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Profession Journal No.49 公開のお知らせ

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#Profession Journal 編集部
2013/12/19
法人事業税 法人住民税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

日本の企業税制 【第2回】「地方法人課税の見直し」

日本の企業税制 【第2回】 「地方法人課税の見直し」   一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 阿部 泰久   1 はじめに わが国の法人実効税率が高いのは、法人事業税、法人住民税のためであり、法人実効税率の引下げには、地方法人課税の見直しが不可欠である。また、地方税全体の中で法人所得課税のウエイトが高いことにより、景気変動による税収の不安定さとともに偏在性の問題が指摘されている。 平成26年度税制改正では、税制抜本改革までの暫定措置とされている地方法人特別税の扱いとともに、法人住民税の一部を国税に移した上で地方交付税財源とすることが大きな課題となった。   2 総務省「地方法人課税のあり方等に関する検討会」報告書 総務省地方財政審議会の下に置かれていた地方法人課税のあり方等に関する検討会(座長:神野直彦東京大学名誉教授)は、11月6日に報告書を公表したが、その中では、今後の地方法人課税のあり方として以下の諸点が示されている。   3 地方法人特別税 平成20年度税制改正で導入された地方法人特別税は、地方税収の偏在化の是正策として、法人事業税の税収のおよそ2分の1を国にプールした上で、全額を地方法人特別譲与税として、その1/2を直近の国勢調査による人口、1/2を従業者数の基準によって都道府県に譲与する仕組みであり、税制抜本改革がなされるまでの間の「暫定的措置」として位置付けられていた。 また、消費税改正法でも、地方法人特別税・譲与税について、税制の抜本的な改革において偏在性の小さい地方税体系の構築が行われるまでの間の措置であることを踏まえ「税制の抜本的な改革に併せて抜本的に見直しを行う(第7条五号)」こととされていた。 【法人事業税改正、地方法人特別税・地方法人特別譲与税のスキーム】 地方法人特別税・譲与税の税収は1兆7,643億円(平成25年度地方財政計画)であり、地方消費税1%相当額2兆6,650億円に及ばない。しかし、地方法人二税の人口1人当たり税収額が最大の東京都と最小の奈良県との間で5.3倍の格差があるところ、地方法人特別譲与税を入れた場合は4倍程度に縮小しており、偏在是正には一定の効果を上げている。 平成26年度税制改正では、後述の法人住民税の地方交付税財源化(地方法人税の創設)と併せて、地方法人特別税・譲与税の1/3(およそ6,000億円分)を法人事業税に復元することとされた。   4 法人住民税の一部の交付税財源化 消費税は税収の地域偏在性が少ない税とされているが、それでも人口1人当たり税収額が最大の東京都と最小の沖縄県との間で2.9倍の格差があり、地方消費税率引上げによりさらに拡大することが見込まれている。 また、現在、地方財政全体では約13.3兆円の財源不足額があるのに対し、交付税不交付団体の留保財源と財源超過額の合計額は1.8兆円を超えており、地方消費税率引上げにより増大することが見込まれる。 すなわち、税制抜本改革=地方消費税率の引上げにより、全体としての地方の財源不足は緩和されるとしても、東京都をはじめとする一部の富裕団体はますます豊かになり、偏在性が拡大していくことが見込まれている。 そこで、平成26年度税制改正では、消費税率が8%に引き上げられる平成26年4月1日以降、法人住民税のうちおよそ6,000億円相当分を国税化し、その全額を「地方法人税」という名の国税とした上で交付税原資に繰り入れることにより、偏在性の是正策を講じることとされた。 【偏在性是正策のイメージ】   地方法人税の創設と地方法人特別税・譲与税から法人事業税への復元は、ともに6,000億円程度とされるが、地方法人特別譲与税は東京都等の不交付団体にも一定額は配分される一方で、地方法人税は交付税財源とされるため不交付団体には配分されないことにより、偏在性の是正は進むことになる。 また、消費税率10%引上げ時においては、法人住民税法人税割の地方交付税原資化をさらに進めるとともに、地方法人特別税・譲与税について、現行制度の意義や効果を踏まえつつ、廃止その他の措置を含めた抜本的な見直しを行うなど、税源偏在を是正する観点から関係する制度について幅広く検討を行うこととされている。   5 法人実効税率引下げと地方法人課税 この結果、法人税負担に変化があるものではなく、法人実効税率は変わらない、しかし、今回の措置は、将来の法人実効税率引下げのためには欠かせない布石であると考える。 日本の法人実効税率が高い大きな理由は、地方法人二税の存在である。また、地方税において法人所得課税のウエイトが大きいことにより、景気変動による税収の不安定性とともに、税源の偏在性を免れない。 そこで、地方法人二税をできる限り国税化し地方共有の財源とすることで、地域ごとの大きな変動と偏在性の是正がいくらかでも解消できる。また、同時に地方法人二税をそれぞれの地方自治体固有の財源としていたのでは、税率の引下げに耐えられない地方自治体が出てくるのに対し、共有財源とすることでその影響を和らげることができる。 経団連では、今年5月の「地方法人課税のあり方」の提言の中で、地方法人所得課税の国税化を図った上で、地方交付税、地方譲与税等もあわせた一般財源を保障する仕組みを構築すべきことを求めており、今回の改正はその趣旨に沿ったものと評価している。 (了)  
#49(掲載号)
#阿部 泰久
2013/12/19
所得税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

居住用財産の譲渡所得3,000万円特別控除[一問一答] 【第11問】「同一年中に2回居住用財産を譲渡した場合」-居住用財産の範囲-

居住用財産の譲渡所得 3,000万円特別控除 [一問一答] 【第11問】 「同一年中に2回居住用財産を譲渡した場合」 -居住用財産の範囲-   税理士 大久保 昭佳   Q Xは、平成25年中に、現に居住しているA住宅を売却し、同年中に9年前から所有しているB住宅を直ちに居住の用に供していましたが、同年中にそのB住宅も売却しました。 なお、B住宅の居住期間は短いが、B住宅は甲の居住の用に供している家屋に該当します。 この場合、「3,000万円特別控除(措法35)」の適用関係はどのようになるのでしょうか? A A住宅及びB住宅が居住用財産であれば、譲渡所得の全部について「3,000万円特別控除」の特例の適用を受けることができる。 ただし、控除額は3,000万円が限度となる。 〈解説〉 同一年中の譲渡であるから、連年適用排除の規定は適用されない。したがって、3,000万円の控除額を限度として、その譲渡所得の全部について「特例」を受けることができる。 ただし、居住の事実がないところを、特例を受けるためのみの目的で故意に住民票を異動するなどした場合には、重加算税の対象となり得る可能性があることから、その判定にあたっては十分な注意が必要であると考える。 (了)
#49(掲載号)
#大久保 昭佳
2013/12/19
国税通則 税務 税務・会計 解説 解説一覧

租税争訟レポート 【第15回】従業員による横領と法人に対する重加算税〔納税者勝訴〕

租税争訟レポート【第15回】 従業員による横領と法人に対する重加算税 〔納税者勝訴〕   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   【事案の概要】 本件は、処分行政庁が、原告に対し平成12年5月1日から平成18年4月30日までの6年間にわたる各事業年度の間に、原告の従業員が関係業者からリベートとして受領していた手数料合計9,786万3,000円のうち、 ところ、原告が、これらの収益は従業員個人に帰属するものであって、隠ぺい仮装を行った事実もないと主張して各処分の取消しを求めたという事案である。   【争点に関する主張】 1 争点1(本件手数料に係る収益が原告に帰属するか否か)について 〈被告主張の要旨〉 〈原告主張の要旨〉 2 争点2(本件手数料に係る収益が原告に帰属するとした場合、その額はいくらか)について 〈被告主張の要旨〉 〈原告主張の要旨〉 3 争点3(原告による仮装又は隠ぺい行為の有無)について 〈被告主張の要旨〉 〈原告主張の要旨〉   【裁判所の判断】 1  争点1(本件手数料に係る収益が原告に帰属するか否か)について 2 結論 以上より、本件手数料に係る収益が原告に帰属するとは認められず、原告が従業員Aに対して損害賠償請求権を有しない結果、原告については、本件手数料相当額の益金が存在しないことになるから、本件各処分には取消事由となる違法があるというべきである。   【解説】 役員・従業員による横領が税務調査により発見された場合の課税処分は、概ね以下の筋書きに沿ってなされる。 本件も、同じ経緯による更正処分等が行われたところ、仙台地方裁判所は、従業員が受け取ったリベートは、本来法人に帰属するものとは言えず、処分行政庁による更正処分等をすべて取り消す判決を下した。 他の類似訴訟との相違点を概観すると、 などが挙げられよう。 本件リベートが、原告である法人に帰属するものではない以上、リベートを受け取った従業員は、本来申告すべきであった雑所得に係る収入金額が洩れていたことになるから、加算税の賦課決定を含む課税処分が行われる。税務署としては、あえて、法人に対して課税処分を行わなくても、税収の確保という点ではあまり差はないように思えるのだが、やはり「重加算税の賦課決定処分」にこだわるのであろうか。もちろん、従業員に対する課税となると、実際に納付できるだけの資力があるかどうかも問題になるわけだが。 内部統制システム構築上の要請でもある、適切な職務分掌や明確な権限委譲が、「本件リベートは法人に帰属するものではない」という判決に導いたという点について、従業員による売上代金の横領行為を法人の行為と同一視して重加算税の賦課決定処分を認めた類似訴訟の判決と一線を画するものとして評価したい。   (了)
#49(掲載号)
#米澤 勝
2013/12/19
税務 税務・会計 解説 解説一覧 財産評価

鵜野和夫の不動産税務講座 【連載9】「広大地の評価(1)」

鵜野和夫の不動産税務講座 【連載9】 広大地の評価(1)   税理士・不動産鑑定士 鵜野 和夫   (一) 広大地の評価は、大幅に減額される 図表1 対象地と近隣地域等の概況図   (二)広大地の評価の適否の判定 図表2 開発想定図 図表3(ア) 地形図 図表3(イ) 開発想定図《開発道路の敷設による区画割り分譲》 図表3(ウ) 開発想定図《敷地延長による区画割り分譲》 *   *   * なお、地積が広大であっても、中高層の集合住宅(マンション等)の敷地用地に適するもの、また、大工場用地に該当するものも適用になりません。 これらについては、次回で解説します。 (了)
#49(掲載号)
#鵜野 和夫
2013/12/19
税務 税務・会計 解説 解説一覧

税務判例を読むための税法の学び方【25】 〔第5章〕法令用語(その11)

税務判例を読むための税法の学び方【25】 〔第5章〕法令用語 (その11)   自由が丘産能短期大学専任講師 税理士 長島 弘   8 法律上の権利ないし能力を示す語 ① しなければならない・してはならない・することができない 「しなければならない」というのは、一定の行為を義務付ける場合、すなわち法律上の作為義務を定めようとする場合に用いられる。 一方、「してはならない」というのは、一定の行為を禁止したり、法律上の不作為義務を定めようとする場合に用いられる(概略は【第17回】で述べている)。 以下にその使用例を挙げる。 この「してはならない」と語感が近いものとして、「することができない」がある。 「してはならない」と「することができない」は、一般的には語感が近いものとして使われる。 しかし法律上は、この「することができない」は、通常、法律上の権利ないし能力がないことを表現する場合に使用される(ただし権利ないし能力がないのであるから、事実上の不作為義務となるため、一定の不作為義務を課す場合に「・・・することができない」と表現する場合もある(第17回参照))。 それに対し「してはならない」という語は、人の事実上の自由に対する制限であって、法律上の権利又は能力に関する規定ではない。 したがって、「してはならない」とされている不作為義務に違反した行政処分があったときも、それは処罰の原因になることはあっても、その処分の効力には影響がなく、法律行為としては行政行為には公定力があるため(私法においては、民法第90条により違法な契約は無効とされるのが原則である)、有効であると解されている。 例えば、行政手続法には以下の規定がある。 この不作為義務に違反した税務職員は、国家公務員法上の懲戒処分の対象にはなるであろうが、その違反に係る行政処分そのものは、行政行為の公定力から有効であると解されている。ただし違法な行為による行政処分であるとして、取消訴訟又は行政上の不服申立てにより、無効と主張する道は残されている。 一方「することができない」は、通常、法律上の権利ないし能力がないことを表現する場合に使用される。したがって、この規定に違反して行われた行政処分は、法律上の権能がないにもかかわらず行われたものであるから、当然に無効である。 例えば、国税通則法には以下の規定がある。 この規定に違反して、税務署長が5年を経過した日以後に行った更正処分は、取消訴訟又は行政上の不服申立てを経ることなく、当然無効であるとして、その後の処理をすることができるのである。 ここで、「することができない」の対語となる「することができる」についても説明しておこう。 「することができる」には、大きく分けて、「①裁量権の付与」と「②法律上の権利・能力・権限等があることを意味するもの」という2つの用法がある。 そして、この条文の行為の主語が行政機関か納税者かにより、内容が異なる。 ① 裁量権の付与 一般的に「・・・できる」という言葉は、語句通り「可能」を表し、行為に対する裁量権を示している。しかし、この意味での用法は、その条文の行為の主語が納税者の場合に限られており、行政庁に対してこの意味で用いることはない。 例えば所得税法第16条第1項には、以下のようにある。 前条である所得税法第15条の第1号において、所得税の納税地は、国内に住所を有する場合はその住所地とされている。しかしこの第16条第1項により、 国内に住所のほか居所を有する場合にはその居所地を納税地とすることができるとされているから、この条文は、住所地の他に居所地を有する場合に、居所地を納税地とすることの裁量権を納税者に与えたものである。 ② 法律上の権利・能力・権限等があることを意味するもの 行政機関がその条文の行為の主語である場合には、「することができる」は、法律上、行政機関にその権能(権限と能力)を与えることを意味し、「裁量権の付与」の意味ではない。その権能があればそれを行使すべき義務もあると読むのが通例である。 特に租税法の場合には、合法性の原則(租税要件が充たされている限り、課税庁には租税を減免する自由はなく、また租税を徴収しない自由もなく、法律で定められたとおりの税額を徴収しなければならないという原則である)の点からも、行政機関には、原則、裁量権はないものとされる。 例えば国税通則法第91条第1項には、以下のようにある。 この場合に、国税不服審判所長は軽微な不備を職権で補正できる権能があり、一方で、その権能を行使することができる客観的状況にあれば、その権能を有する国税不服審判所長がそれを行使しないということは許されないと解されている。このため「軽微な不備」でありながら、その不備を職権で補正しないまま却下すれば、その処分は、違法な処分となる。 したがって、「することができる」とあるが、これにはその行為につき裁量権はない。 しかし前段の「その補正を求めなければならない」とあるところ、審判所において請求人にその補正を求めずに補正が可能という意味から、「することができる」と規定されているのである。 (了)
#49(掲載号)
#長島 弘
2013/12/19
相続税・贈与税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載48〕 一棟の建物についての小規模宅地等減額特例の改正と区分所有建物についての適用上の疑問点~平成25年措置法通達改正対応~

〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載48〕 一棟の建物についての小規模宅地等減額特例の改正と 区分所有建物についての適用上の疑問点 ~平成25年措置法通達改正対応~   税理士 小林 磨寿美   小規模宅地等の減額特例(措法69の4)が適用できる宅地等の1つに、特定居住用宅地等がある。 その被相続人の保有する居住用宅地等が一棟の建物の敷地については拡大された。 具体的には一棟の建物(区分所有建物を除く)については、被相続人等(措通69の4-7)が保有し、被相続人等が居住する場合、その建物に同居する被相続人の親族の居住部分に対応する土地等も対象宅地に含まれることとなった(措法69の4①本文、措令40の2④、措通69の4-7(注))。 取得者が配偶者である場合、同居親族である場合には、面積制限の拡充(平成27年施行)と併せて、適用対象面積が拡大した(措法69の4③二本文及びイ、措令40の2⑩)。 つまり、同居親族取得要件(措法69の4③二イ)は、同じく一棟の建物については、同居親族居住部分が対象宅地として拡大され、ここが、政策目的として拡充された。   1 租税特別措置法69条の4において、被相続人の居住用宅地の拡大 租税特別措置法69条の4では、その柱書において、個人が相続又は遺贈により取得した財産のうちに、一定の要件を満たす宅地等がある場合には、その個人がこの規定の適用を受けるものとして選択したものについて、限度面積要件を満たす場合に限り、相続税の課税価格の計算特例を受けるとしている。 そして、この「一定の要件を満たす宅地等」とは、相続開始の直前において、相続若しくは遺贈に係る被相続人又は被相続人と生計を一にしていたその被相続人の親族(「被相続人等」という) の事業の用又は居住の用に供されていた宅地等で財務省令で定める建物又は構築物の敷地の用に供されているもののうち政令(措令40の2④)で定めるもので、特定事業用宅地等、特定居住用宅地等、特定同族会社事業用宅地等及び貸付事業用宅地等に該当するものである(同柱書)。   2 拡大された被相続人等の居住用宅地等についての取得者要件 「特定居住用宅地等」(措法69の4③二)は、被相続人等の居住の用に供されていた宅地等(2以上ある場合には一定のものに限る)で、次に掲げる者が相続又は遺贈により取得した一定のものとなる。 3 「一棟の建物」基準 改正により、「一棟の建物」基準が上記2の図表中(1)(2)(4)の取得者について導入された。 これは、一棟の建物に複数世帯が居住している場合の、小規模宅地等の減額特例の適用関係を明確にすることを企図したものであり、被相続人等の居住の用に供されていた一棟の建物の敷地の用に供されている宅地等で、特定居住用宅地等に該当するものは次のものとなる(措法69の4柱書・同③二イ、措令40の2④⑩)。 4 建物の区分所有等に関する法律第1条の規定に該当する建物である場合の疑問点 『平成25年度 税制改正の解説』(財務省、以下『財務省解説』とする)には「建物の区分所有等に関する法律第1条の規定に該当する建物」について、「通常は区分所有建物である旨の登記がされている建物となります。」とある(P589)。 つまりは、「建物の区分所有等に関する法律第1条の規定に該当する建物」であるかどうかで場合分けしたのは、それが構造上区分所有しうる建物であり、かつ、建物の独立した部分ごとに所有権の目的とする意思表示がされたものであるからという趣旨のようである。 建物の区分所有等に関する法律第1条の規定の読み方については、別稿にて既に疑問を指摘させていただいたとおりであるが、本稿では、「区分所有建物である旨の登記がされている建物」という財務省解説に従った場合における問題点をいくつか挙げてみることとする。 (1) 建物を区分所有登記した理由は、建物の独立した部分ごとに所有権の目的とするためであるとは限らないのではないか 二世帯住宅について区分所有登記をする理由には、例えば住宅ローンの借入れの都合や住宅借入金等特別控除、住宅取得等資金の非課税特例の床面積要件を満たすためというものもある。また、遺産分割を考慮して、被相続人自身が予め区分所有登記を完了させ、その全部を所有している場合もある。さらに、娘婿が義父の土地の上に義父と一緒に二世帯住宅を建設する場合に、心情的要因から区分所有登記をすることもあるようである。 しかし、『財務省解説』では次のように記載されている。 財務省解説及び「「租税特別措置法(相続税法の特例関係)の取扱いについて」の一部改正について(法令解釈通達)」(平成25年11月29日)で新設された措通69の4-7の3から、次のような2種類の「一棟の建物」を作図することができる。 この2種類の「一棟の建物」は外見上明らかに異質なように思われ、同視できないと考えられる。しかし、財務省解説がその同視できない理由を、それぞれの専有部分が別々に取引される権利であることに求めるのであれば、右図のような一般的な二世帯住宅について、独立部分の売却や賃借を目的としない理由により区分所有登記をしたような場合であっても、区分所有建物とみなされることになる。 分譲マンションの場合、相続人は、別生計の場合、101、707ともに、適用がない。同一生計の場合、707についてのみ適用がある。 右の2世帯住宅(一棟の建物に、複数の親族が居住している場合も同じ)の場合、区分所有登記がない場合は、全部適用、区分所有登記がある場合は、左の分譲マンションと同じ扱いとなる (2) 建物の区分所有登記だけで専有部分を容易に別々に取引できるといえるのであろうか 分譲マンションの場合、建物の区分所有登記は敷地権と共に行うこととなり、それぞれの専有部分を容易に別々に取引することできる。一方、小規模宅地等の減額特例を受けることを想定するような一般的な二世帯住宅の場合、その敷地は、通常被相続人より使用貸借することになるため、建物を区分所有登記しても、敷地権に係る不動産登記を行うことはしない。 つまり専有部分を第三者に売却することは、現実として考えられず、容易に別々に取引できるとは言い難いのではないだろうか。 (3) 「建物の独立した部分ごとに所有権の目的とする意思表示がされたもの」である場合 「建物の独立した部分ごとに所有権の目的とする意思表示がされたもの」である場合、つまり、土地は使用貸借で、建物について、住宅ロ-ン等の事情により区分所有登記をした場合は、次のようになる。 以上のように区分所有登記の有無で小規模宅地等の減額特例の適用関係を決めるとしたならば、土地が使用貸借であって、住宅ロ-ン等の事情により区分所有登記をした場合、上記のように、様々な疑問や弊害が顕在化してくることとなろうと思われる。 区分所有権基準の導入が分譲マンションへの適用を排除しようとする趣旨であるならば、例えば、敷地権(登記)の有無によって、その適用関係を整理することも視野に入れた、いっそうの議論が必要であろう。 (了)
#49(掲載号)
#小林 磨寿美
2013/12/19
会計 固定資産 税務・会計 解説 解説一覧 財務会計

減損会計を学ぶ 【第5回】「減損の兆候」

減損会計を学ぶ 【第5回】 「減損の兆候」   公認会計士 阿部 光成   本連載の第1回「減損会計の全体像」で述べたように、減損会計の一連のプロセスには「減損の兆候」がある。 減損会計が理解されにくかった要因の一つとして、当時の固定資産会計には馴染みのない「減損の兆候」というステップが規定されたことにあると思われる。 以下では減損の兆候に関して解説を行う。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅰ 減損の兆候 1 定義 減損の兆候の定義を確認すると、「固定資産の減損に係る会計基準」(以下「減損会計基準」という)では、次のように定義している(減損会計基準二、1)。 減損会計基準は、減損の兆候がある場合には、当該資産又は資産グループについて、減損損失を認識するかどうかの判定を行うとしている(減損会計基準二、1)。 減損の兆候は、減損が生じている「可能性」を示す事象であり、このステップでは、まだ、「可能性」を識別しているにすぎない。 そして、減損会計は、固定資産のすべてについて、一律に、正味売却価額又は使用価値に基づいて評価するという会計基準ではない。減損会計は固定資産の時価評価を行うものではないのである(減損会計意見書三、1)。 2 減損の兆候を設定した理由 減損の兆候の識別のステップを設けた理由は、固定資産のすべてについて減損損失の認識の判定を行うとすると、実務上、過大な負担となるおそれがあることを考慮したためである(減損会計意見書四、2(1))。 資産又は資産グループに減損の兆候がない場合には、当該資産又は資産グループについて、減損損失を認識するかどうかの判定は不要である。 例えば、固定資産の市場価格がその帳簿価額を下回っているとしても、それが減損の兆候に該当する事象でない場合(他の減損の兆候も識別されない)、減損損失の認識の判定及び測定は行われないことになる。   Ⅱ 減損の兆候の例示 1 減損の兆候に関する実務対応 減損会計基準及び「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第6号。以下「減損適用指針」という)で示されている減損の兆候は、例示である。 減損の兆候が識別されたとしても、直ちに減損損失が計上されるものではなく、次のステップである「減損損失の認識の判定」を行うことになる。 「減損損失の認識の判定」のステップでは、当該資産又は資産グループから得られる割引前将来キャッシュ・フローの総額を見積もり、これと固定資産の帳簿価額を比較する。そして、割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を下回る場合に、減損損失を認識すると判定する。 一方、割引前将来キャッシュ・フローの総額が帳簿価額を上回る場合下回らない場合※には、減損損失を認識しないと判定することになり、減損損失は計上されないことになる。  ※2014/4/9修正 減損の兆候の識別は減損会計の入り口であり、減損の兆候の識別が適切になされないと、その後のステップである減損損失の認識の判定に進まないので、認識すべき損失が認識されないことがありえる。 このため、減損の兆候の識別は、実務上、幅広く行うようにし、減損会計基準及び減損適用指針の例示に限らず、その趣旨を踏まえて判定することになると解される。 2 例示 減損会計基準及び減損適用指針では、次の事象を「減損の兆候」として例示している。 (了)
#49(掲載号)
#阿部 光成
2013/12/19
会計 監査 税務・会計 解説 解説一覧 財務諸表監査

〔会計不正調査報告書を読む〕【第12回】イオンフィナンシャルサービス株式会社・「台湾子会社における不祥事等に関する調査報告書」

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第12回】 イオンフィナンシャルサービス株式会社・ 「台湾子会社における不祥事等に関する調査報告書」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 【概要】   【イオンフィナンシャルサービス株式会社の概要】 イオンフィナンシャルサービス株式会社(以下「AFS」と略称する)は1981年設立。旧社名イオンクレジットサービス株式会社。2013年4月、株式会社イオン銀行と経営統合のうえ、銀行持株会社へ移行し、現在の社名となる。営業収益205,972百万円、経常利益33,367百万円。従業員数9,230名(いずれも2013年3月期)。国内7社、海外23社の子会社を有する。東証1部上場。   【資本関係】 今般、不正が明らかになったイオンクレジットカード台湾及びイオンクレジットサービス台湾(両社を合わせて「台湾子会社」と略称する)は、AFSの100%子会社であるAFS香港の100%子会社である。   【報告書のポイント】 1  調査結果により判明した事実 (1)  不適正な取引発覚の経緯 当初、AFSは、「社内調査により」不適切な会計処理が判明したとリリースしていたが、調査報告書によれば、不正会計に関与してきた台湾子会社の総経理が、「自分が行っている不適正な会計処理とイオンDNA大学(注1)で学ぶことのギャップに苦しみ」、「海外責任者会議の後自らの不正行為を吐露することとなった」ということである。 この時点で、不適正な会計処理は、前任の総経理時代から7年以上にわたって続けられていた。 (注1) 正式名称は「イオンDNA伝承大学」。開校の際のリリースによれば、「創業より培われ現在まで受け継がれてきた不変の理念や価値観を次世代に伝承していくこと」を目的に、約40名を国内外のイオングループから公募して受講させることとなっている。 「次世代経営人材育成機関「イオンDNA伝承大学」が9月1日(土)開校」 ※PDFファイル   (2)  不適正な会計処理の概要 ① 割賦売掛金の過大計上 台湾子会社では、利息収入等の架空計上及び営業費用の過少計上に伴い、割賦売掛金を過大に計上しており、判明分だけで594,649千台湾ドル(注2)と不適正な会計処理金額全体の約70%がこの手口によるものであった。 (注2) 1台湾ドルは約3.35円。 ② 未収入金等の過大計上 台湾子会社では、償却済債権のうち、裁判所の差押判決を得た債権の全額を未収入金に計上しているが、実際の回収率は0.8%程度にとどまっており、本来ならば、回収時に償却債権取立益として計上すべきものであった。 ③ 貸倒引当金の過少計上 台湾子会社では、貸倒引当金を設定すべき延滞債権を正常債権として虚偽表示した債権残高管理表を作成して、貸倒引当金の過少計上を行っていた。 ④ 繰延税金資産の過大計上 各年度の貸借対照表に計上されている繰延税金資産は、上記の不適正な会計処理によって過大に計上された利益・純資産をもとにその回収可能性が判断されたものであり、不適正に過大計上されたものである。 (3)  元董事による不法領得行為 台湾子会社の財務・経理部門のトップの地位にあった元董事は、会社の小口現金から自己の預金口座へ預け入れ、又は会社の口座から送金する形で、少なくとも2億台湾ドル(約6億7,000万円)以上の金銭を領得していた。 また、返済の実態がないにもかかわらず、自己名義のクレジットカード残高について返済があったかのように処理する形で、約1,000万台湾ドルの債務を免れていた。 なお、元董事は約1億4,763万台湾ドルを会社預金口座へ返済しており、損害額は約7,425万台湾ドル(約2億5,000万円)となっている。 (4) 業績に与えた影響   2  不適正な会計処理・不正が長期間発覚しなかった理由 (1)  不適正な会計処理 他の海外子会社同様、台湾子会社2社も30代半ばの日本人駐在員が若くして経営者となっており、先行成功事例に倣い、早期の黒字化、株式上場を目標にしていたが、損失計上が続き、台湾銀行管理局の規定に抵触するのみならず、親会社AFSの所有株式について減損が検討される事態となっていた。 こうした中で始められた不適正な会計処理は、トップ自らの不正であることに加えて、董事会の形骸化、監察人・内部監察部門の機能不全、内部通報制度の機能不全もあいまって、長期間、発覚することなく継続されるに至った。 (2)  存在した不正の端緒 2008年2月、当時の総経理が損害賠償請求訴訟で勝訴したことを受けて、その全額を未収収益に計上しようとして、現地の会計監査人から指摘を受けて、修正していたことが発覚した。 これを受けて、AFS懲戒委員会は、当時の総経理を減俸10%、配置転換して社長付特命部長としたが、台湾子会社において他に不正会計がないかといった調査は行われておらず、本件の発覚を遅らせる結果となった。 また、加盟店であるピアノ販売会社が、ピアノ代金に加えてレッスン代金を分割払い債権としていたため、同加盟店が2009年に倒産後、レッスン代金は払えないというクレームがあり、延滞債権が発生していた。しかし、台湾子会社では、未回収の債権について貸倒引当金を設定しておらず、こうした事実が表面化したのは2012年5月頃であった。 その後、8月には、監査部と香港統括会社により台湾子会社の監査が行われたが、通常の監査として行われたため、貸倒引当金計上が適切だったのかどうかなどの問題については、調査された形跡がない。2008年に続き、不適正な会計処理が再度発覚したにもかかわらず、会計処理の適正性は十分に調査されず、不正会計を見つけ出すことができなかった。 (3)  元董事による不法領得行為 台湾子会社においては、会社財産の不法領得を予防し、発見する内部統制が整備・運用されていなかった。 また、元董事によるクレジットカード残高の不正入金処理に関しては、現地社員から総経理のもとに不正に関する通報があったにもかかわらず、通報を受けた総経理は、自己の不正会計の発覚を恐れ、何らの踏み込んだ調査も行わなかったため、発覚がさらに遅れる結果となった。   3  調査報告書の特徴 (1)  海外子会社に対する内部統制の難しさ 本連載でも、【第1回】から【第3回】まで続けて、海外子会社の不正調査報告書を取り上げたが、海外子会社の不正をどう防止し、早期に発見するかについての関心は、新たな不正の発覚が報じられるたびに、高まっている。 本報告書は、海外子会社の経営を任された若い日本人駐在員が、赤字体質を隠蔽するため粉飾決算を繰り返す中、現地雇用の董事が不適正な会計処理に便乗する形で会社の金銭を不法に領得した事案が、どのようにして発生し、かつ、長期間発覚しなかったのかについて、綿密に調査した報告書である。 (2) 台湾で苦戦していたイオングループ 本件で問題となった台湾子会社は1999年に設立され、その後、2003年に、イオングループの総合スーパーマーケットである「ジャスコ」が台湾に進出したことを受けて、その顧客に対する分割払いサービスやクレジットカード発行を行ってきた。しかし、肝心の店舗と店舗運営会社は、2007年12月に撤退することが決まる。 そうした状況で迎えた2007年12月期決算において、台湾子会社のうちクレジットサービス(台湾)は、決算期変更の影響で10ヶ月決算になったにもかかわらず、前年比122%の営業収益を達成して、初の黒字決算を報告した。 実際には、この期に最初の粉飾決算が行われていたわけである。 店舗の撤退が台湾子会社の業績にどのような影響があったのかは不明であるが、この報告を受けたAFS経営陣は、何も疑うことなく黒字決算を喜んだのだろうか。 (3) 銀行持株会社としてのAFSの管理体制 本報告書では、銀行持株会社としてスタートしたばかりのAFSについて、法令等遵守・子会社管理体制に関する提言に紙幅が割かれているのも特徴的である。再発防止策として掲げられた下記項目についても、(ア)から(オ)については、もっぱら、銀行持株会社として組織を再編したAFSについて、あるべき姿を提言したものといえよう。 (4) 関係者の処分 9月25日付のリリースでは、台湾子会社は、台湾子会社の2人の元総経理及び元董事については、台湾商業会計法違反の疑いにより、元董事についてはこれに加えて台湾刑法における業務上横領罪等の疑いにより、台湾の法務部調査局に刑事告訴したことが公表された。この3人については、刑事告訴の前日において、すでに懲戒解雇処分が行われている。 他社の不正事例では、調査報告書を公表した際に「刑事告訴を検討している」と記載されていることが多いが、本件は、日本と台湾の刑事告訴手続の相違もあるだろうが、非常に早い時点での刑事告訴である。 (了)
#49(掲載号)
#米澤 勝
2013/12/19
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経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第28回】連結会計③「少数株主持分」

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第28回】 連結会計③ 「少数株主持分」   仰星監査法人 公認会計士 大川 泰広   〈事例による解説〉 ●A社はB社の株式80%を400で取得しました。 ●X1年4月1日のA社・B社の貸借対照表は以下のとおりです。 ●X2年3月31日のA社・B社の貸借対照表及び損益計算書は以下のとおりです。  〈会計処理〉 ① 投資と資本の相殺消去 (*1) 資本金、準備金、剰余金などが含まれます。 (*2) 取得時のB社純資産500×(100%-80%)=100 ② 当期純利益の按分 (*3) B社当期純利益1,000×(100%-80%)=200  〈X2年3月期の連結財務諸表〉  〈会計処理の解説〉 親会社が子会社株式の100%を保有している場合、当該子会社の純資産はすべて親会社に帰属するものと考えられます。 しかし、親会社が子会社株式の100%を保有していない場合、当該子会社の純資産は、親会社に帰属する部分と、親会社以外の株主(=少数株主)に帰属する部分に分けられます。 前々回に解説したとおり、子会社を取得したときは、自己に対する投資である子会社株式と、自己からの出資である子会社純資産は、連結上、消去する必要があります。 しかし、少数株主が存在する場合には、子会社純資産のうち、少数株主に帰属する部分を「少数株主持分」に振り替える必要があります。 B社が計上した当期純利益についても同様に、親会社に帰属する部分と、少数株主に帰属する部分に分ける必要があります。 本事例では、B社は当期純利益を1,000計上しています。 A社の持分割合は80%ですので、残りの20%は「少数株主利益」とし、連結損益計算書上、利益のマイナスとして計上します。 一方、「少数株主利益」は、少数株主に帰属する純資産ですので、「少数株主持分」を増加させます。 結果、B社の当期純利益1,000のうち、800(=1,000×80%)が利益剰余金となり、200(=1,000×20%)が「少数株主持分」となります。 投資と資本の相殺消去、当期純利益の按分により、X2年3月期の連結貸借対照表には、「少数株主持分」が300計上されました。 他方、X2年3月期のB社純資産のうち、少数株主に帰属する部分は1,500×20%=300です。 両者が一致していることから、連結修正によって、B社純資産のうち、親会社に帰属しない部分が「少数株主持分」として計上されたことが分かります。 なお、平成25年9月13日に「企業結合に関する会計基準」等が改正されたことに伴い、平成27年4月1日以後開始する連結会計年度から、「少数株主持分」、「少数株主利益」の名称が、それぞれ「非支配株主持分」、「非支配持分に係る当期純利益」に変更されることとなりました。 (了) ※1月は企業結合会計を取り上げます。
#49(掲載号)
#大川 泰広
2013/12/19

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