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税務 税務・会計 解説 解説一覧 財産評価

鵜野和夫の不動産税務講座 【連載4】「路線価図の読み方(1)」

鵜野和夫の不動産税務講座 【連載4】 路線価図の読み方(1)   税理士・不動産鑑定士 鵜野 和夫   (一) 路線価と時価との関係は   (二) 路線価の読み方は 図表1 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。       (三) 借地や貸宅地の場合は   (四) 路線価の付けられていない宅地は 図表2 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます(国税庁ホームページへ)。   図表3 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます(国税庁ホームページへ)。   (五) 倍率地域の宅地は 図表4 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます(国税庁ホームページへ)。   (六) それから、画地の位置・形状による調整が (了)
#29(掲載号)
#鵜野 和夫
2013/07/25
法人税 税務 税務・会計 解説 解説一覧

経理担当者のためのベーシック税務Q&A 【第4回】「不動産投資と税金」―借地権の税務―

経理担当者のための ベーシック税務Q&A 【第4回】 「不動産投資と税金」 ─借地権の税務─   仰星税理士法人 公認会計士・税理士 草薙 信久     1 権利金の認定課税 法人が所有する土地を第三者に賃貸した場合には借地権が設定されることになり、一般的には、借地権の設定の対価として借地人から地主へ相応の権利金の支払いが行われます。 このため、関係会社間等の特殊な関係にある者の間で行われた取引において、権利金を収受する取引慣行があるにもかかわらずその収受がなされない場合には、税務上はこれらの行為があったものとみなして、権利金の認定課税が行われます(法法22、法令137、法基通13-1-1)。 ただし、次の2、3のいずれかの方法に該当する場合には、権利金の認定課税は行われません。   2 相当の地代を収受している場合 仮に権利金の収受がなされていなくても、その代わりに地代を高く設定していれば、権利金の認定課税の問題は生じません。この権利金の問題が生じない地代の額を『相当の地代』といいます。 この場合には、契約書においてその後の地代の改訂方法を定め、かつ、「相当の地代の改訂方法に関する届出書」を地主と借地人の連名で税務署長に提出します。(法令137、法基通13-1-2、平成元年3月30日直法2-2)。   3 土地の無償返還に関する届出書を提出している場合 仮に権利金の収受がなされていなくても、その代わりに立ち退きの際に立ち退き料を支払う必要がなければ、権利金の認定課税の問題は生じません。 この場合には、契約書において将来、借地人がその土地を無償で返還することを定め、かつ、「土地の無償返還に関する届出書」を地主と借地人の連名で税務署長に提出します。 なお、この届出書は、地主と借地人の間で借地権の設定がなく、かつ、権利金の収受がまったくないことを前提にしていますので、一部でも権利金を収受した場合には適用がありません(法基通13-1-7)。   4 地主と借地人が法人と法人の取引の場合 権利金を収受する取引慣行があり、かつ、権利金をまったく収受しておらず、地主と借地人が法人と法人の取引の場合に権利金の認定課税の問題が生じるのは、『相当の地代』を収受しておらず、かつ、「土地の無償返還に関する届出書」が提出されない場合です。 法人と法人の取引の場合の一般的な取扱いをまとめると、次のようになります。   5 自然発生借地権 「相当の地代の改訂方法に関する届出書」では、(1)原則として3年毎に『相当の地代』を改訂する方法と、(2)地代を据え置く方法を選択します。 ここで、(2)の方法を選択した場合には、計算上は土地の価額の変動に応じて借地権の額が算出されますので、いわゆる自然発生借地権の問題が生じる可能性があります(法基通13-1-8)。   6 地代の認定課税 「土地の無償返還に関する届出書」を提出していても、実際に収受している地代が『相当の地代』より少ない場合には、地代の認定課税の問題が生じる可能性があります。 この場合には、税務上は、その差額に相当する金額を借地人に贈与したものとして取り扱われます(法基通13-1-3)。 *  *  * 借地権を取り巻く課税の問題はとても複雑です。権利金の認定課税の問題以外にも、地代の認定課税や自然発生借地権の問題が生じる可能性があります。 本稿の内容は、読者が理解しやすいように厳密ではない解説をしている部分がありますので、本記事に基づく情報により実務を行う場合には、専門家に相談の上行うか、十分に内容を検討の上実行してください。 (了)
#29(掲載号)
#草薙 信久
2013/07/25
税務 税務・会計 解説 解説一覧

税務判例を読むための税法の学び方【15】 〔第5章〕法令用語(その1)

税務判例を読むための税法の学び方【15】 〔第5章〕法令用語 (その1)   自由が丘産能短期大学専任講師 税理士 長島 弘 (前回はこちら) 1 法令用語の意義 今回より章を新たにし、法令用語について解説する。 「法令用語」と一口に言っても様々ある。立法技術的な表現のために用いられる法律専門の用語で、「立法技術用語」ともいわれるものがある。また、特定の意味内容を持つ用語で法律上一定の意義が与えられている(この意義の与えられ方も、法令により定義付けがなさせている場合と慣習や判例等により意味が与えられている場合とがある)ものがある。 前者の例としては、これまでに紹介した「又は」と「若しくは」、「及び」と「並びに」、「者」と「物」「もの」、「場合」と「とき」「時」、「その他」と「その他の」がそうである。 これらの立法技術用語は、①意味の違いの明確化、②条文構造の明確化、③表現の簡略化、④条文相互間の関係の明確化等のために、長い間使いならされてきた。 これらの立法技術用語については、その意味や使い方を定めた法令などはなく、もっぱら長年の慣習によって、その使い方が定着したものである。 これに対し、後者の例を一つ挙げる。 例えば「親族」という言葉は一般社会でも用いられているが、法令上は民法第725条において「次に掲げる者は、親族とする。 ①六親等内の血族、②配偶者、③三親等内の姻族」と定義が付されているため、民法以外の法律においても、通常この意義で用いられている。 狭義には立法技術用語ともいわれる前者を法令用語といい、後者のようなものは法律用語ではあるが法令用語には含めない考え方もある。 ここでは、前者を中心に解説していく。   2 「その他」と「その他の」 まずは、これまでに紹介したものの中から、詳細は後述するとした「その他」と「その他の」について解説する。先に「「A、Bその他C」と異なり「A、Bその他のC」の場合は、ABはCの例示とされ、内容的にCに含まれる。」と記した(第9回参照)。 この点を詳しく見てみる。 これまで取り上げた「又は」と「若しくは」、「及び」と「並びに」、「者」と「物」「もの」、「場合」と「とき」「時」は、いずれも日常用語としては特に区別することなく使われている(ただし「者」と「物」は使い分けられていよう)ものでも、法令用語としては明確に意識して使い分けているものである。 「その他」と「その他の」も同様であり、日常用語としてもよく使われており、その場合に特に意味の上で違いを意識して使われているとは思われない。しかし、この「の」が付くか付かないかだけの違いで、法令上は大きく意味が異なる。 まず、「その他の」は、通常、前に置かれた名詞又は名詞句が、後に続く一層意味内容の広い言葉の一部をなすものとして、その中に包含される場合に用いられる。これを「包括的例示」という。 所得税法第2条第1項第16号は「棚卸資産」の定義規定であるが、そこには「事業所得を生ずべき事業に係る商品、製品、半製品、仕掛品、原材料その他の資産(有価証券及び山林を除く。)で棚卸しをすべきものとして政令で定めるものをいう。」 とある。 この「その他の資産」の前にある商品、製品、半製品、仕掛品、原材料も資産の例であり、資産に包含されている。 これに対し、「その他」は、この言葉の前後の語句が独立しており、それぞれが、一応、別個の概念として並列的に並べる場合に使われる。これを「並列的例示」という。 所得税法第2条第1項30号イに寡婦の定義として「夫と死別し、若しくは夫と離婚した後婚姻をしていない者又は夫の生死の明らかでない者で政令で定めるもののうち、扶養親族その他その者と生計を一にする親族で政令で定めるものを有するもの」とある。 この中の「扶養親族その他その者と生計を一にする親族」の「その者と生計を一にする親族」は、前の「扶養親族」とは別の概念のものということになる。 もう一つ別の例を挙げる。 国税通則法第11条は、「国税庁長官、国税不服審判所長、国税局長、税務署長又は税関長は、災害その他やむを得ない理由により、国税に関する法律に基づく申告、申請、請求、届出その他書類の提出、納付又は徴収に関する期限までにこれらの行為をすることができないと認めるときは、政令で定めるところにより、その理由のやんだ日から2月以内に限り、当該期限を延長することができる。」と規定している。 この中には「その他」が2箇所出てくる。 最初の「災害その他やむを得ない理由」であるが、「災害」と「やむを得ない理由」とは別個の事情であり、「やむを得ない理由」とは災害以外の事情を指すのである。 また、次の「申告、申請、請求、届出その他書類の提出」においての「書類の提出」は、前にある「申告」「申請」「請求」「届出」とは異なる書類の提出を指すことになる。ただし「申告」「申請」「請求」「届出」もすべて通常は書類提出をもって行うのであるから書類の提出に含まれるため、ここにおいては「その他の」とした場合と大差ないように思える。 なお、続く「又は」がどう係るかであるが、「申告」「申請」「請求」「届出」が「書類の提出」に含まれるのであれば、「「書類の提出」、「納付」又は「徴収」」が「A、B又はC」の構造になることになる。 しかし文言に忠実に従えば「その他書類の提出」は「申告」「申請」「請求」「届出」と並列的なものであるから、「「申告」、「申請」、「請求」、「届出」、「その他書類の提出」、「納付」又は「徴収」」という「A、B、C、D、E、F又はG」の構造となり、これに後続する「に関する期限」が繋がることになる。 現在、例えば「申告」においては電子申告といった書類提出以外の方法もあるため、必ずしも「申告」は「書類の提出」に含まれないと考えれば、これはやはり「その他の」ではなく「その他」とすべき条文であり、「A、B、C、D、E、F又はG」の構造と捉えるべきである。 (了)
#29(掲載号)
#長島 弘
2013/07/25
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〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載29〕 債務超過の適格分割型分割を行った場合の資本金等の額と利益積立金額の計算(その2)

〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載29〕 債務超過の適格分割型分割を行った場合の 資本金等の額と利益積立金額の計算 (その2)   税理士 掛川 雅仁    【解説】 1 債務超過である分割法人が分割型分割を行ったときの資本金等の額と利益積立金額の正負による場合分け 「その1」においても触れたが、分割法人が債務超過である場合には、その資本金等の額と利益積立金額とがプラスであるのかマイナスであるかによって、【表1】の太線内のように、【表2】のケースA・C・Dと関連付けて整理することができる。 【表1】 債務超過である分割法人が分割型分割を行ったときの資本金等の額と利益積立金額の正負による場合分け 【表2】 現行法人税法における分割移転割合の上限・下限   2 現行法人税法における分割移転割合の上限・下限と立法趣旨 平成22年度改正後の移転割合の計算において、移転簿価純資産価額(分子の金額)が前事業年度末簿価純資産価額(分母の金額)を超える場合には、単純に計算すると移転割合が1を超えてしまい、分割法人の資本金等の額を超える資本金等の額の減少が生じてしまい、その結果、分割後の分割法人の資本金等の額がマイナスとなりかねない。 そこで、このようなことが生じないように、法令8①十五ロ括弧書において、移転割合の計算上、分子の金額(移転純資産の帳簿価額)が分母の金額(分割前事業年度終了時の純資産の帳簿価額)を超える場合には、分子の金額は分母の金額と同額にする、と規定し、移転割合は1を上限とするとしている。 この結果、分割法人の資本金等の額を超える資本金等の額の減少は生じず、その結果、分割後の分割法人の資本金等の額がマイナスにもならず、最少でもゼロに留まるように手当てされている。 そのほか、上記【表2】のように移転割合計算上の分子と分母の額の各種ケースを想定し、移転割合の上限・下限を定めて、分割後の分割法人の資本金等の額がマイナスとなったり、不適切な増加が生じないように手当てをしている。   3 債務超過である分割法人の資本金等の額がプラスである場合にプラスの純資産を分割承継法人に移転させる分割型分割を行ったとき ところで、債務超過である分割法人がプラスの純資産を分割型分割により分割承継法人に移転した場合に、分割法人の分割直前の資本金等の額がプラス(つまり、利益積立金額のマイナスを原因として、債務超過になっている状況)であれば、上記【表1】のケースDに該当する。 この場合は、分割移転割合は1とすると定められているから(法令8①十五括弧書)、移転する資本金等の額は分割法人の分割直前の資本金等の額の全額となる。その結果、分割法人の分割後の資本金等の額は、次のように0となってしまう。 設例(平成22年度改正後) 次の貸借対照表の分割法人が資産500、負債300を分割承継法人へ移転した。 【分割法人の分割時の仕訳】 ※分割直前の資本金等の額がプラスであり、分割前事業年度終了時の純資産の帳簿価額がマイナス(債務超過)であり、移転純資産がプラスである場合には、分割移転割合は1とする。  = 400×1(分割移転割合は1とする)  = 400   これに対して、実務家からは、次の違和感が呈されていたところである。   4 移転する資本金等の額が分割直前の資本金等の額全額となってしまう根本的な理由 このように、債務超過である分割法人の資本金等の額がプラスである場合にプラスの純資産を分割承継法人に移転させる分割型分割を行ったときにおいて、移転する資本金等の額が分割直前の資本金等の額全額となってしまう根本的な理由は、「その1」において指摘したように、平成22年度改正において、分割型分割におけるみなし事業年度を廃止したことを背景に、「まず資本金等の額の引継額を計算し、移転純資産の帳簿価額から資本金等の額を減算した金額を利益積立金額の引継額とすることが適当であると考えられます。」(『平成22年度税制改正の解説』297頁)として、改正前の組織再編成税制における利益積立金額と資本金等の額の増減に関する算定順序を逆転させたことにあると考えられる。   5 平成22年度改正前の適格分割型分割における資本金等の額と利益積立金額の増減金額に関する規定 ちなみに、平成22年度改正前の適格分割型分割における資本金等の額と利益積立金額の増減金額に関する規定を算式で示せば、次のとおりとなっていた。 【分割承継法人】 増加資本金等の額(旧法令8①六)  = 移転資産の帳簿価額-(移転負債の帳簿価額+増加利益積立金額) 増加利益積立金額(旧法令9①四)  = 適格分割型分割に係る分割法人の分割減少利益積立金額 【分割法人】 減少資本金等の額(旧法令8①十七)  =移転資産の帳簿価額-(移転負債の帳簿価額+分割減少利益積立金額) 分割移転割合・・・期末利益積立金額等が0に満たない場合には0とし、小数点以下3位四捨五入 また、適格分割型分割で分割法人において減少する利益積立金額についても、次のように、分割前事業年度終了時の純資産の帳簿価額と移転純資産の帳簿価額とを、それぞれ上限と下限とする旨の規定が設けられていた。 【表3】 平成22年度法人税法改正前における減少利益積立金額の上限・下限 設例(平成22年度改正前) 次の貸借対照表の分割法人が資産500、負債300を分割承継法人へ移転した。 【分割法人の分割時の仕訳】 分割移転割合・・・期末利益積立金額等が0に満たない場合には0とし、小数点以下3位四捨五入  =▲900×0(分割移転割合は0とする)  =0 減少資本金等の額(旧法令8①十七)  =移転資産の帳簿価額-(移転負債の帳簿価額+分割減少利益積立金額)  =500-(300+0)  =200 このように、平成22年度改正前においては、移転純資産が200であれば、分割法人の減少資本金等の額は400全部ではなく、移転純資産の帳簿価額に対応する200だけ減少するように規定されていた。 以上のように、平成22年度改正後の法人税法の規定による計算と平成22年度改正前とでは、大きく異なっており、計算結果が異なるように改正されたことやその改正理由は一切説明されていない。   6 適格分割型分割と非適格分割型分割とで資本金等の額の減少額が異なる現行法 ところで、実務家から呈されていた第2の違和感として、次のものがあった。 これについては、現行の法令8①十五の本文括弧書には、「当該分割型分割が適格分割型分割でない場合において、当該計算した金額が当該分割型分割により当該分割法人の株主等に交付した分割承継法人の株式(出資を含む。以下この条において同じ。) その他の資産の価額を超えるときは、その超える部分の金額を減算した金額」という規定がある。 これは、非適格分割型分割においては、分割法人の減少する資本金等の額は、株主に交付した分割承継法人の株式その他の資産の時価を上限とするというものである。 このように、非適格分割型分割において、分割法人の減少する資本金等の額に上限を設けるのであれば、たとえ、平成22年度改正前と改正後とで、組織再編成税制における利益積立金額と資本金等の額の増減に関する算定順序を逆転させたとしても、適格分割型分割においても、適正な金額をもって、分割法人の減少する資本金等の額とするという上限規定があって然りだと容易に考え得るところである。   7 移転する資本金等の額のあるべき見直し内容 本稿で取り上げた設例では、その分割法人の減少する資本金等の額の適正な金額とは、適格分割型分割で移転する簿価純資産の額とすべきである。 このように見直すことで、平成22年度改正前と後で、次のように、同額の資本金等の額と利益積立金額が移転することになり、改正前後の整合性が保てることになる。 設例(平成22年度改正後の本来あるべき状態) 次の貸借対照表の分割法人が資産500、負債300を分割承継法人へ移転した。 【分割法人の分割時の仕訳】 ※分割直前の資本金等の額がプラスであり、分割前事業年度終了時の純資産の帳簿価額がマイナス(債務超過)であり、移転純資産がプラスである場合には、分割移転割合は1とする。  =400×1(分割移転割合は1とする)  =200(ただし、移転純資産の額200を限度とする) 以上のように、特殊なケースの分割型分割であっても、平成22年度改正前と後で、同額の資本金等の額と利益積立金額が移転することになるように、改正前後の整合性を回復するような手当てが早急になされることが必要と考える。 (了)
#29(掲載号)
#掛川 雅仁
2013/07/25
会計 税務・会計 管理会計 解説 解説一覧

林總の管理会計[超]入門講座 【第7回】「費目別計算はなぜ大切か?」

林總の 管理会計[超]入門講座 【第7回】 「費目別計算はなぜ大切か?」   公認会計士 林 總   (了)
#29(掲載号)
#林 總
2013/07/25
労働基準関係 労務 労務・法務・経営

長時間労働と労災適用 【第4回】「企業が取るべき対策」

長時間労働と労災適用 【第4回】 「企業が取るべき対策」   特定社会保険労務士 大東 恵子   前回説明したように、企業は安全配慮義務違反により膨大な損害賠償を請求される可能性がある。 このため、企業は以下のように、損害賠償請求から自社を守るべき対策を講じる必要がある。   (連載了)
#29(掲載号)
#大東 恵子
2013/07/25
労務・法務・経営 法務

民法改正(中間試案)―ここが気になる!― 【第6回】「約款」

民法改正(中間試案) ─ここが気になる!─ 【第6回】 「約款」   弁護士 中西 和幸   1 約款の意義と現行法 民法改正においては、約款の項を新たに設け、「多数の相手方との契約の締結を予定してあらかじめ準備される契約条項の総体であって、それらの契約の内容を画一的に定めることを目的として使用するものをいうものとする。」と定義している。 すなわち、本来、契約は当事者間での合意であり個々に内容が定まることが原則であるところ、多数の相手方と画一的に内容を定めた契約を締結し、個々の同意がなくともその内容について一律の変更等ができるという例外を認めた契約方法が「約款」である。 「約款」については、現行民法上は全く規定がない。しかし、公共交通機関における標準鉄道利用運送約款(鉄道事業法)、道路運送事業における約款(道路運送法)、電気通信事業者が作成する約款(電気通信事業法)、損害保険や生命保険における約款(保険業法)など、法令に根拠を持つものがある(法的拘束力が完全に生じるかどうかは別問題である)。 これを、民法上正面から認めるという提案が中間試案からなされているのである。   2 約款の効力と組入要件 (1) 約款に拘束力が生じる根拠 契約による合意が拘束力を生じるためには、当事者間の合意が必要である。 そこで、中間試案は、現代社会においては大量の定型的取引を迅速かつ効率的に行うことが求められる場面が多く、これを実現するため、契約の一方当事者があらかじめ一定の契約条項を定め、個別の交渉を省き画一的な内容の契約を結ぶことが必要であるとして、約款を明文化して法的安定性を図ろうとしている。 そして、約款を「多数の相手方との契約の締結を予定してあらかじめ準備される契約条項の総体であって、それらの契約の内容を画一的に定めることを目的として使用するものをいうものとする。」と定義している。 こうすることにより、ある者(通常は事業者)と商品やサービスを購入する等の取引を行った場合、約款が作成されていれば、その契約者は常にその約款に拘束されることになるのである。 約款による合意においては、特定の条項については合意しない、あるいは特定の条項は変更したい等の当事者の意思は考慮されないという、一方的な拘束力が生じることになる。そのため、現行法下では法令の規定に根拠を持ち、監督官庁の管掌の下に用いられている。 もっとも、法令の規定がなくとも一定の限度で裁判例が約款の拘束力を認めている例があるが、中間試案の補足説明で紹介されている裁判例は、警備契約が1例と、決して多くはない。 そこで、約款を民法において規定し、かつ監督官庁による管掌がない状態にしようというものである。 (2) 約款が有効となる要件 ① 契約の当事者がその契約に約款を用いることを合意すること ある意味当然の要件である。そして、その合意のためには、相手方が当該約款を用いた契約を締結することに合意するか否かを判断できるよう、契約締結時までに相手方が約款の内容を認識する機会が確保されている必要がある。 もっとも、どのような場合に上記要件を満たすかについては、中間試案本文では、約款使用者の相手方が合理的に期待することができる行動を取った場合に約款の内容を知ることができる状態が約款使用者によって確保されていれば足りるとするが、結局のところ、その契約の内容や取引の態様、相手方の属性、約款の開示の容易性、約款の内容の合理性についての公法的な規制の有無等の事情を考慮して定まるとして、実務上は明確になっていない。 ② 契約締結時までに、相手方が合理的な行動を取れば約款の内容を知ることができる機会が確保されていること およそ知ることもできなかった約款については、組入合意があってもその合意に拘束力を認めることはできないため、当然の要件である。そして、約款を明示的に提示することを必ずしも原則的な要件とはせず、具体的な開示の方法については個別の契約ごとに様々な要素を考慮して判断することとしている。 例えば、約款をウェブサイトに掲示ししたり、商品の外装箱に印刷したりするような、取引前に容易に確認できる方法が考えられる。また、店舗に掲示する方法や交通機関のように駅窓口で閲覧できる方法も考えられる。ただし、相手方が遠方に出かけたり取り寄せるまでに日数がかかる場合などは、その要件を満たさないとみなされる可能性もあろう。   3 不意打ち条項 (1) 不意打ち条項 本文では、相手方が約款に含まれていることを合理的に予測することができないものは、約款に記載されていても契約としての効力が生じない旨規定している。そして、その判断要素について、他の契約条項の内容、約款使用者の説明、相手方の知識及び経験その他の当該契約に関する一切の事情に照らして判断するとしている。 これが、いわゆる「不意打ち条項」に関する規定である。 (2) 不意打ち条項に関する異議 こうした不意打ち条項に関する規定は、消費者保護的な発想から生まれている。しかし、民法に消費者保護的な規定を設けることに意義があるかどうかの異論が根強い。 また、かかる不意打ちについては、補足説明では「同時に不当条項であると評価される場合が多く、不当条項に該当しない場合であっても説明義務・情報提供義務違反の問題として処理することができることから、敢えて不意打ち条項に関する規定を設ける必要はないとの指摘もある。」とあり、法的意義を疑問視する意見もあるなど、いずれにしても改正案の成立について予想はしがたい。   4 約款の変更 一度約款により契約が成立したとしても、約款作成者としては約款を画一的かつ一律に変更を必要とする場合もあろう。しかし、相手方としては、知らないうちに契約内容が変更されることは、合意による契約という大原則に抵触することから、約款については変更が重要な問題となる。 この点、中間試案では、約款の変更について の4つの要件を満たす場合に、相手方に約款を変更する旨及び変更後の約款の内容を合理的な方法により周知するという手続を経ることにより、効力を生ずるものとするとしている。 例えば、ウェブサイトへの表示、店頭販売の商品については店頭での掲示、相手方に対する約款変更の通知書や電子メールを送付することなどが考えられる。 ただし、この点については引き続き検討するとされており、改正案に盛り込まれるかどうかは不明である。   5 不当条項規制 中間試案では、当該条項が存在しない場合に比し、約款使用者の相手方の権利を制限し、又は相手方の義務を加重するものであって、その制限又は加重の内容、契約内容の全体、契約締結時の状況その他一切の事情を考慮して相手方に過大な不利益を与える場合には、無効とするものとする、という不当条項規制を設けることを提案している。 確かに、かかる条項を設けることにより相手方、通常は消費者を想定していることから、消費者保護につながるが、このような消費者保護の条項を設けるかどうかは、不意打ち条項と共に根強い反対がある。 また、実務上は、ある程度の縛りがかかっているとはいえ、「相手方に過大な不利益を与える場合」の判断に迷うところであろう。   6 実務への影響 (1) ビジネスチャンスの拡大等 この条項が明確になれば、一般的な事業者が約款を活用することが可能になるように見える。 確かに、現行法上、約款にかかる法規制は、特別法に規定されているのみであり、一般の事業者が利用できるかどうか不明確である。そのため、結局のところ契約の形式をとり、ひな形に同意しない場合は特約条項を設けるか、契約を断念するかをひな形作成者と相手方の間で選択せざるを得なかった。また、契約変更の場合、個別に何らかの承諾を得てこれを契約書に残す方法を使用するしかなかった。 それが、約款の導入により事業者にビジネスチャンスが広がること、つまり相手方に一律の内容の契約を締結させることができるため契約を断念するケースが減少したり、特約条項の管理にかかる負担を軽減することが可能となろう。 (2) 契約者拡大の裏に 確かに、契約を断念してきた相手方と約款取引により契約できることになる、というメリットがあるように見える。 しかし、ひな形を用いた場合に各種の調整や特約が必要な相手方と、ひな形のような調整なしに契約が約款により成立したとしても、その相手方は一定の不満を有しているのであって、何らかの機会にその不満が表に出ることも考えられよう。すなわち、相手方の不満を先延ばしにする機能しか有していないとも評価することができる。 すなわち、対象者の拡大と管理コストの削減は可能であるが当然これに伴うトラブルが一定程度発生することも念頭に置く必要があろう。 (3) 約款取引の拡大 約款取引の適用が拡大することにより、便利となる取引も考えられる。 例えば、コンピュータソフトウエアを消費者に販売する場合に、著作権に関する各種の同意やインストールする端末に関する制限に関する同意等々を得ることについて、現行法上は、シュリンク・ラップ契約(商品の封を破ることにより契約の成立がみなされる考え方)や、ユーザー登録などの方法により個別の契約をしてきた取引について、効率化が図れよう。 また、店頭にて不特定多数の者に商品を販売する場合であっても、その商品の購入者に一定の契約を成立させることができるため、様々な活用が考えられよう。例えば、中間試案において契約の趣旨が重視されるところ、契約の趣旨や必要な説明を総て約款取引にしておくことで、合理的な拘束力を不特定多数の者に発生させることができよう。 (4) 消費者保護的な条項との関係 約款による取引の場合変更が容易かどうか不明であること、また不意打ち条項や不当条項が禁止される結果、約款に対するトラブルが発生することが予想されるが、消費者だけでなく事業者(下請業者等の力関係に差がある場合を除く)との間でも不意打ち条項や不当条項が適用されるリスクがある。 (5) 総括 以上の通り、約款制度が明文化されることにより、一定の業務の効率化が可能であったり、ビジネスチャンスの拡大にもつながるが、とはいえ、別のトラブルが発生することも考えられる。 現行法下でも、各種事業者により様々な工夫がなされ、約款取引そのものやこれに準じた取引が行われているため、必ずしも本改正が必要かどうかは分からない(そのため、約款に関する改正をしない選択肢も、中間試案では示されている)。 実際に約款を導入すればメリットがある事業者であれば、現行法下でも有効な手段は考えられるので、法改正にかかわらず、約款に準じた考え方で業務の効率化を検討してよいであろう。 (了)
#29(掲載号)
#中西 和幸
2013/07/25
労務・法務・経営 経営

顧問先の経理財務部門の“偏差値”が分かるスコアリングモデル 【第8回】「スコアリングデータから優秀な会社の傾向を読み取る」 ~財務諸表の信頼性スコア~

顧問先の経理財務部門の “偏差値”が分かる スコアリングモデル 【第8回】 「スコアリングデータから 優秀な会社の傾向を読み取る」 ~財務諸表の信頼性スコア~   株式会社スタンダード機構 代表取締役 島 紀彦   はじめに 前回は、優秀な会社の傾向を読み取るにあたり、スコアリングモデルにおける「総合スコア」を取り上げた。 今回取り上げるのは、「財務諸表の信頼性スコア」である。 財務諸表の信頼性スコアは、第3回で述べた5つの視点のうち、「正確性」、「安定性」、「リスク管理」から適切なKPIを抽出して算出され、経理財務部門が作成する財務諸表の信頼性のレベルを表すスコアである。 では、実際の会社を評価した財務諸表の信頼性スコアから、どのような傾向を読み取ることができるだろうか。   財務諸表の信頼性スコアの全体分布 今回も、平成18年に行った134社によるスコアリングデータを紹介する。母集団は134社である(図表11)。 図表11 スコアリングモデルに参加した会社 (再掲) ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 まず、財務諸表の信頼性スコアの分布を見ていただきたい(図表16)。 図表16 財務諸表の信頼性スコアの分布 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 前回の総合スコアの場合と同様、財務諸表の信頼性スコアの分布も、全体として平均値周辺に集中し、正規分布に近い形状が形成されている。スコアリングモデルの有効性の観点からは、134社のサンプルであっても、母集団の傾向を十分説明できるだけのモデルであり、そこで得られたスコアの順位は母集団における自社のレベルの目安になることを示している。   業種別、株式公開別に見た財務諸表の信頼性スコアの傾向 次に、財務諸表の信頼性スコアの傾向を、製造業と非製造業の業種別、株式公開別に分析した結果を見てみよう(図表17)。 図表17 財務諸表の信頼性スコアの業種別、株式公開別傾向 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 結論を先取りすれば、財務諸表の信頼性スコアにおいて、業種別の優劣の傾向は見られなかったが、株式公開別には、上場企業の方が非上場企業よりも優れているという結果が出た。 すなわち、財務諸表の信頼性スコアについて製造業と非製造業を比較すると、製造業の平均値が高いものの、スコアのバラツキや分布から判断すると、いずれが優れているとは判断できない。 他方、上場企業と非上場企業を比較すると、上場企業の平均値が高いだけでなく、標準偏差から判断できるスコアのバラツキが小さくなっている。さらに、最大最小差では、非上場企業のバラツキが小さいものの、上場企業の方が非上場企業よりも高いレベルにスコアが分布している。 つまり、スコアリングデータでは、上場企業の方が、非上場企業よりも、財務諸表の信頼性スコアが高いという結果が出ているのである。 これを経験則に照らしてみると、上場企業は、外部からの監視によるガバナンスが働くだけでなく、監査法人による会計監査によって、非上場企業よりも財務諸表の信頼性レベルが高いと考えられる。 スコアリングモデルによる財務諸表の信頼性スコアの分布は、そのような経験則を裏付ける結果となっている。   他の指標との関係分析 総合スコアの場合と同様、スコアリングモデルで算出した財務諸表の信頼性スコアが持つ意味をさらに理解してもらうため、経営者や読者のような外部のステークホルダーに馴染みのある他指標とスコアの関係を分析した結果を紹介する。 今回は、財務諸表の信頼性スコアとの関係を検討する他指標として、「個別決算数値確定日数」、「全従業員に占める経理部門の割合」を使ってみる。 今回も、前回の総合スコアの場合と同様、平均の差の検定という手法で関係分析を行う。   財務諸表の信頼性スコアと他指標の関係 財務諸表の信頼性スコアの上位25社、全134社、下位25社の3グループについて、2つの他指標の平均値を算出し、財務諸表の信頼性スコアと平均値の関係を分析した結果を以下にまとめた。 改めて述べると、上表の「負」とは、財務諸表の信頼性スコアが高いグループほど他指標の数値が小さくなり、財務諸表の信頼性スコアが低いグループほど他指標の数値が大きくなる関係が、グラフにおいて見られることを意味する。 参考までに、グラフの形が「正」であれば、財務諸表の信頼性スコアが高いグループほど他指標の数値が大きくなり、財務諸表の信頼性スコアが低いグループほど他指標の数値が小さくなる関係が、グラフにおいて見られることを意味する。 関係分析では、財務諸表の信頼性スコアが高い会社ほど、個別決算数値確定日数が短く、全従業員に占める経理部門の割合が低いという結果となった。 以下、その結果が示唆する意味を読み解いてみよう。 (1) 個別決算数値確定日数 財務諸表の信頼性スコアと個別決算数値確定日数に、一定の関係が見られるだろうか(図表18)。 図表18 財務諸表の信頼性スコアと他の基本的指標との関係 (個別決算数値確定日数) ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 「財務諸表の信頼性スコア」は、「正確性」、「安定性」、「リスク管理」のレベルを表すスコアであり、財務諸表の信頼性が高い会社は、規程やマニュアルの整備と運用により、日常の会計事象のリスクを正しく把握して、会計処理に反映し、決算数値を早期に確定できていると考えられる。 逆に、監査や経理指導を行う読者なら見聞されていると思うが、実際の会社の事例から経験的に分かることとして、決算数値を早期に確定できる会社は、会計事象発生から記帳までのリードタイムが短いはずなので、実在性、網羅性、評価の妥当性、期間配分の適切性等の点で間違いが少なく、結果として財務諸表の信頼性が高いレベルに維持されることが多いだろう。 そこで、グラフを見てみると、財務諸表の信頼性スコア上位25社の日数が最も短く、財務諸表の信頼性スコア下位25社の日数が最も長いという負の関係が見られる。まさに、財務諸表の信頼性が高い会社ほど決算数値の早期確定ができるという経験則が、客観的なデータとして証明されている。 (2) 全従業員に占める経理部門の割合 次に、財務諸表の信頼性スコアと全従業員に占める経理部門の割合に、一定の関係が見られるだろうか(図表19)。 図表19 財務諸表の信頼性スコアと他の基本的指標との関係 (全従業員に占める経理部門の割合) ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 グラフを先に見ると、財務諸表の信頼性スコア上位25社の割合が最も低く、財務諸表の信頼性スコア下位25社の割合が最も高いという負の関係が見られる。もっとも、上位25社と全社平均の差は、下位25社と全社平均の差に比べて僅かに過ぎない。 負の関係だけを捉えれば、財務諸表の信頼性が高い会社は、少数精鋭の省力化された経理部門を持っており、財務諸表の信頼性が低い会社は、相対的に肥大化した経理部門を持っていることを示唆していると理解できなくもない。 しかし、むしろ注目すべきなのは、財務諸表の信頼性が低い下位25社の経理部門が肥大化している点である。 つまり、いたずらに経理部門の人員を増やしても財務諸表の信頼性は低くなるということであり、一定の省力化が必要ということを物語っている。 他方、上位25社と全社平均の差が僅少なのは、経理部門の人数を極端に省力化しても財務諸表の信頼性が高まるわけではなく、適正規模が必要であることを、併せて示唆していることには留意が必要だろう。 次回は、スコアの優秀な会社の傾向を読み取る最後の指標として「業務の有効性・効率性スコア」を取り上げる。 (了)
#29(掲載号)
#島 紀彦
2013/07/25
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〔知っておきたいプロの視点〕病院・医院の経営改善─ポイントはここだ!─ 【第13回】「精神病床を持つ意義」

〔知っておきたいプロの視点〕 病院・医院の経営改善 ─ポイントはここだ!─ 【第13回】 「精神病床を持つ意義」   東京医科歯科大学医学部附属病院 特任講師 井上 貴裕   1 5疾病5事業へ 地域医療計画における重点領域として、精神系疾患が加えられ、5疾病5事業に拡大される。図表1に示すように、精神系疾患の入院患者数は循環器系疾患やがんよりも多く、また近年の増加が社会問題にもなっていることが背景として考えられる。 図表1 推計入院患者数の推移 精神系疾患というと、慢性期的な精神病院を想起することが多いものと予想されるが、がん患者にもせん妄が認められることが少なくない。せん妄は、がん患者において頻度の高い精神症状であって、術後の30~40%、高齢入院患者の10~40%、終末期患者の30~90%程度に認められる。 また、精神系疾患の患者であっても心筋梗塞や脳卒中、外傷で救急搬送されてくることもあるわけであり、当該疾患のフォローアップ体制を有することはこれからの急性期病院にとって新入院患者を獲得するための重要な鍵を握る。   2 重症患者への対応 診療科別の管理会計を総合的な診療体制を有する病院で実施すると、入院医療で最も利益率が悪いのが精神科であることから、単純に考えると不採算であると捉えることもできる。しかしながら、図表2に示すように、DPC/PDPSにおける調整係数をみると精神病床を有する病院が高い傾向がある。 図表2 調整係数 これは精神系病床を有する病院は、重症患者に対応しているので、医療資源の投入量が多く、そのことが係数で補填されていることが予想される。 現存する暫定調整係数はやがて廃止されるものの、置換えが行われていく機能評価係数Ⅱにおけるカバー率係数、基礎係数の実績要件である診療密度などには、精神病床を有する病院が有利な傾向が出るであろうことから、筆者は精神病床=不採算と決め打ちするのは妥当ではないものと考えている。 さらに、機能評価係数Ⅰで評価されている総合入院体制加算は、急性期病院にとって金額的なインパクトが大きい。総合入院体制加算を算定するために、必ずしも精神科を標榜する必要はなく、24時間対応できる体制(自院又は他院の精神科医が、速やかに診療に対応できる体制を含む)があればよいことになっているものの、一般的には精神科を標榜する医療機関が多いことであろう。 総合入院体制加算は、急性期病院にとっては非常に重要な意義を有しており、機能評価係数Ⅰで3%弱の評価が行われており、500床程度の総合病院であれば年間約1億円の増収になることが予想される。   3 急性期精神病床の配置状況、慢性期精神病床のこれから 精神病床に関する施設基準の届出状況をみると図表3に示すように、精神科身体合併症管理加算が最も多く、ついで精神療養病棟入院料及び認知症治療病棟入院料1となっている。 図表3 精神科に関連する施設基準の届出状況 精神科身体合併症管理加算は、精神科を標榜する場合に、精神科以外の診療科の医療体制との連携がある病棟において、精神病床に入院している身体合併症を併発した精神疾患患者に対して、精神疾患、身体疾患両方について精神科を担当する医師と内科又は外科を担当する医師が協力して、治療が計画的に提供されていることが評価されたものであり、当該疾患の治療開始日から7日間算定することができる(1日につき450点)。 多くの疾患が対象とされており、金額的な影響も大きいことから、精神科を標榜する場合には届出を行うことが必須となるであろう。 また、精神療養病棟入院料については、慢性期的な患者が対象になり、一定の需要を期待することができる。しかしながら、精神科地域移行実施加算もあり、入院期間が5年を超える患者など長期入院については減少させ、地域に戻すことが政策として企図されている。 したがって、慢性期的な精神医療については、診療報酬が大幅にアップするという期待は薄いものと筆者は予想している。 認知症治療病棟入院料1については、30日以内が1日につき1,761点、31日から60日以内が1,461点と比較的高い点数が設定されており、ADLにかかわらず認知症に伴う幻覚、妄想、夜間せん妄、徘徊等で、その看護が著しく困難な患者が対象となるため、運用の仕方によってはそれなりの収益性を期待することができるものと予想される。   4 救急と精神系疾患 救急医療を断りなく行えば一定の確率で精神系疾患の患者が搬送されてくることであろう。それに備えて、2012年度診療報酬改定では、一般病棟におけるせん妄やうつのような精神科医療を想定した精神科リエゾンチーム加算が新設された(週1回200点)。 届出を行うことができる医療機関は少ないであろうが、10年後には高機能な急性期病院では当たり前の取組みになるものと予想される。精神科医、専門性の高い看護師、薬剤師、作業療法士、精神保健福祉士、臨床心理技術員等の多職種からなるチームを編成しなければならないなど、クリアすべき課題も多いが、積極的な算定を目指したいところである。 さらに、厚生労働省が年度ごとに行っている「救命救急センターの評価結果」において、特定の診療科・診療領域に限って救急搬送を受け入れている場合には是正を要求されている。実際に救命救急センターを有する病院の54%は精神病床を有しており、救急医療に積極的に取り組む高機能な急性期病院においては精神系疾患への対応は重要な鍵を握るのであろう(二次救急医療機関では86%が精神病床を持っていない)。 なお、2012年度診療報酬改定で、精神科救急患者地域連携紹介加算及び同受入加算が新設され、緊急入院から60日以内に転院した場合の評価が行われたことも注目される。一般病院では7日以内であるのに対して、60日と長めの期間設定が行われており、これらを有効に活用することも重要である。 (了)
#29(掲載号)
#井上 貴裕
2013/07/25
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女性会計士の奮闘記 【第7話】 「提案は慎重に」   公認会計士・税理士 小長谷 敦子   〈ワンポントアドバイス〉 事業承継税制は一例ですが、会社の将来にわたって経営に大きな影響及ぼす制度は、慎重に適用しなければなりません。安易に制度の適用を勧めると、かえってお客様の信頼を失ってしまうことになります。 時間をかけて、あらゆる角度から考える必要があります。勇み足は禁物。最悪のシナリオも想定して、お客様に伝えましょう。 (了)
#29(掲載号)
#小長谷 敦子
2013/07/25

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