税務判例を読むための税法の学び方【90】
〔第9章〕代表的な税務判例を読む
(その18:「「交際費」の範囲①」(東京高裁平15.9.9))
立正大学法学部准教授
税理士 長島 弘
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1 はじめに
この判例は、交際費の範囲について、それまでの2要件説から、条文に即した3要件説に基づいて判決を出したものである。
これまでは、交際費の範囲について、2要件説により判断されていた。その2要件とは、①支出の相手方が、事業に関係のある者等であること、②支出の目的が、接待、きょう応、慰安、贈答等企業活動における交際を目的とするもの、である。
しかし萬有製薬事件においては、3要件説による判断が示された。
そこで、今回から3回にわたって、この判決を題材に、交際費の範囲を検討したい。
2 条文と問題点
租税特別措置法第61条の4 第4項
第1項に規定する交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為(以下この項において「接待等」という。)のために支出するもの(次に掲げる費用のいずれかに該当するものを除く。)をいい、第1項に規定する接待飲食費とは、同項の交際費等のうち飲食その他これに類する行為のために要する費用(専ら当該法人の法人税法第2条第15号に規定する役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除く。第2号において「飲食費」という。)であって、その旨につき財務省令で定めるところにより明らかにされているものをいう。
一 専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用
二 飲食費であって、その支出する金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額が政令で定める金額以下の費用
三 前2号に掲げる費用のほか政令で定める費用
この条文は現行法のものであるため、後半の接待飲食費の点が事案当時と異なるが、下線を引いた要件を規定した箇所は変わっていない。
ここで分かるのは、「交際費、接待費、機密費その他の費用で、~のもの」となっていることから、交際費、接待費のすべてがここで規定する交際費ではないことである。
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