《速報解説》
防衛力強化に係る財源確保のための税制措置について
~令和5年度税制改正大綱~
公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎
〔追記:2022/12/26〕
税制改正大綱の閣議決定等を受け、論末に追記を行いました。
1 はじめに
令和4年12月16日、与党(自由民主党及び公明党)より令和5年度税制改正大綱が公表された。わが国が現在直面する様々困難な状況に対応すべく、多様な観点からの税制措置が新たに講じられようとしている。
本稿では、結局のところ令和6年度以降に施行が先送りとなった「防衛力強化に係る財源確保のための税制措置」についてまとめておきたい。なお文中意見にわたる部分は筆者の私見であって、所属する団体・組織等の公式見解ではない点をあらかじめ申し添える。
2 税制措置の概要
ウクライナ情勢をきっかけとして、世界規模で自国の安全保障に対する関心が高まる中、わが国の防衛力強化の必要性も高まっていることは言うまでもない。
防衛力を強化するためには、歳出・歳入両面から安定的な財源を確保することが必要であり、その財源の一部を税収によって確保することとなった。すなわち、令和9年度に向けて段階的に1兆円強の財源を確保するべく、具体的には法人税、所得税及びたばこ税についての特別措置を講ずることとされた。
ただし令和5年度からの措置ではなく、令和6年度以降の適切な時期から措置されることとなった。
3 税制措置の概要
(1) 法人税
法人税額を課税標準として、税率4%~4.5%の新たな「付加税」を課すこととされた。計算構造としては現在の地方法人税やかつての復興特別法人税と類似する。
ただし中小法人に配慮する観点から、当該「付加税」の課税標準の算定上、法人税額から500万円を控除することとされる。
(2) 所得税
所得税額を課税標準として、当分の間、税率1%の新たな「付加税」を課すこととされた。計算構造としては現在の復興特別所得税と類似する。
ただし現下の家計を取り巻く状況に配慮し、復興特別所得税の税率が1%引き下げられて1.1%となる。このため所得税、復興特別所得税及び付加税全体の負担率は、現在の水準と変わらない。
復興財源の総額を確実に確保するため、復興特別所得税については税率の引下げと合わせて課税期間を延長することとされた。延長期間は、この引下げ措置の施行タイミングに合わせて決定されることとなる。
もともと復興特別所得税は2013(平成25)年分から2037(令和19)年分までの25年間の予定で導入されているものであり、2022(令和4)年末でちょうど10年経過したところであるから、仮に令和6(2024)年から税率引下げが行われるとすれば、当初の施行期間(残り13年)に対応して13年延長することが想定される。
(3) たばこ税
1本当たり3円相当の引上げを、国産葉たばこ農家への影響に十分配慮しつつ、予見可能性を確保した上で、段階的に実施する。
* * *
— 追 記 —
上記で解説した内容は、12月16日(金)公表の「令和5年度税制改正大綱」(与党大綱)において「第一 令和5年度税制改正の基本的考え方等」への記載に留められていたところ、同月23日(金)に閣議決定された「令和5年度税制改正の大綱」では「Ⅰ 令和5年度税制改正」に続き「Ⅱ 防衛力強化に係る財源確保のための税制措置」として掲載され(P109)、大綱序文において「防衛力強化に係る財源確保のための税制措置について、Ⅱのとおり決定する。」とされた。
また同日、自由民主党ホームページにおいて「防衛力強化に係る財源確保のための税制措置Q&A」が公表されている。
(了)