法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例22】「役員給与における「不相当に高額な部分」の意義と租税法律主義」
筆者:安部 和彦
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法人税の損金経理要件をめぐる事例解説
【事例22】
「役員給与における「不相当に高額な部分」の意義と租税法律主義」
国際医療福祉大学大学院准教授
税理士 安部 和彦
【Q】
私は、北陸地方において日本酒の醸造を行っている酒造メーカーである株式会社Aにおいて、ここ10年あまり経理部長を務めております。近年、健康志向の高まりによる「低アルコール」飲料へのシフトや食事の洋風化、容器の「飲みきりサイズ」への少量化といった要因により、日本酒の国内出荷量は低迷しております。また、今年に入ってからのコロナ禍により、外食需要の縮小も大きな懸念材料といえます。そのような業界を取り巻く厳しい経済状況の中、わが社は比較的高価格帯の「特定名称酒」に力を入れており、お陰様で根強い支持をいただいているところです。また、海外での和食ブームに乗り、北米や東南アジア向けの輸出も現在伸びております。
わが社のこのような経営基盤を築いた功労者は、間違いなく先代の会長と、その奥様である元取締役であるといえます。そこで、一昨年、お二方がわが社の経営の一線を完全に退くにあたり、その長年の貢献と労苦に報いるため、退職慰労金を支払っております。その金額は、顧問税理士はもとより、地元の金融機関とも相談し妥当といえるものであると考えておりました。ところが、最近受けた税務調査で、調査官から「先代の会長とその配偶者である元取締役に対して支払った役員退職慰労金は、同業他社の事例と比較してかなり高い」ことから、法人税法第34条第2項にいう「不相当に高額な部分の金額」があるため、その金額については損金の額に算入されないと言われました。
最近出た裁判例で、酒造メーカーの役員給与について争われた事案があり、それでは創業者に対して支払われた役員退職金がわが社のケースよりも高いにもかかわらず認容されたと聞きます。調査官にもその旨を反論しましたが、「あちらとは事情が異なる」として取り合ってもらえません。今後どのように対応したらよいのでしょうか、教えてください。
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連載目次
法人税の損金経理要件をめぐる事例解説
▷総論
● 法人税の課税所得計算と損金経理(その1~5)
- 【第1回】 法人税の課税所得計算と損金経理(その1) ★無料公開中★
- (1)益金と損金の意義
- (2)企業会計準拠主義と「別段の定め」
- 【第2回】 法人税の課税所得計算と損金経理(その2)
- (3)損金にならない不正な支出
- (4)資本等取引と損金
- 【第3回】 法人税の課税所得計算と損金経理(その3)
- (5)確定決算主義と逆基準性
- 【第4回】 法人税の課税所得計算と損金経理(その4)
- (6)費用収益対応の原則
- (7)権利確定主義と債務確定主義
- 【第5回】 法人税の課税所得計算と損金経理(その5)
- (8)費用収益対応の原則と権利確定主義との関係
- (9)損金経理とは
▷事例解説
- 【事例1】 即時償却と損金経理 ★無料公開中★
- 【事例2】 役員に対する土地建物の現物支給
- 【事例3】 役員退職給与に係る「不相当に高額」の意義
- 【事例4】 米国のリミテッドパートナーシップを通じた不動産投資から生じた費用及び損失の取り込みの可否
- 【事例5】 医療法人の有する医業未収金の償却と損金経理
- 【事例6】 機械装置の取得と減価償却費の計上
- 【事例7】 医療用検査機器の機械装置該当性
- 【事例8】 医薬品共同開発負担金の損金性
- 【事例9】 減価償却資産の判定単位
- 【事例10】 賃貸用マンションのリフォーム費用の損金性
- 【事例11】 関係会社への売上値引及び単価変更による売上の減額の寄附金該当性
- 【事例12】 返品調整引当金の意義とその廃止の経緯
- 【事例13】 従業員への慰安目的で実施する「感謝の夕べ」に要する費用の損金性
- 【事例14】 分掌変更により支払う役員退職給与の損金性
- 【事例15】 特許業務法人の社員は使用人兼務役員に該当するのか
- 【事例16】 宅地造成に伴う雨水排水路工事費に係る見積金額の損金計上
- 【事例17】 建物内部造作の「器具及び備品」該当性
- 【事例18】 臨床検査の委託を受ける会社における検査機器に対する特別償却の適用
- 【事例19】 仮装経理による棚卸資産過大計上分に係る特別損失の損金性
- 【事例20】 売上原価と棚卸資産の評価方法
- 【事例21】 従業員名義預金口座に振り込まれていた決算賞与の損金性
- 【事例22】 役員給与における「不相当に高額な部分」の意義と租税法律主義
- 【事例23】 土地建物を一括で購入した場合の建物の取得価額と減価償却費
- 【事例24】 法人間の船舶取引に係る譲渡価額と減価償却費
- 【事例25】 事業譲渡に伴って行った債権放棄の貸倒損失該当性と寄附金課税
・・・ 以下、順次公開 ・・・
筆者紹介
安部 和彦
(あんべ・かずひこ)
税理士
和彩総合事務所 代表社員
国際医療福祉大学大学院准教授東京大学卒業後、平成2年、国税庁入庁。
調査査察部調査課、名古屋国税局調査部、関東信越国税局資産税課、国税庁資産税課勤務を経て、外資系会計事務所へ移り、平成18年に安部和彦税理士事務所・和彩総合事務所を開設、現在に至る。
医師・歯科医師向け税務アドバイス、相続税を含む資産税業務及び国際税務を主たる業務分野としている。
平成23年4月、国際医療福祉大学大学院医療経営管理分野准教授に就任。【主要著書】
・『裁判例・裁決事例に学ぶ 消費税の判定誤りと実務対応』(清文社)
・『消費税 軽減税率対応とインボイス制度 導入の実務』(清文社)
・『新版 医療・福祉施設における消費税の実務』(清文社)
・『【第三版】税務調査と質問検査権の法知識Q&A』(清文社)
・『最新判例でつかむ固定資産税の実務』(清文社)
・『新版 税務調査事例からみる役員給与実務Q&A』(清文社)
・『要点スッキリ解説 固定資産税Q&A』(清文社)
・『Q&A 医療法人の事業承継ガイドブック』(清文社)
・『税務調査の指摘事例からみる法人税・所得税・消費税の売上をめぐる税務』(清文社)
・『修正申告と更正の請求の対応と実務』(清文社)
・『事例でわかる病医院の税務・経営Q&A(第2版)』(税務経理協会)
・『Q&A 相続税の申告・調査・手続相談事例集』(税務経理協会)
・『医療現場で知っておきたい税法の基礎知識』(税務経理協会)
・『消費税の税務調査対策ケーススタディ』(中央経済社)
・『消費税[個別対応方式・一括比例配分方式]有利選択の実務』(清文社)
・『国際課税における税務調査対策Q&A』(清文社)【主要論文】
・「わが国企業の海外事業展開とタックスヘイブン対策税制について」(『国際税務』2001年12月号)
・「タックスヘイブン対策税制の適用範囲-キャドバリー・シュウェップス事件の欧州裁判所判決等を手がかりにして-」『税務弘報』(2007年10月号)
など
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