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《速報解説》 三菱重工株式会社及び株式会社日立製作所による「特定事業再編計画」の認定第1号について~事業再編促進税制の適用~
《速報解説》 三菱重工株式会社及び株式会社日立製作所による 「特定事業再編計画」の認定第1号について ~事業再編促進税制の適用~ OAG税理士法人 税理士 辻 喜子 産業競争力強化法が平成26年1月20日から施行されたことにより、事業再編促進税制の適用が可能となった。 以下ではその適用第1号として経済産業省より公表された事例について紹介したい。 なお、事業再編促進税制の概要については下記をご覧いただきたい。 1 概要 適用第1号として、平成26年1月30日に三菱重工業株式会社(以下「三菱重工」という)及び株式会社日立製作所(以下「日立」という)の計画が同法に基づく「特定事業再編計画」として認定された。 両社は平成26年2月1日に、三菱日立パワーシステムズ株式会社(以下「MHパワーシステムズ」という)に吸収分割を行う方法により事業を承継した。 今回の認定により、両社の事業統合に伴う資本金の増加及び不動産の登記に係る登録免許税の軽減、並びに事業再編促進税制の適用を受けることができる。 【事業再編図】 (経済産業省ホームページより) 2 適用にあたって 吸収分割の結果、三菱重工が683株、日立が317株のMHパワーシステムズの株式を保有することとなり、その後、三菱重工が保有する株式33株を日立に譲渡することにより出資比率を三菱重工65%、日立35%とした。 当該吸収分割について、組織再編税制の適用関係は不明であるが、事業再編が税制適格か非適格であるかについては事業再編促進税制の適用に影響を与えない。 3 課税所得に与える影響 公表された資料によると、両社の出資金額は三菱重工が約2,200億円、日立が約1,100億円(いずれも帳簿価額ベース)とされている。 両社は、株式価格の低落による損失に備えるため、出資金額の70%相当額を限度として、それぞれ1,540億円、770億円の特定事業再編投資損失準備金の積み立てを行い、平成26年4月1日を含む事業年度の所得の計算上、損金の額に算入することができる。 なお、特定事業再編投資損失準備金の積立期間は最長で10年間であり、積立期間終了日を含む事業年度の翌事業年度から原則5年間で均等額を取り崩す。 したがって、トータルの納税額は変わらないが、課税が繰り延べられるためキャッシュフローを改善する効果が期待できる。 4 登録免許税の軽減税率 事業再編計画の認定により、分割による株式会社の設立又は増資の商業登記は0.5%(本則0.7%)不動産の所有権移転登記は0.4%(本則2.0%)の税率の適用を受けることが可能となる。
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《速報解説》 最高裁決定及び民法改正を踏まえた「相続法制検討ワーキングチーム」の設置と今後の見通し
《速報解説》 最高裁決定及び民法改正を踏まえた 「相続法制検討ワーキングチーム」の設置と今後の見通し 弁護士 木村 浩之 1 はじめに 親族・相続法制をめぐっては、昨年9月に、非嫡出子の法定相続分を嫡出子の2分の1とする民法の規定が違憲無効であるとの最高裁の判断が示され、これを受けて昨年12月には、同規定を削除する民法改正が実施された。 また、時を同じくして、昨年12月には、性同一性障害で戸籍の性別を変えた者の妻が第三者からの精子提供を受けて出産した子について、たとえ血縁上の親子関係がないとしても、その夫は法律上の父であると認める最高裁の決定がなされた。 これらの最高裁決定を契機として、民法制定当時から現在まで大きく変容してきた親族・相続に関する国民意識を踏まえ、改めて時代に即した相続法制の見直しをすべく、法務省において「相続法制検討ワーキングチーム」が設置された。 その第1回会議が今年1月28日に開催されており、議事の概要が下記の法務省ホームページに掲載されている。 本稿では、上記会議で議論の対象とされている事項につき、その概要を解説することとしたい。 2 指摘される問題点 今後の議論の進行によっては、項目の変更が予想されるものの、現時点で指摘される問題点は、概ね次の3点に整理される。 (1) 生存配偶者の居住権 同居夫婦のうちの一方が建物の所有名義人となっており、その者が死亡して他方が遺された場合、その生存配偶者の居住権が現行法制では必ずしも十分に保護されていないことが問題点として指摘されている。 これについては、生存配偶者の居住権を法律上付与することも含めて、検討の対象とされている。 (2) 配偶者の相続分 配偶者の相続分に関しては、 が議論の項目として挙げられている。 このうち、①については、夫婦間における財産の清算の場面として、離婚と相続が比較され、離婚時には財産形成の寄与に応じて分配されるのに対し、相続時には一定の法定相続分に応じて分配されることが必ずしも均衡していないのではないかという問題点が指摘されている。そのほか、兄弟姉妹の相続権のあり方についても言及がなされている。 また、②については、現行の制度では配偶者の貢献が十分に反映されない可能性があることが問題点として指摘されている。 (3) 遺留分制度 遺留分制度については、「被相続人の意思の尊重」と「相続人の相続権の保護」が相剋する問題として挙げられており、その具体例として事業承継の問題などが取り上げられている。 また、制度の見直しの前提として、そもそも遺留分制度の存在意義をどのように考えるかということも問題点として指摘されているところである。 3 今後の見通し 以上の議論は緒に就いたばかりであり、今後の見通しは不透明であるが、何らかの立法的措置につながる可能性は否定できない。特に、配偶者の相続分をめぐる議論は、過去にも実際の改正に結びついた経緯があり(昭和55民法改正)、何らかの見直しが図られる可能性がある。 そのほか、遺留分制度については、過去からも、その存在意義についての疑問が指摘されてきたところであり、何らかの見直しがなされる可能性があるといえる。 今後も、法務省ホームページにおいて議事の概要が公開される予定であり、その動向に注視する必要があるといえよう。 (了)
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Profession Journal No.56 公開のお知らせ
2014年2月13日(木)AM10:30、Profession Journal No.56 が公開されました。 Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開してまいります。 Web情報誌 Profession Journalは、プロフェッションネットワークのプレミアム会員専用の閲覧サービスです。 Profession Journalについての詳細はこちら。 バックナンバー一覧はこちら。
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酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第14回】「土地譲渡に係る所得税と相続税との二重課税問題(その2)」
酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第14回】 「土地譲渡に係る所得税と相続税との二重課税問題(その2)」 国士舘大学法学部教授・法学博士 酒井 克彦 Ⅳ この事案の問題点 この事案の裁判所の判断をみる前に、相続税と所得税の二重課税問題が争点となったいわゆる年金二重課税訴訟最高裁判決を確認しておきたい。同判決は、死亡した夫から生命保険会社を経由して、妻が受領した年金受給権が相続税の課税対象とされた上で、さらに、妻が生命保険を年金形式で受領する際に、雑所得として改めて所得税が課されることとなることが、二重課税であるとして、所得税法9条1項16号(訴訟当時は15号)の規定を適用して、かかる雑所得に対する課税が違法なものになると判示したものである。 最高裁平成22年7月6日第三小法廷判決(判時2079号20頁) 最高裁は、 とする。 また、 と判示している。 このように、最高裁は、年金二重課税訴訟では、所得税法9条1項16号は、 というのである。 これと同様の考え方が、父から子どもへの資産移転にも当てはまるのではないかというのが、本件におけるXの見解である。すなわち、父から子どもに死亡に伴う財産の移転があると相続税の課税対象となり、その上で、引き継いだ資産を子どもが第三者に譲渡する段階で譲渡所得課税がなされるのであるが、問題は、所得税法60条の規定があるため、父から相続により引き継いだ資産の帳簿価額は父の取得価額がそのまま引き継がれ、子どもが第三者に譲渡したときに子どもに課される譲渡所得には、父の代における含み益が混入されることになるという点である。そこで、上記の年金二重課税訴訟との関係を考えると、本件のような父から子どもへの資産移転の場面でも、年金の事例と同様に、本件建物等に相続税が時価課税されているのであるから、二重課税が発生しているのではないかという疑問が湧き上がる。 図表をみながら確認したい。父親から引き継いだ帳簿価額と子どもが第三者に譲渡をした際の譲渡収入との差額部分については、所得税が課されるということになろう。すなわち、アミ掛け部分(α部分とβ部分)が子どもの譲渡所得課税の対象となるとするのが、Yの考え方である。これに対し、相続税の時価評価課税された部分を上回るキャピタル・ゲインについては、子どもが保有していた期間に生じた価値増殖部分である。したがって、α部分のみに所得税が課されるのであれば、二重課税の問題は発生しないものの、β部分は相続税と所得税との二重課税が生じているということになりはしないかというのが、Xの主張である。 《図表1》 Ⅴ 判決の要旨 1 東京地裁平成25年7月26日判決(判例集未登載) 東京地裁は、相続により取得した資産の譲渡に係る譲渡所得のうち、被相続人の保有期間中の増加益に相当する部分については、本件非課税規定により所得税が課されない旨のXの主張について、 とする。 また、 とした上で、 とするのである。 * * * 次に、Xが、所得税法60条1項1号は所得の範囲を確定する計算規定であり、本件非課税規定は所得に該当するものの中から所得税を課さないものを選別する規定であるから、同号に従って計算した結果、所得に該当するものであったとしても、そのことをもって本件非課税規定の適用が排除されるということはできないと主張した点に対して、東京地裁は次のように論じた。 * * * これらを検討の上、東京地裁は、「Xの更正の請求には理由がないということができる。」として、「本件通知処分は適法である。」との判断を下した。 2 東京高裁平成25年10月23日判決(判例集未登載) この事件は控訴されたが、控訴審東京高裁平成25年10月23日判決(判例集未登載)は原審判断を維持したのである。 (続く)
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平成26年3月期 決算・申告にあたっての留意点 【第2回】「商業・サービス業・農林水産業活性化税制・研究開発税制」
平成26年3月期 決算・申告にあたっての留意点 【第2回】 「商業・サービス業・農林水産業活性化税制・研究開発税制」 OAG税理士法人 税理士 中島 加誉子 【商業・サービス業・農林水産業活性化税制】 青色申告法人である中小企業者等で認定経営革新等支援機関による経営改善に関する指導・助言を受けたものが、平成25年4月1日から平成27年3月31日までの間に、その指導・助言を受けて行う店舗の改修等に伴い器具備品及び建物附属設備の取得等をして指定事業の用に供した場合には、特別償却か法人税額の特別控除(資本金等が3,000万円以下の中小企業者等のみ)の適用が受けられる。 〈適用対象資産〉 〈指定事業〉 〈特別償却額〉 〈法人税額の特別控除額〉 〈事業供用年度〉 〈書類の添付〉 【参考図】 (財務省「平成25年度税制改正」より) 【「指導及び助言を受けた旨を明らかにする書類」のイメージ】 (中小企業庁ホームページ「商業・サービス業の設備投資を応援する税制ができました」) 【研究開発税制の拡充】 〈控除限度額の引上げ〉 〈特別試験研究費の範囲拡大〉 【参考図】 (財務省「平成25年度税制改正」より) (了)
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提出前に確認したい「国外財産調書制度」のポイントQ&A 【第6回】「調書の記載事項と注意点」
提出前に確認したい 「国外財産調書制度」のポイントQ&A 【第6回】 (最終回) 「調書の記載事項と注意点」 公認会計士・税理士 前原 啓二 Q 国外財産調書(調書施規12⑥、別表第二)と国外財産調書合計表(調書通5-14、表1)の両方を所定の様式に記載して提出することとされていますが、このうち、国外財産調書はどのように記載するのですか。 A 国外財産調書には、国外財産を、(一)土地、(二)建物、(三)山林、(四)現金、(五)預貯金、(六)有価証券、(七)貸付金、(八)未収入金、(九)書画骨とう及び美術工芸品、(十)貴金属類、(十一)(四)、(九)及び(十)に掲げる財産以外の動産、(十二)その他の財産の区分に分け、それぞれの区分ごとにa.「種類別」、b.「用途別」及びc.「所在別」の「価額」及び「数量」等を記載する。用途別は、一般用及び事業用の別とする。 要約すると次のとおりである。 〈調書施規12①、別表第一〉 (一)土地 (二)建物 (三)山林 (四)現金 (五)預貯金 (六)有価証券 (七)貸付金 (八)未収入金(受取手形を含む。) (九)書画骨とう及び美術工芸品 (十)貴金属類 (十一)(四)、(九)及び(十)に掲げる財産以外の動産 (十二)その他の財産 〈様式見本〉 【国外財産調書】 ※画像をクリックすると、国税庁ホームページに移動します。 【国外財産調書合計表】 ※画像をクリックすると、国税庁ホームページに移動します。 (国税庁ホームページより) (連載了)
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〔しっかり身に付けたい!〕はじめての相続税申告業務 【第15回】 「死亡保険金・死亡退職金」
〔しっかり身に付けたい!〕 はじめての相続税申告業務 【第15回】 「死亡保険金・死亡退職金」 税理士法人ネクスト 公認会計士・税理士 根岸 二良 今回は、死亡保険金及び死亡退職金について考えることとする。 被相続人が受取人になっている死亡保険金及び死亡退職金は、基本的には、法律上相続財産には該当しない。したがって、法律上の相続財産には該当しないが、相続税の計算上は、みなし相続財産として、相続税の対象に含まれることとされている(相続税法3)。 このように、死亡保険金及び死亡退職金はともに相続税の対象となるのであるが、一定の金額までは相続税が非課税となることとされている(相続税法12)。 具体的には、以下の金額までは、相続税がかからないとされている(*1)。 〔死亡退職金〕 被相続人が企業オーナーでない場合には、基本的には死亡退職金を受領することはほとんどないと考えられる(企業オーナーでなく、会社員で死亡保険金を受領するケースの例としては、不慮の事故・病気などで若い年齢で他界した場合に、死亡保険金を受領するケースがある)(*3)。 ただし、個人事業主(一定規模以上の不動産賃貸事業者も含む)の場合に、小規模企業共済に加入しているケースがあり、共済契約者が他界した場合に支払われる共済金は、死亡退職金として、相続税の対象になるので留意が必要である。 小規模企業共済に加入しているか否かは、被相続人の過去の所得税確定申告書を確認し、小規模企業共済等掛金控除があるか否かをチェックすれば、基本的にはわかる(所得控除を失念している可能性もゼロではないので、預金通帳のチェックを行う際に、小規模企業共済への掛金支払がないか、同時にチェックを行う必要がある)。 〔死亡保険金〕 生命保険会社から支給されるものでも、死亡保険金に含まれるものと含まれないものがある。他界前の、入院日数に応じて支給される金額、手術に対して支給される金額などは、死亡によって支払われるものではないので、(他界時に未払いとなっていても)死亡退職金には含まれない(相続税基本通達3-7、これらのうち他界時に未払いのものは未収金として相続財産に含まれることになる)。死亡保険金は、あくまで死亡したことによって支払われるものに限定される。 ただし、保険契約に基づき分配を受ける剰余金、割戻しを受ける割戻金及び払戻しを受ける前納保険料の額で、保険契約に基づき保険金とともに保険契約に係る保険金受取人が取得するものは、死亡保険金に含むこととされている。 死亡保険金については、基本的には、相続後、相続人が受け取っていることが多いため、相続人に確認すれば、把握できると考えられる。ただし、何らかの事情で把握漏れとなる可能性もあり得るので、被相続人の所得税確定申告書(給与所得の源泉徴収票)の生命保険料控除の有無、預金通帳のチェックを行う際に、生命保険料の支払いの有無、支払先の生命保険会社名を、確認する必要がある。 (了)
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居住用財産の譲渡所得3,000万円特別控除[一問一答] 【第18問】「転勤により空家とした後も継続して管理している場合」-居住用財産の範囲-
居住用財産の譲渡所得 3,000万円特別控除 [一問一答] 【第18問】 「転勤により空家とした後も継続して管理している場合」 -居住用財産の範囲- 税理士 大久保 昭佳 Q 会社員Xは、東京都杉並区にある家屋に居住し、新宿区の本社に通勤していましたが、5年前に神奈川県小田原市の営業所へ転勤となったことから、同市の社宅に家族と共に転居し、そこから営業所に通勤していました。 営業所勤務は2年間ほどで終わり本社へ戻るものと考えていたため、家財道具類も最少限度の移転にとどめ、戸締りはしたものの、月に一度はその杉並区の家屋に帰り、清掃等を行うほか寝泊りをすることもあり、他人に貸すということはしませんでした。 結局のところ営業所勤務が長くなったことなどから、小田原に新居を構えることとし、杉並区の家屋は売却しました。 この場合、「3,000万円特別控除(措法35)」の特例を受けることができるでしょうか? A 「3,000万円特別控除」の特例の適用を受けることはできない。 〈解説〉 居住の用に供さなくなった後も将来一定の時期に使用することを予定して、それ相応の事実支配、管理を行ったとしても、居住の用に供している家屋には該当しない。 したがって、居住の用に供さなくなった家屋を法定期限内(その居住の用に供されなくなった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日まで)に譲渡していないことから、「特例」の適用を受けることはできないこととなる(措法35①)。 (了)
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貸倒損失における税務上の取扱い 【第11回】「子会社支援のための無償取引⑦」
貸倒損失における税務上の取扱い 【第11回】 「子会社支援のための無償取引⑦」 公認会計士 佐藤 信祐 第6回目から第10回目までは、無利息貸付け、低利貸付けに係る法人税法上の取扱いについて解説を行った。 第11回目以降においては、所得税法の判例である「平和事件」について分析し、法人税法と所得税法における無利息貸付けの考え方の違いを明らかにすることにより、法人税法第22条の収益認識、同法37条の寄附金についての考え方について考察する予定である。 6 平和事件 (1) 第1審・東京地裁平成9年4月25日判決(訟月44巻11号1952頁、判時1625号23頁、税資223号500頁) ① 判決の概要 第1審においては、所得税法第157条に規定する同族会社等の行為計算の否認を適用し、無利息貸付けによる利息相当分の雑所得を認定することについて、違法性がないものとして原告の請求を棄却した。 本判決は、法人税法第22条に相当する条文がないことや、所得税法第36条に規定する「収入」の意義が法人税法に規定する「収益」の意義と異なることから、同族会社等の行為計算の否認を適用せざるを得なかったという意味で、法人税法と所得税法の違いを感じる事件である。 なお、本事件においては、原告に訴えの利益があるか否か、国税不服審判所の手続きの瑕疵、所得税法第64条を適用又は類推適用する余地があるか否かなども争点となっているが、本稿においては、無利息貸付けに伴って認定利息を計上すべきか否かという点に限って解説を行うこととする。 ② 被告側(桐生税務署長)の主張 ③ 原告側(納税者)の主張 ④ 裁判所の判断 ⑤ 総括 このように、第1審判決では、被告の主張を全面的に認め、原告の主張は棄却された。 現在の実務においては、オーナーから同族会社に対して、無利息貸付けを行うということは頻繁に行われており、それほど大きな問題になることが少ないことを考えると、本事件は、かなり特殊な事案であると考えられる。 また、法人と異なり、経済合理性のみで行動するわけではない自然人において、このように厳しい対応がなされたという点は違和感が残るところである。それでもなお、法人税法における無利息貸付けとは異なる理屈で判決が行われているという点は注目に値する判決である。 次回以降では、控訴審判決、最高裁判決について触れたうえで、さらなる詳細な分析を行い、法人税法との違いについて明らかにする予定である。 (了)
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〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載52〕 外国子会社合算税制に係る外国税額控除制度における無税国に所在する特定外国子会社等に係る益金算入額の取扱い
〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載52〕 外国子会社合算税制に係る外国税額控除制度における 無税国に所在する特定外国子会社等に係る益金算入額の取扱い 税理士 郭 曙光 特定外国子会社等がその所得に対して外国法人税を課さない国又は地域(以下、「無税国」という)に所在する場合には、外国子会社合算税制に係る外国税額控除限度額の計算における特定外国子会社等に係る益金算入額の取扱いは、その特定外国子会社の本店所在地国以外の国で課税されるか否かによって異なる。 1 無税国に所在する特定外国子会社等に係る益金算入額の取扱い 内国法人が外国子会社合算税制の適用を受ける場合には、その内国法人に係る特定外国子会社等の所得に対して我が国で課税が行われるとともに、その特定外国子会社等の所在地国においても課税が行われ、同一の所得に対して二重に課税が行われることとなる。 このような二重課税を排除するために、外国子会社合算税制の適用を受けた場合にも、外国税額控除を受けることができるように措置されている(図表1参照)。 この外国子会社合算税制に係る外国税額控除制度においては、特定外国子会社等の所得に対して課される外国法人税の額のうち、内国法人の収益の額とみなして日本で合算課税される所得に対応する部分の金額をその内国法人が納付する「控除対象外国法人税の額」とみなして、外国税額控除制度(法法69)の規定を適用することとされている(措法66の7①)。 【図表1】 特定外国子会社等に係る二重課税及び排除 平成25年度税制改正前は、内国法人の所得の金額の計算上益金の額に算入された金額(益金算入額)は、外国税額控除制度における控除限度額の計算基礎である「国外所得」に含まれるが、無税国に本店等を有する特定外国子会社等に係る益金算入額は、「国外所得」に含まれないこととされていた(旧措令39の18⑨)。 しかし、特定外国子会社等の所得に対してその本店所在地国以外の国で課税されるものがある場合においても、その無税国に所在する特定外国子会社等に係る益金算入額を国外所得から除外するということになると、外国税額控除限度額が算出されず、二重課税が生ずることとなる。 このため、二重課税の排除を適切に行い、「非課税国外所得」の取扱いとの差異(注)を解消するという観点から、平成25年度税制改正において、この無税国に所在する特定外国子会社等に係る益金算入額の取扱いについて見直しが行われた。 すなわち、特定外国子会社等の所得に対して、その特定外国子会社の所在地国以外の国で課税される外国法人税の額がある場合は、無税国に所在する特定外国子会社等に係る益金算入額であっても、その全額を国外所得金額に含めることとされた(措令39の18⑨括弧書き(図表2参照))。 【図表2】 無税国に所在する特定外国子会社等に係る益金算入額の取扱い これにより、特定外国子会社等が無税国に所在していても、その所得のうちその本店所在地国以外の国で課税されるものがある場合には、その無税国に所在する特定外国子会社等に係る益金算入額の全額を国外所得金額として外国税額控除限度額を計算することになり、二重課税の排除が可能となった。 2 処理例 外国子会社合算税制に係る外国税額控除制度における「控除できる外国税額」及び「国外所得金額」の計算は、次の図表3のとおりである。 平成25年度税制改正により、本店所在地国以外の国で課税される外国法人税の額がある場合の無税国に所在する特定外国子会社等に係る益金算入額の全額が国外所得金額とされたわけだが、この改正は、国外所得金額と外国税額控除限度額の計算にどのような影響を与えたかについて、改めて計算例で比較してみよう。 図表4で分かるように、平成25年度税制改正前においては、特定外国子会社等の所得のうちに第三国で課税されたもの(50)があるにもかかわらず、無税国に所在する特定国子会社等に係る益金算入額の全額(150)が国外所得金額に含まれず、外国税額控除限度額が零となって二重課税(15)が生ずることとなっていた。 平成25年度税制改正後は、無税国に所在する特定外国子会社に係る益金算入額の全額(150)が国外所得金額とされるため、外国税額控除限度額が算出されて二重課税が排除できることとなる。 【図表4】 比較計算例 (注) 財務省の平成25年度改正関係参考資料(国際課税関係)の図を参考にして作成。 ところで、この改正は、第三国で課税された所得(50)のみならず、二重課税が生じていない無税国である本店所在地国で得た所得(100)までを国外所得金額に含めることとなる。 外国税額控除限度額については、我が国は一括限度方式を採用しているため、この非課税とされる国外所得(100)によって作られる控除枠が高率の外国法人税額の控除枠として流用されるという彼此流用の問題が生ずることとなる。 平成25年度税制改正の解説においては、この控除枠の彼此流用問題に関して何も触れていないが、二重課税の排除を優先した結果ではないかと推測される。 (了)