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暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第92回】
暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第92回】 東洋大学法学部教授 泉 絢也 (2) ブロックチェーン分析の税務調査利用 ア ブロックチェーン分析による追跡・調査選定 国税庁は、調査選定の場面においては国内CEXに一定の条件に合致する日本の納税者の情報を照会することで、また、個別の調査の場面においては国内CEXに対して調査対象者の情報を照会することで、〔1〕「国内CEXの口座」を把握できる。 そこから特定の口座が〔2〕「海外CEXやプライベートウォレット」と暗号資産のやりとりをしていることを確認した上で、ブロックチェーン分析によって、〔1〕と〔2〕が同一人物によって管理している兆候を把握できれば、〔2〕を管理している者の身元を特定できる。 また、他に同一人物によって管理されていることが想定される海外CEXの口座やウォレットも把握できる。このような“芋づる式”の把握は、トランザクションの時間的連続性、資金移動パターン、入出金の集約構造等を手がかりに行われる(本連載第90回参照)。 このように、ブロックチェーン分析は、調査選定や個別の調査の場面の双方において有効な調査手法である。 注目すべきことに、ブロックチェーン分析が単なる「追跡手段」ではなく、「調査選定の高度化」にも寄与しうる点である。 例えば、国内CEXの情報から出金先アドレスを特定し、そのアドレスが海外CEX、DeFi(ブロックチェーン上で提供される分散型金融サービスであり、DEXはその一類型)、NFTマーケット等と高頻度で接触している場合には、潜在的な申告漏れリスクが高いと評価され、調査対象として選定される可能性がある。 これは、単に資金の流れを追跡・把握するにとどまらず、オンチェーンデータを用いたリスク評価モデルの構築が可能であることを意味する。 よって、ブロックチェーン分析は、「調査対象のスクリーニング(リスク評価)」と「個別調査における資金の流れの追跡・把握」の双方において有効な調査手法である。 より意図的に暗号資産の匿名性を高めるツール等が利用されている場合にもブロックチェーン分析が有効に機能する。 例えば、次のような場合にも、ブロックチェーン分析を実施することで、トランザクションや資金の流れの追跡、CEXの口座やプライベートウォレットの管理者の解明につなげることができる可能性がある(※)。 (※) Chainalysis「日本における暗号資産のマネーロンダリング―日本の視点から見たグローバルの共通問題―」(2024.11.21)。 もっとも、これらの手法が用いられた場合には、トランザクションの連続性や資金移動の経路に関する分析精度が低下することがある。 具体的には、あるウォレットと別のウォレットが同一人物によって管理されていると評価するための手掛かり(取引の時間的連続性、数量的一貫性、既知のアドレスとの接触状況など)が分断されるため、「このウォレットは当該納税者のものである」と合理的に説明できる度合いが弱まることがある。 その結果、単なる可能性の指摘にとどまり、課税処分を行うのに十分な水準にまで証拠を積み上げることが難しくなる場合がある。 この点からしても、ブロックチェーン分析は万能ではなく、取引所が保有するKYC(顧客確認)情報、ログイン履歴、登録出金先情報、IPアドレス情報等のオフチェーン情報との照合や、金融機関等から収集した資料との照合といった補完的手段が不可欠となる。 ミキシングサービスやクロスチェーンブリッジ、プライバシーコインが利用された場合には、オンチェーンのみで資金移動経路を把握することの技術的困難性が増す。そのため、税務当局にとっては、法的手続に基づく情報取得の重要性が一層高まる。 また、海外CEXや自己が管理するタイプのプライベートウォレットに関する情報取得には制度的な限界があり、CARF(暗号資産等報告枠組み)に代表される国際的な情報交換枠組みや執行協力の実効性が、実務上の成果を左右する。 結局のところ、自己管理型ウォレットのみを用い、オンランプ・オフランプを国外に限定する場合には、現時点では、税務当局による情報把握は著しく制約されることになる。 (了)
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〔会計不正調査報告書を読む〕 【第185回】KDDI株式会社「特別調査委員会調査報告書(公表版)(2026年3月31日付)」
〔会計不正調査報告書を読む〕 【第185回】 KDDI株式会社 「特別調査委員会調査報告書(公表版)(2026年3月31日付)」 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 【KDDI株式会社特別調査委員会による調査の概要】 【KDDI株式会社の概要】 KDDI株式会社(以下、報告書の表記と同じく「KDDI」と略称する)は、「第二電電企画株式会社」として、1984年1月に設立。商号変更、合併などを経た後、2001年4月から現商号。携帯電話の契約数はNTTドコモに次ぎ国内第2位。連結子会社189社(国内129社、海外60社)、持分法適用会社及び共同支配企業47社(国内38社、海外9社)により企業集団を構成している。売上高5,917,953百万円、税引前当期利益1,104,625百万円、資本金141,852百万円、従業員数64,636人(いずれも訂正前2025年3月期連結実績)。本店所在地は東京都新宿区。東京証券取引所プライム市場上場。会計監査人は、PwC JAPAN有限責任監査法人東京事務所(以下、「PwC」と略称する)。 会計不正が発覚したのは、KDDIの連結子会社であるビッグローブ株式会社(以下、「ビッグローブ」と略称する)とビッグローブの子会社であるジー・プラン株式会社(以下「ジー・プラン」と略称する)であった。 ビッグローブは、日本電気株式会社(NEC)においてインターネットサービス等を提供していた BIGLOBE事業部門が分社独立する形で 2006年7月に設立。BIGLOBEブランドを運営するインターネットサービスプロバイダとして、モバイル・固定通信サービスを提供する通信事業を主たる事業としてきた。2017年1月に KDDIの完全子会社となった後、2022年度からトラベル事業等の新規事業(リアライズ事業)への進出を本格的に開始し、2022年12月、新規事業への進出の一環として、自社の企業規模や信用力等を活用して子会社であるジー・プランの広告代理事業を更に拡大するため、広告代理事業に参入している。売上高145,965百万円、うち広告代理事業売上高7,493百万円(いずれも訂正前の2025年3月期実績)。 ジー・プランは、株式会社博報堂、住友商事株式会社及び三井住友カード株式会社の合弁会社として2001年2月に設立。ポイント事業、メディア事業、ポイントプラットフォーム事業及び広告代理事業を主たる事業とする。2011年3月にビッグローブの子会社となり、2017年1月にビッグローブがKDDIの完全子会社となったことに伴い、KDDIグループに加わった。売上高82,377百万円、うち広告代理事業売上高75,717百万円(いずれも訂正前の2025年3月期実績)。 ジー・プランにおける広告代理事業は、2010年12月にジー・プランに入社したa氏が、前職での経験を活かして、2017年度に立ち上げたものであり、a氏は、2022年4月から副部長、2023年4月から部長の役職に就いていた。 【架空循環取引発覚までの経緯】 2018年 2月、a氏主導で開始したジー・プランの広告代理事業での数十万円の赤字発生及び数千万円単位の売上目標未達による焦りから、赤字補填及び売上目標達成のために架空売上の計上を考える 8月、遅くともこの時期から本件架空循環取引を開始 2020年 4月、広告代理事業増員のため、b氏がジー・プランに入社 2022年 12月、ビッグローブの新規事業開拓を企図し、同社が関与する商流を介しKDDIのグループファイナンスを活用 2023年 1月、a氏及びb氏がビッグローブに兼務出向 2025年 取引金額の増加とともに架空循環取引に係る代理店数が拡大(計21社) 2025年 2月、経営戦略会議で、KDDI代表取締役社長(当時)が「広告代理事業の急成長は不自然」と懸念を表明したことに伴い、ビッグローブ、ジー・プランの広告代理事業の管理体制強化として、社内監査役と内部監査部門により取引の妥当性に関する調査を実施(以下は、「特別調査委員会設置の経緯」のとおり) 【特別調査委員会による調査結果報告書の概要】 1 特別調査委員会設置の経緯 KDDIは、2025年度の監査役監査において、連結子会社であるビッグローブ及びビッグローブの子会社であるジー・プランの広告代理事業における取引の妥当性について、社内監査役及び内部監査部による予備調査を実施し、その過程で、2025年10月、会計監査人であるPwCから、ジー・プランの広告代理事業において不適切な取引が行われていた疑いがある旨の指摘を受けたことを踏まえ、外部の公認会計士も交えた社内調査を実施した。 これらの調査では、不適切な取引の存在を裏付ける客観的な証拠や関係者の供述は得られなかったが、2025年12月中旬、一部の広告代理店からジー・プランに対する入金が遅延したことを契機として、不適切な取引を実行していた子会社従業員による自認が得られ、これを受けて、売上高等が過大に計上されていた可能性が判明した。 さらに、KDDIは、外部の弁護士及び公認会計士を交えた社内調査チームを設置し、追加調査を実施した結果、2026年1月上旬、客観的な証拠が確認され、広告代理事業において、子会社の従業員が関与し、広告運用の実体のない架空循環取引が行われていた疑いの存在が確認された。 これを受け、KDDIは、本件に関する事実関係やその原因等を解明するため、より専門性及び客観性の高い調査を実施する必要があると判断し、2026年1月14日、取締役会において、外部の弁護士及び公認会計士を委員とする特別調査委員会を設置することを決定し、調査を委託した。 2 特別調査委員会による調査結果の概要 本項では、特別調査委員会が、2026年3月31日に開催された説明会で使用した資料を基に、調査結果をまとめたい。 (1) 架空循環取引の概要 特別調査委員会は、事実関係について、次のとおりまとめている。 次いで、架空循環取引の概要は次のとおりである。 (2) 動機 特別調査委員会は、各循環取引の実行者であるa氏及びb氏の動機について、次のようにまとめている。 (3) 隠蔽工作 特別調査委員会は、a氏及びb氏による架空循環取引が長く発覚しなかった理由として、発覚を免れるための隠蔽工作が行われていたことを指摘している。 (4) KDDI連結決算に与える影響額 特別調査委員会による会計上の影響額については、次表のとおりである(単位:億円)。 会計年度 売上高 売上総利益 外部流出額 2023年3月期以前 ▲417 ▲24 ▲17 2024年3月期 ▲543 ▲56 ▲37 2025年3月期 ▲824 ▲169 ▲105 2026年3月期 第3四半期累計 ▲676 ▲250 ▲171 合 計 ▲2,461 ▲499 ▲329 3 原因分析(調査報告書85頁以下) 特別調査委員会は、原因分析の初めに「総論」として、次のように総括している。 そのうえで、「広告代理事業を自ら行う企業としての内部統制の問題」として、ジー・プランとビッグローブについて、次のようにまとめている。 ジー・プラン ビッグローブ 全社 広告代理事業に関する知見の全社的な不足とリスク感度の不足 第1線 特定の担当者への業務の集中と牽制機能の不全 ・業務の属人化 ・下流代理店に対する発注及び支払プロセスにおける不十分な権限分離 第2線 事業部門の不十分な管理 ・与信管理の不十分さ ・下流代理店の受注能力の不検証 ・取引の実在性に関する確認の不足 - グループファイナンスに関する不十分な判断 第3線 不十分な内部監査 次いで、「子会社管理体制の問題」は、次のとおりまとめられている。 ビッグローブ KDDI 全社 広告代理事業に関する知見の全社的な不足とリスク感度の不足 直接管理 部門 上記「第1線」と同じ問題が存在 ・広告代理事業に対するリスク検知の不足 ・業務分掌状況の把握不足 ・子会社管理体制の不足 コーポレート 部門 与信管理の不十分さ ・グループファイナンス管理における極度額偏重 ・管理機能の分散 監査部門 取引の実在性や業務の適正性の検 証を伴う内部監査の不実施 広告代理事業の不正リスクに対するより専門的な内部監査の不実施 そのうえで、各社における原因の項目として次のように上げている。 4 再発防止策の提言(調査報告書119頁以下) 特別調査委員会は、再発防止策についても、総論としてまとめたうえで、各社に対する提言を示している。こちらも順を追って見ていきたい。 まず「総論」として、「同種不正を防ぐため自社として検討すべき再発防止策」は次のとおりである。 ジー・プラン ビッグローブ 全社 新規事業に係る不正リスク評価及びリスク管理体制の強化 第1線 事業部門の体制見直しによる不正の機会の排除 ・業務の属人化の解消 ・発注及び支払プロセスにおける権限分離の徹底 第2線 コーポレート部門による事業精査及び不正検知機能の強化 ・与信管理の強化 ・購買先適格性確認手続の整備 ・売上の計上及び支払プロセスにおける確証確認 - キャッシュフローを重視した経理 第3線 内部監査体制及び監査手法の強化 次に、「同種不正を防ぐため親会社として検討すべき再発防止策」である。 ビッグローブ KDDI 全社 新規事業に係る不正リスク評価及びリスク管理体制の強化 ・知見が乏しい事業への理解促進 ・リスク感度の強化・向上 直接管理 部門 上記「第1線」と同じ再発防止策が妥当する。 ・事業内容の精査及びリスク検知体制の整備 ・子会社の内部統制・業務分掌の実態把握強化 ・出資先管理の人的基盤強化 コーポレート 部門 与信管理における監督 ・グループファイナンスにおける資金需要の妥当性確認強化 ・子会社管理の強化と財務管理機能の集約・統合 監査部門 子会社監査手法の見直し グループ内部監査の高度化 続いて、特別調査委員会による、各社における再発防止策の提言を見ておきたい。 【調査報告書の特徴】 手前味噌な引用で恐縮だが、筆者が共著者の一人として2019年2月に刊行した『新版架空循環取引』(清文社)の帯(腰巻き)にある朱書きのコピーである。KDDI子会社による架空循環取引もまた、資金の供給が止まったことをきっかけにあっけなく破綻した。社外流出した329億円の資金が戻ってくることはおそらくないだろうし、KDDIは、結果として、のれんの減損に伴う損失も646億円計上することになった。 a氏が架空循環取引に手を染めた契機は、広告代理事業で生じた数十万円の損失を隠蔽するためだった。その後約7年間、総額2,461億円の架空売上を作出してきたa氏は、架空循環取引が発覚した時点では「部長職」にまで出世していた。しかし、その出世の理由となった広告代理事業の売上拡大の背景には、売上高の99.7%が架空循環取引で占められていたという特異性があった。 調査報告書公表日である2026年3月31日に開催された「特別調査委員会の調査結果に関する説明会」では、KDDIの松田浩路代表取締役社長が、自ら先頭に立って、再発防止に加え、強固なグループガバナンス構築に向けた取組みを推進すること、親会社が子会社事業に対する強い関心を持ち、グループ全体がこれまで以上に結束を深める契機としたいという説明があった。また、外部流出額の回収に努めるというコメントもあったが、過去の架空循環取引を巡る損害賠償請求事件の多くが泥沼化、長期化してきたことは懸念材料であろう。 1 買収した連結子会社による会計不正事件の特徴 KDDI子会社による会計不正は、本連載【第183回】で取り上げたニデック株式会社(以下、「ニデック」と略称する)子会社の会計不正事件を想起させる点がいくつか存在する。すなわち、不正を隠蔽していた子会社が買収により傘下に収めたものであること、子会社の事業がいわば傍流であり、親会社の主たる事業とはなじみの薄いものであったことなどを挙げることができるだろう。そこで、本項では、両社の会計不正事件の類似点と相違点を比較しながら、買収した子会社に対する親会社のガバナンスについて検討したい。 (1) 類似点 ① 買収後の事業理解が浅く、異常値を異常と認識できなかった。結果的に、親会社の事業理解不足が、子会社のブラックボックス化を招いた。 KDDI ニデック 広告代理事業は本業と遠く、売上が急増しても「広告業界はこういうもの」と誤解してしまった。 買収した子会社の事業構造・会計慣行を十分に把握できず、利益率の異常な高さや在庫の不自然な動きを見抜けなかった。 ② 派遣役員・親会社の監督が形式的で、実質的に機能しなかった。 KDDI ニデック 親会社から派遣された役員は広告代理事業の専門性がなく、子会社の説明を深掘りできず、取締役会が形骸化。 買収先の経営陣に強く依存し、「現地に任せる」姿勢が強すぎて、実態把握が遅れた。 ③ 内部監査が形式化して、手続きチェックに偏り、実在性確認が弱かった。 KDDI ニデック 書類チェック中心で、広告成果の実在性を確認しないまま不正レポートを通してしまった。 子会社の在庫・売上の実在性確認が不十分で、粉飾の兆候を見逃した。 ④ 子会社の属人化・聖域化を許した結果、不正の温床になった。 KDDI ニデック 広告代理事業は2名の担当者が独占し、「ノウハウがあるので自分がやる」という説明が通ってしまった。 買収先の経営陣が業績管理を独占し、親会社が踏み込めない領域が生まれた。 (2) 相違点 → 不正の動機 KDDIの子会社不正は、担当者2名による自己完結型の不正であり、親会社の業績プレッシャーがあったわけではない点が特徴である。 一方、ニデックの子会社不正の直接的な原因は、親会社による業績改善要求が強かった点にあり、子会社は親会社の期待に応えるため粉飾決算を行ったものであるという点で、KDDIの子会社不正とは大きく異なっている。 (3) 買収した子会社をどう統治するか KDDIとニデックの子会社による会計不正は、「買収した子会社をどう統治するか」という日本企業の典型的な課題が顕在化した事案であったと総括することが可能であるが、あらためて、両社の子会社ガバナンスの共通点、つまり、買収した子会社の統治が上手くいかなかった原因を次のようにまとめておきたい。 これらの共通点を反面教師とすることにより、「買収した子会社の統治」について、あらためて検証する必要があるのではないだろうか。 2 KDDIによる再発防止策と関係者の処分 KDDIは、調査報告書の公表と同時に、再発防止策と関係者の処分をリリースしているので、その内容を見ておきたい。 (1) 再発防止策 (2) 役員及び従業員に係る対応 KDDIは、同じリリースで、関与した従業員2名(a氏及びb氏)については、社内規程に基づき懲戒解雇処分とするとともに、役員については、ビッグローブの代表取締役社長山田靖久ほか3名の取締役が辞任、ジー・プランの代表取締役社長竹内庸真ほか1名の取締役が辞任、親会社KDDIの代表取締役会長以下6名の取締役及び2名の常勤監査役がそれぞれ報酬の一部を自主返納することを公表している。 3 東京証券取引所による改善報告書及び上場契約違約金の徴求 東京証券取引所は、2026年4月30日、「改善報告書及び上場契約違約金の徴求」をリリースして、KDDIに対して、6月2日までに改善報告書を提出することを求めるとともに、上場違約金9,120万円を徴求することを公表した。9,120万円という違約金の額は、現行制度上の上限金額である。その理由として、適時開示の規定に違反し、当取引所の市場に対する株主及び投資者の信頼を毀損したと認められるため(有価証券上場規程第509条第1項第1号)として、詳細を次のように説明している。 4月30日は、エア・ウォーター株式会社、ニデック株式会社にも上場違約金が徴求されており、2026年に入って上場違約金を徴求された会社は4社であり、昨年同時期と同じ水準となっている(2025年全体では9社)。 4 バリュークリエーション株式会社特別調査委員会調査報告書 2026年5月8日、かねてよりジー・プランとの取引が存在することをリリースし、特別調査委員会を設置して調査を行っていたバリュークリエーション株式会社(以下、「バリュークリエーション」と略称する)は、5月7日付の調査報告書(公表版)を公表した。 調査報告書によれば、ジー・プランとの取引を含む架空売上高は、1,632百万円を超えており、バリュークリエーションでは、「ジー・プランに対する請求額と外注先からの請求額の純額を売上高として計上している」ということで、この売上高を訂正する必要があることが指摘されている。 同リリースにおけるバリュークリエーションによる「今後の対応」として、「ジー・プランに関連する取引については、売上高から取り消し、営業外収益として計上する」ことが明言されていて、「外部流出額の回収に努める」立場のKDDIとの間で、どのような交渉が行われ、決着するのか、架空循環取引事件はまだ終わっていない。 (了)
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〔まとめて確認〕会計情報の月次速報解説 【2026年4月】
〔まとめて確認〕 会計情報の月次速報解説 【2026年4月】 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2026年4月1日から4月30日までに公開した速報解説のポイントについて、改めて紹介する。 具体的な内容は、該当する速報解説をお読みいただきたい。 Ⅱ 企業内容等開示関係 次のものが公布・公表されている。 ① 「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則及び連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第28号) (内容:「期中財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第37号)等及び「防衛特別法人税の会計処理及び開示に関する当面の取扱い」(実務対応報告第48号)を受けたもの) ② コーポレートガバナンス・コード改訂案 (内容:成長投資の促進、取締役会の機能強化、有報の定時株主総会前の開示等について記載している。意見募集期間は2026年5月15日まで) ③ 有価証券報告書レビュー及び大量保有報告書等のレビューについて(令和8年度) (内容:有価証券報告書及び大量保有報告書等の審査について記載している) Ⅲ 会社法関係 次のものが公表されている。 ◎ 「会社法制(株式・株主総会等関係)の見直しに関する中間試案」に関する意見募集 (内容:会社法制(株式・株主総会等関係)に関する審議結果を取りまとめたもの。意見募集期間は2026年5月22日まで) Ⅳ 監査法人等の監査関係 監査法人及び公認会計士の実施する監査などに関連して、次のものが公表されている。 ◎ 監査基準報告書700実務ガイダンス第3号「事業報告等と有価証券報告書の一体書類に含まれる財務諸表等に対する監査報告書に係る実務ガイダンス(2026 年4月版)」の公表及び監査基準報告書700実務ガイダンス第2号「事業報告等と有価証券報告書の一体開示に含まれる財務諸表に対する監査報告書に係る実務ガイダンス」の廃止について (内容:現行の法制度下における一体書類に対する監査報告書の文例について再度検討したもの) (了)
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従業員の解雇をめぐる企業対応Q&A 【第21回】「部門廃止に伴う解雇の有効性判断における経営上の理由と労働者の帰責事由の位置づけ」
従業員の解雇をめぐる企業対応Q&A 【第21回】 「部門廃止に伴う解雇の有効性判断における経営上の理由と労働者の帰責事由の位置づけ」 弁護士 柳田 忍 【Question】 当社は、業務効率化のため、収益が継続的に赤字となっているある部門(A部門)を廃止することにしました。A部門に所属する従業員に対しては別の配属先を紹介し、それが嫌なら一定額の特別退職金を支給して合意退職してもらうことになりました。 しかし、A部門のある従業員(B)については、いわゆるトラブルメーカーであり、配転先を見つけることができません。Bは合意退職に応じないのですが、当社の業績があまりよくないこととBの勤務態度が良好ではないことを併せて考慮して、解雇が有効となると考えられないでしょうか。 【Answer】 原則として、経営上の理由と労働者の帰責事由とを併せて解雇の有効性を判断することはできません。もっとも、労働者の帰責事由があるため配転を試みなかったことを主張し、これをもって、整理解雇の四要素のうち「解雇回避努力」を尽くしたことの説明要素の一つとする余地はあると考えられます。 ◆ ◇ ◆ 解 説 ◆ ◇ ◆ 1 はじめに 筆者は、部門やポジションを廃止するため、当該部門に所属する従業員や当該ポジションに就いている従業員を解雇したい、という相談を受けることが多い。部門やポジションの廃止を理由とした従業員の解雇は専ら会社側の理由による解雇であるから、整理解雇の四要素(①人員削減の必要性、②人選の相当性、③解雇回避努力、④手続の相当性)の観点から解雇の有効性が判断される(拙稿【第4回】参照)。これらの要素は総合考慮され、ある要素の充足が十分でない場合には、他の要素についてより高い程度の充足が求められる可能性がある。よって、会社の経営状態がさほど悪くない場合(①の人員削減の必要性が高くない場合)には、③の解雇回避努力等の他の要素について求められる水準がより高まることになり、会社においては、所属部員等を配転させるなどして解雇を回避する努力がより一層求められることになる。 筆者の経験上、部門やポジションの廃止を実施する会社の多くは、経営危機を回避するためというよりは、経営合理化を目的としてこれらを実施するものであり、経営状態は必ずしも深刻ではないことが多い。よって、そのような会社においては、廃止する部門やポジションに就いていた従業員に別の配転先を提示するなどして解雇回避努力を尽くさなければ、これらの従業員を解雇することは難しい、ということになる。この点、会社としては、廃止する部門やポジションに就いている従業員は余剰人員であり、部門・ポジションの廃止とともに退職してもらいたいと希望することが少なくない。しかし、これらの従業員が人員削減の対象となったのは、あくまで会社の経営方針によるものであり、彼ら自身に何らかの問題があるというわけではない、という場合が大半である。そのため、従業員の帰責事由による解雇として構成することも難しい場合が多く、対応に悩まされるところである。 そこで、本稿においては、このような場合の対応策について検討する。 2 経営上の理由と労働者の帰責事由を併せて考慮することの可否 (1) 裁判所の見解 例えば、労働者の帰責事由による勤務成績不良と経営上の理由が複合する場合の解雇の有効性の判断に際しては、労働者の帰責事由による勤務成績不良と経営上の理由とを区別したうえ、前者については、それ自体として解雇を是とするほど勤務成績不良といえるかを検討し、後者については整理解雇の四要素について充足しているかを検討し、どちらか一方を肯定できる場合でなければ、解雇を有効とすべきではないと考えられている(※)。よって、解雇を是とするほどの勤務成績不良が認められないが、企業の経営状況を併せて考えると解雇は有効である、といった判断は認められないということになる。 (※) 佐々木宗啓他編著「類型別 労働関係訴訟の実務[改訂版]II」399頁 (2) 参考裁判例 しかし、以下の裁判例は、整理解雇の「解雇回避努力」の要素との関係で、従業員の勤務態度等の問題により他部署への配転が難しい場合で、会社の経営状況が厳しいときは、これらを併せて考慮し、他部署への配転を試みなくても解雇回避努力を怠ったとはいえないとしている。すなわち、当該裁判例は、経営上の理由と従業員の勤務態度等の問題を、少なくとも解雇回避努力の評価場面においては併せて考慮し得ることを示したものと評価し得る。 3 まとめ 上記参考裁判例においては、会社の経営状況が厳しかったことが前提とされていることから、会社の経営状況が悪くない場合にも、解雇回避努力について、会社の経営上の理由と従業員の帰責事由とを併せて考慮することができるかは定かではない。 また、上記参考裁判例においては、従業員の帰責事由が比較的大きかったため、そもそも普通解雇が認められる場合であった可能性もある。 もっとも、経営上の理由と労働者の帰責事由とを併せて考慮することはできないという原則を前提としつつも、少なくとも解雇回避努力の有無という一局面においては、経営上の理由と労働者の帰責事由とを併せて考慮して解雇の有効性判断のハードルを下げるロジックを展開できる可能性があるという点で、上記裁判例には一定の示唆があるように思われる。 (了)
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〈Q&A〉税理士のための成年後見実務 【第30回】「「見守り契約」について」
〈Q&A〉 税理士のための成年後見実務 【第30回】 「「見守り契約」について」 司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎 【Q】 任意後見契約を顧客と締結することになりましたが、本人の体調に不安があるため任意後見契約が発効するまで定期的に生活の様子を見に行くことになりました。 高齢者の孤独死が増えているというニュースも最近目にしましたので、しっかりとフォローをする必要性を感じていますが、仕事として受ける以上なんらかの契約を締結しておきたいと思います。 どのような方法があるでしょうか。 【A】 任意後見契約は実際に本人の判断能力が衰えた場合に、任意後見監督人の選任審判を受けることで発効します。 任意後見契約の効力が生じれば契約の定めるところに従ってサポートをしていくことになりますが、任意後見契約の締結から効力発生までの期間については「見守り契約」等でサポートすることが可能です。 ● ● ● ● 解 説 ● ● ● ● 1 任意後見契約の効力発生までのサポート 任意後見契約は契約締結のみでは発効せず、実際に本人の判断能力が衰えてから任意後見監督人の選任審判を受けることで発効します。任意後見契約の発効後は契約の定めに従ったサポートを行うことになりますが、任意後見契約締結から実際に契約が発効するまでの期間のサポートをどうするかは意外と抜けがちなポイントかもしれません。 任意後見契約を依頼した本人としては、体調や将来的な生活に不安があるからこそサポートを依頼しているのであり、契約の効力発生までの期間も何らかの支援をして欲しいと考えるのが通常であると思われます。また受任者としても、本人の判断能力が衰えたことを適時に把握してスムーズに任意後見契約を発効させるには、定期的に本人と面会して生活状況を理解しておく必要があります。 任意後見契約締結から効力発生までの期間について、本人の生活状況を把握するために任意後見契約とセットで「見守り契約」を締結することがあります。 【見守り契約のイメージ】 2 見守り契約の内容 見守り契約の内容は法定されておらず当事者で自由に決めることができます。本人からどのようなサポートをして欲しいかをヒアリングして契約書にまとめていくことになりますが、よくある項目としては次のものがあります。 ① 本人との連絡方法、連絡の頻度 ② 面会の場所と頻度 ③ 本人の生活相談に応じること ④ 本人の生活状況等を把握して、必要に応じて任意後見監督人の選任審判を申立てること ⑤ 緊急時において入院手続き等のサポートをすること ⑥ 受任者が緊急時連絡先となること 緊急時に本人の身内に連絡すること ⑦ 報酬 ⑧ 見守り契約の終了事由 本人との連絡の頻度については月1回程度、面会については2、3か月に1回と定めている例が多い印象です。頻繁に連絡や面会を重ねた方が本人の生活状況も理解しやすいといえますが、契約書に定める連絡等の頻度としては現実的に対応できる範囲にしておかないと、遵守が困難になり契約違反となってしまうこともあるため注意が必要です。 本人が身寄りのない方の場合、急病になった場合の入院等のサポートや緊急連絡先となることなどが求められることもあります。 報酬については月額数千円から数万円程度としておき、何か実働が必要になった場合には別途報酬が発生するように定めていることがあるようです。 見守り契約の終了事由としては、任意後見契約が発効したこと、本人や受任者が死亡したこと、任意後見契約や見守り契約が解除されたことなどがあります。 3 契約締結の方法 見守り契約は公正証書によって締結する必要はありませんが、継続的な契約となることから公正証書によることが望ましいと考えられます。任意後見契約の締結と同時に見守り契約も締結するとスムーズであるといえるでしょう。 (了)
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〈小説〉『国税審査官エイトの勤務日誌』~ある国税不服審判所の記録~【第4話】「お天気の葛本審査官②」
〈小説〉 国税審査官エイトの勤務日誌 ~ある国税不服審判所の記録~ 第4話 お天気の葛本審査官② 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一 職員の食堂は、合同庁舎の14階にある。永途は、黒田と一緒にやってきた。まだ、正午前なので、人は少ない。あじのフライとサラダ、冷や奴、味噌汁とご飯で、500円である。 永途は、味噌汁をこぼさないように、お盆を持ち、座席を探していると、窓際で、葛本審査官が一人で食べている。 「・・・葛本さん・・・ここで食べても良いですか?」 永途が声をかける。 黙々とカレーライスを食べていた葛本は、驚いたように顔を上げる。 永途の後ろに立っている黒田に気がつき、大きく頷く。 「良い天気だね」 黒田は笑いながら、葛本に言う。 葛本は、大きく頷く。 「・・・今回の人事異動で、審判所の第二部に来た・・・新人の永途君だ」 黒田は、永途の横に座りながら、紹介する。 葛本は、永途をちらっと見て、頷く。 「・・・ところで、近ごろ、事件が増えたので審理部がとても忙しいと聞いているが・・・どうだい?」 黒田は、年下の葛本に尋ねる。 「・・・そうですね・・・一般事件が増加したため・・・審理に要する時間が増えました・・・何故か、法人税の事案が多くあります・・・」 葛本はカレーライスを食べながら言う。 「・・・法人の事案って・・・どんな内容のものが多いのですか?」 横から、永途が尋ねる。 「・・・そうですねえ・・・いろいろとあるのですが・・・」 葛本は、口の中のカレーを咀嚼しながら、考える。 「・・・例えば・・・交際費とか・・・貸倒損失の計上時期を争うものや法人税法22条2項の収益に係る事案など・・・それと・・・法人税法132条か・・・」 「今度、田中審判官から貰った初めての事案が交際費なんですよ」 永途は、嬉しそうに葛本に告げる。 「・・・ほう、そうですか」 葛本は、冷たい水を飲みながら答える。 「・・・事件の資料については、まだ、詳しく読んでいないんですけど、交際費になるのか、役員の賞与に該当するのか・・・それが争点なんですけれど・・・」 永途は葛本の顔を窺う。 「・・・よくあるケースですね・・・もともと、中小企業の交際費については、定額控除限度額として800万円がある・・・この非課税枠って、いわゆる中小企業の社長の小遣いとして認められたものだという人もいる・・・そうすると、800万円は社長の小遣いなんだから、なんに使おうと問題がないじゃないのかと考えることもできる・・・」 葛本は、笑いながら、カレーを口に運ぶ。 「・・・措置法に規定している交際費課税は、改正が繰り返されていることから、法人税の理論を前提として、まじめに考えすぎると、辻褄が合わなくなるかも知れない・・・」 永途は、最近の交際費の改正を、以下思い浮かべる。 結局、現在の法人規模別交際費等の取扱いは、次のようになっている。 飲食費 1 万円以下 飲食費 50% 飲食費 以外 資本金の額等 100 億円超 損金算入 損金不算入 損金不算入 資本金の額等 1 ~ 100 億円以下 損金算入 損金算入 損金不算入 中小法人・資本金の 額等 1 億円以下 損金算入 800 万円又は飲食費 50%の選択 「・・・ところで、所得税の交際費は、必要経費として認められているのに対して、法人税は、例外はあるものの、原則、課税されているのは、何故なんですか?」 永途が葛本に質問をする。 葛本のカレー皿は、空になっている。 葛本は、口に爪楊枝を入れながら、歯の掃除をしている。 「・・・もともと事業に必要なものであれば、当然、必要経費になるだろう・・・しかし、事業に関係のない支出であれば、個人であっても、家事関連費として、所得計算上、必要経費は否認される・・・所得税法45条では『家事上の経費及びこれに関連する経費で政令で定めるもの』は、必要経費にならないと規定している」 葛本は、すらすらと条文の一部を読み上げる。 「・・・法人税の場合、政策的に、交際費は原則課税で、また、所得税のような区分規定はありませんから、課税実務では、よほどのことがなければ、納税者がその支出を自ら交際費として処理していれば、税務署は、文句をあまり言わないのでしょうか?」 そう言うと、永途は、お盆の上のあじのフライを食べ始めた。 (つづく)
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PJ Bookmark-May 2026- 「計算書類の「最終チェック」、今年はどこを見ますか?」
B PJ Bookmark ── May 2026 ── ◇ 計算書類の「最終チェック」、 今年はどこを見ますか? 3月決算法人では、計算書類が確定し、6月の定時株主総会に向けた準備が本格化する時期です。計算書類の作成自体は毎年の業務ですが、だからこそ「前期のデータが残っていた」「表示方法の変更に合わせた組替えを忘れていた」といった、慣れた作業の中で生じるミスが後を絶ちません。 今回は「計算書類と株主総会」」を切り口に、関連する記事を5本ご紹介します。 〇計算書類の確定から株主総会まで、何を確認しておくか 計算書類の確定から株主総会までの実務では、次のような検討事項があるかと思います。 まず、計算書類のチェック方法です。同じ方法で二度確認する「ダブルチェック」だけでなく、異なる書類の数値を突合する「クロスチェック」を組み合わせることで、ミスの発見率を高められます → 1本目。あわせて、表示方法を変更した場合に比較情報の組替えを忘れるという、実際に訂正に至った事例も確認しておきたいところです → 2本目。 会計 計算書類作成に関する"うっかりミス"の事例と防止策 【第36回】「『ダブルチェック』ではなく、『クロスチェック』を実践せよ」 執筆:石王丸周夫 公認会計士 貸借対照表の自己株式残高が株主資本等変動計算書の残高と一致していない・・・本記事では、実際に定時株主総会の招集通知で起きたこの訂正事例をもとに、「クロスチェック」の有効性を解説しています。ダブルチェック(同じ方法で二度確認する)ではなく、異なる書類の一致すべき数値を突合するクロスチェックであれば、作成者一人でも十分に効果があるという指摘は、限られた人員で計算書類を仕上げる場面で実践しやすい考え方です。 この記事を読む 会計 決算短信の訂正事例から学ぶ実務の知識 【第17回】「表示方法変更時における過年度数値の組替え忘れ」 執筆:石王丸周夫 公認会計士 当連結会計年度の数値には問題がなく、訂正されたのは比較情報である前連結会計年度の数値だけだった・・・本記事で取り上げられている訂正事例はそのようなケースです。営業外費用の内訳で「支払手数料」を当期から「その他」に含める表示方法の変更を行ったにもかかわらず、前期の比較情報を組み替えずにそのまま掲載してしまったことが訂正の原因でした。本記事では、なぜこの組替えが必要なのかを、利用者に伝わる情報の違いという観点から丁寧に説明したうえで、連結財務諸表規則の関連条文も確認しています。チェックのポイントとして「数値欄に『-』がある科目に注意する」という具体的な方法が示されており、開示前の自己点検に活用できます。 この記事を読む 次に、中小企業の計算書類です。上場企業の開示実務とは異なり、中小企業の個別注記表にはどのような項目をどう記載すべきか、具体的なサンプルがあると作成・確認の助けになります → 3本目。 会計 〔事例で使える〕中小企業会計指針・会計要領《個別注記表》編 【第2回】「個別注記表の記載例」 執筆:前原啓二 公認会計士・税理士 上の2本の記事が上場企業の開示実務を扱っているのに対し、この記事は中小企業の計算書類に焦点を当てています。中小企業に多い株式譲渡制限規定を定款に設けている会社を想定し、個別注記表の記載サンプルを一通り示した内容です。重要な会計方針から、貸借対照表に関する注記、株主資本等変動計算書に関する注記まで、具体的な文例が掲載されています。毎年作成するものではあるものの、記載項目の漏れがないかを確認する際のチェックリストとしても活用できる記事です。 この記事を読む 株主総会の準備については、有価証券報告書の総会前開示の動向や議決権行使助言基準の変更など、毎年のアップデートを押さえておく必要があります → 4本目。 経営 2026年株主総会における実務対応のポイント 執筆:斎藤誠(三井住友信託銀行 ガバナンスコンサルティング部 プリンシパル) 今年特に注目されるのは、有価証券報告書の総会前開示に関する動向です。昨年は3月決算会社の57.7%が総会前開示を実施し、本年はさらに増加が見込まれるとのことで、2026年2月施行の開示府令改正による記載負担の変化にも触れられています。また、個人株主数が約1,600万名に達したことを踏まえた議決権行使促進策、ISS・グラスルイスの助言基準の変更(社外役員の在任期間12年基準の導入等)、法制審議会での会社法改正の議論状況など、総会準備にあたって押さえておきたい情報がコンパクトにまとまっています。 この記事を読む さらに、計算書類と株主総会は税務申告とも密接に関わっています。株主総会の承認を得ていない決算書類に基づく確定申告は有効なのか・・・頻繁に生じる問題ではありませんが、「確定した決算」の意味を改めて考えさせられる論点です → 5本目。 税務 法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例61】「株主総会の承認を得ていない決算書類に基づく確定申告の有効性」 執筆:安部和彦 拓殖大学商学部教授・税理士 株主総会(社員総会)の承認を得ていない決算書類に基づく法人税の確定申告は有効なのか・・・本記事では、この論点が争われた裁判例を詳しく検討しています。裁判所は、中小企業の実態として総会の承認を経ずに申告がなされているケースが多いことを踏まえ、総勘定元帳に基づく決算書類があれば承認を経ていなくても申告は有効と判断しました。一方で、当初申告で評価損を計上していなかった以上、後から決算書類を修正して損金経理要件を満たすことはできないとしています。「確定した決算」とは何かという、確定決算主義の根幹に関わる論点を扱った記事であり、計算書類の確定と税務申告の関係を改めて考えさせられる内容です。 この記事を読む Afterword 今回は「計算書類と株主総会」を切り口に5本の記事をご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。プロフェッションジャーナルには計算書類に関する記事がこのほかにもたくさん掲載されています。税効果会計の適用、会計上の見積りの注記、キャッシュ・フロー計算書の作成など、掘り下げた記事がありますので、気になるテーマがあればぜひ探してみてください。 Profession Journal (了)
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《速報解説》 経産省、「事業報告等と有価証券報告書の一体開示・一体的開示FAQ(制度編)」を更新~会社法・金融商品取引法等の改正、総会前の有報提出企業の増加傾向等を受け改訂~
《速報解説》 経産省、「事業報告等と有価証券報告書の一体開示・一体的開示FAQ(制度編)」を更新 ~会社法・金融商品取引法等の改正、総会前の有報提出企業の増加傾向等を受け改訂~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2026年5月12日、経済産業省は、「事業報告等と有価証券報告書の一体開示・一体的開示FAQ(制度編)」を更新した。 これは、2021年1月18日に公表したものを更新するものであり、会社法・金融商品取引法等の改正、株主総会前に有価証券報告書を提出する企業の増加傾向などを受けたものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 主な項目は次のとおりである。 以下では主なものについて解説する。 1 一体的開示と一体開示 「一体的開示」とは、 会社法に基づく事業報告及び計算書類と金融商品取引法に基づく有価証券報告書という2つの開示書類を、 開示書類間の重複や微妙な違いを共通化することをいう。 「一体開示」とは、会社法に基づく事業報告等と金商法に基づく有価証券報告書を一体の書類として、同時に開示を行う方法であり、事業報告等と有価証券報告書が一つの書類として一体化することであり、一体的開示の最終形である。 また、有価証券報告書と事業報告等の 「一本化」とは、有価証券報告書を開示した上場会社は事業報告等を作成する義務を負わないとすることを指す。 「一本化」には、会社法改正等の関係法令の改正が必要となる。 「一体開示」は、事業報告等及び有価証券報告書の双方に記載しなければならない情報を内容とする1つの書類を作成及び開示するものであり、会社が事業報告等の作成義務自体を負わないものとするものではなく、この点で開示書類の「一本化」とは区別される。 現時点で「一体開示」を実際に行っている上場企業はないとのことである(2026年3月期以降に一体開示の適用を検討中の企業があるとのこと)。 2 現行法制下での一体開示 制度上は、会社法と金商法の両方の要請を満たす書類(「一体書類」という)を作成して、事業報告等として株主へ提供するとともに、株主総会に報告し、また、有価証券報告書として提出する一体開示を行うことができる。 この場合、開示書類には金商法及び会社法に基づいて作成されている旨が記載される必要があり、「有価証券報告書兼事業報告書」という書類名にすることなどが考えられる。 3 一体開示の課題 事業報告等と有価証券報告書を一体の書類として作成する一体開示を行う場合、現状の開示書類(法定開示・任意開示)作成のスケジュールや業務分担の見直しが必要になり移行コストが追加的に発生すること、スケジュール見直しの結果、特定の期間に作業が集中し、株主総会招集通知発送前の作業負荷が増大する懸念があることなどがあげられている。 一方、一体開示のメリットとして、開示書類作成の効率化、合理化により、非財務情報の充実等のより質の高い開示に人材と時間を活用することが可能となることなどがあげられている。 (了)
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《速報解説》 関東財務局、「関東財務局管内の上場企業における人的資本及び政策保有株式の開示と関連する取組について」を公表~参考となる企業にインタビューを行い、4事例をとりまとめる~
《速報解説》 関東財務局、「関東財務局管内の上場企業における人的資本及び政策保有株式の開示と関連する取組について」を公表 ~参考となる企業にインタビューを行い、4事例をとりまとめる~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2026年(令和8年)5月8日、関東財務局は、「関東財務局管内の上場企業における人的資本及び政策保有株式の開示と関連する取組」を公表した。 これは、令和7年度の有価証券報告書レビューのテーマとされた人的資本及び政策保有株式の開示と関連する取組について、他社においても参考になると考えられる企業にインタビューを行ってまとめたものである。 なお、本資料は、金融庁の有価証券報告書レビューの施策の一環ではないとのことである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 人的資本の開示 武蔵野銀行、ソシオネクストの開示及びインタビューの結果について紹介している。 開示における参考になる主なポイントとして、例えば、次のことが記載されている。 Ⅲ 政策保有株式の開示 ホッカンホールディングス、古河機械金属の開示及びインタビューの結果について紹介している。 開示における参考になる主なポイントとして、例えば、次のことが記載されている。 (了)
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《速報解説》 会計士協会、サステナビリティ及び外部の専門家の作業の利用等に関する「倫理規則」と「倫理規則に関するQ&A」の改正を公表~サステナビリティ保証業務における倫理に関する規則を新設~
《速報解説》 会計士協会、サステナビリティ及び外部の専門家の作業の利用等に関する「倫理規則」と「倫理規則に関するQ&A」の改正を公表 ~サステナビリティ保証業務における倫理に関する規則を新設~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2026年4月30日(ホームページ掲載日)、日本公認会計士協会は、サステナビリティ及び外部の専門家の作業の利用等に関する「倫理規則」の改正(定期総会に付議する予定の改正案の公表)及び「倫理規則実務ガイダンス第1号「倫理規則に関するQ&A(実務ガイダンス)」」の改正について公表した。公開草案に寄せられた主なコメントの概要とその対応も公表されている。 これにより、意見募集されていた次の公開草案が確定することになる。 ただし、「倫理規則」については、改正に当たって、日本公認会計士協会の定期総会での承認が必要となることから、今般公表するものは定期総会に付議する予定の「倫理規則」改正案であり、2026年7月22日開催の定期総会の承認後に確定となる予定である。また、「倫理規則実務ガイダンス第1号「倫理規則に関するQ&A(実務ガイダンス)」」の改正については、「倫理規則」の改正が定期総会で承認されることを前提としている。 これらは、サステナビリティ情報の開示と保証の制度化の議論が進められていることなどを踏まえ、改正するものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 「倫理規則」の改正(定期総会に付議する予定の改正案) Ⅲ 倫理規則実務ガイダンス第1号「倫理規則に関するQ&A(実務ガイダンス)」の改正 次の項目に関する改正を行う。 Ⅳ 適用日等 倫理規則の改正規定は、2027年4月1日から施行する。 各規定によって詳細な適用日が設けられている。 (了)
