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《速報解説》 令和6年度税制改正大綱(与党大綱)が公表される~定額減税の実施詳細、外形標準課税の対象範囲拡大、「中堅企業」の成長促進と賃上げ税制拡充、扶養控除等見直しは見送り、インボイス制度に係る帳簿記載事項見直し等示す~

《速報解説》 令和6年度税制改正大綱(与党大綱)が公表される ~定額減税の実施詳細、外形標準課税の対象範囲拡大、 「中堅企業」の成長促進と賃上げ税制拡充、扶養控除等見直しは見送り、 インボイス制度に係る帳簿記載事項見直し等示す~   Profession Journal編集部   12月14日(木)、自由民主党・公明党は「令和6年度税制改正大綱」(いわゆる与党大綱)を公表した。 昨年は令和5年度大綱公表直前に「防衛力強化に係る財源確保のための税制措置」が盛り込まれたことをきっかけに社会の目が従来以上に税へ向けられ、本年中もインボイス制度を含む税制の各政策に注目が集まった。また、岸田総理を増税メガネと揶揄する声や定額減税への批判も聞かれたところだ。これら情勢を踏まえると、今週12日(火)に公表されたその年の世相を表す漢字ひと文字が「税」だったことも腑に落ちよう。 このような注目集まる中、与党(自由民主党・公明党)により取りまとめられた「令和6年度税制改正大綱」は、物価高への対応及び税収増を国民に還元するとした定額減税、子育て世帯等への措置とする住宅ローン控除の見直しなどが盛り込まれている。また、企業に関する措置としては、長く議論されてきた外形標準課税の見直し(課税強化)、デフレ完全脱却のための賃上げ促進税制の拡充のほか、従業員2,000人以下の中堅企業の成長促進に向けた各施策、事業承継税制の特例措置の申請期限延長などが明記されており、全体としては現状の物価高やデフレ、少子高齢化といった社会経済問題への対応を税制の観点から手当てする改正項目が中心となっている。 また、すでに10月から開始されているインボイス制度について、実態を踏まえた帳簿の記載事項の見直しが行われるなど既存制度への手当ても見られる。 ただし、最後まで与党間の議論続いた扶養控除等人的控除の見直しについては、来年度以降の対応とされており、後述のとおり今後閣議決定される大綱での書きぶりが注目される。 以下、主な改正事項を紹介する。すでに公開を始めているが、例年のとおり重要な改正事項については年末から年始にかけて個別に速報解説を順次公開していくので、そちらを参照いただきたい。 なお、こちらの[資料リンク集]ページも今後更新を重ねていくので、ログインの上、ブックマークボタンを押すなどして確認できるようにしていただきたい。 さらに12月22日(金)及び24(日)には毎年ご好評いただいている弊社主催セミナー「60分でわかる!令和6年度税制改正大綱はこう読む」が開催されるため、ぜひお申込みの上、ご視聴されたい。   〇定額減税の実施詳細が明らかに 賃金上昇が物価高に追いついていない国民負担の緩和やデフレ脱却のための一時的な措置を理由に、岸田総理は本年10月、「定額減税」及び「住民税非課税世帯への支援」を行う方針(デフレ完全脱却のための総合経済対策)を表明し、翌月2日に閣議決定された。 令和5年度までの最近2年間の所得税・個人住民税の税収増加分を国民に還元するとした定額減税は、上記方針において「源泉徴収義務者の事務負担にも配慮し、令和6年6月から減税をスタートできるよう、令和6年度税制改正において検討し、結論を得る」とされ、その制度設計の公表が待たれるところであったが、大綱においてその内容が明らかとなった。 具体的には、納税者及び配偶者を含めた扶養親族1人につき、令和6年分の所得税3万円及び令和6年度分の個人住民税所得割の額から1万円(合計4万円)の特別控除が実施される。ただし、令和6年分の所得税に係る合計所得金額が1,805万円以下(給与収入のみの場合、給与収入2,000万円以下)である者に限る。 時期は令和6年6月以降で、実施方法は3パターン(①給与所得者に係る特別控除の額の控除、②公的年金等の受給者に係る特別控除の額の控除、③事業所得者等に係る特別控除の額の控除)に分かれている。 まず①給与所得者に対しては令和6年6月1日以後最初に支払を受ける給与等の源泉徴収税額から所得税の特別控除額(3万円)が控除され、控除しきれない場合は以後の給与等から順次控除される(令和6年分の年末調整の際に年税額から特別控除の額を控除する)。また、②年金受給者に対しても令和6年6月1日以後最初に支払を受ける公的年金等の源泉徴収税額から、①の取扱いに準じて控除される。③事業所得者については令和6年分の所得税に係る第1期分予定納税額(7月)から本人分に係る金額が控除され、控除しきれない場合は第2期分予定納税額(11月)から控除される(配偶者・扶養親族分の控除は予定納税額の減額の承認申請により行う(合わせて申請・納期限を延長))。なお、個人住民税所得割の特別控除(1万円)についても、①②は特別徴収制度、③は普通徴収制度の仕組みを通じて実施される。 これらの実施について大綱では「源泉徴収義務者・特別徴収義務者や地方公共団体が早期に準備に着手できるよう、法案の国会提出前であっても、制度の詳細についてできる限り早急に公表する」としており、年初からの情報に注意されたい。   〇人的控除見直しは次年度以降へ 大綱では後述する住宅ローン控除等、子育て世帯への優遇措置が織り込まれているものの、児童手当の拡充に伴う人的控除等の見直しについては大綱公表直前まで議論が続き、大綱冒頭の「基本的考え方」において一部記載はあるものの、令和6年度改正での対応は見送られる結果となった。 政府は6月に閣議決定した「こども未来戦略方針」で児童手当の拡充を決定しており、その対象を高校生まで広げ(現在は中学生まで)、1人あたり月1万円(第3子以降は3万円)を令和6年12月から支給することを予定している。 この児童手当の拡充に伴い、16歳から18歳までの扶養控除の縮小が検討されていたが、上記の通り「基本的考え方」の記載にとどまり、大綱本文(「具体的内容」)への記載は行われていない。 ただし見直しの方針として、現行の一般部分(国税38万円、地方税33万円)に代えて、かつて高校実質無償化に伴い廃止された特定扶養親族に対する控除の上乗せ部分(国税25万円、地方税12万円)を復元することとするなど具体的な数値まで示されており、さらに見直し時期についても「令和7年度税制改正において、これらの状況等を確認することを前提に、令和6年10月からの児童手当の支給期間の延長が満年度化した後の令和8年分以降の所得税と令和9年度分以降の個人住民税の適用について結論を得る」とするなど、今後の方針について詳細に明記されている点が特徴的だ。 また、ひとり親控除についても、ひとり親の所得制限を500万円以下から1,000万円以下に引き上げたうえで、所得税の控除額を現行の35万円から38万円に、住民税の控除額を現行の30万円から33万円とするとの記載がある(見直し時期は「令和8年分以降の所得税と令和9年度分以降の個人住民税の適用について扶養控除の見直しと合わせて結論を得る」としている)。 さらに生命保険料控除についても、所得税において、生命保険料控除における新生命保険料に係る一般枠(遺族保障)について23歳未満の扶養親族を有する場合には、現行の4万円の適用限度額に対して2万円の上乗せ措置等を講ずる(ただし一般・介護・個人年金の合計適用限度額12万円は変更しない)としており、こちらは令和7年度税制改正において検討し、結論を得るとされている。 上記3つの人的控除の見直しについて、閣議決定後の大綱にはない「基本的考え方」のみに記載されているが、令和5年度与党大綱の「基本的考え方」のみに記載のあった「防衛力強化に係る財源確保のための税制措置」が閣議決定後の大綱に盛り込まれたのと同様、今後の実現性という点で、来週にも閣議決定される大綱本文へ“昇格”するかも注目されよう。 なお、退職所得課税の見直しについては「あるべき方向性や全体像の共有を深めながら、具体的な案の検討を進めていく」として見送られている。 上述の「防衛力強化に係る財源確保のための税制措置」(所得税、法人税、たばこ税の3税目での増税措置)の施行時期について、昨年度の大綱では「令和6年以降の適切な時期」とされていたが、今回の与党大綱の「基本的考え方」において、下記のように記載されている(大綱25頁)。   〇外形標準課税の見直し及び賃上げ促進税制の拡充・延長等 一部の大企業が減資をすることで意図的に税法上の「中小企業」となっていた(実質的な大規模法人が外形標準課税の対象法人に含まれない)問題への対応については、令和5年度税制改正では外形標準課税の要件見直しについて具体的な施策は見送られ、大綱において「今後の外形標準課税の適用対象法人のあり方については、地域経済・企業経営への影響も踏まえながら引き続き慎重に検討を行う」とされていたところ、総務省による「地方法人課税に関する検討会」における具体的な議論を経て、今回の大綱において対応が明記された。 具体的には、外形標準課税の対象法人について、現行基準(資本金又は出資金(以下、「資本金」という)1億円超)は維持しつつ、減資への対応として、当該事業年度の前事業年度に外形標準課税の対象であった法人であって、当該事業年度に資本金1億円以下で、資本金と資本剰余金の合計額が10 億円を超えるものを外形標準課税の対象とすることとし、令和7年4月1日に施行し、同日以後に開始する事業年度から適用される。また、組織再編等の際に子会社の資本金を1億円以下に設定することで適用外とされていたケースに対しては、資本金と資本剰余金の合計額が50 億円を超える法人等の100%子法人等のうち、当該事業年度末日の資本金が1億円以下で、資本金と資本剰余金の合計額が2億円を超えるものが外形標準課税の対象とされ、令和8年4月1日に施行し、同日以後に開始する事業年度から適用される。 次に、政府は以前より企業による賃上げを推進しており、今年は30年ぶりの歴史的な賃上げを記録したものの、急激な物価上昇を受けその機運が高まったことから、11月2日閣議決定の「デフレ完全脱却のための総合経済対策」でも賃上げ促進税制の強化が織り込まれていた。 現行の賃上げ促進税制は、納めるべき法人税から控除する制度であるため優遇措置は黒字企業にしか効果が及ばない。日本企業の99%超を占める中小企業においては赤字企業の割合が多く、効果は一部にしか及んでいないなどの指摘がなされていた。 そこで大綱では、中小企業については、賃上げ率の要件(1.5%、2.5%)及び控除率は現行を維持しつつ、赤字の中小企業にも賃上げがインセンティブとなるよう、繰越控除措置(最大5年間の繰越しが可能)が創設される。また教育訓練費の上乗せ要件の緩和(10%増 ⇒ 5%増)、新たに創設された女性活躍子育て支援の上乗せ要件を加えることで、控除率が最大45%まで引き上げられている(現行は40%まで)。 大企業については、現在の2段階(3%、4%増)の賃上げ率の要件に加えて、さらに高い賃上げ率の要件(5%、7%増)を創設し、賃上げに積極的な企業がより優遇措置を受けられるよう見直されている。また上記と同様に教育訓練費の上乗せ要件の緩和(20%増 ⇒ 10%増)、新たに創設された女性活躍子育て支援の上乗せ要件を加えることで、控除率が最大35%まで引き上げられている(現行は30%まで)。 加えて、今回新たに「中堅企業」の定義(詳しくは後述)が創設されており、この中堅企業につき、賃上げ促進税制の新たな枠が用意されている。具体的には、現行の大企業の賃上げ要件を基に基本控除率が引き上げられ、教育訓練費及び女性活躍子育て支援の上乗せ要件を満たすことで、最大35%までの控除が可能となっている。 なお、適用期間についてはそれぞれ3年延長され、令和9年3月31日までとされた。 また、令和6年度税制改正では、2つの国内投資促進に係る税制が創設される(いずれも経済産業省からの要望)。 「戦略分野国内生産促進税制」は、中長期的な経済成長を牽引するGX分野を中心に、DXや経済安全保障等の観点を踏まえつつ、戦略的に重要な物資の国内生産等に対し、中長期的な予見可能性を示すことのできる規模・期間で、生産活動に応じ事業投資全体に対する支援を行う税制だ。 具体的な対象物資は①電気自動車等(蓄電池)、②グリーンスチール、③グリーンケミカル、④SAF(持続可能な航空燃料)、⑤半導体の5つとされ、一定の賃上げ・設備投資の要件を満たすことで、生産・販売量に比例して法人税額が控除される。 適用期限については、産業競争力強化法の改正法の施行日から令和9年3月31日までとされている。 「イノベーションボックス税制」は、研究開発税制が研究開発の不確実性のリスクを軽減し研究開発投資を促進するものである一方で、研究開発の成果として生まれたアウトプットに着目し、特許権等の知的財産から生じる所得に対して優遇する制度。 具体的には、国内で自ら研究開発した知的財産権(特許権、AI関連のプログラムの著作権(令和6年4月1日以降に取得したもの))から生じる一定の所得について、所得控除(所得控除率:30%)が可能となる。 適用期間については令和7年4月1日から令和14年3月31日までの7年間と、長期間の施行となっている。 ちなみに、既存の国内投資促進税制である研究開発税制は令和5年度改正で見直しが行われたところだが、制度の対象となる試験研究費の額から内国法人の国外事業所等を通じて行う事業に係る試験研究費の額を除外するなど今般も一部見直しが行われている。 ストックオプション税制についても令和5年度改正において、適用対象となる新株予約権に係る契約の要件のうち一定の株式会社が付与する新株予約権について行使期間を延長(10年 ⇒ 15年)するなどの見直しがされたものの、さらなる利便性向上に向け令和6年度税制改正では、概要、次の見直しが行われる。 他に大企業向けの税制としては、令和5年度改正で1年限りの時限措置として創設されたパーシャルスピンオフ税制が、一部見直しを行ったうえで令和10年3月31日まで4年延長される。 次に、従業者数・給与総額の伸び率が大企業を上回り、さらに地方に多く立地し、良質な雇用の提供者となっている企業の果たす役割が大きいことから、今回新たに「中堅企業」の定義を設け、これら中堅企業を優遇する税制措置が手当てされている。 「中堅企業」の定義としては、青色申告書を提出する法人で常時使用する従業員の数が2,000 人以下であるもの(その法人及びその法人との間にその法人による支配関係がある法人の常時使用する従業員の数の合計数が1万人を超えるものを除く)とされ、中堅企業を対象とした優遇措置として、前述した賃上げ促進税制における新たな枠の創設のほか、中小企業に対する複数回のM&A(グループ化)による経営資源の集約化を推進するため、令和3年度改正で創設された「中小企業事業再編投資損失準備金制度」について、拡充を行ったうえで適用期限を令和9年3月31日まで3年延長する。 また、大綱公表前に新聞等でも大きく報道された項目として、企業の交際費の経費上限見直しが明記された。物価高で飲食費が高騰していることを背景に、交際費等の範囲から除かれる1人当たり5,000円以下の飲食費の上限額について、現行は1人あたり5,000円以下のところ、1万円以下へ増額される(令和6年4月1日以後に支出する飲食費について適用)。また、交際費等の損金不算入制度の特例については現行のまま、令和9年3月31日まで3年延長される。 その他、少額減価償却資産の取得価額の損金算入特例及び中小企業者の欠損金等以外の欠損金の繰戻しによる還付の不適用措置、輸出事業用資産の割増償却制度、倉庫用建物等の割増償却制度、海外投資等損失準備金制度は一部見直しのうえ適用期限が令和8年3月31日まで2年延長される。   〇インボイス制度に係る帳簿記載事項の見直し及びプラットフォーム課税の導入 今年10月1日からの導入に伴い未だ一部混乱も見られるインボイス制度については、実務の負担軽減措置として、帳簿の記載事項の見直し等が明記されている。 まず、インボイス制度下で仕入税額控除を行うには、インボイス及び一定事項記載の帳簿の保存が要件とされているが、3万円未満の公共交通機関の運賃など一定の取引については、帳簿保存のみで仕入税額控除を可能とする特例が設けられている。この場合、原則として通常の帳簿への記載事項に加え、課税仕入れの相手方の住所等を記載する必要があるものの、多くのケースではこの住所等の記載が不要とされている(令和5年国税庁告示第26号)。 大綱では、上記のうち住所等の記載が必要とされる①自動販売機による取引、及び②入場券等のように使用時に証票が回収される取引(3万円未満の少額なものに限る)についても、帳簿への住所等の記載を不要とする旨が明記された。なお、令和5年10 月1日以後に行われる上記の課税仕入れに係る帳簿への住所等の記載については、運用上、記載がなくとも改めて求めないものとしている。 次に、税抜経理方式を採用する簡易課税適用者が、課税仕入れを行った場合の経理処理方法の明確化が図られる。具体的には、免税事業者等の適格請求書発行事業者以外の者からの仕入れについては、原則、仮払消費税額等は生じないが、簡易課税適用者は、適格請求書の保存が仕入税額控除の要件とされていないことも踏まえて、継続適用を要件に、支払対価の額の110分の10(108分の8)相当額を仮払消費税額等として計上できることとする等の所要の見直しが行われる。 その他、消費課税に係る改正事項としては、スマホゲームなどのアプリを制作する日本に拠点を持たない海外事業者が、日本の消費者から受け取った消費税を適切に納めていない問題等を解決するため、新たに「プラットフォーム課税」が導入される。具体的には、国外事業者がデジタルプラットフォームを介して行う電気通信利用役務の提供(事業者向け電気通信利用役務の提供に該当するものを除く)のうち、国税庁から指定を受けたプラットフォーム事業者(以下「特定プラットフォーム事業者」という)を介してその対価を収受するものについては、特定プラットフォーム事業者が行ったものとみなす制度とされ、令和7年4月1日以後に行われる電気通信利用役務の提供から適用される(一部経過措置あり)。   〇事業承継税制の申請期限延長及び住宅ローン控除の見直し等 事業承継税制の特例措置(非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予の特例制度)については、令和4年度改正において特例承継計画の提出期限を令和6年3月末まで1年間延長した際、令和4年度の与党大綱において、「令和9年12月末までの適用期限については今後とも延長を行わない」旨が明記されていたところ、コロナ禍や物価高等の急激な経営環境の変化で、事業承継の具体的な検討が遅れている影響を受け、令和5年6月16日公表の「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画 2023改訂版」においては、「事業承継税制の延長・拡充を検討する」と明記されていた。 結果として大綱では、令和9年12月31日までの適用期限については変更せず、経営者の高齢化が進む中小企業の世代交代を後押しできるよう、令和6年3月31日までとしていた承継計画の確認申請(提出)の期限が、令和8年3月31日まで2年延長される(個人版事業承継税制における個人事業承継計画の提出期限についても2年延長)。なお、今回の大綱においても改めて「令和9年12月末までの適用期限については今後とも延長を行わない」旨が明記されている。 また、資産課税関係では、本年末で期限切れとなる住宅取得等資金に係る贈与税の非課税措置については一部見直しを行ったうえで、住宅取得等資金に係る相続時精算課税制度の特例措置については現行制度のまま、それぞれ令和8年12月31日まで3年延長される。 住宅ローン控除については令和4年度改正で控除率や控除期間の見直し、ZEH水準省エネ住宅等の特例が手当てされ、一定の場合を除いて令和6年から省エネ基準を満たさない一般住宅の新築等については適用対象外とされ、各ケースの借入限度額についても縮小が予定されている。 大綱では、上記改正は見直さず、子育て支援の観点から、個人で、①年齢40歳未満であって配偶者を有する者、②年齢40歳以上であって年齢40歳未満の配偶者を有する者又は③年齢19歳未満の扶養親族を有する者が、認定住宅等の新築若しくは認定住宅等で建築後使用されたことのないものの取得又は買取再販認定住宅等の取得をして令和6年1月1日から同年12月31日までの間に居住の用に供した場合の住宅借入金等の年末残高の限度額(借入限度額)については、令和5年までの基準(認定住宅:5,000万円、ZEH水準省エネ住宅:4,500万円、省エネ基準適合住宅:4,000万円)が維持される。 さらに、既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の所得税額の特別控除について、上記①~③の対象者が行う育児負担の軽減等につながる一定の改修工事(子どもの事故防止や防犯性、防音性を高めるもの等)を適用対象に追加し(令和6年4月1日~同年12月31日入居分に限る)、適用期限が令和7年12 月31日まで2年延長される。 その他に年末で期限切れとなる下記特例措置は、それぞれ適用期限が令和7年12月31日まで2年延長される(②・⑤は一部見直しあり)。 さらに認定住宅等の新築等をした場合の所得税額の特別控除については、適用対象者の合計所得金額要件を2,000万円以下(現行:3,000万円以下)に引き下げたうえ、その適用期限が令和7年12月31日まで2年延長される。 最後に土地・住宅関連の登録免許税及び印紙税の特例措置として、下記が令和9年3月31日までそれぞれ3年延長されている。   〇納税環境整備関係 現行では、仮装・隠蔽による申告に対しては35%(又は40%)の重加算税を賦課することとされているものの、申告後に仮装・隠蔽したところに基づき「更正請求書」を提出した場合には重加算税を賦課することができない(過少申告加算税(原則15%)又は無申告加算税(原則20%)が賦課される)制度となっている。仮装・隠蔽行為が行われた場合のペナルティの水準が異なるのは納税義務違反の発生の防止という重加算税の趣旨に照らして適切ではないことから、大綱では、仮装・隠蔽したところに基づき「更正請求書」を提出した場合も重加算税の賦課対象に加えることが明記された(令和7年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用)。 次に、法定調書のe-Tax等による提出義務基準について、現行では法定調書の種類ごとに、基準年(前々年)の提出枚数が「100枚以上」である法定調書についてe-Tax若しくはクラウド等又は光ディスク等による提出が義務付けられているが、この提出枚数の基準を「100枚以上」から「30枚以上」に引き下げることとされる(令和9年1月1日以後に提出すべき調書について適用)。 また、法人の代表者等が不正申告を行い、法人の財産を散逸させて納税義務を免れる事例等が把握されていることを踏まえ、不正申告を行った法人の代表者等に対する徴収手続(第二次納税義務を負う)が整備される(令和7年1月1日以後に滞納となった一定の国税について適用)。 (了)

#Profession Journal 編集部
2023/12/15

《速報解説》 更正の請求による仮装隠蔽行為の重加算税賦課・消費税受還付犯の適用~令和6年度税制改正大綱~

 《速報解説》 更正の請求による仮装隠蔽行為の重加算税賦課・消費税受還付犯の適用 ~令和6年度税制改正大綱~   公認会計士・税理士 大橋 誠一   令和5年12月14日に決定された令和6年度税制改正大綱(与党大綱)においては、納税環境整備の適正化の一環として、 が盛り込まれた。 本稿においては、上記税制改正大綱の記載内容等を前提に、予定されている改正の概要について解説する。   1 更正の請求による仮装隠蔽行為の重加算税賦課 (1) 問題提起 国税通則法第68条第1項は、重加算税の課税要件として、「納税者がその国税の課税標準等又は税額等の計算の基礎となるべき事実の全部又は一部を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき納税申告書を提出していたとき」と規定している。 ここでいう納税申告書とは、国税通則法第2条第6号において「申告納税方式による国税に関し国税に関する法律の規定により次(略)に掲げるいずれかの事項その他当該事項に関し必要な事項を記載した申告書」をいう旨規定しており、同法第23条第3項に規定する「更正請求書」はこれに該当しない。 そのため、従前は、納税者が事実を隠蔽し、又は仮装し、その隠蔽し、又は仮装したところに基づき更正請求書を提出していたときには、重加算税を賦課することができなかった。 しかし、税額を確定させるための手続である納税申告書の提出と税額を減少させるための手続である更正請求書の提出の違いは、少なくとも仮装隠蔽行為をした場合におけるペナルティの水準として取扱いに差を設ける必要はなく、むしろ、更正の請求について重加算税が賦課されないことは、納税義務違反の発生の防止という同税目の趣旨に照らして適切ではなく、納税申告書の提出と同様に同税目の賦課の対象とすることが必要であるという議論が政府与党の税制調査会において議論されていた。 (2) 大綱案 国税と地方税の双方において、重加算税(重加算金)の適用対象に、「隠蔽し、又は仮装された事実に基づき更正請求書を提出していた場合」を加えることとされた。 (3) 適用時期 上記(2)の改正は、令和7年1月1日以後に法定申告期限等が到来する国税について適用され、同日前に法定申告期限が到来した国税については従前どおりである。 したがって、例えば、通常、所得税については令和6年分から、法人税については10月決算法人の場合には令和6年10月決算期分から、それぞれ適用される場面が生じ得る。   2 更正の請求による消費税受還付犯の適用 (1) 従前の規定 消費税法第64条第1項第2号は、「偽りその他不正の行為により第52条第1項又は第53条第1項若しくは第2項の規定による還付を受けた者」を10年以下の懲役若しくは1,000万円以下の罰金に処する旨を規定するとともに、同条第2項は、この未遂、すなわち、還付を受けずとも申告書を提出した段階において罰する旨をそれぞれ規定している。 消費税法制定時は「5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金」であったところ、平成22年6月1日以後の違反行為から現行の量刑となり、また、平成23年8月30日以後の違反行為から未遂罪が追加された。 ここでいう「偽りその他不正の行為」は、国税通則法、所得税法及び法人税法において用いられているそれと同義であるとされている。 なお、従来の懲役と禁錮を一本化して「拘禁刑」を創設する改正刑法は令和7年6月1日に施行される予定である。 (2) 問題提起 消費税法第52条第1項及び同法第53条第1項は、それぞれ「申告書の提出があった場合において」と規定しており、国税通則法第23条第3項に規定する更正請求書の提出はこれに該当しない。 そのため、従前は、納税者が偽りその他不正の行為に基づき更正請求書を提出していたときには、罰則を科すことができなかった。 しかし、税額を確定させるための手続である申告書の提出と税額を減少させるための手続である更正請求書の提出の違いは、少なくとも偽りその他不正の行為をした場合におけるペナルティの水準として取扱いに差を設ける必要はなく、むしろ、更正の請求において罰則が科されないことは、社会秩序を維持して犯罪を抑止するという刑事罰の趣旨に照らして適切ではなく、納税申告書と同様に罰則の対象とすることが必要であるという議論が政府与党の税制調査会において議論されていた。 (3) 大綱案 国税と地方税の双方において、消費税(地方消費税)の不正受還付犯(未遂犯を含む)の対象に、「偽りその他不正の行為による更正の請求に基づく還付」を加えることとされた。 (4) 適用時期 上記(3)の改正は、法律の公布の日から起算して10日を経過した日以後にした違反行為について適用され、同日前にした違反行為については従前どおりである。 なお、国民に不利益を与える法律、特に刑罰を科する法律などは、原則として、即日施行にしないようにし、周知等のために必要な日数を確保しているところ、罰則を早期に実効ならしめる趣旨から、その日数は最低限度の10日間と設定されたものと考えられる。 (了)

#大橋 誠一
2023/12/15

プロフェッションジャーナル No.548が公開されました!~今週のお薦め記事~

2023年12月14日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.548を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2023/12/14

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第126回】「消費税法判例解析講座(その3)」

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第126回】 「消費税法判例解析講座(その3)」   中央大学法科大学院教授・法学博士 酒井 克彦   ニ 消費税法30条8項にいう「帳簿等」 帳簿の法定記載要件を充足しない限り消費税法上の「帳簿」とはいわないのであろうか。この点について、裁判所はどのように解しているのであろうか。 例えば、医薬品の現金卸売業者が帳簿に記載した仕入取引の相手方の氏名又は名称等が真実の仕入先顧客の氏名又は名称等でないことから、仕入税額控除が認められないとしてした消費税の更正処分が適法とされた事例として、東京地裁平成9年8月28日判決(行集48巻7=8号600頁)がある。 東京地裁はこのように示した上で、次のように、帳簿等の保存を仕入税額控除の適用要件と捉え、かかる帳簿等の保存が、課税仕入れに係る消費税額の調査、確認を行うための資料であるとしている。 上記のとおり、東京地裁は、消費税法30条8項に規定する帳簿等の要件とは、単なる記帳義務の内容を規定しているにとどまるものでは決してなく、法定帳簿の記載事項がそもそも仕入税額控除の要件であるとまで述べているのである。 ここまで、そもそも消費税法30条7項が仕入税額控除の適用要件であるか否かについて詳述してこなかったが、結論から述べれば、私見としては、消費税法30条7項は仕入税額控除の適用要件ではないというべきであると考えている。 少なくとも、上記東京地裁判決は、消費税法30条8項が規定しているのは、仕入税額控除の適用要件として同法において求められる帳簿等を規定したものであって、法定記載事項が記載されていないものは、仕入税額控除の適用要件としての「帳簿等」とはいわないと解されているということである。 ホ 一般的記帳義務の内容を規定する手続要件かそれとも仕入税額控除の適用要件か さて、この事件は納税者Xの側から控訴され、控訴審東京高裁平成10年9月30日判決(税資238号450頁)は次のように述べている。 また、次のようにも説示している。 Xは、消費税法30条8項は一般的記帳義務における帳簿等の記載事項を規定したものにすぎないし、かかる意味においては単なる手続規定であると主張したものの、同項は仕入税額控除の要件の一部を構成するという立場からかかる主張を否定している。 なお、この事件は上告されたが、上告審最高裁平成11年2月5日第二小法廷決定(税資240号627頁)において棄却されている。 ヘ 消費税法30条7項は仕入税額控除の適用要件か Xは消費税法30条7項について、仕入税額控除の適用要件を規定したものではない旨主張しているが、判決は上記のとおりかかる主張を否定している。その流れで、同条8項が同条7項の次の条項として位置付けられていることからしても、同項は単なる一般的記帳義務の内容を規定したものではないということで判示されている。 すなわち、消費税法30条7項の法的性格が同条8項の意味内容をも画することになっている。では、そもそも、消費税法30条7項は仕入税額控除の適用要件なのであろうか。 繰返しになるが、私見としては、消費税法30条7項は仕入税額控除の適用要件ではなく、仕入税額控除の否認要件ではないかと考える。なぜなら、消費税法30条7項は「帳簿等」の保存がある場合に仕入税額控除を適用するという規定ではなく、「帳簿等」の保存がない場合に仕入税額控除の適用がないとする規定であるからである。 すなわち、同条の法律効果は「仕入税額控除の適用がない」というものであって、かかる効果の発現は、帳簿等の保存がない場合だと規定されているからである。 消費税法30条7項を再掲しよう。 消費税法30条7項は次のように規定されているのではない。 消費税法30条7項は次のように規定されている。 このように考えると、そもそも「同条7項は、同条1項による仕入税額控除の適用要件として、当該課税期間の課税仕入れに係る帳簿等を保存することを要求している。」とする上記東京地裁は文理に反する説示であるといわざるを得ないのである。 そして、そのことを前提として、消費税法30条8項を論じているのであるから、前提たる同条7項の理解に疑問がある以上、同条8項の位置付けにも大いに疑問の残るところである。 (続く)

#No. 548(掲載号)
#酒井 克彦
2023/12/14

谷口教授と学ぶ「国税通則法の構造と手続」 【第21回】「国税通則法56条(~59条)」-国税の還付の意義と手続-

谷口教授と学ぶ 国税通則法の構造と手続 【第21回】 「国税通則法56条(~59条)」 -国税の還付の意義と手続-   大阪学院大学法学部教授 谷口 勢津夫   国税通則法56条(還付)   1 「還付」と「還付金等」の意義 国税通則法第5章(56条以下)は、同法第3章の「国税の納付及び徴収」に関する規定に従って納付又は徴収された国税について、その還付の手続及びこれに関連する事項(充当、還付加算金及び国税の予納額の還付の特例)を定めている。還付という語は、一般に、下記のような意味で用いられるが(新村出編『広辞苑〔第7版〕』(岩波書店・2018年)676頁)、ここでは、下記の②の意味に準じて、国税の納税義務(税通15条1項括弧書参照)の履行として国庫に一旦納付された金員を税務署長等が当該納税者に返すことを意味するものと解される。 還付に関する法律関係も、納税義務を中心に構成される租税債権債務関係と並んで実体的な租税法律関係に属するが、租税債権債務関係との関係についていえば、還付に関する法律関係は、租税債権債務関係が存在することを前提とする納付があった場合に、その前提が崩れたことに基因して派生する法律関係であるといえよう。この意味で、租税債権債務関係は本来的租税法律関係、還付に関する法律関係は派生的租税法律関係ということができよう(拙著『税法基本講義〔第7版〕』(弘文堂・2021年)【117】参照)。 したがって、還付に関する法律関係も、租税債権債務関係と同じく、租税実体法としての個別税法によって規律されることになる。還付をこのように「実体的側面」からながめると、還付は次のとおり「逆流」と表現されることになる(中川一郎=清永敬次編『コンメンタール国税通則法』(税法研究所・加除式[1989年追録第5号加除済])H1-H2頁[須貝脩一・竹下重人執筆])。 つまり、還付の実体的意義は、「この両者[=還付金及び国税に係る過誤納金]に通ずる上級包括概念は、還付請求権ということである。その還付請求権が生ずる原因は、納税義務なき納付、ということである。」(中川=清永編・前掲書H5頁[須貝・竹下執筆])と説かれるように、還付請求権を基礎にしてその観点から明らかにする必要がある。還付請求権は、派生的租税法律関係の構成要素である以上、租税実体法と切り離して観念することができない実体的権利である。 しかし、国税通則法が還付について定めるのは、「納付、徴収の後始末としての、還付手続だけである」(中川=清永編・前掲書H2頁[須貝・竹下執筆])と説かれるように、租税債権債務関係に基づく「国税の納付及び徴収」(第3章)に係る金員の返還の手続だけである。「還付金等とは何であるかは、この法律[=国税通則法]の意に介するところではない。それは、国税に関する法律の定めるところによる、のである」(中川=清永編・前掲書H4頁[須貝・竹下執筆])から、国税通則法56条1項が定める「還付金等」すなわち「還付金又は国税に係る過誤納金」を定義しようとすると、それは、結局のところ、「大略の定義」(同)にとどまることにならざるを得ない。 このことを予めお断りした上で還付金等の意義について「大略の定義」の代表例と思われるものをみておくと、それは、「還付金は、法律上本来的にその発生が予定されているものである」(武田昌輔監修『DHCコンメンタール国税通則法』(第一法規・加除式)3055頁)、「過誤納金とは、国税として不適法な納付があつたことによる国の不当利得の返還金であり、その性格は、租税法律関係に基づいて発生するものであるという点を除けば、私法上の不当利得と異ならない」(同3064頁)というようなものであろう。これによれば、還付金等に係る還付請求権の実体的内容は専ら個別税法や私法に委ねられているのである。 筆者は還付金等を次のように定義しているが(前掲拙著【115】参照)、これも「大略の定義」の域を出るものではない。すなわち、まず、還付金とは、当該租税の納付それ自体は適法に行われたが、その納付に係る税額が、後に個別税法所定の税額計算規定の適用により、結果として過大になった場合に、返還されるべき税額に相当する金額をいう。次に、過誤納金のうち過納金とは、誤った申告や課税処分に基づく納付をした場合の過大納付分のように、納税義務の誤った確定に基づく納付であるが故に、当該租税の納付それ自体が不適法なものであった場合に、返還されるべき税額に相当する金額をいい、誤納金とは、当該租税の納付それ自体が不適法なものであった場合に返還されるべき税額に相当する金額のうち、過納金とは異なり、納税義務の誤った確定に基づいて生ずるものでないものをいう。 なお、還付金と過誤納金とは、一応は以上のように区別できるとしても、「例えば、取得税の予定納税額がその年分の確定した税額(いわゆる年税額)を超える場合のその超える額は予定納税額の還付金とされる(所得税法139条)が、給与等に係る源泉徴収税額が年末調整の結果年税額を超える場合にはその超える額は過誤納額として還付される(所得税法191条)ことに見られるように、必ずしも、還付金と過誤納金の法的性格上の区別は、明確に峻別されるものでもない。」(武田監修・前掲書3055頁)   2 「還付金等があるとき」の意義 還付の手続について、国税通則法56条1項は、税務官庁(還付事務の所轄庁)は①「還付金等があるときは」、②「遅滞なく」、③「金銭で」還付しなければならない、と定めている。 まず、①「還付金等があるとき」という要件については、還付金等の存在が税務官庁において具体的に認識されたとき、を意味するものと解される(前掲拙著【117】参照)。この要件は、還付手続の始期を定めるものにすぎず、還付請求権の発生時期(租税実体法上の発生時期)を定めるものでないことは明らかである。 ただ、「還付金の請求権についていえば、これを納税義務の成立と確定の概念に対比して、抽象的な還付請求権の成立と具体的な還付請求権の確定という認識が可能である。」(武田監修・前掲書3084頁)という考え方もある。このような考え方によれば、前記①の要件について前記のような解釈を示しつつ「還付金等があるとき」を「納付すべき税額の『確定』に類似する概念」として把握する見解(志場喜徳郎ほか共編『国税通則法精解〔令和4年改訂・17版〕』(大蔵財務協会・2022年)658頁)も成り立ち得るであろう。 このような見解を更に展開すれば、前記①の要件に関する前記の解釈にいう税務官庁による還付金等の存在の具体的認識に「判断的要素」を付加し、もって「還付金等があるとき」の中に、課税処分における税務官庁の判断と同様又は類似の判断に基づく行為を読み込む解釈論を構想することができるであろう。次の見解(ⓐ清永敬次『税法〔新装版〕』(ミネルヴァ書房・2013年)216-217頁、ⓑ同218頁。下線筆者)はそのような解釈論に基づくものと解される。 前記①の「還付金等があるとき」という要件について前記のような解釈論が構想されるのは、上記の見解が説くところからも窺われるように、その要件と前記②の「遅滞なく」という要件との関係をどのように考えるべきかという問題意識に基づくものと考えられる。そのような問題意識は筆者も共有するところであるが(前掲拙著【117】参照)、この点については次の3で述べることにする。   3 「遅滞なく」と「慎重に」との両立の要請 前記②の「遅滞なく」という要件については、「遅滞なくとは、直ちにと異なり、正当な理由又は合理的な理由に基づく遅滞まで否定するものではない。したがって、これをいい替えれば事情の許す限りもっとも速やかに還付しなければならないということである。」(志場ほか共編・前掲書663頁)と解説されているが、この解説では租税徴収の確保の観点が重視されているように思われる。別の論者が説くところであるが、上記解説を参照しながら、「この規定にいう『遅滞なく』については、徴収の実務では、事情の許す限り速やかにということで、正当又は合理的な理由がある場合には、それらの理由が解消されるまでの遅滞は許容されるものと解されている。」(品川芳宣『国税通則法の理論と実務』(ぎょうせい・2017年)218頁)と説く見解がみられる。 そうすると、上記の2つの引用文における「正当[な理由]又は合理的な理由」は、還付実務に関する次のような実態認識(品川芳宣『国税通則法講義-国税手続・争訟の法理と実務問題を解説-』(日本租税研究協会・2015年)136頁)に基づくものであると解される。 このような実態認識からは、還付の手続について「遅滞なく」還付することとその判断を「慎重に」することとを両立させようとする姿勢が窺われるが、それは租税徴収の確保の観点を重視する考え方に基づくものであるように思われる。このことは、国税通則法56条の規定が同法制定前の国税徴収法161条の規定を引き継いだものである(ただし、この規定は過誤納金の還付手続のみを定めていた)という沿革からして自然なことであるかもしれない(中川=清永編・前掲書H3頁[須貝・竹下執筆]も参照)。 もっとも、還付手続に関する「遅滞なく」と「慎重に」との両立は、租税徴収の確保の観点からだけでなく、納税者に対する不当な延滞税負担の回避の観点からも、要請されると考えるべきであろう(前掲拙著【117】参照)。というのも、誤って過大な金額が還付された場合、その後にその誤りが発見され修正申告又は課税処分がされたときは、納税者は当該過大な金額のうち納付すべき税額に相当する部分に加えて、還付が適正にされていれば負担する必要がなかった延滞税をも納付しなければならなくなるからである。このような事態の発生は、東京地判平成12年8月28日判タ1063号124頁の下記の判示に鑑みると、強ち杞憂とはいえないであろう(谷口教授と学ぶ「税法の基礎理論」第17回も参照)。延滞税不発生時件・最判平成26年12月12日訟月61巻5号1073頁の事案や判断内容(同第16回、谷口教授と学ぶ「税法基本判例」第30回参照)に鑑みれば、尚更である。 還付をめぐる以上のような問題状況からすると、昭和40年度税制改正による還付請求制度の廃止は必ずしも妥当ではなかったように思われる。還付は、同改正前は、「受給権者[=還付請求権者]の確認その他の還付事務処理手続の適確化を図るため、還付の請求を前提要件として」(国税庁編『改正税法のすべて』(日本税務協会・1965年)233頁[福田光一執筆]。下線筆者)されていたが(同改正前の税通56条・同令21条)、同改正によって「その手続の簡素化」(国税庁編・前掲書234頁)のために、還付請求制度が原則として廃止された。 この改正理由にいう「還付手続の簡素化」は、「還付請求権者の側の手続の簡便化と税務官庁の側の支払事務の簡素化」(武田監修・前掲書3053頁)の両方の意味を含むものと解されるが、それによって「国税に関する法律関係を明確にする」(税通1条)という目的が更に曖昧になったように思われる。そもそも、国税通則法56条1項については、「この条[1項]のような規定のしかたによつて、法律関係を明確に(1条参照)したといえるか、どうか」(中川=清永編・前掲書H31頁[須貝・竹下執筆])を問題とすべきであるが、「還付手続の簡素化」によって、その条項の問題性が顕在化したように思われるのである。 要するに、国税手続の中核を担う申告納税制度においては、納税義務の確定及び履行の手続については規定が整備されているが、還付の手続については規定が整備されているとはいい難い。比喩的にいえば、申告納税制度の「前庭・主庭」は「掃き清められている」が、その「裏庭」はそうとはいい難いのである(拙著『税法創造論』(清文社・2022年)1063頁[初出・2016年]参照)。 (了)

#No. 548(掲載号)
#谷口 勢津夫
2023/12/14

〔疑問点を紐解く〕インボイス制度Q&A 【第33回】「適格請求書発行事業者ではない事業者が交付した書類を適格請求書と誤認して仕入税額控除を受けた場合」

〔疑問点を紐解く〕 インボイス制度Q&A 【第33回】 「適格請求書発行事業者ではない事業者が交付した書類を 適格請求書と誤認して仕入税額控除を受けた場合」   税理士 石川 幸恵   【Q】 もし、外注先が適格請求書発行事業者であると偽って適格請求書に似せた書類を当社に交付し、当社が誤認して仕入税額控除を受けてしまった場合、当社の仕入税額控除は否認されるのでしょうか。 〔ポイント〕 (1) 適格請求書と誤認するような書類に基づいて仕入税額控除を受けた場合でも、直ちに仕入税額控除が否認されるわけではありません。 (2) 適格請求書と誤認されるおそれのある書類や偽りの記載のある書類等の交付には罰則があります。 *  *  * 【A】 令和5年11月13日更新の「多く寄せられるご質問」問②注書きによれば、適格請求書や適格簡易請求書と誤認されるような書類や電子データを受領することは災害その他やむを得ない事情に相当するような事情と取り扱われるようです。このような事情により適格請求書の保存をすることができなかったことを証明した場合には、帳簿や請求書等の保存がなくとも仕入税額控除の適用を受けることが可能と示されています。 上記の【Q】とは状況が異なりますが、外注先から交付を受けた適格請求書に問題がなかったとしても、外注先が消費税を滞納した場合等にどうなるのかも気になるところです。この場合においても、貴社の仕入税額控除が否認されるような規定はありません。   (1) 買手=適格請求書の交付を受ける側の注意点 適格請求書と誤認した書類に基づいて仕入税額控除を行ってしまった場合でも否認されないことは上記に記載したとおりですが、消費税法基本通達8-1-4記載の以下の点に注意してください。 消費税法基本通達8-1-4(災害その他やむを得ない事情の範囲)(一部抜粋) (下線・太字筆者) 適格請求書と誤認して仕入税額控除を受けた場合は、貴社の責めに帰することができない状況に該当すると考えられます。 ◆証明方法 適格請求書の保存をすることができなかったことの具体的な証明方法は示されていませんが、少なくとも、適格請求書と誤認した書類を保存し、その書類に記載された登録番号を国税庁適格請求書発行事業者公表サイトで検索して有効であることを確認した記録が残されている方が良いと考えられます。   (2) 売手=適格請求書等を交付する側の注意点 適格請求書の交付にあたっては禁止事項と罰則が設けられています。誤った書類を交付することのないよう注意が必要です。 ◆適格請求書と誤認されるおそれのある書類や偽りの記載のある書類等の交付の禁止 適格請求書の交付に関し、次の行為は禁止されており(消法57の5)、違反したときは1年以下の懲役又は50万円以下の罰金という罰則(消法65)も設けられています。   (了)

#No. 548(掲載号)
#石川 幸恵
2023/12/14

さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第93回】「消費税国家賠償請求事件」~東京地判平成2年3月26日(判例タイムズ722号222頁)~

さっと読める! 実務必須の [重要税務判例] 【第93回】 「消費税国家賠償請求事件」 ~東京地判平成2年3月26日(判例タイムズ722号222頁)~   弁護士 菊田 雅裕   (了)

#No. 548(掲載号)
#菊田 雅裕
2023/12/14

〈徹底分析〉租税回避事案の最新傾向 【第15回】「法人税法132条の2」

〈徹底分析〉 租税回避事案の最新傾向 【第15回】 「法人税法132条の2」   公認会計士 佐藤 信祐     17 判例分析(法人税法132条の2) (1) 最一小判平成28年2月29日(TAINSコード:Z266-12813・ヤフー事件) 新聞報道で有名であるため、その概要を知っている読者も少なくないと思われるが、法人税法132条の2に規定されている包括的租税回避防止規定について争われた最初の裁判例である。本事件は、ヤフー事件ともいわれており、同時に行われたスキームに係るIDCF事件(最二小判平成28年2月29日TAINSコード:Z266-12814)と同様に、制度濫用論に基づく最高裁判決が公表されたことで、その後の包括的租税回避防止規定に係る実務に大きな影響を与えている。 最高裁は、「組織再編成は、その形態や方法が複雑かつ多様であるため、これを利用する巧妙な租税回避行為が行われやすく、租税回避の手段として濫用されるおそれがあることから、法132条の2は、税負担の公平を維持するため、組織再編成において法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められる行為又は計算が行われた場合に、それを正常な行為又は計算に引き直して法人税の更正又は決定を行う権限を税務署長に認めたものと解され、組織再編成に係る租税回避を包括的に防止する規定として設けられたものである。このような同条の趣旨及び目的からすれば、同条にいう『法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの』とは、法人の行為又は計算が組織再編成に関する税制(以下「組織再編税制」という。)に係る各規定を租税回避の手段として濫用することにより法人税の負担を減少させるものであることをいうと解すべきであり、その濫用の有無の判断に当たっては、①当該法人の行為又は計算が、通常は想定されない組織再編成の手順や方法に基づいたり、実態とは乖離した形式を作出したりするなど、不自然なものであるかどうか、②税負担の減少以外にそのような行為又は計算を行うことの合理的な理由となる事業目的その他の事由が存在するかどうか等の事情を考慮した上で、当該行為又は計算が、組織再編成を利用して税負担を減少させることを意図したものであって、組織再編税制に係る各規定の本来の趣旨及び目的から逸脱する態様でその適用を受けるもの又は免れるものと認められるか否かという観点から判断するのが相当である。」と判示した。 さらに、調査官解説では、「制度濫用基準の考え方を基礎としつつも、その実質において、経済合理性基準に係る上記の通説的見解の考え方を取り込んだものと評価することができるように思われる。」(※51)「本判決は、上記①及び②等の事情を『……考慮した上で・・』としている。このような言い回しは、濫用の有無の判断に当たっては、上記①及び②等の事情を必ず考慮すべきであるという趣旨が含意されているものと考えられ、さらにその趣旨を推し進めると、①行為・計算の不自然性と、②そのような行為・計算を行うことの合理的な理由となる事業目的等の不存在は、単なる考慮事情にとどまるものではなく、実質的には、法132条の2の不当性要件該当性を肯定するために必要な要素であるとみることができるのではなかろうか(例えば、行為・計算の不自然性が全く認められない場合や、そのような行為・計算を行うことの合理的な理由となる事業目的等が十分に存在すると認められる場合には、他の事情を考慮するまでもなく、不当性要件に該当すると判断することは困難であると考えられる)。」(※52)と指摘されている。 (※51) 徳地淳ほか「判解」法曹時報69巻5号297頁(平成29年)。 (※52) 徳地ほか前掲(※51)299頁。 そのため、実務上は、以下の点を考慮しながら、包括的租税回避防止規定が適用されるかどうかを判断すべきであると考えられる(※53)。 (※53) TPR事件に係る東京国税不服審判所裁決平成28年7月7日TAINSコード:F0-2-672における原処分庁の主張では、①本件一連の行為が不自然なものであることについて、②税負担の減少以外に本件一連の行為を行うことの合理的な理由となる事業目的その他の事情が存在しないことについて、③本件一連の行為が、組織再編成を利用して税負担を減少させることを意図したものであることについて、④本件合併により請求人が■■■■■の未処理欠損金額を引き継ぐことは、法人税法第57条第2項の本来の趣旨及び目的から逸脱する態様でその適用を受けるものであることについて、それぞれ主張されている。これを要約すれば、①不自然、不合理な行為の有無、②十分な事業目的の有無、③税負担の減少の意図、④制度趣旨及び目的からの逸脱となり、上記(ⅰ)~(ⅳ)を総合的に勘案して、包括的租税回避防止規定の検討を行っていることがわかる。 しかしながら、同調査官解説では、「行為・計算の不自然さ(異常性・変則性)の程度との比較や税負担の減少目的と事業目的の主従関係等に鑑み、行為・計算の合理性を説明するに足りる程度の事業目的等が存在するかどうかという点を考慮する上記…の考え方を採用する旨を明らかにするものと考えられよう」(※54)とも指摘されている。 (※54) 徳地ほか前掲(※51)298頁。 すなわち、事業目的があればよいというわけではなく、事業目的が税負担の減少目的に比べて同等以上であると認められるかどうかにより、包括的租税回避防止規定が適用されるかどうかが判断されることになる。 なお、同調査官解説では、「制度の濫用と評価するためには行為者に一定の主観的要素が必要であるとの常識的な考え方を基礎として、租税回避の意図を要求したものと考えられる。」としているが、「客観的な事情から租税回避の意図があると認められれば足りる」ともしている(※55)。そのため、「担当者の供述や電子メールなどといったこれを直接立証し得る証拠が必要となるわけではない」とも指摘されているが(※56)、後述するTPR事件では、税負担を減少させる意図があったという証拠のひとつとして、電子メールが挙げられている。 (※55) 徳地ほか前掲(※51)301頁。 (※56) 徳地ほか前掲(※51)301頁。 ヤフー事件は、特定役員引継要件を満たすために、支配関係発生日の2ヶ月前に特定役員を送り込むというわかりやすい事案であったため、電子メールを証拠として挙げられなかったとしても、似たような結論になったと思われる。TPR事件も同様であると思われるが、税務調査では、税負担減少の意図を探るために、電子メールの閲覧や関係者への質問が行われやすく、税負担減少の意図を否定することは困難である。さらに、事業目的と税負担の減少目的のいずれが主目的なのかという点についても、強い事業目的を示す明確な証拠がある場合を除き、水掛け論に陥りやすい。そのため、租税回避として認定されないためには、制度趣旨に反していないかどうか、事業目的が主目的であるという強い証拠があるかどうかについて、慎重な検討が必要になると考えられる。 (2) 東京高判令和元年12月11日(TAINSコード:Z269-13354・TPR事件) ヤフー事件の後に、適格合併による繰越欠損金の引継ぎに対して否認された事件として、TPR事件が公表された。なお、本事件は、平成22年3月1日に行われた適格合併による繰越欠損金の引継ぎについての事件であることから、本事件で争われているのが、平成22年改正前法人税法に係る事件であるという点にご留意されたい。すなわち、東京地裁及び東京高裁の判旨が、平成22年度税制改正と整合しないことから、現行法に当てはめたときに、本事件の射程がどこまで及ぶのかという点が問題になる。 東京地裁(東京地判令和元年6月27日TAINSコード:Z269-13285)では、「組織再編成税制は、完全支配関係がある法人間の合併についても、他の2類型の合併と同様、合併による事業の移転及び合併後の事業の継続を想定しているものと解される。」「法人税法57条2項についても、合併による事業の移転及び合併後の事業の継続を想定して、被合併法人の有する未処理欠損金額の合併法人への引継ぎという租税法上の効果を認めたものと解される。」としたうえで、繰越欠損金の引継ぎに対する包括的租税回避防止規定の適用を認めた。そして、東京高裁においても、同様の判断が行われている。 ここで問題となるのは、完全支配関係内の組織再編成において、事業の移転及び事業の継続がない場合には、包括的租税回避防止規定の適用があり得ると判示した点である。しかしながら、平成22年度税制改正では、グループ法人税制が導入されることにより、①残余財産の確定による繰越欠損金の引継ぎ(法法57②)、②適格現物分配(法法2十二の十五、62の5)、③事業を移転しない適格分割若しくは適格現物出資又は適格現物分配に対する繰越欠損金の使用制限、特定保有資産譲渡等損失額の損金不算入の特例計算(法令113⑤~⑦、123の9⑩~⑫)、④譲渡損益の繰延べ(法法61の11)がそれぞれ導入されており、組織再編税制及びグループ法人税制が事業の移転及び事業の継続を前提としていないことがわかる。 そして、東京国税不服審判所裁決令和2年11月2日TAINSコード:F0-2-1034(PGM事件)では、TPR事件の判示を採用したものの、大阪国税不服審判所裁決令和4年8月19日判例集未登載では、TPR事件の判示を採用せずに、「例えば、適格合併が企業グループ内の法人の有する未処理欠損金額の企業グループ内の他の法人への付替えと同視できるものであるなど適格合併の場合に未処理欠損金額の引継ぎを認めることとした前提を欠くような場合にまで、未処理欠損金額の引継ぎを認めることを想定した規定ではない」と判示した。このことから、完全支配関係内の組織再編成であっても事業の移転及び事業の継続が伴わない場合に包括的租税回避防止規定が適用されるかどうかについては、両事件の地裁判決及び高裁判決を待つ必要があるということになる。 (3) 小括 このように、ヤフー事件では、①税負担の減少の意図、②制度趣旨及び目的からの逸脱、③不自然、不合理な行為の有無、④十分な事業目的の有無により、包括的租税回避防止規定の適用可能性が検討されることが明らかにされた。 しかしながら、その前提となる制度趣旨については一部不明瞭な点もあり、完全支配関係内の組織再編成であっても事業の移転及び事業の継続が伴わない場合に包括的租税回避防止規定が適用される可能性があるという判示により、一般的な手法であるはずの組織再編成についても、租税回避であると疑われるのではないかという疑念が生じ、組織再編成を進めようとする企業行動の弊害になっている。この点については、上記2事件の地裁判決及び高裁判決で是正されることが期待される。 【第13回】~【第15回】までは、最近の租税回避に係る重要な裁判例を紹介した。次回以降では、それらを踏まえた上で、実務上の留意事項について解説を行う予定である。 (了)

#No. 548(掲載号)
#佐藤 信祐
2023/12/14

事例でわかる[事業承継対策]解決へのヒント 【第60回】「提携先企業の事業承継」

事例でわかる[事業承継対策] 解決へのヒント 【第60回】 「提携先企業の事業承継」   太陽グラントソントン税理士法人 (事業承継対策研究会) パートナー 税理士 佐藤 達夫   相談内容 私は、電子部品の製造・販売を行っているX社(非上場会社)の社長Aです。X社の株式は、私が100%所有しています。 製品の販売にあたっては、長年、Y社(Y社株式はB社長が100%所有)を販売代理店として、顧客の開拓、製品の改良ニーズの把握などのために協業してきました。最近になってB社長より、「今年で65歳となり、そろそろ引退しようと考えているため、Y社の電子部品販売事業を買い取ってくれないか」と打診がありました。なお、B社長には子供がおらず、他に後継者もいないため、廃業も視野に入れているとのことです。 Y社の業績はそれほど良くはないと聞いていますが、長年、X社の電子部品を販売しており、顧客の販売ネットワークや販売ノウハウを有していることもあり、B社長からの申し入れについて前向きに検討したいと考えています。 Y社の電子部品販売事業の買取りにあたり、どのような方法があるか、また、その留意点について、ご教示ください。 なお、私とB社長とは、親族関係にありません。 〈資本関係図〉 ■ □ ■ □ 解 説 □ ■ □ ■ [1] 譲受方法の検討 Y社の電子部品販売事業を買い取る方法としては、株式売買、吸収合併、吸収分割、事業譲渡の4つの方法が考えられますが、今回の買取方法としては、次の理由により、事業譲渡が適切であると考えます。   [2] 事業譲渡について (1) 会社法 事業譲渡は、事業に関する権利・義務について、権利をX社に譲渡し、義務をX社が引き受けるという、通常の取引行為が一括して行われるにすぎません。そのため、吸収合併や吸収分割のような権利・義務の包括承継と異なり、事業譲渡にあたり個々の契約の相手方の同意が必要になります。 事業の全部又は重要な一部の譲渡は、原則として、X社及びY社の株主総会の特別決議が必要です(会309②十一、467①)。 また、吸収合併や吸収分割と異なり、債権者保護手続きは必要ありません。 ただし、Y社が、X社に承継されない債務の債権者を害することを知って事業譲渡を行った場合には、債権者は、X社に対して、X社が承継した財産の価額を限度として、債務の履行を請求することができます(会23の2①)。なお、X社が事業譲渡の効力が生じたときにおいて、残存債権者を害すべき事実を知らなかったときは、この限りではありません(会23の2①但書)。 (2) 税法 ① 法人税 事業譲渡には、税制適格要件がある吸収合併や吸収分割と異なり、帳簿価額により資産・負債を引き継げるという規定はなく、通常の譲渡と同様、事業譲渡時の時価により譲渡されたものとして譲渡損益を計算することになります。 なお、事業譲渡直前にY社の営む事業及びその事業に係る主要な資産・負債のおおむね全部がX社に移転する場合において、X社が事業譲渡により受け入れる時価純資産価額とその対価との差額が生じるときは、その差額は資産調整勘定又は差額負債調整勘定となります。この資産調整勘定又は差額負債調整勘定は、5年間で均等償却されます(法法62の8①③、法令123の10)。 ② 消費税 消費税は、個々の資産の種類ごとに課税されることになるため、資産・負債をまとめて譲渡する事業譲渡については、譲渡資産の時価を合理的に課税資産と非課税資産に分ける必要があります(消令45③)。また、のれんに相当する資産調整勘定は、消費税の課税対象となるため注意が必要です。 ③ 納税義務の承継等 事業譲渡においては、次のいずれかに該当する場合には、X社(譲受者)が第2次納税義務を負うことになります。 なお、X社はY社と資本関係がないため特殊関係者には該当せず、また、事業譲渡の対価が著しく低額ではないときは、この第2次納税義務を負うことはありません。   [3] 結論 Y社の電子部品販売事業の買取りにあたっては、株式売買、吸収合併、吸収分割、事業譲渡の4つの手法が考えられます。 株式売買、吸収合併、吸収分割は、必ずしも簿外債務の確認を詳細に行える状況でないこともあり、Y社より思わぬ簿外債務を承継してしまう可能性があります。一方で、事業譲渡の対象資産・負債の件数が多い場合は、手続きが煩雑になる可能性があります。 ご相談について総合的に考えた場合、Y社の買取りにあたっては、事業譲渡をもとに検討することをお勧めします。 〈事業譲渡のポイント〉 具体的な対策については、弁護士、税理士等の専門家と相談の上、実行されることをお勧めします。   (了)

#No. 548(掲載号)
#太陽グラントソントン税理士法人 事業承継対策研究会
2023/12/14

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第32回】

暗号資産(トークン)・NFTをめぐる税務 【第32回】   東洋大学法学部准教授 泉 絢也   (2) 業務に係る雑所得とその他雑所得の区分とその判断基準 前回の必要経費の考察を踏まえると、暗号資産取引を行っている個人の方は、自身が行っている暗号資産の譲渡による所得が、業務に係る雑所得に該当するのか、それともその他雑所得に該当するのか、それはどのような基準で判断されるのかという点に関心を向けるであろう。 業務に係る雑所得とその他雑所得の関係について、雑所得通達解説は、次のとおり、所得を得るための活動の規模が関係していると説明している。 また、所得税基本通達35-2注書の前段では、「事業所得と認められるかどうかは、その所得を得るための活動が、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているかどうかで判定する」という取扱いを明らかにしている。 「社会通念上事業と称するに至る程度で行っているか」という判断基準について、具体的にどのような点を考慮して、それらがどの程度であれば、社会通念上事業と称するに至る程度で行っているといえるのか、判然としない。 事業所得の意義について、最高裁昭和56年4月24日第二小法廷判決(民集35巻3号672頁)は、「事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反覆継続して遂行する意志と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得」と判示している。 そして、事業所得と雑所得の区分については、裁判例では、営利性・有償性の有無、継続性・反覆性の有無、自己の危険と計算における企画遂行性の有無、資金調達方法、(継続的・安定的)利益の状況、その取引に費した精神的・肉体的労力の程度、人的・物的設備の有無、その取引の目的、その取引の種類、取引における自己の役割、その者の職歴・社会的地位・生活状況などの諸点が総合考慮されて、社会通念上、事業に該当するか否かが判断されており(上記最高裁昭和56年判決のほか、東京地裁昭和48年7月18日判決・税資70号637頁、名古屋地裁昭和60年4月26日判決・行集36巻4号589頁など)、その経済的活動をすることにより相当程度の期間継続して安定した収益を得られる可能性が存するかどうか、という点が考慮されることも少なくない。 雑所得通達解説も上記最高裁昭和56年判決と東京地裁昭和48年7月18日判決を引用してほぼ同様のことを述べており、その所得を得るための活動が事業に該当するかどうかについて、社会通念によって判定する場合には、上記のような諸点を総合勘案して判定することを明らかにしている。 所得税基本通達35-2注書の後段は、「その所得に係る取引を記録した帳簿書類の保存がない場合(その所得に係る収入金額が300万円を超え、かつ、事業所得と認められる事実がある場合を除く。)には、業務に係る雑所得(資産(山林を除く。)の譲渡から生ずる所得については、譲渡所得又はその他雑所得)に該当することに留意する」としている。 これは、関係法令や上記裁判所の判断から直接読み取ることができないものであり、「留意する」という表現は適切ではなく、そのような取扱いの法的根拠を説明する必要がある。 この点について、雑所得通達解説は、次のとおり説明している。 仮に、統計的に上記のようなことがいえたとしても、帳簿書類の記録と保存の事実をもって、上記の総合考慮によって、社会通念上、事業に該当するか否かを判断するという過程を無視して、事業所得に該当するという評価を与えることには無理がある。 そこで雑所得通達解説は「その所得に係る取引を記録した帳簿書類を保存している場合であっても、次のような場合には、事業と認められるかどうかを個別に判断する」としている。 他方で、雑所得通達解説は、帳簿の記録や保存がない場合について、次のとおり、述べている。 上記の300万円という数値基準の趣旨については、次のとおり説明している。 統計的な裏付け資料の提示がないまま、300万円や10%未満という数値基準を形式的・画一的に適用することには、租税法律主義との関係で強い不安を覚える。 上記の②のその所得を得る活動に営利性が認められない場合の判断も多様なケースに耐えられるものであろうか。 結局、これまでどおり、上記の総合考慮によって、社会通念上、事業に該当するか否かを判断することが妥当ではないかという疑問を払拭できない(もっとも、このような総合考慮による判断それ自体も、納税者からすれば不明瞭なものでしかない)。 (出典) 雑所得通達解説を基に筆者作成   (了)

#No. 548(掲載号)
#泉 絢也
2023/12/14
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