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《速報解説》 雑損控除等の見直し~平成26年度税制改正大綱~
《速報解説》 雑損控除等の見直し ~平成26年度税制改正大綱~ 公認会計士・税理士 篠藤 敦子 平成26年度税制改正大綱では、災害等で被害を受けた場合に適用可能な各種制度に関して、いくつかの見直しが示されている。これらの見直しのうち所得税に係るものについて、解説を行うこととする。 雑損控除や災害免除法に係る現行制度の詳細については、拙稿「平成24年分 確定申告実務の留意点【第5回】『各所得控除における留意点』」をご参照いただきたい。 (1) 雑損控除の見直し 雑損控除の対象となる「資産の損失金額」について、算定方法の見直しが示された。 雑損控除として所得控除できる金額は、次の①と②のいずれか多い方の金額である(所法72①)。 現行制度では、上記算式の資産の損失金額は、損失の生じた時の直前における資産の価額(時価)を基礎として計算するものとされている(所令206③)。今回の見直しでは、この時価を基礎として計算する方法に取得価額を基礎とする方法が追加された。 これにより、納税者が時価による方法と取得価額を基礎とする方法のどちらかを選択できることとなる。 従来の時価による方法では、原則として損失発生前後における資産の時価を把握する必要があるため、損失金額の算定が困難となる場合も多かった。取得価額を基礎とする方法を選択できるようになれば、損失金額の算定が容易になるものと考えられる。 取得価額を基礎とする方法を具体的に示すと、次の通りである。 〈資産の損失金額の計算:取得価額を基礎とする方法〉 *非業務用資産に係る減価償却費累積額相当額の計算は、非業務用資産を譲渡した場合の資産の取得費の計算方法と同じである。 (2) 東日本大震災に係る災害関連支出の対象期間の見直し ① 現行制度の概要 原状回復費用等のうち、雑損控除等(雑損控除及び雑損失の繰越控除、被災事業用資産の損失の繰越控除)の対象となる災害関連支出として扱うことができるものは、次の期間内に支出した金額に限られている(所令206①二)。 ② 見直しの概要 東日本大震災により被災した資産に関連する原状回復費用等について、その災害のやんだ日から3年以内に支出することが困難な事情があるときには、その困難な事情がやんだ日の翌日から3年以内に支出される金額も災害関連支出の対象にできることが示された。 見直しの対象となるのは、平成26年1月1日以後に支出する原状回復費用等である。 〈東日本大震災により被災した資産の原状回復費用等の取扱い〉 (3) 予定納税制度の見直し ① 現行制度の概要 その年の5月15日現在で確定している予定納税基準額が15万円以上である場合には、第1期及び第2期(*)において、それぞれ予定納税基準額の3分の1に相当する金額の所得税を納付しなければならない(所法104①)。 (*)第1期:その年の7月1日から7月31日まで、第2期:その年の11月1日から11月30日まで 税務署長は、予定納税額のある納税者に対し、その年の6月15日までに予定納税額の通知を書面で行う必要がある(所法106①)。 なお、災害その他やむを得ない理由により、申告や納付等が期限までにできないと認められるときには、税務署長等はその理由のやんだ日から2月以内に限り、当該期限を延長することができる(以下、災害等による納期限等の延長という。通法11、通法令3)。 ② 見直しの概要 災害等による納期限等の延長が行われる場合には、予定納税に関して次のような問題が生ずる。 そこで、災害等による納期限等の延長がある場合の予定納税について、次の見直しが示された。 (4) 所得税の減免申請の申告要件の見直し ① 現行制度の概要 地震等の災害によって住宅や家財等に甚大な損害(時価の2分の1以上)を受けたときは、所得税の全部又は一部の減免を受けることができる(災免法2)。ただし、減免を受けるためには、当該制度の適用を受ける旨、被害の状況及び損害金額を記載した確定申告書を期限内に納税地の所轄税務署長に提出する必要がある(災免法令2①)。 ② 見直しの概要 所得税の減免申請が、期限内の申告だけでなく、期限後申告、更正の請求、修正申告においてもできることとされた。 (了)
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《速報解説》 有価証券の国外移管等に係る国外送金調書の提出義務の追加~平成26年度税制改正大綱~
《速報解説》 有価証券の国外移管等に係る 国外送金調書の提出義務の追加 ~平成26年度税制改正大綱~ 税理士法人トーマツ パートナー 税理士 小林 正彦 1 改正の内容 「平成26年度税制改正大綱」によると、国内証券口座から国外証券口座に有価証券を移管した場合又はその逆の場合、金融機関から調書が提出されることになった。 2 現行の国外送金調書制度 銀行が顧客から海外送金の依頼を受けた場合、銀行は告知書の提出を受け、送金額が1回100万円超の送金については、調書を所轄税務署長に提出する義務がある。 3 改正の内容 証券会社の営業所の長が、顧客の依頼に基づき、当該営業所に開設された有価証券の保管等に係る口座(国内証券口座)から国外において金融商品取引行を営む者の営業所等に開設された有価証券の保管等に係る口座(国外証券口座)に有価証券の移管をした場合、又は国内証券口座に国外証券口座から有価証券の移管を受けた場合には、その移管に係る有価証券の種類、数又は金額その他の事項を記載した調書を、当該営業所の所在地の所轄税務署長に提出しなければならないこととされた。 この制度は、平成27年1月1日以降に行われる有価証券の移管について適用される。 4 改正の意義 国税当局は富裕層の海外保有資産の把握に力を入れている。その手段として、平成26年から「国外財産調書」の提出が始まる。これは各年度末における資産の保有状況を把握するためのものであり、いわばストック面での情報収集である。 一方、資産のフローの情報を把握するための施策として、「国外送金等調書」制度があり、100万円超の送金は調書が税務当局に提出される。しかし、証券会社等の口座に預託されている有価証券の国外口座への移管についてはこれまで調書提出義務は課されておらず、手当が必要であるとされていた。 5 実務上の留意点 平成26年1月に開始される国外財産調書は国外財産が5,000万円を超える場合に報告義務があるが、金融機関に預けている資産については、国外財産かどうかの判定は、その口座を管理する営業所の所在地による。 したがって、国内銘柄株式であっても国外の営業所に移管した場合には、国外財産として報告の対象になる。 (了)
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《速報解説》 移転価格税制に係る「みなし国外関連取引」適用対象の拡大~平成26年度税制改正大綱~
《速報解説》 移転価格税制に係る 「みなし国外関連取引」適用対象の拡大 ~平成26年度税制改正大綱~ 税理士法人トーマツ パートナー 税理士 小林 正彦 1 はじめに 今回の大綱中、移転価格税制に関する改正として、「みなし国外関連取引」の適用対象を役務提供取引に拡大することが明らかにされている。 2 みなし国外関連取引とは 日本から海外にある子会社に商品を輸出する際、第三者を通じて販売することがある。典型的には、非関連者である商社を経由する販売である。 移転価格税制は親子間など支配関係のある法人間の取引を対象とするものであり、非関連者との取引は原則として適用対象外である。商社経由取引も形式的にみれば非関連取引である。 しかし、国外関連者との取引において形式的に第三者が介在しているに過ぎない場合にまで移転価格税制の適用がないとすると、第三者を介在させることによって意図的に移転価格税制を回避することが可能になる。 このため、一定の要件を満たす場合には、非関連者が介在していても国外関連取引とみなして、移転価格税制を適用することとしている(措法66の4、措令39の12⑤、39の12⑨)。 「みなし国外関連取引」となる条件は、上図の①、②の取引について、それぞれ以下の条件を満たすことである(措令39の12⑨)。 したがって、親子間で取引価格を決定する際、もとの商品の価格に一定の商社口銭分を上乗せして決めているような場合には、移転価格税制の適用がある。 3 現行法の問題点 みなし国外取引の対象は、「資産の販売等」(販売等には販売のほか、譲渡、貸付、提供が含まれる)とされており(措令39の12⑨)、役務提供が含まれていないことが実務上問題となるケースがあった。 典型的には、下図のような保険取引である。 A保険会社は世界各国に子会社を有しており、タックスヘイブン国に保険リスクを管理する法人を有している。A社の日本法人が第三者である元受保険会社Bに保険料100を支払い、BはA社がX国に設立したキャプティブ保険会社(※)に再保険料100を支払っている。 我が国では、保険業法上の海外付保規制により海外に再保険をする場合には、B社のような元受保険会社を通じる必要がある。 ここで、A社とX国法人が仮に独立企業間であったとした場合の保険料が50であったとすると、日本からX国に50の所得が移転していることになる。しかし、少なくとも現在の「みなし国外関連取引」の規定では、こうした役務提供取引に移転価格税制の適用があるかどうかは明らかでないという問題がある。 (※) キャプティブ保険は専属保険ともよばれ、自社製品の製造物責任賠償リスク等のリスクに見合う保険料のみを引き受ける保険会社である。リスクを自社で保有する場合に比べて、保険料を損金として認識できるメリットがあるほか、一般の保険会社が保険を引き受けないケースや、保険料が高額になってしまうケースでリスクを外部化できるメリットがある。キャプティブ保険会社は低税率国に設立されることが多い。 4 改正案 みなし国外関連取引の範囲が、役務提供取引にも拡大される。 5 実務への影響 関連者間の役務提供に第三者が介在する例は多くないが、上記のキャプティブ保険などにはよくみられるものである。 今後、キャプティブ保険を活用している会社は、保険料が移転価格調査においてチェックされ、独立企業間価格でない場合は更正を受けることになる。 調査に対する準備として、保険料についても移転価格文書化が必要になる。 (了)
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《速報解説》 車体課税の見直し~平成26年度税制改正大綱~
《速報解説》 車体課税の見直し ~平成26年度税制改正大綱~ 公認会計士・税理士 菊地 弘 平成25年12月12日に「平成26年度税制改正大綱」が決定され、自動車関係税制が次のとおり見直されることとなった。 1 車体課税の見直し (1) 自動車重量税(国税) ① 「自動車重量税のエコカー減税」の拡充 平成26年4月1日以後に新車に係る新規検査を受けた検査自動車のうち、当該新規検査の際に納付すべき自動車重量税を免除された検査自動車については、当該新規検査後に受ける最初の継続検査等の際に納付すべき自動車重量税を免除する。 【乗用車等の例】 ② 経年車に対する課税の引上げ 平成26年4月1日以後に継続検査等を受ける自家用の検査自動車のうち、新車新規登録から13年を経過したもの(新車新規登録から18年を経過したものを除く)に係る自動車重量税の税率について、見直しを行う(営業用自動車は、現行の税率のまま据え置き)。 (2) 自動車取得税(地方税) ① 税率の引下げ 平成26年4月1日以後に取得される平成22年度燃費基準を満たす自動車等に対して課する自動車取得税の税率を、次のように引き下げる。 ② 「自動車取得税のエコカー減税」の拡充 平成26年4月1日以後に取得される自動車について、軽減割合を次のとおり拡充する。 【乗用車等の例】 (3) 自動車税(地方税) 「自動車税のグリーン化」について、次の見直しを行った上、2年延長する。 ① 環境負荷の小さい自動車 〇「グリーン化特例の延長・拡充」(H26.4.1~H28.3.31) 平成26年度及び平成27年度に新車新規登録された自動車で、一定のものは、次表のとおり軽減特例の措置が延長・拡充される。 ② 環境負荷の大きい自動車 平成26年度及び平成27年度に以下の年限を超えている自動車(電気自動車、天然ガス自動車等、一般乗合用バス及び被けん引車を除く)について、その翌年度から次の特例措置を講ずる。 (4) 軽自動車税(地方税) ① 税率の引上げ 四輪以上及び三輪の軽自動車に係る税率を次のとおりとし、平成27年4月1日以後に新規取得される新車から適用する。 ② 経年車重課の実施 最初の新規検査から13年を経過した四輪以上及び三輪の軽自動車に係る税率を次のとおりとし、平成28年分度以後の軽自動車税について適用する。 概ね20%の重課となる(既存車・新規車を問わない)。 ③ 税率の引上げ 原動機付自転車及び二輪車に係る税率を次のとおりとし、平成27年分度以後の軽自動車税について適用する。 2 復興支援のための税制上の措置 (1) 自動車重量税(延長) (2) 自動車取得税(延長) 被災代替自動車等の取得に係る自動車取得税の非課税措置の適用期限を2年延長する。 (3) 自動車税・軽自動車税(延長・拡充) 自動車税及び軽自動車税の非課税措置の適用期限を次のとおり2年延長する。 3 租税特別措置等 〇自動車取得税(延長) 都道府県の条例で定める路線の運行の用に供する一般乗合用のバスに係る自動車取得税の非課税措置の適用期限を2年延長する。 (了)
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《速報解説》 消費税の軽減税率制度の導入~平成26年度税制改正大綱~
《速報解説》 消費税の軽減税率制度の導入 ~平成26年度税制改正大綱~ 税理士・社会保険労務士 上前 剛 1 導入の時期 軽減税率制度の導入の時期に関する「平成26年度税制改正大綱」の記載は、「税率10%時に導入する」となっている(同大綱P6)。 ちなみに、自動車取得税の廃止の時期に関する大綱の記載は、「消費税率10%への引上げ時(平成27年10月予定)に廃止する」となっている(同大綱P4)。 「10%引上げ時」と記載せず、「10%時」と記載したのは、「引上げ時」だけでなく、「引上げ時以降」も含むことを意図している。 つまり、軽減税率制度の導入の時期は、「10%引上げ時」または「10%引上げ後」のいずれかの時点といえる。 2 導入に向けてのスケジュール 大綱では、平成26年12月までに以下の事項の検討を行い、結論を得た上で、平成27年度税制改正大綱にて詳細な内容が公表される予定とされている。 3 各国の動向 現在、EU諸国の多くでは、付加価値税(日本でいうところの消費税)に軽減税率制度を導入している。 例えば、イギリスでは付加価値税の標準税率は20%、家庭用燃料及び電力等は5%の軽減税率となっている。同じく、ドイツでは付加価値税の標準税率は19%、食料品、水道水、新聞、雑誌、書籍、旅客輸送、宿泊施設の利用等は7%の軽減税率となっている。 つまり、軽減税率制度を導入すること自体は、世界的にみても一般的といえる。 4 「インボイス方式」と「請求書等保存方式」 EU諸国の付加価値税の計算方式は「インボイス方式」が採用されているのに対し、日本の消費税の計算方式は「請求書等保存方式」が採用されており、この点で大きく異なっている(下図参照)。 〈請求書等保存方式(左図)とインボイス方式(右図)〉 (出所:財務省ホームページ) 「インボイス方式」とは、課税事業者が発行するインボイスに記載された税額のみを控除できる方式であり、インボイスの記載や発行などに厳格な要件が義務付けられている。 「インボイス方式」だからこそ軽減税率制度の導入が可能になっている面もある。 一方、日本では、「請求書等保存方式」のままで軽減税率制度を導入することになると考えられる。 上記2の今後の検討事項のうち、区分経理等のための制度整備がどのようになされていくのか注目したい。 (了)
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《速報解説》 「簡易課税制度のみなし仕入率の見直し」「輸出物品販売場における輸出免税の対象物品の見直し」「金銭債権を譲渡した場合の課税売上割合の計算方法の変更」~平成26年度税制改正大綱~
《速報解説》 「簡易課税制度のみなし仕入率の見直し」 「輸出物品販売場における輸出免税の対象物品の見直し」 「金銭債権を譲渡した場合の課税売上割合の計算方法の変更」 ~平成26年度税制改正大綱~ アースタックス税理士法人 税理士 島添 浩 はじめに 消費税法における改正については、平成24年8月の社会保障の一体改革の税制改正に基づき、平成26年4月1日から消費税率8%への引上げの実施が平成25年10月1日の閣議決定により確定したところである。 また、前年度の税制改正大綱からの検討事項となっていた消費税の軽減税率制度の導入について、平成26年度税制改正大綱において、どのタイミングで実施されるのか、具体的な内容が示されるのかが焦点となっていたが、結局のところ、「消費税率10%時に導入する」との文言を示すのみで、詳細については、平成26年12月までに結論を得て来年度の税制改正大綱で決定することとなった。 なお、「10%時に導入する」といっても、10%の税率引上げ時なのか、消費税率が10%の期間中なのかという点についても曖昧な表現となっており、導入時期についても決定したわけではなく、前年度の税制改正大綱と同様に、今回もまた検討事項となった。 この軽減税率制度以外の税制改正大綱による消費税法の改正点は、次の3項目である。 以下、それぞれの改正内容について解説していくこととする。 ① 簡易課税制度のみなし仕入率の見直し 消費税法における簡易課税制度は、「みなし仕入率」を使用して計算するのであるが、従来から課題となっていた益税問題として、みなし仕入率と実際の課税仕入れ率との間に乖離があるとの指摘がなされており、特に金融・保険業や不動産賃貸・管理業については、その乖離が顕著であることから、今回の税制改正において、金融業及び保険業の業務に係るものは、現行の第四種事業(60%)ではなく、第五種事業(50%)として計算することとなった。 さらに、業種区分について、新たに第六種事業を創設し、そのみなし仕入率を40%とした上で、不動産業の業務に係るものは、現行の第五種事業(50%)ではなく、第六種事業として計算することとなった。 なお、この改正は、平成27年4月1日以後に開始する課税期間について適用する。 したがって、改正後の具体的な業種区分は、以下のようになる。 また、税制改正後の簡易課税制度における控除対象仕入税額の基本的な計算方法は、次のようになる。 イ 第一種事業から第六種事業までのうち1種類の事業だけを営む事業者の場合 【算式】 ロ 第一種事業から第六種事業までのうち2種類以上の事業を営む事業者の場合(原則) 【算式】 【各業種の売上げに係る消費税額】 ② 輸出物品販売場における輸出免税の対象物品の見直し 外国人旅行者に対する輸出物品販売場における輸出免税の規定において、今回の税制改正により従来では対象物品から除外されていた消耗品について、一定の要件のもと輸出免税の対象となった。 具体的には、以下の方法を前提とした消耗品(その旅行者に対して、同一店舗で1日に販売する50万円までの消耗品に限る)が対象となる。 また、その旅行者に対して、同一店舗で1日に販売する見直し前の免税対象物品(消耗品以外の物品)の額が100万円を超える場合には、輸出物品販売場を経営する事業者が保存しなければならない書類に、その旅行者の旅券等の写しを追加することとした。 なお、「見直し前の免税対象物品」とは、飲食料品、たばこ、医薬品、化粧品、フィルム、電池などの消耗品を除く通常の生活用物品で、一取引の合計金額が1万円超のものをいう。 上記の改正は、平成26年10月1日以後に行われる課税資産の譲渡等について適用する。 ③ 金銭債権を譲渡した場合の課税売上割合の計算方法の変更 仕入税額控除の計算で使用する課税売上割合の計算方法は、資産の譲渡等の対価の額のうち課税資産の譲渡等の対価の額の占める割合をいうのであるが、今回の改正により、金銭債権の譲渡については、課税売上割合の計算上、資産の譲渡等の対価の額に算入すべき金額を、その譲渡に係る対価の額ではなく、その対価の額の5%相当額を算入することとなった。 これは、消費税法施行令48条5項に規定している有価証券等を譲渡した場合における譲渡対価の額の5%相当額を課税売上割合の計算上資産の譲渡等の対価の額に含める計算方法と同様の処理となり、この改正により課税売上割合は従来よりも大きくなることから、納税者有利の改正点である。 なお、改正後の非課税となる有価証券等の範囲と課税売上割合の分母に含める金額は、以下のようになる。 上記の改正は、平成26年4月1日以後に行われる金銭債権の譲渡について適用する。 (了)
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Profession Journal No.49 公開のお知らせ
12月19日(木)AM10:30、Profession Journal の No.49 が公開されました。 Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開してまいります。 Web情報誌 Profession Journalは、プロフェッションネットワークのプレミアム会員専用の閲覧サービスです。 Profession Journalについての詳細はこちら。 バックナンバー一覧はこちら。
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日本の企業税制 【第2回】「地方法人課税の見直し」
日本の企業税制 【第2回】 「地方法人課税の見直し」 一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 阿部 泰久 1 はじめに わが国の法人実効税率が高いのは、法人事業税、法人住民税のためであり、法人実効税率の引下げには、地方法人課税の見直しが不可欠である。また、地方税全体の中で法人所得課税のウエイトが高いことにより、景気変動による税収の不安定さとともに偏在性の問題が指摘されている。 平成26年度税制改正では、税制抜本改革までの暫定措置とされている地方法人特別税の扱いとともに、法人住民税の一部を国税に移した上で地方交付税財源とすることが大きな課題となった。 2 総務省「地方法人課税のあり方等に関する検討会」報告書 総務省地方財政審議会の下に置かれていた地方法人課税のあり方等に関する検討会(座長:神野直彦東京大学名誉教授)は、11月6日に報告書を公表したが、その中では、今後の地方法人課税のあり方として以下の諸点が示されている。 3 地方法人特別税 平成20年度税制改正で導入された地方法人特別税は、地方税収の偏在化の是正策として、法人事業税の税収のおよそ2分の1を国にプールした上で、全額を地方法人特別譲与税として、その1/2を直近の国勢調査による人口、1/2を従業者数の基準によって都道府県に譲与する仕組みであり、税制抜本改革がなされるまでの間の「暫定的措置」として位置付けられていた。 また、消費税改正法でも、地方法人特別税・譲与税について、税制の抜本的な改革において偏在性の小さい地方税体系の構築が行われるまでの間の措置であることを踏まえ「税制の抜本的な改革に併せて抜本的に見直しを行う(第7条五号)」こととされていた。 【法人事業税改正、地方法人特別税・地方法人特別譲与税のスキーム】 地方法人特別税・譲与税の税収は1兆7,643億円(平成25年度地方財政計画)であり、地方消費税1%相当額2兆6,650億円に及ばない。しかし、地方法人二税の人口1人当たり税収額が最大の東京都と最小の奈良県との間で5.3倍の格差があるところ、地方法人特別譲与税を入れた場合は4倍程度に縮小しており、偏在是正には一定の効果を上げている。 平成26年度税制改正では、後述の法人住民税の地方交付税財源化(地方法人税の創設)と併せて、地方法人特別税・譲与税の1/3(およそ6,000億円分)を法人事業税に復元することとされた。 4 法人住民税の一部の交付税財源化 消費税は税収の地域偏在性が少ない税とされているが、それでも人口1人当たり税収額が最大の東京都と最小の沖縄県との間で2.9倍の格差があり、地方消費税率引上げによりさらに拡大することが見込まれている。 また、現在、地方財政全体では約13.3兆円の財源不足額があるのに対し、交付税不交付団体の留保財源と財源超過額の合計額は1.8兆円を超えており、地方消費税率引上げにより増大することが見込まれる。 すなわち、税制抜本改革=地方消費税率の引上げにより、全体としての地方の財源不足は緩和されるとしても、東京都をはじめとする一部の富裕団体はますます豊かになり、偏在性が拡大していくことが見込まれている。 そこで、平成26年度税制改正では、消費税率が8%に引き上げられる平成26年4月1日以降、法人住民税のうちおよそ6,000億円相当分を国税化し、その全額を「地方法人税」という名の国税とした上で交付税原資に繰り入れることにより、偏在性の是正策を講じることとされた。 【偏在性是正策のイメージ】 地方法人税の創設と地方法人特別税・譲与税から法人事業税への復元は、ともに6,000億円程度とされるが、地方法人特別譲与税は東京都等の不交付団体にも一定額は配分される一方で、地方法人税は交付税財源とされるため不交付団体には配分されないことにより、偏在性の是正は進むことになる。 また、消費税率10%引上げ時においては、法人住民税法人税割の地方交付税原資化をさらに進めるとともに、地方法人特別税・譲与税について、現行制度の意義や効果を踏まえつつ、廃止その他の措置を含めた抜本的な見直しを行うなど、税源偏在を是正する観点から関係する制度について幅広く検討を行うこととされている。 5 法人実効税率引下げと地方法人課税 この結果、法人税負担に変化があるものではなく、法人実効税率は変わらない、しかし、今回の措置は、将来の法人実効税率引下げのためには欠かせない布石であると考える。 日本の法人実効税率が高い大きな理由は、地方法人二税の存在である。また、地方税において法人所得課税のウエイトが大きいことにより、景気変動による税収の不安定性とともに、税源の偏在性を免れない。 そこで、地方法人二税をできる限り国税化し地方共有の財源とすることで、地域ごとの大きな変動と偏在性の是正がいくらかでも解消できる。また、同時に地方法人二税をそれぞれの地方自治体固有の財源としていたのでは、税率の引下げに耐えられない地方自治体が出てくるのに対し、共有財源とすることでその影響を和らげることができる。 経団連では、今年5月の「地方法人課税のあり方」の提言の中で、地方法人所得課税の国税化を図った上で、地方交付税、地方譲与税等もあわせた一般財源を保障する仕組みを構築すべきことを求めており、今回の改正はその趣旨に沿ったものと評価している。 (了)
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居住用財産の譲渡所得3,000万円特別控除[一問一答] 【第11問】「同一年中に2回居住用財産を譲渡した場合」-居住用財産の範囲-
居住用財産の譲渡所得 3,000万円特別控除 [一問一答] 【第11問】 「同一年中に2回居住用財産を譲渡した場合」 -居住用財産の範囲- 税理士 大久保 昭佳 Q Xは、平成25年中に、現に居住しているA住宅を売却し、同年中に9年前から所有しているB住宅を直ちに居住の用に供していましたが、同年中にそのB住宅も売却しました。 なお、B住宅の居住期間は短いが、B住宅は甲の居住の用に供している家屋に該当します。 この場合、「3,000万円特別控除(措法35)」の適用関係はどのようになるのでしょうか? A A住宅及びB住宅が居住用財産であれば、譲渡所得の全部について「3,000万円特別控除」の特例の適用を受けることができる。 ただし、控除額は3,000万円が限度となる。 〈解説〉 同一年中の譲渡であるから、連年適用排除の規定は適用されない。したがって、3,000万円の控除額を限度として、その譲渡所得の全部について「特例」を受けることができる。 ただし、居住の事実がないところを、特例を受けるためのみの目的で故意に住民票を異動するなどした場合には、重加算税の対象となり得る可能性があることから、その判定にあたっては十分な注意が必要であると考える。 (了)
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租税争訟レポート 【第15回】従業員による横領と法人に対する重加算税〔納税者勝訴〕
租税争訟レポート【第15回】 従業員による横領と法人に対する重加算税 〔納税者勝訴〕 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 【事案の概要】 本件は、処分行政庁が、原告に対し平成12年5月1日から平成18年4月30日までの6年間にわたる各事業年度の間に、原告の従業員が関係業者からリベートとして受領していた手数料合計9,786万3,000円のうち、 ところ、原告が、これらの収益は従業員個人に帰属するものであって、隠ぺい仮装を行った事実もないと主張して各処分の取消しを求めたという事案である。 【争点に関する主張】 1 争点1(本件手数料に係る収益が原告に帰属するか否か)について 〈被告主張の要旨〉 〈原告主張の要旨〉 2 争点2(本件手数料に係る収益が原告に帰属するとした場合、その額はいくらか)について 〈被告主張の要旨〉 〈原告主張の要旨〉 3 争点3(原告による仮装又は隠ぺい行為の有無)について 〈被告主張の要旨〉 〈原告主張の要旨〉 【裁判所の判断】 1 争点1(本件手数料に係る収益が原告に帰属するか否か)について 2 結論 以上より、本件手数料に係る収益が原告に帰属するとは認められず、原告が従業員Aに対して損害賠償請求権を有しない結果、原告については、本件手数料相当額の益金が存在しないことになるから、本件各処分には取消事由となる違法があるというべきである。 【解説】 役員・従業員による横領が税務調査により発見された場合の課税処分は、概ね以下の筋書きに沿ってなされる。 本件も、同じ経緯による更正処分等が行われたところ、仙台地方裁判所は、従業員が受け取ったリベートは、本来法人に帰属するものとは言えず、処分行政庁による更正処分等をすべて取り消す判決を下した。 他の類似訴訟との相違点を概観すると、 などが挙げられよう。 本件リベートが、原告である法人に帰属するものではない以上、リベートを受け取った従業員は、本来申告すべきであった雑所得に係る収入金額が洩れていたことになるから、加算税の賦課決定を含む課税処分が行われる。税務署としては、あえて、法人に対して課税処分を行わなくても、税収の確保という点ではあまり差はないように思えるのだが、やはり「重加算税の賦課決定処分」にこだわるのであろうか。もちろん、従業員に対する課税となると、実際に納付できるだけの資力があるかどうかも問題になるわけだが。 内部統制システム構築上の要請でもある、適切な職務分掌や明確な権限委譲が、「本件リベートは法人に帰属するものではない」という判決に導いたという点について、従業員による売上代金の横領行為を法人の行為と同一視して重加算税の賦課決定処分を認めた類似訴訟の判決と一線を画するものとして評価したい。 (了)