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現代金融用語の基礎知識 【第4回】「ビットコイン」
現代金融用語の基礎知識 【第4回】 「ビットコイン」 事業創造大学院大学 准教授 鈴木 広樹 1 ビットコインとは? 最近よく耳にするビットコインとは、インターネット上で流通する仮想通貨であり、その実体は暗号データである。「仮想通貨」と混同しがちな言葉に「電子マネー」があるが、それとは異なる。JR東日本のSuicaなどを思い浮かべるとわかるように、電子マネーは事前あるいは事後に入金する必要があり、あくまで円など実物のある通貨の裏付けを伴うものである。それに対して、ビットコインは、そうした通貨とは別の独立した仮想通貨なのである。 2 どのようにして取得するのか? ビットコインは、通常、その専門取引所で通貨と交換することにより取得できる。電子マネーのように入金するというわけではない。ビットコインを売りたい者と買いたい者が、その専門取引所でビットコインと通貨を交換するのである。 3 自分で探し出すことも? ビットコインは、その専門取引所で通貨と交換して取得するだけでなく、何と自分で探し出すこともできる。どういうことかというと、ビットコインの実体は暗号データなのだが、それを解読することにより自分で探し出すこともできるのである。これは、地中から金を掘り出すことに似ているため、「採掘」とよばれている。 4 価値がなくなるのでは? 「採掘」により自分で探し出すことが可能だとすると、無制限に発行されることになり、価値が低下していき、仕舞いには価値がなくなってしまうのではないかと思われる。しかし、そうではなく、プログラムにより発行量の上限が決まっているのである。そのため、需要が大きくなるほど価値が高まっていくことになる。 5 ビットコインのメリットは? ビットコインが普及している理由は、その便利さのためである。クレジットカードで商品やサービスを販売した場合、売上の数パーセントを手数料としてカード会社に支払わなければならないが、ビットコインの場合、そうした手数料はかからない。また、ネットを通じて世界中に送ることができるが、銀行を介するわけではないため、その場合の手数料もほとんどかからないのである。 【ビットコインの取得と利用】 6 課税は? そうした便利なビットコインだが、それについて考えると、様々な疑問がわいてくる。例えば、課税されるのか否かである。ビットコインの便利さに注目して、それで商品やサービスを販売している事業者が、日本国内にも存在する。しかし、ビットコインにより商品やサービスを販売した場合、税法上の収入に当たり、課税されるのだろうか? また、「採掘」によりビットコインを取得した場合はどうなのだろうか? 7 ビットコインのリスクは? ビットコインには、もちろんリスクもある。通貨のように中央銀行が発行量を調整するわけではないため、価値の変動が激しく、また、政府が管理するものではないため、価値が保障されているわけではなく、無価値になる可能性もある。その専門取引所も、現在のところ政府による規制の対象外のため、そこが破綻すれば、ビットコインを通貨に戻せなくなってしまうのである。 8 投資者保護か自己責任か そうした懸念が現実化したのが、ビットコインの専門取引所「マウントゴックス」を運営するMTGOXの破綻である(平成26年2月28日に民事再生手続申請)。これを受けて、政府はビットコインの規制に乗り出そうとしている。 しかし、その前に、投資者保護のためにしっかりと規制すべきなのか、それとも、規制は行わず、あるいは、行うとしても最低限にして、あくまで投資者の自己責任に委ねるべきなのかについて議論が必要なのではないだろうか。 今回のような事件があると、必ず投資者保護のための規制強化が行われる。そのため、わが国の金融商品に関わる法制度は、投資者を手厚く保護するものになっている。しかし、それが本当に良い方法なのだろうか。そうした方法では、自分で適切な投資判断を行える投資者がいつまで経っても育たないようにも思われるのだが。 (了)
読み物
連載
神田ジャズバー夜話 「11.ジントニック」
多分、ネットで調べたのだろう。知らない会社からバー向けの雑誌やら酒の通販カタログやらが送られてくる。その内の一冊に東京の有名なバー7店のジントニックを紹介しているものがあった。ジンはゴードンだ、ブードルスだ、ライムじゃなくてレモンだ、いや何も入れない、小さなグラスを使うとか店によってバラバラで、どの店も「これが辿り着いた究極のジントニックです」のようなコメントをしていた。 味覚は人によって嗜好が異なり、体調や気分でも変わる。つまり味については万人共通の絶対的評価が存在しない。それでも繁盛していて、多くの客から「ここのジントニックは最高だね」などと言われれば、店の人も「うちのが究極だ」などと言ってみたくなる。 「ふーん、言い切っちゃえばいいんだ」と思った。 時刻は11時半。1時間前から5人のグループ客が飲んでいる。 今夜の客はこのグループだけだ。カウンター席は5席あるが、話すのが目的らしいので4人掛けのボックス席に椅子を1つ足して5人纏めた。音楽は眠くなるようなジュリー・ロンドンを小さく流している。 話の様子から5人は同じ会社の人たちで、40代の男が部長で30代の男が課長、あとは20代の男が2人と女が1人。店に入ってからずっと部長の独演会が続いている。 課長はトイレへ立った帰りにカウンター席へ移動してしまった。20代の男の1人は座ったまま寝ている。女は口をつけていないモスコミュールが入ったグラスをじっと見つめている。もう1人の20代の男だけが部長の聴衆で、たまに頷いているが、やはり眠そうに見える。それでも部長は話を続ける。まだ誰も一杯目の酒を飲み切っていない。 「マスター、ジントニックください」カウンターで課長が2杯目を注文した。 ジントニックは細長いゾンビグラスに製氷機の角氷を5、6個入れ、ビーフイータージンを45ミリとトニックウォーターを注ぎ、最後に半割のライムのさらに1/5ぐらいをみかんの房みたいに切ったのを入れる。ごく普通のレシピのジントニックだ。 「いかがですか。ごく普通のレシピなんですけど結局これが一番だと思うんです」 「おいしいですねえ」 普通のものでもそれらしく一言添えればうまくなる。それは確かなようだ。 退屈なのでカウンター越しに課長と話を続けた。 「皆さんどちらまで帰るんですか」 「千葉とか埼玉とかバラバラですよ」 「まだ電車あるんですか」 「もう、そろそろヤバイですね。タクシーかな」 「いいですね。タクシー代が出るんですか」 「いや、自腹ですよ」 ここまで普通の声で話していたが、部長がトイレへ立った隙に課長に小声で訊いた。 「もう、帰りたい? 」 課長は黙って頷いた。ボックス席を見ると、寝ている男以外の2人も頷いている。 トイレで水を流す音がして部長が戻ってきた。 「マスター、全員にズブロッカ一杯ずつください」 「すいません、もう閉めますんで」 「えー、そうなんだ。じゃあ、お会計」 「はい、えーと6,100円です」 「ということは、ひとり1,200円でいいや、あと俺出すから」と部長は私に一万円札を差し出した。部下たちはゴソゴソと鞄や財布から千円札と小銭を取り出して部長に渡している。 若い3人が先に出て、釣り銭を確かめた部長も「じゃ、また」と続いた。課長が最後になったので話し掛けた。 「電車、大丈夫? 」 「もう、タクシーですね」 「おごりでもないんだ」 「いつものことです。でもジントニックはおいしかったです」 課長は重そうに膨らんだ鞄を肩に掛け、「次はひとりで来ます」と言い残した。 (了)
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開催期限せまる!〔3/24(月)開催セミナー〕【間違えると大変なことになる】広大地評価の実務~誤りやすい論点を裁決事例で確認~[講師:笹岡宏保氏]
〔3/24(月)開催セミナー〕 【間違えると大変なことになる】 広大地評価の実務 ~誤りやすい論点を裁決事例で確認~ 株式会社プロフェッションネットワーク主催のセミナー「【間違えると大変なことになる】広大地評価の実務~誤りやすい論点を裁決事例で確認~」の開催が、3月24日(月)とせまってまいりました。 ※このセミナーの受付は終了しました。 昨年よりご好評をいただいております税理士 笹岡 宏保氏による【1日で理解する】セミナーシリーズ。 今回は土地の評価のうち「広大地の評価」に論点を絞り、通達制定の趣旨、広大地の定義からその解釈運用について、基本的な考え方から既に現実に発生している実務における運用上の論点まで広範囲にわたって検討します。 特に、広大地の評価をめぐる最新の論点別に、当該論点を分析するうえで最適な裁決事例を確認分析することにより、実務上の勘所を養うことを目標とした内容です。 各回のセミナー内容は各々独立して1日単位で内容は完結しており、どの回からでもご受講いただけますので、この機会にぜひご参加ください。
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《速報解説》 「消費税法等の施行に伴う源泉所得税の取扱いについて(法令解釈通達)」のポイント
《速報解説》 「消費税法等の施行に伴う 源泉所得税の取扱いについて(法令解釈通達)」のポイント 税理士・社会保険労務士 上前 剛 1 概要 消費税が税率3%で最初に導入されたのが平成元年4月1日、税率5%に引き上げられたのが平成9年4月1日、そしてこの春、平成26年4月1日に8%へ引き上げられる。 これに対応する形で、平成元年1月30日に公表(直法6-1)、平成9年2月26日に改正(課法8-1)された「消費税法等の施行に伴う源泉所得税の取扱いについて(法令解釈通達)」が、平成26年3月5日付けで改正(課法9-1)された。 上記の通達は、 の3項目からなる。 課法8-1(平成9年改正)と今回の課法9-1を比較すると、「2 非課税限度額の判定」において、課法8-1では“105分の100を乗じた金額”という表現であったものが、課法9-1では“消費税及び地方消費税の額を除いた金額”という表現に改正されている。 上記以外は、課法8-1と課法9-1は全く同一の内容となっているが、改めて実務上の注意点について触れておきたい。 2 実務上の注意点 まず、「1 給与所得等に対する源泉徴収」については、現物給与を支払った場合にその現物の価額に消費税が含まれる場合は、消費税込の金額を給与として源泉徴収する。 例えば、4月1日以降に税抜価格10万円(税込価格10万8,000円)の商品を支給する場合、10万8,000円に対して源泉徴収しなければならない。特に、税抜経理を採用している場合、10万円に対して源泉徴収することのないよう注意が必要である。 次に、「2 非課税限度額の判定」については、所得税法基本通達36-22、36-38の2に定める非課税限度額の適用の判定にあたり、消費税抜の金額で非課税限度額を超えるかどうかの判定をする。 所得税法基本通達36-22は、一定の創業記念品等の評価額が1万円以下の場合には給与課税しないという規定である。つまり、1万円以下かどうかの判定を消費税抜の金額で行うことになる。 例えば、4月1日以降に税抜価格9,500円(税込価格10,260円)の創業記念品を支給する場合、9,500円≦1万円なので非課税となる。 特に、税込経理を採用している場合、10,260円>1万円と判定しないよう注意が必要である。所得税法基本通達36-38の2や直法6-5についても同様である。 最後に、「3 報酬・料金等所得等に対する源泉徴収」については、原則として報酬・料金等の金額に消費税を含めた金額を源泉徴収の対象とし、例外として報酬・料金等の支払いを受ける者からの請求書等において報酬・料金等の金額と消費税が明確に区分されている場合には、報酬・料金等の金額のみを源泉徴収の対象として差し支えないとされる。 (了)
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【重要】消費税率の変更に伴う各種サービスに関するご案内
【重要】消費税率の変更に伴う各種サービスに関するご案内 株式会社プロフェッションネットワークの各種サービスに関する消費税率引上げへの対応につきましては、こちらをご覧ください。
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Profession Journal No.61が公開されました!
2014年3月20日(木)AM10:30、Profession Journal No.61 が公開されました。 Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開してまいります。 Web情報誌 Profession Journalは、プロフェッションネットワークのプレミアム会員専用の閲覧サービスです。 Profession Journalについての詳細はこちら。 バックナンバー一覧はこちら。
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日本の企業税制 【第5回】「再び地方法人税課税をどうする」
日本の企業税制 【第5回】 「再び地方法人税課税をどうする」 一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 阿部 泰久 1 はじめに-地方法人課税の抜本改革を 従来の法人実効税率引下げは国税を中心に行われ、地方税は波及効果程度とされてきたが、法人実効税率を25%まで引き下げるためには、地方法人二税を今のままとして国税だけでとはいかない。今回は地方法人課税の抜本改革を正面に据えてかからなければ先には進めない。 法人所得を課税ベースとする税は、どのように加工しても不安定性、偏在性を免れることはできない。特に、財源を生む法人企業の活動が東京都をはじめとする大都市部に集中していることから、景気が良くなれば税収のアンバランスが拡大するという矛盾を解消することはできない。 平成20年度改正による地方法人特別税の創設、平成26年度改正による「地方法人税」という国税の創設などをみても明らかなように、地方法人課税改革は、法人所得を課税ベースとする法人住民税法人税割及び法人事業税所得割を個々の地方自治体から切り離し、地方全体の「共同税」とした上で、その比重を極力縮小することが出発点である。 そして、それに見合う財源は、①法人所得によらない地方法人課税、②その他の偏在性の少ない地方税を組み合わせることで捻出することが検討課題となる。 2 所得によらない地方法人課税 地方法人所得課税見直しの財源としてだけでなく、地方自治体の安定的な税収確保のためにも、所得によらない地方法人課税である法人住民税均等割及び法人事業税の外形標準課税の見直しは避けて通れないとの意見がある。しかし、実際にこれらをどこまで拡充できるのかは、慎重に考えなければならない。 * * * 法人、個人を問わず住民税の均等割は、地方自治体の行政サービスに要する費用の分担のあり方として至極、当然なものである。現在、法人住民税均等割の最少額(資本金等の額1,000万円以下、従業員50人以下の1事業所のみ、超過課税なしの場合)は7万円であるが、これを2倍程度に引き上げたとしても中小零細法人の経営を破綻させることはなかろう。一方、大企業で全国に事業所を展開しているような場合には数十億円を負担している例もある。 しかし、個人住民税均等割は本則4,000円、復興税を合わせても5,000円でしかなく、個人事業者と実態はそれほど変わらない零細法人の負担水準とは、明らかに不均衡である。仮に、法人住民税均等割を拡充するのであれば、個人住民税均等割の増税を合わせて行うべきであろう。 【法人住民税均等割】 ※市町村民税均等割については、制限税率(1.2倍)が定められている。 法人事業税外形標準課税の拡充は、さらに困難である。 第1に課税対象を資本金1億円以下の法人にまで広げることは、中小企業を対象に赤字法人課税を断行することと同義であり、消費税率を段階的に引き上げていく中では、政治的にも成り立たない。また、人件費が大部分を占める付加価値割部分を拡充することもできない。 そもそも、付加価値割は、消費税と課税対象が二重になっており、本来ならば地方消費税の拡充と合わせて縮小・廃止すべきところである。 資本割については、自社株買いの結果、課税がなされない大企業が現れるなど制度創設時には想定していなかった事態も生じており、見直しの余地はあり得る。しかし、仮に対象を現行どおり資本金1億円超の普通法人としたまま、資本割の課税方法に技術的な改正を加えることができたとしても、財源としてはいくらにもならない。 3 財源としての他の地方税 それでは、他の地方税で法人税減税の財源となりそうなものはあるのか。 まず第1に、個人住民税がある。そもそも、地方税としての個人所得課税のあり方をどうすべきかは大事な問題である。しかし、法人税減税の財源を個人所得課税の増税に求めることは、経団連としても本意ではない。前述のように、法人住民税均等割との関係で、個人住民税均等割を引き上げることがせいぜいであろう。 むしろ、個人住民税については、法人税減税の結果、従業員の給与水準が向上し、あるいは、配当が増加することなどによる「自然増収」がどの程度見込めるのかが課題とはなろう。 * * * 第2は、固定資産税である。地方税としては、地方自治体の独自財源に最もふさわしいものであり、偏在性は所得課税よりは少なく、安定性も地価の趨勢次第であるが、それなりに上向きに推移することが期待できよう。また、平成27年度は、3年に1度の固定資産税の大改正の節目でもある。 資産課税としての性格からは、地方法人二税の減税の代替財源として、法人企業が保有する資産について増税を行うとの議論はあり得ようが、特に償却資産課税については、経団連は明確に廃止・縮減を求めており、これを減税財源として考慮する余地はない。土地・建物についてどうするかは、固定資産税全体の課税のあり方の問題であろう。 一方で、個人の保有する資産、特に居住用資産の軽減措置の見直しは平成27年度改正で大きな議論となろうが、直接に、法人税減税財源とリンクさせることは、個人住民税以上に困難であろう。 * * * その他の税目では、金額的にもさしたる意味をもたないものばかりである。 新税の創設、特に「地方環境税」は、再度、税制改正のテーマとはなろうが、経団連としては絶対に反対である。仮にその税収を全額、法人税減税財源とされようが容認はできない。 4 おわりに 法人税改革には、地方法人二税の抜本的見直しは不可避であり、また、この機会を逃しては地方法人二税の改革はできない。そのための財源として、法人住民税均等割及び法人事業税の外形標準課税の見直しは課題となるであろうし、法人が保有する資産に対する固定資産税も議論になろう。 しかしながら、地方税の枠の中ですべてを完結させることには無理があり、地方交付税や譲与税を含め、国と地方との間で大きな財源調整が必要となろう。 (了)
消費税・地方消費税
税務
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まだある!消費税率引上げをめぐる実務のギモン 【第6回】「通信販売・予約販売の取扱いについて」
まだある!消費税率引上げをめぐる実務のギモン 【第6回】 「通信販売・予約販売の取扱いについて」 アースタックス税理士法人 税理士 島添 浩 (監修) 税理士 寺村 維基(執筆) 第6回である今回は、通信販売と予約販売を行っている場合における消費税率の適用について、以下の具体的な事例を交えて解説を行うこととする。 【解 説】 通信販売に係る売上げについても、原則として施行日(平成26年4月1日)以降に引渡しを行う商品の売上げは、施行日前に注文を受けたものであっても新税率が適用される。 なお、通信販売については、以下の経過措置が設けられている。 この経過措置は、指定日の前日(平成25年9月30日)までに商品の内容や価格等の販売条件を提示し(又は提示する準備が完了し)、その提示条件に基づいて平成26年3月31日までに申し込まれたものであることを事業者側で書類等により明らかにしている場合に、旧税率である5%が適用される。 ただし、経過措置の適用対象となる商品について、到着日が平成26年4月1日以後であるものから新税率である8%で請求することとした場合には、旧税率の5%と新税率の8%の差額3%は本体価格の値上げ請求をしたものと考えられ、経過措置の適用要件である「提示した条件に従って施行日以後に商品を販売」するものではなくなるため、経過措置の適用はなく新税率の8%が適用される。 なお、売上げについてこの経過措置の適用を受けた場合であっても、その商品の仕入れが施行日以後に行われた場合には、仕入れについては旧税率ではなく新税率が適用されることとなることに留意されたい。 また、オーダーメイドによる商品の販売については、「工事の請負等の税率等に関する経過措置」の適用対象となる可能性がある。 この場合、指定日の前日(平成25年9月30日)までに契約を締結している商品について、施行日以後に商品の受渡しを行うときは、その商品に係る対価の額(指定日以後にその契約に係る対価の額が増額された場合には、その増額される前の対価の額に相当する部分に限る)については、旧税率が適用される。 【解 説】 事業者が、指定日の前日までに締結した不特定かつ多数の者に対して定期的に継続して供給することを約する契約(※)に基づき譲渡する書籍その他の物品でその契約に定められたその譲渡に係る対価の全部又は一部を施行日(平成26年4月1日)前に領収している場合において、その対価の領収に係る書籍その他の物品の譲渡を施行日以後に行うときは、その領収した対価に係る部分の書籍等の譲渡については旧税率である5%が適用される(消費税法施行令附則第5条1項)。 ご質問の雑誌の定期購読契約は、指定日前に締結されており、購読料を1年分前払いで支払いを受けていることから、経過措置の適用がある。 なお、この経過措置の対象となる書籍その他の物品とは、雑誌等の定期刊行物などの書籍、食料品、化粧品、装花などの物品が対象であり、照会の定期刊行物のデジタル版などのように記事というコンテンツに加えて紙媒体と異なるシステム利用のためのサービスの提供は、役務の提供に該当するため、経過措置は適用されない。 また、毎月物品を発送し、都度代金を決済する場合には、指定日の前日までに契約を締結している場合であっても、指定日の前日までに領収した対価に係る部分の譲渡のみが対象とされるため、施行日以降に代金決済を行うものは経過措置の対象外となることに留意されたい。 (了)
相続税・贈与税
税務
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〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載57〕 改正医療法を踏まえた医療法人の持分に係る贈与税及び相続税の納税猶予制度の要件確認
〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載57〕 改正医療法を踏まえた 「医療法人の持分に係る贈与税及び相続税の納税猶予制度」の要件確認 税理士・行政書士 佐々木 克典 1 認定医療法人制度創設の背景 「経過措置医療法人」といわれる持分の定めのある社団医療法人は、平成25年3月31日時点において医療法人総数の86%である、4万1,903法人が存在する。 経過措置医療法人は、平成19年改正医療法附則により「当分の間」持分のあるものとして継続することが認められており、解散の際には残余財産が出資者に帰属する経済的価値があるものの、持分に相続税が課されることや、持分の払い戻し請求を受けるなどの問題点があった。 また厚生労働省は、『出資持分のない医療法人への円滑な移行マニュアル』を作成するなど、持分のない医療法人への移行を推進してきたが、移行は進まなかった。 そこで3年間に限り、持分のある医療法人から、持分のない医療法人に移行を推進する制度が、平成26年度税制改正において創設された認定医療法人における納税猶予制度である。 【参考図】 (厚生労働省ホームページより) 本稿では、この納税猶予制度の要件を確認するとともに、改正医療法を踏まえたうえでの制度上の問題点について触れてみたい。 2 認定医療法人の課税関係 納税猶予が行える課税関係は、次のパターンである。 このように納税猶予を受けられるのは、上記の3パターンのみであり、持分の贈与に対する贈与税や、過去に相続時精算課税制度による贈与を選択した者に対する相続税額などは猶予されない。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 3 認定医療法人の課税上の問題 経過措置医療法人が、持分のない医療法人に移行した場合、相続税が不当に減少すると認められるときは、持分の払い戻しを免除された医療法人は、個人とみなされ贈与税が課される(相法66の4)。 これは、認定医療法人といえども同様である。 認定医療法人から、特定医療法人に移行する場合や、特定医療法人並みに公益性の高い運営をしている医療法人には贈与税が課されないが、この要件を確実に満たすことができる法人はまれであろう。 例えば、次のような医療法人には贈与税が課される。 4 担保の提供 納税猶予を受けている受贈者や相続人は、猶予税額に応じた担保を提供しなければならない(措法70の7の5①)。 この場合、その受贈者等の納税猶予の適用に係る認定医療法人の持分のすべてを担保に供した場合には、猶予税額に対して担保が充足しているとみなされる(措法70の7の5⑩二)。 この担保提供は、おそらく、その出資持分に質権を設定することについての承諾書等を、税務署長宛に提出する方法によると考えられる。 5 移行計画認定方法 (1) 概要 納税猶予を受けるために、経過措置医療法人は、持分のない医療法人に移行するための取組みの内容や検討体制、移行の期限などの計画を作成し、その計画内容が適当である旨の認定を地方厚生局の局長(複数の厚生局管轄で施設を開設している場合は、厚生労働大臣)から受けなければならない(改正医療法10の3)。 (2) 認定を受ける移行計画の内容 認定を受けられる移行計画は、次の4つのパターンである(改正医療法10の3②)。 ①社会医療法人は、地域医療計画に定める救急医療計画を実施していなければ移行できず(医療法42の2)、②特定医療法人は、原則として40床以上の病院を開設していることが求められる(措法67の2)。 したがって、一般的な無床診療所を開設する医療法人が選択できる方法は、③または④のみである。 ③や④は、役員等への特別の利益提供の有無は、移行計画実施に際してほとんど確認されないと考えられるため、③や④を選択した医療法人に、贈与税が課される事例が出てくることが想定される。 (3) 移行計画認定のために必要な資料等 移行計画の認定を受けるには、移行計画書に①定款、②出資者名簿、③社員総会議事録、④移行計画の内容を記載した書面の添付が必要である。 したがって、移行計画を申請するには、まず社員総会において3分の2以上の決議を受ける必要がある。 (4) 移行計画中の報告 認定医療法人は、毎期決算日から6ヶ月以内に、移行計画の進捗などを記載した書面を、地方厚生局長に提出しなければならない(改正医療法10の5)。 社会医療法人の事業報告の提出期限が、毎期決算日から3ヶ月以内であるのに対し、認定医療法人の届出は6ヶ月以内とされている。おそらく、移行計画の実施がなされていない医療法人が想定できることに対して、実務的な対応策と考えられる。 認定医療法人が、移行計画に沿って、持分のない医療法人への移行を進めていない場合は、厚生局長は移行計画に認定を取り消すことができ、取り消された日から2ヶ月以内に、猶予税額に利子税を加算した額を納税しなければならない(措法70の7の5⑫)。 (了)
