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《速報解説》 会計検査院、取引相場のない株式等の評価制度の在り方について検討~類似業種比準価額、配当還元価額の評価見直しの可能性~

 《速報解説》 会計検査院、取引相場のない株式等の評価制度の在り方について検討 ~類似業種比準価額、配当還元価額の評価見直しの可能性~   税理士 柴田 健次   会計検査院は令和5年度決算検査報告を作成し、令和6年11月6日これを内閣に送付した。その中で令和5年度決算検査報告の特徴的な案件として「相続等により取得した財産のうち取引相場のない株式の評価」について検査の状況と所見等が公表された。   1 会計検査院の所見 会計検査院は所見として、取引相場の株式等の評価制度について次のとおり示している。   2 会計検査院が今回問題視しているポイント (1) 類似業種比準価額の評価 会計検査院の指摘によれば、類似業種比準価額の中央値は純資産価額の中央値の27.2%となっており、類似業種比準価額は、純資産価額に比べて相当程度低い水準になっており、会社の規模区分が大きくなればなるほど評価額が低く算定される傾向にあることが指摘された。 類似業種比準価額は、評価通達制定当時(昭和39年)から数次の改正を経て、純資産価額との乖離が拡大していると思料される。下記のとおり、類似業種比準価額の計算式等の現行制度と評価通達制定当時を比較すると、しんしゃく割合の有無、類似業種の業種目及び類似業種株価の対象期間の選択、利益金額の選択等によって、現行制度の方が低く算定されることになる(【図表1】参照)。 【図表1】類似業種比準価額の計算式等に係る評価通達の主な改正状況 (※) 会計検査院「令和5年度決算検査報告の概要」589頁より抜粋 また、類似業種比準方式及び併用方式が選択されていた延べ590社における配当金額の比準割合(Ⓑ/B)の状況の調査結果によれば、配当金額の比準割合が0であった評価会社の割合は79.4%となっていることが指摘されている(【図表2】参照)。 【図表2】類似業種比準方式及び併用方式が選択されていた延べ590社における配当金額の比準割合の状況 (※) 会計検査院「令和5年度決算検査報告の概要」590頁より抜粋 そして、配当金額を計上していた121社における配当金額の比準割合をみたところ、【図表3】のとおり、配当金額の比準割合が1.0未満であり、類似業種と比べると配当金額の水準が低い会社が75社と全体の61.9%を占めていた。 【図表3】配当金額を計上していた121社における配当金額の比準割合の状況 (※) 会計検査院「令和5年度決算検査報告の概要」591頁より抜粋 さらに、平成30年から令和3年までの配当金額の平均額の推移を確認すると、類似業種の配当金額は増加傾向にあるのに対して、評価会社の配当金額はほぼ横ばいとなっており、配当金額の比準割合は減少している状況となっている(【図表4】参照)。 【図表4】類似業種及び評価会社の配当金額の平均額並びに配当金額の比準割合の平均値の推移 (※) 会計検査院「令和5年度決算検査報告の概要」592頁より抜粋 以上のとおり、類似業種比準価額の計算式については評価額が下がる方向で評価通達の数次の改正が行われてきたこと、その計算式が評価会社の業績等の実態を踏まえて株式を評価する方法として適切に機能していないおそれがあることなどが問題になっている。 また、評価会社の規模が大きい区分ほど純資産価額に比べて申告評価額が低くなる状況について、国税庁は、当該乖離を考慮して、会社の規模区分を変えるための操作や、特定の評価会社の要件に該当しないようにするための操作をするなどして、税負担の軽減を図る納税義務者が現に存在するとしている。 (2) 配当還元価額の評価 配当還元方式では、評価会社の株式を保有することによって受ける利益である年配当金額を還元率で割り戻すことなどにより、その元本である株式の評価額が決定される。例えば、年配当金額が100円で還元率が10%の場合の評価額は1,000円となるのに対して、年配当金額が100円 で還元率が5%の場合の評価額は2,000円となる。このため、年配当金額が同額の場合、還元率が高くなるほど株式の評価額は低くなる仕組みとなっており、還元率の値はその評価額に大きな影響を与えることになる。 還元率を10%に設定していることについて、国税庁は、昭和39年の評価通達制定当時の金利等を参考とし、評価の安全性を図ることも考慮して設定したものであるとしている。そこで、金利等の状況について、評価通達が制定された39年以降の長期国債の流通利回り及び応募者利回りの推移をみたところ、【図表5】のとおり、40年代及び50年代は約6%から約10%までの間で推移し、その後、長期的に低下して、平成10年以降はほぼ2%以下で推移していた。 しかし、我が国の金利の水準が長期的に低下してきている中、還元率は、評価通達の制定以降、見直されていない。 【図表5】長期国債の流通利回り及び応募者利回りの推移 (※) 会計検査院「令和5年度決算検査報告の概要」593頁より抜粋 配当還元方式の還元率は、評価通達の制定当時の金利等を参考にしたものであること、長期国債の流通利回りなどの金利の水準が長期的に低下してきている状況等を踏まえると、10%の還元率は、社会経済の変化に応じたものとはなっておらず、評価の安全性を考慮しているものであるとしても、近年の金利の水準と比べて相対的に高い率となっているおそれがある。このため、これに基づいて算定される配当還元方式による評価額は評価通達の制定当時と比べて相対的に低くなっているおそれがあると思料される。   3 評価通達の改正の必要性について 非上場株式の最近の裁判例や裁決においては、評価通達による評価額と時価との著しい乖離が問題視されており、特に類似業種比準価額による評価額が時価に対して低すぎることが問題になっている。 例えば、東京地裁令和6年1月18日判決(TAINSコード:Z888-2556)は、相続人が相続により取得したО社株式(21,400株)の評価について、納税者が評価通達に基づく類似業種比準価額として1株当たり8,186円で評価したのに対して、課税庁は、評価通達により評価することが著しく不適当として、評価通達6項(以下「総則6項」という)に基づく株価として1株当たり80,373円(大手アドバイザリー会社作成の株式価値算定報告書に基づき算定)と評価し、更正処分等を行ったことに対して、請求人が、原処分の取り消しを求めた事件である。 本件においては、被相続人が相続開始の直前においてV社との間でО社株式を1株当たり105,068円で譲渡する基本合意の締結が行われており、その直後に相続があり、相続人が上記の基本合意価額105,068円で譲渡したことが問題になっている。 東京地裁では総則6項の適用はないものとして納税者が勝訴しており、東京高裁においても令和6年8月28日の判決で納税者が勝訴しているが、類似業種比準価額と相続税法22条における時価との著しい乖離があるとされた事件として非上場株式の評価のあり方が検討されるべき事案として捉えることもできる。 また、配当還元価額もその評価が低すぎることから配当還元価額の適否を巡って争われる事件が少なくない。例えば、東京地裁平成16年3月2日判決(TAINSコード: Z254-9583)は、配当還元価額の趣旨について、「通達の趣旨は、通常、いわゆる同族会社においては、会社経営等について同族株主以外の株主の意向はほとんど反映されずに事業への影響力を持たないことから、その株式を保有する株主の持つ経済的実質が、当面は配当を受領するという期待以外に存しないということを考慮するものということができる。」とし、支配力がある株式に対しては原則的な評価方式が採用されるべきであるとして、配当還元価額の適用を否認した事件である。 総則6項の適用の在り方と評価通達の適正化については別の問題であるにせよ、総則6項が著しい乖離を要因として適用されることから評価通達の適正化は、著しい乖離を抑止するものとして必要不可欠になるといえる。 一方で、評価通達の改正により非上場株式の評価の見直しがされることにより円滑な事業承継が阻害されると危惧されるが、評価の問題はあくまでも相続税法22条における時価の問題となるため、評価会社の業績等の実態を踏まえて非上場株式の評価を適切に反映する必要があるといえる。非上場株式の評価自体は、相続税法22条における時価として適切な評価となるように通達改正を行い、事業承継の問題については、租税特別措置法として税制優遇で対応する必要がある。現行の法人版事業承継制度については、株価が相当高い中小企業者のみにしか利用されていない実情も踏まえると、評価通達の改正とともに法人版事業承継税制の見直しも必要なものと思料される。 (了)
#柴田 健次
2024/11/18
お知らせ その他お知らせ

プロフェッションジャーナル No.594が公開されました!~今週のお薦め記事~

2024年11月14日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.594を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
#Profession Journal 編集部
2024/11/14
国税通則 税務 税務・会計 解説 解説一覧

谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第32回】「国税通則法78条(79条)」-国税不服審判所-

谷口教授と学ぶ 国税通則法の構造と手続 【第32回】 「国税通則法78条(79条)」 -国税不服審判所-   大阪学院大学法学部教授 谷口 勢津夫   国税通則法78条(国税不服審判所)   1 はじめに 国税不服審判所は、国税に関する法律に基づく処分についての不服申立て(税通75条)のうち国税庁長官に対する審査請求(同条1項2号、2項2号)以外の審査請求に対する裁決を行う機関(裁決機関)であり(同78条1項)、組織法上は国税庁の附属機関である(財務省設置法22条1項。行組8条も参照)。 国税不服審判所は、昭和45年の国税通則法改正によって、その前身である協議団に代えて設置された。協議団は、シャウプ勧告(以下の引用頁は福田幸弘監修・シャウプ税制研究会編『シャウプの税制勧告』(霞出版社・1985年)の頁である)による「更正決定に対する納税者の不服申立権とその不服申立てを取り上げる方法」(同388頁)に関して「未解決の不服申立事件を考慮し、かつ決定する権能をもつ税務職員よりなる協議団を創設すること」(同389頁)という提案に基づき、昭和25年度税制改正において創設された。 シャウプ勧告では、協議団について、「可能な限り、協議団はできるだけ[以前に調査または最初の協定の段階で特定の事件を直接取り扱った]調査官以外の者によって構成されるべきで、それによって納税者に対し、かれらの不服申立ては最初の更正決定または調査の過程と関係のない全然異なった税務職員の団体によって考慮されているということが保証されなければならない。」(同389頁)として、その第三者的性格が謳われていたが、「ところが現実には、この協議団の第三者的性格が充分に生かされていない場合があり、・・・・・・裁決の公正を図る担保的機能が円滑に作用していないのではないかとの批判がある。」(税制調査会『国税通則法の制定に関する答申の説明(答申別冊)』(昭和36年7月)125頁。下線筆者)といわれ、昭和37年の国税通則法制定に当たり、その改善が検討された。その過程で「協議団を執行系統以外に位置する独立の裁決機関とする案」(同頁)、「協議団の独立性を維持しつつ内部部局とする案」(同頁)及び「協議団を附属機関とする案」(同126頁)が検討対象とされたが、結論としては、「組織的には現行制度[=国税庁及び各国税局の附属機関]を維持することとするが、協議団の強化充実を図り、これにできるだけ第三者的性格をもたせるよう人事その他運営の面において国税庁当局が一層の配慮をすることを要望する。」(同127頁)とされた(税制調査会『国税通則法の制定に関する答申(税制調査会第二次答申)』(昭和36年7月)24頁参照)。 その後、協議団制度の改革・改善が再び本格的に検討されたのは、税制調査会『税制簡素化についての第三次答申』(昭和43年7月。以下「税制簡素化第三次答申」という)においてであった(同『昭和44年度の税制改正に関する答申』(昭和43年12月)9頁も参照)。次の2でその答申内容をみておこう。   2 「納税者の自主性と個別性の尊重」に基づく権利救済制度 税制簡素化第三次答申は協議団制度の改革・改善に関する「答申の背景」を次のとおり述べた(44頁)。ここでは、国税不服審判所の創設の背景が「税制簡素化」の観点から述べられているが、それは租税不服申立制度ないし国税不服審判所制度をめぐる最近の議論ではあまり顧みられないように思われる観点であることから、少し長くなるがそのまま引用しておくことにする。 ここでは、国税不服審判所制度創設の背景には、前述したように、それまで検討が重ねられてきた①「税制簡素化」の観点すなわち「税制を納税者に受けいれ易いものとすべきであるという観点」があったことが述べられているが、その論旨については、大要、①の観点から②「納税者の自主性と個別性の尊重という方向」が示され、その方向が③協議団の第三者的性格の不十分さに起因する批判、すなわち、「協議団が国税局長の指揮下にあり、かつ、国税局長が協議団の議決に基づくにせよ裁決権を保持しているという形をとつている以上、公正な裁決として納税者の納得を得ることが難しいという批判」(税制簡素化第三次答申45頁)と相俟って、国税不服審判所制度の創設につながったものと解することができよう。 このような論旨の展開における①~③の相互関係を整理しておくと、①の観点は、「法令等の複雑化」を回避しつつ②の方向を実現するために設定されたものであり、③の批判も、②の方向を実現するための環境すなわち「納税者が新しい問題の起こるつど、自らの立場や個別事情を申し立て、納税者と税務当局が腹蔵なく相互に意見をかわし、問題を正しく、かつ、迅速に解決しうるような環境」が整備されていない当時の状況に向けられたものであるといえよう。 このような整理によれば、国税不服審判所制度創設の核心は②「納税者の自主性と個別性の尊重という方向」にあり、ここにこそ、国税不服審判所による権利救済独自の特長が認められ、裁判所による権利救済制度とは別に国税不服審判所による権利救済制度を設ける意義があると考えるところである。 国税不服審判所制度は、租税法律主義の手続的保障原則の観点から権利救済制度として高く評価されるが(金子宏『租税法〔第24版〕』(弘文堂・2021年)88頁、拙著『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)【27】等参照)、以上のようにみてくると、民主主義的租税観(金子・前掲書22頁、前掲拙著【14】)すなわち「およそ民主主義国家にあつては、国家の維持及び活動に必要な経費は、主権者たる国民が共同の費用として代表者を通じて定めるところにより自ら負担すべきものであ[る]」という「見地」(大嶋訴訟・最大判昭和60年3月27日民集39巻2号247頁)からも、高く評価されるべきものである。つまり、国税不服審判所制度は、「納税者の自主性と個別性の尊重」に方向づけられ民主主義的租税観によって支持される権利救済制度であるといってもよかろう。   3 国税不服審判所の不当性審査と違法性審査 国税不服審判所は、前述のとおり、国税庁の附属機関であるが、執行機関ではなく裁決機関である(税通78条1項)。また、行政庁による裁決も基本的には裁判所による判決と同じく処分に係る法律上の不服の裁断行為であるが、判決とは異なり処分の違法性だけでなく不当性をもその裁断の対象に含むものである(行審1条1項参照)。ここで処分の不当性とは、「行政処分を行うについて行政庁に裁量が与えられている場合において、裁量の逸脱または濫用(最高裁判所がよく用いる表現では、『社会通念(または社会観念)上著しく妥当性を欠く』こと・・・・・・)に至らない程度の不合理な裁量の行使がある」(芝池義一『行政救済法』(有斐閣・2022年)243頁)ことをいう。 国税不服審判所による「国税に関する法律に基づく処分」の不服審査(審査請求)に係る本案審査のうち不当性審査については、まず、国税通則法における執行機関と裁決機関との分離の観点からすると、その権限をどのように根拠づけるか検討しておく必要があるように思われる。というのも、審査請求一般における不当性審査権については、下記の解説(芝池・前掲書243-244頁。下線筆者)にみられるように上級行政庁の指揮監督権や処分見直し権限にその根拠を見出す考え方があるが、それらの考え方は、処分権限を有する執行機関と分離して設置された裁決機関としての国税不服審判所の不当性審査権については妥当し得ないと考えられるからである。 そうすると、結局のところ、国税不服審判所の不当性審査権は国税通則法によって付与されたものと解するほかないということになろう。上記の解説は、上の引用部分に続けて次のように述べているところである(芝池・前掲書244頁。下線筆者)。 国税通則法は「国税に関する法律に基づく処分に対する不服申立て」について原則として行政不服審査法の定めるところによる旨(80条1項)を規定しているので、国税不服審判所の不当性審査についても審査請求一般における不当性審査と同様の考え方が原則として妥当すると解される。ただし、国税通則法99条の規定に鑑みると、国税不服審判所の不当性審査には一定の制限が課されていると解される。すなわち、「この条は、国税不服審判所長が、通達解釈に拘束されないで独自の法令解釈により審査請求の裁決をすることができることを明らかにするとともに、処分の大量性・反復性といった国税に関する法律に基づく処分の特質に鑑み、裁決機関の解釈と執行機関の解釈が異なることとなった場合にも、実務に混乱を来すことのないよう、審査請求の裁決に当たっての執行機関と裁決機関との意見の調整を図る手続について規定するものである。」(志場喜徳郎ほか共編『国税通則法精解〔令和4年改訂・17版〕』(大蔵財務協会・2022年)1241頁。下線筆者)ことからすると、国税不服審判所が執行機関による処分を不当と判断する余地は両者の意見調整手続によって制限されるものと考えられる。 国税通則法99条の規定それ自体については後の回で改めて検討することにするが、今回は、この規定が上述のように国税不服審判所の不当性審査権を制約するだけでなく、この規定が通達に示された法令解釈を一般的に対象にする規定であることから、違法性審査権をも含め国税不服審判所の不服審査権を一般的に制約する規定であること、及び税務官庁の処分権限の行使に裁量が認められる場合がそもそも限られている(前掲拙著【34】【38】参照。例外として平成22年12月1日裁決・裁決事例集81集339頁参照)が故に、この規定は不当性審査の場面よりも違法性審査の場面で国税不服審判所の権利救済機能を低下させること、を指摘するにとどめることにする。 (了)
#594(掲載号)
#谷口 勢津夫
2024/11/14
国際課税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

国際課税レポート 【第8回】「トランプ2.0と国際課税の展望」

国際課税レポート 【第8回】 「トランプ2.0と国際課税の展望」   税理士 岡 直樹 (公財)東京財団政策研究所主任研究員   米国共和党のドナルド・J・トランプ候補は、11月5日の大統領選挙で7つの"激戦州”すべてを制して312人の選挙人を獲得し圧勝した。これにより2025年1月、第47代米国大統領に返り咲く。トランプ氏の共和党は上院の多数派を奪還し、下院も引き続き多数派となることが有力視されている(11月11日現在)。 今回は、今後4年間続く第二次トランプ政権と、少なくとも2年間続く共和党が支配する上院及び下院における国際課税を巡る議論について、現在の情報に基づき、Tax Notes誌に紹介された米国や欧州の識者のコメントも参考にしながら、簡単に展望を整理しておくこととしたい。   「2つの柱」の現状 2021年10月、140あまりの国が合意したOECD/G20・BEPS包摂的枠組み(以下「包摂的枠組み」)における2つの柱による国際課税改革のおさらいから始めよう。   トランプ2.0における展望 ◆第1の柱 第1の柱「利益A」の実施には多国間条約が必要だが、事実上米国を含む30ヶ国が条約に署名・批准することが発効条件となっている。米国が批准するためには、米国上院で出席議員の3分の2の賛成が必要であることから、利益Aの多国間条約の発効は疑問視されてきた。 利益Aによる課税は、米国のテクノロジー企業を狙い撃ちにした差別的なものであると主張する共和党・トランプ次期大統領が多国間条約に署名する可能性はない。このため、実務上は利益Aについては実施されることはないと考えて差し支えないだろう(※1)。 (※1) 「Trump Win Casts Shadow Over OECD Global Tax Reforms」Tax Notes誌(2024.11.12)参照。 包摂的枠組みの共同議長であるティム・パワー氏(英財務省)は、10月30日、南アフリカで開催されたIFA(International Fiscal Association)年次総会において、多国間条約の条文が完成したことを確認したと伝えられる。しかし、そのわずか7日後、予定していたような第1の柱の実現が困難な見通しであることが明らかになった。 そうであれば、OECDはこの作業が継続されるのか、あるいは軌道修正(例えば米国抜きで発効できるようにするなど)されるのかを明らかにすべきだろう。利益Aが実施されることを前提に準備(費用面でのコストも含む)を行ってきた納税者や関係者に対して、自分たちの今後の対応について検討する機会が与えられるべきだ。 利益Bについては、すでに移転価格ガイドラインに盛り込まれていることから、米国が主張するように「原則適用」でなくても意味が失われることにはならない。 残る問題はデジタルサービス税の扱いということになる。これについては、これまで以上に多くの国がデジタルサービス税を課すようになるという見通しがなされている。実際、カナダは最近デジタルサービス税を導入し、イタリアは既存の制度を拡大するなどの動きがある。 デジタルサービス税については、①仏・英など各国は、2021年10月までに導入済のデジタルサービス税を課すことができるが、多国間条約が発効した後、利益Aの税額から税額控除する、②米国は、通商上のアクション(報復関税)を行わない、といった内容の合意があったが、2024年6月に失効している。 このままデジタルサービス税の課税を続ければ、トランプ次期大統領及び議会多数派を奪還した共和党による通商上の報復が現実のものとなる可能性がある。デジタルサービス税は、法律的にも経済的にもその負担は自国の消費者に帰着するものである。米国から報復関税を課せられるリスクを冒しても、現在のようなデジタルサービス税を課すことが得策かどうか、欧州各国等は政治的な見極めが必要になるだろう。 ◆第2の柱 すでにわが国を含む多くの国がグローバル・ミニマム課税を導入しているが、米国の制度はOECDの仕組み(GloBEルール)と異なっている。具体的には、米国はIIRの原型となった制度であるGILTI(2017年のトランプ税制改革で導入)を持つが、実効税率の計算はIIRが国別であるのに対し、GILTIはグローバルに計算する(※2)。このため、米国の制度が第2の柱の制度でないと判定され、米国以外の国における第2の柱課税において、米国の多国籍企業が不利に扱われる可能性がある。 (※2) グローバルな計算のほうが、実効税率の計算が簡素化される利点がある。なお、高税率国に子会社があれば、低税率国に別の子会社を置くことが容認されることを問題視する立場もある。 米国(バイデン政権)は、OECDの第2の柱に沿った制度を国内法に導入する税制改正を試みたが失敗している。OECD(GloBE)のルールでは、米国親会社の実効税率が租税特別措置の適用等の結果、15%に満たない場合、15%になるまで課税する仕組み(UTPR)があるが、米国共和党議員はこれを域外適用の差別的な税制と主張し、報復的な課税を行うための法案が複数提出されてきている。例えば、ジェイソン・スミス下院議員による「米国の雇用と投資を守る法案」(H.R.3665)だ。 米国議会が、UTPRは差別的であるほか、法の域外適用であり米国の課税主権(米国議会が自国企業や国民に優遇税制を立法すること)を侵害しているとして反発することには、政治上の立場の表明であることに加え、法的な根拠もないわけではない。UTPRは、居住者による支配も支払関係などの源泉管轄(ネクサス)もない多国籍企業の所得に対する課税であり、管轄権行使の根拠に疑問なしとは言えないからである。 一方、欧州各国も米国多国籍企業に課税し、米国と衝突することは避けたいと考えているのが本音のようだ(※3)。 (※3) 「EU Braces for Trump 2.0」Tax Notes誌(2024.11.7)参照。 トランプ政権と共和党が米国の税制を第2の柱に合うように改正する可能性はないので、米国との衝突を避けるためには、合理的な範囲でOECD側が対応を考える必要が生じる。 GloBEルールの大きな変更は現実的でないが、例えば、①2025年に限り表面税率が20%以上である場合、UTPRはゼロであるとみなすとしているセーフハーバー(税率21%の米国を救うためのものであることは明らか)の恒久化などGloBEルールを変更し、米国と衝突しないようにするか、②各国はUTPRを立法しないか、適用を停止することが考えられるのではないか。 第2の柱は、すでに具体的な成果をあげている。シンガポール等を含め、50近い国が第2の柱を国内法に導入する予定だ。また、欧州の調査機関であるEU Tax Observatoryの実証的な推計によると、利益移転により失われた法人税収(対全世界GDP 比)は、2000年の約2%から漸増していたが、OECD がBEPS 報告書をまとめた2015年を境に10%弱で横ばいに転じている。軽課税国への利益移転の抑制効果を見て取ることができる。第2の柱の大きな成果と言えるだろう(本連載【第5回】「利益A・DSTと国内税制改革」の【図2】参照)。 UTPR は、多国籍企業の親会社所在国における合算課税であるIIRや、子会社所在国による課税であるQDMTTが十分に広がらなかった場合であっても多国籍企業に対して最低15%の実効税負担を求めるためのバックストップとして提案されたものである。QDMTT・IIR 導入国が増えていることから、バックストップ(UTPR)を置く必要性は低下しており、政治的・法的冒険を冒す必要に乏しいと思われる。   普遍的な関税(10%)、特定国への追加関税(60%) 税法は米国議会の承認が必要だが、関税については大統領に広範な権限が委ねられている。「歳入を生む」「企業が米国に戻ってくる」ことに着目し、第二次トランプ政権では普遍的な関税10%、特定国の追加関税60%を導入する計画であると伝えられる(率については、現時点では発言が定まっていない)。 しかし、関税には国内産業保護を目的とする保護関税と、財政収入を目的として課される財政関税があるが、わが国を含め先進国の関税は一般に保護関税である。財政関税は、資源に乏しい国や行政能力に限界がある国で採用されるべきものであり、米国のような超大国のものとはみなされてこなかったことからすれば、大きな転換となる。関税等の軽減が人々の生活水準を高め、完全雇用を実現し、実質所得を高めることなどにつながることを謳ったWTO体制の否定につながる可能性もある。 米国の国際租税法に詳しいMindy Herzfeld教授は、これまでの国際慣習法としての国際課税原則の在り方が巻き添えになる一連の貿易戦争が起こる可能性が高いと警鐘を鳴らしている(※4)。ノーベル経済学賞を受賞したクルーグマン教授も、関税は米国が世界経済のリーダーとしての役割を自ら離脱することを意味すると指摘する。 (※4) Mindy Herzfeld「Course-Correcting on International Tax in the Next Administration」Tax Notes誌(2024.11.4)   まとめ 第1の柱・利益Aについては、多国間条約実施の望みは絶たれたが、作業が継続するのか終了するのか、修正して継続するのか等についていつ公式発表があるかを待っている状況にある。米国が署名もせず、発効もしないことを理解した上で、作業に区切りをつけるために希望する国だけで署名するという米国識者の意見もあるが(※5)、条約が発効しない以上、条約の署名は実務レベルでの対応には影響しないだろう。 (※5) 前掲(※1)参照。 利益Bについては、本来利益Aとパッケージにしなければならない性質のものとは言えないと思われる。納税者にとってのメリットがあることから、制度本来の趣旨(移転価格税制の簡素化・合理化)に沿った、柔軟な利用が認められることを期待しておきたい。 なお、デジタルサービス税については、多国籍企業の立場からすれば受け身とならざるを得ないが、各国で異なる制度に対応するための事務負担の問題がある。欧州各国等の間でなんらかの措置が講じられることを期待したい。米国の専門家からは、歳入不足を補うために自国企業でなく米国企業に課税することは得策でなくなるので、政治的損得を見直さざるを得なくなるという妥当な指摘もなされている(※6)。 (※6) 前掲(※1)参照。 第2の柱については、すでに多くの国が国内法で導入し、成功を収めている。UTPRの適用が米国と衝突しないような工夫はあってもよい。現在の暫定期間中のUTPRセーフハーバーの恒久化等も一案だ。欧州各国はUTPRを適用しない場合、EU指令に違反する可能性があるとの指摘もあるが(※7)、そうであればEU指令を柔軟なものにするなど、EUにおいて積極的な工夫があってもよいだろう。 (※7) 前掲(※3)参照。 (了)
#594(掲載号)
#岡 直樹
2024/11/14
所得税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

〈令和6年分〉おさえておきたい年末調整のポイント 【第1回】「令和6年分所得税の定額減税」

〈令和6年分〉 おさえておきたい 年末調整のポイント 【第1回】 「令和6年分所得税の定額減税」   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   11月に入り、今年も年末調整に向けた準備を始める時期となった。 今回から3回シリーズで、年末調整における実務上の注意点やポイント等を解説する。 第1回(本稿)と第2回は、「令和6年分における特別税額控除」(以下「定額減税」という)を取り上げる。 なお、本年分の記事に加え、論末の連載目次に掲載された過去の拙稿もご参照いただきたい。 (※) 本稿では、年末調整で使用する各申告書等を次のとおり表記する。 令和6年度税制改正により、定額減税が実施されることとなった(措法41の3の3①)。定額減税とは、納税者の税額から一律に一定額を差し引く減税方法である。 今回の定額減税は、令和6年分の所得税(個人住民税は令和6年度分)に限った措置とされている。 以下、定額減税の概要と、定額減税に係る年末調整事務(年調減税事務)の概要について解説する。   【1】 定額減税の概要 (1) 定額減税の対象者 ① 所得制限あり 定額減税の適用には所得制限があり、対象となるのは、所得税は令和6年分、個人住民税は令和5年分の合計所得金額が1,805万円以下(給与所得のみの場合、給与収入2,000万円以下)の納税者本人に限られる(措法41の3の3①、地税附則5の8①)。 ② 居住者に限定 定額減税の対象者は、納税者本人のうち居住者に限られる。また、減税額計算の基礎となる同一生計配偶者と扶養親族も居住者に限られている(措法41の3の3②)。 (2) 減税額 令和6年分として措置された減税額は、下記〈表1〉の金額の合計額である(措法41の3の3②)。 〈表1:減税額〉   【2】 年調減税事務の概要 (1) 所得税の減税事務 給与支払者(会社等)が行う所得税に係る減税事務は、減税額を月々の源泉徴収税額から控除する月次減税事務と、年末調整の際に減税額の精算を行う年調減税事務の2つがある。 このうち、年調減税事務の手順は次の(2)のとおりである(措法41の3の8)。 (2) 年調減税事務の手順 (※) 国税庁ホームページ「令和6年分所得税の定額減税Q&A(概要・源泉所得税関係)【令和6年9月改訂版】」5頁より抜粋 *  *  * 次回(第2回)は、年調減税事務の留意点及びチェックポイントを解説する予定である。 (注) 上記の記事については、掲載後の税制改正等により、解説内容が現在の規定に基づくものとは異なるケースがある。過年度の記事内に順次コメントを入れるので留意していただきたい。 (了)   
#594(掲載号)
#篠藤 敦子
2024/11/14
法人税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

〔令和6年度税制改正における〕賃上げ促進税制の拡充及び延長等 【第4回】

〔令和6年度税制改正における〕 賃上げ促進税制の拡充及び延長等 【第4回】   公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎   ←(前回) | (次回)→   ③ 公表及び届出の手続 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 このように、マルチステークホルダー方針の公表・届出要件の充足については、経済産業省における確認を経る必要があるから、法定申告期限をにらみつつ早期の対応が必要になると考えられる。届出(事業年度終了後45日以内)から所定の審査(提出後15日程度)を受けるというプロセスを経るだけで法定申告期限(事業年度終了日の翌日から2月経過日)を迎える可能性が高まるため、特に前者の届出は速やかに行うことが望まれる。 【様式第二】 【様式第三】 ④ 届出事項の変更 マルチステークホルダー方針の公表期間中において以下の事項に変更があった場合には、速やかに「様式第四」(変更届出書)を経済産業大臣に届け出る必要がある。 変更届出書の提出後、あらためて受理通知(様式第三)が発行される。 〈変更があった場合に届出が必要な事項〉 (※19) パートナーシップ構築宣言は、2024年11月1日付けでひな形が改正されているが、改正前後のひな形のいずれも有効である。ただし、改正されたひな形への移行に伴い、パートナーシップ構築宣言のURLが変更になった場合には、マルチステークホルダー方針中に記載されている「パートナーシップ構築宣言」のURLについても修正しなければならない。 公表期間中かつ確定申告書提出期限前に変更があった場合には、確定申告の際には、変更届出に対する受理通知書の写しを提出する必要がある(変更前の届出に対する受理通知書の写しは不要)。 【様式第四】   6 中堅企業向けの賃上げ促進税制 (1) 制度の概要 青色申告書を提出する法人が、適用年度(※20)(令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度)中に国内雇用者に対して給与等を支給する場合で、かつ、当該事業年度終了の時において特定法人に該当する場合において、一定の適用要件を満たすときは、その給与等支給増加額の10%相当額(特定、、税額控除限度額)を法人税額(当該法人の当該事業年度の所得に対する調整前法人税額)から控除する(措法42の12の5②)。 (※20) 大企業向けの賃上げ促進税制の適用を受ける事業年度を除く。 さらに「上乗せ控除のための要件」が定められており、それらの要件の充足度合いに応じて控除率は5%~25%上乗せされる(税額控除限度額は最大35%相当額まで拡大する)。 ただし控除上限は調整前法人税額の20%相当額である。 (2) 適用要件 中堅企業向けの制度における適用要件は下表のとおりである(措法42の12の5②)。 (※21) 詳細については大企業向け制度の解説(前回及び本稿)を参照されたい。 (3) 上乗せ控除のための要件 上乗せ控除(税額控除率の上乗せ)措置としては、「継続雇用者給与等支給額の増加に伴う上乗せ措置」、「教育訓練費の増加に伴う上乗せ措置」及び「厚生労働省の認定制度の適用による上乗せ措置」の3つがあり、それぞれに応じて下表のとおり上乗せ控除率が定められている(措法42の12の5②一~三、措規20の10①)。 すべての上乗せ控除の適用を受けることができる場合、最大の税額控除率は調整前法人税額の35%(=本則10%+上乗せ①15%+上乗せ②5%+上乗せ③5%)相当額となる。 【上乗せ①:継続雇用者給与等支給額の増加に伴う上乗せ措置】 【上乗せ②:教育訓練費の増加に伴う上乗せ措置】 【上乗せ③:厚生労働省の認定制度の適用に伴う上乗せ措置】 「プラチナくるみん認定」又は「プラチナえるぼし認定」については、適用事業年度終了日において認定を取得していればよいため、適用事業年度前に認定を取得していた場合であっても、適用事業年度における要件を満たすこととなる(下図参照)。 出典:経済産業省『「賃上げ促進税制」御利用ガイドブック(令和6年8月5日公表版)』p.40より抜粋 これに対して「えるぼし認定(3段階目)」については、適用事業年度中に認定を取得した場合に限り、上乗せ控除の要件を満たすこととなるので留意が必要である(下図参照)。 出典:経済産業省『「賃上げ促進税制」御利用ガイドブック(令和6年8月5日公表版)』p.40より抜粋   (【第5回】に続く)
#594(掲載号)
#鯨岡 健太郎
2024/11/14
消費税・地方消費税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

〈適切な判断を導くための〉消費税実務Q&A 【第3回】「消費者が支払時に利用した共通ポイントの額は課税資産の譲渡等の対価の額に含まれるか」

〈適切な判断を導くための〉 消費税実務Q&A 【第3回】 「消費者が支払時に利用した共通ポイントの額は課税資産の譲渡等の対価の額に含まれるか」   税理士 石川 幸恵   【Q】 顧客が支払時に共通ポイントを利用した場合、次のようなレシートを交付しています。当店の税込売上金額は共通ポイントによる受領額も含めた金額でしょうか、それとも現金で受領した金額のみでしょうか。 【A】 国税不服審判所令和3年5月17日裁決(TAINSコード:F0-5-347)では、質問のようなレシートを交付した場合は共通ポイントによる支払額も含めた11,000円が貴店の税込売上金額になると判断しています。 参考までに仕訳を示すと次のようになります。 ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ 当該裁決では、消費者が支払いに利用した共通ポイント(例では2,000円)が美容室の課税資産の譲渡等の対価の額に含まれるか否かが争点であった。美容室は消費者からポイント利用分の金額に相当する金銭を受領していないこと等から課税資産の譲渡等の対価の額に含まれない旨を主張したが、不服審判所は美容室が発行したレシートの記載内容を基にポイント利用分の金額は課税資産の譲渡等の対価の額に含まれると判断した。 以下で消費者がポイントを利用した場合の売手の取扱いについて、審判所の判断に基づいて解説する。   (1) 共通ポイント利用時の基本的な仕組み 共通ポイント制度はポイント運営会社、ポイント制度の加盟店、ポイントを利用する消費者の三者が関係する取引である。【Q】に基づいて、お金の流れを整理してみよう。 美容室は、消費者から9,000円しか受領しないが、ポイント運営会社から2,000円を受領するため、合計11,000円を受領できる。 ※国税庁ホームページ「共通ポイント制度を利用する事業者(加盟店A)及びポイント会員の取引の概要」を基に筆者加工   (2) 審判所による判断の注目点 裁決書の基礎事実によれば、美容室が交付したレシートには美容室が消費者に対して提供したサービスの内容並びにその対価の額である消費税等込みの売上金額が記載された上で、その対価の支払方法として、現金、クレジット等及び消費者が支払方法の一部として利用したポイント利用額が記載されていたということである。裁決書に実際のレシートは示されていないが、【Q】で示したレシートの記載事項を参考とされたい。 審判所はこのレシートの記載事項を基に次の(イ)及び(ロ)より共通ポイントによる支払額も課税標準となる課税資産の譲渡等の対価の額に含まれると判断した。 (イ) 美容室と消費者の間で合意した対価はいくらか 消費税の課税標準となる課税資産の譲渡等の対価の額は、その課税資産の譲渡等を行った場合のその課税資産等の価額をいうのではなく、当事者間で授受することとした対価の額をいう(消法28①、消基通10-1-1)。審判所は、次の2点よりポイント利用分の金額を含む売上金額が美容室と消費者との間で合意し、授受することとした消費税込みの対価の額であるとした。 (ロ) ポイントは対価か 上記(イ)のとおり、美容室と消費者との間で授受することとした対価の額(消費税の課税標準)はレシートに記載された税込売上金額から消費税額等に相当する金額を控除した金額であり、金銭に代えてポイントで受領したとしてもその判断に影響を及ぼすものではない。   (3) レシートの記載方法により判断が変わるか 上記(2)では検討にあたりレシートの記載方法に着目していることから、レシートの記載方法により判断が変わる可能性も否定できない。そこで、レシートの書き方によって値引きか値引きでないかの処理が異なる国税庁タックスアンサーを参照し、ポイント利用分が対価の額に含まれない場合について考察したい。 (イ) 商品購入時にポイントを使用した場合の消費税の仕入税額控除の考え方 国税庁のタックスアンサーでは、ポイント使用が「商品本体価額の値引き」である場合(下図①)と「支払うべき価額の値引き」である場合(下図②)について課税仕入れに係る支払対価の額が異なる点を解説し、どちらであるかはレシートの表記から判断して差し支えないとしている。 〈レシート表記の例〉 ※国税庁ホームページ「No.6480 事業者が商品購入時にポイントを使用した場合の消費税の仕入税額控除の考え方」より抜粋 国税庁のタックスアンサーでは、「商品本体価額の値引き」を「①のケース:値引き」とし、「支払うべき価額の値引き」を「②のケース:値引きでない」と表記している。 [①のケース:値引き]=「商品本体価額の値引き」 ①のケースでは上記のとおりとし、実際に授受した現金を課税仕入れに係る支払対価の額としている。 [②のケース:値引きでない]=「支払うべき価額の値引き」 ②のケースでは上記のとおりとして、買手で不課税の雑収入が生じると解説している。 裁決事例のレシートの記載事項は「②のケース:値引きでない」の書き方に近いと考えられる。タックスアンサーNo.6480は買手の処理のみが解説され、売手の処理に言及されているものではないが、レシートの書き方により値引きとなるケース、値引きでないケースに分かれる可能性があるのは注視すべき事項であると考えられる。 (ロ) タックスアンサーNo.6480の売手への置き換え 朝長英樹氏は、共通ポイントの使用について値引処理を行うべきという主張(※)をされている。ポイントの使用は値引きで、ポイント運営会社から受領するポイント相当額はポイント収益として不課税になるとしており(下記仕訳例参照)、売手の課税資産の譲渡等の対価の額が減少することとなる。 (※) 朝長英樹「TKCWEBコラム特別寄稿 ポイント制度における消費税の取扱いの検証」(2021年10月) 〈ポイント利用額が対価の額に含まれない場合の美容室の仕訳例〉 今回の裁決ではタックスアンサーNo.6480の①のケースのような値引きとなるレシートに触れていないので、このようなレシートを交付した場合の課税資産の譲渡等の対価の額についての問題は残っているとも考えられる。今後の情報に注目したい。   (了)
#594(掲載号)
#石川 幸恵
2024/11/14
税務 税務・会計 解説 解説一覧 財産評価

Q&Aでわかる〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第48回】「〔第5表〕直前期末から課税時期までの間に土地の売買契約を締結した場合の買主法人における資産の部及び負債の部の計上金額の留意点」

Q&Aでわかる 〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第48回】 「〔第5表〕直前期末から課税時期までの間に土地の売買契約を締結した場合の買主法人における資産の部及び負債の部の計上金額の留意点」   税理士 柴田 健次   Q 経営者甲(令和6年8月1日相続開始)が100%所有している甲株式会社の株式を長男が相続していますが、甲株式会社は駐車場として賃貸予定のA土地について令和6年5月1日に売買契約を締結し、同日に10,000千円の手付金を支払い、令和6年10月1日に引渡しを受けています。A社は土地の購入に対して借入ではなく預貯金で購入しています。 甲株式会社は3月決算で直前期末は令和6年3月31日となり、売買契約の内容及び時系列は、下記の通りとなります。 この場合に、甲の相続税の甲株式会社の株式価額の算定上、第5表「1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の計算明細書」のA土地の購入に関連する資産の部及び負債の部に計上する相続税評価額及び帳簿価額はそれぞれいくらになりますか。 なお、純資産価額の計算においては、直前期末方式(直前期末の資産及び負債の帳簿価額に基づき評価する方式)により計算するものとします。 A土地の令和6年における路線価に基づく相続税評価額は、70,000千円です。 A 第5表「1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の計算明細書」の資産の部及び負債の部に計上する相続税評価額及び帳簿価額は、下記《A案》、《B案》、《C案》が考えられます。《B案》と《C案》については、仮決算方式との整合性を考慮したものですが、本問の場合には、直前期末方式と仮決算方式との整合性を考慮する意義は少ないと考えられますので、《A案》で処理することが一般的かと思料されます。 《A案》 A土地の購入に関して処理なし 《B案》 《C案》  ◆  ◆  ◆ ① 仮決算方式と直前期末方式 第5表の純資産価額の計算は、原則として仮決算方式で評価するべきこととされていますが、評価会社が課税時期において仮決算を行っていないため、課税時期における資産及び負債の金額が明確でない場合において、直前期末から課税時期までの間に資産及び負債について著しく増減がなく評価額の計算に影響が少ないと認められるときは、直前期末方式により計算することができるものとされています。 したがって、直前期末から課税時期までの間に資産及び負債について著しく増減がある場合については、直前期末方式により計算ができません。 仮決算方式と直前期末方式を比較すると下記の通りとなります。 (※) 帳簿価額は、会計上の帳簿価額ではなく税務上の帳簿価額となります。   ② 売買契約締結後に課税時期が到来した場合の買主側における相続財産の種類と相続税評価 売買契約締結後、引渡しの前に買主に相続が発生した場合の相続財産の種類と相続税評価については、【第47回】で解説をしていますが、国税庁情報の取扱いをまとめると下記の通りとなります。 なお、上記の国税庁情報が公表される要因となった昭和61年12月5日の最高裁判決(TAINSコード:Z154-5841)においては、被相続人が農地の買受契約を締結し、農地法3条による許可申請に対する許可通知が被相続人の死亡後に到達した場合、相続に係る相続税の課税財産は農地であるのか債権であるのか、その評価はどうするかが争われた事例となりますが、下記の通り判示しており、原則処理を前提としています。   ③ 本問への当てはめ (1) 《A案》の考え方 直前期末方式は直前期末の資産を対象として、課税時期に適用される評価通達を適用して計算しますので、土地の売買契約はないものとして評価を行います。そして、直前期末方式で計算した結果に基づいて土地保有特定株式会社や株式等保有特定会社の株式の判定を行います。ただし、直前期末から課税時期までの間に資産構成に大きな変動があった場合には直前期末方式は認められません。 この点について、仮決算方式との整合性の観点から考察する必要があります。 本問の場合において仮決算方式を採用した場合には、令和6年5月1日の売買契約の締結時において手付金10,000千円を支払っていますので、前渡金が資産の部に計上されます。 そして、土地の売買契約締結後、引渡しの日までの間に課税時期が到来した場合には、財産評価上は課税時期時点において土地の引渡しが行われた場合の仕訳を考えます。 ただし、課税時期時点においてまだ引渡しはされていないため、帳簿価額においては前渡金の精算がされていないことになりますので、第5表「1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の計算明細書」のA土地の購入に関連する資産の部及び負債の部に計上する相続税評価額及び帳簿価額は、下記の通りとなります。 《仮決算方式の場合》 仮決算方式における処理については、上記②に記載のとおり、原則処理(引渡請求権)と例外処理(土地)がありますので、それぞれについて資産構成の変動及び土地保有割合の比較を検証すると下記の通りとなります。 仮決算方式の原則処理と例外処理のいずれも認められるという前提の場合には、どちらを採用するかによって土地保有割合は大きく変動します。土地保有割合が高い順に並べてみると、①仮決算方式(例外処理)、②直前期末方式(《A案》)、③仮決算方式(原則処理)の順番になります。 上記の通り、資産構成に大きな変動はあるものの原則処理と例外処理の2つ方法が考えられることから、直前期末方式を採用したことによる課税上の弊害もないと考えられますので、基本的には《A案》での処理も認められるものと考えられます。 (2) 《B案》の考え方 仮決算方式との整合性を考慮し、かつ、上記②の原則処理を前提とする場合には、財産の種類は土地ではなく、引渡請求権として100,000千円で評価を行います。《B案》の考え方は、仮決算方式との整合性の観点から肯定できますが、国税庁からの情報や通達において明確にされていません。厳密な意味における直前期末方式ではないため、《B案》の考え方は相当ではなく、直前期末方式ではなく仮決算方式で計算するべきとの意見もあるかと思います。 ただし、課税実務において仮決算方式を行っていないことが多く、簡便性を考慮して直前期末方式が認められている趣旨を鑑みると、直前期末方式を基礎にしながら仮決算方式との整合性を考慮し、財産の種類や金額を一部変更することで、適正な評価となる場合には、そのような方法も認められるものと考えられます。 もっとも、本問の場合には《A案》での処理で課税上の弊害がなく、かつ、仮決算方式との整合性を考慮する意義が少ないと考えられますので《B案》での処理を行う必要性はないものと思料されます。 (3) 《C案》の考え方 仮決算方式との整合性を考慮し、かつ、上記②の例外処理を前提とする場合には、財産の種類は土地として100,000千円で評価を行います。基本的な考え方は《B案》と同様ですが、土地として評価を行うか否かが相違点となります。土地として評価を行う場合には、課税時期前3年以内取得土地等に該当するか否かが問題となります。 すなわち、評価会社が課税時期前3年以内に取得又は新築した土地及び土地の上に存する権利(以下「土地等」という)並びに家屋及びその附属設備又は構築物の価額は、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価するものとされています(評価通達185括弧書)。現実に課税時期時点において土地を購入しているわけではありませんが、《C案》の考え方は、相続開始前に土地の購入があったものとして処理をしていますので、上記の評価通達185括弧書の対象になると考えられます。 一方で文理解釈上、課税時期前3年以内に取得した土地等には該当しないという解釈も当然あり得ますので、相続税評価で評価することが相当とする意見もあるかと思います。 しかし、②の例外処理は財産評価基本通達に定める路線価等による価額を認めるとしていますが、売買価額とされる事例もあることに留意する必要がありますので、無条件で路線価等による価額を認めるということではない点には、注意する必要があります。また、《B案》との整合性もありますので私見としては、取得価額で計上することが相当かと考えます。 もっとも、本問の場合には《A案》での処理で課税上の弊害がなく、かつ、仮決算方式との整合性を考慮する意義が少ないと考えられますので《C案》での処理を行う必要性はないものと思料されます。   ☆実務上のポイント☆ 直前期末方式を採用する場合であっても、仮決算方式ではどのように処理がされるかを考えて評価することが適正な評価実務になります。ただし、仮決算方式との整合性を考慮する必要性が高くない場合には、仮決算方式に合わせる必要もないものと思料されます。 (了)
#594(掲載号)
#柴田 健次
2024/11/14
税務 税務・会計 解説 解説一覧

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第55回】

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第55回】   東洋大学法学部准教授 泉 絢也   イ 特定資産の意義と「投信法上の投資信託」該当性② 暗号資産の特定資産該当性に関して、補足的に、国内において暗号資産ETFを組成することについての金融庁の見解を確認しておく。 金融庁は、暗号資産ETFを国内で組成・販売することも、外国で組成された暗号資産ETFに対して投資する投資信託等を組成・販売することも認めないという見解を有しているようである。 金融庁は、投信法において、投資信託や投資法人が国民の長期・安定的な資産形成手段として特別の制度的位置付けを与えられているという趣旨に照らして、非特定資産やこれを投資対象とするファンド出資持分等、実質的に非特定資産と同等の性格を有する特定資産が投資目的となっているような商品などを販売することは適切ではないとしている(金融庁「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」(2024.11)のIV-3-1-2の「(9)特定資産以外の資産を投資対象の一部とする投資信託等の販売に係る留意事項」参照)。 続けて、金融庁は次のとおり述べている。 2019年の上記監督指針に係るパブリックコメントでは、上記①に関して、「暗号資産ETFは、・・・『実質的に非特定資産と同等の性格を有する特定資産』に該当するとの理解でよいか。」という質問が寄せられた。 これに対して、金融庁は、次のような見解を示している(金融庁「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」4頁)。 また、金融庁は、上記と関連した質問に対する回答の中で、上記監督指針で使われている「投資目的」という語の意義について、次のとおり説明している。 もっとも、暗号資産ETFに関する上記見解はあくまで行政機関である金融庁の解釈ないし立場を示したものにすぎない。そのような解釈を法令の文言から直ちに導出することも難しい。 例えば、投資信託は「主として」特定資産に対する投資として運用することを目的とする信託に限定されているところ、この場合の「主として」の解釈については、証券投資信託の範囲を画する際に投資信託財産の総額の50%を超える額という数値基準を定める投信法施行令6条等の存在が考慮されて、信託財産の総額(時価)の50%超をいうものと解されている(野村アセットマネジメント株式会社編著『投資信託の法務と実務〔第5版〕』88頁(金融財務事情研究会、2019)参照)。 そうであれば、少なくとも、信託財産総額の50%未満について現物の暗号資産を運用対象とするETFを組成・販売することは、投信法上は可能であるということになろう。 法令ではない金融庁の指針や見解に課税関係が左右される可能性があるとすれば、租税法律主義の原則(憲法30、84)の潜脱を許すことになりかねないため、その是非を慎重に検討する必要がある。 いずれにしても、本信託は暗号資産であるビットコインのみに投資するものであり、主として特定資産に対する投資として運用することを目的とする信託ではないことから、委託者指図型投資信託と委託者非指図型投資信託のいずれにも該当しない。 よって、この点からしても本信託は投信法上の投資信託に該当しない。 ウ 「外国投資信託」該当性 所得税法及び本件分離課税特例における投資信託とは、投信法2条3項に規定する投資信託及び同法2条24項に規定する外国投資信託をいう。 投信法上の外国投資信託とは、外国において外国の法令に基づいて設定された信託で、投信法上の投資信託(委託者指図型投資信託及び委託者非指図型投資信託)に類するものをいう(所法2①十二の二、措法2①五、投信法2③㉔)。 そうすると、外国で組成された信託が本件分離課税特例の対象であるかを検討する際には、当該信託が投信法上の「投資信託に類するもの」であるかが重要な論点となる。 この点に関して、次のような見解が示されている(伊藤剛志「外国投資信託に係る課税上の問題」中里実ほか編著『クロスボーダー取引課税のフロンティア』198~201頁(有斐閣、2014)参照)。 〈「投資信託に類するもの」であるかを判断する際の考慮要素〉 この見解に従うならば、本信託の外国投資信託該当性を検討する場面では、投資として運用することを目的とする信託であること及び複数の受益者の存在を前提としていることは明らかであるから、運用対象が主として特定資産に対するものであるかが問われることになる。 これを本信託に当てはめてみると、本信託は暗号資産であるビットコインのみに投資するものであり、主として特定資産に対する投資として運用することを目的とする信託ではないばかりか、非特定資産である暗号資産のみに対する投資として運用することを目的とするものである。 そうであれば、本信託は、投信法上の投資信託に類するものではないということになる。 この点について、次の回答を前提とすると、国税当局も同様の見解を採用する可能性が高いといえる。 本連載第54回で確認した投信法施行令3条の「政令で定められている特定資産」に⑨の「商品」が掲げられていなかった時代のものであるが、大阪国税局審理課は「上場された金現物連動型ETF『SPDRゴールド・シェア』の特定口座の対象となる株式の適否について」と題する照会に対する回答の中で、次のとおり述べている(大阪国税局審理インフォメーション127号(平成20年9月29日課税第一情報第66号)参照(TAINSコード:審理課インフォメーション127大阪局H200929)。 このことからすると、国税当局も、本信託は投信法上の投資信託に該当せず、投資信託に類するものとしての外国投資信託にも該当しないことから、本件持分は投資信託の受益権(措法37の10②四)に該当しないという結論を採用する可能性があるといえよう。 なお、上記資料では、次のような見解も示されている。 以上からすれば、本信託は、投信法上の委託者指図型投資信託と委託者非指図型投資信託のいずれにも類するものではなく、投信法上の「投資信託に類するもの」に該当しないため、投信法上の外国投資信託に該当せず、よって所得税法及び租税特別措置法上の外国投資信託にも該当しない。   (了)
#594(掲載号)
#泉 絢也
2024/11/14
会計 税務・会計 解説 解説一覧

〔まとめて確認〕会計情報の月次速報解説 【2024年10月】

〔まとめて確認〕 会計情報の月次速報解説 【2024年10月】   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2024年10月1日から10月31日までに公開した速報解説のポイントについて、改めて紹介する。 具体的な内容は、該当する速報解説をお読みいただきたい。   Ⅱ 企業内容等開示関係 次のものが公表されている。 〇 「企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドライン)」の改正(内容:「有価証券報告書等の提出期限の承認の取扱い」について改正するもの)   Ⅲ 監査法人等の監査関係 監査法人及び公認会計士の実施する監査などに関連して、次のものが公表されている。 ① 中小事務所等施策調査会研究報告第9号「第1種中間連結財務諸表等を含む半期報告書に関する表示のチェックリスト」の改正(内容:「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い」(実務対応報告第46号)について記載) ② 中小事務所等施策調査会研究報告第12号「第2種中間連結財務諸表等を含む半期報告書に関する表示のチェックリスト」の公表(内容:表示の確認を実施する際の参考となるチェックリスト) ③ 監査基準報告書700研究文書第1号「監査法人の計算書類及び監査報告書の文例に関する研究文書」(内容:監査法人が作成する年次報告書「業務及び財産の状況に関する説明書類」に含まれる計算書類の作成及び開示に当たり、参考となる内容を取りまとめたもの)   Ⅳ 監査役等の監査関係 監査役等の実施する監査などに関連して、次のものが公表されている。 〇 「監査役会の実効性向上に向けた監査役スタッフの業務-社外監査役の活動及び三様監査会議の視点から-」(内容:監査役会の実効性の向上に向けた監査役スタッフの業務について、社外監査役の活動と三様監査会議の視点で研究したもの) (了)
#594(掲載号)
#阿部 光成
2024/11/14

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