件すべての結果を表示
お知らせ 会計 会計情報の速報解説 監査 税務・会計 財務諸表監査 速報解説一覧

《速報解説》 「監査及び四半期レビュー契約書の作成例」等の改正について ~監査基準委員会報告書800・805に準じ作成例を追加~

《速報解説》 「監査及び四半期レビュー契約書の作成例」等の改正について ~監査基準委員会報告書800・805に準じ作成例を追加~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成26年8月18日付で、 日本公認会計士協会は次のものを公表した。 これらは、契約締結に際して留意すべき事項や内容等について例示して会員の業務の参考に資することを目的とするものであり、利用に際しては、適宜、追加、削除、修正されることが想定されている。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正事項 1 財務情報の保証業務等の契約書の作成 「Ⅳ レビュー」の「4.レビュー契約書に記載する事項」において、従来は詳細な記載が行われていたが、「業務実施者が、レビュー報告書にその配布又は利用制限を付すことが想定される場合は、契約書上で、レビュー報告書の配布又は利用制限等について合意しておく。」と記載されている。 また、「Ⅵ 作成例」の「1.レビュー契約書の作成例」の12条(レビュー報告書の利用等)1項に、次の記載が行われている。   2 監査及び四半期レビュー契約書の作成例 研究報告第14号の範囲として、監査の対象については、完全な一組の一般目的の財務諸表(監査基準委員会報告書700第3項)だけでなく、完全な一組の特別目的の財務諸表(同800第2項参照)、個別の財務表又は財務諸表項目等(同805第1項参照)のいずれの場合も対象となることが記載されている。 適正表示の枠組みか、準拠性の枠組みかで、以下のように、監査契約書における表現が変わる箇所があると述べられている。 出所:研究報告第14号、Ⅲ、1(4)③ (了)
#81(掲載号)
#阿部 光成
2014/08/20
お知らせ 会計 会計情報の速報解説 固定資産 税務・会計 財務会計 速報解説一覧

《速報解説》 「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」等に関する改正(公開草案)について~現行法令との整合性を図る改正。ただし「特別目的会社」関係の改正に注意~

《速報解説》 「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」等に関する改正(公開草案)について ~現行法令との整合性を図る改正。ただし「特別目的会社」関係の改正に注意~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成26年8月18日、 日本公認会計士協会は次の公開草案を公表し、意見募集を行っている。 これらは、現在適用されている実務指針等について、いわゆるメンテナンスを行うものであり、現行の関連法令との整合性を図る修正、字句・体裁修正等を行っている。 ただし、①及び②については、従来の取扱いと異なるものを含む改正であり、特に削除される予定の24項及び25項について、注意が必要である。 また、③及び④については、新たな取扱いを定めるものではないとのことである。 意見募集期間は、平成26年9月19日までである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正事項 1 特別目的会社関係 次の改正を提案している。 上記の会計制度委員会報告第15号の改正に伴い、「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針についてのQ&A」の次のQ5が削除される。 2 外貨建取引等関係 「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」の「設例4 複数の外貨建金銭債権債務等と為替予約等との対応」における売掛金への為替予約の振当計算の明確化が行われている。 3 金融商品会計関係 金融商品会計に関するQ&AのQ16において、次の規定を設け、持分法の適用対象となっている子会社及び関連会社が保有する親会社株式等の取扱いを明示している。   Ⅲ 適用時期 特別目的会社関係については、Ⅱの1をご覧いただきたい。 「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」及び金融商品会計に関するQ&Aの改正については、現行の取扱いを変更するものではないため、確定版の公表日以後に適用することを予定している。 (了)
#81(掲載号)
#阿部 光成
2014/08/20
お知らせ 相続税・贈与税 税務 税務・会計 税務情報の速報解説 速報解説一覧

《速報解説》 「非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除」関係の改正措置法通達が公表 ~民事再生計画の認可決定があった場合の納税猶予税額の計算に係る5項目が新設~

 《速報解説》 「非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除」関係の 改正措置法通達が公表 ~民事再生計画の認可決定があった場合の納税猶予税額の計算に係る5項目が新設~   税理士 齋藤 和助   1 はじめに 国税庁は8月4日に「相続税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)」(課資2-12等,平成26年6月30日)を公表した。これは、平成25年度税制改正法及び26年度税制改正法等の施行等に対応したもので、本法関係では贈与税額控除、未成年者控除、措置法関係では相続時精算課税制度、事業承継税制、農地の納税猶予制度などが新たに手当てされた。 本稿は、その中から、「非上場株式等についての相続税の納税猶予及び免除」関係(別紙4)の改正点を整理した。   2 平成25年度税制改正のあらまし 事業承継税制は利用促進を図る観点から、平成25年度税制改正において、以下のように、さまざまな見直しが行われた。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。   3 事業承継税制の改正に係る通達 今回公表された通達のうち、上記改正により新設されたものは以下となる。 (1) 事業承継期間の雇用確保要件の緩和に係るもの (2) 民事再生計画の認可決定があった場合の納税猶予税額の計算に係るもの これらの改正後の取扱いは原則として、平成27年1月1日以後に贈与又は相続等により取得する財産に係る贈与税・相続税に適用される。 (了)
#82(掲載号)
#齋藤 和助
2014/08/18
お知らせ 相続税・贈与税 税務 税務・会計 税務情報の速報解説 速報解説一覧

《速報解説》 各控除額の見直し等に関する「相続税法基本通達」の改正が公表~平成27年以後の「相続開始前3年以内の贈与税額控除」の算出方法が明らかに~

 《速報解説》 各控除額の見直し等に関する「相続税法基本通達」の改正が公表 ~平成27年以後の「相続開始前3年以内の贈与税額控除」の算出方法が明らかに~   公認会計士・税理士 菊地 弘   1 はじめに 8月4日に国税局ホームページにおいて「相続税法基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)」が公表された。 今回の改正通達は、平成25年度税制改正及び平成26年度税制改正事項に係る改正となっており、“別紙1”から“別紙4”までの構成となっているが、本稿ではそのうち平成25年度税制改正事項に係る“別紙2”(相続税法基本通達「第2章 課税価格、税率及び控除」関連)に記載されている内容を取り上げる。 なお、“別紙2”の取扱いは、平成27年1月1日以後に贈与又は相続若しくは遺贈により取得をする財産に係る贈与税又は相続税について適用される。   2 過年度(平成25年度)税制改正事項の確認 まずは“別紙2”に関連する平成25年度税制改正の概要について確認しておく。 (1) 相続税 (2) 贈与税   3 “別紙2”で改正された通達項目について “別紙2”で示された通達項目は以下のとおりである(新設されたものはない)。 以下では、上記のうち注目すべき項目2点を取り上げる。   4 19-7(相続税額から控除する贈与税額の計算)について  相続税法基本通達19-7(相続税額から控除する贈与税額の計算)において、次の箇所が注記として追加された。 相続開始前3年以内に贈与があった場合に相続税額から控除する贈与税額の計算をする際、直系尊属から贈与を受けた場合の贈与税の税率の特例(措置法第70条の2の4:上記2(2))が創設されたことにより、平成27年1月1日以後は上記追加部分のとおり、贈与財産が「特例贈与財産」と「一般贈与財産」に該当する場合には、それぞれの財産別に算出し、その合計額を相続税額から控除する贈与税額とすることが明らかとなった。   5 19の3-3(胎児の未成年者控除)について 民法第886条では、(相続に関する胎児の権利能力)について「①胎児は、相続については、既に生まれたものとみなす。②前項の規定は、胎児が死体で生まれたときは、適用しない。」と規定している。 民法第886条に規定する胎児が生きて生まれた場合には、20歳に達するまでの年数は20年であるため、未成年者控除額はその子供1人につき10万円×20年=200万円となる(上記2(1)②)。相続税法基本通達19の3-3の下記改正内容は、このことを明示したものである。 (了)
#81(掲載号)
#菊地 弘
2014/08/15
お知らせ 会計 会計情報の速報解説 税務・会計 財務会計 速報解説一覧 開示関係

《速報解説》 「四半期財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等について~四半期会計基準に対応し企業結合に係る暫定的な会計処理が確定した場合の取扱いを示す~

《速報解説》 「四半期財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の 一部を改正する内閣府令(案)」等について ~四半期会計基準に対応し企業結合に係る暫定的な会計処理が確定した場合の取扱いを示す~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成26年8月8日、 金融庁は「四半期財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等を公表した。 公表された公開草案は次のとおりである。 公開草案は、平成26年5月16日付で改正された「四半期財務諸表に関する会計基準」(改正企業会計基準第12号)等に対応するものである。 意見募集期間は、平成26年9月8日までである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な改正事項 1 企業結合に係る暫定的な会計処理が確定した場合の取扱い 平成26年5月16日付で改正された「四半期財務諸表に関する会計基準」(改正企業会計基準第12号)等では、企業結合に係る暫定的な会計処理が確定した場合の取扱いが示されている。 公開草案は、当該「四半期財務諸表に関する会計基準」(改正企業会計基準第12号)等に対応するものである。 四半期連結財務諸表規則20条についても、四半期財務諸表等規則と同様の改正が提案されている。 参考までに、「四半期財務諸表に関する会計基準の適用指針」の該当箇所を示す。 2 財務諸表等規則関係 株主資本等変動計算書(様式第七号の二)の記載上の注意に、次の規定を設ける。 3 企業内容等開示ガイドライン関係 企業内容等開示ガイドライン5-21-2に、四半期連結財務諸表規則20条3項もしくは四半期財務諸表等規則15条3項に規定する暫定的な会計処理の確定について、規定を設ける。   Ⅲ 適用時期 平成27年4月1日以後開始する事業年度の期首以後実施される企業結合から適用する予定である(平成26年4月1日以後開始する事業年度の期首以後実施される企業結合から早期適用が可能)。 (了)
#81(掲載号)
#阿部 光成
2014/08/11
お知らせ その他お知らせ

Profession Journal No.81が公開されました!~今週のお薦め記事~

2014年8月7日(木)AM10:30、Profession Journal  No.81 が公開されました。 Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開してまいります。
#Profession Journal 編集部
2014/08/07
法人税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

monthly TAX views -No.19-「中小企業優遇税制の見直しは実現するか?」

monthly TAX views -No.19- 「中小企業優遇税制の見直しは実現するか?」   中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信 茂樹   6月に「骨太の方針」が閣議決定され、政府税制調査会(以下「政府税調」)の「法人税の改革について」という取りまとめも公開された。 法人税改革はこれから各論に移る。 筆者は従来から、法人税減税問題は、安倍内閣の消費税率10%へのコミットメントと同時セット、と言ってきたが、その展開になりつつある。 これは、「法人税減税と消費税10%引上げ」という選択肢と「法人税減税も消費税増税もなし」という選択肢を比べた場合、前者しかわが国の選択肢は残されていない、ということでもある。 *  *  * ところで、法人税改革は単に税率を引き下げるだけでは終わらない。 「課税ベースの拡大」がセットなので、地方税を含め実に広汎な分野、税制にその影響が及ぶことになる。 政府税調の議論を見ると、以下の8点が見直しの議題に上っている。 これを見ると、中小企業に関連する税制が多く含まれていることに気づく。 まず、租特の見直しであるが、この中には多くの中小企業租税特別措置が見直しの対象となる。例えば中小企業者等の法人税率の特例、中小企業投資促進税制、中小企業者等の少額減価償却資産の特例などである。 次に、中小法人の課税の見直しとして、現在資本金1億円以下と定義されていることについて、資本金基準で範囲を決めることの妥当性の是非、さらには、800万円以下の金額に適用される19%の軽減税率の見直し(時限的な15%の見直しは租特の見直しに含まれる)などが提案されている。 さらに、地方法人課税の法人事業税外形標準課税を、現在適用されていない資本金1億円以下にも拡大しようという議論も本格化する。最後に、「法人成り」の見直しも提言されている。 *  *  * このように今回の法人税議論は、多くの中小企業税制がその対象となっているのであるが、背景には、会計検査院の報告書と、経済同友会の報告書「税制提言成長を促す法人課税と財政健全化の実現を」(14年4月)がある。 前者は、「多額の所得を得ながら中小企業向け優遇税制を受けている企業が存在する」という指摘で、優遇税制の範囲を引き下げるべきではないかという指摘である。 後者は、「効率の悪いゾンビ企業は退場すべきだ」という考え方で、 と記述している。 わが国経済や雇用は中小企業が下支えしていることは明白な事実で、そこから多くの政策税制・租特も作られてきた。したがって、一概に中小企業いじめのような議論は、多くの中小企業者から異論・反論が出るだろう。また、税制で企業をパニッシュするという発想は、あまり好ましいとは思えない。 このようなことから、外形標準課税の1億円以下への適用などは、検討の過程で政治的に取り下げられる可能性が高いだろう。 しかし、今日、それらの特別措置が必要以上に存続しているのではないか、などの点について今回検証を行うこともまた必要であろう。 なぜ中小企業に対して大企業とは異なる税制が必要なのか、税率を引き下げるこの機会に、徹底的に議論しておく必要がある。 そうでなければ、法人税議論は、「切った貼った」だけの、バナナのたたき売りになってしまう。 税制は論理の上に成り立っているのである。 (了)
#81(掲載号)
#森信 茂樹
2014/08/07
法人税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

法人税改革の行方 【第3回】「受取配当の益金不算入と租税特別措置」

法人税改革の行方 【第3回】 「受取配当の益金不算入と租税特別措置」   慶應義塾大学経済学部教授 土居 丈朗   本連載で取り上げる今般の法人税改革における課税ベースの見直しに関して、今回は、受取配当の益金不算入と租税特別措置を取り上げる。   《受取配当の益金不算入制度~保有目的による線引きは可能か?》 まず、受取配当の益金不算入については、現行では持株割合が25%以上の株式の配当等の場合はその全額を、25%未満の場合はその50%を益金不算入としている(図1参照)。 そもそもこの仕組みは、法人間での受取配当に法人段階で益金算入すると二重課税になることに配慮して設けられた。政府税制調査会の「法人税の改革について」において、受取配当の益金不算入制度については、 とされた。 図1 法人の株式保有の目的が、単なる資産運用であれば、銀行預金に対しては法人にも利子所得税が課税されるが、株式なら配当に(一部)課税されないことで、資産選択に有利不利を生じさせる。その観点から、資産運用目的で保有する株式についての受取配当は益金算入(割合を拡大)する(図中の下向き矢印)と、この問題を解消するとともに、法人税の課税ベースを拡大するという考え方もある。資産運用目的で保有する株式は、持株比率にこだわりがないため、比率が小さい株式からの受取配当が、それに該当するとの見方もある。 他方、支配関係を目的とした株式保有からの視点で言えば、持株比率が25%という閾値は、会社法等で必ずしも重要な比率を意味するものではないことから、33%や50%という意味のある比率まで閾値を引き上げるという考え方もある(図中の右向き矢印)。 とはいえ、何をもって資産運用目的とみなすかは、単に持株比率だけでは割り切れないのが実態だろう。特に、銀行業における5%ルール(銀行法第16条の3)、保険業における10%ルール(保険業法第107条の1)があって、持株比率に税制とは別の理由で規制が設けられている場合、持株比率が小さいことを理由に益金算入割合を拡大すれば、あたかも狙い撃ちするかの如く課税してしまうことになりかねない。 また、支配関係を目的とした株式保有でも、共同出資による事業会社を立ち上げる際に、4社で等分出資すると持株比率は25%となるが、益金算入の持株比率の閾値を上げると、その受取配当は、現行制度では益金不算入なのに(一部)益金算入されることになり、事業展開にも影響を与える恐れがある。 そう考えると、支配関係を目的とする場合と資産運用を目的とする場合とで、受取配当の扱いを変えるということは論理的には言えても、実務的にはなかなか難しいのが実情だろう。   《租税特別措置の見直し~対象の選定をどう行うか?》 次に、租税特別措置についてみよう。 租税特別措置は、政府税制調査会の「法人税の改革について」でも、「その必要性や効果を常にゼロベースで検証していく必要がある。」と記されており、ゼロベースで見直して、不要なものは廃止縮減することをにおわせる表現となっている。ちなみに、法人税における租税特別措置による減収額は、2012年度で1.0兆円である(図2参照)。 図2[法人税額(国税)と税引き前利益の関係(平成24年度)]  (政府税制調査会第2回法人課税ディスカッショングループ「財務省資料〔課税ベースの拡大等〕」(2014年3月31日))   では、どのような租税特別措置が見直し対象となるだろうか。 減収見込額が大きいもので言うと、研究開発税制で3,952億円程度(2012年度分)、生産性向上設備投資促進税制で2,990億円程度(2014年度分)、所得拡大促進税制で1,050億円程度(2013年度分)、生産等設備投資促進税制で1,050億円程度(2013年度分)と1,060億円程度(2014年度拡充分)、中小企業等の法人税率の特例で961億円程度(2012年度分)となっている。 確かに、これらの廃止縮減に手をつければ、課税ベース拡大の効果は大きい。しかし、これらは、今年度や昨年度に創設・拡充されたものがあってそれを廃止縮減するとなると、安倍内閣としての政策の一貫性に疑義が生じる。 残るは、研究開発税制と中小企業向け減税である。 研究開発税制を仮に全廃してしまうと、研究開発に熱心な企業は増税になりかねない。単純に平均をとれば、研究開発税制を全廃した場合、法人実効税率を3.2%下げられなければ、研究開発税制を使っている企業は増税になるという計算になる。しかし、法人実効税率を1%下げるのに代替財源は約4,900億円と言われており、研究開発税制を全廃したとしても法人実効税率を1%も下げられない程度しか財源は捻出できない。 その上、法人実効税率を下げても、研究開発に熱心な企業に対して税負担を重くするとなれば、国の内外に向けてわが国の税制がそうした方向で改革されるというネガティブなメッセージを発してしまうことになる。 中小企業向けの減税は、確かに、リーマン・ショックに端を発した世界金融危機に対応して設けられた租税特別措置なので、役割を終えればやめる考え方がある。ただ、目下法人実効税率を引き下げるという改革に取り組んでいるさなかに、この租税特別措置をやめると税率引下げをやめることになるので、その整合性をどうとるかが問われよう。 (了)
#81(掲載号)
#土居 丈朗
2014/08/07
法人税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

事業者等から質問の多い項目をまとめた「生産性向上設備投資促進税制」の『Q&A集』について 【第1回】「A類型・B類型に共通する留意点」

事業者等から質問の多い項目をまとめた 「生産性向上設備投資促進税制」の『Q&A集』について 【第1回】 「A類型・B類型に共通する留意点」   経済産業省 経済産業政策局 産業再生課 課長補佐 矢口 雅麗   はじめに 質の高い設備投資を促進し生産性の向上を図るため、平成26年度税制改正にて「生産性向上設備投資促進税制」が創設された。 本税制は、対象業種や企業規模に制限がなく、対象資産の範囲も広く、税制措置として即時償却と税額控除が選択適用できるという非常に大胆な税制となっており、産業競争力強化法が施行された平成26年1月20日以降、既に半年間で延べ2万件を超える本税制による質の高い設備投資が見込まれている。 この度、本税制の理解を深め更なる利用を促す観点より、特に事業者等から質問の多い項目を「Q&A集」という形でまとめたので、その内容について解説を行いたい。 本税制は大きく分けて「先端設備(A類型)」と「生産ラインやオペレーションの改善に資する設備(B類型)」の2つの認定方法がある(〈表1〉参照)。まず第1回では、A類型・B類型に共通する留意点について説明する。 〈表1〉 (経済産業省「生産性向上設備投資促進税制について(平成26年7月)」p3)   〈1 対象設備について〉 まず、そもそも本税制は前提として、生産等設備を構成する機械装置等を新規で取得等し、自ら事業の用に供した場合のみを対象としている。 したがって、中古設備の取得については対象外となり【共-5】、資本的支出(既存設備の修理・改良等)についても建物を除き対象外となる【共-1】。 なお、中古設備とは「事業の用に供されたことのある設備」のことを指しており、例えば親会社が設備を一括調達し、それをそのまま子会社に引き渡す場合などは、中古設備には該当せず、本税制の対象となる【共-24】。 また、貸付資産については原則として貸す側・借りる側とも対象外となるが、リースを用いた場合には、ファイナンスリースであれば対象となり(ただし所有権移転外ファイナンスリースの場合は税額控除のみ利用可能で、即時償却・特別償却は利用不可)、オペレーティングリースであれば対象外となる点に注意いただきたい【共-13】。 また、生産等設備とは、平成25年度税制改正で創設された「生産等設備投資促進税制」における生産等設備と同義である。 「生産等」という名称から製造業しか対象にならないと誤解する方もいるが、そうではなく、業種に依らず、その法人が行う生産活動、販売活動、役務提供活動その他収益を獲得するために行う活動の用に直接供される減価償却資産のことを指す。 したがって、例えば製造業を営む法人の工場、小売業を営む法人の店舗、自動車整備業を営む法人の作業場などは生産等設備に該当し、本店機能しかない建物、事務用器具備品、従業員のための福利厚生施設などは生産等設備には該当しない【共-3】。   〈2 取得価額について〉 次に、本税制の対象となる金額、いわゆる取得価額についてである。 取得価額とは、①当該資産の購入対価に加え、②外部付随費用(引取運賃等)や③内部付随費用(据付費等)のうち減価償却資産として計上されるものの合計額を指す【共-6】。 購入した設備のみならず、自ら製作した設備も本税制の対象となる【共-4】が、その場合、原材料費だけでなく、当該資産の建設等のために要した労務費や経費等も取得価額に含まれる【共-17】。 また、本税制は補助金との併用が可能であるが、法人税制上の圧縮記帳の適用を受けた場合は、圧縮記帳後の金額が取得価額となる。補助金の交付年度が翌事業年度になる場合も、予定交付額を差し引いた価額が本税制の対象金額となる【共-8】。 設備の種類毎に定めている最低取得価額要件も、上述の取得価額にて判定される。例えば本体価額が150万円の機械装置について、据付費20万円を含めて170万円で資産計上を行った場合は、160万円以上という最低取得価額要件(機械装置の場合)を満たすこととなる。 また、200万円の機械装置(据付費等を含む)について、100万円の補助金を受領し圧縮記帳を行った場合、取得価額は100万円となり最低取得価額要件を満たさないことから、本税制措置を受けることはできない【共-15】。 なお、最低取得価額要件について、工具、器具備品、建物附属設備、ソフトウエアについては年度合計額要件(器具備品であれば、「単品30万円かつ合計120万円」)を設けており、その場合、「工具」「器具備品」といった設備種類単位で、各事業者の事業年度毎に合計額を算出して判定することとなる。例えば、「器具備品」の中で、60万円の検査機器と60万円の冷蔵庫を合計することも可能である【共-7】。 ただし、合計できるのは工具・器具備品・ソフトウエアであれば30万円以上の設備、建物附属設備であれば60万円以上の設備のみであり、例えば20万円の冷蔵庫を10台、合計200万円分を取得したとしても、最低取得価額要件を満たしたことにはならない。   〈3 制度の適用について〉 最後に、本税制の対象となった設備について、実際に税制を適用する際の留意点について説明する。 まず、同一法人内で複数の設備が対象となっている場合、設備単位で即時償却と税額控除を使い分けることが可能である【共-22】。例えば、税額控除について上限(法人税額の20%)まで使い、税額控除を使い切れなかった設備について即時償却をすることなどが考えられる。なお、あくまで使い分けは設備単位となっており、500万円の機械装置1台について、300万円分を税額控除、200万円分を即時償却とすることは不可である。 また、即時償却については、1年間の繰り越しが可能であり、例えば当年度に40%、翌年度に60%の償却を行うこと等が可能であるが、一方、税額控除については繰り越しは認められていない。(ただし、中小企業投資促進税制(上乗せ措置を含む)を適用する場合は税額控除についても1年間の繰り越しが可能。)【共-19】 なお、本税制における税額控除限度額は、その他の税制を適用する前の法人税額の20%が上限となっており、言い換えると、本税制における税額控除と他の税制における税額控除は累積することが可能である【共-20】。例えば、本税制で20%、所得拡大促進税制で10%、研究開発税制で10%の税額控除を受けた場合、合計40%の税額控除となる。 なお、当然のことながら、1つの設備について受けられる税制(特別償却・税額控除に係る税制)は1つのみであり、例えば同じ設備に対して本税制と中小企業投資促進税制を重複適用することはできない【共-18】。ただし、固定資産税の減免など、特別償却・税額控除に係る税制以外の税制との重複適用は可能である【共-21】。 *  *  * 以上が本税制を適用する際の共通の留意点であるが、ここに記載したほぼ全ての内容が税法に関するものであるため、個別案件について判断に迷う場合は、最寄りの税務署までご相談いただきたい。 今回はA類型・B類型共通の留意点にフォーカスしたが、次回以降はA類型における留意点やB類型における留意点についても解説を行いたい。 (了)
#81(掲載号)
#矢口 雅麗
2014/08/07
法人税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

建築物の『耐震改修工事』に伴う税務上の留意点~耐震改修促進税制を中心に~ 【第1回】「耐震改修法の改正により『耐震診断』が義務づけられた建築物」

建築物の『耐震改修工事』に伴う税務上の留意点 ~耐震改修促進税制を中心に~ 【第1回】 「耐震改修法の改正により『耐震診断』が義務づけられた建築物」   公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎   1 はじめに 地震予知は困難であるとはいえ、近い将来に高確率で巨大地震が発生するとの懸念が高まっている中、地震による被害を軽減するためには建築物の耐震化を推進することが非常に重要である。 とくに、平成7年に発生した阪神淡路大震災における甚大な被害の大半が、当時の耐震基準を満たさない建築物の倒壊等に起因して発生していたという状況を踏まえ、同年に「耐震改修促進法(建築物の耐震改修の促進に関する法律)が制定された。この法律によって、多数の者が利用する建物のうち現行耐震基準を満たしていないもの(特定建築物)等について耐震診断や耐震補強が努力義務として課されているほか、特定建築物の耐震化率については、平成27年(2015年)までに90%を達成すべきという数値目標が設定されているところである。 このような状況の中、さらなる耐震化の促進を目的として、平成25年(2013年)に同法が改正された。 この改正により、これまでは特定建築物に限り課されていた耐震診断及び耐震改修の努力義務が、耐震基準を満たしていないすべての建築物(既存耐震不適格建築物)に拡大されるとともに、特に耐震化が急がれる一定規模以上の建築物(以下2参照)については耐震診断(及びその結果報告)を義務化するとともに、その結果についても公表されることとなった。 このような背景を踏まえ、建築物の耐震改修の促進を税制面からも支援することを目的として、平成26年度税制改正において「耐震改修促進税制」(租税特別措置法第43条の2:耐震基準適合建物等の特別償却)が創設されることとなった。 そこで本稿では、主に耐震改修促進税制の内容について説明を行うとともに、その他一般的に耐震改修に伴う税務上の留意点について整理することとしたい。 なお本稿では、耐震改修促進税制のうち、港湾法に規定する特定技術基準対象施設について取得等した技術基準適合施設に関する特別償却(措法43の2②)については対象外とする。   2 耐震診断が義務づけられた建築物の範囲 耐震診断が義務づけられるのは、以下の要件を満たす建築物(以下総称して「耐震改修対象建築物」という)であり、それぞれ耐震診断結果の報告期日が異なっている。 「要安全確認計画記載建築物」(耐震改修促進法7) 「要緊急安全確認大規模建築物」(耐震改修促進法附則3①) (参考:国土交通省ホームページ) *  *  * 次回は耐震改修促進税制とその他の税務上の留意点について解説する。 (了)
#81(掲載号)
#鯨岡 健太郎
2014/08/07

記事検索

メルマガ

メールマガジン購読をご希望の方は以下に登録してください。

#
#