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措置法40条(公益法人等へ財産を寄附した場合の譲渡所得の非課税措置)を理解するポイント 【第2回】「非課税措置の対象となる公益法人等とは」
措置法40条(公益法人等へ財産を寄附した場合の 譲渡所得の非課税措置)を理解するポイント 【第2回】 「非課税措置の対象となる公益法人等とは」 公認会計士・税理士・社会保険労務士 中村 友理香 - 質 問 - 非課税措置の対象となる公益法人等とは、どのような法人ですか。 - 回 答 - 非課税措置の対象となる「公益法人等」とは、国又は地方公団体、 公益社団法人、公益財団法人、特定一般法人(一般社団法及び一般財団法人のうち法人税法に掲げる一定の要件を満たす法人)及びその他公益を目的とする事業を行う法人(例えば、社会福祉法人、学校法人、宗教法人など)をいいます。 ○●○◆ 解 説 ◆○●○ 非課税措置の対象となる法人は、国・地方公共団体、公益社団・財団法人、特定一般法人及びその他公益を目的とする事業を行う法人となっています(措法40①後段)。 特定一般法人とは、一般社団法人・一般財団法人のうち、以下の要件のすべてを満たす法人をいいます。 なお、一般法人のうち税務上の非営利型法人(※)には、 の2種類がありますが(法法2九の二、法令3)、特定一般法人はこのうち①の非営利性が徹底された法人となります。 (※) 非営利型法人とは、収益事業のみ課税される法人をいいます。 また、その他公益を目的とする事業を行う法人とは、 を行う法人をいい、その事業の遂行に伴い収益を生じているかどうかは問われません。 具体的には、学校法人、社会福祉法人等が該当します。 (了)
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国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第21回】「国外転出時課税と贈与、低額譲渡」
国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第21回】 「国外転出時課税と贈与、低額譲渡」 税理士 菅野 真美 - 質 問 - 私甲は外国籍ですが、日本に永住者として長年住んでいます。また、日本で会社(日本法人)を経営していますが、株式の評価額が高く、将来の相続税対策が心配です。 最近、株価が下がってきているので、海外に在住して子会社経営をしている次男乙(外国籍)へ、今のうちに贈与したいと考えています。 この場合、贈与税だけを考えればよいのでしょうか。国外転出時課税も問題になるのですか。それでは低額で譲渡をした場合はどうなるのでしょうか。 ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ ▷国外転出時課税とは 国外転出時課税は平成27年に創設された制度である。 この制度が創設される前は、居住者が有価証券を売却した場合、譲渡所得として所得税等を課税できるにもかかわらず、有価証券を保有したまま外国に移住した後に売却した場合は、国内法において所得税課税の対象外となり、あるいは、国内法で所得税課税の対象となっても租税条約によっては課税対象外となるため、これらを利用した節税策が富裕層の間で行われているとの指摘があり、当局も頭を悩ましていた。 そこで、平成27年度の税制改正で、平成27年7月1日以後に、1億円以上の有価証券を有している者が外国に移住して居住者から非居住者になる場合、出国時において、保有する有価証券を譲渡したものとみなして所得税課税を行う制度、国外転出時課税制度が創設された。 ▷なぜ贈与の場合も国外転出時課税があるのか? 国外転出時課税は、有価証券を有している本人が海外移住するケースのみ適用される制度のように思われるが、実は、居住者が非居住者に有価証券を贈与した場合や、居住者が死亡して非居住者である相続人や受遺者が有価証券を取得した場合においても、国外転出時課税の適用がある。贈与した居住者が外国籍の場合は在留資格により適用の有無があるものの、永住者の場合は日本人と同様と考え国外転出時課税が適用される(所法170の2①、170③一)。 なぜならば、贈与や相続の時点では譲渡所得課税は生じず、相続人や受贈者は被相続人や贈与者の取得費を引き継ぐためである(所法59②、60)。つまり、贈与や相続によって非居住者に有価証券が移転した後に、その非居住者が海外で有価証券を売却した場合は、本人が海外に移住して有価証券を売却した場合と同様に、日本での所得税課税の課税漏れという現象が起こる可能性がある。 そこで、平成27年度の税制改正では、本人が外国に移住した場合と同様の制度が、非居住者に贈与や相続により有価証券が移転した場合にも創設されることとなった(所法60の3)。 本事例においても、贈与者甲が保有する有価証券の評価額が1億円以上の場合で、有価証券を非居住者である次男乙へ贈与した場合は、たとえ贈与した有価証券の評価額が1億円未満であったとしても、国外転出時課税の対象となる(所法60の3)。 ここで注意すべき点は、この有価証券の評価額は、相続税評価額と必ずしも一致するとは限らないということだ。例えば、非上場株式の場合で譲渡者が発行法人にとって中心的同族株主に該当する場合の株式の評価額は小会社(原則的には純資産価額)で評価し、法人が有する土地や上場株式は時価で評価し、かつ評価差額の法人税等控除は認められない(所基通60の2-7、59-6)。 なお、贈与から5年内に受贈者が日本に帰国した場合は、将来、日本で所得税課税ができることから、課税を取り消すことができる(所法170の2⑥)。 ▷贈与の場合の課税関係 本事例において、贈与の場合の課税関係はどうなるのだろうか。贈与であるから、もちろん贈与税の課税について考えなければならない。本事例では、贈与者も受贈者も外国籍である。外国籍の贈与者が贈与時に日本に住所を有したとしても贈与財産が国内財産に該当するケースもあるが、本事例では贈与者が永住者であるから日本国籍の人と同様に取り扱われ、国内外財産いずれであったとしても日本での贈与税課税の対象となる(相法1の4①・③一)。 このため乙は、贈与年の翌年3月15日までに贈与税の申告書を提出しなければならない(相法28)。ただし、乙は非居住者であることから、申告納税については納税管理人が行うことになる(国通法117)。 また、国外転出時課税に係る申告納税は甲が行うこととなるが、甲は居住者であることから、一般的な所得税の確定申告と同様に、贈与した年の翌年の3月15日までに所得税の確定申告を行わなければならない(所法120)。 このように贈与の場合は、贈与税の納税義務者と所得税の納税義務者が異なることから、相続税の債務控除のような二重課税を防ぐ方法がない。 ▷国外転出時課税に係る納税猶予 国外転出時課税はみなし譲渡課税であり、対価の支払いがないことから担税力に乏しい場合も考えられるが、その解決方法として納税猶予を選択することができる(所法137の3)。納税猶予期間は5年間が原則で、10年間に延長することができる(所法137の3①③)。 納税猶予を選択する場合は、贈与税の確定申告期限までに担保を提供しなければならない(所法137の3①)。担保提供については国税通則法において定められており、非上場株式も可能だが、担保提供をするためには株券を発行して供託しなければならない(所基通137の3-2、137の2-8、国通法54、国通達54②)。また、株券不発行会社が株券を発行するには、定款変更のため株主総会の特別決議が必要となる(会社法466、309②)。 ▷低額譲渡の場合の課税関係 上述したように、有価証券を非居住者に贈与した場合は、贈与税及び国外転出時課税による二重の負担(Wパンチ)となる。ここで、贈与と似たような方法として、時価よりも低い価格で売買した場合、つまり低額譲渡がある。相続税法においては、低額譲渡の場合もみなし贈与として、相続税法上の時価と対価の差額について贈与税が課税される(相法7)。では、国外転出時課税における取扱いはどうなるのか。 所得税法においては、贈与と低額譲渡は別ものとして取り扱われ(所法59、60)、低額譲渡を贈与に含めるという文言はどこにもない。もちろん、国外転出時課税の贈与の規定においても、低額譲渡という文言は見られない。このため、贈与という文言に低額譲渡も含まれていると解釈するのは無理があるようにも思えることから、低額譲渡の場合は国外転出時課税の適用外と考えられる。 (了)
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「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例66(所得税)】 「法人において支給した退職金のうち個人事業時代に該当する部分につき、退職金支給日の翌日から2ヶ月以内に所得税の更正の請求を行わなかったため、経費計上ができなくなってしまった事例」
「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例66(所得税)】 税理士 齋藤 和助 《基礎知識》 ◆法人において個人事業当時の退職金も含めて支給した場合(原則) 個人事業当時に雇用していた使用人が法人成り後も使用人として勤務していた場合において、その使用人が退職した時に支払う退職金は、個人事業当時の勤続年数分は個人事業主の必要経費になり、法人成り後の勤続年数分は法人の損金の額に算入する。 ◆法人において個人事業当時の退職金も含めて支給した場合(特例)(法基通9-2-39) 個人事業を引き継いで設立された法人が個人事業当時から引き続き在職する使用人の退職により退職給与を支給した場合において、その退職が設立後相当期間経過後に行われたものであるときは、その支給した退職給与全額を法人の損金の額に算入することができる。 ◆事業を廃止した場合の必要経費の特例(所法63) 居住者が事業所得等を生ずべき事業を廃止した後において、当該事業に係る費用又は損失で当該事業を廃止しなかったとしたならばその者のその年分以後の各年分の事業所得等の金額の計算上必要経費に算入されるべき金額が生じた場合には、当該金額は、その者のその廃止した日の属する年分又はその前年分の事業所得等の金額の計算上、必要経費に算入する。 ◆個人事業を引き継いで設立された法人の損金に算入されない退職給与(所基通63-1) 個人事業を引き継いで設立された法人が、個人事業当時から引き続き在職する使用人の退職により退職給与を支給した場合において、その支給した金額のうちに、個人事業当時の事業主の負担すべきものとして当該法人の所得の金額の計算上損金に算入されなかった金額があるときは、その金額については、その者のその廃止した日の属する年分又はその前年分の事業所得等の金額の計算上、必要経費に算入する。 ◆各種所得の金額に異動を生じた場合の更正の請求の特例(所法152) 確定申告書を提出した居住者は、当該申告書に係る年分の各種所得の金額につき、事業を廃止した場合の必要経費の特例に規定する事実が生じたことにより、更正の請求に該当する事由が生じたときは、当該事実が生じた日の翌日から2月以内に限り、税務署長に対し、更正の請求をすることができる。 (了)
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財務会計
企業結合会計を学ぶ 【第2回】「取得の会計処理の概要」
企業結合会計を学ぶ 【第2回】 「取得の会計処理の概要」 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 【第1回】では、企業結合の分類として、取得、共同支配企業の形成、共通支配下の取引があることを解説した。 今回は、吸収合併の例を用いて、「企業結合に関する会計基準」(企業会計基準第21号。以下「企業結合会計基準」という)及び「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第10号。以下「結合分離適用指針」という)に規定する「取得」の会計処理の概要について解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 吸収合併 吸収合併とは、会社が他の会社とする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後存続する会社に承継させるものである(会社法2条27号)。 〔例〕 次の条件による吸収合併を行った。 Ⅲ 取得の会計処理に関する論点 「取得」とは、ある企業が他の企業又は企業を構成する事業に対する支配を獲得することをいう(企業結合会計基準9項)。 取得の会計処理は、パーチェス法となり、被取得企業から受け入れる資産及び負債の取得原価を、原則として、対価として交付する現金及び株式等の時価を用いて会計処理する(企業結合会計基準17項、結合分離適用指針29項)。 パーチェス法は、取得企業の観点から企業結合をみるもので、取得企業は企業結合日において被取得企業が企業結合日前に認識していなかったものも含めて、受け入れた資産及び引き受けた負債のうち識別可能なものに取得原価を配分する(結合分離適用指針30項)。 取得原価と取得原価の配分額との差額がのれん(又は負ののれん)であり、のれんについては20年以内のその効果の及ぶ期間にわたり、合理的な方法により規則的に償却する(企業結合会計基準32、33項)。 例えば、上記〔例〕の吸収合併を行う場合には、次の事項を検討し、会計処理することになる。 Ⅳ 取得企業の決定方法 取得とされた企業結合においては、いずれかの結合当事企業を取得企業として決定する(企業結合会計基準18項)。 「結合当事企業」とは、企業結合に係る企業をいう。このうち、他の企業又は他の企業を構成する事業を受け入れて対価(現金等の財産や自社の株式)を支払う企業を「結合企業」といい、当該他の企業を「被結合企業」という。また、企業結合によって統合された1つの報告単位となる企業を「結合後企業」という(企業結合会計基準13項)。 取得企業の決定は次のように行う(企業結合会計基準18項、78項)。 (了)
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M&Aに必要なデューデリジェンスの基本と実務-財務・税務編- 【第10回】「固定資産の分析(その3)」-その他固定資産-
M&Aに必要な デューデリジェンスの基本と実務 -財務・税務編- 【第10回】 「固定資産の分析(その3)」 -その他固定資産- 公認会計士・公認不正検査士 松澤 公貴 ←(前回) | (次回)→ ▷その他固定資産 〔分析の対象となる主な勘定科目〕 その他固定資産は、貸借対照表上無形固定資産や投資その他の資産に表示されており、法律上の権利などの物理的な実体や具体的な形のないものである。主な会計上のその他固定資産の内容は、下記のとおりである(法律上の正確な定義ではなく、会計上の概念である)。 ▷通常の会計処理 特許権、意匠権、実用新案権、商標権、ソフトウェアなどの償却資産の償却については、以下のような特徴がある。 ソフトウェアについては、有形固定資産と同様に過去の投資の状況の確認が必要である。例えば、基幹システム等の重要なシステムに、適切なアップデートが行われていない場合に、投資後メンテナンス費用が多額にかかる場合がある。 また、地上権、借地権、電話加入権などについては、有形固定資産の土地と同様に減価償却を行わない。ただし、無形固定資産としては、のれんや借地権など、投資その他の資産としては長期前払費用に計上されている権利金などが減損処理の対象となることに留意を要する。 ◆主な対象資産の耐用年数表 (出典) 無形減価償却資産の耐用年数表(別表第三) ▷その他固定資産のデューデリジェンスにおける主な調査手続 主な調査手続やポイントの考え方は、基本的に有形固定資産と概ね同一である。 例えば、借地権などについては、有形固定資産の土地同様に不動産鑑定評価のような時価評価が必要な場合がある(有形固定資産のデューデリジェンスにおける主な調査手続については【第8回】を参照)。 ▷重要な知的財産権を保有する場合の評価 対象会社が重要な知的財産権を保有している場合、必要に応じて法務デューデリジェンスチームと連携して、当該権利の内容や存続期間等を詳細に把握する必要が生じてくる。 つまり、通常であれば、知的財産権が生み出すキャッシュフローを独立して捉えるのではなく、他のキャッシュフローに含有し営業キャッシュフロー全体と捉えて評価すれば足りると考えられるが、重要であれば独立して捉えて評価する必要がある。 ◆知的財産評価フロー及び評価項目(例) (筆者作成) このような重要な知的財産権の評価は、一般的な他の資産の評価方法と同様、大きく分類してコストアプローチ、マーケットアプローチ及びインカムアプローチの3つの方法が存在する。評価対象となる知的財産権の性質や、評価目的等を勘案し、多面的な検討を行う必要がある。 例えば、特許権の場合は、特許を確立する技術開発資金と特許権価値の関連性を把握するのが困難であることや、類似特許の売買事例が検出不能であることから、コストアプローチ及びマーケットアプローチによる評価方法は採用されないことが多い。 特許権の評価においては、下記の条件がそろった場合に、インカムアプローチによる評価方法を採用することが一般的である。 また、例えば、商標権の場合は、広告宣伝費や販売促進費を費やしても現在と同じ商標の地位が確立され、同じ経済的便益が享受されるとは限らないこと、また、評価対象会社を含む商標権の関係当事者が価値構築のために支出した金額の推定も困難であることから、このような場合には、コストアプローチによる評価は採用されない。 また、評価対象会社が保有する商標権の譲渡やライセンス取引もないケースが多く、このような場合には、マーケットアプローチによる評価は採用されない。評価対象の商標権が、事業展開において中核をなす権利と考えられ、商標権を核とした製品・事業の収益性に着目してその価値評価を行うことが妥当である場合が多く、このような場合にはインカムアプローチを採用することが一般的である。 (了)
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今から学ぶ[改正民法(債権法)]Q&A 【第3回】「法定利率」
今から学ぶ [改正民法(債権法)]Q&A 【第3回】 「法定利率」 堂島法律事務所 弁護士 奥津 周 司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎 【Q】 法定利率に関して改正があったようですが、具体的にどのような点が変更されるのでしょうか。 【A】 法定利率に関する主な変更点は次のとおりである。 (1) 法定利率の概要 法定利率とは、利息を生ずべき債権について、当事者間で合意した利率(約定利率)がない場合に適用される金利である。約定の弁済期より支払いが遅れた場合などに遅延損害金として適用されるケースや、交通事故のように不法行為による損害賠償金に対する遅延損害金として適用されるケースなどがある。 法定利率が存在することにより、債権者の立場から見れば、支払いが遅れてなされた場合でも、本来の期日に支払いがあれば生み出すことができた運用益が確保できるという利点がある。債務者の立場からみれば支払いが遅れることにより、支払う金額が多くなるため、定められた期日に支払いを行う動機づけとなる。 現行法における法定利率は年5%(民事法定利率、現行法404条)、商取引等商行為に基づく債権については年6%(商事法定利率、現行商法514条)とされている。 (2) 法定利率の引き下げと変動制の導入 現行法の法定利率は、民法が制定された明治期に定められたものであり、実勢金利と比較して非常に高いこと、また固定金利であるため、実勢金利の変動があっても反映できない点が問題点として指摘されていた。一方で、実勢金利に合わせて細かく金利を変更すると社会の混乱を招くことになる。 そこで改正法では、法定金利の引き下げを行い(施行時年3%、改正法404条2項)、3年ごとに、貸出約定平均金利の過去5年間の平均値を指標とし、この数値に前回の変動時と比較して1%以上の変動があった場合にのみ、1%刻みの数値で法定利率が変動される“緩やかな変動制"を導入することとした(改正法404条3項~5項)。 具体的には、まず日本銀行が公表している貸出約定平均金利の過去5年間における短期貸付けの平均金利の合計を60で除して計算した割合(0.1%未満は切捨て)を「基準割合」とする。「過去5年間」とは、各期の初日の属する年の6年前の年の1月から前々年の12月までの各月のことを指し、例えば平成35年4月1日が期の初日である場合には、平成29年1月~平成33年12月の各月ということになる。そして、直近変動期の基準割合と当期の基準割合との差(1%未満は切捨て)に相当する割合を、直近変動期における法定利率に加算し、又は減算する。 変動のイメージは下記のとおりである。 【基準割合の上昇局面でのイメージ】 【基準割合の下降局面でのイメージ】 (出典) 法務省民事局資料「民法(債権関係)の改正に関する説明資料(p.14)」より 原則として、1つの債権には当該債権が発生した時点での法定利率が適用され、事後的に変動することはない。遅延損害金が発生した場合には、債務者が遅滞に陥った最初の時点での法定利率が適用され、交通事故の場合は、交通事故があった時点の法定利率が適用される(改正法419条1項)。 一方で、多数の債権を保有している場合、その債権の発生時期や弁済期により、債権ごとに適用される遅延損害金の利率が異なるということがありうる。 実務的には、各期の法定利率はウェブサイト等で容易に把握できるような形にはなると思うが、自社の保有する債権のうち、どの債権にどの金利が適用されるかは管理上明確にする必要がある。また、管理の統一のためには、約定で一律の遅延損害金を定めておく必要がある。 (3) 商事法定利率の廃止 商事法定利率は、商取引における法定利率だけを区別して定める合理的な理由が乏しい等の指摘もあり、廃止されることとなった。これにより商取引における法定利率も民法の法定利率が適用されることとなる。 (4) 中間利息控除 例えば、交通事故により後遺症が残ったときなど、後遺症がなく正常に稼働すれば得られていたはずの収入(逸失利益という)についても、交通事故の時点から請求が可能である。 このとき、将来の逸失利益全額をそのまま交通事故時に受け取ることができるとすれば、本来であれば将来においてしか受け取ることができなかった金銭を、現時点で一度に取得して運用することが可能となり、バランスを欠くこととなる。 そこで、将来において取得すべき利益の損害賠償の金額を算定するにあたっては、将来の運用益を控除するために、中間利息控除がなされる。そして、現行法においては、この中間利息控除をするときの控除の割合は、法定利率(年5%)とされている(最判平成17年6月14日第三小法廷判決)。 改正の議論においては、中間利息控除については現行法を維持するべきなどの意見が出されたが、結論としては損害賠償の請求権が生じた時点における法定利率が適用されることとなった(改正法722条1項)。これにより少なくとも改正法の施行時は、現行法より法定利率が下がるため、被害者としては中間利息控除される金額が下がり、受け取る金額が多くなる。保険商品等の保険料等の金額の見直しが行われる可能性も考えられる。 (5) その他 法定利率の改正において、企業としては金利の把握、計算の事務が煩雑になる。約定利率が契約に定められていれば、約定利率が適用されるため、今後は契約において約定利率を定めておくことが望ましいといえる。 (了)
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〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例29】出光興産株式会社「経営統合に関する合意書の締結のお知らせ」(2018.7.10)
〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例29】 出光興産株式会社 「経営統合に関する合意書の締結のお知らせ」 (2018.7.10) 事業創造大学院大学 准教授 鈴木 広樹 1 今回の適時開示 今回取り上げる適時開示は、出光興産株式会社(以下「出光興産」という)が、平成30年7月10日、昭和シェル石油株式会社(以下「昭和シェル石油」という)と連名で開示した「経営統合に関する合意書の締結のお知らせ」である。 この連載で出光興産の開示を取り上げるのは2回目であり、【事例19】で同社が平成29年7月5日に開示した「株主による新株式発行の差止め仮処分の申立てに関するお知らせ」を取り上げた。 今回の開示は、その平成29年7月5日の開示で問題とされていた昭和シェル石油との経営統合について、合意書を締結したという内容である。しかし、その合意の内容が、何ともすっきりとしない、いびつな印象を与えるものなのだ。 2 創業家への配慮 それは、平成29年7月5日の開示にも登場していた出光興産の創業家に配慮した結果である。同社は、今回の開示と同時に「当社大株主との間の合意書の締結に関するお知らせ」を開示しているが、そこには、以下のとおり、創業家から受け入れた、昭和シェル石油との経営統合を行うに当たってのいくつかの条件が記載されている。 なお、平成27年11月12日に出光興産と昭和シェル石油が連名で開示した「出光興産株式会社と昭和シェル石油株式会社の経営統合に関する基本合意書締結のお知らせ」では、「本経営統合の方式については、合併によることを基本方針」とするとされていたが、今回の開示では、出光興産が親会社、昭和シェル石油が子会社となる株式交換とすることになったとされている。これも創業家への配慮の1つだろう。 3 トレードネーム? 今回の開示には、「『出光昭和シェル』を本経営統合の実行後のトレードネームとする予定」とある。トレードネーム(trade name)とは、日本語では「商号」のことだが、「当社大株主との間の合意書の締結に関するお知らせ」では、経営統合後も出光興産の「商号は維持する」とされている。 出光興産と昭和シェル石油のそれぞれの正式な商号は変えず、両社共通のブランド名として「出光昭和シェル」を使用するという意図なのだろうか。しかし、「当社大株主との間の合意書の締結に関するお知らせ」では、経営統合後も出光興産の「ブランドは継続して使用する」ともされている。果たしてどうなるのか。 4 自己株式取得の本当の目的 創業家が提示した条件のうち、③と④の自己株式取得は、株主への利益還元のためであるとされている。出光興産が今回の開示と同時に開示した「自己株式取得に係る事項の決定に関するお知らせ(会社法第459条第1項の規定による定款の定めに基づく自己株式の取得)」にも、次のように記載されている。 しかし、それは表向きの目的で、創業家の本当の意図が、自身の議決権比率の維持と向上であることは明らかだろう。昭和シェル石油との株式交換に当たり、同社の株主に対して新株を発行すれば、創業家の議決権比率は低下する。それを可能な限り避けるために、新株の発行に代えて、③で取得した自己株式を交付するのである。そして、更に④の自己株式取得を通じて(その後、消却してしまうかもしれない)、創業家の議決権比率を向上させようというのである。 5 創業家が推薦する者を取締役に 創業家が提示した条件のうち①は、自身が推薦する者(おそらく創業家の者)を出光興産の取締役に据えろというものである。経営統合後の同社の取締役は10名程度になるようであり、そのうち2名では、同社の経営に与える影響は小さいかもしれない。 しかし、創業家以外の株主が同社の取締役に対して求めるのは、当然のことながら、創業家出身であることではなく、取締役として必要な資質である。今回の開示には次のような記載があるが、創業家が推薦する者を取締役とするのは、この記載と矛盾するのではないだろうか。 6 経営理念を維持しようとするのか? 出光興産は、「当社大株主との間の合意書の締結に関するお知らせ」において、創業家を「出光という名を冠する当社にとって当社の象徴的存在である」としている。単なる象徴ならば、同社を精神的にまとめるといった存在意義を見出せるかもしれない。しかし、実際は、象徴としての存在にとどまらず、同社の経営に関わり続けようとしている。 今後、創業家は、同社の経営に関わり続け、本当に同社の従来の経営理念を維持しようとするのだろうか。同社にとってプラスとなるのかマイナスとなるのかは分からないが、同社の経営に関わり続けようとするならば、当初からの主張どおり、そうした姿勢をしっかりと見せて欲しいと思う。 (了)
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開示関係
《速報解説》 証券取引等監視委員会、平成30年度版の「開示検査事例集」を公表~売上をめぐる不正会計等、最新7事例を追加~
《速報解説》 証券取引等監視委員会、平成30年度版の「開示検査事例集」を公表 ~売上をめぐる不正会計等、最新7事例を追加~ 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 証券取引等監視委員会事務局は、去る9月19日、「開示検査事例集」を公表した。 一昨年まで、「金融商品取引法における課徴金事例集~開示規制違反編~」という名称で公表されてきたものを、昨年10月の公表から、「課徴金納付命令勧告を行った事例だけでなく、さまざまな事例を積極的にご紹介することとした」ために名称を変更したと説明されている。 本稿では、公表された「開示検査事例集(以下「事例集」と略称する)」のうち、最近の開示検査の動向を知るうえで参考になると思われるⅠからⅢまでを中心にその内容をご紹介したい。 とりわけ、「最新の検査事例」については、7つの事例について、開示規制違反の内容、その背景・原因やその是正策の概要がまとめられている(事例集冒頭「証券取引等監視委員会からのメッセージ」より)ということであり、本稿の解説もこの事例を中心としたい。 Ⅰ 最近の開示検査の取組みについて 事例集「Ⅰ 最近の開示検査の取組みについて」では、証券取引等監視委員会(以下「監視委」と略称する)の開示検査の取組みついて、以下の3項目を挙げている。 平成29事務年度(29年7月~30年6月)に、監視委が行った開示検査は30件であり、前年実績(25件)を5件上回っており、そのうち、開示検査終了件数は13件(うち、課徴金納付命令勧告が3件、訂正報告書の自主的提出2件)であった。 Ⅱ 最新の検査事例 次に、事例集は「最新の検査事例」として、具体的事例を7件、公表している。 なお、事例集では、会社名等は公表されていないが、課徴金納付命令勧告の対象となった開示書類の虚偽記載事例3件について会社名を記しておくと、【事例1】は株式会社ソフィアホールディングス、【事例2】は五洋インテックス株式会社、【事例3】はピクセルカンパニーズ株式会社である。 監視委は、「再発防止策の履行状況確認」の項で、過去に開示規制違反に関して課徴金納付命令勧告を行った上場会社等のうち、平成29事務年度に実施したヒアリング又は検査において、大きな問題は認められないとしている。 また、「内部統制の不備」の事例では、監視委による検査の結果、重要な虚偽記載等は認められなかったものの、公認会計士・監査審査会への情報提供や金融商品取引所に対する問題提起を行っていることが説明されている。 Ⅲ 最新の事例の特色・傾向 監視委によれば、平成29事務年度の開示規制違反はすべて、不適正な会計処理による有価証券報告書等の虚偽記載であり、架空売上の計上、売上の過大計上など、売上をめぐる不適正な会計処理が目立ったということである。 監視委は、開示検査では、開示規制違反が行われた会社自身による適正な情報開示を行うための実効性をもった体制整備が進められることを期待し、その開示規制違反が発生した根本原因及び背景について検査対象会社の経営陣幹部と議論を行い、認識の共有を図ってきた結果、開示規制違反の背景として、平成29年10月公開の事例集と同じく、 を挙げるとともに、次のような原因による開示規制違反を把握したということである。 事例集の最初に《証券取引等監視委員会からのメッセージ》として、事例集の目的と会計監査人に対する監視委の期待が述べられている。引用して、本稿を締め括りたい。 平成29年10月公開の事例集における「メッセージ」との大きな違いは、いずれも、上場会社経営陣との活発なコミュニケーションを通じて、開示規制違反の未然防止・再発防止を図っていきたいと監視委の姿勢が強調されていることである。 (了)
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日本の企業税制 【第59回】「各府省庁の要望事項からみた「平成31年度税制改正」の課題」
日本の企業税制 【第59回】 「各府省庁の要望事項からみた「平成31年度税制改正」の課題」 一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴 〇各府省庁からの税制改正要望事項の概況 8月末に、各府省庁からの平成31年度税制改正要望が出揃った。今回が「平成」最後の税制改正となる。 今回の要望項目数は、単純合計で、国税228項目、地方税230項目、重複排除ベースで、国税150項目、地方税157項目であった。なお、廃止・縮減項目数は国税・地方税ともに単純合計2項目、重複排除ベース1項目であった。 今回、廃止・縮減項目として挙げられたのは、国土交通省及び復興庁が挙げたもので、「特定被災区域内において都市計画事業に準ずる事業として行う一団地の津波防災拠点市街地形成施設の整備に関する事業のために土地等を譲渡した場合における所得の特別控除の廃止(所得税、法人税、個人住民税、法人住民税、事業税)」であった。 〇消費税率引上げに伴う需要平準化策 来年(2019年)10月1日に消費税率の引上げを控える中、6月15日に閣議決定された「経済財政運営と改革の基本方針2018」(いわゆる骨太方針)では、消費税率の引上げに併せて需要変動の平準化について「万全を期す」こととされ、具体的には、①消費税率引上げ分の使い道の見直し、②軽減税率制度の実施、③駆け込み・反動減の平準化策、④耐久消費財(自動車、住宅など)対策が掲げられていた。 特に④については、「税率引上げ後の自動車や住宅などの購入支援について、需要変動を平準化するため、税制・予算による十分な対策を具体的に検討する」こととされている。 〇自動車車体課税 上記のように消費税率引上げに際しての需要平準化策として自動車に関する税制のあり方が検討課題となっているが、それにとどまらず、今回の税制改正は、自動車車体課税についてのヤマ場となる。 消費税率の10%引上げ時期の延期に伴い、「消費税率引上げ時期の変更に伴う税制上の措置」(平成28年8月2日、自由民主党・公明党)において、「自動車取得税の廃止時期並びに自動車税及び軽自動車税における環境性能割の導入時期をそれぞれ平成31年10月に延期する」こととされている。 これを前提に、平成29年度与党税制改正大綱で、自動車税及び軽自動車税のグリーン化特例(軽課)については、「平成26年度及び平成28年度与党税制改正大綱に沿って必要な検討を行い、平成31年度税制改正において具体的な結論を得る」とされ、また とされているからである。 こうしたことから、経済産業省の要望では、自動車税の引下げ(軽自動車税の負担水準を基準とした税率引下げ)、自動車重量税の当分の間税率の廃止、消費税率引上げによる需要変動を平準化するための措置、廃止までの自動車取得税及び自動車重量税のエコカー減税、自動車税及び軽自動車税のグリーン化特例の延長が掲げられている。 国土交通省の要望でも、平成29年度与党税制改正大綱等に沿って、簡素化、自動車ユーザーの負担の軽減、グリーン化等を図る観点からの見直しが盛り込まれている。 〇住宅税制 自動車と並んで、消費税率引上げに伴う需要平準化策の対象として挙げられているのが「住宅」である。 前回(2014年4月)の消費税率引上げ時にも、住宅ローン減税の拡充等の措置が講じられるとともに、住宅着工を下支えするため、省エネ住宅に関するポイント制度の実施等の対策が追加的に講じられたところである。 こうしたことから、国土交通省要望では、住宅取得者の負担の増加等を勘案しつつ、住宅の取得について、住宅ローン減税の拡充等の税制措置及び財政措置を含めた総合的かつ十分な対策を講ずるよう求めている。 〇中小企業税制 31年度改正では、中小企業税制の多くが期限切れを迎える。こうしたことから、経済産業省は「地域経済の活性化、中小企業・小規模事業者の生産性向上」の観点から、中小企業税制の延長・拡充を多数盛り込んでいる。 具体的には、中小企業投資促進税制や商業・サービス業・農林水産業活性化税制、中小企業者等の法人税率の特例、中小企業等の貸倒引当金の特例の延長、中小企業経営強化税制の拡充・延長、地域未来投資促進税制の拡充・延長である。 また、30年度改正で中小法人の事業承継税制の10年間の特例が設けられたが、平成30年度与党税制改正大綱で検討課題として残されていた個人事業者の事業承継について負担軽減措置の創設が盛り込まれている。 〇研究開発税制 法人税関係の租税特別措置では最大規模となる研究開発税制の上乗せ措置が来年3月末で期限切れを迎える。 経済産業省の要望では、研究開発税制に関しては、総額型(試験研究費総額に係る控除制度)について、税額控除の上限(現行25%)の引上げや、税額控除率の最大値(現行10%、2018年度末までの時限措置で14%)のさらなる引上げ、「オープンイノベーション型」については、ベンチャー企業や中小企業と共同研究を行った場合の税額控除率(現行:特別試験研究費の20%)の引上げを求めている。研究開発税制は経済産業省のみならず、総務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、国土交通省、環境省、防衛省も共同要望している。 研究開発税制と併せて、経済産業省の要望では、生産性革命の実現に向けたイノベーションの促進の観点から、ベンチャー企業の成長に必要な国内外の高度人材を確保するためのストックオプション税制の拡充、新設法人への繰越欠損金制度の拡充(100%控除できる期間を10年目まで延長)を求めている。 〇資産課税等 金融庁の要望では、家計の安定的な資産形成の実現の観点から、NISA制度(一般・ジュニア・つみたて)の恒久化、つみたてNISAの制度年限(2037年)の延長、NISA口座保有者の海外転勤等による一時的出国の場合の口座利用の継続、相続した株式の譲渡における相続税(株式分)の取扱いに関する見直し(売却期間の制限の撤廃)、前回紹介した教育資金一括贈与に係る贈与税の非課税措置の恒久化・拡充などが盛り込まれている。 この他、金融庁は、国際課税における過大支払利子税制について、BEPSの観点からの見直しを行うに際して、設備投資等の企業活動への影響を踏まえ金融機関からの借入れへの配慮を求めるとともに、収益のほとんどが受取配当金である金融持株会社への影響への配慮も求めている。この点、経済産業省の要望でも、企業に過度な負担を与えないような制度構築を求めている。 (了)
