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労務・法務・経営 法務

親族図で学ぶ相続講義 【第8回】「公正証書遺言を薦めるワケ」

親族図で学ぶ相続講義 【第8回】 「公正証書遺言を薦めるワケ」   司法書士 Wセミナー専任講師 山本 浩司   [被相続人甲野太郎 相続関係説明図]   前回お話した自筆証書遺言は、自宅にて一人で書けるのでたしかに気軽です。 しかし、ど素人が一人で書くので、次のような事態が生じる懸念が拭えません。 というわけで、自筆証書遺言には、以上の欠点があることを承知の上で実行すべきであって、それでも大丈夫という確信を持てないときは、そして、本気で遺言内容を実現したいのなら、遺言者は公正証書遺言を作成すべきなのです。 公正証書遺言は、その作成に少々、手間がかかります。 まず、証人2人の確保が必要です。 近親者には、たいてい証人の資格がないので第三者を呼んでくる必要があります(「証人の欠格事由」民法974条参照)。 次に、たいていは、公証人役場に遺言者と証人で出向きます(なお、例えば、病気の場合に病院で作成することも可)。 それから、もちろん有料です。 しかし、先に挙げたような自筆証書遺言の欠点は、以下のように見事にクリアできます。 (了)
#30(掲載号)
#山本 浩司
2013/08/01
労務・法務・経営 経営

改正金融検査マニュアルのポイントと中小企業へ与える影響 【第5回】「本当の経営改善計画(事業計画)はどうあるべきか」

改正金融検査マニュアルのポイントと 中小企業へ与える影響 【第5回】 「本当の経営改善計画(事業計画)は どうあるべきか」   OAG税理士法人 税理士 山下 好一   1 何のために経営改善計画(事業計画)を作成するのか 「金融検査マニュアル別冊(中小企業融資編)」における債務者区分の判定で、経営改善計画(事業計画)によるものがある。 金融機関に提出する場合を別にすると、中小企業等の多くは、経営改善計画の必要性や重要性を認識していない傾向にある。 加えて、記帳についても同様である。 記帳については、税務申告の必要性から行っている場合が多く、極端な例を挙げれば、借入れのために申告しているような企業もある。 また、自計化できない企業も多く存在し、これができなければ、経営改善計画を策定しても、リアルタイムで進捗状況の管理ができない。 そもそも経営改善計画(事業計画)は、業績の如何によらず作成すべきものである。 計画を作成することで、目的をもった経営ができることに加え、経営成績を客観的に見ることができ、悪ければ即座に対応策を講じるができる。 経営者自身が思い描く3年後5年後の自社の業績を数字として可視化(見える化)することが重要である。   2 「バラ色計画」はいらない 筆者が金融庁の検査官として見てきた経営改善計画は、そのほとんどが、売上が右肩上がりのまさに「バラ色計画」であった。それでも達成状況が概ね8割を保っていれば良いが、現実には計画とはかけ離れた惨憺たるものであった。 中小企業等は、大企業と違い経費削減による経営改善計画では削減金額に限度があり、たとえ計画通りに削減できたとしても改善される収益は僅かな金額となってしまう。 したがって、中小企業等では、収益を高めるために、売上の増加(経費削減含む)による収益改善の計画を策定することとなる。 筆者が見てきた計画は、外部の専門家等のみが作成したもので、何ら根拠もなく売上が増加する計画や、根拠があった場合でもその方法が実現不可能な計画など、単に債務者区分のランクアップのために策定しているものであった。 これが「バラ色計画」になってしまう理由である。 当時は、金融機関主導のもと、外部の専門家に策定を依頼するのが一般的であったため、このようなものとなっていた。 だが、経営改善計画は、必ずしも精緻なものでなくても良いので、中小企業等が自ら策定すべきである。 これを金融機関や外部の専門家に依頼する場合であっても、必ず策定に参画し、自社の技術力や販売能力などを加味した実現可能なものとしなければならない。 そうすることによって、経営者の積極的な取組み姿勢を金融機関に対して明らかにすることができる。 なお、経営改善計画は、経営が改善するまでの期間が5年(進捗状況が良好であれば10年)以内であること、かつ、実現可能な計画であることが要件となる。 数ページに及ぶ見た目が立派な計画書であろうが、A4のペーパー1枚の計画書であろうが、どのような計画書であれ、その計画が実現可能か否かに尽きる。   3 PDCAで計画を実行する 売上を増加させるためには、売値を上げるか数量を増やす、又はこの両方である。数式で示せば「売上=売値×数量」と簡単である。 ただし、売上の増加は、数式では簡単であるが、現実には容易ではない。 売値を下げて数量を増やし、売上を増加させる計画は避けたい。かといって、売値を上げるのは難しい。 したがって、数量を増やすことが最善の計画ということになる。 しかしながら、経営難に陥る企業の経営者は、「なぜ売れないのだろう。」と考えてしまい、その結果、売値を下げてしまう。その分を数量で補えればよいが、多くの場合さらに業績が悪化し悪循環となる。 筆者は、国税職員時代に、税金を正しく納めるのが馬鹿らしいと考えていた企業を多く見てきた。その中の、いわゆる悪徳商法(悪徳業者)と呼ばれる企業を例にとると、彼らは、「いかにして売りつけるか」ということしか考えていなかった。 粗末なものを「誰に」「より高く」「より多く」売りつける。それが問題化すれば、商品や場合によっては社名を変えて売りつける。 これは決して、悪徳商法を推奨しているわけではない。 「売れない理由を考える」時間を「売る方法を考える」時間に充て、その方法を織り込んだ経営改善計画を策定し、実践し、見直し(モニタリング)、そして改善を繰り返す、つまり「PDCAサイクル」が必要なのである。 検査官は、経営改善計画がある場合、必ず進捗状況を確認する。その達成状況が悪ければ、実現不可能な計画として債務者区分の判定を行う。 これを避けるためにも、経営改善計画を策定した場合には、進捗状況の管理(モニタリング)を行う必要がある。このモニタリングにより、進捗状況の如何によっては目標地点等の見直しを行うなど、再改善等の措置を講じなければならない。   4 実現可能な計画策定へ向けて 経営改善計画による債務者区分の判定は、すべての要件が盛り込まれるため、最も効果的である。 繰返しになるが、経営改善計画は、経営が改善するまでの期間が5年(進捗状況が良好であれば10年)以内であること、かつ、実現可能な計画であることが要件となる。 したがって、経営者は、計画が「バラ色計画」の絵に描いた餅とならないよう、また、制度そのものが延命措置とならないよう、企業再建に向けて、熱意をもって取り組んでいただきたい。 なお、経営改善計画の策定において、中小企業等が自ら策定できない場合、策定料金の2/3(上限200万円)を補助する政策がある。 金融機関や多くの外部専門家が「認定支援機関」として登録されているので、メイン金融機関や顧問税理士等に相談のうえ、積極的に活用することが望ましい。 (了)
#30(掲載号)
#山下 好一
2013/08/01
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顧問先の経理財務部門の“偏差値”が分かるスコアリングモデル 【第9回】「スコアリングデータから優秀な会社の傾向を読み取る」 ~業務の有効性・効率性スコア~

顧問先の経理財務部門の “偏差値”が分かる スコアリングモデル 【第9回】 「スコアリングデータから 優秀な会社の傾向を読み取る」 ~業務の有効性・効率性スコア~   株式会社スタンダード機構 代表取締役 島 紀彦   はじめに 前回は、優秀な会社の傾向を読み取るにあたり、スコアリングモデルにおける「財務諸表の信頼性スコア」を取り上げた。 今回取り上げるのは、「業務の有効性・効率性スコア」である。なお、今回が本連載における総論部分の最終回となる。 業務の有効性・効率性スコアは、5つの視点のうち、「効率性」、「戦略性」から適切なKPIを抽出して算出されるもので、経理財務部門の業務が効率的に行われており、さらに企業価値の向上に貢献しているレベルを表すスコアである。 では、実際の会社を評価した業務の有効性・効率性スコアから、どのような傾向を読み取ることができるだろうか。   業務の有効性・効率性スコアの全体分布 今回も、平成18年に行った134社によるスコアリングデータを紹介する。母集団は134社である(図表11)。 図表11 スコアリングモデルに参加した会社 (再掲) ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 まず、134社の業務の有効性・効率性スコアの分布を見ていただきたい(図表20)。 図表20 業務の有効性・効率性スコアの分布 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 総合スコアや財務諸表の信頼性スコアの場合と同様、業務の有効性・効率性スコアの分布を見ても、全体として平均値周辺に集中し、正規分布に近い形状が形成されており、134社のサンプルであっても、母集団の傾向を十分説明できるだけのモデルであることを示している。 次に、財務諸表の信頼性スコアの分布(図表16)と業務の有効性・効率性スコアの分布(図表20)を比較してみる。 図表16 財務諸表の信頼性スコアの分布 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 いずれも一定程度のバラツキが見られるが、業務の有効性・効率性スコアの分布の方が、平均値から著しく低い会社の数が相対的に多くなっている。 これは、財務諸表の信頼性は、会計監査などの過程で最低のレベルが担保される保証が整備されているが、業務の有効性・効率性は、会社独自の創意工夫によるところが多いためバラツキが生じやすいという経験則を反映していると考えられる。   業種別、株式公開別に見た業務の有効性・効率性スコアの傾向 次に、業務の有効性・効率性スコアの傾向を、製造業と非製造業の業種別、株式公開別に分析した結果を見てみよう(図表21)。 図表21 業務の有効性・効率性スコアの業種別、株式公開別傾向 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 まず、業務の有効性・効率性スコアについて製造業と非製造業を比較すると、製造業の平均値が高いものの、スコアのバラツキや分布から判断すると、いずれが優れているとは判断できない。 次に、上場企業と非上場企業を比較すると、上場企業の平均値が高いだけでなく、標準偏差、最大最小差、尖度から判断できるスコアのバラツキが小さく、上場企業の業務の有効性・効率性レベルが、非上場企業に比べて高い水準に収斂している。つまり、スコアリングデータでは、上場企業の方が、非上場企業よりも、業務の有効性・効率性スコアが高いという結果が出ている。 これを経験則に照らしてみると、上場企業は、業務改善の継続の成果で相応の規模の経済を達成することにより、非上場企業に比べて業務の有効化と効率化が進んでいることが多い。スコアリングモデルによる業務の有効性・効率性スコアの分布は、そのような経験則を裏付けている。   他の指標との関係分析 スコアリングモデルで算出した業務の有効性・効率性スコアが持つ意味をさらに理解してもらうため、経営者や読者のような外部のステークホルダーになじみのある他指標とスコアの関係を分析した結果を紹介する。 今回は、業務の有効性・効率性スコアとの関係を検討する他指標として、「営業利益平均成長率(過去3期)」、「経理部門に占める派遣の割合」を使ってみる。 今回も、総合スコア(前々回)や財務諸表の信頼性スコア(前回)と同様、平均の差の検定で関係分析を行う。   業務の有効性・効率性スコアと他指標の関係 業務の有効性・効率性スコアの上位25社、全134社、下位25社の3グループについて、2つの他指標の平均値を算出し、業務の有効性・効率性スコアと平均値の関係を分析した結果を以下にまとめた。 前回と同様に、「正」とは、業務の有効性・効率性スコアが高いグループほど他指標の数値が大きくなり、業務の有効性・効率性スコアが低いグループほど他指標の数値が小さくなる関係が、グラフにおいて見られることを意味する。 また「負」とは、業務の有効性・効率性スコアが高いグループほど他指標の数値が小さくなり、業務の有効性・効率性スコアが低いグループほど他指標の数値が大きくなる関係が、グラフにおいて見られることを意味する。 結論から言えば、業務の有効性・効率性スコアが高い会社ほど、営業利益平均成長率が高く、経理部門に占める派遣の割合が低いという結果となった。 以下、その結果が示唆する意味を読み解いてみよう。 (1) 営業利益平均成長率 業務の有効性・効率性スコアと営業利益平均成長率に、一定の関係が見られるだろうか(図表22)。 図表22 業務の有効性・効率性スコアと他の基本的指標との関係 (営業利益平均成長率) ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 筆者の経験則では、継続的に利益成長を達成する会社は、全社的観点では企業価値の最大化に向けた戦略を策定し浸透させ、業務プロセスの観点では価値連鎖に関連する業務プロセスの最適化を図っており、経理財務部門も全社的視点で経営管理に役立つ情報提供や業務改善の提言を通じて、経営戦略に貢献していることが多い。 つまり、経理財務の業務の有効性と効率性のあり方が、会社の利益成長に影響を与える。 そこで、グラフを見てみると、業務の有効性・効率性スコア上位25社の営業利益成長率が最も高く、業務の有効性・効率性スコア下位25社の営業利益成長率が最も低いという正の関係が見られる。まさに、経理財務の業務の有効性・効率性が高い会社の収益の成長率が高まるという仮説が、客観的なデータとして証明されているといえる。 (2) 経理部門に占める派遣の割合 次に、業務の有効性・効率性スコアと経理部門に占める派遣の割合に、一定の関係が見られるだろうか(図表23)。 図表23 業務の有効性・効率性スコアと他の基本的指標との関係 (経理部門に占める派遣の割合) ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 これも筆者の経験則では、経理財務に係る人件費の削減だけを求めて派遣社員を使う会社では、派遣社員のスキルと業務知識が不十分なままであったり、職務範囲が限定されるために視野が狭くなっていたりするため、経理財務の業務の有効性と効率性が低下していることが多い。 そこで、グラフを見てみると、業務の有効性・効率性スコア上位25社の派遣の割合が最も低く、業務の有効性・効率性スコア下位25社の派遣の割合が最も高いという負の関係が見られる。 負のグラフは、経理財務業務において派遣社員の比率を高めることには、業務の有効性と効率性の観点から限界があり、全体的な視点で職責を全うする正社員の確保が必要であるという仮説を支える証左となっている。   (了)
#30(掲載号)
#島 紀彦
2013/08/01
読み物 連載

税理士・公認会計士事務所[ホームページ]再点検のポイント 【第2回】「ホームページの維持費が高すぎる?」

税理士・公認会計士事務所 [ホームページ]再点検のポイント 【第2回】 「ホームページの維持費が高すぎる?」   データライズ株式会社 代表取締役社長 公認会計士・税理士 河村 慎弥   ホームページを制作する時には制作費がかかりますが、完成して公開した後も毎月費用が発生します。 この毎月の費用について、この連載では「維持費」と「更新料」に大別してご説明します。 「維持費」は何もしなくてもかかる費用、「更新料」はホームページの記載内容を書き換えたり追加したりした時にかかる費用だと考えてください。 更新料の説明は次回に譲り、今回は維持費について考えていきます。 *  *  * ホームページの公開後何もしなくても、毎月ホームページ管理業者に料金を支払っていることと思います。その金額は、管理業者により、月額数千円から数万円まで開きがあります。 この維持費については、内訳を知ることにより、その相場も自ずと分かってきます。 維持費の最低限の内訳は、通常は以下の3つです。 「サーバー」、「ドメイン」、聞き慣れない言葉が登場しましたね。 ここでは、ホームページを「壁新聞」に例えて説明しましょう。 壁新聞を掲示板に貼って公開するとして、その掲示板を立てるための区画が第1番~第100番まで、100区画用意されているとします。 仮に、これらの中の「第38番区画」に掲示板を立てて壁新聞を貼った場合、その壁新聞を読みたい人は、第38番区画を訪ねて行って、掲示板に貼ってある壁新聞を読むことになります。 この例の中の「掲示板」が①の「サーバー」であり、この「第38番区画」が②の「ドメイン」にあたります。そして、③の「管理」とは、壁新聞が剥がれたりして読めなくなったら、読めるように修復することをいいます。 サーバー(掲示板)は、通常はサーバー管理会社からレンタルして使います。 ホームページに必要充分な性能のサーバーのレンタル料は月額数百円~数千円程度です。また、ドメイン(第38番区画)の利用料は、年額1,000円弱~数千円程度です。 税理士や公認会計士の事務所のホームページで必要な機能等を考えると、サーバーもドメインも安いモノで充分なため、両者合わせて最安で月額500円程度です。 これに③「管理」のための人件費と若干の利益が上乗せされるため、ホームページ管理業者の料金としては、最低価格ラインの維持費で月額1,000円程度になるかと思われます。 ただし、ホームページの制作費を極端に安くする代わりに維持費を高めに設定している場合もありますし、上記①~③以外のさまざまなサービスが付加されて、維持費が高くなっている場合もあります。 例えば、ホームページと同じドメインのメールアドレスが利用できるようになっていたり、ホームページに通信販売のページが付いていたり等、多種多様なサービスがあるのです。 ご自身の事務所のホームページの維持費が高いと感じるのであれば、維持費に含まれているサービス内容を確認の上、必要のないものを外して維持費を下げられないか、ホームページ管理業者と交渉してみましょう。 ただし、ホームページの制作費が極端に安い代わりに維持費が高い場合には、「維持費」という名目で「制作費」を回収していますので、一定期間(例えば1年)は解約や契約変更ができないことになっているはずです。 どうしてもホームページ管理業者と折り合わない場合には、ホームページ管理業者を変更することもできるのですが、これはやや複雑なことになるため、第4回以降でご説明します。 次回はホームページの運営に係るもう1つの費用、「更新料」についてお話します。 (了)
#30(掲載号)
#河村 慎弥
2013/08/01
お知らせ 相続税・贈与税 税務 税務・会計 税務情報の速報解説 速報解説一覧

《速報解説》 相続税関連通達の一部改正(7/10公表)について

《速報解説》 相続税関連通達の一部改正(7/10公表)について   ミレニア綜合会計事務所 代表税理士 甲田 義典   国税庁は、平成25年度税制改正の施行に伴い、平成25年7月10日に『「租税特別措置法(相続税法の特例関係)の取扱いについて」等の一部改正について(法令解釈通達)』(以下「本通達」という)を公表し、「租税特別措置法(相続税法の特例関係)の取扱いについて」(法令解釈通達)及び「相続税法基本通達」(法令解釈通達)の一部改正について明らかにした。 また、7月24日には本通達に関し、「「租税特別措置法(相続税法の特例関係)の取扱いについて」等の一部改正について(法令解釈通達)のあらまし(情報)」を公表した。 本通達の主な改正点は、以下の2点である。   (1) 「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税(措法70の2の2)」関係の通達の整備(措通70の2の2-1~12) 今回の改正では、教育資金を受ける者(受贈者)に関して、国籍や住所に制限は設けられていないことから外国国籍を有する者や相続税法の施行地に住所を有しない者であっても適用可能であること(措通70の2の2-2)や、取扱金融機関へ提出を要する領収証が外国の通貨で記載されている場合の円換算の方法(措通70の2の2-8)などが明らかとされたほか、教育資金管理契約が終了した場合に教育資金の使い残しがあった際の贈与税の課税関係(措通70の2の2-9)が整理された。   (2) 特定障害者扶養信託契約に係る贈与税の非課税限度額の計算上、一般障害者と特別障害者の区分に変更があった場合の取扱い(相基通21の4-2) 平成25年度税制改正において、特別障害者扶養信託契約に係る贈与税の非課税措置について、適用対象者に特別障害者のほか「一般障害者」が加えられ、「一般障害者」に係る非課税限度額が3,000万円(特別障害者は6,000万円)とされることとなった。 また、これに伴い適用対象となる信託契約が「特別障害者扶養信託契約」から「特定障害者扶養信託契約」に名称が改められた。 通達では、①一般障害者から特別障害者になった場合及び②特別障害者から一般障害者になった場合の非課税金額は、信託受益権の贈与があった時点において適用を受ける者が一般障害者もしくは特別障害者に該当するかにより、非課税限度額(3,000万円又は6,000万円)を判定して、既に他の信託受益権で適用を受けた部分の価額を控除した残額が非課税の適用可能額になることが明らかにされた。 また、②に該当するケースにおいて、その残額がマイナスになったとしても遡及して適用されないことが明らかにされた。  (了)
#29(掲載号)
#甲田 義典
2013/07/29
所得税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第2回】「馬券訴訟(その2)」~一時所得・雑所得の判定要件~

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第2回】 「馬券訴訟(その2)」 ~一時所得・雑所得の判定要件~   国士舘大学法学部教授・法学博士 酒井 克彦   1 本件事案の重要論点 前回に事案の概略を紹介したとおり、馬券収入が一時所得に該当するとするY(国側)と雑所得に該当するとするX(納税者側)との間で争われたのであるが、国税不服審判所は一時所得に該当するとのYの主張を妥当と判断している。 ここでの問題点は、一時所得に該当することになると、所得金額の計算上控除することができるのが「その収入を得るために支出した金額」とされ、その金額が、「その収入を生じた行為をするため、又はその収入を生じた原因の発生に伴い直接要した金額に限る」と限定されることにある。 すなわち、仮に、Xが主張するように雑所得に該当するのであれば、その必要経費が控除できることになるところから、その場合にははずれ馬券も控除の対象となり得るという大きな違いが生じるのである。 次に、一時所得と雑所得の違いについて考えてみたい。   2 一時所得の意義 (1) 所得税法34条1項 一時所得とは、次のような所得をいう。 このように、一時所得は、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得及び譲渡所得以外の所得のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得に限定されている。 これは、昭和22年に一時所得に対する課税がなされることになる前に非課税とされていた、「第9条第1項第8号に規定する所得(他の所得に該当しない所得(事業等所得))のうち、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得」と同じ規定の仕方である(旧所法6)。つまり、昭和22年の第二次改正において、この非課税規定を廃止し、新たにその非課税所得に相当する所得を課税所得に取り込むに当たって、これを「一時所得」として分類したことに由来しているのである。 したがって、やや大括りで捉えれば、一時所得の範囲とは、その淵源(えんげん)を辿れば、昭和22年の第二次改正前に非課税とされていた範囲と重なるということになる。 ところで、当時、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得」について、課税対象外とされていた理由はどこにあるのであろうか。 当時の所得税法においては、継続的ないし反覆的な利得を課税対象とするという考え方である所得源泉説的所得概念が支配していた。そのため、「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得」は、このような所得概念に合致せず課税対象外とされていたのである。 つまり、一時所得の範囲とは、所得源泉説的所得概念の下では課税対象所得とするにはなじまないものであったと言い換えることができるのである。 このような点からみても分かるように、一時所得とは、それ自体積極的な内容を持った所得区分ではなく、他の所得類型に該当しない所得をいわば補充的に分類したもの(いわゆるバスケット・カテゴリー)であるということも可能である。 なお、一時所得の金額とは次により計算された金額をいう。 (2) 所得税法35条1項 他方、雑所得とは次のような所得をいう。 つまり、「他の所得区分」からこぼれると「一時所得」に入り、さらに「一時所得」からこぼれると「雑所得」に入る構造となっている。 そして、雑所得に該当することになると、所得金額の計算上、必要経費が控除されることになる。 ここで、必要経費とは次のようなものをいう。 (3) 所得源泉性による判断 一時所得であるか否かの判定基準は、しばしば所得源泉性の有無に求められることがある。すなわち、所得源泉を有する場合は雑所得とし、所得源泉を有しない場合は一時所得とする考え方である。 例えば、利息の定めのない一時的な資金の貸付けに基因して受けた元本額を超える謝礼金が一時所得に該当するか否かが争点とされた事例として、国税不服審判所昭和46年5月21日裁決(裁決事例集2号5頁)がある。 同審判所は、 として、一時所得該当性を否定しているのである。 この裁決で、一時所得と雑所得とを画するメルクマールが所得源泉の有無にあるとするように、一時所得とは所得源泉を有しない所得であると理解されている。 (4) 一時所得該当性の課税要件 所得税法34条1項の文理に従えば、一時所得の要件は次のとおりである。 ここで注意が必要なのは、これらすべてが必須要件であるということである。 すなわち、①ないし④の各要件がすべて充足して初めて一時所得に該当すると規定されているという点をあらかじめ強調しておきたい。 (続く)
#29(掲載号)
#酒井 克彦
2013/07/25
消費税・地方消費税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例4(消費税)】 「合併事業年度の簡易課税制度の判定を納税義務の判定と同じであると思い込み、被合併法人の基準期間の課税売上高で行ってしまった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例4(消費税)】   税理士 齋藤 和助   《事例の概要》 合併法人である依頼者(以下「A社」という)と被合併法人(以下「B社」という)の合併事業年度の基準期間の課税売上高は、それぞれ800万円と2億円であった。 税理士は、納税義務の判定はB社の2億円で行い、課税事業者と判断した。しかし、簡易課税制度の判定を、A社の800万円ですべきところ、納税義務の判定と同じであると思い込み、B社の2億円で行ったため、原則課税と判断して申告書を作成、提出してしまった。 A社は過去に「簡易課税制度選択届出書」を提出していたため、正しく判定すると、簡易課税制度での申告であった。これを税務署から指摘され、更正処分を受けた。 これにより、原則課税と簡易課税との差額300万円につき損害賠償請求を受けた。   《賠償請求の経緯》 ・税理士は合併以前よりA社に関与しており、A社、B社の基準期間の課税売上高を確認していた。 ・A社は過去に「簡易課税制度選択届出書」を提出していた。 ・A社とB社の合併事業年度の基準期間の課税売上高はそれぞれ800万円と2億円であった。 ・税理士は、納税義務の判定はB社の2億円で行い課税事業者と判断した。 ・税理士は、簡易課税制度の判定もB社の2億円で行い原則課税と判断した。 ・合併事業年度は原則課税の方が有利であった。   《基礎知識》 ◆合併があった場合の納税義務(消費税法基本通達1-5-6) 法第11条各項《合併があった場合の納税義務の免除の特例》の規定は、合併により被合併法人の事業を承継した合併法人について、次に掲げる場合に該当するときは、納税義務を免除しないとする趣旨であることに留意する。 (1) 合併があった日の属する事業年度においては、合併法人の基準期間における課税売上高又は各被合併法人の当該基準期間に対応する期間における課税売上高のうちいずれかが1,000万円を超える場合 (注) 合併法人の基準期間における課税売上高が1,000万円以下であっても被合併法人の当該基準期間に対応する期間における課税売上高が1,000万円を超える場合には、当該合併法人の当該合併があった日から当該合併があった日の属する事業年度終了の日までの間における課税資産の譲渡等について納税義務が免除されない。 (2) 合併があった日の属する事業年度の翌事業年度及び翌々事業年度においては、合併法人の基準期間における課税売上高と各被合併法人の当該基準期間に対応する期間における課税売上高との合計額が1,000万円を超える場合   ◆合併法人が簡易課税制度を選択する場合の基準期間の課税売上高の判定(消費税法基本通達13-1-2) 吸収合併又は吸収分割があった場合において、当該吸収合併に係る合併法人又は当該吸収分割に係る分割承継法人の法第37条第1項《中小事業者の仕入れに係る消費税額の控除の特例》に規定する基準期間における課税売上高が5,000万円を超えるかどうかは、当該合併法人又は当該分割承継法人の基準期間における課税売上高のみによって判定するのであるから留意する。 〈合併があった場合の判定に用いる基準期間の課税売上高〉   《税理士の落とし穴》   《税理士の責任》 A社は過去に「簡易課税制度選択届出書」を提出していた。そして合併事業年度の消費税の申告の際、B社の基準期間の課税売上高が1,000万円を超えていたことから、課税事業者と判断した。 申告に当たり、簡易課税制度の判定も納税義務の判定と同じであると思い込み、B社の基準期間の課税売上高で判断し、5,000万円を超えていたことから、原則課税で申告書を提出した。 そして所轄税務署から、A社の基準期間の課税売上高が5,000万円以下のため、簡易課税での修正申告を慫慂され、はじめてその事実に気付いた。 過去に提出された届出書を確認し、提出期限までに不適用届出書を提出していれば原則課税は採れたことから、税理士に責任がある。   《予防策》 [ポイント①] 組織再編には注意する 組織再編の場合には、再編後の消費税の納税義務の判定等が複雑になるため、担当者だけでなく、所長もしくは有資格者等とチームを組んで複数人で検討を行うことが必要である。   [ポイント②] 選択不適用届出書提出の検討 当初、有利選択で提出した消費税の届出書は、その目的が達成された場合には不適用届出書を提出して、当初の状態に戻しておく。そして、改めて毎期末に翌期の消費税の検討を行えば、過去に提出した届出書の効力による事故を防ぐことができる。 (了)
#29(掲載号)
#齋藤 和助
2013/07/25
法人税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

雇用促進税制・所得拡大促進税制の実務 ~要件・手続の確認から両制度の適用比較まで~ 【追補】「所得拡大促進税制に係る通達の新設」

雇用促進税制・ 所得拡大促進税制の実務 ~要件・手続の確認から両制度の適用比較まで~ 【追補】 「所得拡大促進税制に係る通達の新設」   公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎   1 はじめに 平成25年6月27日、国税庁より「法人税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)」が公表された。 今回の改正では、平成25年度税制改正で新たに導入された所得拡大促進税制(雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除)に関し、新たな通達が設けられている。 そこで本稿では、新設された通達の内容について解説することとし、かねて連載していた「雇用促進税制・所得拡大促進税制の実務」(所得拡大促進税制の内容については、第3回の記事を参照)の補足としたい。   2 新たに設けられた通達 租税特別措置法関係通達(法人税編)において、第42条の12の4《雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除》関係として、以下の通達が新たに設けられた。 以下、個別に内容を説明していく。   3 中小企業者等であるかどうかの判定の時期(措通42の12の4-1) 青色申告書を提出する法人は、雇用者給与等支給増加額の10%相当額を(その事業年度の所得に対する)法人税の額から控除することができるが、控除限度額は法人税額の10%となる。ただしその法人が「中小企業者等」に該当する場合、所得拡大促進税制に係る税額控除限度額が法人税額の20%となる(措法42の12の4①)。 ここでいう「中小企業者等」とは、資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人のうち、以下のいずれにも該当しない法人をいう(措法42の4⑫五、措令27の4⑩) この点に関し、新設された通達では、ある事業者が「中小企業者等」に該当するかどうかは、所得拡大促進税制の適用を受ける事業年度終了の時の現況によって判定することを明らかにしたものである。 具体的には、その事業者の資本金の額又は出資金の額は事業年度終了時における額をもって判定し、発行済株式又は出資の所有関係についても、事業年度終了時の現況で判定するということである。   4 他の者から支払いを受ける金額の範囲(措通42の12の4-2) 所得拡大促進税制における計算基礎となる「雇用者給与等支給額」の算定に当たり、その給与等の支給に充てるため他の者から支払いを受ける金額がある場合には、その金額を控除する必要がある(措法42の12の4②三)。 この点に関し、「他の者から支払を受ける金額」の具体的な内容については、条文上必ずしも明確ではなく、第3回の連載記事においても「今後通達が整備される可能性がある」と記載したところであるが、今回の通達の新設によって具体的な取扱いが明らかとなった。 今回の通達は、雇用促進税制における通達(措通42の12-2)と全く同じ内容となっており、控除すべき額の具体例としては、①雇用者の数に応じて国等から支給される助成金の額、②出向先法人から支払いを受ける給与等負担金の額が挙げられている。 これらは例示列挙であるから、以上に該当しないものであっても、給与等に充てるために支払いを受ける額がある場合には、雇用者給与等支給額の金額の計算上控除しなければならない点につき留意が必要と考える。   5 出向先法人が支出する給与負担金(措通42の12の4-3) この通達は、出向先法人が支出する給与負担金について、出向先法人における取扱いを明らかにしたものである。 すなわち、出向先法人において、出向者が労働基準法第108条に規定する賃金台帳に記載されている場合には、出向先法人が出向元法人に対して支払う給与負担金の額は、当該出向者に対する給与支給額と同視して「国内雇用者に対する給与等の支給額」に含まれるということを明らかにしたものである。 したがって、出向先法人において所得拡大促進税制の適用を受ける場合には、「雇用者給与等支給額」の計算に当たり給与等支給額を含めることができる(ただし、当該出向者の賃金台帳への記載が必要)ということである。 (了)
#29(掲載号)
#鯨岡 健太郎
2013/07/25
国際課税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

「移転価格事務運営要領」の改正について

「移転価格事務運営要領」の改正について   税理士法人トーマツ パートナー 税理士 小林 正彦   1 はじめに 国税庁は、平成25年6月28日付けで、「移転価格事務運営要領」(以下「事務運営要領」)の一部を改正することを明らかにした。 主な改正項目は、以下の4項目である。 改正事項は平成25年4月1日以降開始する事業年度の法人税に係る調査及び事前確認審査に適用し、それ以前は従前の例によるとされている。 以下、上記4つの項目について順に解説する。   2 ベリー比の適用に関する参考事例の解説 (1) ベリー比とは 平成25年度税制改正において移転価格算定方法のうちの取引単位営業利益法(TNMM)に営業費用総利益率(いわゆるベリー比)を利益指標とする方法が追加された(租税特別措置法施行令39条の12第8項4号及び5号)。 ベリー比は、営業費用と売上総利益の相関関係が高い取引に適した算定方法である。 例えば、商社の取引に典型的にみられるように、果たした機能に比して売上高が多額であるが総利益率は低い取引に適した算定方法である。 こうした取引に売上高営業利益率を適用した場合、過大な営業利益が算出されてしまう可能性がある。 従来からベリー比はTNMMの1つである総費用営業利益率法(ネット・コスト・プラス)の一種と解釈して現行規定でも適用可能との見解もあったが、反対意見もあり取扱いが明確でなかった。 今回、政令で認められたことから、適用に関する透明性が確保された。 ベリ―比を用いたTNMMが認められたことにより、我が国の移転価格算定方法の種類は以下の表のとおりとなった。 〈独立企業間価格の算定方法〉 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 では、ベリー比とはどのような方法なのかを、簡単な計算例でみてみよう。 〔4号ベリー比の計算〕 検証対象企業は関連者から仕入れた商品を120円で第三者に販売している。検証対象企業の営業費用が8円、第三者に120円で販売している場合、比較対象企業のベリー比(売上総利益/営業費用)が1.5とすると、関連者からの仕入取引の独立企業間価格Xは下記のとおり108円となる。 比較対象企業のベリー比=1.5とすると、   X=120-8×1.5=120-12=108   〔5号ベリー比の計算〕 検証対象企業は第三者から100円で仕入れた商品を関連者に販売している。検証対象企業の営業費用が8円、比較対象企業のベリー比(売上総利益/営業費用)が1.5とすると、関連者に対する売上取引の独立企業間価格Yは下記のとおり112円となる。 比較対象企業のベリー比=1.5とすると、   Y=100+8×1.5=100+12=112   (2) 事例集における売上高営業利益率法とベリー比の適用区分に関する解説 ベリー比の解説は、「参考事例集」の「事例6」の「前提条件2」として挿入された。 事例6はTNMMの適用に関する事例の解説であり、改正前は「前提条件1」として売上高営業利益率法、「前提条件2」として無形資産の使用許諾取引の場合の解説があったが、今回の改正で、「前提条件2」としてベリー比が挿入された。 【売上高営業利益率法の適用が最適となる条件】 ベリー比の導入に伴って、売上高営業利益率の適用の前提条件の記述も若干変更されている。改正前は、「売上総利益及び売上原価の金額を把握することができず」との前提条件を付していたが、これを削除している。 また、改正後は、「S社は独自性のある広告宣伝・販売促進活動を行っておらず、S社による独自の価値ある寄与があるとは認められない(独自の価値ある寄与をなす無形資産と所得の源泉との関係については、【事例10~15】参照)が、自らの販売計画に従ってP社から購入した製品Aを、一定の在庫を保有して管理し、再販売している。(下線部筆者)」として、下線部の文言が追加されている。 さらに、「比較可能性分析の結果、S社の果たした機能の価値は、営業費用ではなく、売上との間に関係があることが確認されている」との記述を追加している。 以上から、国税庁は、①主体的に立てた販売計画に基づいて一定の在庫を保有し管理していること、及び②機能の価値が営業費用ではなく売上との間に関係がある、といった条件を満たす場合に、売上高営業利益率法の適用が最適と考えていることがうかがわれる。 【ベリー比の適用が最適となる条件】 一方、ベリー比の適用条件については、事例6の「前提条件2」において、次の条件を設定している。 また、 との条件が設定されているが、この条件がベリー比を適用するうえでの積極的な条件になると考えられる。 以上から、国税庁は、①主体的な販売計画を持たず、独自性のある広告宣伝活動を行わず、在庫管理機能も持たず、実質的な仲介活動を行っており、②機能の価値が営業費用に反映されている場合にベリー比の適用が最適であると考えていることがうかがわれる。 事例6の解説の中で、取引単位営業利益法の適用における3つの利益指標である売上高営業利益率(リターン・オン・セールス)、総費用営業利益率(ネット・コスト・プラス)、営業費用売上総利益率(ベリー比)について、それぞれどのような場合に適切な方法となるかについての記述が追加されている。   3 事前確認の年次報告書の様式の制定 事前確認を取得した後、各対象年度における確認内容を順守していることについて報告書を提出することとされており(事務運営要領5-17)、一般的に「年次報告書」と呼ばれている。 従来は様式に定めがなく適宜の様式で提出していたが、このたび表紙の様式「独立企業間価格の算定方法等の確認に関する報告書」(別紙様式8)が定められた(事務運営要領5-17)ので、平成25年4月1日以降に開始する年度の報告書からはこの様式による必要がある。様式は以下のとおり。 「独立企業間価格の算定方法等の確認に関する報告書」(別紙様式8) ※画像をクリックすると、PDFファイルが開きます(国税庁ホームページへ)。   4 事前確認の適用に関する報告書の審査を「行政指導」に区分 事前確認適用報告書の審査は国税局調査部国際情報課など課税部局が行っていることから、その行為が「行政指導」なのか「調査」なのかが問題になる。行政手続法上の区分は、改正前の事務運営要領では「報告書等の検討は、法人税に関する調査に該当することに留意し」と規定され「調査」の扱いとなっている。 このため、審査の結果申告に非違があった場合には加算税が賦課される。ただし、報告書の検討があったことを知ったと認められる以前に自主的に修正申告書を提出する場合には、加算税を付さないとされている。 改正後は、取扱いが大きく変わり、原則として「調査」ではなく「行政指導」に該当することとなった。 このため改正後は、行政指導である限りにおいて、加算税は課されない。 ただし、確認法人が行政指導に応じない場合には、調査に移行することとされた。   5 過大支払利子税制の適用上の移転価格税制の適用 過大支払利子税制とは、関連者(直接・間接持ち分50%以上)への利子のネット支払額(支払い-受取り)が調整所得金額の50%を超える場合に利子費用の損金算入を認めないという制度である。利子の支払先の国において租税が課されない場合に適用される。 移転価格調査で、支払利率が独立企業間価格を超えている場合や受取利率が独立企業間価格を下回っている場合の取扱いが問題になるが、今回の改正で以下の取扱いが明らかにされた(事務運営要領2-25)。要するに、移転価格税制を優先して適用した結果算定される金額によることになる。   6 適用開始時期 改正後の事務運営要領の適用は、平成25年4月1日以降開始する事業年度の法人税に係る調査及び事前確認審査から開始し、それ以前は従前の例によるとされている(事務運営要領「経過的取扱い・・・改正通達の適用時期」)。 (了)
#29(掲載号)
#小林 正彦
2013/07/25
相続税・贈与税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

相続税対策からみた生前贈与のポイント 【第2回】「貸家を贈与した場合の敷地の評価」

相続税対策からみた 生前贈与のポイント 【第2回】 「貸家を贈与した場合の 敷地の評価」   税理士法人タクトコンサルティング 税理士 山崎 信義   賃貸不動産を多数所有する個人が、所得税の節税対策のため、所得の少ない子に貸家の贈与を行う場合がある。 これは、子に家賃収入を移転させることにより子の財産と収入を増やすとともに、親の所得に対する税率と子の所得に対する税率の格差を利用して親子トータルでの税負担の軽減を図ろうとするものである。 このような所得税対策のため貸家の贈与を行う場合、相続税対策の面からは贈与後の敷地の評価額が問題となる。仮に目先の所得税の軽減が図られたとしても、敷地の相続税評価額が増加し、将来の相続税負担が大きくなるのであれば、実行の是非が問われることになるからだ。 そこで今回は、親が子に貸家を贈与し、その敷地を子に無償で使用させる場合の敷地の相続税評価について解説したいと思う。   1 貸家の敷地の評価 土地付き建物を所有している人が建物を他に貸し付けている場合における、その建物の敷地のことを「貸家建付地」という。 相続税評価上、貸家建付地の価額は の算式により計算する。 貸家の借家人には建物敷地の利用権があり、所有者であっても、その敷地の処分や利用について制限がされる。このため、相続税評価上、貸家建付地は土地所有者が自己使用地(自用地)としての評価額から借家人の有する敷地利用権相当額(自用地評価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合)を控除して評価する。   2 使用貸借により土地を貸した場合の評価 建物の所有を目的として無償による土地の借受け(使用貸借)をした場合は、借地借家法が適用されず、借主は借地権のような強い法的保護が受けられない。 このように使用貸借による土地の使用権は経済的価値が極めて低いと考えられるので、相続税評価上はゼロとされる。借主側の土地使用権の評価額がゼロとされることから、使用貸借に係る土地の貸主側の相続税評価は、自用地として評価される。   3 親から子に貸家の贈与があった後の敷地の評価 貸家とその敷地を所有する親が建物のみを子に贈与し、建物の敷地を使用貸借により貸し付けることにした場合、貸家贈与後のその敷地の相続税評価は、貸家の贈与前後で借家人の異動があったかどうかにより、次のとおりに取り扱われる。 (1) 貸家の贈与前後で貸家の借家人が同じ場合 使用貸借に係る土地を相続により取得した場合、相続税の計算上はその土地を自用地として評価する。しかし、贈与前は建物所有者である親がその敷地の所有者でもあるから、建物の所有者である親と建物の借家人との間で締結された賃貸借契約に基づき、建物の借家人は建物の敷地利用権を有している。判例においても、建物借家人の有する敷地利用権は建物が第三者に譲渡された場合でも侵害されないとしている(最判昭和38年2月21日民集17巻1号219頁)。 このことから、賃貸している建物の所有者が変わり、新たな建物所有者の敷地利用権が使用貸借に基づく利用権となっても、建物所有者の変更以前に有していた建物借家人の敷地利用権まで変更されたとはいえない。贈与前と同一の借家人が建物を賃借している場合は、土地所有者は建物敷地について引き続き処分や利用が制限されるので、土地評価は自用地としての評価額から相応の減額を行うのが当然といえる。 以上により、建物とその敷地の所有者が同一人で、その建物が他人に賃貸されているときに、その建物だけが贈与されて建物の敷地につき建物の贈与を受けた者に使用貸借が行われている状況で、その土地の相続があった場合、その土地の相続税評価額は、貸家建付地として評価される。 (2) 貸家の贈与前後で貸家の借家人が異なる場合 (1)の取扱いは、貸家の贈与前と贈与後で借家人が同一であることが前提である。 貸家の贈与後に借家人の異動があった場合には、贈与された貸家に係る敷地については使用貸借で貸した土地として自用地評価となる。 (3) 建物を同族会社に一括貸し、借家人に転貸する場合 建物を管理会社に一括で貸し、管理会社が入居者に建物を転貸している場合は、貸家の贈与後に入居者が変更したとしても借家人(管理会社)は贈与前と同じであるから、貸家の敷地は、貸家建付地として評価される。 したがって、不動産オーナーに賃貸管理業を営む同族会社がある場合、贈与前にその同族会社に建物を賃貸し、賃借人を同族会社に固定しておけば、建物贈与後も土地が貸家建付地として評価されることになる。 (了)
#29(掲載号)
#山崎 信義
2013/07/25

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