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労務・法務・経営 経営

顧問先の経理財務部門の“偏差値”が分かるスコアリングモデル 【第29回】「経費管理のKPI(その③ 支払承認)」

顧問先の経理財務部門の “偏差値”が分かる スコアリングモデル 【第29回】 「経費管理のKPI (その③ 支払承認)」   株式会社スタンダード機構 代表取締役 島 紀彦   はじめに 今回は、経費管理を構成する複数のKPIから、経費支払の「支払承認」に関連する業務プロセスを評価するKPIを取り上げる。 経費管理においても、仕入・買掛債務管理の場合と同様に、事前に取引内容の承認を経て、発注、物品や役務の検収、請求書の受領、支払承認という手続を経る必要があるが、経費管理の対象となる取引件数が多い会社では、あらかじめ設定した予算の範囲内であれば、個別の事前承認を経ないで発注し、請求書を受領した時点で取引承認と支払承認を兼ねる簡便な承認手続で済ませる場合もある。そこで、経費管理においては、支払承認にかかる事務処理のあり方が、効率性や正確性を左右する。 そこで、今回は、経費支払の業務プロセスから得られる情報を活用して、効率性や正確性を評価するKPIを紹介しよう。   KPIが設定された業務プロセスの確認 まず、経済産業省スタンダードで整理された業務プロセスを引用しながら、このKPIに対応する業務プロセスを押さえておこう。 経済産業省スタンダードでは、経費管理において、会社が担う一般的な機能を、「年度予算管理」と「日常管理」に分けている。 今回解説するKPIは、「日常管理」を構成する「通常経費処理」、「仮払決済」、「差額決済」に共通して現われる経費支払に関連する業務プロセスにおいて設定されている。 〈経済産業省スタンダード:経費管理で会社が担う機能〉 (経済産業省「経理・財務サービス スキルスタンダード」より)   さらに、経済産業省スタンダードでは、経費支払に関連する業務プロセスを「通常経費処理」に対応させて明記していないが、「仮払決済」と「差額決済」に対応させて次のようにまとめている。 〈経済産業省スタンダード:7.4.1使用内容精査〉   〈経済産業省スタンダード:7.4.2振替計上〉   〈経済産業省スタンダード:7.5.1差額決済準備〉     〈経済産業省スタンダード:7.5.2支払依頼〉     〈経済産業省スタンダード:7.5.5差額決済準備〉   (経済産業省「経理・財務サービス スキルスタンダード」より)   「通常経費処理」、「差額決済」、「仮払決済」における経費支払の業務プロセスの概要は前回述べたので、このKPIと関係する要点のみ触れる。 「通常経費処理」、「差額決済」のいずれも、その経費を必要とする主管部門が取引先から請求書等の証憑を受領した後、勘定科目、取引日、取引金額、取引先等を明記した支払依頼書を作成する。支払依頼書の内容が承認されれば、経費として計上される。支払依頼書を支払伝票と呼ぶ会社もあるだろうが、両者は機能において同じである。 「仮払決済」における経費支払では、金銭の支出後、主管部門が取引先から領収証等の証憑を受領した後、勘定科目、取引日、取引金額、取引先等を明記した振替伝票を作成する。振替伝票の内容が承認されれば、経費として計上される。 今回のKPIは、このような経費支払に関連する業務プロセスを前提に、請求書受領日から支払承認完了日までの平均日数を問うものである。   定義を理解する 調査項目の文言から、KPIの定義を確認しよう。以下、KPIの項目を再掲する。 「起票部門」とは、請求書に基づき支払承認の対象となる経費伝票を起票する部門をさす。 通常はその経費を使う主管部門が該当する。 経理財務部門が使う経費の主管部門となる場合はもちろん、経理財務部門が他の主管部門の経費の経費伝票を起票する会社では経理財務部門が該当する。 「請求書受領日」の定義は不明確ではないだろうが、記録に残していないことが多い。 そのような場合は、「請求書受領日」として、請求書に記載された発行日を使う。 「支払承認」の定義は、実務によって分かれる。 もっとも、①の場合でも、経費の取引承認のために請求書が必要であれば、結局、KPIの測定値の日数は、②の場合と同じになる。 「経理財務部における支払承認」とは、「支払承認」を経理財務部門が行うことを前提にした定義だが、主管部門が「支払承認」を行う場合、主管部門における支払承認をさす。 「平均」とは、承認対象となる経費管理の取引の請求書受領日から支払承認完了日までの日数を合算して、それを承認対象取引の件数で割った平均値をさす。 データを取る場合、前月1ヶ月のデータに基づいて記入すればよい。   KPIの背景にある価値判断 スコアリングモデルでこのKPIを設定したのはなぜか。 このKPIは、経費支払の承認を早期に完了することが望ましいという単純な価値判断に基づいて設定されている。 経費支払の承認を早期に完了することに、どんな意味があるのか。 もし会社の中で、このようなKPIを設定した価値判断が共有されない場合、どういう事態が想定されるのか。 まず、そのような会社では、経費支払の承認まで時間がかかってしまうので、取引先に対する支払の遅延が起こりやすい。 さらに、経費計上の期ずれや計上漏れが多く発生するため、正しい財務諸表を作成するためには、後工程である決算作業に大きな負荷がかかり、決算の完了が遅れてしまう。   顧問先のKPIを測定してみる では、実際にどのような手続でKPIを測定するのか。 まず、読者は、顧問先の経理財務業務を観察し、請求書の受領から支払承認までの業務プロセスが組み込まれていることを確認していただきたい。 それを前提に、例えば、一定期間の経費支払承認伝票と請求書又は台帳を試査により閲覧し、請求書又は台帳に記録された請求書受領日から経理財務部門における承認日までの平均日数を算出していただきたい。 さて、読者の顧問先において、請求書受領日から支払承認完了日までの平均日数は何日になっただろうか。 *  *  * 次回も、引き続き「経費管理」を構成する複数のKPIから、「仮払処理」に関連する業務プロセスを評価するKPIを取り上げる。 (了)
#50(掲載号)
#島 紀彦
2013/12/26
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女性会計士の奮闘記 【第12話】「P子の失敗」

女性会計士の奮闘記 【第12話】 「P子の失敗」   公認会計士・税理士 小長谷 敦子   ◆  ◆  ◆ ◆ワンポントアドバイス◆ 原則と特例、また原則だけではなく、簡易的な方法が認められている場合には、その適用要件をよく検討する必要があります。考えうるケースでシミュレーションをして、有利不利を考えましょう。 その際、他の担当者に頼んで、違った眼で見てもらったり、数人で検討会を行うことも必要です。 そして、検討した結果をお客様によく説明して、最終的な意思決定はお客様にしていただきましょう。 (了)
#50(掲載号)
#小長谷 敦子
2013/12/26
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税理士・公認会計士事務所[ホームページ]再点検のポイント 【第12回】「現実世界の取組みでホームページの訪問者を増やす」

税理士・公認会計士事務所 [ホームページ]再点検のポイント 【第12回】 「現実世界の取組みで ホームページの訪問者を増やす」   データライズ株式会社 代表取締役社長 公認会計士・税理士 河村 慎弥   前回は、「集客できる」良いホームページになるためには、まず「ホームページの訪問者数が多く」、次に「訪問者数に対する問合せ件数の比率が高い」ことが必要だということからスタートしました。 そして、これらの効果を測定するためには、事務所ホームページへの訪問者数を調べる(アクセス解析をする)必要があり、その方法として、グーグル・アナリティクスを使った方法のご紹介、また「アクセス解析でどのようなことがわかるのか?」についてお話しました。 これでようやく、訪問者数を増やす準備ができました。 今回からは、事務所ホームページへの訪問者数はカウントできるとして、 というお話です。 これには、 と とがあります。 前者①では、皆さんの名刺や事務所のチラシ・封筒などに事務所ホームページのアドレス(URL:ユー・アール・エル)を印刷する方法がよくありますね。 後者②では、検索サイト(グーグルやヤフー)などから呼び込む方法が多くとられています。 今回は上記の「① 「現実の世界」で訪問者を呼び込む方法」について、より実践的にお話します。 *  *  * すでにご自分の事務所ホームページを公開している方は、名刺をはじめとして、多くの人に配布する印刷物(チラシや封筒)に、ホームページのURLを記載していることと思います。 ただし、ここで考えてみてください。 それらの印刷物を受け取った人が、ブラウザのアドレスバーにそのURLを打ち込んで事務所ホームページを表示させるケースって、いったいどれほどあるでしょうか? 大多数の人は、あなたの名前や事務所の名称を検索サイトで検索して、そこからあなたの事務所ホームページを訪問するはずです。 この方が手間がかかりませんし、あなたやあなたの事務所に関する情報が他にあれば検索結果に表示されるため、ついでに調べることができるからです。 もちろん、だからといってURLの記載がいらないというわけではありません。 URLが記載されていれば「事務所ホームページが存在する」ということを表していますので、それにより「検索してみよう」という動機づけになるからです。 *  *  * さて、現実の世界で認知された名前によって検索されるということは、とにかく現実の世界において名前を広めれば、ホームページへの訪問者は多くなるということになります。 そのため、現実の世界において、 名刺を配る 著書を出版する 講演を行う マスコミに紹介される など、およそ「人前に露出すること」=「ホームページへの訪問者を増やすこと」につながります。 これは、営業トークが苦手な人にとって、ありがたいことともいえます。 対面で、あるいは著書や講演の中で、露骨に営業活動をしなくとも、名前さえ広めれば、名前を知った何%かの人は、あなたの事務所ホームページを訪問してくれるはずです。 そして、事務所ホームページの中であなたの業務内容や実績を知ってもらい、あなたの顧客となってもらえるかもしれないからです。 つまり、 それにより誘導した という役割分担ができるのです。 実はこのような営業手法は、個人の名前を前面に出している会社経営者やフリーライターの間ではよく行われている手法です。 ネットを使いこなしている人にとっては意外なことかもしれませんが、実際に会って手渡す名刺や、紙媒体としての新聞や雑誌、テレビやラジオという現実の世界の情報の方が、ネットの世界の情報より、社会的な認知度や信頼性は高いようです。 また、次回お話しますが、ネットの世界だけで自分の事務所のホームページに訪問者を呼び込むのは、それなりに大変で時間のかかる作業です。 そのため、名前を知ってもらったり、ある程度の信頼性を獲得したりするには、現実の世界の方が効果的だといえます。その反面、現実の世界では、自分や自分の事務所のことを詳しく聞いてもらう時間は、通常はありません。 そこで、ネットの世界のホームページにおいて、わかりやすく、かつ、具体的に自分の業務を説明することで、興味のある人に、その人の望む時間に好きなだけ、あなたやあなたの事務所の業務内容を検討していただくことができるのです。 *  *  * さて、このように「現実の世界」と「ネットの世界」はうまく使い分けができるのですが、現実の世界には大きな制約があります。 実際に会って名刺交換できる人の数は限られていますし、紙媒体としての新聞や雑誌、テレビやラジオに記事として取り上げてもらえることは希でしょう。また、著書の出版や講演活動も誰にでもできるというわけではありません。 しかし効果はありますので、そういったチャンスがあれば多少無理をしても積極的に活用すべきです(といっても、聞いたこともない雑誌に高額な費用を払って記事を掲載するなどという勧誘には充分注意してください)。 ※もちろんこのProfession Journalは違いますよ。 また、何か新しいサービス提供を始めたり、著書を出版したりするときなどは「プレスリリースを配信する」という方法もあります。 プレスリリースは、マスコミに掲載されるという保証はありませんが、業者任せにしても数万円で配信できますので、興味のある人はネットで配信会社を検索して調べてみるとよいでしょう。 ◆  ◆  ◆ 次回は、インターネットの世界で事務所ホームページに訪問者を呼び込む方法についてお話しましょう。 (了)
#50(掲載号)
#河村 慎弥
2013/12/26
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神田ジャズバー夜話 「8.アイラ」

ドアが開き、今夜一人目の客。 「いらっしゃい」顔を見て一声掛ける。スーツ姿のたぶん30代後半、新顔だ。 「ここ、いいですか」カウンターの壁側の端席を選んだ。音楽にあまりこだわらない人は大体ここになる。豆を入れた小皿を出し、荷物を置いたり上着を掛けたりを終えて席に落ち着いたころを見計らって注文を訊く。 「なんにしましょうか」 「なんにしましょうかね」 「もし飲んだことなかったら、『え、これもウイスキー?』ってのどうですか」 「へえ、じゃ、それで」 この酒を飲んだことのない人にはいつもすすめている。 まだ店を作る前、御茶ノ水界隈のバーを市場調査のつもりで廻っていた。小川町の交差点の東北のブロック。その裏道にある半地下のバーでこの酒に出会った。最初に飲んだ感想は『え、これもウイスキー?』で、驚きとともに感動を味わった。 「あ、うまいですね」 「そうですか。それはよかった」 「なんだか薫製みたいな」 「ヒースって草からできた泥炭をピートっていうんですが、そこを流れてきた水を使ったり、ピートを燃やして燻す工程があるんで、そんなふうになるみたいですよ」 「これは今まで知らなかった味ですね」 「スコットランドの西にあるアイラ島の酒です。この島のはみんなスモーキーで、私はこれが一番強烈で好きなんですよ」 「なんだか新しい世界が広がりました」 こうしてまたこの酒を飲む客を増やした。勧誘の仕方は怪しい薬の売人のようでもある。同じ手口で元雑穀問屋で今は貸しビルオーナーの旦那と、出版社の元文学青年と、越後の怪人は、「いつもの」という一言で3、4杯飲むようになった。顔を覚えていない客にも「マスター、こないだすすめてくれたヤツ」と注文されることもしばしばある。 二人目の客が来た。またひとり客。カウンターのもう一方の端席を選んだ。やはり30代、いや20代かもしれない。スーツを着ているがあまり似合っていない。 「今、こちらの方も飲んでるんですが、飲んだことなければこの酒どうですか」 勢いで同じものをすすめる。 「あ、はい、じゃ、それお願いします」 私は微笑みを浮かべ酒を出した。 「ウえー、こりゃすごいですね、線香みたいな、あ、正露丸だ」 この酒ではないが同じ島のものを「夕方の運動部の部室の裏でね、正露丸と乾燥アンズを水で溶いて2Hのえんぴつの芯を削って入れた味だよ」とモルトに詳しい熊谷さんが隣席の若者に話していたことがあった。 正露丸の味と表現されようと、味わえる人はその奥に潜む遥か彼方のアイラ島へ辿り着ける。 私は2軒目とか3軒目でバーに来たら、この酒みたいに味のはっきりしたものの方がいいですよなどと誰かに聞かされた話もする。 「これはいいですよ」一人目は同じものをもう一杯飲んで帰った。 「氷が溶けてきたら、おいしくなってきました」二人目はなんとか飲み干して帰った。 今夜の三人目は安藤さんだった。安藤さんもアイラ好きで、さっきの二人にすすめたものもよく飲むが、今は一杯目のベルギービールを飲んでいる。 「マスター、コーヒーカップでさっきから何飲んでんの」 「ジンですよ。それも一番安いヤツ」 「あれ、アイラ好きなんじゃなかったっけ」 「好きですけど飲みませんよ。だって高いじゃないですか」 さっきの酒はうまいが高い。高い酒を飲ませるコツ、そりゃいろいろあります。 (了)
#50(掲載号)
#山本 博一
2013/12/26
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《速報解説》 雑損控除等の見直し~平成26年度税制改正大綱~

 《速報解説》 雑損控除等の見直し ~平成26年度税制改正大綱~   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   平成26年度税制改正大綱では、災害等で被害を受けた場合に適用可能な各種制度に関して、いくつかの見直しが示されている。これらの見直しのうち所得税に係るものについて、解説を行うこととする。 雑損控除や災害免除法に係る現行制度の詳細については、拙稿「平成24年分 確定申告実務の留意点【第5回】『各所得控除における留意点』」をご参照いただきたい。   (1) 雑損控除の見直し 雑損控除の対象となる「資産の損失金額」について、算定方法の見直しが示された。 雑損控除として所得控除できる金額は、次の①と②のいずれか多い方の金額である(所法72①)。 現行制度では、上記算式の資産の損失金額は、損失の生じた時の直前における資産の価額(時価)を基礎として計算するものとされている(所令206③)。今回の見直しでは、この時価を基礎として計算する方法に取得価額を基礎とする方法が追加された。 これにより、納税者が時価による方法と取得価額を基礎とする方法のどちらかを選択できることとなる。 従来の時価による方法では、原則として損失発生前後における資産の時価を把握する必要があるため、損失金額の算定が困難となる場合も多かった。取得価額を基礎とする方法を選択できるようになれば、損失金額の算定が容易になるものと考えられる。 取得価額を基礎とする方法を具体的に示すと、次の通りである。 〈資産の損失金額の計算:取得価額を基礎とする方法〉 *非業務用資産に係る減価償却費累積額相当額の計算は、非業務用資産を譲渡した場合の資産の取得費の計算方法と同じである。   (2) 東日本大震災に係る災害関連支出の対象期間の見直し ① 現行制度の概要 原状回復費用等のうち、雑損控除等(雑損控除及び雑損失の繰越控除、被災事業用資産の損失の繰越控除)の対象となる災害関連支出として扱うことができるものは、次の期間内に支出した金額に限られている(所令206①二)。 ② 見直しの概要 東日本大震災により被災した資産に関連する原状回復費用等について、その災害のやんだ日から3年以内に支出することが困難な事情があるときには、その困難な事情がやんだ日の翌日から3年以内に支出される金額も災害関連支出の対象にできることが示された。 見直しの対象となるのは、平成26年1月1日以後に支出する原状回復費用等である。 〈東日本大震災により被災した資産の原状回復費用等の取扱い〉   (3) 予定納税制度の見直し ① 現行制度の概要 その年の5月15日現在で確定している予定納税基準額が15万円以上である場合には、第1期及び第2期(*)において、それぞれ予定納税基準額の3分の1に相当する金額の所得税を納付しなければならない(所法104①)。 (*)第1期:その年の7月1日から7月31日まで、第2期:その年の11月1日から11月30日まで 税務署長は、予定納税額のある納税者に対し、その年の6月15日までに予定納税額の通知を書面で行う必要がある(所法106①)。 なお、災害その他やむを得ない理由により、申告や納付等が期限までにできないと認められるときには、税務署長等はその理由のやんだ日から2月以内に限り、当該期限を延長することができる(以下、災害等による納期限等の延長という。通法11、通法令3)。 ② 見直しの概要 災害等による納期限等の延長が行われる場合には、予定納税に関して次のような問題が生ずる。 そこで、災害等による納期限等の延長がある場合の予定納税について、次の見直しが示された。   (4) 所得税の減免申請の申告要件の見直し ① 現行制度の概要 地震等の災害によって住宅や家財等に甚大な損害(時価の2分の1以上)を受けたときは、所得税の全部又は一部の減免を受けることができる(災免法2)。ただし、減免を受けるためには、当該制度の適用を受ける旨、被害の状況及び損害金額を記載した確定申告書を期限内に納税地の所轄税務署長に提出する必要がある(災免法令2①)。 ② 見直しの概要 所得税の減免申請が、期限内の申告だけでなく、期限後申告、更正の請求、修正申告においてもできることとされた。 (了)
#49(掲載号)
#篠藤 敦子
2013/12/25
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《速報解説》 有価証券の国外移管等に係る国外送金調書の提出義務の追加~平成26年度税制改正大綱~

 《速報解説》 有価証券の国外移管等に係る 国外送金調書の提出義務の追加 ~平成26年度税制改正大綱~   税理士法人トーマツ パートナー 税理士 小林 正彦 1  改正の内容 「平成26年度税制改正大綱」によると、国内証券口座から国外証券口座に有価証券を移管した場合又はその逆の場合、金融機関から調書が提出されることになった。   2 現行の国外送金調書制度 銀行が顧客から海外送金の依頼を受けた場合、銀行は告知書の提出を受け、送金額が1回100万円超の送金については、調書を所轄税務署長に提出する義務がある。   3  改正の内容 証券会社の営業所の長が、顧客の依頼に基づき、当該営業所に開設された有価証券の保管等に係る口座(国内証券口座)から国外において金融商品取引行を営む者の営業所等に開設された有価証券の保管等に係る口座(国外証券口座)に有価証券の移管をした場合、又は国内証券口座に国外証券口座から有価証券の移管を受けた場合には、その移管に係る有価証券の種類、数又は金額その他の事項を記載した調書を、当該営業所の所在地の所轄税務署長に提出しなければならないこととされた。 この制度は、平成27年1月1日以降に行われる有価証券の移管について適用される。 4  改正の意義 国税当局は富裕層の海外保有資産の把握に力を入れている。その手段として、平成26年から「国外財産調書」の提出が始まる。これは各年度末における資産の保有状況を把握するためのものであり、いわばストック面での情報収集である。 一方、資産のフローの情報を把握するための施策として、「国外送金等調書」制度があり、100万円超の送金は調書が税務当局に提出される。しかし、証券会社等の口座に預託されている有価証券の国外口座への移管についてはこれまで調書提出義務は課されておらず、手当が必要であるとされていた。   5  実務上の留意点 平成26年1月に開始される国外財産調書は国外財産が5,000万円を超える場合に報告義務があるが、金融機関に預けている資産については、国外財産かどうかの判定は、その口座を管理する営業所の所在地による。 したがって、国内銘柄株式であっても国外の営業所に移管した場合には、国外財産として報告の対象になる。  (了)
#49(掲載号)
#小林 正彦
2013/12/24
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《速報解説》 移転価格税制に係る「みなし国外関連取引」適用対象の拡大~平成26年度税制改正大綱~

 《速報解説》 移転価格税制に係る 「みなし国外関連取引」適用対象の拡大 ~平成26年度税制改正大綱~   税理士法人トーマツ パートナー 税理士 小林 正彦   1  はじめに 今回の大綱中、移転価格税制に関する改正として、「みなし国外関連取引」の適用対象を役務提供取引に拡大することが明らかにされている。   2 みなし国外関連取引とは 日本から海外にある子会社に商品を輸出する際、第三者を通じて販売することがある。典型的には、非関連者である商社を経由する販売である。 移転価格税制は親子間など支配関係のある法人間の取引を対象とするものであり、非関連者との取引は原則として適用対象外である。商社経由取引も形式的にみれば非関連取引である。 しかし、国外関連者との取引において形式的に第三者が介在しているに過ぎない場合にまで移転価格税制の適用がないとすると、第三者を介在させることによって意図的に移転価格税制を回避することが可能になる。 このため、一定の要件を満たす場合には、非関連者が介在していても国外関連取引とみなして、移転価格税制を適用することとしている(措法66の4、措令39の12⑤、39の12⑨)。 「みなし国外関連取引」となる条件は、上図の①、②の取引について、それぞれ以下の条件を満たすことである(措令39の12⑨)。 したがって、親子間で取引価格を決定する際、もとの商品の価格に一定の商社口銭分を上乗せして決めているような場合には、移転価格税制の適用がある。   3 現行法の問題点 みなし国外取引の対象は、「資産の販売等」(販売等には販売のほか、譲渡、貸付、提供が含まれる)とされており(措令39の12⑨)、役務提供が含まれていないことが実務上問題となるケースがあった。 典型的には、下図のような保険取引である。 A保険会社は世界各国に子会社を有しており、タックスヘイブン国に保険リスクを管理する法人を有している。A社の日本法人が第三者である元受保険会社Bに保険料100を支払い、BはA社がX国に設立したキャプティブ保険会社(※)に再保険料100を支払っている。 我が国では、保険業法上の海外付保規制により海外に再保険をする場合には、B社のような元受保険会社を通じる必要がある。 ここで、A社とX国法人が仮に独立企業間であったとした場合の保険料が50であったとすると、日本からX国に50の所得が移転していることになる。しかし、少なくとも現在の「みなし国外関連取引」の規定では、こうした役務提供取引に移転価格税制の適用があるかどうかは明らかでないという問題がある。 (※) キャプティブ保険は専属保険ともよばれ、自社製品の製造物責任賠償リスク等のリスクに見合う保険料のみを引き受ける保険会社である。リスクを自社で保有する場合に比べて、保険料を損金として認識できるメリットがあるほか、一般の保険会社が保険を引き受けないケースや、保険料が高額になってしまうケースでリスクを外部化できるメリットがある。キャプティブ保険会社は低税率国に設立されることが多い。   4 改正案 みなし国外関連取引の範囲が、役務提供取引にも拡大される。   5 実務への影響 関連者間の役務提供に第三者が介在する例は多くないが、上記のキャプティブ保険などにはよくみられるものである。 今後、キャプティブ保険を活用している会社は、保険料が移転価格調査においてチェックされ、独立企業間価格でない場合は更正を受けることになる。 調査に対する準備として、保険料についても移転価格文書化が必要になる。  (了)
#49(掲載号)
#小林 正彦
2013/12/24
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《速報解説》 車体課税の見直し~平成26年度税制改正大綱~

 《速報解説》 車体課税の見直し ~平成26年度税制改正大綱~   公認会計士・税理士 菊地 弘   平成25年12月12日に「平成26年度税制改正大綱」が決定され、自動車関係税制が次のとおり見直されることとなった。 1 車体課税の見直し (1) 自動車重量税(国税) ① 「自動車重量税のエコカー減税」の拡充 平成26年4月1日以後に新車に係る新規検査を受けた検査自動車のうち、当該新規検査の際に納付すべき自動車重量税を免除された検査自動車については、当該新規検査後に受ける最初の継続検査等の際に納付すべき自動車重量税を免除する。 【乗用車等の例】 ② 経年車に対する課税の引上げ 平成26年4月1日以後に継続検査等を受ける自家用の検査自動車のうち、新車新規登録から13年を経過したもの(新車新規登録から18年を経過したものを除く)に係る自動車重量税の税率について、見直しを行う(営業用自動車は、現行の税率のまま据え置き)。   (2) 自動車取得税(地方税) ① 税率の引下げ 平成26年4月1日以後に取得される平成22年度燃費基準を満たす自動車等に対して課する自動車取得税の税率を、次のように引き下げる。 ② 「自動車取得税のエコカー減税」の拡充 平成26年4月1日以後に取得される自動車について、軽減割合を次のとおり拡充する。 【乗用車等の例】   (3) 自動車税(地方税) 「自動車税のグリーン化」について、次の見直しを行った上、2年延長する。 ① 環境負荷の小さい自動車 〇「グリーン化特例の延長・拡充」(H26.4.1~H28.3.31) 平成26年度及び平成27年度に新車新規登録された自動車で、一定のものは、次表のとおり軽減特例の措置が延長・拡充される。 ② 環境負荷の大きい自動車 平成26年度及び平成27年度に以下の年限を超えている自動車(電気自動車、天然ガス自動車等、一般乗合用バス及び被けん引車を除く)について、その翌年度から次の特例措置を講ずる。   (4) 軽自動車税(地方税) ① 税率の引上げ 四輪以上及び三輪の軽自動車に係る税率を次のとおりとし、平成27年4月1日以後に新規取得される新車から適用する。 ② 経年車重課の実施 最初の新規検査から13年を経過した四輪以上及び三輪の軽自動車に係る税率を次のとおりとし、平成28年分度以後の軽自動車税について適用する。 概ね20%の重課となる(既存車・新規車を問わない)。 ③ 税率の引上げ 原動機付自転車及び二輪車に係る税率を次のとおりとし、平成27年分度以後の軽自動車税について適用する。   2 復興支援のための税制上の措置 (1) 自動車重量税(延長) (2) 自動車取得税(延長) 被災代替自動車等の取得に係る自動車取得税の非課税措置の適用期限を2年延長する。 (3) 自動車税・軽自動車税(延長・拡充) 自動車税及び軽自動車税の非課税措置の適用期限を次のとおり2年延長する。   3 租税特別措置等 〇自動車取得税(延長) 都道府県の条例で定める路線の運行の用に供する一般乗合用のバスに係る自動車取得税の非課税措置の適用期限を2年延長する。 (了)
#49(掲載号)
#菊地 弘
2013/12/20
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《速報解説》 消費税の軽減税率制度の導入~平成26年度税制改正大綱~

 《速報解説》 消費税の軽減税率制度の導入 ~平成26年度税制改正大綱~   税理士・社会保険労務士 上前 剛   1 導入の時期 軽減税率制度の導入の時期に関する「平成26年度税制改正大綱」の記載は、「税率10%時に導入する」となっている(同大綱P6)。 ちなみに、自動車取得税の廃止の時期に関する大綱の記載は、「消費税率10%への引上げ時(平成27年10月予定)に廃止する」となっている(同大綱P4)。 「10%引上げ時」と記載せず、「10%時」と記載したのは、「引上げ時」だけでなく、「引上げ時以降」も含むことを意図している。 つまり、軽減税率制度の導入の時期は、「10%引上げ時」または「10%引上げ後」のいずれかの時点といえる。   2 導入に向けてのスケジュール 大綱では、平成26年12月までに以下の事項の検討を行い、結論を得た上で、平成27年度税制改正大綱にて詳細な内容が公表される予定とされている。   3 各国の動向 現在、EU諸国の多くでは、付加価値税(日本でいうところの消費税)に軽減税率制度を導入している。 例えば、イギリスでは付加価値税の標準税率は20%、家庭用燃料及び電力等は5%の軽減税率となっている。同じく、ドイツでは付加価値税の標準税率は19%、食料品、水道水、新聞、雑誌、書籍、旅客輸送、宿泊施設の利用等は7%の軽減税率となっている。 つまり、軽減税率制度を導入すること自体は、世界的にみても一般的といえる。   4 「インボイス方式」と「請求書等保存方式」 EU諸国の付加価値税の計算方式は「インボイス方式」が採用されているのに対し、日本の消費税の計算方式は「請求書等保存方式」が採用されており、この点で大きく異なっている(下図参照)。 〈請求書等保存方式(左図)とインボイス方式(右図)〉 (出所:財務省ホームページ)   「インボイス方式」とは、課税事業者が発行するインボイスに記載された税額のみを控除できる方式であり、インボイスの記載や発行などに厳格な要件が義務付けられている。 「インボイス方式」だからこそ軽減税率制度の導入が可能になっている面もある。 一方、日本では、「請求書等保存方式」のままで軽減税率制度を導入することになると考えられる。 上記2の今後の検討事項のうち、区分経理等のための制度整備がどのようになされていくのか注目したい。 (了)
#49(掲載号)
#上前 剛
2013/12/19
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《速報解説》 「簡易課税制度のみなし仕入率の見直し」「輸出物品販売場における輸出免税の対象物品の見直し」「金銭債権を譲渡した場合の課税売上割合の計算方法の変更」~平成26年度税制改正大綱~

 《速報解説》 「簡易課税制度のみなし仕入率の見直し」 「輸出物品販売場における輸出免税の対象物品の見直し」 「金銭債権を譲渡した場合の課税売上割合の計算方法の変更」 ~平成26年度税制改正大綱~   アースタックス税理士法人 税理士 島添 浩   はじめに 消費税法における改正については、平成24年8月の社会保障の一体改革の税制改正に基づき、平成26年4月1日から消費税率8%への引上げの実施が平成25年10月1日の閣議決定により確定したところである。 また、前年度の税制改正大綱からの検討事項となっていた消費税の軽減税率制度の導入について、平成26年度税制改正大綱において、どのタイミングで実施されるのか、具体的な内容が示されるのかが焦点となっていたが、結局のところ、「消費税率10%時に導入する」との文言を示すのみで、詳細については、平成26年12月までに結論を得て来年度の税制改正大綱で決定することとなった。 なお、「10%時に導入する」といっても、10%の税率引上げ時なのか、消費税率が10%の期間中なのかという点についても曖昧な表現となっており、導入時期についても決定したわけではなく、前年度の税制改正大綱と同様に、今回もまた検討事項となった。 この軽減税率制度以外の税制改正大綱による消費税法の改正点は、次の3項目である。 以下、それぞれの改正内容について解説していくこととする。   ① 簡易課税制度のみなし仕入率の見直し 消費税法における簡易課税制度は、「みなし仕入率」を使用して計算するのであるが、従来から課題となっていた益税問題として、みなし仕入率と実際の課税仕入れ率との間に乖離があるとの指摘がなされており、特に金融・保険業や不動産賃貸・管理業については、その乖離が顕著であることから、今回の税制改正において、金融業及び保険業の業務に係るものは、現行の第四種事業(60%)ではなく、第五種事業(50%)として計算することとなった。 さらに、業種区分について、新たに第六種事業を創設し、そのみなし仕入率を40%とした上で、不動産業の業務に係るものは、現行の第五種事業(50%)ではなく、第六種事業として計算することとなった。 なお、この改正は、平成27年4月1日以後に開始する課税期間について適用する。 したがって、改正後の具体的な業種区分は、以下のようになる。 また、税制改正後の簡易課税制度における控除対象仕入税額の基本的な計算方法は、次のようになる。 イ 第一種事業から第六種事業までのうち1種類の事業だけを営む事業者の場合 【算式】 ロ 第一種事業から第六種事業までのうち2種類以上の事業を営む事業者の場合(原則) 【算式】 【各業種の売上げに係る消費税額】   ② 輸出物品販売場における輸出免税の対象物品の見直し 外国人旅行者に対する輸出物品販売場における輸出免税の規定において、今回の税制改正により従来では対象物品から除外されていた消耗品について、一定の要件のもと輸出免税の対象となった。 具体的には、以下の方法を前提とした消耗品(その旅行者に対して、同一店舗で1日に販売する50万円までの消耗品に限る)が対象となる。 また、その旅行者に対して、同一店舗で1日に販売する見直し前の免税対象物品(消耗品以外の物品)の額が100万円を超える場合には、輸出物品販売場を経営する事業者が保存しなければならない書類に、その旅行者の旅券等の写しを追加することとした。 なお、「見直し前の免税対象物品」とは、飲食料品、たばこ、医薬品、化粧品、フィルム、電池などの消耗品を除く通常の生活用物品で、一取引の合計金額が1万円超のものをいう。 上記の改正は、平成26年10月1日以後に行われる課税資産の譲渡等について適用する。   ③ 金銭債権を譲渡した場合の課税売上割合の計算方法の変更 仕入税額控除の計算で使用する課税売上割合の計算方法は、資産の譲渡等の対価の額のうち課税資産の譲渡等の対価の額の占める割合をいうのであるが、今回の改正により、金銭債権の譲渡については、課税売上割合の計算上、資産の譲渡等の対価の額に算入すべき金額を、その譲渡に係る対価の額ではなく、その対価の額の5%相当額を算入することとなった。 これは、消費税法施行令48条5項に規定している有価証券等を譲渡した場合における譲渡対価の額の5%相当額を課税売上割合の計算上資産の譲渡等の対価の額に含める計算方法と同様の処理となり、この改正により課税売上割合は従来よりも大きくなることから、納税者有利の改正点である。 なお、改正後の非課税となる有価証券等の範囲と課税売上割合の分母に含める金額は、以下のようになる。 上記の改正は、平成26年4月1日以後に行われる金銭債権の譲渡について適用する。 (了)
#49(掲載号)
#島添 浩
2013/12/19

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