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経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第156回】収益認識基準①「収益認識基準の開発経緯と概要」

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第156回】 収益認識基準① 「収益認識基準の開発経緯と概要」   仰星監査法人 公認会計士 竹本 泰明     〈事例による解説〉   〈会計処理〉(単位:千円) 《商品a販売時》   〈会計処理の解説〉 1 収益認識基準が開発された経緯 我が国においては、企業会計原則の「売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る。」(「企業会計原則」第二 損益計算書原則 三 B)という原則に従って収益認識に関する実務を行っているものの、収益認識に関する包括的な会計基準は開発されていませんでした。 一方、国際会計基準や米国会計基準では、収益認識に関する包括的な会計基準が開発されており、両基準とも概ね同じ内容の基準となっています。 収益、つまり売上高や営業収入等は、企業の主な営業活動からの成果を示すもので、企業の経営成績を示すうえで重要な情報であるにもかかわらず、日本と海外で基準に相違する部分があり、国際的な比較可能性の観点から課題があります。 例えば、上記の〈事例による解説〉を参考にすると、日本の従来の基準によれば、売上高と売上原価を総額表示することが認められていた取引も、国際会計基準や米国会計基準では総額表示が認められず、利益部分だけの純額で収益認識しなければならない場合もあります。この場合、同じ取引を行っているにもかかわらず収益の金額が異なり、財務諸表利用者に「実態が異なるのではないか」といった誤解を与えかねません。 そこで、日本においても収益認識に関する包括的な会計基準が開発されることになりました。 2 収益認識基準の概要 (1) 開発の基本的な方針 収益認識に関する会計基準は、IFRS第15号の収益認識基準をベースとして、日本で実務上の課題となる部分について代替的な取扱いを追加的に定めるといった方針で開発されています。 IFRS第15号をベースに作られた部分、日本仕様に代替的な取扱いを追加した部分は、それぞれ次のとおりです。 そのため、「収益認識基準は基本的には海外と同じ基準」という理解で、概ね差し支えないと考えられます。 (2) 適用範囲 収益認識に関する会計基準は、連結財務諸表のみならず、個別財務諸表にも適用され、上場会社のみ等の限定もありません。そのため、上場していないが会社法の法定監査を受けている会社なども収益認識に関する会計基準の適用が必要となります。 なお、他の会計基準と同様に、重要性が乏しい取引には、収益認識基準を適用せず、従来の方法で収益を認識することも可能です。 (3) 適用時期 収益認識に関する会計基準及び同適用指針は、2021年4月1日以降開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されます。つまり、3月決算の企業であれば、2021年4月1日以降の取引から新基準によらなければならないということになります。 *  *  * (了)

#No. 358(掲載号)
#竹本 泰明
2020/02/27

改正相続法に対応した実務と留意点 【第12回】「総合的な事例の検討①」

改正相続法に対応した実務と留意点 【第12回】 「総合的な事例の検討①」   弁護士 阪本 敬幸   今回からは、これまでの復習も兼ねて、総合的な事例について検討することとする。     1 Bに対する贈与について Bに対する贈与は、それぞれ、持ち戻し対象とならないかが問題となる。 (1) 2005年の現金500万円の贈与 2005年は、相続開始の15年前である。「相続法改正により、相続人に対する贈与の持ち戻しは相続開始10年前に限定されることになったはずだから、持ち戻し対象とならない」と思われた方もおられるかもしれない。 確かに、遺留分の価額の算定にあたっての持ち戻しの期間は、今回の改正により10年に制限されることとなった(改正後民法1044条)。 しかし、相続分の算定にあたっての持ち戻しの期間については、改正前民法同様、期間の制限はない。したがって、2005年の贈与についても、持ち戻し免除の意思表示があったといえるような事情がない限り、相続分の算定にあたっては持ち戻しをして計算することとなる。 (2) 2011年の不動産の贈与 AとBは、A死亡まで、25年の婚姻生活が継続していた。 「相続法改正により、婚姻期間20年以上の夫婦については、持ち戻し免除の意思表示が推定されるはず」として、2011年(婚姻から16年経過)の居住用不動産の贈与には、持ち戻し免除の意思表示があったと推定されると思われた方もおられるかもしれない。 しかし、条文上、「婚姻期間が20年以上の夫婦の一方である被相続人」が遺贈又は贈与したことが要求されているから、遺贈・贈与の時点で婚姻期間が20年以上でなければ、本条文の適用はない。本件では、婚姻期間が20年未満の時点で居住用不動産の贈与があったため、持ち戻し免除の意思表示は推定されない。 もっとも、その他の事情から、黙示に持ち戻し免除の意思表示があったといえるような場合もあり得るため、本条文の適用がないことから直ちに、持ち戻し免除の意思表示がないと断定すべきではない。 (3) 2016年の現金500万円の贈与 改正後民法903条の4は、遺贈・贈与の対象を居住用不動産に限定しているため、2016年(婚姻から21年経過)の500万円の贈与についても、本条文の適用はなく、持ち戻し免除の意思表示は推定されない。 その他の事情から、黙示に持ち戻し免除の意思表示があったといえるような場合もあり得るのは、不動産の贈与同様である。   2 Bによる預金1,000万円の払戻しについて Bは、相続開始後遺産分割前にM銀行のAの預金1,000万円の払戻しを受けており、現在、M銀行にAの遺産として500万円の預金が残っているということなので、相続開始時にはM銀行に1,500万円のAの預金があったということになる。 改正後民法909条の2により、相続人は、遺産である預貯金債権のうち、預金額×1/3×法定相続分については、単独で権利行使できることとなった。ただし、権利行使できる上限は150万円である(H30法務省令)。 Bの相続分は2分の1であり、上記計算を行うと1,500万円×1/3×1/2=250万円となり、150万円を超える。したがって、BはAの預金のうち150万円については、単独で権利を行使することができたということになる。 このようにBは、預金150万円について単独で権利行使できたものではあるが、Aの預金1,000万円の払戻しを受けた際には、「A相続人」としてではなく、Aが死亡した事実を告げずに「A代理人」かのように装って手続を行ったと考えられる。仮にBがA相続人として出金したとすれば、150万円を超える金額の払戻しを受けることはできないはずだからである。 このような場合、Bが受けた払戻しのうち150万円も、改正後民法909条の2に基づく相続人の権利行使であったということはできず、同条の適用を受けないと考えるべきではないかと思われる。 このように考えると、Bは、払戻しを受けた1,000万円全額について遺産分割を経る必要があったにもかかわらず(最判平成28年12月19日)、遺産分割前に払戻しを受けたということになる。 このような場合について、改正後民法906条の2第1項は、「遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる。」と定めている。したがって、Bの1,000万円の引き出しについては、C・Dの同意(Bの同意は不要。改正後民法906条の2第2項)があれば、遺産分割時に遺産として存在するものとみなすこととなる。 相続人は、遺産である預貯金債権のうち、一部は単独で権利行使できるようになったとはいえ、相続人としての権利を行使したといえなければ、上記のような結論となるのではないかと思われるため、注意されたい。   3 Cによる預金1,000万円の払戻しについて Cは、相続開始前の2008年、2011年に、Aの預金から無断で500万円ずつ払戻しを受けている。 「相続法改正により、遺産分割前の財産処分は、遺産として考えてよいことになったはずなので、払戻しを受けた金額は遺産となる。」と思われた方もおられるかもしれない。 改正後民法906条の2が定めるのは、遺産の分割前に「遺産に属する財産が処分された場合」である。本件のように相続開始前の財産処分は、「遺産に属する財産」を処分しているわけではないので、民法906条の2の適用を受けることはない。 このように、被相続人の生前に、相続人が被相続人の財産を不法に取得していたような場合、相続開始後、他の相続人としては、被相続人が財産取得者に対し有していた不法行為に基づく損害賠償請求権又は不当利得返還請求権を相続し、財産取得者に対する請求を行うこととなる。本件では、Bには具体的相続分は発生しないため(後述4参照)、Dが相続分に応じ、Cに対し損害賠償請求又は不当利得返還請求を行うこととなる。 なお、2008年の払戻しについては、2020年時点で行為から10年以上が経過している。不当利得返還請求による場合、時効中断(改正債権法(民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号))による改正後民法では「時効更新」と呼ぶこととなった(2020年4月1日より施行))事由がない限り、消滅時効が完成している可能性がある(改正前債権法167条。改正後債権法166条1項では、権利を行使できることを知ったときから5年、権利を行使できるときから10年で消滅時効が完成する)。 不法行為構成による場合も、Aが損害及び加害者を知った時期により、消滅時効が完成している可能性がある(改正後債権法724条では、損害及び加害者を知った時から3年、行為の時から20年で消滅時効が完成するとされている)。   4 各人の相続分について 以上を前提に考えると、以下のようにまとめることができる。 (ア) 現存する相続財産 ・M銀行の預金:500万円 ・Cに対する不法行為に基づく損害賠償請求権又は不当利得返還請求権:計1,000万円 (イ) 遺産として存在するものとみなすことができる財産 ・Bが相続開始後に出金したM銀行のAの預金:1,000万円(遺産とみなすことにつきC・Dの同意がある場合) (ウ) 持ち戻し対象となる特別受益 ・AからBに対する現金贈与:合計1,000万円(ただし、贈与時と相続開始時で貨幣価値が変動していた場合、相続開始時の価値に換算する。) ・AからBに対する不動産贈与:2,000万円(相続開始時の価額) したがって、(イ)の1,000万円を遺産とみなすことにつきC・Dの同意があり、他に特段の事情がない場合、(ア)~(ウ)の合計5,500万円が、未分割のみなし相続財産の総額ということになる。 Bの相続分は5,500万円×1/2=2,750万円、C・Dの相続分はそれぞれ1,375万円となる。 Bは現金・不動産合計3,000万円の贈与を受けているため、具体的相続分はゼロである。 C・Dは、2,500万円分の相続財産について遺産分割を行うこととなり、C・D共に特別受益者ではないため、具体的相続分はそれぞれ1,250万円ずつとなる。   (了)

#No. 358(掲載号)
#阪本 敬幸
2020/02/27

〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例44】HOYA株式会社「株式会社ニューフレアテクノロジー株式(証券コード:6256)に対する公開買付けの不実施に関するお知らせ」(2020.1.17)

〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例44】 HOYA株式会社 「株式会社ニューフレアテクノロジー株式(証券コード:6256)に 対する公開買付けの不実施に関するお知らせ」 (2020.1.17)   公認会計士/事業創造大学院大学准教授 鈴木 広樹   1 今回の適時開示 今回取り上げる適時開示は、HOYA株式会社(以下、「HOYA」という)が2020年1月17日に開示した「株式会社ニューフレアテクノロジー株式(証券コード:6256)に対する公開買付けの不実施に関するお知らせ」である。 同社は、2019年12月13日に「株式会社ニューフレアテクノロジー株式(証券コード:6256)に対する公開買付けの開始予定に関するお知らせ」を開示し、株式会社ニューフレアテクノロジー(以下、「ニューフレア」という)に対してTOB(株式公開買付け)を行う予定であるとしていたのだが、それを行わないこととしたという内容である。   2 敵対的TOBだったのか? HOYAの「株式会社ニューフレアテクノロジー株式(証券コード:6256)に対する公開買付けの開始予定に関するお知らせ」を受けて、ニューフレアは、同じ2019年12月13日、「HOYA株式会社による当社株式に対する公開買付けの開始予定に関するお知らせ」を開示し、その中で次のように記載している(下線は筆者による)。少し怒っているように見受けられる。 また、当時、ニューフレアは株式会社東芝(以下、「東芝」という)によるTOBを受けている途中だった(実際にTOBを行っていたのは、東芝の完全子会社である東芝デバイス&ストレージ株式会社)。東芝は2019年11月13日に「当社子会社(東芝デバイス&ストレージ株式会社)による株式会社ニューフレアテクノロジー株式(証券コード6256)に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」を開示し、ニューフレアを完全子会社化するとしていた。 なお、東芝はニューフレアの株式を52%超保有し、両社は親子関係にあり、ニューフレアは、東芝によるTOBに対しては賛同していた(2019年11月13日に「支配株主である東芝デバイス&ストレージ株式会社による当社株式に対する公開買付けに関する賛同の意見表明及び応募推奨のお知らせ」を開示)。 こうしたことから、HOYAが「株式会社ニューフレアテクノロジー株式(証券コード:6256)に対する公開買付けの開始予定に関するお知らせ」を開示した際、マスコミは、HOYAがニューフレアに対して「敵対的TOB」を仕掛けたとか、HOYAと東芝がニューフレアをめぐって「争奪戦」を展開といった報道を行った(例えば、同日付の日本経済新聞夕刊)。 しかし、そうした「敵対的TOB」や「争奪戦」といった表現には違和感を覚える。なぜなら、HOYAはTOBを行う予定であるとしただけで、未だTOBを行っていなかったし、また、TOBを行う条件の1つに、東芝によるTOBが成立しないことをあげていたのである。HOYAは、決して強引にニューフレア株式を取得しようとしたわけではなく、ニューフレアと東芝に対して提案を行ったに過ぎない。   3 ちゃんと考えたのか? HOYAの「株式会社ニューフレアテクノロジー株式(証券コード:6256)に対する公開買付けの開始予定に関するお知らせ」には、次のように記載されている。 HOYAも、以前からニューフレアの取得を考えていたのだろう。そうしたところ、東芝がニューフレアに対するTOBを始めてしまったので、東芝に対して、この開示により、「貴社そして貴社の株主にとってプラスだと思うので、ニューフレアを当社に譲っていただけないでしょうか」という提案を行ったのだ。HOYAのTOBは、東芝が自社によるTOBを止めて、こちらに応募してくれることを前提としたものである。 これに対して、東芝は、2019年12月20日に「(開示事項の経過)当社子会社(東芝デバイス&ストレージ株式会社)による株式会社ニューフレアテクノロジー株式(証券コード6256)に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」を開示し、HOYAのTOBには応じないとした。それには次のように記載されている。 東芝は、当初の方針どおりニューフレアに対するTOBを続けるとしたのだが、ニューフレアを完全子会社化することと、ニューフレアを売却すること(HOYAによるTOBの買付価格の方が、自社によるものよりも高い)とのどちらが、自社そして自社の株主にとってプラスとなるのか、きちんと比較した上で判断したのだろうか。開示を見る限り、そのようには思われない。また、買付価格を上げるとはしておらず、ニューフレアの少数株主(東芝以外の株主)への配慮も全くない。   4 対照的な2社 こうした東芝の反応を受けて、HOYAの方は、買付価格を上げたりすることもなかった。そのまま待ち、東芝のTOBが成立したこと(東芝は2020年1月17日に「当社子会社(東芝デバイス&ストレージ株式会社)による株式会社ニューフレアテクノロジー株式(証券コード6256)に対する公開買付けの結果に関するお知らせ」を開示)、すなわち、やはり東芝が提案に応じてくれなかったことを見極めた上で、今回の開示を行うに至ったのである。 ニューフレアの取得はあくまで選択肢の1つと捉え、冷静に相手方の出方を見極めようとするHOYAに対して、冷静な判断を行わず、一度決めた方針に固執しようとする東芝。対照的な両社の姿が、今回の開示のやり取りに現れているように思われる。 ちなみに、東芝は、「当社子会社(東芝デバイス&ストレージ株式会社)による株式会社ニューフレアテクノロジー株式(証券コード6256)に対する公開買付けの開始に関するお知らせ」を開示する前、2019年11月11日・12日・13日と3回にわたって「本日の一部報道について」を開示している。TOBの情報が漏れていたのである。本連載で何度も取り上げた粉飾決算の後、東芝は変わったように思われたが、東芝らしさは健在のようである。 (了)

#No. 358(掲載号)
#鈴木 広樹
2020/02/27

《速報解説》 会計士協会が会長通牒「『担当者( チームメンバー) の長期的関与とローテーション』に関する取扱い」を公表~社会的影響度が特に高い会社の監査業務に当たり留意すべき事項をまとめる~

《速報解説》 会計士協会が会長通牒「『担当者( チームメンバー) の 長期的関与とローテーション』に関する取扱い」を公表 ~社会的影響度が特に高い会社の監査業務に当たり留意すべき事項をまとめる~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2020年2月20日付(ホームページ掲載日は2020年2月26日)で、日本公認会計士協会は、会長通牒2020年第1号「『担当者(チームメンバー)の長期的関与とローテーション』に関する取扱い」を公表した。合わせて、「解説:チームメンバーローテーションの具体的な運用について」もホームページに掲載されている。 これは、2018年4月に改正された「独立性に関する指針」が、2020年4月1日以後開始する事業年度から適用され、すべての監査人は、改正後の「独立性に関する指針」を遵守することが求められることから、社会的影響度が特に高い会社の監査業務に当たって、当該監査業務に従事する会員が留意すべき事項をまとめたものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 独立性に関する指針 2018年4月に改正された独立性指針150項から150-5項、155項では、担当者が長期間にわたって監査業務に関与する場合、当該者の公正性及び職業的懐疑心に影響を与え得る馴れ合い及び自己利益の阻害要因が生じ、その重要性が高くなる可能性があるとしている。 また、阻害要因の重要性の程度を評価し、必要に応じてセーフガードを適用して、阻害要因を除去するか、又はその重要性の程度を許容可能な水準にまで軽減しなければならないとし、当該者をローテーションにより監査業務チームから外すことなどのセーフガードが例示されている。 2 社会的影響度が特に高い会社の監査業務における取扱い 独立性指針150項から150-5項に定める一般的規定は、すべての監査業務に適用されるものであるが、社会的影響度が特に高い会社の監査業務の場合には、当該規定に加え、公益の観点から、次のとおり取り扱うものとしている。   Ⅲ 適用時期等 (了)

#No. 357(掲載号)
#阿部 光成
2020/02/26

《速報解説》 複数税率制度下での消費税申告にあたり国税庁から日税連へ「誤りの多い事例」の周知と発生防止の協力を要請

 《速報解説》 複数税率制度下での消費税申告にあたり国税庁から日税連へ 「誤りの多い事例」の周知と発生防止の協力を要請   Profession Journal 編集部   新型コロナウイルスの感染拡大防止に向けて国税庁は確定申告会場に出向くことなくe‐Taxで申告を行うよう呼びかけているところだが、個人事業者で消費税の課税事業者の場合、昨年10月からの軽減税率導入に伴い、令和元年分の確定申告からは複数税率制度下での消費税申告が求められる。 複数税率制度では、旧税率8%、新税率(標準税率)10%、軽減税率8%それぞれの税率ごとに区分経理を行い税額計算する必要があるのだが、申告書の作成に当たって同様の誤りが発生していることから、このほど国税庁は、同庁課税部消費税軽減税率制度対応室長名で日本税理士会連合会会長宛て「消費税申告書の作成に当たってご留意いただきたい事項について」と題した協力要請を行っている(日本税理士会連合会会員専用ページで公開)。 この中で国税庁は、把握している誤りの多い事例として次の3つを紹介している。 まず1つ目が、令和元年10月1日以後終了課税期間の消費税申告で、「旧様式」を使用して申告している事例。つまり「旧税率8%適用分」、「軽減税率8%適用分」及び「標準税率10%適用分」の取引があるものの、旧様式によって「旧税率8%が適用される分」のみ申告を行っているというものだ。この場合の対応として、「軽減税率8%適用分」及び「標準税率10%適用分」を反映し再計算した修正申告書(更正の請求書)の提出が必要となる。 2つ目が、令和元年10月1日以後終了課税期間の消費税申告で、新しい様式を使用しているが、旧税率適用分のみの申告を行っている事例。これには、①1つ目の事例と同様に「旧税率8%が適用される分」のみ申告を行っているケースと、②「旧税率8%適用分」、「軽減税率8%適用分」及び「標準税率10%適用分」の取引があるものの、すべて「旧税率8%適用分」として計算しているケースに分けられる。この場合の対応として、①のケースは1つ目と同様の対応、②のケースでは正しく税率区分を行い再計算した修正申告書(更正の請求書)を提出する必要がある。 3つ目の事例が、令和元年9月30日以前開始課税期間の消費税申告で、「旧税率8%適用分」がない申告を行っているというもの。これはすなわち「旧税率8%適用分」、「軽減税率8%適用分」及び「標準税率10%適用分」の取引があるものの、「旧税率8%適用分」が「軽減税率8%適用分」として計算されている点が誤りとなる。旧税率と軽減税率は同じ税率8%でも国税(消費税)と地方税(地方消費税)の内訳が異なるため、別に区分して経理・申告を行う必要があることから、見落としされやすい。この場合も正しく税率区分を行い再計算した修正申告書(更正の請求書)の提出が必要だ。 なお、上記3事例とも、誤って申告した後の対応において、消費税と地方消費税はそれぞれ別の申告となるため、消費税が「増額」で地方消費税が「減額」となる場合は、消費税の修正申告書と地方消費税の更正の請求書を提出する必要がある点にも留意されたい。 (了)

#No. 358(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2020/02/26

《速報解説》 会計士協会、監査基準委員会報告書510「初年度監査の期首残高」等の改正(公開草案)を公表~各監査報告書文例に「除外事項に関し重要性はあるが広範性はないと判断し限定付適正意見とした理由」の記載を追加~

《速報解説》 会計士協会、監査基準委員会報告書510「初年度監査の期首残高」等の改正(公開草案)を公表 ~各監査報告書文例に「除外事項に関し重要性はあるが広範性はないと判断し限定付適正意見とした理由」の記載を追加~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2020年2月25日、日本公認会計士協会は次の公開草案を公表し、意見募集を行っている。 これは、2019年9月3日付けの監査基準改訂の内容を反映させるために、主として、各監査基準委員会報告書の監査報告書の文例における限定付適正意見の根拠区分に、除外事項に関し重要性はあるが広範性はないと判断し限定付適正意見とした理由の記載を追加する改正である。 意見募集期間は2020年3月25日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 「除外事項付意見の監査報告書の文例」において、「この影響は・・・・・・・である。したがって、財務諸表に及ぼす影響は重要であるが広範ではない。」という記載が追加されている。 当該記載に関して、「・・・・・・・」には、重要ではあるが広範ではないと判断し、不適正意見ではなく限定付適正意見とした理由又は意見不表明ではなく限定付適正意見とした理由を、財務諸表利用者の視点に立って分かりやすく具体的に記載すると説明されている。 広範性の判断の記載に当たっては、監査基準委員会研究報告第6号「監査報告書に係るQ&A」Q1-6「除外事項の重要性と広範性及び除外事項の記載上の留意点」を参照する。   Ⅲ 適用時期等 2020年3月31日以後終了する事業年度に係る監査から適用する。 2020年9月30日以後終了する中間会計期間に係る中間監査から適用する(監査基準委員会報告書570「継続企業」)。 (了)

#No. 357(掲載号)
#阿部 光成
2020/02/26

プロフェッションジャーナル No.357が公開されました!~今週のお薦め記事~

2020年2月20日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.357を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2020/02/20

日本の企業税制 【第76回】「BEPS包摂的枠組みに関する声明(2020.1.31)から見た本年のデジタル課題の動向」

日本の企業税制 【第76回】 「BEPS包摂的枠組みに関する声明(2020.1.31)から見た 本年のデジタル課題の動向」   一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴   〇OECD事務局案に基づいた「2つの柱」に関する声明 1月31日、OECDのインクルーシブ・フレームワーク(包摂的枠組み(137の国と地域が参加)、以下IFという)は、経済の電子化に伴う課税上の課題に対する2ピラー・アプローチに関するステートメントを発表した。 “2ピラー・アプローチ”とは、①ピラー1に関して昨年10月に公表された「統合的アプローチ(a possible unified approach)」に関する事務局案(public consultation document)及び、②ピラー2に関して11月に公表された「グローバル税源浸食対抗(global anti-base erosion(GloBE)」に関する事務局案(public consultation document)を指している。 なお、ピラー1に関する事務局案については本連載【第72回】、ピラー2に関する事務局案については本連載【第73回】をそれぞれ参照されたい。 今回のステートメントでは、ピラー1に関しては、昨年10月の事務局案である「統合的アプローチ」を本年内に取りまとめる予定のコンセンサスに基づく解決策の交渉のたたき台として、正式にIFとして承認したことが明記されている。 また、解決策が合意された際には、関連する一方的措置(unilateral actions)を撤回することについてIF加盟国・地域がコミットするよう求めている。フランス、イギリス、イタリア、スペイン、オーストリアなど欧州諸国に拡大している一方的措置を意識したものである。 一方、ピラー2に関しては、11月からの進捗報告にとどまっており、政策目的自体についてもIF参加国の中で見解の相違があることが示されている。すなわち、例外を設けず最低税率まで課税を実施すべきであるという意見がある一方、残されたBEPSの課題(remaining BEPS issues)に絞って対処する観点から、実質基準によるカーブアウト(substance carve-outs)を主張する意見も紹介されている。 IFでは、今後さらに検討を進め、7月初旬(early July)の会合において、重要な政策上の論点(key policy features)について合意することを目指すこととしている。   〇米国のセーフハーバー提案への懸念 今回のステートメントでは、昨年12月3日にムニューシン米国財務長官がグリアOECD事務総長に書簡で提案した「セーフハーバー」に基づく第1の柱の実施について触れている。 この「セーフハーバー」提案は、多国籍企業がグローバルベースで、ピラー1に従って課税を受けることを選択するというものである。つまり各国・地域における課税権の発生が多国籍企業の選択によって決定されるというものといえる。 ステートメントでは、多くのIF加盟国・地域がその提案された「セーフハーバー」に基づくピラー1の実施に懸念を表明していることが記されている。また、「セーフハーバー」の問題は、第1の柱に関して、他の検討課題について合意された後に、検討することとされている。   〇統合的アプローチの制度の大枠 昨年10月のOECD事務局案と同様、ピラー1はAmount A、B、Cの3種類の課税所得から構成されている。Amount Aは多国籍企業のグループ単位(又はビジネスライン単位)で、定式的な方法(つまり従来の独立企業原則(ALP)によらない方法)により市場国に配分される残余利益の一部をいう。これに対して、Amount B、Cは、あくまでも(PEの存在を前提とすることも含め)従来の所得配分ルールに基づくものである。 中でもAmount Bは、市場国において行われる基礎的な販売・マーケティング機能に関するALPに基づく固定的な所得である。一方、Amount Cは基礎的機能を超える場合の追加的な所得であり、改善された紛争解決手段の必要性が強調されている。   〇Amount Aの対象(スコープ) 昨年10月のOECD事務局案では、Amount Aの対象(スコープ)として「消費者向けビジネス(Consumer-facing businesses)」というカテゴリーが提示されていたが、今回の提案では、そこから除外されるものがいくつか明らかにされるとともに、もう1つのカテゴリーとして「自動化されたデジタルサービス(Automated digital services)」が追加されている。 まず、「自動化されたデジタルサービス」とは、複数の国・地域にまたがり大規模なユーザーに対して標準化され提供される自動化されたデジタルサービスを指し、具体的には、次のものが含まれる(限定列挙ではない)とされている。 クラウドコンピューティングサービスやオンライン広告サービスのように顧客が消費者(個人)ではなく、従前の「消費者向けビジネス」では捉えきれなかった事業が含まれていることに注目すべきである。 一方、「消費者向けビジネス」の内容について具体化が図られており、次のものが列挙されている。 消費者に販売される最終製品に組み込まれる中間製品及び部品の販売はこれには含まれないが、中間製品又は部品そのものがブランド化され、個人使用のために一般に消費者によって購入される場合は対象となる。 また、航空業や海運業、原材料及びコモディティの採掘事業及びその他の製造者・販売者は対象外であり、リテールバンキングや保険といった消費者向けサービスも規制業種であることから対象外である。   〇Amount Aのネクサス ネクサス(関連性)の有無の判断基準として、市場国・地域との間の「重要かつ持続的な関与(significant and sustained engagement)」の存在が提示されている。その第1のメルクマールとしては、当該市場国・地域において複数年にまたがる一定水準を超える売上高の存在が挙げられている。 特に「自動化されたデジタルサービス」に関しては、市場国における一定期間内の売上高が、ネクサスの有無の唯一の判定基準とされる。一方、それ以外のビジネスに関しては、単に製品を市場国・地域で販売しているだけでは、ネクサスは生じないとされ、物理的拠点や市場国・地域に向けたターゲティング広告の存在など追加的な要素を加味することが検討課題として提示されている   〇Amount Aの算定方法 Amount Aの算定方法については、具体的な数値は明らかにされていないが、算定の基礎は、連結財務諸表における税引前利益から出発することが示されている。もっとも、キャピタルゲインや持分法損益の取扱いなど重要な課題は残されている。 Amount Aは一定の利益水準を超える部分の利益(残余利益)の一部を対象とするものであることから、対象となる部分を特定する必要があるが、ビジネスラインによってデジタル化の度合いが異なれば、その対象となる部分の割合も異なるのではないかという問題意識から、Amount Aの算定の定式に、デジタル化の度合いを反映するよう調整(digital differentiation)が必要となるかもしれないとの指摘もある。 (了)

#No. 357(掲載号)
#小畑 良晴
2020/02/20

〔令和2年3月期〕決算・申告にあたっての税務上の留意点 【第3回】「「中小企業の設備投資を支援する措置の延長等」及び「地域未来投資促進税制の見直しと延長」」

〔令和2年3月期〕 決算・申告にあたっての税務上の留意点 【第3回】 「「中小企業の設備投資を支援する措置の延長等」及び 「地域未来投資促進税制の見直しと延長」」   公認会計士・税理士 新名 貴則   令和元年度税制改正における改正事項を中心として、令和2年3月期の決算・申告においては、いくつか留意すべき点がある。【第2回】は「特定事業継続力強化設備等の特別償却制度の創設」、「みなし大企業の範囲の見直し」及び「中小企業向け租税特別措置の適用除外措置」について解説した。 【第3回】は「中小企業の設備投資を支援する措置の延長等」及び「地域未来投資促進税制の見直しと延長」について解説する。   1 中小企業の設備投資を支援する措置の延長等 中小企業の設備投資を支援するための税制措置が、令和元年度税制改正により延長されている。したがって、令和2年3月期の決算申告においては適用されることになる。具体的には、次の通りである。 ① 「中小企業経営強化税制」の見直しと延長 「中小企業経営強化税制」とは、青色申告書を提出する中小企業者等が、中小企業等経営強化法の認定を受けた経営力向上計画に基づき、一定の設備を取得して指定事業に供用した場合に、即時償却又は税額控除(7%又は10%)を認める制度である。 (※) 資本金又は出資金3,000万円以下の中小企業者等 適用対象となる設備は次の通りである。また、令和元年度税制改正により、働き方改革に資する設備(休憩室に設置される冷暖房設備、作業場等に設置されるテレワーク用PCなど)も、適用対象であることが明確化された。 (※1) 情報通信業や医療保険業においては、一定の場合に制限あり。 (※2) 医療保険業を行う事業者が取得等するものは除く。 (※3) 複写販売用の原本、開発研究用のもの、サーバー用OSのうち一定のものなどは除く。 平成31年3月31日までの間に取得等して事業供用した資産が対象とされていたが、これが2年延長され、令和3年3月31日までに取得等して事業供用した資産が対象とされた。したがって、令和2年3月期の決算申告においては適用が継続される。 ② 「中小企業投資促進税制」の延長 「中小企業投資促進税制」とは、青色申告書を提出している中小企業者等が、特定の機械装置などを取得等して、指定事業(風俗営業や娯楽業等を除くほぼ全業種)の用に供した場合に、その事業の用に供した事業年度において、30%の特別償却又は7%の税額控除を認める制度である。 (※) 資本金又は出資金3,000万円以下の中小企業者等 適用対象となる設備は次の通りである。 平成31年3月31日までに取得等をして事業供用した資産が対象であったが、これが2年延長され、令和3年3月31日までに取得等して事業供用した資産が対象とされた。したがって、令和2年3月期の決算申告においては適用が継続される。 ③ 「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」の見直しと延長 「商業・サービス業・農林水産業活性化税制」とは、青色申告書を提出する中小企業者等が認定経営革新等支援機関等の指導及び助言を受け、一定の器具備品及び建物附属設備を取得した場合に、30%の特別償却又は7%の税額控除を認める制度である。 この制度の適用を受けるためには、指導及び助言を受けた旨を明らかにする書類の提出が必要となる。また、令和元年度税制改正において、経営改善により売上高又は営業利益の伸び率が年2%以上となる見込みであることについて、認定経営革新等支援機関等の確認を受けることが要件に追加された。 (※) 資本金又は出資金3,000万円以下の中小企業者等 適用対象となる設備は次の通りである。 平成31年3月31日までに取得等をして指定事業に供用した資産が対象であったが、これが2年延長され、令和3年3月31日までに取得等して事業供用した資産が対象とされた。したがって、令和2年3月期の決算申告においては適用が継続される。   2 地域未来投資促進税制の見直しと延長 「地域未来投資促進税制」とは、地域経済牽引事業の促進区域内において、青色申告書を提出する承認地域経済牽引事業者が、特定事業用機械等を取得等して地域中核事業に供用した場合に、特別償却又は税額控除を認める制度である。 これについて、令和元年度税制改正において次の見直しが行われている。 (※) 前事業年度の付加価値額≧前々事業年度の付加価値額×108% 平成31年3月31日までの間に取得等して事業供用した資産が対象とされていたが、これが2年延長され、令和3年3月31日までに取得等して事業供用した資産が対象とされた。したがって、令和2年3月期の決算申告においては適用が継続される。 (了)

#No. 357(掲載号)
#新名 貴則
2020/02/20

〈ポイント解説〉役員報酬の税務 【第11回】「役員に不正があった場合に想定される税務上の論点」

〈ポイント解説〉 役員報酬の税務 【第11回】 「役員に不正があった場合に想定される税務上の論点」   税理士 中尾 隼大   ○●○● 解 説 ●○●○ 役員に不正があった場合、通常の企業であれば当該役員の辞任、支給済の給与の自主返納やクローバック、そして役員給与額を改定することによる一時的な減額が想定される。このうち、クローバックについての留意点は【第8回】で触れている。 今回は、定時改定以外に役員報酬の減額を行う場合における、定期同額給与該当性について触れる。   (1) 定期同額給与の概要 定期同額給与は、役員報酬の税務を考える上で、「基本の基」となる重要な論点である。その趣旨は【第10回】で触れたように、お手盛りで利益を圧縮することを防止するためであり、法人税法は定期同額給与・事前確定届出給与・業績連動給与の3類型の規定を準備している。そして、これら3類型に該当しなければ、すなわち給与支給に恣意性が認められれば損金算入を認めないという構造となっている。 換言すれば、定時株主総会等を経て、手続き上瑕疵なく決定された役員給与は恣意性の排除が担保されることにより損金算入が認められるのであって、法人税法上、役員給与は損金算入されないのが原則である。 これら3類型の支給形態のうち、最も典型的とされる形態が定期同額給与である。 定期同額給与とは、その名称の通り定期的に決まった金額を支給する給与であり、その定義は「その支給時期が1月以下の一定の期間ごとである給与で当該事業年度の各支給時期における支給額が同額であるもの」である(法法34①一)。 具体的に定期同額給与に該当するように支給するためには、事前の定めや慣習による支給基準に基づいて、毎日、毎週、毎月といった1月以下の期間を単位として規則的に反復又は継続して支給するとされており(法基通9-2-12)、役員給与の額を改定する場合は、以下①②③の通り、所定の改定時期や事由に基づいた改定を行う必要がある(法令69①一イ~ハ)。   (2) 懲戒処分による報酬減額の場合 ここで、役員の不正等が発覚し、懲戒処分により報酬減額を行った時期が定期的な改定時期と異なった場合、臨時改定事由として取り扱うことが可能かどうかを確認したい。 臨時改定事由による改定が認められるかどうかの判定は「個々の実態に即し、事前に定められていた役員給与の額を改定せざるを得ないやむを得ない事情が存在するかどうかにより判定される」と説かれている(※1)。 (※1) 武田昌輔編『DHCコンメンタール法人税法』(第一法規、加除式)2161頁の22。 通達では、この具体的例示として、副社長が社長に就任する場合、そして合併により役員の職務内容が大きく変わる場合の2つが示されているのみであり(法基通9-2-12の3)、翻せば当該通達は、分掌変更や組織再編であれば臨時改定が認められるとしか示されていない。 しかし、企業コンプライアンスへの取り組みが重視される今日においては、役員の不正等があった場合は直ちに公表し、当該役員や代表者はその責を明らかにするという姿勢が一般的になっている。このような姿勢は、上場企業のみならず中小企業でも見られるところであり、金融機関や取引先との関係維持のため、不正等が判明した際には役員給与を減額する事例も散見されるところである。 役員の行為に不正があり、当該役員の給与を一時的に減額する処分を実施した場合において、当該処分の理由が企業秩序の維持や法人の社会的評価への悪影響を避けるためにやむを得ず行われたものであり、その役員の行為に照らして社会通念上相当のものであると認められる場合には、減額された期間においても引き続き同額の定期給与の支給が行われているものとして取り扱って差し支えないと考えられる(※2)。 (※2) 国税庁「役員給与に関する質疑応答事例」(平成18年12月)3頁。当該質疑応答事例は、平成18年の会社法改正を受けて税制改正がなされた直後に公表されたものであり、改正当時から役員の不正には報酬の減額をもって対応することも想定されていたといえる。 これは、不正を働き企業秩序を乱した役員に一定期間の役員給与の減額処分を行うことは、企業慣行として定着していること等を理由とする。 したがって、役員の不正など不祥事をトリガーとして、このような全額カットや一部減額処分を行う場合でも、臨時改定事由に該当し、定期同額給与として取り扱われることとなるだろう。 (了)

#No. 357(掲載号)
#中尾 隼大
2020/02/20
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