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会計事務所 “生き残り” 経営コンサル術 【第11回】「コンサルの仕事って、そんなにおいしい仕事なの?」
会計事務所 “生き残り” 経営コンサル術 【第11回】 「コンサルの仕事って、 そんなにおいしい仕事なの?」 株式会社 経営ステーション京都 代表取締役 京セラ株式会社 元監査役 公認会計士・税理士 田村 繁和 開業仕立ての若手会計人の多くが、“コンサルティング”という言葉を名刺に入れて仕事をされています。そして前回も書きましたが、「これからの時代は税務じゃなくてコンサルだ」と言っておられます。 ここまでは良いのですが、ろくに税務のことを知らないで、税務をやっている人を軽蔑するかのような話をするのは、いただけないようです。 税務顧問料が月額5万円で、コンサルタント料が月額30万円なら、確かにコンサルタント料がすごい金額であることは事実です。 ただし、30万円のコンサルは契約期間があって、一定時期をもって契約終了となります。しかし税務の仕事は、よほどのことがない限り続いていくものです。 半年ほどの契約であれば、月100万円もらっていても、次から次へと新規が入ってこない限り、事務所の経営はたいへんになってきます。 社員がコロコロと辞めていく事務所の中には、コンサルのようなスポット取引中心のところが多いようです。 一方、税務の仕事は、月額5万円とかで確かに地味な仕事です。しかし、決算料など毎年必ずもらえますし、失敗がなければずっと続いていく業務です。 そのため事務所の経営計画や資金計画が立てやすく、その意味ではありがたい仕事なのです。 このありがたさを今ひとつ分かっていない会計人が、少なからずおられるのです。 私は公認会計士ですが、43名ほどの税務中心の税理士法人を営んでいます。そして、税務の収入だけで経営計画をつくって経営しています。 社員も長いキャリアの人が多く、ほとんど退社しません。相続やコンサルの収入をアテにしない経営をしていますので、事務所自体が安定するのです。 税務の顧問料も、ある程度の客数と良いお客様を見つけていくことによって、数多くのおいしい部分があるものです。 こんなことを言っている私ですが、30年ほど前に、コンサルティング会社からの誘いに乗ってコンサルを始めました。当時は全国的なブームとなって、コンサル時代の到来になったのです。 私も300万円ぐらいのお金を使ったように記憶していますが、全国のほとんどの会計人が失敗し、そのコンサル会社も倒産してしまいました。 コンサルを絶対的なものだと思っておられる会計人は、ぜひ、私のように失敗しないよう、気をつけていただきたいと思います。 (了)
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税理士・公認会計士事務所[ホームページ]再点検のポイント 【第9回】「“良い”事務所ホームページって、どんなページ?」
税理士・公認会計士事務所 [ホームページ]再点検のポイント 【第9回】 「“良い”事務所ホームページって、どんなページ?」 データライズ株式会社 代表取締役社長 公認会計士・税理士 河村 慎弥 前回まで2回にわたり「最低限、これだけはすぐに直しましょう!」という、いわば“ダメな事務所ホームページ”についてお話してきました。 それでは皆さん、逆に“良い事務所ホームページ”って、どんなページだと思いますか? そこで今回からは、良い事務所ホームページの見せ方・作り方についてお話します。 * * * この連載の【第1回】冒頭でもお話しましたが、開業している税理士や公認会計士が事務所のホームページを公開する目的は1つ、「集客」です。 したがって、「良いホームページ」とは、「集客に役立つホームページ」ということになります。 もちろん、どのように役立ってほしいのかは、事務所により違いがあることと思います。ここでは、その目的を2つに分けてお話しましょう。 まず〔目的1〕ですが、これは、あなたの能力や人柄を高く評価している人が、税理士や公認会計士を探している人に、あなたを紹介してくれた場合です。 紹介を受けた人は、ほぼ100%、あなたの事務所のホームページを確認します。 その時に、前回までお話してきたダメなホームページだと 「せっかく紹介してもらったけど、これではちょっとな・・・」 なんて思われてしまうかもしれません。しかしここでは、ダメなホームページはすでに直したとして、一歩進んで良いホームページを考えてみましょう。 といっても、それほど難しい話ではありません。 紹介を受けた人の場合、最初から好意的に見てくれていますし、あなたについてある程度の予備知識を伝えられているはずだからです。 そのため、ホームページにおいては、あなた自身又はあなたの事務所が、誠実で、仕事ができて、信頼できることをアピールできれば充分です。 そのためには、内容としては、「名前」「経歴」「住所」「連絡先」などの、あなたやあなたの事務所についての基本的な情報が漏れなく正確に掲載されていて、さらに仕事に対するモットーや得意分野などが掲載されていれば充分です。 また、デザイン的には明るく堅いイメージがふさわしいでしょう。 ここで【第3回】において、自作のホームページやブログ型のホームページについて、「素人っぽいイメージになるので専門性をウリする士業のホームページにふさわしいかどうか意見が分かれるところです」と、ちょっとネガティブにお話しましたが、この〔目的1〕の場合には、ふさわしい場合もあります。 というのは、 「素人っぽくて親しみがもてる先生だよ。」 という紹介かもしれないからです。 そのあたりは、あなたがご自分をどのようなイメージでアピールしていこうと考えているのかによって変わってきます。 * * * 次に〔目的2〕「ホームページを潜在顧客が見て、仕事の問い合わせが来ることを望んでいる。」ですが、これには定番の方法として、以下の2つがあります。 今回は上記①のホームページについてご説明し、②については次回に譲ります。 ①においては、ホームページに、あなたや事務所メンバーの経歴や個性、事務所の日常はどのようなものか、などということまで掲載します。ホームページ内にブログを開設して、事務所のメンバーが交代で日常業務のことなどを書き綴るのも効果的です。 こうすることで、ホームページを読んだ潜在顧客に、まるで事務所メンバーの知り合いであるかのような親近感をもってもらうのです。 これは、何かを依頼するときには、見ず知らずの他人より、まずは知り合いに依頼するという人間の行動傾向に即した方法です。 また、Facebook(フェイスブック)などのSNS(エス・エヌ・エス)へプライベートなブログを投稿しているのであれば、事務所のホームページからそこへリンクを張るのもよいでしょう。親近感をもってもらうには、プライベートな活動について知ってもらうのも効果があるからです。 ただし、親近感をもってもらうにしても、あくまで税務や会計の専門家としての親近感ですから、あまりハメを外した行動を公開したり、顧客情報を公開したりしないよう注意しましょう。 (了)
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《速報解説》 企業結合会計基準に対応する資本連結実務指針等の改正(公開草案)の解説
《速報解説》 企業結合会計基準に対応する 資本連結実務指針等の改正(公開草案)の解説 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成25年11月11日、日本公認会計士協会は、平成25年9月に改正された「企業結合に関する会計基準」(企業会計基準第22号)等に対応するため、「連結財務諸表における税効果会計に関する実務指針」(会計制度委員会報告第6号)などの一連の改正について、公開草案を公表した。 意見募集期間は平成25年12月6日までである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な改正内容 改正を必要とする実務指針は広範囲に及んでおり、次の実務指針について公開草案が公表されている。 特に、「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」については、設例の改正が行われており、十分な検討が必要と思われる。 (了)
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《速報解説》 「IFRS対応方針協議会」及びIFRSの任意適用の積上げについて
《速報解説》 「IFRS対応方針協議会」及び IFRSの任意適用の積上げについて 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成25年11月8日、「「IFRS 対応方針協議会」及びIFRS の任意適用の積上げについて」と題して、IFRS 対応方針協議会から公表が行われた。 主な内容は次のとおりである。 Ⅱ 主な内容 1 IFRS対応方針協議会への改組 「アジェンダ・コンサルテーションに関する協議会」について、名称を「IFRS対応方針協議会」に変更する。 これは、我が国一体となったIFRSへの対応の強化を図り、IFRSに関連する我が国の市場関係者の意見の集約等を目的とするものである。 2 IFRSの任意適用の積上げ IFRSの任意適用の積上げについては、各参加団体において、様々な取組みが行われている。 概要は次のとおりである。 「IFRS対応会議」及び同会議のもとに設置された「国際対応委員会」、「教育・研修委員会」、「翻訳委員会」、「広報委員会」及び「個別財務諸表開示検討委員会」については、「IFRS対応方針協議会」等に引き継ぐとともに、一部委員会については廃止することが予定されている。 (了)
税務
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monthly TAX views -No.10-「政府税制調査会はもう機能しないのか?」
monthly TAX views -No.10- 「政府税制調査会はもう機能しないのか?」 中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信 茂樹 消費税率の引上げが決まったものの、消費税をめぐる課題は山積している。 例えば、軽減税率導入の是非である。 導入することになれば、どのような範囲にするのか、税率は5%か8%か、インボイスの導入は避けられないがその具体的設計はどうするのか、など多くの論点を詰めなければならない。 もう一つ、法人税の問題も議論が始まっている。 復興特別法人税の前倒し廃止を行うべきか、前倒しするなら、それはどのような理由からか、所得税の超過課税部分はどうするのか、さらにはわが国の経済空洞化の原因となっている法人実効税率を引き下げるべきか、その場合課税ベースをどこまで広げるのか、地方税はどうするのか、など実に多くの論点がある。 このように税制をめぐる課題が山積している中で、政府税制調査会が全く機能していない。 去る10月8日に総会が開催されたが、国際課税と番号制度について作業グループを設けて議論しようということになった。 つまり、上述した現下のわが国税制の最大の課題である「消費税」と「法人税」については、議論の対象となっていないのである。 しかし、誰が考えても、上記の問題点は、与党の税制調査会で政治家同士が議論するより、有識者が集まって議論する方が、意義のある結論が得られるのではなかろうか。 このように政府税制調査会が機能しない背景には、どのような理由があるのだろうか。 法人税減税を議論すれば、減税派が多数を占めるだろう。また軽減税率を議論すれば、導入すべきでないという意見が太宗を占めるだろう。 このようなことがあらかじめ分かっているから、議論しないのだろうか。 それは、党税調への配慮・遠慮だろうか。そうではないだろう。 むしろ政権への配慮・遠慮であろう。 つまり、「法人税議論を先導するのは、アベノミクスを掲げる官邸でなければならない」という配慮なのだろう。 しかし、政府税制調査会は、財務省の別働隊ではない。 現に、法人税を議論すれば、減税に消極的な財務省の思惑とはかけ離れてくる。だからこそ議論の価値というものがあるはずで、政府税制調査会長のもとで、自律的にさまざまな課題を議論してもよいのではないだろうか。 * * * 加藤寛会長の時代を思い出す。 筆者は1997年の消費税率引上げ時に大蔵省(現、財務省)税制第二課長、総務課長を経験し、当時の政府税制調査会長であった加藤寛氏と毎週のようにお会いして議論をした経験がある。 加藤氏は常に「税制は国民のものだから、大蔵省の言いなりにはならない」という矜持を持たれており、われわれの作成した想定問答を読み上げることはなく、自律的に活動を展開された。 その結果、消費税率5%への引上げ後の恒久的減税をめぐって、大蔵省とギクシャクしたのだが、学者魂のようなものを垣間見ることができた。 大蔵省の立場に立つ筆者にとっては大変な経験であったが、芯の通った論理には、今思い返しても、納得する面が数多くある。 * * * 税制改正には、論理が必要だ。 最近の税制改正には、ほとんど論理がなく、決定だけになってしまった。 国民を説得する論理、世界に発信する論理、それなくしての税制改正ほど無味乾燥なものはない。 政府税制調査会は死んでしまったのだろうか。 (了)
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〈平成25年分〉おさえておきたい年末調整のポイント 【第3回】「復興特別所得税(その1)」~概要から源泉徴収まで再確認~
〈平成25年分〉 おさえておきたい 年末調整のポイント 【第3回】 「復興特別所得税(その1)」 ~概要から源泉徴収まで再確認~ 公認会計士・税理士 篠藤 敦子 はじめに 今回から2回にわたり、平成25年から適用される「復興特別所得税」について解説を行う。 今回は復興特別所得税の概要と源泉徴収の基本について改めて確認し、次回第4回では年末調整における取扱いについて解説する。 なお、復興特別所得税は、法人が支払いを受ける利子等にも課されるが、ここでは個人に係るもののみを取り上げる。 1 復興特別所得税の概要 平成23年12月2日に「東日本大震災からの復興のための施策を実現するために必要な財源の確保に関する特別措置法(平成23年法律第117号)」が公布され、平成25年1月1日から平成49年12月31日までの各年においては、復興特別所得税が課されることとなった(復興財確法9①)。 これにより、所得税を納める個人には、復興特別所得税を併せて納める義務が生じる。 2 復興特別所得税の計算方法 復興特別所得税の課税の対象は基準所得税額であり(復興財確法9①)、復興特別所得税の額は次の算式で求められる(復興財確法12、13)。 また、復興特別所得税の課税標準となる基準所得税額は、個人の区分に応じ次の表の通りとなる(復興財確法10一~三)。 3 源泉徴収の方法 ① 源泉徴収の基本 源泉徴収義務者は、給与や賞与、各種の報酬等を支払うとき、所得税と復興特別所得税を併せて徴収し、徴収した所得税の法定納期限までに国に納付しなければならない(復興財確法28①)。 このとき、所得税と併せて徴収する復興特別所得税の額は、徴収すべき所得税の額に2.1/100の税率を乗じて計算した金額となる(復興財確法28②)。 なお、源泉徴収した税額は、所得税と復興特別所得税を区別することなく、1枚の所得税徴収高計算書(納付書)に合計額を記入して納付する。 ② 給与、賞与からの源泉徴収 給与や賞与については、平成25年分の源泉徴収税額表等を使って源泉徴収を行う。平成25年分の税額表に掲げられている税額には復興特別所得税相当額が含まれており、平成24年分までの税額表よりも徴収する金額が増えている。 平成25年1月1日以後に給与や賞与の支払いをするときは、それぞれ下記の別表を用いて所得税と復興特別所得税を併せて源泉徴収する(財務省告示第115号)。 ③ 利子や報酬等からの源泉徴収 利子や報酬等については、源泉徴収の対象となる支払金額等に、所得税と復興特別所得税の合計税率を乗じた金額を源泉徴収する(復興財確法28②)。 なお、源泉徴収に係る端数計算は、所得税と復興特別所得税の合計額によって行う。 上記の算式により計算された所得税及び復興特別所得税の額(合計額)に1円未満の端数があるときは、その端数金額を切り捨て、合計額の全額が1円未満であるときは、その全額を切り捨てる(復興財確法31②)。 4 年末調整・確定申告における取扱い 所得税法第190条(年末調整)に規定する給与等の支払者は、復興特別所得税の創設に伴い、平成25年から平成49年までの各年分においては、所得税と復興特別所得税の年末調整を併せて行うことされている(復興財確法30①)。 また、平成25年分から平成49年分までの確定申告についても、所得税の確定申告書を提出すべき者は、復興特別所得税に係る確定申告書を所得税に係る確定申告書の提出期限までに併せて提出することとされている(復興財確法17①)。 復興特別所得税に係る確定申告書の様式は、本稿執筆時点では公表されていないが、国税庁のホームページに、平成25年1月1日以後に出国又は死亡した人の準確定申告をする場合の申告書様式が公開されている。 これによると、所得税の準確定申告と復興特別所得税の準確定申告は、「平成25年分の所得税及び復興特別所得税の準確定申告書」として1つの様式でまとめて行うこととされている。 ◆ ◆ ◆ 次回は、所得税と復興特別所得税を併せて行う年末調整について、設例を交えて解説を行う。 (了)
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居住用財産の譲渡所得3,000万円特別控除[一問一答] 【第5問】「共有の家屋と共にその単独所有の土地を譲渡した場合」-居住用財産の範囲-
居住用財産の譲渡所得 3,000万円特別控除 [一問一答] 【第5問】 「共有の家屋と共にその単独所有の土地を譲渡した場合」 -居住用財産の範囲- 税理士 大久保 昭佳 Q Xが所有する土地の上に、XとYが共有(各人の持分1/2)の家屋があり、その家屋にはXとその家族が居住し、Yはその家屋以外の家屋に居住しています。 このほど、XとYはその家屋と土地を譲渡しました。 この場合、X及びYの「3,000万円特別控除(措法35)」に係る適用関係はどのようになるのでしょうか? A Xの所有する家屋(持分1/2)及び土地の全部について「3,000万円特別控除」の特例の適用を受けることができる。 〈解説〉 Xの所有する土地は、Xがその全部を居住の用に供している家屋の敷地である。 したがって、その土地の全部がXの居住用家屋の敷地であると考えることができる。 なお、Yについては、Yが居住の用に供している家屋の譲渡ではないため、「特例」の適用を受けることができない。 (了)
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税務判例を読むための税法の学び方【22】 〔第5章〕法令用語(その8)
税務判例を読むための税法の学び方【22】 〔第5章〕法令用語 (その8) 自由が丘産能短期大学専任講師 税理士 長島 弘 7 法の「適用」に関する法令用語 ここでは、法の適用に関する法令用語について解説する。 ① 適用する・施行する まずは「適用する」について見ていく。 これは、法令の規定を目的とする対象そのものに当てはめる場合に使われる用語である。 したがって、詳細は後述するが、目的とする対象とは異なるが本質的には類似する他の事項について法令の規定を当てはめる場合には「準用する」を用いる。 なお、「適用する」という文言について厳密な意味が問われるのは、この「準用する」との差異のように、法を当てはめる対象の差異による場合だけではない。法の発動の点で「施行する」との差異が問われる場合がある。 まず、「施行する」との差異について見ていく。 「施行」と「適用」との違いは、「施行」が法令の規定の効力を一般的に発動させることを意味するものであるのに対し、「適用」は、一般的に発動されることとなっている法令の規定を個別の具体的対象に対して働かせる点にある。 例えば、平成25年4月1日より施行されている現行所得税法において、附則の第1条には、以下のようにある。 一方、この附則の第5条には、以下のようにある。 前者においては、附則第1条第1号イ号以下に規定されている規定そのものの施行が平成25年6月1日であることを示している。 イの「第1条中所得税法第17条の改正規定」とは、所得税法を現行の規定に改正するために制定された、平成25年3月29日に成立し、同年3月30日に公布され4月1日より施行された「所得税法等の一部を改正する法律」の第1条「所得税法の一部を次のように改正する。(以下略)」にある所得税法第17条に関する改正規定全体の施行日が平成25年6月1日であることを示している。 それに対し、後者は、改正後の所得税法89条1項の規定のみを平成27年分以後の所得税から適用することを定めている。 具体的には、所得税法89条1項では所得税の税率を定めているが、新法では課税所得4,000万円超について45%の税率が設けられた。しかしこの部分の適用は、この附則により平成27年分以後の所得税について適用されることとなった。 総務省「法令データベース」では、現行の適用条文が公開されているため、現行の公開されている所得税法89条1項の税率表は昨年24年度以前のものと同様のものとなっているが、法令としては、実は4,000万円超の所得に対する税率が規定されているところ、適用が27年分以降の所得からとなっているのである。 このように、部分的に特定の内容に関してのみ法の発動をずらす場合には「適用する」が用いられる。 なおこの点、「施行」が、法令の規定の効力を一般的に発動させることを意味するのに対し、「適用」は、その一般的に発動されることとなっている法令の規定を具体的な対象に対して働かせることを意味する。したがって「施行する」というのは、法令の効力が一般的に働き出し、作用し得るようになることであるから、「適用する」の具体的当てはめの前提になる概念であることは留意すべき点である。 法令は制定・公布された後、施行されて初めて現実に効力を有するようになる。このため通常は施行期日を定めておけば、その期日以後に生じた事柄についてその法令は適用されるため、改めて適用対象を定める必要はない。しかし、法令の内容によっては、施行期日だけでは、新法と旧法のいずれを発働させるのか不明確な場合もある。 このような場合に、施行期日のほかに、具体的な発動を法令上明示する必要がある。この目的のために置かれるのが新旧法令の適用や施行に関する規定であり、附則に置かれることが多い。 この場合、上記の例のように、法の発動が施行日よりも後になる場合に、「施行する」と規定されるか「適用する」と規定されるかは、発動される法の範囲によることになる。 そしてこの法の発動により規律されるべき対象となる事象は、通例、施行の日より後のもの、将来のことである。しかし、場合によっては、ある法令を、その施行時から遡及して過去の事象に当てはめる必要の生ずることがある。 このような場合には「施行する」ではなく「適用する」を用い、これを「遡及適用」という。 この遡及適用は、納税者に利益となる「控除額の引上げ」や「税率の緩和」の場合には問題がないが、納税者の不利益となる場合に遡及適用することが妥当かどうかといった点が問題になる。刑法においては事後法による遡及的処罰が禁止されており、刑法同様、侵害法規である租税法に納税者の不利益となる遡及適用が妥当かどうか問題とされる。 この意味で大きな議論になったのは、平成16年改正である。 平成16年3月31日に公布され同年4月1日に施行された租税特別措置法の附則の第27条には、以下のように規定されている。 この改正までは、土地建物の譲渡所得の金額の計算上生じた損失の金額を他の各種所得の金額から控除することが認められていた。しかし、この改正により年初まで遡って適用されることになったため、1月~3月に譲渡した者に対する不利益遡及立法であるとして訴訟に及んだのであった。 下級審においては、納税者の主張を認め違法立法とする判決もあったが、最終的には最高裁において、改正法律案が国会で審議される過程で新聞紙上で報道され国民に周知されているとして、また所得税が期間税である点等から合法とされた。 (次回に続く)
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〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載43〕 共同再編・複数再編における適格判定
〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載43〕 共同再編・複数再編における適格判定 公認会計士・税理士 有田 賢臣 Q 当社(P社)は、分社型分割により完全子会社(S社)を新設し、同日に、A社とB社を合併により吸収する予定です。 この連続して行う組織再編成の適格判定に関して、注意すべき点をご教授下さい。 A 3社以上の会社で組織再編成を行う(以下、「共同再編」という)場合や複数の組織再編成を連続して行う(以下、「複数再編」という)場合には、組織再編成の個数と順序について正しく理解した上で適格要件を判定する必要がある。 また、国税庁より「三社合併が行われた場合において、当該三社合併に係る個々の合併に順序が付されているときには、その順序に従って個々の合併に対する適格判定を行う」旨の文書回答事例が公表されているが、適格再編成とすること又は非適格再編成とすることのみを目的として不自然な組織再編成の順序を定めている場合には、行為計算否認規定が適用される可能性がある。 解 説 1 組織再編成の個数と順序 共同で会社を設立する行為である共同新設分割(会762②)と共同株式移転(会772②)については、1個の組織再編成として扱われる。会社1社を設立するのに、複数の設立行為を想定することはできないため、「共同」で1個の組織再編成が行われるものと整理されている。 一方、P社がA社とB社を吸収する合併は、PA間の吸収合併とPB間の吸収合併の2個の組織再編成が行われたものと考える。X社とY社がZ社に共同で吸収分割する場合も同様に、XZ間の吸収分割とYZ間の吸収分割の2個の組織再編成が行われたものと考える。 吸収合併は、消滅会社が存続会社に消滅会社の権利義務の全部を承継させる行為であり(会2二十七)、吸収分割は、分割会社が分割承継会社に分割会社の権利義務の全部又は一部を承継させる行為であることから(会2二十九)、消滅会社・分割会社の数だけ組織再編成が行われるものと整理されている。 ◆ ◆ ◆ 1個の組織再編成の場合には順序は問題とならないが、2個以上の組織再編成の効力が同日に生じる場合には順序が問題となる。 P社がA社とB社を吸収する合併(会社法の定義に沿えば、「A社をP社に吸収させる合併」と「B社をP社に吸収させる合併」)において、組織再編契約で順序を付していない場合には、PA間の吸収合併とPB間の吸収合併の効力が同時に生じることになる。 一方、組織再編契約にて、「PA間の吸収合併(第1合併)の効力発生を停止条件として、第1合併の効力発生直後にPB間の吸収合併の効力が生じる」と順序を付すことも可能である。 では、ご質問のケースにおいて、組織再編契約で順序を付していない場合には、どのような順序で効力が生じるのだろうか。 4月1日の効力発生を意図した場合、PA間の吸収合併とPB間の吸収合併は4月1日の午前0時0分に同時に効力が生じるのに対し、S社を新設する分社型分割は4月1日の登記申請が受理された時刻(例えば、午前10時)に効力が生じる。つまり、三社合併が先で、新設分割が後という順序になる。 三社合併の前に新設分割の効力を生じさせたい場合には、合併契約書において「新設分割の効力発生を停止条件として、新設分割の効力発生直後に三社合併の効力が生じる」という趣旨の記載が必要となる。 2 共同再編・複数再編における適格判定 国税庁のホームページにて、平成21年1月27日付けで「三社合併における適格判定について(照会)」という文書回答事例が公表されており、共同再編・複数再編における適格判定を行うに当たって、次の2つの指針が示されている。 P社がA社とB社を吸収する三社合併が行われた場合、順序を付さなければ、PA間の吸収合併とPB間の吸収合併のそれぞれについて適格判定を行うのに対し、「PA間の吸収合併(第1合併)の効力発生を停止条件として、第1合併の効力発生直後にPB間の吸収合併の効力が生じる」と順序を付した場合には、PA間の吸収合併について適格判定を行い、次に、A社を合併した後のP社とB社との間の吸収合併について適格判定を行うことになる。 順序を付すか否かにかかわらず、三社合併では2個の組織再編成が行われることになるから、2つの適格判定が行われ、1つの吸収合併が適格合併で、他の吸収合併が非適格合併なら、そのように適格合併と非適格合併として個々の合併を処理することになる。 ◆ ◆ ◆ 一方、3社(A社・B社・C社が共同でP社を設立)で行う共同新設分割・共同株式移転の場合には、1個の組織再編成が行われることになるから、適格判定も1つになる。 具体的には、共同事業要件適格では、A社とB社、A社とC社、B社とC社のそれぞれで適格判定をし、1組でも適格要件を満たさなければ、全体を非適格再編成と判断することになる(法法2十二の十一 ハ)。また、完全支配関係・支配関係にある法人間の適格判定では、4社(A社・B社・C社・P社)間の関係が、当事者間適格又は同一者間適格のいずれかに該当するかを判断することになる(法法2十二の十一 イロ)。 なお、適格再編成とすること又は非適格再編成とすることのみを目的として不自然な組織再編成の順序を定めている場合には、行為計算否認規定が適用される可能性があるので注意が必要である。 例えば、P社がA社とB社を吸収する三社合併において、B社はA社の100%子会社であり、P社とABグループとの間には資本関係がなく、共同事業要件を満たすことによる適格合併を意図しているケースを想定する。 この場合、AB間の吸収合併を第1合併とし、PA間の吸収合併(P社とB社を合併した後のA社との間の吸収合併)を第2合併とするか、又は、PA間の吸収合併を第1合併としPB間の吸収合併(A社を合併した後のP社とB社との間の吸収合併)を第2合併とするのが一般的と思われる。Bを被合併法人とする合併が、完全支配関係下の合併となるため適格要件も満たしやすく、かつ、無対価合併になるため合併比率の算定も不要となるからである。 それでもあえて、PB間の吸収合併を第1合併としPA間の吸収合併(B社を合併した後のP社とA社との間の吸収合併)を第2合併とした場合、第1合併・第2合併共に合併比率の算定が必要となり、第1合併によりA社に交付されたP社株式が第2合併でP社の自己株式になってしまう。さらに、第1合併・第2合併共に共同事業要件を満たさない限り適格合併にならない。 この順序で三社合併を行う理由が、PA間の吸収合併において共同事業要件を満たすためには、PB間の吸収合併を第1合併とせざるを得なかったからということのみであれば、行為計算否認規定が適用される可能性があると思われる。 (了)
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財務会計
「企業結合に関する会計基準」等の改正点と実務対応 【第1回】「主な改正事項の確認」
「企業結合に関する会計基準」等の 改正点と実務対応 【第1回】 「主な改正事項の確認」 有限責任監査法人トーマツ 公認会計士 布施 伸章 (注)本連載記事において、文中、意見に関する部分は筆者の私見である。 1 はじめに 企業会計基準委員会(ASBJ)は、平成25年9月13日に「企業結合に関する会計基準」等、組織再編に関する一連の会計基準を改正した。 これらの改正会計基準等は、平成27年4月1日以後開始する年度から適用される(早期適用については後述参照)。 主な改正項目は、次のとおりである。 本連載では、これらの主な改正事項を数回に分けて連載する。第1回は、主な改正事項を概観し、設例等による具体的な会計処理は、次回以降に記載する。 なお、日本公認会計士協会(JICPA)では、「連結財務諸表に関する会計基準」等の改正に伴い「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」等の改正を予定している。 2 取得の会計処理に関する事項 (1) 取得関連費用の取扱い(企業結合会計基準第26項及び第49項) 企業結合における取得関連費用のうち一部について、改正前の会計基準では、取得原価に含めることとされていたが、改正会計基準等では、発生した事業年度の費用として処理することとされた。また、主要な取得関連費用を注記により開示することとされた。 なお、個別財務諸表における子会社株式の取得原価は、従来と同様に、企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」及び日本公認会計士協会会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」に従って算定される。 これらの会計処理は、共通支配下の取引の会計処理にも同様に適用される。 (2) 暫定的な会計処理の確定の取扱い(企業結合会計基準(注6)、結合分離適用指針第70項、第73項、EPS会計基準第30-6項及びEPS適用指針第36-3項) 暫定的な会計処理の確定が企業結合年度の翌年度に行われた場合、改正前の会計基準では、企業結合年度に当該確定が行われたとしたときの損益影響額を、企業結合年度の翌年度において特別損益に計上することとされていたが、改正会計基準等では、企業結合年度の翌年度の財務諸表と併せて企業結合年度の財務諸表を表示するときには、当該企業結合年度の財務諸表に暫定的な会計処理の確定による取得原価の配分額の見直しを反映させることとされた。 その場合、当該企業結合年度の翌年度の財務諸表と併せて表示する企業結合年度の財務諸表の1株当たり当期純利益、潜在株式調整後1株当たり当期純利益及び1株当たり純資産は、当該見直しが反映された後の金額により算定することとされた。 3 共通支配下の取引等の会計処理に関する事項 (1) 支配が継続している場合の子会社に対する親会社の持分変動(連結会計基準第26項、第28項から第30項、事業分離会計基準第17項から第19項) 改正前の会計基準では、子会社株式を追加取得した場合や一部売却した場合のほか、子会社の時価発行増資等の場合には損益を計上する取引とされていたが、改正会計基準等では、親会社の持分変動による差額は、資本剰余金に計上することとされた。 (2) 非支配株主持分 改正前の会計基準における「少数株主持分」を、改正会計基準等では「非支配株主持分」に変更することとされた。 4 表示その他に関する事項 (1) 当期純利益の表示(連結会計基準第39項) 改正前の会計基準における「少数株主損益調整前当期純利益」は、改正会計基準等では「当期純利益」とされた。 これに伴い、改正前の会計基準における「当期純利益」は、改正会計基準等では「親会社株主に帰属する当期純利益」とされた。 また、改正会計基準等では、2計算書方式の場合には、「当期純利益」に「非支配株主に帰属する当期純利益」を加減して「親会社株主に帰属する当期純利益」を表示することとし、1計算書方式の場合には、「当期純利益」の直後に、「親会社株主に帰属する当期純利益」及び「非支配株主に帰属する当期純利益」を付記することとされた。 2計算書方式を採用した場合の連結損益計算書の改正後のイメージは、以下のとおりである。 (2) 連結株主資本等変動計算書の様式の変更 連結株主資本等変動計算書の表示区分における「少数株主持分」を「非支配株主持分」へ、利益剰余金の変動事由における「当期純利益」を「親会社株主に帰属する当期純利益」へ改められた(株主資本会計基準第7項及び株主資本適用指針第6項)。 また、暫定的な会計処理の確定の処理が改正されたことに伴い、暫定的な会計処理の確定年度の株主資本等変動計算書のみの表示が行われる場合の取扱いについて所要の改正が行われた(株主資本会計基準第5-3項)。 (3) 1株当たり当期純利益の算定方法 EPS会計基準の適用に当たっては、連結財務諸表において、連結損益計算書上の「当期純利益」は「親会社株主に帰属する当期純利益」、連結損益計算書上の「当期純損失」は「親会社株主に帰属する当期純損失」とするものとされた(EPS会計基準第12項)。 5 適用時期 適用時期については、以下のとおりである(企業結合会計基準第58-2項、連結会計基準第44-5項及び事業分離会計基準第57-4項)。 ※早期適用する場合には、③の取扱いを除き、すべてを同時に適用する必要がある。 (了)