公開日: 2024/02/08 (掲載号:No.555)
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Q&Aでわかる〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第39回】「貸付金及び非上場株式を同族会社である発行法人に遺贈した場合の非上場株式の価額計算における留意点」

筆者: 柴田 健次

Q&Aでわかる

〈判断に迷いやすい〉非上場株式評価

【第39回】

「貸付金及び非上場株式を同族会社である発行法人に遺贈した場合の
非上場株式の価額計算における留意点」

 

税理士 柴田 健次

 

甲は昭和40年にA社を設立し、パンの製造業を営んでいましたが、令和2年に代表取締役を辞任し、甲の甥である乙が新たに代表取締役に就任しました。A社の株主は甲のみで甲は発行済株式数200株を所有していましたが、同年に乙にA社株式20株を相続税評価額で売却するとともに下記の遺言書を作成しています。甲は、代表取締役辞任後、相続開始まで引き続きA社の会長として役員になっています。

■遺言書の内容

  • A社に対する貸付債権は、A社に遺贈する。
  • A社株式180株のうち、80株は甥である乙に遺贈し、100株はA社に遺贈する。
  • 上記以外の財産の全ては長男に相続させる。

令和5年10月5日に相続が発生し、相続開始直前における財産は、下記の通りとなります。甲の相続人は長男のみとなります。

■相続開始直前における甲の財産

■A社株式の所有状況の推移

甲の相続に伴い、甲、A社及び乙のそれぞれの課税関係はどのようになりますか。
また、甲の相続財産の課税価格の合計額はいくらになりますか。

A社株式の法人への遺贈は、甲が法人にA社株式を譲渡したものとみなされることになりますが、この場合のA社株式の価額算定にあたっては、所得税基本通達59-6の定めにより財産評価基本通達を準用するものとします。

A社の会社の規模区分は中会社の大に該当し、A社は特定の評価会社には該当しません。また、A社は9月決算であり、直前期末時点(令和5年9月30日)と相続開始時点(令和5年10月5日)において甲のA社に対する貸付金に変動はないものとします。純資産価額の計算においては、直前期末方式(直前期末の資産及び負債の帳簿価額に基づき評価する方式)により計算するものとします。

A社は9月決算であり、遺贈前の令和5年10月5日時点における取引相場のない株式(出資)の評価明細書の第4表「類似業種比準価額等の計算明細書」及び第5表「1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の計算明細書」は、それぞれ下記の通りとなります。なお、A社は土地及び上場有価証券は有していません。

※画像をクリックすると別ページでPDFが開きます。

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遺贈前におけるA社株式の1株当たりの価額並びに甲及び乙が所有している株式の相続税評価額は、下記の通りとなります。

  • 1株当たりの価額:427,700円 × 90% + 750,000円 × 10% = 459,930円
  • 甲が所有している株式の価額:459,930円 × 180株 = 82,787,400円
  • 乙が所有している株式の価額:459,930円 × 20株 = 9,198,600円

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Q&Aでわかる

〈判断に迷いやすい〉非上場株式評価

【第39回】

「貸付金及び非上場株式を同族会社である発行法人に遺贈した場合の
非上場株式の価額計算における留意点」

 

税理士 柴田 健次

 

甲は昭和40年にA社を設立し、パンの製造業を営んでいましたが、令和2年に代表取締役を辞任し、甲の甥である乙が新たに代表取締役に就任しました。A社の株主は甲のみで甲は発行済株式数200株を所有していましたが、同年に乙にA社株式20株を相続税評価額で売却するとともに下記の遺言書を作成しています。甲は、代表取締役辞任後、相続開始まで引き続きA社の会長として役員になっています。

■遺言書の内容

  • A社に対する貸付債権は、A社に遺贈する。
  • A社株式180株のうち、80株は甥である乙に遺贈し、100株はA社に遺贈する。
  • 上記以外の財産の全ては長男に相続させる。

令和5年10月5日に相続が発生し、相続開始直前における財産は、下記の通りとなります。甲の相続人は長男のみとなります。

■相続開始直前における甲の財産

■A社株式の所有状況の推移

甲の相続に伴い、甲、A社及び乙のそれぞれの課税関係はどのようになりますか。
また、甲の相続財産の課税価格の合計額はいくらになりますか。

A社株式の法人への遺贈は、甲が法人にA社株式を譲渡したものとみなされることになりますが、この場合のA社株式の価額算定にあたっては、所得税基本通達59-6の定めにより財産評価基本通達を準用するものとします。

A社の会社の規模区分は中会社の大に該当し、A社は特定の評価会社には該当しません。また、A社は9月決算であり、直前期末時点(令和5年9月30日)と相続開始時点(令和5年10月5日)において甲のA社に対する貸付金に変動はないものとします。純資産価額の計算においては、直前期末方式(直前期末の資産及び負債の帳簿価額に基づき評価する方式)により計算するものとします。

A社は9月決算であり、遺贈前の令和5年10月5日時点における取引相場のない株式(出資)の評価明細書の第4表「類似業種比準価額等の計算明細書」及び第5表「1株当たりの純資産価額(相続税評価額)の計算明細書」は、それぞれ下記の通りとなります。なお、A社は土地及び上場有価証券は有していません。

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遺贈前におけるA社株式の1株当たりの価額並びに甲及び乙が所有している株式の相続税評価額は、下記の通りとなります。

  • 1株当たりの価額:427,700円 × 90% + 750,000円 × 10% = 459,930円
  • 甲が所有している株式の価額:459,930円 × 180株 = 82,787,400円
  • 乙が所有している株式の価額:459,930円 × 20株 = 9,198,600円

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連載目次

Q&Aでわかる
〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価

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筆者紹介

柴田 健次

(しばた・けんじ)

税理士
柴田健次税理士事務所 所長
東京タックスコンサルティング 代表取締役

相続・事業承継を中心に業務を行っている。

【職歴】
2004年4月 資格の大原 簿記法律専門学校講師就任
2008年1月 税理士法人レガシィに勤務
2014年1月 柴田健次税理士事務所設立

【著書】
間違いやすい事例から理解する 小規模宅地等の特例適否のポイント』(清文社)
第3版 評価明細書ごとに理解する/非上場株式の評価実務』(清文社)
Q&Aでマスターする 事業承継税制の実務』(清文社)

  

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