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プロフェッションジャーナル No.333が公開されました!~今週のお薦め記事~

2019年8月29日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.333を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2019/08/29

谷口教授と学ぶ「税法の基礎理論」 【第18回】「租税法律主義と実質主義との相克」-税法の目的論的解釈の過形成【補遺】-

谷口教授と学ぶ 税法の基礎理論 【第18回】 「租税法律主義と実質主義との相克」 -税法の目的論的解釈の過形成【補遺】-   大阪大学大学院高等司法研究科教授 谷口 勢津夫   Ⅰ はじめに 今年前半を振り返ってみると、これまで経験したことのなかったことであるが、同一の判決の評釈を別々の雑誌に書いた。その判決は、東京地判平成29年12月6日(未公刊・裁判所ウェブサイト。以下「本件東京地判」という)であるが、1つ目の評釈は、既に『平成30年度重要判例解説』ジュリスト1531号(2019年4月)188頁で公表し、2つ目の評釈は、先月末に脱稿し『最新租税基本判例70』税研208号(2019年11月発刊予定)で公表することになっている。 今年3月に2つ目の評釈の依頼があった時には、1つ目の評釈に比べて紙数が少し多めであることから、解説を少し詳しく書くことにしようと考え引き受けたのであるが、その約2か月半後の令和元年5月29日に控訴審・東京高裁で示された判決(未公刊。以下「本件東京高判」という)に接してその方針を変更し、1つ目の評釈に比べて本件東京地判の解説を削減した上で本件東京高判についても紙数の許す限りできるだけ検討を加えることにした。 両判決はともに納税者の請求を認容して課税処分を取り消したが、その理由づけを異にする。とりわけ両判決の行った目的論的解釈は、両判決の論理構成において異なる意味を有するが、そのことを検討していくうちに、税法の目的論的解釈の「過形成」が惹起する、これまで検討してこなかった問題に気が付いた。 そこで、第16回をもって「一旦」検討を締め括った税法の解釈適用の「過形成」について「補遺」として本件東京地判及び本件東京高判における目的論的解釈を検討しておくことにするが、長くなったので2回に分けて掲載することにする(今回はⅡまで、次回はⅢ Ⅳ)。なお、前回の冒頭において、今回からは租税回避を検討する旨を予告しておいたが、租税回避の検討は次々回(第20回)からに変更させていただくことをお断りしておく。 本論に入る前に、本件の事実の概要について以下で述べておくことにする。 内国法人X(原告・被控訴人)は、平成24連結事業年度において、外国子会社から資本剰余金及び利益剰余金をそれぞれ原資とする剰余金の配当(以下では前者を「本件資本配当」、後者を「本件利益配当」、両者を併せて「本件配当」という)を受け、本件資本配当については法人税法24条1項3号にいう資本の払戻しの一態様である「剰余金の配当(資本剰余金の額の減少に伴うものに限る。)」に、本件利益配当については同法23条1項1号にいう「剰余金の配当(・・・資本剰余金の額の減少に伴うもの・・・を除く。)」に該当することを前提にして連結確定申告をしたところ、A税務署長から平成26年4月28日付けで、これらの剰余金の配当は、それぞれの効力発生日が同じ日であることなどから、その全額が同法24条1項3号の資本の払戻しに該当するとして法人税の更正処分を受けたため、Y(国-被告・控訴人)に対し、当該更正処分のうち連結所得金額が上記申告に係る金額を超え、翌期へ繰り越す連結欠損金額が上記申告に係る金額を下回る部分の取消しを求めて訴えを提起した。 なお、本稿では、法人税関係法令については本件当時の条名で表記するが、現行法では法人税法24条1項3号は同項4号に、同条3項は同条4項に、同法施行令23条1項3号は同項4号にそれぞれ変更されていることを予めお断りしておく。   Ⅱ 本件における目的論的解釈 1 本件東京地判による目的論的解釈 本件における第1の争点は、法人税法24条1項3号にいう「剰余金の配当(資本剰余金の額の減少に伴うものに限る。)」の意義であるが、東京地裁は次のとおり判示し(下線筆者)これを「資本剰余金のみを原資とする剰余金の配当及び資本剰余金と利益剰余金の双方を原資とする剰余金の配当」の意味に解した。 東京地裁はこのような文理解釈の結果を、上記判示の後に「また」という接続詞で続けて次のとおり判示したところ(特に「趣旨」。下線筆者)を考慮した目的論的解釈によって、補完した。 本件東京地判における文理解釈の方法・内容(Ⅳで検討する)や目的論的解釈の内容・射程(Ⅲで検討する)はともかく、一般論としては、文理解釈の結果を目的論的解釈によって補完するという東京地裁の解釈態度は、文理解釈を重視する判例(最判平成22年3月2日民集64巻2号420頁等)でも取られており、妥当なものである(【45】=拙著『税法基本講義〔第6版〕』(弘文堂・2018年)の欄外番号。以下同じ)。 2 配当先後関係問題 東京地裁が上の引用判示の中で目的論的解釈の基準となる「趣旨」に関して説示した「問題」は、資本剰余金と利益剰余金という配当原資を異にするいわゆる混合配当に関する2つの剰余金の配当の先後関係の問題(以下では「配当先後関係問題」という)であるが、この問題について次のような解説がされている(太田洋=伊藤剛志編著『企業取引と税務否認の実務~税務否認を巡る重要裁判例の分析~』(大蔵財務協会・2015年)535頁以下[園浦卓]。下線筆者)。 この解説にいう「プロラタ計算」は、「その[法人から交付を受けた]金銭の額及び金銭以外の資産の価額(・・・・・・)の合計額」のうち「当該法人の資本金等の額・・・・・・のうちその交付の基因となつた当該法人の株式又は出資に対応する部分の金額」(以下「対応資本金等の額」という)とそれを超える部分の金額(みなし配当の額)とを切り分けるために政令で定められた、対応資本金等の額の計算方法である(法税24条1項柱書・3項、同令23条1項)。本件で問題となったのは「資本の払戻し」(法税24条1項3号)に係るみなし配当であるが、その場合のプロラタ計算は、次の計算式で算出される当該払戻し等の直前の払戻等対応資本金額等を、当該払戻法人の当該払戻し等に係る株式の総数で除する、というものである(法税令23条1項3号)。 配当先後関係問題は、要するに、利益剰余金を原資とする配当と資本剰余金を原資とする配当との先後による、資本金等額対純資産比率という税法上の資本の部の構成比率の変動に基因する問題であるが、その変動は、剰余金の配当に係る会社法上の原資・時期選択可能性によって生ずるものである。この選択可能性については、次のような指摘(渡辺徹也『スタンダード法人税法〔第2版〕』(弘文堂・2019年)204頁)がされている。 立法者は、配当先後関係問題を解決するために、前記解説中の「②混合配当の全体が『資本剰余金の額の減少に伴』う剰余金の配当に該当するとして、かかる剰余金の配当の全額について、同法24条1項3号のみなし配当規定を適用するという考え方」に基づき、利益剰余金を原資とする配当を、資本剰余金を原資とする配当と取り扱うことによって、資本金等額対純資産比率の変動がなかったものとして、プロラタ計算を行うこととしたのである。 このような取扱いは、私法上の選択可能性の行使の結果を課税上は否認するという意味で租税回避の否認(【69】参照)に該当するが、会社法上の利益剰余金を原資とする配当を、混合配当に対する法人税の課税上は、資本剰余金を原資とする配当と取り扱うという意味ではいわゆる「税法基準」による取扱いといってもよく、また、その「趣旨」を考慮して行う目的論的解釈は税法基準による目的論的解釈といってもよかろう。 なお、「税法基準」という用語は、後でみる本件東京高判の判示の中でも用いられているが、「私法基準」との対比において借用概念と固有概念の区別(【50】参照)を念頭に置いて用いられる用語のようである(小山真輝「配当に関する税制の在り方-みなし配当と本来の配当概念との統合の観点から-」税務大学校論叢62号(2009年)1頁、73頁は「借用概念的な私法基準」及び「固有概念的な税法基準」という表現を用いている)。本稿では、課税要件を定めるに当たって①私法上の概念・法律関係等に準拠する場合その立法基準を「私法基準」と呼び、②当該租税法規の趣旨・目的に基づき独自の概念・法律関係等を用いる場合その立法基準を「税法基準」と呼ぶことにする。 3 本件東京高判による目的論的解釈 東京高裁も税法基準による目的論的解釈を行ったが、ただ、その射程は本件東京地判のそれとは異なる。東京高裁による目的論的解釈の射程を明らかにするために、本件における第1の争点、すなわち、法人税法24条1項3号にいう「剰余金の配当(資本剰余金の額の減少に伴うものに限る。)」の意義に関する東京高裁の判断をみておこう。 東京高裁は、その判断に当たって、一般論として文理解釈の原則(【44】参照)と借用概念に関する統一説(【52】参照)を述べた上で、法人税法24条1項3号の規律対象について次のとおり判示した(下線筆者)。 東京高裁は、以上の判示の後に「もっとも」という接続詞で続けて、配当先後関係問題が生じる事情を述べた後、次のとおり判示した(下線筆者)。 この判示の意味するところは、次の判示(下線筆者)によって敷衍されていると解されるが、そこには、私法基準を重視する解釈姿勢が認められる。 以上の判断に基づき、東京高裁は、次のとおり結論づけている(下線筆者)。 (了)

#No. 333(掲載号)
#谷口 勢津夫
2019/08/29

「特定事業継続力強化設備等の特別償却(中小企業防災・減災投資促進税制)」の解説 【第1回】「特別償却の適用要件」

「特定事業継続力強化設備等の特別償却 (中小企業防災・減災投資促進税制)」の解説 【第1回】 「特別償却の適用要件」   公認会計士・税理士 新名 貴則   令和元年度(平成31年度)税制改正において、「特定事業継続力強化設備等の特別償却制度」(いわゆる中小企業防災・減災投資促進税制)(以下、本税制)が創設された。本連載では、本税制の概要や手続等について解説する。 【第1回】では、本税制が創設された背景と、制度概要について解説する。   1 制度創設の背景 平成30年は地震や豪雨などの災害によって、全国で大きな被害が発生した。近年、このような大規模な自然災害が多発しており、中小企業の事業継続に大きな影響を与えている。 そこで、自然災害に対する中小企業の防災・減災対策を促進するため、「中小企業の事業活動の継続に資するための中小企業等経営強化法等の一部を改正する法律(中小企業強靭化法)」が令和元年7月16日に施行された。 同法に基づき防災・減災の事前対策に取り組む中小企業が「事業継続力強化計画」を策定し、経済産業大臣の認定を受けた場合、低利融資・信用保証枠拡大等の金融支援や、補助金の優先採択といった支援策を受けることができる。 また、当該支援策の一環として、特定事業継続力強化設備等の特別償却制度(中小企業防災・減災投資促進税制)が創設された(措法11の4、44の2、68の20)。   2 税制の概要 ① 概要 中小企業強靭化法に基づく「事業継続力強化計画」又は「連携事業継続力強化計画」の認定を受けた青色申告書を提出する中小企業者等が、当該計画に基づいて、指定期間内に一定の設備(特定事業継続力強化設備等)への投資を行う場合に、20%の特別償却を認める制度である。 ② 適用要件 当該税制を適用するためには、具体的には次の要件を満たすことが必要となる。 ③ 対象設備 本税制の適用対象となる設備は次の通りである。 ④ 税制措置の内容 対象設備を事業供用した事業年度において、20%の特別償却を適用できる。 ■特別償却 特別償却限度額 = 特定事業継続力強化設備等の取得価額 × 20% (注) 税務申告の際は、「特定事業継続力強化設備等の特別償却の償却限度額の計算に関する付表(特別償却の付表(15))」の添付が必要となる。 ■税額控除 税額控除の適用はない。 (了)

#No. 333(掲載号)
#新名 貴則
2019/08/29

令和元年度(平成31年度)税制改正における「みなし大企業」の範囲の見直しについて 【第2回】「令和元年度税制改正における範囲の見直し」

令和元年度(平成31年度)税制改正における 「みなし大企業」の範囲の見直しについて 【第2回】 「令和元年度税制改正における範囲の見直し」   公認会計士・税理士 鯨岡 健太郎   令和元年度税制改正により、中小企業者から除外される「みなし大企業」の判定における「大規模法人」の範囲が以下のように見直された。   1 みなし大企業の範囲への追加 「大規模法人」の範囲に、以下の法人が追加された(措令27の4⑫一)。 この改正により、大規模法人の範囲に「大法人」経由の法人群が加わったことによって、グループ法人税制の適用を受ける法人はすべて「大規模法人」に該当することとなり、法人税法上の規定との整合性が図られた(下図参照)。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 この改正により、「みなし大企業」の範囲も拡大されることとなった。これについては以下の例示で確認してみよう。 例① 【出典】 財務省『令和元年度 税制改正の解説』p.464(以下、本稿内同様) 例② 例③ 例④ なお、上記の改正は、法人の平成31年(2019年)4月1日以後に開始する事業年度分の法人税について適用し、法人の同日前に開始した事業年度分の法人税については、従前どおりとされている(H31所法等附49)。   2 みなし大企業の範囲からの除外 「大規模法人」の範囲から、独立行政法人中小企業基盤整備機構が除外された(措令27の6①ほか)。具体的には、みなし大企業の判定において、大規模法人の所有に属している株式から、中小企業等経営強化法の認定事業承継ファンドを通じて同機構が保有している株式を除外することとされた。 ただしこの取扱いは、以下の中小企業者向け租税特別措置の適用を受けるものに限る。 中小企業等経営強化法に定める「事業承継ファンド」の認定制度において、認定に係る事業承継ファンドは独立行政法人中小企業基盤整備機構から一定の出資を受けることとされており、かつ、その出資先が主としてその経営又は株式を承継しようとする者を確保することが困難な状況等に直面している中小企業者とされていることを踏まえ、その中小企業者が事業承継を行う上で必要な企業価値の維持・向上のための設備投資の促進に資すると考えられる上記6制度を適用できるようにする観点から、その適用対象となる中小企業者から除外される「みなし大企業」の判定において、同機構が認定事業承継ファンド経由で保有する株式を除外することとされたものである。 なお、上記の改正は、法人の平成31年(2019年)4月1日以後に終了する事業年度分の法人税について適用し、法人の同日前に終了した事業年度分の法人税については、従前どおりとされている(H31所法等附66)。   3 みなし大企業の判定における判定法人の発行済株式又は出資の範囲の見直し みなし大企業の判定を行うに当たって、判定対象となる法人の発行済株式又は出資から、自己株式又は自己出資が除かれることとされた(措令27の4⑫一)。 改正前は自己株式(出資)も含めたところで判定されていたが、これらは発行(出資)されていないものと同視できることから、判定から除外することになったものと考えられる。 なお、上記の改正は、法人の平成31年(2019年)4月1日以後に開始する事業年度分の法人税について適用し、法人の同日前に開始した事業年度分の法人税については、従前どおりとされている(H31所法等附49)。 (連載了)

#No. 333(掲載号)
#鯨岡 健太郎
2019/08/29

《相続専門税理士 木下勇人が教える》一歩先行く資産税周辺知識と税理士業務の活用法 【第5回】「特例事業承継税制(法人版)の実行時におけるリスク管理の徹底」

《相続専門税理士 木下勇人が教える》 一歩先行く資産税周辺知識と税理士業務の活用法 【第5回】 「特例事業承継税制(法人版)の実行時におけるリスク管理の徹底」   公認会計士・税理士 木下 勇人   平成30年度税制改正における目玉である「特例事業承継税制(法人版)」。新聞報道含め各種メディアでも大きく取り上げられ、金融機関もお客様提案のフック商品として気軽に提案されているのが現状といえる。 しかしながら、本税制には様々なリスクが内在しており、税理士がそのリスクへの対応を怠ると、リスクが顕在化した際に大きな損害を負う危険性を秘めている。 そこで、本稿では、特例事業承継税制(法人版)に内在するリスクの一部を検証することとする。   1 あくまで「猶予」という認識をもてるか 事業承継税制には各種財産(非上場株式、個人事業、農地、山林、医療法人の持分)に係る特例措置が用意されているが、これらは等しく「猶予」であって、当初から「免除」というわけではない。一例として、創業社長の保有する自社株を移転するケースで検討する。 特例事業承継税制(法人版)では、贈与又は相続(創業社長)で自社株を創業社長から2代目社長へ移転させる場合、2代目から3代目まで贈与又は相続(2代目)で自社株を移転させれば、創業社長の相続税が免除されることになる。ただし、2代目から3代目の移転を贈与で実行する場合には、その際の贈与税は納税猶予の適用が条件となる。 一般的な移転を考えると、3代目までの「株式の移転」と「代表の移転」がなければ免除まで辿り着けないため、道のりは決して短いとはいえない。事業の不確実性を考慮するならば、免除まで辿り着く前提ではなく、期限確定する可能性も視野に入れながら導入を検討すべきと考える。   2 法律全般のコンプライアンスを意識できるか 特例だけでなく一般措置を含む法人版の事業承継税制は、株価が高騰している中での贈与又は相続による移転での納税猶予を想定しているため、税法のみならず各種コンプライアンスが意識できなければ法的安定性が崩れてしまう。一例を挙げれば、「株式譲渡承認の手続」がある。 自社株(譲渡制限株式を前提)の移転に際し、会社法では株式譲渡承認の手続が必要とされている(136条以下)。譲渡当事者間では有効であっても会社との関係では無効となってしまうため、法的安定性に乏しい。そのため、相当多額の株式を移転するにもかかわらず、安定性の乏しい株式の移転では事業も不安定にならざるを得ないといえる。   3 各種期限管理 一般措置を含む事業承継税制(法人版)でよく語られるリスクとして、年次報告書(都道府県庁)・継続届出書(税務署)の未提出等による期限確定事由がある。代表例ではあるが、特例事業承継税制では、実質撤廃されたとはいえ、8割雇用が確保できていない場合の都道府県庁への様式27(特例承認計画に関する報告書)の提出には期間制限が課せられており、未提出等の場合は期限が確定する。具体的には様式27には「承継期間の末日の翌日から4ヶ月以内」という期限が設けられており(円滑規20③)、年次報告(申告期限の翌日から1年を経過するごとの日の翌日から3ヶ月を経過する日まで)とは異なるため、注意が必要といえる。 また、申告(贈与税又は相続税)期限前には都道府県庁への認定申請を行う必要があるが、これらについても膨大な数の添付書類を期限内(具体的には、申告期限の2ヶ月前)に提出する必要がある。事前に添付書類の確認をしておかなければ申請期限に間に合わないという可能性もあるため、事前確認は必須となる。   4 税務署への担保提供手続 あくまで納税猶予制度であるため、税務署への担保提供手続が必要となる。具体的には、申告期限までに、猶予税額と納税猶予期間中の利子税の額との合計額に相当する担保提供が必要となる(措法70の7の5①、70の7の6①、70の7の8①、70の7①、70の7の2①、70の7の4①)。 担保提供可能な財産の種類は国税通則法第50条に規定されており、担保提供手続は、担保の書類ごとに定められている。しかしながら、特例事業承継税制(法人版)適用にあたっては、猶予対象株式等のすべてを担保差し入れする、いわゆる「みなす充足要件」で満たす場合がほとんどであると想定されるが、株券発行会社と株券不発行会社か否かで手続の煩雑さはまったく異なる。そのため、申告期限内での担保提供を完了させるためには、事前確認・事前整備が必須となる。 (了)

#No. 333(掲載号)
#木下 勇人
2019/08/29

〈事例で学ぶ〉法人税申告書の書き方 【第41回】「特別償却の付表(9) 中小企業者等又は中小連結法人が取得した特定経営力向上設備等の特別償却の償却限度額の計算に関する付表」

〈事例で学ぶ〉 法人税申告書の書き方 【第41回】 「特別償却の付表(9) 中小企業者等又は中小連結法人が取得した 特定経営力向上設備等の特別償却の償却限度額の計算に関する付表」   公認会計士・税理士 菊地 康夫   Ⅰ はじめに 本連載では、法人税申告書のうち、税制改正により変更もしくは新たに追加となった様式、実務書籍への掲載頻度が低い様式等を中心に、簡素な事例をもとに記載例と書き方のポイントを解説していく。 今回は、前回に引き続き「中小企業経営強化税制」について、「特別償却の付表(9) 中小企業者等又は中小連結法人が取得した特定経営力向上設備等の特別償却の償却限度額の計算に関する付表」の記載の仕方を採り上げる。   Ⅱ 概要 この別表は、いわゆる中小企業経営強化税制(中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除)のうち、特別償却を適用する場合に記載する。 本制度は、青色申告を提出する法人が、指定期間内(平成29年(2017年)4月1日から令和3年(2021年)3月31日までの間(※1))に、中小企業等経営強化法の認定を受けた「経営力向上計画」に基づいて、一定の設備(以下「特定経営力向上設備等」という)を新規取得し、指定事業の用に供したときは、その事業の用に供した日を含む事業年度において、即時償却又は取得価額の10%もしくは7%(※2)の税額控除ができる制度である。 (※1) 平成31年度の税制改正において、本制度の適用期限が平成31年3月31日から2年延長されるとともに、特定経営力向上設備等に働き方改革に資する設備等(例えば、工場等の休憩室等に設置される冷暖房設備等や作業場等に設置されるテレワーク用PC等)が含まれることが明確化された。 (※2) 資本金3,000万円以下の法人(特定中小企業者等という)については10%、資本金3,000万円超1億円以下の法人については7%となる。 なお、制度の詳細は【第40回】の解説を参考にしていただきたい。   Ⅲ 「特別償却の付表(9)」の書き方と留意点 (1) 設例 (2) 今回の付表が適用される事業年度 平成31年4月1日以後終了する事業年度。 (3) 付表の記載例 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。 (4) 付表の各記載欄の説明 「適用要件等」 「中小企業者又は中小連結法人の判定」 (了)

#No. 333(掲載号)
#菊地 康夫
2019/08/29

相続税・贈与税の基本構造~日本と台湾の比較~ 【第2回】

相続税・贈与税の基本構造 ~日本と台湾の比較~ 【第2回】   大阪学院大学法学部教授 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   3 台湾の相続税・贈与税 台湾は、遺産課税体系を採用している。相続税・贈与税に関係する法律としては、「民法」(以下、台民)(相続:第1138条~第1225条)、「遺産及び贈与税法」(以下、遺贈税法)(1973.2に制定され、2009.1に大幅な改正が行われ、現在に至っている)で、他に、政省令に該当する「相続及び贈与税法施行細則」(以下、遺贈税細則)がある。 2009年1月の遺贈税法の改正によって、相続税及び贈与税の大幅な減税措置が実施された。この改正の背景には、台湾の富裕層の海外脱出が原因であると言われている。すなわち、台湾がこのような相続税・贈与税についての減税措置を採ったのは、台湾から海外に移された資金を台湾に呼び戻し、台湾の経済を活発化することにあると言われている。 もっとも、台湾の資産家は、すでに資金を海外に移動させるなどの様々な手法により相続税を回避していることから、この減税措置は、むしろ、未だ相続税対策を行っていない、中産階級の一般人に向けたものであるとも言われている。 2009年1月の改正前・改正後の比較をすると、次のようになる。 その後、2017年4月に、相続税及び贈与税の税率が、一律10%から10%~20%の累進課税に変更された(遺贈税法13、19)。 (注) 元=3.6176円(2019.4.4現在) 上記の改正理由について、財政部の「遺産及贈與税法部分條文修正草案総説明」は、 と説明し、財源の確保を目的として、増税を行っている。 (1) 法定相続人と相続 ① 法定相続人と相続分 配偶者以外の法定相続人の順位は、以下のとおりである(台民1138)。 配偶者は、互いに相続人となる(台民1144)。 □代襲相続人 ・第一順位の相続人が相続開始前に死亡、又は相続権を喪失した場合には、その直系卑属が代襲相続人となりその相続分を承継する(台民1140)。 □相続分 ・同一順位の相続人の相続分は均等である(台民1141)。 ・配偶者の相続分は、第1順位(直系卑属)とともに相続する場合には均等、第2順位(父母)又は第3順位(兄弟姉妹)と相続する場合は2分の1、第4順位(祖父母)と相続する場合は3分の2となる(台民1144)。 ② 効力 相続は、被相続人の死亡により開始する(台民1147)。 被相続人の債務については、相続人は相続により取得した遺産に限定され、連帯して責任を負う。被相続人の債務について相続人間の責任は、法律により別の定めがある場合又は他に契約がある場合を除き、相続分に比例して負担する。 ③ 遺産の分割 遺産の分割には、「協議による分割」と「遺言による分割」がある。 相続人のうち相続開始前に、結婚、別居又は営業のためなどにより、被相続人より財産の贈与を受けている場合は、当該贈与額を相続開始時の被相続人の財産に加算し、承継すべき遺産とする。当該贈与価額を遺産分割のとき、当該相続人の相続分から控除する。贈与額は、贈与時の価値により計算する(台民1173)。 ④ 遺留分 相続人の遺留分は、以下のとおりである(台民1223)。 ⑤ 相続放棄 相続人は、相続を放棄することができる。相続の放棄は、相続できることを知ったときから3ヶ月以内に、裁判所に書面で行う(台民1174)。 相続放棄は、相続開始時に遡及して効力が発生する(台民1175)。 (2) 納税義務者、申告時期及び申告先 (注) 台湾の贈与税については、贈与税額が発生する場合、贈与発生後30日以内に、贈与税の申告をすることになる。  例えば、下記例の①については、免除額(220万元)により、贈与税の申告は必要ないが、②及び③の場合には、申告しなければならない。 (3) 課税財産の範囲 (4) 信託財産 (5) 納めるべき税額の計算 ① 相続税 (※) 遺産に加算した2年以内に贈与した財産がある場合は、納付した贈与税額及び利子を控除する。 ② 贈与税 (6) 非課税の範囲 (7) 免除額 (8) 控除額 (9) 財産の評価方法 相続及び贈与における主たる財産の評価方法は、次のとおりである。 ① 土地 公示価格又は評定標準価格(遺贈税法10③)。 ② 建物 評定標準価格(遺贈税法10③)。 ③ 債権 債権額、利息の定めがある場合は、被相続人の死亡の日又は贈与の行為があった日からの経過利息を加える。 ④ 上場株式又は店頭売買銘柄の有価証券 相続開始日又は贈与日における株式市場の終値又は店頭の当日の取引価格の加重平均により評価する。 ⑤ 未上場、未店頭売買の株式会社の株式 相続開始日又は贈与日の当該会社の純資産簿価に、以下の調整をして評価する。 (了)

#No. 333(掲載号)
#八ッ尾 順一
2019/08/29

措置法40条(公益法人等へ財産を寄附した場合の譲渡所得の非課税措置)を理解するポイント 【第13回】「承認特例の適用要件」

措置法40条(公益法人等へ財産を寄附した場合の 譲渡所得の非課税措置)を理解するポイント 【第13回】 「承認特例の適用要件」   公認会計士・税理士・社会保険労務士 中村 友理香   - 質 問 - 私は所有する不動産をある公益財団法人に寄附することを考えています。私を含め親族は寄附する予定の公益財団法人とは何ら関係がなく、役員にも就任しておらず、職員としても勤務していません。 この場合、所得税が非課税となる措置を受けるための要件は何か変わりますか。   - 回 答 - 寄附者が当該公益社団法人・財団法人の役員等及び社員並びにこれらの人の親族等に該当せず、かつ、寄附先の公益財団法人が行政庁から基金の証明を受けているのなら、承認特例対象法人に財産を寄附した場合における譲渡所得等の非課税の特例(承認特例)の制度の適用を受けられる可能性があります。 ○●○◆ 解 説 ◆○●○ 個人が、土地、建物、株式などの財産を公益社団法人・財団法人に寄附した場合に、寄附をした人がその法人の役員等に該当しないこと等の承認要件を満たすものとして国税庁長官の承認を受けたとき(申請書を提出した日から1ヶ月又は3ヶ月以内(※)にその申請について国税庁長官の承認がなかったとき、又は承認しないことの決定がなかったときは、その申請について非課税承認があったものとみなされます)には、この寄附に対する所得税を非課税とする制度があり、本問でもこの承認特例制度における3つの要件のすべてを満たす場合は、制度の適用を受けることが可能です(措令25の17⑦⑧)。 (※) 寄附財産が株式等である場合には3ヶ月以内。 ところで、租税特別措置法第40条の一般特例を受ける場合には、下記の3つの条件を満たす必要があり、かつ、承認が出るまで2~3年ほどの期間がかかると言われています。 これに対し、承認特例の場合には、前述のとおり国税庁長官への承認申請から1ヶ月(株式の場合は3ヶ月)の期間、何も連絡が来なかった場合には、承認されたものとみなされますので、承認までの期間も短く、また要件も一般特例と比べ、より簡易な内容となっています。 承認特例の要件は次の3つですが、その内容は一般特例とは異なります。 本問では、寄附者が寄附候補として検討している公益財団法人とは何ら関係がないとのことなので、要件aは満たしています。よって、その他の2つの要件b及び要件cも満たされるなら、当該寄附に対する譲渡所得税は非課税とされます。 ただし、当該公益法人において寄附を行った日が属する事業年度終了後3ヶ月以内に、寄附者が公益法人から交付される基金明細書の写しを所轄税務署に提出しなかった場合には、承認特例が取り消され、譲渡所得税が課税されることになります(措令25の17⑨⑩)。   (了)

#No. 333(掲載号)
#中村 友理香
2019/08/29

企業結合会計を学ぶ 【第24回】「子会社が親会社に会社分割により事業を移転する場合の会計処理」

企業結合会計を学ぶ 【第24回】 「子会社が親会社に会社分割により 事業を移転する場合の会計処理」   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 今回は、共通支配下の取引等の会計処理のうち、子会社が親会社に会社分割により事業を移転する場合の会計処理(会社分割の対価が親会社株式のみの場合)について解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 個別財務諸表上の会計処理 1 概要 子会社が親会社に会社分割により事業を移転する場合(会社分割の対価が親会社株式のみの場合)、個別財務諸表上、次のように会計処理する(結合分離適用指針214項、216項、442項)。 親会社と子会社との取引において、非支配株主の出資比率により個別財務諸表上の会計処理を区別することは、現行の会計慣行にはないことから、個別財務諸表における当該会社分割の会計処理は、非支配株主の出資比率にかかわらず、すべて共通支配下の取引として取り扱い、移転先企業(親会社)は移転元企業(子会社)の適正な帳簿価額に基づいて会計処理するものである(結合分離適用指針442項)。 ◎親会社(吸収分割承継会社) 【資産及び負債の会計処理】 親会社が子会社から受け入れる資産及び負債は、企業結合会計基準41項により、分割期日の前日に付された適正な帳簿価額により計上する。 【増加すべき株主資本の会計処理】 移転事業に係る評価・換算差額等(結合分離適用指針87項(1)②)(親会社が作成する連結財務諸表において投資と資本の消去の対象とされたものを除く)を引き継ぐ。 移転事業に係る株主資本相当額(結合分離適用指針87項(1)①)は払込資本(資本金又は資本剰余金)として処理する。 増加すべき払込資本の内訳項目(資本金、資本準備金又はその他資本剰余金)は、会社法の規定に基づき決定する(結合分離適用指針409項)。 移転事業に係る株主資本相当額がマイナスとなる場合には、払込資本をゼロとし、その他利益剰余金のマイナスとして処理する(結合分離適用指針445項)。 【企業結合(会社分割)に要した支出額の会計処理】 企業結合(会社分割)に要した支出額は、発生時の事業年度の費用として会計処理する。 ◎子会社(吸収分割会社) 子会社が受け入れる親会社株式の取得原価は、企業結合会計基準43項により、移転事業に係る株主資本相当額に基づいて算定する。 具体的には、親会社が子会社に会社分割により事業を移転する場合の会計処理(会社分割の対価が子会社株式のみの場合)の親会社の会計処理(結合分離適用指針226項)に準じて処理する。 事業分離(会社分割)に要した支出額は、発生時の事業年度の費用として会計処理する。 2 親会社が子会社から受け入れる資産及び負債の修正処理 前述のように、子会社が親会社に会社分割により事業を移転する場合には、親会社の個別財務諸表上、原則として、適正な帳簿価額により資産及び負債を受け入れる会計処理を行う。 次のことに注意する(結合分離適用指針215項)。   Ⅲ 連結財務諸表上の会計処理 連結財務諸表上の会計処理は、実質的に非支配株主持分相当額と考えられる部分については、非支配株主との取引に準じて処理するものである(結合分離適用指針442項)。 具体的には、子会社に交付する親会社株式のうち実質的に非支配株主に交付したものと考えられる部分(非支配株主持分相当額)を非支配株主持分から控除する(結合分離適用指針442項)。 次のように会計処理する(結合分離適用指針217項)。 (1) 内部取引の消去 子会社が会社分割の対価として受け入れた親会社株式のうち、分割期日の前日における親会社持分相当額とこれに対応する親会社の払込資本の増加額は、企業結合会計基準44項により、内部取引として消去する。 (2) 親会社株式のうち非支配株主持分相当額の振替処理 子会社が受け入れた親会社株式のうち、分割期日の前日における非支配株主持分相当額は、自己株式等会計基準15項に従い非支配株主持分から控除する。 上記の連結財務諸表上の会計処理に関する基本的な考え方は次のとおりである(結合分離適用指針442項)。 (了)

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#阿部 光成
2019/08/29

経理担当者のためのベーシック会計Q&A 【第152回】金融商品会計⑱「払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品(転換社債型新株予約権付社債)の会計処理」

経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第152回】 金融商品会計⑱ 「払込資本を増加させる可能性のある部分を含む 複合金融商品(転換社債型新株予約権付社債)の会計処理」   仰星監査法人 公認会計士 小林 清人     〈事例による解説〉   〈会計処理〉(単位:千円) 【一括法を採用した場合】 ① 発行時 ◆X1年4月1日 ② 権利行使時 ◆X4年4月1日 【区分法を採用した場合】 ① 発行時 ◆X1年4月1日 ② 償却原価法の適用 ◆X2年3月31日 (※1) (100,000千円-98,000千円)÷5年 ◆X3年3月31日 (※2) (100,000千円-98,000千円)÷5年 ③ 権利行使時 ◆X4年4月1日 (※3) (98,000千円+400千円+400千円)   〈会計処理の解説〉 転換社債を発行した場合の処理は、「一括法」と「区分法」の2つの処理が認められています。 1 発行時の処理 一括法では、社債の対価部分と新株予約権の対価部分に区分せず、普通社債の発行に準じて処理します。したがって、本事例の場合、払込金額がそのまま社債の帳簿価額となります(上記【一括法を採用した場合】①の仕訳参照)。 区分法では、社債の対価部分と新株予約権の対価部分に区分し、それぞれ普通社債の発行及び新株予約権の発行に準じて処理します。 すなわち、本事例の場合、社債部分が@98円であるため、100,000千円÷100円×@98円=98,000千円となり、新株予約権部分は@2円であるため、100,000千円÷100円×@2円=2,000千円を計上します(上記【区分法を採用した場合】①の仕訳参照)。 2 償却原価法の処理 本事例の前提条件で区分法を採用した場合、社債の額面総額と計上金額に差額が生じます。これは、金利に相当する部分であると考えられるため、償却原価法を適用し、帳簿価額を調整する必要があります。具体的には、100,000千円の発行価額と社債に対する払込金額98,000千円の差額2,000千円を、償還までの期間である5年間で決算日に毎期調整します(上記【区分法を採用した場合】②及び③の仕訳参照)。 他方、一括法を採用した場合には社債の額面総額と計上金額は一致しているため、償却原価法の適用はありません。 3 権利行使時の処理 本事例の場合、一括法では、転換社債の帳簿価額を、資本金に振り替えます(上記【一括法を採用した場合】②の仕訳参照)。 他方、区分法では、社債の対価部分(帳簿価額)と新株予約権の対価部分(帳簿価額)の合計額を資本金に振り替えます。区分法では、償却原価法を適用しているため、一括法を採用した場合と資本金の額が相違します(上記【区分法を採用した場合】③の仕訳参照)。   (了)

#No. 333(掲載号)
#小林 清人
2019/08/29
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