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国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第43回】「最近の裁判例から見た「住所」をめぐる判断要素」

国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第43回】 「最近の裁判例から見た「住所」をめぐる判断要素」   税理士 菅野 真美   - 質 問 - 会社のオーナーで、海外と日本を行き来している顧問先があります。このオーナーの住所がどこにあるかが課税関係に大きな影響を受けるのですが、住所がどこにあるかを判断する際に重要な基準は何でしょうか。   ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ ▷住所はなぜ重要なのか? 個人の所得税や、相続税、贈与税の課税範囲は、その個人の住所がどこにあるかによって大きく異なるため、税務上、「住所」は重要な位置づけとなる。しかし、「住所とは何か」について税法では定義されていないことから、民法で定めた概念、すなわち「各人の生活の本拠」(民法22条)を基に判断することになる。 この「生活の本拠」であるかどうかは、客観的事実によって判定すると解されており(所基通2-1)、「客観的事実」は何により判断するかというと、課税庁側は、住居、職業、資産の所在、親族の居住状況、国籍等の客観的事実によって判断し、滞在日数のみによって判断するものでないと述べているが(※1)、裁判事例をみると、例えば武富士事件(TAINSコード:Z261-11619)の場合は、滞在日数で香港と日本を比較して、香港の方が長かったことも判決に大きな影響を与えていた。 (※1) 国税庁・タックスアンサー「No.2012 居住者・非居住者の判定(複数の滞在地がある人の場合)」 以下では、多国間に滞在していた会社役員の税法上の住所をめぐって争われた最近の裁判事例(※2)において、何が住所判定の大きな決め手になったかについてみていきたい。 (※2) 一審:東京地方裁判所平成28年(行ウ)第434号源泉所得税納税告知処分取消等請求事件(第1事件)、平成28年(行ウ)第435号更正すべき理由がない旨の通知処分取消等請求事件(第2事件)、平成28年(行ウ)第436号源泉所得税納税告知処分取消等請求事件(第3事件)(TAINSコード:Z888-2256)、二審:東京高等裁判所令和元年(行コ)第186号源泉所得税納税告知処分取消等、更正すべき理由がない旨の通知処分取消等、源泉所得税納税告知処分取消等請求控訴事件(TAINSコード:Z888-2283)   ▷どういう事例か 自動車部品販売等を行う内国法人には国内外に関連会社があり、その内国法人の代表取締役甲は、日本と海外(アメリカ、シンガポール、インドネシア、中国等)を年に何度も移動して経営に従事していた。 甲は非居住者であると認識していたことから平成21年分から平成24年分まで確定申告をしていなかったところ、税務署から居住者に該当するから期限後申告をするように勧奨を受けた。そこで、期限後申告書を提出するとともに平成23年、平成24年分については更正の請求をしたところ更正すべき理由がない旨の通知処分を受け、無申告加算税の決定処分がなされた。 さらに、内国法人が甲の役員報酬について非居住者として所得税を源泉徴収して納付していたところ、税務署から居住者に該当するとして平成21年11月から平成24年12月までの各月分の源泉徴収に係る所得税の納税告知処分、不納付加算税の賦課決定処分を受けた。 これらに不服な甲等が訴えたものである。 居住場所を設けていた日本、アメリカ、シンガポールの3国の年間の滞在日数及び、各居宅を拠点とした出張日数は次のとおりである。 甲は印鑑証明や健康保険の関係から住民登録を日本へ置いたままであり、妻と次女は各年を通じ、長女は平成24年3月まで日本の居宅に居住しており、妻が甲の口座から生活費等を引き出していた。 資産の状況としては、日本に預貯金、投資信託、自社株式、居宅、車を有し、アメリカに預金高、自社株式、居宅、シンガポールに預金や自社株式を有していたが、日本の資産価額が他の国にある資産価額よりも大きかった。   ▷地裁判決は 地裁判決は、決定処分を取り消した。つまり地裁は、甲が非居住者であると判断した。 日本に生計を一にする親族がいたこと、日本にある資産が大きかったことは特に判断に影響を与えず、滞在日数については、日本とシンガポールの滞在状況に有意な差異はないと判断した。そこで大きな判断の拠り所となったのは、甲の職業からみてどこが本拠かということだった。 課税庁は、内国法人がグループ全体の経営管理を行っていたから、内国法人の本店所在地である日本国内に本拠があると主張した。 地裁は、甲の職業活動がどの国を本拠として行われていたかの判断は、職業活動を行うに当たってその国に滞在する必要がどの程度あったかによって決すべきであり、グループ法人の中心が日本法人であるか否かによって決まるものではないとした。 そして、海外法人の経営判断は専ら甲が行っていたが、内国法人の経営判断は甲の弟が行っており、甲は内国法人の経営会議や取締役会、株主総会に出席して重要な意思決定の場合に相談を受けた程度であったこと、甲は年間を通じて4割の日数をシンガポールや同国を起点とした渡航をしていたこと、甲はシンガポールで居住者として申告していたこと、アメリカに居住していた長男をシンガポールに呼び寄せたことから、シンガポールが拠点であると判断した。   ▷高裁判決は 高裁判決も地裁と同様に、納税者が非居住者であると判断した。 高裁において課税庁は、過去にあった生活の本拠たる実態が日本から移転したと認められるべき事情は存しないと主張した。しかし、高裁は、経営する会社の活動が日本から海外に広がったことにより、海外滞在日数が徐々に増加していったから、引っ越しのように見える形で海外に移転するというイベント的なものが存在しないことは当たり前であり、このような者に対して、日本から海外に移転したかどうかを時系列的に検討することは、検討手法として時代遅れであり、課税庁の主張には無理があるから控訴は理由がないとして棄却した。   ▷この判決から考えられること 高裁の判決でこの事例は確定した。この事例においては、職業活動から見てどこが本拠となっているかが重視されていた。それは、この課税処分が役員報酬であったことが理由とも考えられる。 武富士事件以降、裁判で居住者か非居住者について争われた事例については、滞在日数が重視される傾向にあるが、職に就いている人の所得税の判定においては、職業活動はどこを本拠として行われているかも重視される傾向にあり(※3)、本事例もその傾向の1つであると考える。 (※3) 東京地方裁判所平成21年(行ウ)第310号所得税決定処分取消等請求事件(第1事件)、平成21年(行ウ)第316号源泉所得税納税告知処分取消等請求事件(第2事件)、平成22年(行ウ)第60号市民税及び県民税賦課決定処分取消等請求事件(第3事件)においては、内国法人の代表取締役として業務に従事していたことを勘案し、日本国内に生活の本拠を有しており居住者に該当すると認定されたが、非永住者に該当するとされた(TAINSコード:Z263-12227)。   (了)

#No. 379(掲載号)
#菅野 真美
2020/07/22

措置法40条(公益法人等へ財産を寄附した場合の譲渡所得の非課税措置)を理解するポイント 【第24回】「「特別の利益供与」の該当性」-ケーススタディ-

措置法40条(公益法人等へ財産を寄附した場合の 譲渡所得の非課税措置)を理解するポイント 【第24回】 「「特別の利益供与」の該当性」 -ケーススタディ-   公認会計士・税理士・社会保険労務士 中村 友理香   - 質 問 - 次のようなケースでは、「特別の利益」の供与(措令25の17⑥二)に該当しますか。   - 回 答 - ○●○◆ 解 説 ◆○●○ 上記〈ケース1〉から〈ケース4〉は国税庁の質疑応答事例を元としたものであり(論末参照)、上記回答について補足すると、以下のとおりです。 租税特別措置法施行令第25条の17第6項第2号に規定する「特別の利益」の供与の具体例として、措置法40条通達19では、以下のものが示されています(本連載【第16回】も合わせてご覧ください)。 したがって、上記の(1)もしくは(2)に記載された行為のいずれかに該当する場合は、その行為は「特別の利益」の供与に該当することとなります。 本事例では、〈ケース1〉は(2)のト、〈ケース2〉は(2)のへ、〈ケース3〉は(2)のイ、〈ケース4〉は(2)のイに各々該当するため、すべて「特別の利益」の供与に該当することになります。   (了)

#No. 379(掲載号)
#中村 友理香
2020/07/22

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第49回】「特定譲渡制限付株式の会計処理」

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第49回】 「特定譲渡制限付株式の会計処理」   RSM清和監査法人 公認会計士 西田 友洋   【はじめに】 会社が役員に対して報酬債権を付与し、役員等から報酬債権の現物出資を受けるのと引き換えに、その役員等に対して交付された一定期間の譲渡制限がある株式のことを「特定譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)」という。近年、当該株式を交付しているケースが増えている。 そこで、今回は、「特定譲渡制限付株式の会計処理」について解説する。なお、「特定譲渡制限付株式」については、まだ会計基準がないため、経済産業省から公表されている『「攻めの経営」を促す役員報酬-企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引-』に沿って解説を行う。 ※各ステップをクリックすると、それぞれのページに移動します。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 法人が役員等に特定譲渡制限付株式を交付した場合には、その付与した報酬債権相当額を「前払費用」等で資産計上する。また、現物出資された報酬債権の額を会社法等の規定に基づき「資本金(及び資本準備金)」(以下「資本金等」という)として計上する。 (※) 期末日から1年以内で費用処理される金額は「前払費用」で、1年超で費用処理される金額は「長期前払費用」で計上することが考えられる。 特定譲渡制限付株式の交付後は、現物出資等をされた報酬債権相当額のうち、その役員等が提供する役務として当期に発生したと認められる額を、対象勤務期間(=譲渡制限期間)を基礎とする方法等の合理的な方法により算定し、「株式報酬費用」等で費用計上することが考えられる。 なお、付与した報酬債権相当額のうち譲渡制限解除の条件未達により会社が役員等から株式を無償取得することとなった部分(役員等から役務提供を受けられなかった部分)については、その部分に相当する前払費用等を取り崩し、同額を損失処理することなどが考えられる。 【自己株式を処分する場合】 特定譲渡制限付株式の付与を新株発行ではなく自己株式の処分による場合には、自己株式の帳簿価額を減額し、自己株式の処分の対価(報酬債権相当額)と帳簿価額との差額である処分差額(「自己株式処分差益」又は「自己株式処分差損」)を、その他資本剰余金として処理する。 また、その処理の結果、その他資本剰余金の残高がマイナスとなる場合には、期末日において、その他資本剰余金をゼロとし、その負の値をその他利益剰余金(繰越利益剰余金)から減額する。   《会計処理の例》 (出所:経済産業省 『「攻めの経営」を促す役員報酬-企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引-』Q44) 【税効果の取扱い】 特定譲渡制限付株式が以下のいずれかに該当する場合、法人税法上、損金算入される。 ➤事前確定届出給与の損金算入要件を満たす場合 ➤退職給与に該当する場合 そして、会計上は、毎期、費用処理する一方、税務上は譲渡制限が解除された時点で損金算入されるため、一時差異が生じる。そのため、回収可能性を検討した上で、繰延税金資産を計上する必要がある。   *  *  * 以上、2のステップをまとめたフロー・チャートを再掲する。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (了)

#No. 379(掲載号)
#西田 友洋
2020/07/22

税効果会計を学ぶ 【第9回】「繰延税金資産の回収可能性③」-企業の分類に関する実務上の留意点-

税効果会計を学ぶ 【第9回】 「繰延税金資産の回収可能性③」 -企業の分類に関する実務上の留意点-   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 第8回では、「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第26号。以下「回収可能性適用指針」という)における企業の分類と繰延税金資産の回収可能性について解説した。 今回(第9回)は、第8回で解説した企業の分類に関する実務上の留意点について解説する。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 企業の分類に関する留意点 回収可能性適用指針は、「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」(監査委員会報告第66号)を基本的に踏襲しているものの、企業の分類に関しては次のことに注意する。   Ⅲ (分類2)におけるスケジューリング不能な将来減算一時差異 回収可能性適用指針は、(分類2)に該当する企業においては、原則として、スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産については、回収可能性がないものとしている(回収可能性適用指針21項)。 ただし、スケジューリング不能な将来減算一時差異のうち、税務上の損金算入時期が個別に特定できないが将来のいずれかの時点で損金に算入される可能性が高いと見込まれるものについては、当該将来のいずれかの時点で回収できることを「企業が合理的な根拠をもって説明する場合」、当該スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性があるものとして取り扱われる(回収可能性適用指針21項ただし書き)。 回収可能性適用指針は、当該取扱いに関する例として、次のものを示している。   Ⅳ (分類3)における合理的な見積可能期間 監査委員会報告第66号では、(分類3)に該当する企業においては、「将来の合理的な見積可能期間(おおむね5年)内の課税所得の見積額を限度」とするとしていた。 これに対して、回収可能性適用指針は、(分類3)に該当する企業においては、臨時的な原因により生じたものを除いた課税所得が大きく増減している原因、中長期計画、過去における中長期計画の達成状況、過去(3年)及び当期の課税所得の推移等を勘案して、5年を超える見積可能期間においてスケジューリングされた一時差異等に係る繰延税金資産が回収可能であることを「企業が合理的な根拠をもって説明する場合」、当該繰延税金資産は回収可能性があるものとするとしている(回収可能性適用指針24項)。 次のことに注意する。 ただし、企業の(分類3)に関しては、下記の規定などを考えると、実務上、回収可能性適用指針24項を用いて、5年を超える見積可能期間においてスケジューリングされた一時差異等に係る繰延税金資産が回収可能であることを企業が合理的な根拠をもって説明する場合の運用については難しい面があるものと考えられる。 回収可能性適用指針24項に関しては、回収可能性適用指針85項において、①製品の特性により需要変動が長期にわたり予測できる場合、②長期契約が新たに締結されたことにより、長期的かつ安定的な収益が計上されることが明確になる場合が例示されている。 実務上の運用に際しては、このような例が参考になるものと考えられる。   Ⅴ (分類4)の企業が(分類2)又は(分類3)に該当する場合 回収可能性適用指針は、(分類4)の要件を満たす企業について、将来の一時差異等加減算前課税所得の十分性を企業が合理的な根拠をもって説明する場合には、(分類2)又は(分類3)に該当するものとして取り扱う規定を設けている(回収可能性適用指針28項、29項)。 回収可能性適用指針は、当該事項に関する例として次のものをあげており、実務への適用に際して、参考になるものと考えられる(回収可能性適用指針90項~93項)。 (了)

#No. 379(掲載号)
#阿部 光成
2020/07/22

社外取締役と〇〇 【第4回】「社外取締役と内部統制システム」

社外取締役と〇〇マルマル 【第4回】 「社外取締役と内部統制システム」   西村あさひ法律事務所 パートナー 弁護士・ニューヨーク州弁護士 柴田 寛子   1 内部統制システムとは 「内部統制システム」とは、取締役(指名委員会等設置会社においては執行役)の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他会社及びその企業集団の業務の適正を確保するための体制(会社法348条3項4号、399条の13第1項1号ハ、416条1項1号ホ)であり、その細目は、会社法施行規則に定められている(会社法施行規則100条1項・3項、110条の4第2項、112条2項)。 内部統制システムについては、2006年の会社法制定時に、取締役会(監査役設置会社においては大会社に限る)にて、内部統制システムの整備のため必要な事項を決議し、その決議内容の概要を事業報告に記載する義務(会社法施行規則118条2号)が課された。 もっとも、会社法の立案担当者の解説では、取締役は、会社法制定前から、その善管注意義務の一貫として、内部統制システムを整備する義務を負っており、会社法において新たに導入された義務は、取締役会における内部統制システムの決定の内容を事業報告で開示する点に過ぎないとされている(相澤哲ほか「【新春座談会】会社法関係法務省令案の論点と今後の対応」旬刊商事法務1754号124頁)。   2 内部統制システムにおける社外取締役の活用 内部統制システムは、取締役会の責務として整備・運営されるものであることから、その「限界」として、当該システムを通じて把握された問題点を、代表取締役や業務執行取締役(指名委員会等設置会社においては執行役)が意図的に無視又は隠蔽するというリスクを伴う。このように、内部統制システムは、自己監査による機能不全のリスクを内在するものであり、かかるリスクを防止するため、内部統制システムは、社外取締役が主体的に関与するものであることが望ましい。 例えば、経済産業省により設置された「コーポレート・ガバナンス・システムの在り方に関する研究会」(座長・神田秀樹学習院大学法務研究科教授)による「社外役員を含む非業務執行役員の役割・サポート体制等に関する中間取りまとめ」(2014年6月30日公表)(38-39頁)においては、以下の報告がなされている(下線は当職)。 また、(金融商品取引法に基づく内部統制システムに関する議論であるが)金融庁により設置された「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」(座長・池尾和人立正大学経済学部教授)による「コーポレートガバナンス改革の更なる推進に向けた検討の方向性(「スチュワードシップ・コード及びコーポレートガバナンス・コードのフォローアップ会議」意見書(4))」(2019年4月24日公表)(4頁)においても、以下の指摘がなされている(下線は当職)。 実務においては、上記のような自己監査による内部統制システムの機能不全のリスクを防止する仕組みとして、内部統制システムの構築・運営状況のモニタリングを行う任意の委員会を取締役会の諮問機関として設置し、その委員に社外取締役が含まれるとの制度を設ける企業が多数ある。 例えば、内部統制システムの構築運営状況のモニタリング、個々の業務活動の適正性の調査、各部門、各子会社により実施されるチェックの有効性を確認する「内部統制委員会」、及びその下部組織としての「内部統制チーム」を設置し、「内部統制委員会」の委員は、取締役6名(うち社外取締役1名)、執行役員4名及び内部監査室長とし、また、「内部統制チーム」のメンバーは、総務人事部長及び各部門の管理職数名(6ヶ月毎に交代)とする例がある(三菱化工機株式会社「2019年度有価証券報告書」26-27頁参照)。 また、グループの業務にかかる内部統制の整備・評価に関する基本事項及び企業行動の適正化に関する事項について審議・決定する「内部統制委員会」を設置し、「内部統制委員会」の委員は、グループCEOとグループCEOが指名する者、監査委員会が選定した監査委員である社外取締役1名、取締役会が選定した取締役1名とする例もある(野村ホールディングス株式会社「2019年度有価証券報告書」92・94頁参照)。 このように、社外取締役が、内部統制システムの整備・運用状況のモニタリングに主体的に関与する仕組みを確保することは、自己監査による内部統制システムの機能不全防止に有用であることに加え、社外取締役の役割を実効的に果たすために不可欠となる、会社の経営状況に関する情報を入手する機会の確保ともなる。 すなわち、社外取締役に期待される役割は、経営の方針や経営改善についてその知見を生かして中長期的な企業価値の向上の観点から助言を行うこと、経営を監督すること、会社と経営陣・支配株主との間の利益相反を監督すること、経営陣・支配株主から独立した立場でステークホルダーの意見を取締役会に反映させることにある(株式会社東京証券取引所「コーポレート・ガバナンス・コード~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~」(2018年6月1日改訂)の原則4-7)。 このように、社外取締役の本来的な役割は、経営の監督及び助言にあるが、その本来の役割を実質的に果たすためには、経営の現状に関する情報を十分に入手できる体制の確保が重要である。社外取締役が、内部統制システムのモニタリングに主体的に関与し、また、内部統制システムを通じて把握される情報が、随時社外取締役に共有される仕組みを確保することで、経営の監督及び助言という社外取締役の本来的な役割を実効的に果たすことに役立つといえる。 (了)

#No. 379(掲載号)
#柴田 寛子
2020/07/22

今から学ぶ[改正民法(債権法)]Q&A 【第14回】「債務者の責任財産保全のための制度」

今から学ぶ [改正民法(債権法)]Q&A 【第14回】 「債務者の責任財産保全のための制度」   堂島法律事務所 弁護士 奥津  周 司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎   【Q】 商品を販売しても、代金を払ってこない債務者は一定数存在します。新型コロナウイルスの影響により経済情勢が不安定となるなかで、債務者から支払いを行ってもらえない事例が増加することを危惧しています。 債権法改正では、債務者の財産保全の制度も整備されたと聞きましたが、どのように改正されたのでしょうか。 【A】 債務者が債権者に対して支払いを行わない場合、債権者としては訴訟を提起して、勝訴判決を得て債務者の財産に強制執行を行うことになる。強制執行の対象となる債務者の財産を「責任財産」という。 責任財産を保全するため、債権者の取りうる手段として「債権者代位権」と「詐害行為取消権」という制度があるが、改正法ではこれらの制度について判例を明文化するなど、より利用しやすい制度にするための整備を行った。経済情勢が悪化するなかで、自社を守るためにもこれらの制度について理解する必要がある。   1 「債権者代位権」とは 債権者代位権とは、債権者が自己の債権を保全する必要があるときに、債務者の第三者(第三債務者)に対する権利を債務者に代わって行使できる制度である(改正法423条)。 例えば、債務者が第三債務者に対して債権を有しているにも関わらず、適切に回収行為を行っていないために、当該債権が消滅時効にかかるおそれがあるようなケースにおいて活用される。債権者が「自己の債権を保全する必要がある」場合に、認められるのであり、債務者が責任財産を十分に有しているような場合は債権者代位権を行使することではできない。 債権者としては第三債務者に対して、債務者に支払いを行うのではなく、自社(債権者)に対して支払いを行うように求めることができる(改正法423条の3)。金銭債権のような可分債権の場合、債権者が代位行使できるのは、被保全債権の範囲に限られる(改正法423条の2)。 【図表:債権者代位権(売買代金債権)】 第三債務者としては、債権者に対して支払いを行えば、債務者に対して支払いを行う必要はない(改正法423条の3)。また、第三債務者は被代位債権に関して債務者に対して主張できる抗弁(支払時期の未到来など)があれば、債権者に対しても抗弁を主張することができるため、不当に第三債務者が害されることはない(改正法423条の4)。   2 「詐害行為取消権」とは 債務者が債務の支払いに窮した場合、債権者に損害を与えると知りながら自分の財産を守るために、第三者に当該財産を不当に譲渡してしまう場合がある。こうした行為(詐害行為)に対して、債権者が取りうる手段が「詐害行為取消権」であり、債権者は裁判所に対して債務者の行った詐害行為の取消しを求めることができる(改正法424条)。 例えば、破綻状態にある債務者が、唯一の財産である自社の土地を、債務者と関係の深い先(例えば親族等)に贈与したという場合に、債権者は、詐害行為取消権によって、その贈与契約を取り消すことができうる。 【図表:詐害行為取消権(売買代金債権)】 詐害行為取消権は、上図のように詐害行為を行った債務者と、債務者から土地の贈与を受けた関連先(受益者)が、自らが行った行為が債権者を害することを知っていた場合に認められる(改正法424条1項)。 詐害行為の類型は、債務者が受益者に財産を贈与したという事例に限られず、債務者の財産を相当の対価を得て売買したような場合、特定の債権者に対して債務者の財産を担保提供したような場合、債務者が受益者に対して負担している債務に対して過大な代物弁済等を行ったような場合などでも認められ、行為の類型ごとに細かく要件が定められている(改正法424条の2~424条の4)。 債権者は債務者が行った詐害行為の取消しとともに、受益者に対して詐害行為により債務者から受益者に移転した財産を債務者に返還することを求めることができる(改正法424条の6第1項2項)。 詐害行為が、債務者が金銭を受益者に贈与した場合のように、可分であるときは、債権者は自己の被保全債権の範囲においてのみ詐害行為取消権を行使することができる(改正法424条の8第1項)。 債権者は、詐害行為取消権の行使により金銭又は動産の引渡しを求めるときは、受益者に対して債務者ではなく自己に対して支払い又は引渡しを求めることができるとされ、受益者としては債権者に対して支払い等を行った場合には、債務者に対して支払い等を行う必要はないとされている(改正法424条の9)。 *  *  * 債権者代位権、詐害行為取消権の行使は、実際には弁護士等の専門家の力を借りなければ実行は難しい。企業としてはこうした権利が認められていることを念頭に、平時から取引先の販売先や動向の把握を進めておく必要がある。 (了)

#No. 379(掲載号)
#奥津 周、北詰 健太郎
2020/07/22

〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例49】RIZAPグループ株式会社「2020年3月期決算短信〔IFRS〕(連結)」(2020.6.10)

〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例49】 RIZAPグループ株式会社 「2020年3月期決算短信〔IFRS〕(連結)」 (2020.6.10)   公認会計士/事業創造大学院大学准教授 鈴木 広樹   1 今回の適時開示 今回取り上げる適時開示は、RIZAPグループ株式会社(以下「RIZAP」という)が2020年6月10日に開示した「2020年3月期決算短信〔IFRS〕(連結)」である。本連載で同社の開示を取り上げるのは、【事例31】【事例36】に続いて3回目となる。 今回取り上げるのは2020年3月期の決算短信だが、親会社の所有者に帰属する当期利益(同社はIFRS適用会社)を見ると、マイナス6,046百万円とされており、前期に続いて赤字である。   2 辞めるのでは? 【事例36】で触れたとおり、RIZAPの代表取締役社長の瀬戸健氏は、2020年3月期が赤字の場合、辞めると宣言していた。ということは、辞めるのだろうか。現在のところ、同社から代表者の異動に関する開示は出されていない。 同社は、決算短信の開示日の前日である2020年6月9日に「役員報酬自主返上の継続に関するお知らせ」を開示したのだが、そこに瀬戸氏のコメントが記載されている。その中には次のような記載がある。 どうやら辞めないようである。   3 1月近く遅れた開示 RIZAP は、2019年3月期の決算短信を2019年5月15日に開示していた。それと比べると、2020年3月期の決算短信は、1月近く遅れて、2020年6月10日に開示することとなった。 同社は、2020年4月15日に「2020年3月期連結決算発表日程に関するお知らせ」を開示し、決算短信の開示が通例よりも遅れ、6月1日になるとしていたのだが、5月22日に「2020年3月期連結決算発表日程延期に関するお知らせ」を開示し、さらに遅れて、6月10日になるとしていた。この開示の中の「通期決算発表を通例より延期する理由」の記載は、次のとおりである。 コロナ禍の影響により決算短信の開示が遅れたのは、同社に限ったことではない。しかし、1月近くの遅れは際立っている。2020年6月17日付の日本経済新聞によると、3月決算の上場企業の約3割が決算短信の開示を遅らせたのだが、遅れた日数の平均は約11日とのことである。 必死な瀬戸氏は、何とか赤を黒にできないかと無茶な主張を続けていたのではないだろうか。そんな瀬戸氏と監査法人との間で攻防が繰り広げられていたため、1月近くも決算短信の開示が遅れることになったしまったのではないだろうか。これまでのRIZAPと瀬戸氏を見ていると、そのように勘繰ってしまう。   4 決算発表前日の業績予想修正 【事例36】では、RIZAPが2020年5月15日に開示した「通期連結業績と業績予想及び通期個別業績と前期実績値との差異に関するお知らせ」を取り上げて、早期に業績予想の修正を開示しなかったことを批判した。それに対して、今回は、「差異に関するお知らせ」ではなく、一応、2020年6月9日に「業績予想及び配当予想の修正に関するお知らせ」を開示している。 しかし、同社の開示に対する姿勢は、昨年と全く変わっていない。開示日を見て欲しい。決算短信の開示日の前日である。なぜもっと早く開示しなかったのだろうか。同社は、業績予想の修正に関する開示の意味を理解していないのだろう。   5 子供のまま 【事例36】において、筆者は、「大人になるために」として、瀬戸氏について次のように述べていた。しかし、やはり瀬戸氏は大人になれていないようである。 RIZAPは、2020年3月19日に「当社グループの新経営体制移行に伴う役員人事に関するお知らせ~構造改革から成長路線への転換に向けて、経営体制を刷新~」を開示したのだが、そこには社外取締役2名の辞任も記載されている。 その2名は、昨年6月開催の定時株主総会で新たに選任されたのだが、「2020年3月13日付で当社取締役を辞任したい旨の申し出」があったため、同日付で辞任したとのことである。2名の社外取締役が、任期中に、しかも揃って同日に辞任を申し出るというのは、尋常ではない。辞任する理由は記載されていないが、記載したくない理由だから、記載していないのだろう。 瀬戸氏は、松本晃氏に続いて、この2名の社外取締役にも見捨てられてしまったのかもしれない。大人の経営者になるのは無理であると、皆に判断されたのだろうか。   6 株主のためになすべきことは? 大人になれない、子供のままの瀬戸氏であるとするならば、RIZAPの株主のためになすべきことは、何だろうか。瀬戸氏は、「役員報酬自主返上の継続に関するお知らせ」記載のコメントで、「創業者である私自身が先頭に立ち、強い覚悟と決意をもって早期の業績回復に向けて邁進すること」などと言っているが、それはどうだろう。なすべきことは、RIZAPの代表を辞めることではないだろうか。 瀬戸氏がRIZAPの代表でいる限り、同社の企業価値は毀損し続けるだろう。手遅れになる前に、適切な判断を行える大人の経営者に同社の経営を任せるべきである。創業者のやり方が、いつまでも最善であるとは限らない。代表を辞めることが、瀬戸氏が現在行える最善の策ではないだろうか。 (了)

#No. 379(掲載号)
#鈴木 広樹
2020/07/22

《速報解説》 会計士協会、監査上の主要な検討事項(KAM)等に対応した改正「監査ツール」を公表~様式11「監査上の主要な検討事項と監査上の対応の立案」が追加される~

《速報解説》 会計士協会、監査上の主要な検討事項(KAM)等に対応した 改正「監査ツール」を公表 ~様式11「監査上の主要な検討事項と監査上の対応の立案」が追加される~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2020年7月15日付けで(ホームページ掲載日は2020年7月20日)、日本公認会計士協会は、「監査基準委員会研究報告第1号「監査ツール」の改正について」を公表した。これにより、2020年4月17日から意見募集していた公開草案が確定することになる。なお、公開草案に対して特段のコメントはなかったとのことである。 これは、監査基準委員会報告書701「独立監査人の監査報告書における監査上の主要な検討事項の報告」の新設及び関連する監査基準委員会報告書の改正(2019年2月)並びに監査基準委員会報告書610「内部監査の利用」の改正及び同315「企業及び企業環境の理解を通じた重要な虚偽表示リスクの識別と評価」等の改正(2019年6月)を受けたものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 監査上の主要な検討事項(KAM)に関する見直し 監査上の主要な検討事項(KAM)について、説明を本文80項から86項に集約及び追加するとともに、様式11として「監査上の主要な検討事項と監査上の対応の立案」を新設する。 2 監査基準委員会報告書610「内部監査人の作業の利用」及び同315「企業及び企業環境の理解を通じた重要な虚偽表示リスクの識別と評価」 監査基準委員会報告書610「内部監査人の作業の利用」について、本文46項及び様式3-9を全面的に見直している。 監査基準委員会報告書315「企業及び企業環境の理解を通じた重要な虚偽表示リスクの識別と評価」について、本文46項に関連する記載を追加するとともに、様式3-1の見直しを行っている。 監基報315等の改正より、財務諸表における注記事項の重要性の高まりを踏まえて、本文及び様式について見直しを行っている。 (了)

#No. 378(掲載号)
#阿部 光成
2020/07/22

《速報解説》 公認会計士・監査審査会から「監査事務所検査結果事例集(令和2事務年度版)」が公表される~続く会計不正問題等を受け、関連の指摘事例や留意点などの記載を拡充~

《速報解説》 公認会計士・監査審査会から 「監査事務所検査結果事例集(令和2事務年度版)」が公表される ~続く会計不正問題等を受け、関連の指摘事例や留意点などの記載を拡充~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2020(令和2)年7月14日、公認会計士・監査審査会は「監査事務所検査結果事例集(令和2事務年度版)」を公表した。 今回の事例集の特徴は次のとおりである。 「令和2年版 モニタリングレポート」及び「令和2事務年度 監査事務所等モニタリング基本計画」も公表されており、監査法人の状況などについて、会計専門家ではない一般の利用者にもわかりやすく説明がなされている。 事例集は、公認会計士・監査審査会が行う監査事務所の検査で確認された指摘事例等を取りまとめたものであり、基本的に、監査事務所に関する内容である。 本稿では、事例集に記載された事項のうち、一般事業会社における会計処理等においても参考になると考えられるものを紹介する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 取締役、監査役等、投資者等による活用を期待 事例集は、上場会社等の取締役・監査役等や投資者等に対する監査に関する参考情報の提示という観点から、最近の不正会計事案や会計監査人と監査役等との連携に関するものも含め確認された指摘事例を記載し、また、監査事務所の改善取組において前向きな取組例も取り入れているので、会計監査人の適切な評価のために、是非参考にしていただきたいと考えているとのことである。   Ⅲ 個別業務における「問題となった事例」 事例集は、次のような事例について述べている。 (了)

#No. 378(掲載号)
#阿部 光成
2020/07/21

プロフェッションジャーナル No.378が公開されました!~今週のお薦め記事~

2020年7月16日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.378を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2020/07/16
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