きいことを示唆する見解がある(※2)。また、戦後の困窮を背景に「企業の福利厚生も衣食住の最低水準をどう確保するかが大きな課題」と指摘し、「福利厚生は基本的に企業の正規従業員にだけ与えられるので、退職すればその便益を享受できなくなる。したがって福利厚生はそれ自体として労働者の企業への定着を促すことになり、企業が必要とする人材の安定的確保をひとつの課題とする雇用管理の一環を形成する。この点は特に生活の基礎的条件を成す・・・住宅について顕著にあらわれる」として、社宅の有用性を指摘するものがある(※3)。 (※2) 榎一江「福利厚生の起源」日本労働研究雑誌No780(2025)4頁以下。 (※3) 能塚正義「福利厚生の起業福祉への展開と労働者生活」同志社大学經濟學論叢45巻3号(1994)253・256頁。 これらに鑑みれば、社宅の趣旨としては、法人が役員や従業員の住環境を維持して居住の安定を図ることであり、法人にとっての利があるとして実施されていると思われる。この前提に立てば、役員自身で既に住宅を有しており、それを法人に賃貸した上で、同物件を役員が法人から賃借することは、従来から浸透する社宅の趣旨に合致する適用場面とはいい難いと思われる。何より、上記(1)で確認した賃貸料相当額の計算は、住宅を提供する経済的利益を受ける役員が、給与として課税されない水準を示すものであるため、役員が自己所有住宅を法人に貸し付けることまで予定したものではない。そのため、実質的には役員が従前どおり自己所有住宅に居住している状態に変化はなく、法人が住宅を確保して役員に提供しているという実態にも乏しいと考えられる。以上から、税務上は社宅としての非課税の取扱いの適用について慎重に判断すべきであり、否認される可能性は相応に高いものと考えられる。 つまり、本件のようなスキームでは、法人は役員の居住の便宜を図るために住宅を確保しているのではなく、役員が既に所有している住宅を形式的に借り上げているにすぎない。この点で、所得税基本通達36-40及び同通達36-41が予定する社宅の運用とは事実関係を異にすると思われる。 この場合において、差額部分については給与課税の対象と判断される可能性があり、また、その支給形態によっては定期同額給与等に該当せず、損金不算入となるリスクもある。なお、当該役員が住宅ローンを負っている場合において、金融機関との契約違反によって一括返済を求められる等のリスクも考えられる。 (3) 購入して賃貸する これに対し、一般的に社宅を活用した節税策として散見するのは、役員が有する住宅を法人が購入し、その上で、当該役員の社宅扱いとする方法である。この場合には、役員から法人に所有権が移動することから、上記(2)のような問題は生じにくいものと思われる。 この場合においても、法人が役員から住宅を購入するという取引が前提となるので、利益相反取引に関する会社法上の手当て、適切な家賃の設定、社内規程や賃貸契約書の整備等を行うべきといえる。また、豪華社宅に該当する物件は別途問題となる。 さらに、この場合には家具やカーテン、食器等の生活用品を既に役員自身が購入しているはずであるため、これら家具等まで法人所有とすることには慎重であるべきである。仮に家具等も法人所有となれば、居住する役員が家具等を使用することによる経済的利益の問題も生じるからである。この点について争点となったのが、国税不服審判所平成21年10月28日裁決である(※4)。この事例では、役員は本件家具等の使用料名目での金員の支払はしていないため、経済的利益の供与があったとして納税者の主張が退けられている。 (※4) 裁決事例集78巻237頁。 実際に役員所有住宅を法人が取得して社宅とする場合には、住宅だけでなく家具等の取扱いについても十分留意すべきである。 (了)
法人税
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令和8年度税制改正における『グループ通算制度』改正事項の解説 【第3回】
令和8年度税制改正における 『グループ通算制度』改正事項の解説 【第3回】 公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸 2 通算法人の試験研究費の税額控除額の計算方法 通算法人の試験研究費の税額控除額(税額控除可能分配額)の計算方法は、次のとおりとなる(措法42の4①④⑦⑧一・二・三・八・九・十一・十二・十三・十七・⑲、42の4の2①②③、措令27の4㉝㊲、27の5①②③)。 なお、「重点産業技術試験研究費に係る税額控除制度(戦略技術領域型)」については、「Ⅱ 戦略技術領域型の研究開発税制の創設」(【第7回】)で解説する。 (1) 一般試験研究費に係る税額控除制度(一般型) ① 通算グループ全体の税額控除可能額の計算方法 ② 各通算法人の税額控除可能分配額の計算方法 各通算法人は、次の算式により計算した税額控除可能分配額を税額控除限度額(税額控除額)とします。 (※) 以降、「控除分配割合」という。 (続く)
国税通則
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谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第43回】「国税通則法と国税徴収法との「一体的」観察・検討の観点(その1)」-租税債権の本質的要素-
谷口教授と学ぶ 国税通則法の構造と手続 【第43回】 「国税通則法と国税徴収法との「一体的」観察・検討の観点(その1)」 -租税債権の本質的要素- 大阪学院大学法学部教授 谷口 勢津夫 1 はじめに 前回、本連載の今後の方針として、国税通則法と国税徴収法との「一体的」観察により、納税者主導型租税手続と税務官庁主導型租税手続とを接合し、かつ、後者の最終段階の手続として国税徴収法による滞納処分手続を検討し(「国税通則法と国税徴収法との『一体的』観察・検討」に基づく「納税者主導型租税手続と税務官庁主導型租税手続との接合論」)、その検討内容・結果をコンメンタール的「読み物」として述べていくことにした(前回6参照)。 そのような方針は、昭和30年代に始まった国税徴収法の改正論議が十分に応えるものではなかった「租税基本法的要請」(中川一郎=清永敬次編『コンメンタール国税通則法』(税法研究所・加除式[1989年追録第5号加除済])E16頁[須貝脩一=清永敬次執筆]。太字筆者。なお、同頁ではこの要請は国税通則法との関係で論じられている)に応えようとする筆者の問題意識に基づくものである。ここで「租税基本法的要請」とは、「納税義務に関する基本的租税債権債務の法律関係が、行政手続によるという他の特徴によつておおいかくされてはならない。その意味において、租税法律関係の明確化が納税者の権利利益の保護に資し、また、行政官庁の手続きを誤りなからしめるために、要請される。」(中川=清永編・前掲書E13頁[須貝=清永執筆])と説かれる場合におけるその「要請」をいうのである。 そうすると、国税通則法と国税徴収法との「一体的」観察・検討は、「租税法律関係の明確化」の観点から行うべきであるということになろうが、その前提として、まず、租税法律関係の意義ないし特色を明らかにしておく必要があると考えられる。この点に関して、次の見解の説くところは示唆に富むものである。 その見解は、租税及び租税法について、「租税は、私的部門で生産された冨の一部を、公共サービスの資金の調達のために、強制的に国家の手に移す手段であるから、それに関する法である租税法も、それに対応して、他の法の分野(特に私法)とは異なる種々の特色をもっている。」(金子宏『租税法〔第24版〕』(弘文堂・2021年)29頁)と述べ、これを「租税法律関係の特色」について次のとおり述べる見解(同29-30頁)である。 この見解は、「租税法律関係の中心」を「国家と納税義務者との間の債権・債務の関係」として捉え、そこでいう「国家」、「納税義務者」をそれぞれ「租税債権者」、「租税債務[者]」として捉えた上で、「租税債権者である国家」の手に留保されている種々の「特権」を、「租税法律関係の本質的要素」ではなく、「租税の徴収を確保し、かつ納税者相互間の公平を維持するため」の「立法政策」の構成要素(以下では「立法政策的要素」という)とみるものと解される。 前記の見解がそのような「特権」として挙げる制度、すなわち、「更正・決定を通じて租税債務の内容を確定する権限、更正・決定の補助手段としての質問・検査権、裁判所の手を借りずに自らの手で徴収を図るための自力執行権、滞納処分に際して租税債権に認められる一般的優先権等」の各制度は、租税法律関係の立法政策的要素であり、国税通則法と国税徴収法との「一体的」観察・検討においては、租税法律関係の明確化という租税基本法的要請の観点から検討すべきものであるから、次回以降、国税徴収法に則して検討していくことにする。 ただ、今回は、租税法律関係のうち国税徴収法の第一次的規律対象としての租税債権の本質的要素について検討しておくことにしたい。それは、以上では、前記の見解に従い租税法律関係を租税債権債務関係として捉えた上で、今後の検討の進め方やその観点を整理してきたが、よく考えてみると、その前に、租税の賦課徴収に関する国家権力の行使を租税債権の行使として構成するのは、そもそも、どのような考え方に基づくのかという根本問題(以下では「租税賦課徴収権の租税債権構成問題」という)を検討しておく必要があるように思われるからである。 そのような根本問題の検討を通じて租税債権の本質的要素を明らかにすることができれば、そのことは、租税法律関係の明確化という租税基本法的要請の観点から租税法律関係の立法政策的要素を検討するに当たっても、重要な意味をもつことになろう。 2 国家財産の代替物としての租税 ところで、租税の賦課徴収に関する国家権力も課税権の概念に含まれるが、課税権の多義性(谷口教授と学ぶ「税法基本判例」第1回Ⅱ1参照)を目の前にすると、前記の根本問題(租税賦課徴収権の租税債権構成問題)を検討するには、課税権の多義性に目を奪われることなく、国家が課税権の主体として行っている租税に関する根本決定を直視して検討する必要があるように思われる。 そのような検討に関しては、「租税国家の基礎概念」に関する検討において租税国家の本質を見据えながら「租税の概念」に関する問題のうち「租税の歴史性」について「租税と私有財産の前提」という見出しの下で下記のとおり論ずる見解(大畑文七『租税国家論』(有斐閣・1934年)49-51頁。旧漢字は改めた。下線筆者)が、有益な示唆を与えてくれるように思われる。 この見解は、「租税」を「一定条件に繋属する歴史的存在」すなわち「常に経済社会の発展と共に歴史的に変動する[存在]」とみた上で、現代の経済社会の基本原理である「自由主義」の下では、「国家の経済生活」の存在及びこれに伴う「経済生活の対象たる財貨」の必要性と「私有財産制度」及びこれに基づき「個人の自由」を旨とする「国民経済」の存在とを「大前提」にして、「租税」が成り立つと説くものである(筆者はこの見解について、特に租税国家における課税と財産権保障との関係を中心に、検討したことがある。拙稿「遡及課税と財産権の遡及的制約―課税と財産権保障との関係に関する一考察―」同志社法学429号(74巻3号・2022年)145頁、159-162頁参照)。 この見解に係る前記の引用文のうち租税賦課徴収権の租税債権構成問題の検討において特に重要と思われるのは、①「租税は個人の自由と所有権が認められて後初めて存在し得る現象である。」、②「例へば私有財産制度が無くなつた場合、即ち社会生産物が一応共同団体の所有となり、管理者の手によつて―其の経験的知識又は科学的統計的基礎に基き―再び各社会構成員の必要に応じて分配される如き場合に於ては租税は最早や其の存在を認め得ない。」、及び③「自由主義によつて国家財産を完全に払下げた無産国家が最も良く租税国家たり得る訳である。」の各文である。 これらにおいて述べられている内容を要約すると、国家は「自由主義によつて国家財産を完全に払下げた無産国家」(③)となることを選択した場合(②参照)、「私有財産制度」(②)を採用して初めて「租税」(①)の存在を前提として成立する国家すなわち「租税国家」(③)となる、といえよう。このことを「無産国家」としての「租税国家」の側からみると、「租税」は「無産国家」が「国家財産」と引き換えに手に入れたいわば「国有財産」である(国家財産の代替物としての租税)、ということができるように思われ、ここに、租税債権の本質的要素を見出すことができるように思われる。つまり、租税債権は、国家が「国家財産」を完全に払い下げ「無産国家」となりその「国家財産」と引き換えに手に入れた「国有財産」である、という点にその本質的要素を見出すことができるように思われるのである。 3 憲法30条=29条「4項」論 以上でみてきたような「一定条件に繋属する歴史的存在」としての租税の概念を「当然の前提」として、現行憲法も「納税の義務」(30条)及び「租税法律主義」(84条)を規定していると解される。このような理解は次の見解(法学協会編『註解日本国憲法 上巻』(有斐閣・1948年)295頁。旧漢字は改めた。下線・傍点筆者)の述べるところである。 ここで述べられている理解と同様の理解を筆者は従来から「憲法30条=29条『4項』論」として次のとおり説いてきた(拙著『税法基本講義〔第8版〕』(弘文堂・2025年)【24】。太字原文。筆者のこの見解については、石川健治「納税の義務」増井良啓ほか編『市場・国家と法―中里実先生古稀祝賀論文集』(有斐閣・2024年)487頁、519-522頁参照)。 以上のような理解によれば、「一定条件に繋属する歴史的存在」としての租税の概念を「当然の前提」として、現行憲法は租税に関する規律(「納税の義務」及び「租税法律主義」)を定め(30条、84条)、しかもそれらを根拠とする租税侵害を中核的内容とする私有財産制を保障していることからすると、「一定条件に繋属する歴史的存在」としての租税は、現行憲法下では、そのような歴史的存在にとどまらず、憲法上の地位を獲得した法的存在(憲法上の概念としての租税)として位置づけられることになろう。 ただ、租税が憲法上の概念としての法的地位を獲得したとしても、租税の本質的要素は変わることなく、租税は国家財産の代替物としての「国有財産」である。そのような憲法上の租税概念を前提にして、税法は租税の賦課徴収に関する国家権力の行使を、財産権の一種である債権(租税債権)の行使として構成し規定することにしたものと解される。 以上を要するに、歴史的存在としての租税であれ、憲法上の概念としての租税であれ、租税は国家財産の代替物としての「国有財産」であり、その法的性質としては債権(租税債権)であると解される。このことこそが、租税債権の本質的要素であると考えるところである。 (了)
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相続税の実務問答 【第121回】「債務の額の生前贈与加算額からの控除及び贈与税額の還付(暦年課税の場合)」
相続税の実務問答 【第121回】 「債務の額の生前贈与加算額からの控除及び贈与税額の還付(暦年課税の場合)」 税理士 梶野 研二 [答] あなたが負担した債務及び葬式費用は、あなたが相続により取得した財産の価額から控除し、控除しきれない金額は生前贈与加算額から控除することはできません。また、生前贈与に係る贈与税額が算出相続税額を上回る場合に、差額の還付を受けることはできません。 ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 債務控除 相続又は遺贈(包括遺贈及び相続人に対する特定遺贈に限ります)(以下、「相続等」といいます)により財産を取得した者の相続税の課税価格に算入される価額は、相続等により取得した財産の価額の合計額から、①被相続人の債務で相続開始の際現に存するもの(公租公課が含まれます)及び②被相続人の葬式費用で、その相続人又は包括受遺者(以下「相続人等」といいます)の負担する部分の金額を控除した残額となります(相法13①)。 (注) 制限納税義務者については、控除することのできる債務には制限があり、また、葬式費用を控除することはできません(相法13②)。 なお、「相続税の課税価格」とは相続税の課税標準、すなわち相続税の課税対象となる金額です。相続等により財産を取得した者が負担する被相続人の債務及び葬式費用の合計額が、相続等により取得した財産の価額の合計額(租税特別措置法第69条の4第1項に規定する小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例などの特例措置を適用する場合には、特例を適用した後の価額。以下、同じです)を上回る場合には、相続税の課税価格は0円となり、この金額が負数になることはありません。また、この上回る金額を他の相続人等の相続税の課税価格の計算において控除することができないことは、前回説明したとおりです。 2 生前贈与加算 相続又は遺贈により財産を取得した者が当該相続の開始前7年以内(注)に被相続人から贈与により財産を取得している場合で、贈与税の申告に当たり相続時精算課税を適用していないとき、すなわち暦年課税により贈与税が課税されているときは、その贈与により取得した財産(「加算対象贈与財産」といいます)の価額の合計額(加算対象贈与財産のうち相続の開始前3年以内に取得した財産以外の財産にあっては、その財産の価額の合計額から100万円を控除した残額)を相続税の課税価格に加算した価額を相続税の課税価格とみなして相続税額を計算することとされています(相法19①)。この加算を行う前の「相続税の課税価格」は上記1の債務控除をした後の金額となります。 (注) 令和12年12月31日までに行われた贈与については、経過措置が設けられています(令和5年所得税法等の一部を改正する法律附則19②③)。詳細は、本連載【第82回】「令和5年までに行われた贈与(暦年課税)の相続税の課税価格への加算」の説明を参照してください。 したがって、相続等により財産を取得した者が負担する被相続人の債務及び葬式費用の合計額が、相続又は遺贈により取得した財産の価額の合計額を上回る場合には、「相続税の課税価格」は0円となり、この0円に加算対象贈与財産の価額を加算した金額が、最終的に「相続税の課税価格」とみなされることとなります。このため、相続等により取得した財産の価額の合計額から控除しきれなかった債務及び葬式費用の額は切り捨てられることとなり、相続税額の計算には影響しないこととなります。相続税の申告書様式第1表の①欄から⑥欄も、この仕組みに沿って計算がされるようになっています。 3 贈与税額控除 加算対象贈与財産に対して課せられた贈与税の額は、算出相続税額(相続税の総額を各相続人等の課税価格の割合で按分計算して求めた金額(相続税法第18条第1項の適用がある場合には、同項の規定による2割加算を行った後の金額))から控除することとなります(相法19①)が、その贈与税額が算出相続税額を上回る場合には、納付する相続税額が0円となり、控除しきれない贈与税額は切り捨てられることとなり、贈与税額が還付されることはありません。 4 質問の場合 あなたは、相続によりお母様の遺産である家庭用動産など80万円の財産を取得しましたので、この金額が相続税の課税価格の計算の基になります。その上で、あなたは、お母様の債務である未払医療費20万円及び葬式費用100万円を負担しましたので、これらの金額の合計額(120万円)は、取得した財産の価額の合計額(80万円)から控除することとなりますが、あなたが負担した債務及び葬式費用の額の合計金額(120万円)が、あなたが相続により取得した財産の価額(80万円)を上回りますので、ここまでの計算では、あなたの相続税の課税価格は0円となります。 そして、あなたは令和6年にお母様から建物及びその敷地の贈与を受け、暦年課税により贈与税の申告を行い、500万円の贈与税を納付しています。あなたは相続によりお母様から財産を相続していますので、この加算対象贈与財産の価額を相続税の課税価格とみなして相続税額の計算をすることとなります。こうして算出されたあなたの相続税額からこの贈与税の額を控除した後の金額が、あなたの納付すべき相続税額となります。あなたの場合、加算対象贈与財産に係る贈与税額が算出相続税額を上回ることとなりますので、あなたの納付すべき相続税額は0円となります。そうしますと、相続税法第27条第1項の規定により、あなたは相続税の申告書を提出する必要はないこととなります。 なお、この上回る金額に相当する贈与税相当額について還付を受けることはできません。 (了)
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期中会計基準を学ぶ 【第1回】「基本的な考え方、構成及び範囲」
期中会計基準を学ぶ 【第1回】 「基本的な考え方、構成及び範囲」 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2025年10月16日、企業会計基準委員会は、「期中財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第37号。以下「期中会計基準」という)及び「期中財務諸表に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第34号。以下「期中適用指針」という)などを公表した。 これは、「中間財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第33号)と「四半期財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第12号)などについて、統合した会計基準等である。 期中会計基準は、2026年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の最初の期中会計期間から適用する(期中会計基準34項)。 本シリ-ズは、期中会計基準等について基本的な理解に資するように解説を行うものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 基本的な考え方 期中会計基準は、金融商品取引法に基づく第一種中間財務諸表等と、金融商品取引所の定める規則に基づく第1四半期及び第3四半期の四半期財務諸表の両方に適用可能となるように、「中間財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第33号)等と「四半期財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第12号)等を統合することを目的としている(期中会計基準BC13項)。 統合に際しての前提及び基本的な考え方は次のとおりである。 上記のように整理したことから、期中会計基準の開発にあたり再検討を実施せずに考え方を引き継いでいるものについては、企業会計基準第33号等及び企業会計基準第12号等の結論の背景をそのまま引用する記載となっている(期中会計基準BC17項)。 Ⅲ 期中会計基準の構成 期中会計基準の章立ては次のとおりである(期中会計基準BC18項)。 上記のほか、次の事項にも注意する。 Ⅳ 範囲 期中会計基準は、期中財務諸表を作成する場合に適用する(期中会計基準3項)。 「期中財務諸表」とは、期中連結財務諸表及び期中個別財務諸表をいう(期中会計基準4項(5))。 期中会計基準の適用対象となる期中財務諸表には、金融商品取引法に基づく半期報告書において開示される第一種中間財務諸表等が含まれる(期中会計基準BC21項、連結財務諸表規則1条1項2号、財務諸表等規則1条1項2号)。 次の事項に注意する。 (了)
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給与計算の質問箱 【第78回】「給料の締め日、支給日の変更」
給与計算の質問箱 【第78回】 「給料の締め日、支給日の変更」 税理士・特定社会保険労務士 上前 剛 Q 当社の給料の締め日は15日、支給日は25日です。締め日や支給日を変更する際に注意点があればご教示ください。 A 以下、解説する。 * * 解 説 * * 1 賃金支払いの5原則 労働基準法第24条において、賃金は通貨で直接労働者にその全額を毎月1回以上一定の期日を定めて払わなければならない、と定められている。これを賃金支払いの5原則という。 例えば、締め日は15日のままで支給日を翌月15日に変更した場合、7月15日締めの給料の支給日は8月15日になる。6月15日締めの給料の支給日は6月25日なので、6月25日の次が8月15日となり、7月は支給日がなくなってしまう。そうなると賃金支払いの5原則のうちの毎月1回以上払いの原則に抵触するため、何らかの対策をする。 2 就業規則 労働基準法第89条において、就業規則に記載する内容として絶対的必要記載事項(必ず記載しなければならない事項)と相対的必要記載事項(事業場で定めをする場合に記載しなければならない事項)がある。賃金の締め日と支給日は絶対的必要記載事項なので、変更するなら就業規則の変更が必要である。 〈絶対的必要記載事項〉 〈相対的必要記載事項〉 3 雇用保険被保険者離職証明書 備考欄に“賃金締切日変更”の旨を記載する。 4 算定基礎届 締め日を変更したことにより、支払基礎日数が暦日を超えて増加した場合は超過分の報酬を除外する。 例えば、締め日を15日から20日に変更した場合、前月16日~当月20日の給与計算期間のうち、前月16日~前月20日の給与を除外し、前月21日~当月20日で計算した報酬をその月の報酬とする。 締め日を変更したことにより、支払基礎日数が17日未満に減少した場合はその月を除外する。 (了)
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《税理士のための》登記情報分析術 【第38回】「死因贈与について理解しよう」
《税理士のための》 登記情報分析術 【第38回】 「死因贈与について理解しよう」 司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎 相続における財産承継の方法の一つとして遺言が活用されることがよくあるが、遺言とよく似た制度として「死因贈与」がある。死因贈与は遺言と比較すると実行する要件が緩やかではあるが、特有の注意点がある。 1 死因贈与は贈与契約である 死因贈与とは、贈与契約の一種であり一般的な贈与契約が贈与の合意の成立により効力が発生するのに対して、死因贈与は贈与者の死亡により効力が生じることになる。民法にも定めがなされており、明確に法的な根拠がある贈与の方法であるといえる。 2 遺贈に関する規定が準用される 死因贈与は贈与者の死亡により効力が生じる点が、遺言による贈与である「遺贈」と類似しており、両者の性質の違いに反しない限りで遺贈の規定が準用される。 準用されるものとしては、執行者や撤回・取消しの規定があり、死因贈与においても遺言執行者のように死因贈与の内容を実現する執行者を選任することができる。また、遺言がいつでも撤回可能であるとされているのと同様に、原則として死因贈与も贈与者において撤回することができるとされている(民法1022条)。 準用されないものとしては、遺言の場合は遺言能力についての定めがあり、15歳になれば遺言を作成できるが(民法961条)、死因贈与は契約であることから有効に締結をするためには成年に達していることが必要となる。また、遺言の作成について厳格な方式が定められているが、死因贈与については適用されず、一般的な贈与と同様に理論上は口頭による合意でも成立する。 3 死因贈与が活用されるケース 相続の実務において死因贈与が活用されるケースとしては、贈与者の死期が近づいた状況において、時間的な制約や体調等の事情により遺言の作成ができないケースがある。不動産などの重要な財産を承継させたい人がいる場合でも、自筆証書遺言は全文自書することが求められ、また公正証書は公証人の対応に時間がかかるなど、死期が近づいた状況では財産承継の手法として採用できないことが少なくない。この点、死因贈与は遺言のような厳格な作成方式は求められないため、パソコン等で贈与契約書を作成して当事者の署名押印を取り付ければ締結することができる。 4 仮登記が可能 不動産について死因贈与契約を締結した場合、権利を安定的なものにするために仮登記をすることができる。登記の申請方法は、贈与者が仮登記義務者となり、受贈者が登記権利者となる共同申請が原則だが、贈与者の承諾書(印鑑証明書付)を提供して受贈者が単独で申請することができる。 また、死因贈与契約書が公正証書で作成されており、公正証書に贈与者が所有権移転仮登記の申請を承諾している旨の記載がある場合には、贈与者の印鑑証明書の提供がなくとも贈与者が単独で始期付所有権移転の仮登記を申請することができるとされている。 死因贈与に関係する登記は事例が少ないため、不動産の死因贈与をする場合には必ず司法書士に相談を行うとよい。 5 死因贈与はいいことばかり? 本稿を読んでいると死因贈与はメリットが大きいようにも思われるが、さまざまな注意点がある。トラブルにつながるリスクもあるため、次回注意点等について紹介をする。 (了)
