税務判例を読むための税法の学び方【74】
〔第9章〕代表的な税務判例を読む
(その2:武富士事件②)
立正大学法学部准教授
税理士 長島 弘
連載の目次はこちら
前回に続き、武富士事件について見ていく。
3 検討事項
(1) 高裁判決との比較
高裁判決では、日本に住所があると認定して国側の主張を認めている。
では、何が判断を分けたのであろうか。
まず原審である高裁判決を入手し、読んでいただきたい。
裁判所ホームページ
「贈与税決定処分取消等請求控訴事件(東京高裁平成20年1月23日)」
法務省ホームページ
「訟務重要判例集データベースシステム」
(※) 「裁判年月日」枠の「この日のみ」にチェックを入れ、平成「20」年「1」月「23」日を入力して検索する。
ここでは「法令において人の住所につき法律上の効果を規定している場合、反対の解釈をすべき特段の事由のない限り、その住所とは、各人の生活の本拠を指すものと解するのが相当であり(略2)、生活の本拠とは、その者の生活に最も関係の深い一般的生活、全生活の中心を指すものである(略3)。そして、一定の場所が生活の本拠に当たるか否かは、住居、職業、生計を一にする配偶者その他の親族の存否、資産の所在等の客観的事実に、居住者の言動等により外部から客観的に認識することができる居住者の居住意思を総合して判断するのが相当である。なお、特定の場所を特定人の住所と判断するについては、その者が間断なくその場所に居住することを要するものではなく、単に滞在日数が多いかどうかによってのみ判断すべきものでもない(略4)」と判示し、住所の判断には「客観的事実に、・・・居住者の居住意思を総合して判断するのが相当」と法命題を示している。
この点、最高裁は住所の判断には「客観的に生活の本拠たる実体を具備しているか否かにより決すべき」としており、「居住者の居住意思」を住所の判断に加えるか否かという点で両者に相違があり、判断が分かれることになった。
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