収益認識会計基準と 法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第40回】 千葉商科大学商経学部准教授 泉 絢也 〈更なる検討〉 ~「第七目 引当金」から「第七目 貸倒引当金」への目名改正と引当金損金不算入の根拠を巡る議論~ 平成30年度改正において、返品調整引当金を廃止した結果、法人税法の「第二編 内国法人の法人税」、「第一章 各事業年度の所得に対する法人税」、「第一節 課税標準及びその計算」、「第四款 損金の額の計算」の「第七目 引当金」に格納されていた引当金規定は貸倒引当金(法法52)のみとなった。これに伴い、同年度改正においては、「第七目 引当金」から「第七目 貸倒引当金」へと目名が改められた。このことは、引当金(繰入額)が損金不算入となることの根拠に関する議論にも通じる。 引当金が損金不算入となる根拠については諸説あるが、本連載は、法人税法22条3項2号括弧書に定められている債務確定基準自体は同号との関係で引当金の損金算入を認めない規定であることを認める立場である。また、債務確定基準単独ではなく、引当金に関する別段の定めが存在することをセットで理解しておくべきことも認める立場である。 法人税法22条3項は、内国法人の各事業年度の所得の金額のマイナス要素である「当該事業年度の損金の額」について、次のとおり定めている。 法人税法22条3項2号について、当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを「当該事業年度の費用」から除外している括弧書部分(下線部分)は、費用の計上時期、タイミングを決する役割を有しており、一般に、債務確定基準ないし債務確定主義と呼ばれている。 債務確定基準が導入された昭和40年改正法の立案担当者の多くは、債務確定基準は、引当金・見越費用について、別段の定めがない限り、損金の額に算入しない趣旨であると説明している(伊豫田敏雄「法人税法の改正(一)」『昭和40年版 改正税法のすべて』103頁(国税庁1965)、武田昌輔「全文改正法人税法の解説(上)」産業経理25巻6号52頁など参照。昭和38年12月付け政府税制調査会「所得税法及び法人税法の整備に関する答申」第2の8も参照)。 また、立案当時になされていた次のような議論も参考となる(武田昌輔『法人税回顧六〇年』157頁以下(TKC出版2009)参照)。 立案当時、問題となったのは、法人税法22条3項2号に「当該事業年度の販売費、一般管理費その他の費用」と規定するのみで、特に賞与引当金や退職給与引当金などの引当金が、これに含まれるかどうかという点である。これについては、次のとおり、原則として引当金の損金算入を認めるべきであるという意見(第1案)とこれを認めるべきではないという意見(第2案)があった。 第1案の「引当金も全部認める」という趣旨になると、最終的には一致してもいろいろな考え方があるため、「第2号ではやはり最初に引当金を排除しておいた方がいいのではないか」ということで「債務の確定しないものを除く。」という文言が入った。第2案が採用されたことになる。 しかしながら、例えば減価償却費のようないわゆる内部取引は、債務の確定とは関係がない。販売費や一般管理費が損金になるのなら「減価償却費、繰延資産などの資産が費用化されるものも含めて損金になるのではないか」ということが問題になったため、最終的には2号の括弧書きとして「償却費以外の費用で当該事業年度終了の日までに債務の確定しないものを除く。」という一文が挿入された。 以上のように、債務確定基準は引当金の損金算入を原則として認めない趣旨で設けられたものであることは沿革的に見て明らかである。体系的には、債務確定基準により引当金は原則損金不算入となり、別段の定めにより例外的に損金算入が認められているという整理になる。 文理的には、法人税法52条を例にすると、別段の定めである同条は一定のルールに従って貸倒引当金を「損金の額に算入する」規定である。このことは、債務確定基準により引当金の損金算入が原則として認められていないことを同条が前提としていることを示唆する。また、文理上、同条は「損金の額に算入しない」規定ではないし、貸倒引当金以外の引当金を「損金の額に算入しない」規定ではないことにも注意が必要である。ひとり貸倒引当金に限定したルールを定めているのであり、それ以外の引当金に関するルールを定めていることを示す手掛かりは見当たらない。 このように見てくると、例えば、法人税法22条4項の公正処理基準にかこつけて、法定の引当金以外の引当金の損金算入が認められるという主張を採用することのハードルは相当に高いことがわかる。 平成30年度改正において「第七目 引当金」から「第七目 貸倒引当金」に目名が改められたことに話を戻そう。 例えば、「債務確定基準とは、引当金の繰入額に係る損金算入を否認するためのルールではない」(酒井克彦『プログレッシブ税務会計論Ⅱ〔第2版〕』187頁(中央経済社2018))という見解を有する論者からは、「文理解釈上は、法人税法22条3項にいう『別段の定め』を第6目の『引当金』という規定すべてを対象と考えることで、引当金については、第6目において完結している」という理解が示されている(同「『収益認識に関する会計基準』と法人税法(8)」税務事例50巻9号98頁)。 かかる見解の採用については、慎重な議論を要する。上述のとおり、文理解釈に従うと、法人税法52条は貸倒引当金を一定のルールに従って「損金の額に算入する」規定であり、「損金の額に算入しない」規定ではなく、貸倒引当金以外の引当金を「損金の額に算入しない」規定でもない。 「引当金」という目名は、平成30年度改正により返品調整引当金が廃止されるまでは2つ以上の引当金に関する規定が第7目に格納されていたことから、用いられたにすぎない。このことは、上記目名は平成30年度改正で返品調整引当金が廃止されたことにより、唯一存置された貸倒引当金を表現する「第七目 貸倒引当金」に改められていることからも裏付けられる。そうであるとすると、「引当金」という目名をもって債務確定基準抜きに単独で引当金繰入額を損金不算入とする確たる根拠とすることには躊躇が残る。 なお、上述のとおり、本連載は、少なくとも、債務確定基準自体は法人税法22条3項2号との関係で引当金繰入額の損金算入を認めない趣旨で定められたことを認める立場を採用しているが(泉絢也「法人税法における債務確定主義(債務確定基準)」国士舘法研論集16号47頁以下、同「債務確定主義(債務確定基準)のレゾンデートル」税務事例47巻2号39頁以下参照)、同項1号(原価)と3号(損失)に係る引当金の繰入額の問題を2号の債務確定基準の問題とは捉えない余地を残すものである。 ここでは、貸倒引当金は、貸倒損失に対する引当金として法人税法22条3項3号の別段の定めであろうか、それとも2号の別段の定めであろうかという問題があることを想起すべきである。例えば、損失に係る引当金は2号の費用であると解する見解もある(武田昌輔「新商法下における会計と税法」『第34回租税研究大会記録』87頁(日本租税研究協会1983)参照)。 1号の原価との関係を考えなければならない引当金も存在し、その場合に、2号の債務確定基準の適用はないはずであるから、その引当金繰入額の損金算入が認められないのかが問題となる。この点に関して、岡村忠生教授は、「製品の製造を行う被用者の退職給与引当額は、製品原価に集合する。また、貸倒は費用ではなく損失であるから、その引当経理は、将来の損失の見積り計上である。したがって、こうした引当経理を規制するのであれば、債務確定要件を22条3項柱書に設けるべきことになる」という見解を示される(岡村忠生『法人税法講義〔第3版〕』65頁(成文堂2007)参照)。非常に有益な指摘である。 (了)
取引先企業が倒産したときに対応すべき 税務・会計上の留意事項 【第2回】 「貸倒損失及び貸倒引当金の会計処理」 公認会計士・税理士 新名 貴則 新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、世界的に経済が大打撃を受けており、経営状況が悪化する企業が増加している。政府や自治体が様々な給付金等を創設し、企業の救済を図っているが、残念ながら倒産する企業も出ている。 そこで本連載では、このような情勢に応じ、取引先企業が倒産したときに、税務・会計上どのような点に留意すべきかについて解説する。 【第1回】では税務上の留意点について解説したが、【第2回】では会計上の留意点を解説する。なお、本連載では「中小企業の会計に関する指針(中小企業会計指針)」に基づく会計処理を解説する。 1 貸倒損失の計上 (1) 計上の要件 取引先企業が倒産し、その企業に対する売掛金等の債権が法的に消滅した場合や、回収不能な債権がある場合は、その金額を貸倒損失として計上しなければならない。具体的には次のような場合である。 税務上は、「法律上の貸倒れ」に該当する場合は会計処理に関係なく損金算入されるが、「事実上の貸倒れ」や「形式上の貸倒れ」に該当する場合は、損金経理を条件として損金算入が「可能」となっている(詳しくは【第1回】を参照)。 これに対し会計上の貸倒損失の計上は、該当するのであれば「必須」であることに注意が必要である。 (2) 表示区分 貸倒損失を計上する場合、損益計算書においては対象債権の区分に応じて次の通りに表示する。 2 貸倒引当金の計上 取引先が経営破綻に陥った場合、貸倒損失を計上するまでには至っていなくとも、貸倒引当金の計上が必要な場合がある。 (1) 原則的な計上方法 貸倒引当金の原則的な計上方法としては、金銭債権を下記の3つに分類し、それぞれについて算定した取立不能見込額を貸倒引当金として計上する。 取引先が「倒産」したということは、経営破綻に陥っている状態であろうから、破産更生債権等に該当すると考えられる。したがって、担保の処分や保証が見込まれる場合は当該見込額を債権金額から控除するが、残額については全額取立不能と判断し、貸倒引当金を計上することになる。 (2) 法人税法の基準による算定方法 「中小企業会計指針」では、法人税法の基準による算定方法も認めている。平成23年12月の税制改正前の法人税法における区分によって算定される繰入限度額が、取立不能見込額に「明らかに満たない」場合を除き、当該繰入限度額を当期の貸倒引当金繰入額とすることができる。 具体的には次の通りである。 (※1) 担保権の実行その他により取立て等の見込みがある金額を除く。 (※2) 実質的に債権と見られない金額及び担保権の実行その他により取立て等の見込みがある金額を除く。 取引先が「倒産」してしまった場合には、個別評価金銭債権として貸倒引当金の繰入限度額を算定し、これを当期の貸倒引当金繰入額とすることができる。ただし、当該繰入限度額が、原則的な方法による取立不能見込額に「明らかに満たない」場合を除くことに、注意が必要である。 (3) 表示区分 貸借対照表における貸倒引当金の表示は、原則として対象となった項目ごとに控除する形で表示する。ただし、次の表示方法も認められる。 貸倒引当金繰入額は、損益計算書においては対象債権の区分に応じて次の通りに表示する。 貸倒引当金取崩額については、特別利益に計上する。 (4) 税務調整 【第1回】で解説したとおり、税務上の貸倒引当金の計上は、資本金又は出資金1億円以下の中小法人等にしか認められていない。したがって、これに該当しない法人においては、会計上は貸倒引当金を計上しなければならない場合であっても、法人税申告書においては別表調整が必要となる。 また、税務上の貸倒引当金の計上が認められる法人であっても、原則的な方法で会計上の貸倒引当金を計上し、税務上の繰入限度額を超える場合は、やはり別表調整が必要である。 (連載了)
〈ツボを押さえて理解する〉 仕訳のいらない会計基準 【第6回】 「会計基準が「ナシ」から「アリ」の世界へ」 公認会計士・税理士 荻窪 輝明 ◆税務会計から企業会計の世界に進出 現在、企業会計を適用しているほぼすべての会社は、はじめから企業会計を適用する会社ではありませんでした。税務会計からスタートして、何かのきっかけで会計基準を導入し企業会計を適用する会社になっていったというのが一般的なストーリーではないでしょうか。 では、何が会社を企業会計の世界へと向かわせるのでしょうか。多くは次のケースが考えられます。 きっかけとして、もっとも自然なのが、会社がIPOを目指すケースです。IPOは、「Initial Public Offering」の頭文字の略で、「株式上場」、「新規上場」などと呼ばれています。これまで限られた株主によって経営維持されてきた会社が、パブリックカンパニーとして、証券取引所に上場し、誰もが取引所を通じて対象会社の株式を売り買いできるようになる会社(「上場会社」や「上場企業」と呼ばれます)を目指すことをいいます。 上場会社になると、金融商品取引法の枠組みに加わります。すると、第2回「会計基準の世界を俯瞰する」で見たように、財規で書かれている企業会計審議会やASBJが公表する会計基準を適用して企業会計の会社にならないといけないわけです。 極端にいうと、会計基準0%の会社が、会計基準100%の会社になるようなものです。つまり、会計基準が「ナシ」から「アリ」の世界に進出するようなものですね。 ほかには、会計監査人といわれる公認会計士や監査法人による会計監査が必要な会計監査人設置会社となる場合にも、会計基準の導入が必要です。ただし、上場会社ではない場合、適用されない会計基準がありますので、上場会社に比べると、適用する会計基準の数は限定されます。会社法上の大会社(いわゆる資本金5億円以上又は負債200億円以上の株式会社)に該当し、法律で会計監査が必要となった場合に適用されるケースが考えられます。 任意で会計監査を受ける、金融機関からの勧めがあり会計基準を導入して決算書の内容を充実させる、会計基準を導入していた会社に勤めていた人が転職してきたことをきっかけに自主的に会計基準の導入を進める、といった場合にも、会計基準アリの世界に進出することがあります。 会計基準が「ナシ」から「アリ」の世界への進出は、「積極的にする」というよりは「しなければならないからそうする」という理由が多い気がします。 ◆会計基準アリの財務諸表は見た目から違う 会計基準アリの財務諸表を見ると、ところどころに特徴があります。これから、会計基準の理解を深める皆さんは、会計基準アリの財務諸表、特に貸借対照表と損益計算書を参考に、最終形(ゴール)が、以下のような財務諸表の形になるというイメージを持っておくとよいでしょう。 実務上は、大半の勘定科目が何らかの会計基準と関係しているものですが、以下では、貸借対照表と損益計算書を例にしながら、より会計基準の特徴が出やすい勘定科目名に絞って赤字で強調しています。これらの勘定科目名が財務諸表に計上されているとしたら、「会計基準アリの会社だな」という見当がつきます。 【連結貸借対照表】 【連結損益計算書】 * * * 会計基準への理解が深まるということは、同時に上場会社を中心とした会計基準アリの財務諸表を読める人材になっているということです。これまでとは違った面白い世界が、きっと待っています。 さあ、会計基準の世界に飛び込む準備はできたでしょうか。 これから私と一緒に、一つ一つの会計基準の理解を少しずつ深めましょう。 (《第1章:さあ、会計基準の世界に飛び込もう!》終了)
フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第52回】 「パフォーマンス・シェア・ユニットの会計処理」 RSM清和監査法人 公認会計士 西田 友洋 【はじめに】 「パフォーマンス・シェア」とは、中長期の業績目標の達成度合いに応じて交付される株式による報酬のことである。パフォーマンス・シェアの導入方法としては、以下の2つの方法がある。 「初年度発行-業績連動譲渡制限解除型」とは、譲渡制限付株式(リストリクテッド・ストック)の譲渡制限解除の条件に業績等条件を課すものである。これは、平成29年度税制改正により、税務上損金算入が認められないことになったため、今後、導入する企業は多くないと考えられる。 「業績連動発行型(事後交付型、パフォーマンス・シェア・ユニット)」とは、初年度に役員等に対して業績等に連動する金銭債権等を付与することを決定し、その後、一定の業績等連動期間後に実際に付与された金銭債権等を現物出資財産として払い込みをしてもらい、株式を発行するものである。平成29年度税制改正により、一定の要件を満たす場合には、税務上損金算入が認められることとなった。 「業績連動発行型(事後交付型、パフォーマンス・シェア・ユニット)」は、業績条件の達成度合いに応じて株式数が変動するため、「初年度発行-業績連動譲渡制限解除型」よりもインセンティブ効果が高いと考えられる。 今後、企業が導入する場合は、「業績連動発行型(事後交付型、パフォーマンス・シェア・ユニット)」が多いと考えられることから、本解説では、「業績連動発行型(事後交付型、パフォーマンス・シェア・ユニット)」を前提に解説する。 また、「業績連動発行型(事後交付型、パフォーマンス・シェア・ユニット)」の会計処理については、会計基準が定められていないため、会計制度委員会研究報告第15号「インセンティブ報酬の会計処理に関する研究報告(以下、「研究報告」という)」に記載されている会計処理に基づいて解説する。 ※各ステップをクリックすると、それぞれのページに移動します。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 【STEP1】では、以下の会計処理について検討する。 (1) 株主総会及び取締役会決議日時点 決議時点では、株式や新株予約権の発行がなく、また、何らかの義務が生じていないことから、会計処理は必要ないと考えられる(研究報告Ⅵ6.(3)①ア)。 (2) 業績評価期間中の各期末日(四半期決算日を含む) パフォーマンス・シェア・ユニットでは、労働等の役務の提供を受ける企業が、事前に定められた条件(業績の達成度合いに連動する株式数の決定方法)に従い、事後的に役員等に金銭債権等を付与し、当該金銭債権等の現物出資を受ける。 当該金銭債権等は、業績評価期間の役務に対応する形で事後的に付与されるため、パフォーマンス・シェア・ユニット導入時から株式交付時点までに係る役員等からの役務提供について、業績評価期間にわたり株式報酬費用等及び対応する負債(引当金)を計上することが考えられる(研究報告Ⅵ6.(3)①イ)。 また、株式報酬費用等の金額の算定方法であるが、当初決議時点において、業績目標の達成度合いごとに「株数」を決定する場合では、業績目標の達成度合いだけでなく、株価の変動によっても交付される株式の時価総額が異なる。この場合、最終的な金銭債権等の金額は、「業績評価期間の末日等の株価 × 株数(業績目標の達成度合いにより変動)」という算式で決定され、業績評価期間の経過期間に応じて義務が生じていると考えられる。そのため、費用計上額も毎期末の時価(株価)により算定していくことになると考えられる。 具体的には、事業年度をまたいで業績評価期間が設定されている場合に、各期末の費用計上累計額は以下のとおり算定され、前期末時点での費用計上累計額との差額が当期に費用計上される(研究報告Ⅵ6.(3)②)。 なお、業績目標の達成見込みは、条件と業績目標の達成可能性を勘案し、期待値法又は最頻値法などの方法の中から、適切と考えられる方法を用いて、金額を算定することが考えられる(研究報告Ⅵ6.(3)②)。 【STEP2】では、(1)業績条件達成の場合と(2)不達成の場合の会計処理について検討する。 (1) 業績条件達成の場合 提供された役務等に対する金銭債権等は、業績条件が達成された時点で現物出資として払い込まれる。したがって、業績評価期間中は【STEP1】(2)のとおり、負債(引当金等)に計上しておき、業績条件が達成された場合、役員等に付与された金銭債権等が現物出資されて株式が発行され、その時点で負債から資本に振り替えるような会計処理を行うことが考えられる(研究報告Ⅵ6.(3)①ウ)。 具体的には、業績条件が達成された場合、負債(引当金)を金銭債務等の確定債務に振り替え、付与した金銭報酬債権は、現物出資として払い込まれるため、金銭債権等と資本金を認識する。 なお、自社に対する金銭債権等が現物出資により払い込まれるため、金銭債権等と金銭債務等は混同により消滅する(研究報告Ⅵ6.(3)①ウ)。 (2) 業績条件が不達成の場合 業績条件を達成できなかった場合、株式の発行(又は自己株式の処分)は行われないため、負債として計上した金額を株式報酬費用等を相手勘定として振り戻すことが考えられる(研究報告Ⅵ6.(3)①エ)。 《設例》 3月決算の会社で、業績連動報酬制度を導入した。 〈会計処理〉 1 X11年3月期 (※1) 基準交付株式数10,000株 × 業績連動係数1.17(※2) × 株価100円 × 対象者1名 ×(職務執行期間9ヶ月 ÷ 36ヶ月)= 292,500 (※2) 業績連動係数1.17 =(X11年3月期実績100億円 + X12年3月期予想120億円 + X13年3月期予想130億円)÷ 目標連結営業利益300億円 2 X12年3月期 (※3) 基準交付株式数10,000株 × 業績連動係数1.13(※4)× 株価110円 × 対象者1名 ×(職務執行期間21ヶ月 ÷ 36ヶ月)- X11年3月期株式報酬292,500円 = 432,583 (※4) 業績連動係数1.13 =(X11年3月期実績100億円 + X12年3月期実績110億円 + X13年3月期予想130億円)÷ 目標連結営業利益300億円 3 X13年3月期 (※5) 基準交付株式数10,000株 × 業績連動係数1.17(※6)× 株価130円 × 対象者1名 ×(職務執行期間33ヶ月 ÷ 36ヶ月)- X11年3月期株式報酬費用292,500円 - X12年3月期株式報酬費用432,583円 = 669,167 (※6) 業績連動係数1.17 =(X11年3月期実績100億円 + X12年3月期実績110億円 + X13年3月期実績140億円)÷ 目標連結営業利益300億円 4 X14年3月期 (※7) 基準交付株式数10,000株 × 業績連動係数1.17(※6)× 株価150円 × 対象者1名 ×(職務執行期間36ヶ月 ÷ 36ヶ月)- X11年3月期株式報酬費用292,500円 - X12年3月期株式報酬費用432,583円 - X13年3月期株式報酬費用669,167円 = 360,750 * * * 以上、2のステップをまとめたフロー・チャートを再掲する。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (了)
社外取締役と〇〇マルマル 【第7回】 「社外取締役と買収防衛策」 西村あさひ法律事務所 パートナー 弁護士・ニューヨーク州弁護士 野澤 大和 1 はじめに 近時、わが国においてアクティビスト(物言う株主)の活動が再び活発になっている。また、従来はあまり見られなかったが、わが国においても事業会社による他の会社への現経営陣の賛同を得ないで行う買収(以下「敵対的買収」という)も見られるようになってきた。アクティビストや他の事業会社による経営権取得を目的とする敵対的買収への対抗策の1つとして買収防衛策が検討されることがある。しかし、買収防衛策はその運用次第では経営陣の自己保身に利用されるおそれもあることから、経営陣の恣意的な判断を排除するための仕組みが必要となる。 そこで、本稿では、買収防衛策の概要とともに、経営陣の恣意的な判断を排除するために設置される独立委員会の機能と社外取締役が果たす役割について解説する。 2 買収防衛策の概要 (1) 買収防衛策の仕組み わが国における一般的な買収防衛策は、いわゆる「事前警告型」と呼ばれるものである。事前警告型買収防衛策とは、一般的に、①対象会社の株式の大規模買付を行おうとする者に対して、遵守すべきルールをあらかじめ設定し、②当該ルールが遵守される場合には、原則として差別的行使条件付の新株予約権無償割当て等の対抗措置を発動しない一方で、当該ルールを遵守しない場合又は当該ルールを遵守した場合でも対象会社の企業価値を毀損するときは例外的に対抗措置を発動するという特徴を有している。買収防衛策の導入手続としては、株主総会の承認を得るのが通常であるが、事前警告型と異なり、「有事導入型」の場合は取締役会決議で導入する事例(※1)もある。 (※1) 太田洋=松原大祐=政安慶一「東芝機械の『特定標的型・株主判断型』買収防衛策について〔上〕」旬刊商事法務2240号(2020)12頁参照。 なお、わが国において、事前警告型を中心とする買収防衛策を導入している企業の数は、2015年には478社であったが、2020年5月末時点では、4割減少し、289社となっている(※2)。 (※2) 2020年6月20日付日本経済新聞朝刊13頁「買収防衛策 新たに7社」参照。 (2) なぜ買収防衛策が必要とされるのか 買収防衛策が必要とされる理由(※3)としては、主に、①敵対的買収が株主にとって利益になるかどうかについては、株主より取締役会の方が情報を持っているため、取締役会の判断に委ねた方が株主の利益になること、②株主以外のステークホルダー(特に、従業員)の利益になること(※4)、③価格差がある二段階買収等の強圧性(※5)が生じる買収手法に対して強圧性を排除すること、④株主の適切な判断を可能とするための情報提供及び検討期間を確保するために必要であること、⑤取締役会により・・良い買収条件を求めて買収者と交渉する力を与えるために必要であること等が挙げられる。 (※3) 議論の詳細については、田中亘『企業買収と防衛策』(商事法務、2012年)29~36頁、松中学「買収防衛策とその法的規律」法学教室433号(2016年)35頁参照。 (※4) 松井秀征「敵対的企業買収と防衛策」江頭憲治郎編『株式会社法大系』(有斐閣、2013年)606~607頁。 (※5) 「強圧性」とは、例えば、公開買付けが成功した場合において、買付けに応じなかった株主は、応じたときよりも不利に扱われることが予想されるときは、たとえ大多数の株主が、買付価格は客観的な株式価値よりも低いと考えているときでも、買付けに応じるように強いられるという問題である(田中・前掲(※3)45頁)。 3 独立委員会の機能と社外取締役の役割 (1) 独立委員会の機能 買収防衛策は、敵対的買収が買収者の意図したとおりに行われることを困難にする効果を持つような行為である(※6)。そのため、買収防衛策は、その運用次第では、経営陣の保身を目的に利用される可能性があるため、実務上は、取締役会により恣意的に買収防衛策が発動されるリスクの対処として、社外取締役又は社外監査役を中心とした「独立委員会」等の名称を付した任意の委員会が設置され(※7)、買収防衛策の発動は独立委員会の勧告に基づいてする仕組みとされることが多い(※8)。 (※6) 田中・前掲(※3)1頁。 (※7) 経済産業省=法務省「企業価値・株主共同の利益の確保または向上のための買収防衛策に関する指針」(2005年5月27日)13頁、企業価値研究会「近時の諸環境の変化を踏まえた買収防衛策の在り方」(2008年6月30日)16頁。 (※8) 田中・前掲(※3)214頁。 取締役会の監督機能には、会社との利益相反が生じる業務執行の監督が含まれるが、利益相反に対処する方法は、通常、利益相反が生じている問題の意思決定を経営陣から独立した意思決定主体に委ねることで行われる(※9)。そこで、経営陣から独立した機関として、社外取締役又は社外監査役を中心とした独立委員会が設置される。独立委員会において、買収者からの情報提供期間及び取締役会評価期間の延長の可否や買収防衛策の発動の当否等について議論されることで、買収防衛策の発動プロセスにおける取締役の判断の恣意性が排除され、当該プロセスの公正性が担保されることとなる。 (※9) 川濱昇「取締役会の監督機能」森本滋=川濱昇=前田雅弘『企業の健全性確保と取締役の責任』(有斐閣、1997)25~26頁。 (2) 社外取締役の役割 社外取締役は、経営陣から独立した立場で、会社と業務執行を行う経営者との間の利益相反を監督する機能が期待されている(※10)。買収防衛策の恣意的な運用による経営陣の自己保身という会社と経営陣との利益相反を監督するために、社外取締役が独立委員会の委員として活動することは、まさに社外取締役に期待されている役割であると考えられる。 (※10) 坂本三郎編著『一問一答平成26年改正会社法〔第2版〕』(商事法務、2015)19頁注1。 なお、令和元年会社法改正によりセーフ・ハーバーとして社外取締役への業務執行の委託に関する規律(改正会社法348条の2)が設けられたことから、今後、実務において、買収防衛策における独立委員会の委員として社外取締役を選任する場合に念のため当該規律に基づく社外取締役への業務執行の委託が行われる可能性がある。 4 おわりに アクティビストや事業会社による敵対的買収の懸念が現実的になっている近時の状況に鑑みると、今後、新たに買収防衛策を導入したり、導入の検討をしたりする企業が出てくることも想定し得る(※11)。 (※11) 日本経済新聞朝刊・前掲(※2)13頁参照。 この点、コーポレートガバナンス・コードは、買収防衛策の目的が経営陣・取締役会の保身であってはならないことを前提に、上場会社に対して、買収防衛策の導入・運用について、株主に対する受託者責任を全うする観点から、その必要性・合理性の検討を行い、適正な手続を確保するとともに、株主への十分な説明を行うことを求めているが(原則1-5)、買収防衛策それ自体を否定していない。 買収防衛策を導入する企業の社外取締役には、経営陣と会社との利益相反の監督という役割を自覚した上で、コーポレートガバナンス・コードの趣旨を踏まえ、買収防衛策が経営陣の自己保身に利用されることがないように健全に運用されるよう監督していくことが期待されている。 (了)
《速報解説》 国税庁、新型コロナウイルスに係る所得税関連のFAQを更新 ~海外勤務者の給与所得の取扱いやPCR検査費用等の医療費控除適用可否を明確化~ Profession Journal編集部 コロナ禍に見舞われた2020年も残すところ約2か月となり、これから年末に向けて確定申告を意識する時期となるが、国税庁は10月23日付けで「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」を更新、所得税の取扱いに関する7つの問答を新たに公表した。 新設の7問は大きく、①新型コロナウイルス感染症対策として日本の出入国が制限される中での海外勤務者など影響のある者に関する所得課税の取扱い、②マスク購入やPCR検査などコロナ関連の支出に関する医療費控除の適用可否に分かれている。 ①については、例えば日本に事務所等を有しない外国法人への転職で、現地で勤務する予定(1年以上)であった者が、新型コロナウイルス感染症の世界的拡大で日本から出国することができず、国内の所在地で外国法人の業務に従事(在宅勤務)している場合、この者は居住者に該当するため、外国法人から支払われる給与については給与所得として、確定申告書の提出及び納税が必要となる旨が示されている(外国法人の源泉徴収義務はなし)。 上記のようなケースでは、今後ビジネス目的の渡航が緩和され海外勤務地へ向かうことになった場合、原則として出国の日までに(準)確定申告と納税をするか、納税管理人を定めて税務署へ届け出ることで法定期限(翌年3月15日)までに申告・納税をすることになるため、手続等、失念しないよう注意しておきたい。 上記を含め、新たに以下の問答が公表されている。 ②については、一時深刻な品不足となり高額での取引も見られたマスクの購入費用については、病気の感染予防を目的に着用するものであり医療費控除の対象とはならないとし、新型コロナウイルス感染症のPCR検査費用については、感染の疑いがあるとして医師等の判断により受けた場合の検査費用は医療費控除の対象となる(公費負担分を除く)が、単に感染していないことを明らかにする目的で受けるPCR検査など、自己の判断により受けた場合の検査費用は医療費控除の対象とはならない(※)としている。 (※) ただしPCR検査の結果、「陽性」であることが判明し、引き続き治療を行った場合には、その検査は治療に先立って行われる診察と同様に考えることができるため、その場合の検査費用については、医療費控除の対象となる(所基通73-4)。 上記を含め、新たに以下の問答が公表されている。 なお上記新問の他に、既存の問答「個人に対して国や地方公共団体から助成金が支給された場合の取扱い」において、Go Toキャンペーン事業における給付金が一時所得に区分されるとした内容の更新が行われている。 (了)
《速報解説》 会計士協会、改訂監査基準案に対応した 監基報540「会計上の見積りの監査」等(公開草案)を公表 ~新たな概念である「固有リスク要因」の導入や定義の明確化等を図る~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2020年10月23 日、日本公認会計士協会は、監査基準委員会報告書540「会計上の見積りの監査」等(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。 これは、企業会計審議会が改訂を予定している監査基準の内容を反映させるためのものである。監査基準の改訂に関する公開草案では、監査人は、会計上の見積りの合理性を判断するために、経営者が行った見積りの方法の評価、その見積りと監査人の行った見積りや実績との比較等により、十分かつ適切な監査証拠を入手しなければならないなどの改訂を予定している。 意見募集期間は2020年11月24日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 監査基準委員会報告書540(以下「監基報540」という)の主な改正点は次のとおりである。 1 定義 「会計上の見積り」とは、適用される財務報告の枠組みに従って、金額の測定に見積りの不確実性を伴うものをいう(11項(1))。 「見積りの不確実性」とは、正確に測定することができないという性質に影響される程度をいう(11項(3))。 「固有リスク要因」とは、内部統制が存在していないとの仮定の上で、アサーションに虚偽表示が生じる可能性のある状況及び事象の特性である(A8項。《付録1 固有リスク要因》を参照)。 2 適切な運用 監基報540において、適用される財務報告の枠組みに照らして合理的であるとは、次の事項を含め、適用される財務報告の枠組みにおいて要求される事項が適切に適用されていることを意味する。この「適切に適用されている」という用語は、適用される財務報告の枠組みに準拠しているだけでなく、その枠組みにおける測定基礎の目的に合致した判断が行われることを意味している(9項、A13項)。 3 リスク評価手続 企業及び企業環境を理解する際、監査人は、企業の会計上の見積りに関連する事項を理解しなければならない。 例えば次の事項である(12項)。 そして、監査人は、当年度における重要な虚偽表示リスクの識別と評価に役立てるために、過年度の会計上の見積りの確定額又は該当する場合には再見積額について検討しなければならない(13項)。 4 経営者がどのように会計上の見積りを行ったかの検討 監査人は、経営者がどのように会計上の見積りを行ったかを検討する場合、次の事項に関連する重要な虚偽表示リスクについて十分かつ適切な監査証拠を入手する必要がある。そのために、リスク対応手続として、22項から25項に従って立案し実施する手続を含めなければならない(21項)。 5 会計上の見積りに関する注記事項 監査人は、会計上の見積りに関する注記事項(25項(2)及び28項(2)に記載されている見積りの不確実性に関する注記事項を除く)について、アサーション・レベルで評価した重要な虚偽表示リスクに関する十分かつ適切な監査証拠を入手するためのリスク対応手続を立案し実施しなければならない(30項)。 6 コミュニケーション 監査役等、経営者とのコミュニケーションに際し、監査人は、会計上の見積りに関してコミュニケーションを行うべき事項があれば検討し、重要な虚偽表示リスクの原因が見積りの不確実性に関するものかどうか、又は会計上の見積り及び関連する注記を行う上での複雑性、主観性もしくはその他の固有リスク要因の影響に関するものかどうかについて考慮しなければならない(37項)。 7 適用の柔軟性 監基報540の要求事項の適用の柔軟性に関する指針が規定されている(3項、A20項からA22項、A63項、A67項及びA84項)。 Ⅲ 適用時期等 (了)
《速報解説》 会計士協会、「内部監査人の作業の利用」等の改正(公開草案)を公表 ~海外構成単位の監査におけるダイレクトアシスタンス防止への対応~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2020年10月21日、日本公認会計士協会は、監査基準委員会報告書610「内部監査人の作業の利用」等(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。 従来から、我が国では内部監査人による監査人の直接補助(ダイレクトアシスタンス)を禁止しているが、海外の構成単位の監査においても内部監査人が構成単位の監査人を直接補助することがないようにする。 意見募集期間は2020年11月24日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 我が国では、法令により、監査人がその職務を行うに当たり、被監査会社の使用人等を補助者として使用することが禁じられている。 このため、本報告書は、監査人が監査手続を実施するに当たり、内部監査人が監査人を直接補助する場合を取り扱わないこととしている。 そこで、構成単位の監査においても内部監査人が構成単位の監査人を直接補助することがないようにするため、海外の構成単位の監査人とコミュニケーションを行うことが必要になることがあるとしている(A4-1)。 Ⅲ 適用時期等 改正後の本報告書は、2021年3月31日以後終了する事業年度に係る監査及び同日以後開始する中間会計期間に係る中間監査から適用する。 (了)
《速報解説》 監査基準改訂案を受け、監基報720の大幅な改正(公開草案)が公表される ~年次報告書等開示書類の「その他の記載内容」に関する監査人の責任を規定~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2020年10月21日、日本公認会計士協会は、監査基準委員会報告書720「監査した財務諸表が含まれる開示書類におけるその他の記載内容に関連する監査人の責任」等の改正(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。 これは、企業会計審議会が改訂を予定している監査基準の内容を反映させるためのものである。監査基準の改訂に関する公開草案では、監査した財務諸表を含む開示書類のうち当該財務諸表と監査報告書とを除いた部分の記載内容(その他の記載内容)について、監査人の手続を明確にするなどの改訂を予定している。 意見募集期間は2020年11月24日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 監査基準委員会報告書720(以下「監基報720」という)は、その名称を監査基準委員会報告書720「その他の記載内容に関連する監査人の責任」と改正する予定である。 監査報告書の文例も示されている。 監基報720の主な改正点は、次のとおりである。 1 定義 「その他の記載内容」とは、監査した財務諸表を含む開示書類のうち当該財務諸表と監査報告書とを除いた部分の記載内容をいう(11項(1))。 その他の記載内容は、通常、財務諸表及びその監査報告書を除く、企業の年次報告書に含まれる財務情報及び非財務情報である。 付録1では、その他の記載内容に含まれる可能性のある数値又は数値以外の項目の例が記載されている。 「年次報告書」とは、法令等又は慣行により経営者が通常年次で作成する単一又は複数の文書であり、企業の事業並びに財務諸表に記載されている経営成績及び財政状態に関する情報を所有者(又は類似の利害関係者)に提供することを目的としているものをいう(11項(3))。 監基報720は、決算短信等の財務情報の速報には適用されない(7項)。 2 その他の記載内容の通読及び検討 監査人は、その他の記載内容を通読しなければならず、通読の過程において、次のことを行わなければならない(13項)。 また、監査人は、13項に従ってその他の記載内容を通読する過程において、財務諸表又は監査人が監査の過程で得た知識に関連しないその他の記載内容について、重要な誤りがあると思われる兆候に注意を払わなければならない(14項)。 3 重要な相違があると思われる場合など 監査人は、重要な相違があると思われる場合(又は重要な誤りがあると思われるその他の記載内容に気付いた場合)、当該事項について経営者と協議し、必要に応じてその他の手続を実施する(15項)。 4 監査報告書 監査人は、監査報告書に「その他の記載内容」又は他の適切な見出しを付した区分を設けなければならない(20項)。 「その他の記載内容」区分には、次の事項を含めなければならない(21項)。 ただし、12項に基づいて実施した手続の結果、その他の記載内容が存在しないと判断した場合には、その他の記載内容が存在しないと判断した旨及びその他の記載内容に対していかなる作業も実施していない旨を記載する(21項)。 Ⅲ 適用時期等 (了)
2020年10月22日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.391を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。