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養子縁組を使った相続対策と法規制・手続のポイント 【第23回】「遺族年金と養子縁組」
養子縁組を使った相続対策と 法規制・手続のポイント 【第23回】 「遺族年金と養子縁組」 弁護士・税理士 米倉 裕樹 問 題 【問題①】 A男とB女の婚姻後、子Cが生まれたが、その後、A男が死亡し、B女は遺族基礎年金と遺族厚生年金を受給していた。その後、B女がD男と再婚し、D男と子Cが養子縁組を行うことで、B女または子Cの遺族基礎年金、遺族厚生年金はそれぞれどうなるか。 【問題②】 A男とB女の婚姻後、子Cが生まれたが、その後、A男とB女は離婚し(子Cの親権者はB女)、D男と再婚したものの、その後、D男が死亡した場合、B女または子Cは遺族基礎年金、遺族厚生年金を受けることができるか。D男と子Cが養子縁組を行っていた場合はどうか。 【問題③】 A男とB女の婚姻後、子Cが生まれたが、その後、A男とB女は離婚し(子Cの親権者はA男)、D女と再婚したものの、その後、A男が死亡した場合、D女または子Cは遺族基礎年金、遺族厚生年金を受けることができるか。D女と子Cが養子縁組を行っていた場合はどうか。 回 答 【問題①】 子Cは遺族厚生年金を受給でき、その後、子CがB女と別居するなどして生計同一関係が解消された場合には、子Cは遺族基礎年金も受給できる。 【問題②】 子CとD男とが養子縁組を行っていた場合、B女は遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給権者となる。その後、子CがB女と別居するなどして生計同一関係が解消された場合には、子Cのみに遺族基礎年金、遺族厚生年金が支給される。他方で、子CとD男とが養子縁組を行わずにD男が死亡した場合には、B女は遺族基礎年金の受給権者とはならないが、遺族厚生年金の受給権者とはなる。 【問題③】 D女と子Cが養子縁組を行っていたか否かを問わず、D女は遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給権者となる。その後、子CがD女と別居するなどして生計同一関係が解消された場合には、子Cのみに遺族基礎年金、遺族厚生年金が支給される。 解 説 [1] 遺族年金の概要 1 遺族基礎年金とは 遺族基礎年金は、国民年金に加入中の者が死亡した場合、その他一定の要件を満たした場合に、死亡した者によって生計を維持されていた子(18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にあるか、または20歳未満であって障害等級に該当する障害の状態にあり、かつ、現に婚姻をしていないこと。以後同じ)のある配偶者、または子に支給される(国法37の2)。 遺族基礎年金は、遺族となった子を養育するための年金といえるため、子のない配偶者には受給権はなく、生計を同じくしている子がいる配偶者に遺族基礎年金が支給される。また、子に対する遺族基礎年金は、配偶者が遺族基礎年金の受給権を有するとき、または生計を同じくするその子の父もしくは母があるときは、その間、その支給が停止される(国法41②)。 そのため、子が別居するなどして親との生計同一関係が解消された場合には、子への支給停止が解除され、子に遺族基礎年金が支給され、親の受給権は失権する(国法40②・39③五)。 2 遺族厚生年金とは 遺族厚生年金は、厚生年金に加入中の者が死亡した場合、その他一定の要件を満たした場合に、死亡した者によって生計を維持されていた遺族(配偶者、子、父母、孫または祖父母)に支給される(厚法59)。 子に対する遺族厚生年金は、配偶者が遺族厚生年金の受給権を有する期間、原則としてその支給が停止され(厚法66①)、配偶者に対する遺族厚生年金は、配偶者が国民年金法に基づく遺族基礎年金の受給権を有しない場合であって子が当該遺族基礎年金の受給権を有するときは、原則としてその間、その支給が停止される(厚法66②)。 そのため、配偶者、子との間における受給権者の優先順位は、子のある配偶者、子、子のない配偶者となる。 3 受給権の失権 遺族基礎年金、遺族厚生年金の受給権がある子は、養子になったときには失権するが、直系血族、直系姻族との養子縁組の場合は失権しない(国法40①三、厚法63①三)。 そのため、子が親の再婚相手の養子となった場合、または祖父母の養子となった場合でも子の受給権は失権しない。また、親が再婚しても子の受給権が失権することはない。 遺族基礎年金、遺族厚生年金とも、受給権者が婚姻をしたときは失権する(国法40①二、厚法63①二)。 [2] 【問題①】について B女は、死亡した者(A男)によって生計を維持されていた子(子C)のある配偶者、死亡した者(A男)によって生計を維持されていた配偶者にそれぞれ該当する結果、遺族基礎年金及び遺族厚生年金の受給権者である。子Cに対する遺族基礎年金は、B女が遺族基礎年金、遺族厚生年金の受給権を有する間、その支給が停止される。 ただし、その後、B女がD男と再婚することでB女の遺族基礎年金、遺族厚生年金はいずれも失権し、子Cは、B女の遺族厚生年金が失権することで、支給停止が解除され遺族厚生年金を受給できるものの、遺族基礎年金は、「生計を同じくするその子の父または母」、すなわちB女がいるため支給停止のままである。その後、子CがB女と別居するなどして生計同一関係が解消された場合には、子Cは遺族基礎年金も受給できる。 なお、遺族基礎年金、遺族厚生年金の受給権がある子は、養子になったときには失権するが、直系血族、直系姻族との養子縁組の場合は失権しないため、子Cが直系姻族となるD男と養子縁組を行った場合でも、上記結論は同様である。 [3] 【問題②】について 子CとD男とが養子縁組を行っていた場合、B女は、死亡した者(D男)によって生計を維持されていた子(子C:養子縁組によりD男の子となる)のある配偶者、死亡した者(D男)によって生計を維持されていた配偶者にそれぞれ該当する結果、遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給権者となる。 子Cに対する遺族基礎年金は、B女が遺族基礎年金の受給権を有する間、その支給が停止される。その後、子CがB女と別居するなどして生計同一関係が解消された場合には、子Cのみに遺族基礎年金、遺族厚生年金が支給される。子Cの遺族基礎年金が失権したとき(18歳に達する日以後の最初の3月31日が経過したとき等)には、B女の遺族厚生年金支給停止が解除され、B女に遺族厚生年金が支給される。 他方で、子CとD男とが養子縁組を行わずにD男が死亡した場合には、B女は死亡した者(D男)によって生計を維持されていた子(子C)のある配偶者には該当しない結果(養子縁組がなされていないためD男の子とはいえない)、遺族基礎年金の受給権者とはならない。ただし、死亡した者(D男)によって生計を維持されていた配偶者に該当するため、遺族厚生年金の受給権者とはなる。 [4] 【問題③】について D女は、死亡した者(A男)によって生計を維持されていた子(子C)のある配偶者、死亡した者(A男)によって生計を維持されていた配偶者にそれぞれ該当する結果、遺族基礎年金と遺族厚生年金の受給権者となる。B女は既にA男と離婚しているため遺族年金の受給権は発生しない。 【問題②】と異なり、子CはA男の子である以上、国民年金法第37条の2の要件を満たすこととなり、子CがD女と養子縁組をしているかどうかは関係ない。子Cに対する遺族基礎年金は、D女が遺族基礎年金の受給権を有する間、その支給が停止される。 (了)
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消費税の軽減税率へ対応したシステム改修のポイント
消費税の軽減税率へ対応した システム改修のポイント 公認会計士 坂尾 栄治 ▷過去の消費税率引上げとシステム改修 消費税は過去3%、5%、8%と段階的に税率が引き上げられてきた。各社はそれに合わせて、会計システムを中心としたシステム改修を行ってきた。 消費税が初めて導入されたときに構築したシステムは、税率が変更されることを考慮せずに開発されたものもあり、そのようなシステムは3%から5%に税率が上がったときに、多大なコストと期間をかけなければ改修できないものもあった。 単純に特定の日からすべての取引に対して税率を変更すれば済むのであれば、システムの対応もさして難しいものではないが、新たな消費税率が適用されてしばらくは、新税率適用前の旧税率が適用される取引や、経過措置で旧税率での処理が認められる取引等があり、新税率と旧税率が併存することとなる。 この「取引日や取引の性質に応じて複数税率が併存するケース」等は、もともとのシステムの作りが当該事象を想定した設計になっていない場合、システムの設計を大幅に変更し、作り直しといっても過言ではないレベルでの改修が必要となる場合もある。 とはいえ、すでに消費税率変更は過去に2回行われており、消費税率の変更がシステムに及ぼす影響も把握されているため、今市販されているシステムのほとんどは、今後の消費税率変更への対応が比較的スムーズに行えるように作られていると考えられる。 平成29年4月に予定されている消費税率変更も、今までと同様のものであれば、さして問題にする必要はないと考えられるが、今回適用される予定の軽減税率は、システムで対応する上で比較的難易度の高いものと考えられる。 ▷一物二価への対応が想定外のシステムも 軽減税率の対象品目として「酒類」と「外食」を除いた飲食料品と新聞があげられている。特に飲食料品については、軽減税率が適用される範囲の線引きについての議論が活発に行われている。 現在は、料理酒やウイスキーボンボンは「酒類」に入るのかとか、スーパーのイートインで食べると「外食」になるのかといった議論がなされているが、範囲の線引きについては、ルールが明確になれば、システム的な対応はさして難しいものではない。 システム的に困るのは、同じ商品で異なる税率になるものである。 例えば、ハンバーガー屋でハンバーガーを注文した場合がこのケースに該当する。 ハンバーガーを店内で食べる場合とテイクアウトする場合とで税率が異なる。ハンバーガーを店内で食べる場合は軽減税率が適用されない外食に該当し、テイクアウトする場合は外食に当たらないこととなり軽減税率の対象となる。 これらは、商品は全く同じであるため、例えばレジに「ハンバーガー店内」「ハンバーガーテイクアウト」という2つのボタンを付けるといった対応が必要となる。 人が登録するレジであればまだ人手で対応できるが、POSレジのようにバーコードを読むものはどうするのだろうか。バーコードを「店内用」と「テイクアウト用」の2種類貼っておくとか、バーコードを読む前にレジで「店内ボタン」か「テイクアウトボタン」を押すといった対応が必要となる。 ただし、ハンバーガーを2つ買って、1つを店内で食べ、もう1つを持ち帰る場合には、先にあげた対応方法ではうまくいかなそうである。 これは実質的な一物二価であり、これまでのレジシステムではほとんど想定されていないものと推定できる。 ▷仕入税額控除の対応はインボイスまで見定める 仕入税額控除については、平成33年4月1日にインボイス制度(適格請求書等保存方式)が導入されるまでは、区分記載請求書等保存方式が採用される。 どちらの方式でも、異なる税率の製商品を分けて表示する必要があり、今まで使用していた請求書では対応できない可能性が高い。 複数の製商品を受注した時に、一品一品消費税額を計算しているようなシステムであれば、請求書の出力フォーマットを改修する程度で対応できるかもしれないが、受注した製商品すべてを合計してから消費税率を乗じているような場合には、思った以上に改修の手間がかかる可能性がある。 さらにやっかいなのは、数年後にインボイス制度へ変更される点である。 つまり区分記載請求書等保存方式に対応しても、数年後にはインボイス制度に合わせて再び改修をすることになる。 これについては、今の時点で、区分記載請求書等保存方式にもインボイス制度にも対応できるようシステムを改修することで解決すると思われる。 ▷影響を受けるシステムと改修の規模は? 軽減税率の適用の影響を受けるのは、レジシステムや販売管理システム、受発注システムと考えられる。 持ち帰りサービスのある外食店では、レジシステムで店内とテイクアウトの区分等ができる機能が必要となる。販売管理システムやその周辺システムについても改修が必要なケースがあると思われる。 持ち帰りサービスのある外食店では、同一製商品でありながら税率が異なるケースがあるため、製商品の品番と税率が1対1対応ではなくなる。品番に適用税率をあらかじめ登録しておくような仕組みでは、1製商品に対して1つの税率しか適用できないため、軽減税率には対応できない。例えば、品番に店内・テイクアウト区分をつなぎ合わせて税率を判定するような製商品マスタに変更する必要が出てくる可能性がある。 このように製商品マスタに係る改修が行われる場合、販売管理システムやその周辺システムへ広く影響が出る可能性がある。そのため、製商品マスタに係る改修が想定される場合には、大がかりな改修になるケースもありうると覚悟しておく必要がある。 受発注システムについては、見積書や発注書、請求書のフォーマット変更が必要となってくる。また、取引先間でEDI/EOS等の電子的な受発注システムを利用している場合にも、取引先間の取り決めに従ったシステム改修が必要となる。 特に、取引先ごとにフォーマットが異なる場合には、修正対象となる見積書や発注書、請求書の数が膨大となり、システムの改修に多くの期間と費用を要する場合があるため、早めに状況を把握する必要がある。 ▷システム開発ベンダに確認すべき事項とは? パッケージシステムを使って業務を行っている場合には、通常はパッケージシステムの開発ベンダが法制度対応を行ってくれる。 今回の軽減税率についても、通常の開発ベンダであれば法制度対応の1つとして改修する範囲のものであり、保守契約を結んでいれば無償で対応してくれる可能性も高い。ただし、改修の規模によっては有償での対応となる場合もある。 まずは、開発ベンダに軽減税率に対応する予定があるかを確認すべきであるが、開発ベンダから「軽減税率に対応する」との回答を得れば一安心かというと、必ずしもそうではない。 軽減税率に対応して改修したシステムがいつ提供されるのかを確認しておくのは当然であるが、どのような方法で軽減税率に対応するのかも知っておく必要がある。 例えば以下のようなことを確認し、自社の運用に合うかを検討した方がよい。 また、現在のシステムを改修後のシステムに変更する場合のコスト、変更に際して自社の担当者が作業を行う必要があるか否か、作業を行う必要がある場合どの程度の期間をかけて実施する必要があるのか、その間はシステムを停止するのかも確認しておく必要がある。 テストを実施したり、データを移し替えたりする必要がある場合には、想像以上に期間を要する場合もあるので、早めに確認しておくことが肝要である。 また、改修後のシステムが現在の環境(今使っているサーバーやPC、レジ)で稼働するのかも確認しておく必要がある。新たにレジを購入する必要がある場合などは、店舗数が多い会社の場合、多額の費用がかかることとなる。 ▷自社開発システムの場合 自社開発システムの場合には、市販のシステムを利用している場合の注意点に加えて、開発ベンダが行っている作業も自社で行う必要がある。軽減税率が影響するシステムの範囲を調査し、軽減税率にどのように対応するか方針を決め、仕様を決定しシステムを改修する必要がある。 時として、自社システムの改修を行うことが期間や費用等の関係で合理的でないと判断された場合には、パッケージシステムへの置き換えを検討することも必要となってくる。 -まとめ- 軽減税率の適用によるシステム改修は、軽微な改修では済まない可能性が高いため、余裕をもって準備をする方がよい。 大きくは以下のような流れになると考えられる。 (了)
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『デジタルフォレンジックス』を使った企業不正の発見事例 【第4回】「カルテル、贈収賄などの規制当局調査に使われるデジタルフォレンジックス」
『デジタルフォレンジックス』を使った 企業不正の発見事例 【第4回】 「カルテル、贈収賄などの規制当局調査に使われる デジタルフォレンジックス」 PwCアドバイザリー合同会社 マネージャー 吉田 卓 1 はじめに 第4回では、価格カルテルや贈収賄事件などにおける、規制当局調査対応におけるデジタルフォレンジックスに関して述べさせていただく。なお、ここでいう規制当局とは、米国司法省(DOJ)や米国証券取引委員会(SEC)など、海外の規制当局を前提としている。 ここ数年、日本企業が価格カルテルや贈収賄事件などに関与し、国内外の規制当局に摘発される事件が急増している。特に価格カルテル事件に関していうと、2010年以降国内の自動車部品メーカー約30社が摘発され、50人以上の会社役員を中心とする個人が起訴された。さらにその内の約30名が実際に米国の刑務所に収監されている。また、贈収賄事件では昨年9月に、国内大手電機メーカーが約23億円でSECと和解している。 海外の規制当局、特に米国のDOJやSECは、外国企業に対する取り締まりを強化しており、日本企業にとっても注意が必要である。本稿では、実際に価格カルテルや贈収賄事件において企業が捜査対象になった際の、主にデジタルフォレンジックスを使った証拠開示の実務と留意点に関して解説する。また、平時からの対策についても参考にしていただければ幸いである。 2 対岸の火事ではない、海外規制当局による調査とその激しさ 規制当局による捜査の多くは、内部告発や競合他社からの情報提供がトリガーになると言われている。 贈収賄事件に関して言えば、SECは内部告発サイトを立ち上げており、内部告発者の情報提供によって起訴および制裁金の徴収に至った場合は、その制裁金のうちの最大3割が内部告発者に報奨金として支払われる制度を設けることで、不正行為の表面化を促している。 当局はさまざまな手段を使って情報収集を行っており、各国の当局同士で緊密に連携しているとも言われている。 DOJによる調査は通常、日本企業の米国子会社や米国支店から着手される。ある日突然、FBIの捜査官がサピーナ(※1)を持参して米国子会社を訪れ、立入調査を行う場合もある。さらに、通常、国際カルテル事件では、日本、アメリカ、EUの当局は連携しほぼ同時に捜査に着手するため、会社はパニック状態に陥る場合が多い。日本の本社には、公正取引委員会による立入調査が行われることになる。 (※1) サピーナ:大陪審捜査において裁判官が発する令状であり、資料や電子データの提出を求めるものと証言を求めるものとがある(木目田裕「米国反トラスト法における日本企業が関わる刑事事件について」月刊公正取引No.777(2015年7月号))。 サピーナでは、日本本社にある資料や電子データを、米国子会社を通じて当局に提出するように求められる。サピーナに従わない場合は法廷侮辱罪等に問われることになるため、日本本社側の基本姿勢としては、なるべく早く関連証拠を当局に開示するなどし、当局への協力姿勢をアピールすることになる。具体的には、関係者の電子データ(Eメール、ドキュメントなど)、手書きのノートや手帳などの資料をレビューし、関連するものをすべて当局に開示する。 価格カルテルのような競争法違反に関わる規制当局の捜査は、特にスピードが重要となる。なぜならば、価格カルテルの捜査にはリーニエンシー(※2)と呼ばれる司法取引制度があり、最初に不正行為を申告した企業は刑事訴追および制裁金についても免除される場合があるからである。 (※2) 課徴金減免制度(リーニエンシー):談合やカルテルを自主的に申告して調査に協力すれば、課徴金の免除や減額が受けられる制度。日本においても2006年1月施行の改正独禁法で導入された。公取委の立ち入り検査前に、最初に申請した会社は課徴金の全額が免除され、刑事告発の対象からも外れる。2番目は50%、3番目は30%が減額される。立ち入り後も3社まで30%の減額が受けられる。(2008年11月11日 朝日新聞 夕刊 2社会) 制裁金が数十億円単位で減免されるため、我々のようなフォレンジックサービスを提供するアドバイザリーファームはもちろんのこと、企業の担当者や弁護士は司法取引の機会を失しないよう、文字通り必死に対応することになる。 当局との司法取引では、つまるところ罰則の減免と引き換えに、自社が事件に関与していたことを認めつつ、競合他社もしくはまだ捜査対象となっていない他製品においても、価格カルテル行為があったことを示す証拠を自主的に開示するものである。 これらの司法取引制度がよく機能していることは、残念ながら昨今の日本の自動車部品メーカーに対する価格カルテル捜査において証明されている。 当初は自動車部品の中でもワイヤーハーネスという特定の部品に関して、5社程度を対象に捜査が開始されたが、その後ベアリング、コンプレッサーなどにも捜査が波及し、最終的には30社を超える日本企業が摘発され、合計で2,000億円を超える課徴金が科される結果となった。 3 規制当局調査におけるデジタルフォレンジックス 本章では、実際に規制当局による捜査を受けることになった際の、証拠開示の実務について解説する。 サピーナが送達された、もしくは同業他社にサピーナが送達されており、自社にもいつ当局のメスが入るか時間の問題という段階で、まず着手するべき事項は、関係者への訴訟ホールド通知とその徹底である。 訴訟ホールドとは、関連文書の改ざんや破棄が行われないように、各個人に通知し確認を取るとともに、各種ITシステムのバックアップのリサイクルなどを停止し、バックアップデータの消去や上書きが起こらないようにすることである。 単純なプロセスに聞こえるが、なかなか徹底できていない企業が多い。 訴訟ホールドをおろそかにしていて、後になって関係するメールが担当者によって削除されていたということがわかった場合、極めて深刻な問題に発展する場合がある。特に米国の刑事事件における証拠の改ざんや破棄については、司法妨害罪に問われることがあり、その場合は競争法違反とは別途、証拠の破棄を行った個人に対して重い刑事罰が科されることになる。 証拠の破棄が当局の知ることに至った場合には、その後の当局との交渉などにも極めて悪い影響を与えることになるため、当局による捜査の際には証拠となるデータの改ざんや破棄などは決して起きてはならない。 訴訟ホールド後は、実際にデータをコピーし専用のドキュメントレビュープラットフォームにアップロードし、キーワードなどによってレビュー対象とする文章を絞り込んでいく。 キーワードについては、競合先や製品の名前、または競合先との会合の呼び名(例:OO会)などを使用することになるが、レビューの途中で新たなキーワードが発見される場合も多いため、キーワードに漏れが出ないよう注意する必要がある。また、網羅的で迅速な調査を実施するため、機械学習機能を応用した機械レビューを採用する案件も増えてきている。 データの絞り込みが完了したら、弁護士事務所や企業の法務、コンプライアンスチームで構成されるドキュメントレビューチームが実際にEメールなどの文書の内容をレビューし、開示対象とすべき文書を特定していく。 調査の対象となる個人は平均で20名から多くとも50名程度であるが、リーニエンシーなどの司法取引を行う前提で調査を進める場合などは、当局にとって付加価値の高い情報をなるべく多く、迅速に提供することが重要となるため、調査範囲を自主的に敢えて広げるようなケースもある。筆者が担当した案件では、約250名のメールデータを収集、レビューしたケースがあった。その際には、営業担当者の手帳や名刺までも証拠として保全したのを覚えている。 ご想像の通り、ドキュメントレビューには膨大な費用と工数がかかる。1GBあたりのファイル数を4,000ファイルとして、対象者一人あたり5GBのメールを保持していたとすると、1人あたり2万件のファイルを処理する必要がある。キーワード検索や重複の排除などを行いレビューの対象となるファイルの数を絞り込むとはいえ、最終的には5万件から10万件のファイルをレビューすることになるケースが多い。 贈収賄案件においても、実務的には価格カルテル案件に近い内容になる場合が多い。ただし、贈収賄の調査などにおいては、メールなどの文書もさることながら、会計システム上の支払データも重要な証拠となる。そのため、贈収賄事件における調査においては、注文書(PO)や請求書のデータを会社の会計システムより抽出し、データ分析を実施するケースがある。データ分析の結果、リスクの高い支払などを特定し、異常がないか事実関係などを細かく調べていくためである。 このように、膨大なデータから、ごくわずかな証拠となるファイルやメール、会計データを迅速に特定するために、デジタルフォレンジックスの技術が必要となるのである。 4 平時からの対策およびまとめ ここまで有事の対応に関して述べてきたが、もちろん平時からの対策も重要である。 規制当局による調査などの有事の際に、企業を守ることに直結するのは平時からのコンプライアンス体制の構築と改善である。企業のコンプライアンス体制は、規制当局が制裁内容を決定する際に考慮される1つの要素だからである。実際に、高度なコンプライアンスプログラムを持つ大手投資銀行が、その中国オフィスの社員が贈賄事件に関与した際に、企業としての刑事訴追を免れたという事例がある。 特に、価格カルテルや贈収賄などの主要なコンプライアンスリスクに関してはDOJやSECがガイドラインを出しているので、是非参考としていただきたい。 日本企業のコンプライアンスプログラムの特徴として、規定類は一応一通り整備されているが、運用、モニタリングが十分に実施されていないという状況をよく目にする。この点に関しては、海外の規制当局の評価は極めて厳しいものになることが予想されるため、注意する必要がある。 規制当局は、企業のコンプライアンスプログラムがどのように現場で運用されていて、それらの運用状況が本社のコンプライアンス部にどのようにモニタリングされているのかを重要視している。有事の際の証拠開示の対応もさることながら、平時からのコンプライアンスプログラムの改善活動も、危機の際に企業を救うことになるのでここで強調させていただきたい。 なお、贈収賄リスクに関してはPwCアドバイザリー合同会社から「贈収賄リスク診断-贈収賄リスクを減らすためのガイダンス-」という冊子を無料配布しているので、参考としていただければ幸いである。 (了)
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〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例4】クックパッド株式会社「代表執行役の異動に関するお知らせ(2016.3.24)」
〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例4】 クックパッド株式会社 「代表執行役の異動に関するお知らせ」 (2016.3.24) 事業創造大学院大学 准教授 鈴木 広樹 1 今回の適時開示 今回取り上げる適時開示は、クックパッド株式会社(以下「クックパッド」という)が平成28年3月24日に開示した「代表執行役の異動に関するお知らせ」である。代表執行役が穐田誉輝氏から岩田林平氏に交代することになったため、それに関して開示している。なお、同社は指名委員会等設置会社であるため、同社の代表は、「代表取締役」ではなく「代表執行役」である。 この開示も、【事例2】で取り上げたセーラー万年筆株式会社「代表取締役および役員の異動に関するお知らせ」と同様に、「異動の理由」には、「当社の今後の事業規模拡大や経営安定化及び経営体制の一層の強化と充実を図るためです。」といった記載があるだけであり、それ自体は何の変哲も無い極めて平凡な開示といえるものである。 2 なぜ交代? 穐田氏は、平成24年、クックパッドの創業者である佐野陽光氏に代わって同社の代表執行役に就任したのだが、穐田氏が代表執行役に就任した後、同社の業績は大幅に向上していた。そうであるにもかかわらず、なぜ穐田氏は今回代表取締役を退任しなければならなかったのだろうか。 同社が、平成24年3月30日、佐野氏から穐田氏への代表執行役交代に関して開示した「代表執行役の異動に関するお知らせ」の「異動の理由」には、次のように記載されていた(「異動の理由」としては、珍しく詳細な記載である)。 佐野氏は穐田氏に同社の経営を託したように見えるが、「創業者である佐野ともよく連携を取りながら」という記載があることから、佐野氏が穐田氏に期待したのは、あくまで自身の意に沿った経営だったのかもしれない。 3 特別委員会 クックパッドは、平成27年11月27日に「特別委員会の設置に関するお知らせ」を、そして、平成27年12月18日、「特別委員会の勧告に関するお知らせ」を開示した。 ①「現在遂行中の経営計画を推し進める事業戦略上の選択肢」と②「現在遂行中の経営計画を段階的に見直し、会員事業と海外事業に経営資源を集中していくことを中心とする事業戦略上の選択肢」について、「公平かつ中立な立場から精査・評価・検討を行い、当社の企業価値の最大化に資すること及び少数株主の利益を正当に守ること」を目的として、同社の社外取締役で構成される特別委員会を設置したのだが、その特別委員会としては、①案を実施すべきという結論に達し、それを同社の取締役会に勧告したところ、承認されたという内容である。 これらの開示だけを見ても、わざわざ特別委員会を設置した理由はわからないだろう。その理由は、同社が平成28年1月19日に開示した「株主提案権の行使に係る書面の受領に関するお知らせ」によって明らかになった。 その開示は、佐野氏を含む4名の株主から、平成28年3月開催予定の定時株主総会における株主提案権の係る書面を受領したというものであり、その提案内容は、佐野氏を含む8名(穐田氏は含まない)を取締役候補とするというものであったのだが、特別委員会設置の経緯についても、次のように記載されていた。 穐田氏による①「現在遂行中の経営計画を推し進める事業戦略上の選択肢」を佐野氏が否定し、②「現在遂行中の経営計画を段階的に見直し、会員事業と海外事業に経営資源を集中していくことを中心とする事業戦略上の選択肢」を主張したため、それを検討するために特別委員会が設置されたのである。 しかし、特別委員会は佐野氏の②案を否定したため、同社議決権を43.581%持つ同社筆頭株主である佐野氏は、自身が選んだ者を取締役候補とする株主提案を行うことになった。取締役を自身の意に沿う者で固めることにより、②案を実施しようとしたのである。平成28年1月19日の開示によると、株主提案権の行使に係る書面には、提案の理由として、次のように記載されていたとのことである。 4 結末 クックパッドは、平成28年2月5日、佐野氏との間で取締役選任議案の一本化に関して基本的な合意に至ったとする「取締役選任議案に関する基本的合意について」を開示した後、平成28年2月12日に「当社第12回定時株主総会における取締役選任議案の決定及び株主提案の取り下げに対する同意に関するお知らせ」を開示した。 佐野氏らによる株主提案は取り下げられ、同社側と佐野氏ら側の双方の意向を調整した取締役候補が決められたのだが、同社議決権を43.581%持つ佐野氏の意向が反映され、取締役候補9名のうち6名は、佐野氏らによる株主提案で取締役候補とされていた者となった。 そして、平成28年3月24日に開催された定時株主総会において、その取締役選任議案は承認され、同日、今回取り上げた「代表執行役の異動に関するお知らせ」が開示されることとなった。新任代表執行役の岩田氏は、佐野氏らによる株主提案で取締役候補とされていた人物である。 同社は、平成28年3月24日、「新役員体制に関するお知らせ」も開示している。穐田氏も取締役に選任され、執行役にも選任されているのだが、上述のとおり、取締役候補9名のうち6名は、佐野氏らによる株主提案で取締役候補とされていた者であり、執行役も、穐田氏、佐野氏、岩田氏の3名で構成されており、完全に佐野氏の意向が反映された経営体制となった。 新任の取締役は株主総会で選ばれた者であり、新任の執行役と代表執行役は、その取締役で構成される取締役会で選ばれた者であるため、手続的にはまったく問題ない。しかし、佐野氏の今回の行為は、上場会社の経営者として適切だったといえるだろうか。43.581%の議決権を持っていたとしても、自分一人だけの会社ではないはずである。上場会社である以上、その経営者はすべての株主の利益に配慮しなければならない。どんなに多くの議決権を持っていたとしても、自分の会社であるかのように振る舞うことは慎まなければならないだろう。 ちなみに、同社は、平成28年3月22日、佐野氏を執行役から解任するとする「執行役の解任に関するお知らせ」を開示しているのだが、その「解任の理由」は、次のように記載されている。 5 社外取締役の意義 会社法においては、上場会社が社外取締役を置いていない場合、定時株主総会において社外取締役を置くことが相当でない理由を説明しなければならないとされ(会社法327条の2)、また、コーポレートガバナンス・コードにおいては、社外取締役を2名以上選任すべきであるとされている(原則4-8.独立社外取締役の有効な活用)。 このように、上場会社における社外取締役の数を増やそうという流れがあるのだが、クックパッドを見ていると、社外取締役の意義について疑問がわいてくる。 社外取締役には、外部からの客観的な視点による経営者の監督が求められるかと思われるが、同社の新任社外取締役6名(新任取締役9名のうち6名が社外取締役)のうち4名が、佐野氏らによる株主提案で取締役候補とされていた者である。 そうした体制で社外取締役に期待される役割を果たすことができるのだろうか。 「取締役9名のうち6名が社外取締役」という点だけ見ると、同社は企業統治先進企業のように見えるのかもしれないが。 (了)
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《速報解説》 平成28年度税制改正を踏まえた法人税申告書(別表)の新様式が公表~役員給与の見直しに係る「譲渡制限付株式に関する明細書」等が新設
《速報解説》 平成28年度税制改正を踏まえた 法人税申告書(別表)の新様式が公表 ~役員給与の見直しに係る「譲渡制限付株式に関する明細書」等が新設 Profession Journal編集部 平成28年度税制改正を受けた法人税申告書(別表)様式を定めた改正法人税施行規則が4月15日付官報号外第89号で公布され、その変更内容が明らかとなった。これら新様式は原則平成28年4月1日以後終了事業年度から適用される。 (※) 官報同号にて地方法人税及び租税特別措置の適用額明細書の様式改正も行われている。 まず昨年度(平成27年度)税制改正で持株比率基準等の見直しが行われた受取配当等の益金不算入制度について、昨年の様式変更では改正前後の取扱いを同じ様式内にまとめたことで明細書が別表8(1)と8(1)付表に分割されたが、関連法人株式等以外の負債利子計算欄が不要となったことなどにより、以下の通り新様式では再び別表8(1)として1つの様式に統合されることとなった。 〈別表8(1) 受取配当等の益金不算入に関する明細書〉 また研究開発税制についても昨年度改正で繰越税額控除限度超過額及び繰越中小企業者等税額控除限度超過額に係る税額控除制度が廃止され当該部分の記載欄が不要となったことで、 6(6) 試験研究費の総額等に係る法人税額の特別控除に関する明細書 6(7) 中小企業者等が試験研究を行った場合の法人税額の特別控除に関する明細書 6(8) 特別試験研究費の額に係る法人税額の特別控除に関する明細書 が次の1枚の様式(別表6(6) 試験研究費の総額に係る法人税額の特別控除又は中小企業者等が試験研究を行った場合の法人税額の特別控除及び特別試験研究費に係る法人税の特別控除に関する明細書)として統合されている。 〈別表6(6) 試験研究費の総額に係る法人税額の特別控除又は中小企業者等が試験研究を行った場合の法人税額の特別控除及び特別試験研究費に係る法人税の特別控除に関する明細書〉 平成28年度税制改正では、雇用促進税制について適用期限が2年延長され対象となる増加雇用者数を地域雇用開発促進法の「同意雇用開発促進地域」内にある事業所における無期雇用かつフルタイムの雇用者に限定されるなど適用範囲が縮減されることとなる一方、一定の調整計算を行うことで所得拡大促進税制との重複適用が可能となっている。この調整計算を行うための様式として新たに「別表6(19)付表 雇用者給与等支給増加重複控除額の計算に関する明細書」が設けられている。 〈別表6(19)付表 雇用者給与等支給増加重複控除額の計算に関する明細書〉 また、既報のとおり改正地域再生法の施行により4月20日から適用がスタートした企業版ふるさと納税のうち法人税額控除に係る様式として「別表6(17) 認定地方公共団体の寄附活用事業に関連する寄附をした場合の法人税額の特別控除に関する明細書」が新設された(地方税関係の様式は未公表)。 〈別表6(17) 認定地方公共団体の寄附活用事業に関連する寄附をした場合の法人税額の特別控除に関する明細書〉 さらに役員給与の見直しが行われ事前確定届出給与に一定の譲渡制限付株式(特定譲渡制限付株式)が含まれることとなり、改正法人税法54条3項の規定により特定譲渡制限付株式等の一株当たりの交付時の価額、交付数などを記載する様式として「別表14(3) 譲渡制限付株式に関する明細書」が設けられている。 〈別表14(3) 譲渡制限付株式に関する明細書〉 なお、減価償却方法の見直しにより建物附属設備及び構築物について定額法が廃止される等の改正が行われているが、各償却方法における償却額の計算方法に変更はないため、様式(別表16関係)の改正は行われていない。 (了) ↓お薦め連載記事↓
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《速報解説》 既成市街地等内の中高層耐火共同住宅建築に係る買換え特例(措置法37条の5)の適用について文書回答事例が公表~一団の土地に建築された2棟の建物の取扱いを3つのパターンで確認~
《速報解説》 既成市街地等内の中高層耐火共同住宅建築に係る買換え特例 (措置法37条の5)の適用について文書回答事例が公表 ~一団の土地に建築された2棟の建物の取扱いを3つのパターンで確認~ 税理士 内山 隆一 以下では、国税庁ホームページに公表された文書回答事例「容積率の異なる地域にまたがる一団の土地の上に2棟の中高層耐火共同住宅が建築される場合における租税特別措置法第37条の5の規定による買換えの特例の適用について」(東京国税局、平成28年3月15日付)について解説する。 1 租税特別措置法第37条の5の規定の概要 (1) 制度の趣旨 三大都市圏の既成市街地等内について、土地の立体化・高度化による土地の有効利用を推進する観点から、既成市街地等内の土地等を譲渡し、その土地等の上に建設された一定のビルやマンションを取得する買換えについて、課税の繰延べが認められている。 (2) 規定の内容 個人が、次表に掲げる譲渡資産を譲渡し、その譲渡年の12月31日までに、次表に掲げる買換資産を取得し、かつ、その取得の日から1年以内に、その買換資産を、一号の買換資産についてはその個人の居住の用(親族の居住の用も可)、二号の買換資産についてはその個人の事業の用又は居住の用に供したとき又はこれらの用に供する見込みであるときは、その譲渡による所得について一定の課税の繰延べが認められる。 2 事前照会の内容 開発業者が、相互に隣接する土地の地権者甲、乙及び丙から土地を買い取り、地上階数3以上の中高層耐火共同住宅を建築する事業を行うにあたり、その土地が【図表1】のように都市計画法の用途地域が異なるため、容積率を最大限活用するため容積率の高い商業地域と容積率の低い準工業地域にそれぞれ【図表2】のように2棟の中高層耐火共同住宅を建築する場合の買換資産の範囲について、租税特別措置法第37条の5の第2号の買換資産の規定が、「当該事業の施行により当該土地等の上に建築された耐火共同住宅」となっていることから、一の開発事業の中で結果的に自らが譲渡した土地ではない土地に建築された建物等を取得した場合に、同条に規定する買換資産の取得として同条の適用が受けられるのかどうかを確認する事前照会があり、これについて事前照会者の見解のとおり買換資産として差し支えないとの回答があったものである。 なお、その確認内容は、次の3つの態様についてのものであった。 3 解 説 土地の開発事業は、通常ある程度の規模の一団の土地が必要となり、その地域が都市計画法の2以上の用途地域にまたがることも少なくない。 また、このような開発事業においては、隣接する複数の地権者が、必ず自らが譲渡した土地上に建てられた建物を取得できるとは限らず、例えば、譲渡した土地がその開発計画の中で結果的に共用の広場などになるようなことも考えられる。 租税特別措置法第37条の5第2号の規定は、土地の立体化・高度化を図ることで、限りある土地を有効活用し、住宅の供給を促進する趣旨のものであることから、ある程度大きな規模の土地開発が行われた際に、「当該事業の施行により当該土地等の上に建築された・・・」という規定をそのまま形式的に捉えるのではなく、「譲渡された土地を含む一団の土地の上に建築された・・・」と解釈し、事前照会のとおり租税特別措置法第37条第2号の規定を適用することができるということが確認されたということである。 なお、本件は、「一の開発事業」において一団の土地に建設された2棟の建物についての取扱いであり、「同一地域内で行われた異なる開発事業」であれば、このような取扱いはできないこととなるので注意したい(一号買換えは同一区域内の他の特定民間再開発事業等により建築された建物についても適用できる)。 (了)
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《速報解説》 ASBJ、「平成28年度税制改正に係る減価償却方法の変更に関する実務上の取扱い(案)」を公表~会計方針の変更に関する取扱い等、今回に限られた緊急対応を提案~
《速報解説》 ASBJ、「平成28年度税制改正に係る 減価償却方法の変更に関する実務上の取扱い(案)」を公表 ~会計方針の変更に関する取扱い等、今回に限られた緊急対応を提案~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成28年4月22日、企業会計基準委員会は「平成28 年度税制改正に係る減価償却方法の変更に関する実務上の取扱い(案)」(実務対応報告公開草案第46号)を公表し、意見募集を行っている。 平成28年度税制改正において、平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備及び構築物の法人税法上の減価償却方法について定率法が廃止され、定額法のみとなる見直しが行われた。 公開草案は、当該税制改正に合わせ、平成28年4月1日以後に取得する建物附属設備及び構築物から減価償却方法を定額法に変更する場合に、当該減価償却方法の変更が正当な理由に基づく会計方針の変更に該当するか否かに関して、必要と考えられる取扱いを緊急に審議したものである。 意見募集期間は平成28年5月23日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 1 会計方針の変更に関する取扱い 会計方針の変更に関する取扱いとして、次の2つの事項が規定されている(公開草案2項、3項)。 公開草案は、取り扱う範囲を平成28年度税制改正に係る減価償却方法の改正に限定して緊急に対応したものであり、今回に限られたものとして提案されている(公開草案15項)。 また、今後、当委員会において、抜本的な解決を図るために減価償却に関する会計基準の開発に着手することの合意形成に向けた取組みを速やかに行うことを前提としている(公開草案14項)。 2 開示 公開草案2項に従って会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う場合、「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(企業会計基準第24号)19項及び20項の定めにかかわらず、次の事項を注記する(公開草案4項、16項)。 Ⅲ 適用時期等 (了) ↓お薦め連載記事↓
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《速報解説》 経済産業省、「株主総会の招集通知関連書類の電子提供の促進・拡大に向けた提言」を公表~招集通知関連書類の電子提供の促進・拡大に向けた制度整備を求める~
《速報解説》 経済産業省、「株主総会の招集通知関連書類の 電子提供の促進・拡大に向けた提言」を公表 ~招集通知関連書類の電子提供の促進・拡大に向けた制度整備を求める~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成28年4月21日、経済産業省の「株主総会プロセスの電子化促進等に関する研究会」は、「株主総会の招集通知関連書類の電子提供の促進・拡大に向けた提言~企業と株主・投資家との対話を促進するための制度整備~」を公表した。 これは、企業と株主・投資家との対話を促進するという観点から、招集通知関連書類の電子提供を促進・拡大させる方向で柔軟に制度を整備していくことを求めるとともに、その具体的な制度設計の在り方や留意点について、企業実務等の観点を踏まえてとりまとめたものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 1 現行の会社法上の規定 株主総会の開催前に、上場会社が株主に提供すべきと会社法上定められている招集通知及び関連書類には以下のものがある。 招集通知及び関連書類の電子提供に関しては、会社法上、①事前の個別承諾による電子提供制度(会社法299条3項及び301条2項等)と②Web開示によるみなし提供制度(会社法施行規則94条1項、133条3項、会社計算規則133条4項、134条4項)の2つがある。 2 提言内容 提言は、法改正も前提とする様々な考え方の議論をもとに、株主の個別承諾なしに書面に代えて電子提供できる情報の範囲拡大等を内容とする「新たな電子提供制度」の整備を求めている。 「新たな電子提供制度」の利用に関しては、次の2つの案が示されたとのことである。 株主からの書面請求への対応に関しては、次の2つの案が示されたとのことである。 このほか、制度設計に際しての留意点や関係者及び対話支援産業への期待が述べられている。 (了)
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《速報解説》 中小監査事務所等からの質問・提案を受け「監査ツール」の改正(公開草案)が公表~経営者による内部統制の無効化リスクへの対応など追加~
《速報解説》 中小監査事務所等からの質問・提案を受け 「監査ツール」の改正(公開草案)が公表 ~経営者による内部統制の無効化リスクへの対応など追加~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成28年4月21日、日本公認会計士協会は「監査基準委員会研究報告第1号『監査ツール』の改正について」(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。 これは、中小監査事務所のツール利用者や品質管理レビューアーから寄せられた質問及び提案に基づき行ったものである。 意見募集期間は平成28年5月20日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 1 経営者による内部統制の無効化リスクへの対応など 「Ⅱ 主要な概念」の「1.リスクモデル」に《(8)リスク・アプローチの限界を補う監査手続》が追加され、経営者による内部統制の無効化リスクへの対応(21-2項)と重要な取引種類、勘定残高、開示等の各々に対する実証手続を立案し実施すること(21-3項)が追加されている(公開草案11ページの図も修正、様式8-3、様式3-14)。 総勘定元帳に記録された仕訳入力、会計上の見積りにおける経営者の偏向、通例でないと判断されるその他の重要な取引などに関する監査手続が規定されている。 2 不正による重要な虚偽表示の兆候を示す状況の識別 以上の他、改正の対象となる様式が示されている。 (了)
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《速報解説》 改正地域再生法が平成28年4月20日に公布、同日施行~企業版ふるさと納税がスタート
《速報解説》 改正地域再生法が平成28年4月20日に公布、同日施行 ~企業版ふるさと納税がスタート Profession Journal編集部 平成28年度税制改正で創設された地方創生応援税制、いわゆる企業版ふるさと納税は、既報の通り、地方公共団体が作成し国から認定を受けた「地域再生計画」に記載された事業(まち・ひと・しごと創生寄附活用事業)に対し、法人が寄附を行った場合、従来の損金算入特例(約3割)に加え、新たに法人事業税・法人住民税及び法人税の税額控除(約3割)が適用され、全体として寄附金額の約6割が軽減される特例措置だ。 (※) 財務省ホームページ 本制度の適用は3月末に公布された改正税法において「地域再生法の一部を改正する法律の施行の日」からと規定されており改正地域再生法の動向が注目されていたところ、このたび4月20日付け官報号外第92にて公布、同日施行された(附則第1条)。なお、同法に係る政令・府令も同日公布・施行されている。 このため企業版ふるさと納税は「平成28年4月20日から平成32年3月31日までに支出した寄附金」が適用対象であることが確定したが、上記の通り国から認定を受けた地域再生計画に記載された事業(まち・ひと・しごと創生寄附活用事業)に対する寄附に限定されているため、本制度適用の検討を行っている企業は、寄附を行う予定の各地方公共団体へ、認定等の進捗状況について確認が必要となる。 また、寄附額の下限が10万円であることや、本社が所在する地方公共団体への寄附は対象外、寄附の代償として経済的利益を伴わないものであることなど、対象となる寄附には要件が付されている。 なお、改正地域再生法の公布・施行に伴い、内閣府(地方創生推進事務局)のホームページでは、「地方創生応援税制(企業版ふるさと納税)活用の手引き」など企業に向けたパンフレット等が公開されている。 ちなみに本制度は国税・地方税にまたがる制度であることから、改正税法においては、下記の条文にそれぞれ分かれて規定されているため、条文内容の確認に当たっては留意されたい(改正地域再生法における本制度の規定は第13条の2)。 (了) ↓お勧め連載記事↓
