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〔事例で使える〕中小企業会計指針・会計要領《個別注記表》編 【第1回】「個別注記表の記載項目」

〔事例で使える〕 中小企業会計指針・会計要領 《個別注記表》編 【第1回】 「個別注記表の記載項目」   公認会計士・税理士 前原 啓二     はじめに 会社計算規則は、個別注記表に、所定の注記項目を記載するよう義務づけています。「中小企業会計指針」では、会社計算規則に従い注記を行うことが必要であるとし、さらに、独自の注記も示しています。 今回は、中小企業に多い株式譲渡制限規定を定款に設けている株式会社において、どのような注記が必要であるかをご紹介します。 【設例1】 当社は、定款に「当社の発行する株式の譲渡による取得については取締役会の承認を受けなければならない。」と定められています(株式譲渡制限規定を定款に設けている株式会社)。また、大会社ではなく、会計監査人を設置していません。 (1) 当社のような中小企業でも、個別注記表を作成しなければならない根拠は何ですか。 (2) 当社が個別注記表に記載しなければならない項目には、何がありますか。 1 作成が義務づけられている計算書類の根拠 会社法により作成が義務づけられている計算書類には、「貸借対照表」「損益計算書」「株主資本等変動計算書」だけでなく、「個別注記表」も含まれています(会計規59)。 したがって、すべての会社は、各事業年度に係る「貸借対照表」「損益計算書」「株主資本等変動計算書」の作成と同様に、「個別注記表」の作成も、会社法を根拠として義務づけされています。   2 記載すべき個別注記表の項目 会社計算規則が、個別注記表の記載項目を定めています。会社計算規則は、会社法の規定により委任された会社の計算に関する事項を定めた法務省令です。株式会社(金融商品取引法による有価証券報告書提出義務のある大会社を除く)の個別注記表の記載項目として、会社計算規則が定める項目は、下記の表のとおりです。 会計監査人設置会社の場合に比べ、それ以外の会社については公開会社の場合と公開会社でない場合に分けて、記載を要しない項目が定められています。ここでの公開会社とは、当該会社の発行する株式の譲渡による株式取得について株式会社の承認を要する旨の定めを設けていない株式会社のことです。 【設例1】では、当社の定款に株式譲渡制限規定があるため、「公開会社でない株式会社」に該当します(【設例1】では、当社は「会計監査人設置会社以外」の設定なので、上記表の一番右の列を参照)。 さらに、中小企業会計指針が注記を追加的に要求している項目として、下記があります。 以上より、当社は「会計監査人設置会社以外の公開会社でない株式会社」であるため、会社計算規則により、「重要な会計方針に係る事項に関する注記」「株主資本等変動計算書に関する注記」を記載し、「会計方針の変更に関する注記」「表示方法の変更に関する注記」「誤謬の訂正に関する注記」については、それぞれに該当があれば記載します。また、中小企業会計指針が注記を追加的に要求している項目である上記(ⅰ)から(ⅳ)のうち、該当するものを注記に加えます。 (了)

#No. 336(掲載号)
#前原 啓二
2019/09/19

最近の子会社不正をめぐる傾向と防止策 【第3回】「子会社役員・従業員による不正」

最近の子会社不正をめぐる傾向と防止策 【第3回】 「子会社役員・従業員による不正」 (最終回)   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   主に2019年になって公表された調査報告書から「子会社不正」について検討する本連載の最終回は、「子会社役員・従業員による不正」をテーマとして取り上げる。 本稿では、聖域化していた子会社社長による長年の着服事案、親会社から派遣されていた取締役、出向していた社員によるガバナンス不全が引き起こした不正融資事案の調査報告書から、不正の原因と再発防止策を検討したい。 さらに、子会社の委託先従業員による情報流出事件に対して、裁判所が親会社にも損害賠償の責任があるとした判決内容を概説して、親会社の果たすべき役割を検討する。   1 スバル興業株式会社、子会社代表取締役による不正な資金流用 2019(平成31)年3月22日、スバル興業株式会社(以下「スバル興業」と略称する)は、連結子会社である株式会社協立道路サービス(以下「協立道路」と略称する)の元代表取締役(同年3月14日付で辞任)が、複数の取引先に対する売掛金を着服していた疑義が生じたため、外部の専門家による特別調査委員会を設置して、事実関係の調査を行うことを公表した。 (1) 子会社元代表取締役による横領の態様 特別調査委員会による調査の結果、協立道路元代表取締役による横領の主な態様として、次の3種の類型が認められ、横領金額が推定された。 元代表取締役は、下請代金の着服が発覚しないように、スバル興業関西支社による滞留債権の確認に対しては、対応を一任するように述べて、請求一覧表から、着服行為が原因で売掛金の回収が長期間滞っている案件について、ATMを使って個人の銀行口座から協立道路の銀行口座に振り込み、その際の振込名義を、取引先名義として、取引先から代金が支払われたように装ったり、現金をそのままスバル興業関西支社に持ち込み、「現金によって支払を受けた」などと説明するなどの回収偽装を行っていた。 (2) 協立道路の沿革とスバル興業関西支社による管理体制 調査報告書によると、協立道路は、1983年5月30日にスバル興業の完全子会社として設立されたが、その事業基盤は、協立道路元代表取締役の父親が設立した株式会社協立商店から、同社が従前から取り扱っていた道路の路面清掃等の維持管理業務を引き継いだものであった。協立道路元代表取締役は、1994年に協立道路の取締役に就任し、2000年から、本事案が発覚して辞任するまで、同社代表取締役社長を務めてきた。 スバル興業には、協立道路を含めて12社の連結子会社があり、そのうち、関西に拠点を置いている協立道路などの3社については、スバル興業関西支社が直接的な管理を行っており、スバル興業本社は直接的な管理は行っていなかった。 スバル興業関西支社は、協立道路の取締役として、同支社従業員を3名派遣するとともに、監査役として、従業員1名を派遣、さらに、協立道路の取締役営業課長は、スバル興業から協立道路への出向者であった。 しかし、協立道路に派遣された取締役・監査役は、普段はスバル興業関西支社で勤務しており、また、協立道路における取締役会は、年に1回、株主総会と同日に開催されるのみであったため、協立道路において 、取締役として実質的な職務は執行しておらず、協立道路の事業を日々監視・監督しているわけではなかった 。 また、営業課長は、主に工事業務の営業を担当しており、本件横領に利用された清掃業務については元代表取締役に任せていた。 (3) 他の連結子会社に対するスバル興業の管理体制との比較 スバル興業は、協立道路以外の連結子会社について、会長又は社長にスバル興業の役員又は参与(スバル興業における執行役員)を選任し、スバル興業の役員又は参与が会長又は社長を務めていない3社については、スバル興業の会長又は社長が取締役を務めるなど、スバル興業が子会社の経営に実質的に関与し 、また、スバル興業による子会社の事業に対する監視 ・監督が十分に行われているといえる状況であった。 これに対して協立道路については、関西支社の従業員を協立道路の取締役及び監査役として派遣していたに止まっている。協立道路のみ、他の連結子会社と異なる管理の実態となっていた理由として、協立道路がスバル興業の子会社となった経緯が特殊であること、元代表取締役は、同業他社と極めて良好な関係を築いていたため、スバル興業及び協立道路の営業上、元代表取締役の同業他社との関係性は不可欠であると考えていたことが挙げられ、スバル興業としては、協立道路については、他の子会社と異なり、元代表取締役の自由度が高い状態でもやむを得ないと安易に考えてしまい、十分な監視・監督を行うことができなかったものと、第三者委員会は見解を示している。 (4) 再発防止策の提言―子会社管理体制の強化 特別調査委員会は、再発防止策の提言の中で、スバル興業の子会社管理体制の強化について、次のようにまとめている。 買収した子会社については、 と述べたうえで、スバル興業による監視・監督をさらに強化するための具体的な施策として、主に次の6項目を挙げている。   2 九州旅客鉄道株式会社、子会社従業員による融資申込書類の偽造 スルガ銀行による不正融資問題(※1)をめぐる第三者委員会による調査報告書が公表される前後に、不動産融資をめぐる銀行向け審査書類を偽造した疑義を公表して、調査委員会を設置した会社が2社あった。 (※1) 事案の詳細については、本誌連載中の「会計不正調査報告書を読む」【第78回】から【第80回】をご参照いただきたい。 1社は、不動産デベロッパーの株式会社TATERU(※2)。もう1社が本稿で取り上げる九州旅客鉄道株式会社(以下「JR九州」と略称する)であった。2018年10月10日、JR九州は、JR九州の不動産事業の一部を分社化する形で設立された連結子会社の九州住宅株式会社(以下「九州住宅」と略称する)において、不法行為の疑いが判明したことを公表した。 (※2) (※1)と同じく、事案の詳細については同連載の【第82回】をご参照いただきたい。 (1) 不法行為の概要 同リリースによる「不法行為の概要」は以下のとおりである。 九州住宅営業担当者は、金融機関による顧客の住宅ローン審査が通らなかったことをきっかけに、先輩社員から、金融機関によって審査基準等が異なること、工事請負金額を水増しした工事請負契約書を申請書類とすることで住宅ローンの融資金額を増大させる方法があることを教わった。 そこで、別の金融機関向けの融資申込に際して、水増しした工事請負契約書等を提出して、融資を実行させることに成功したものの、後日、当該金融機関から建物の坪単価が他の物件に比べて高額であることについて疑念が示され、工事請負金額の水増しによる過剰融資が発覚した。 (2) 他の不適切な融資申請案件の分析 工事請負金額の水増しにより実行された融資については、九州住宅に振り込まれた住宅ローン金額のうち、過剰融資部分が顧客に返金されるという事態が発生していた。 ここに着目した第三者委員会は、九州住宅からの返金額が100万円を超える案件を抽出するなどの手法で、精査対象案件を71件に絞り込み、さらなる調査を行ったところ、不適切な融資申請が行われたとは認められなかった案件は16件に過ぎず、他の55件については、見積りの水増しなどの書類の改ざん、不自然な契約書の作成などの行為が認められた。 (3) 親会社による子会社のガバナンス 第三者委員会は調査報告書における「原因分析」の中で、「第三 杜撰・不十分な各種管理体制」として、「JR九州グループにおける人事ローテーションの弊害」という項目を掲げ、出向者の「事なかれ主義」について、次のように弊害を指摘している。 また、JR九州から派遣されている非常勤取締役についても、「主に月1回の定例の取締役会及び臨時の取締役会に参加することが主な業務」であり、業務実態を把握し、コンプライアンス上の問題を検出できるまでに理解が深まるとも思われないと、非常勤取締役としての管理・監督機能を果たせていないことを指摘している。 さらに、「第四 未成熟な監査(監査役監査/内部監査)機能」では、九州住宅の非常勤監査役について、「JR九州グループ内の他の役職を兼務」しており、前任の監査役からの引継ぎが十分でない結果、「新しい監査役が着任する都度、監査をゼロからスタートさせている」ことから、「継続的な監査やリスク項目の深堀りまで踏み込むに至らない」として、「監査機能として不十分な状態にある」と指摘している。 同時に、JR九州監査部によるグループ内監査についても、「基本的なリスク項目を網羅する形で一応の監査は実施されているものの、時間的あるいは人員的な限界もあり、限定的な監査に留まっている」結果、「リスク項目の深層に食い込むことまでは出来ていない」と評価している。   3 ベネッセ顧客情報流出事件控訴審判決―子会社業務委託先社員による不正 2019(令和元)年6月27日、東京高等裁判所は、ベネッセ顧客情報流出事件の控訴審判決で、従業員が情報漏えい事件を起こした子会社だけでなく、親会社の責任をも認める判決を言い渡した。子会社の業務委託先従業員による不正に対する親会社の責任について、この判決をもとに検討したい。 (1) ベネッセ顧客情報流出事件の概要 株式会社ベネッセコーポレーション(以下「ベネッセ」と略称する)は、2014年6月、顧客からの問合せにより社内調査した結果、ベネッセの管理するデータベースから個人情報が社外に持ち出されている可能性が高いことが判明した。 翌月、子会社でベネッセのシステム開発・運用を行っている株式会社シンフォーム(以下「シンフォーム」と略称する)の業務委託先社員が逮捕された。業務委託先社員は、約3,504万件の個人情報を名簿業者3社に売却していた。漏えいした情報項目は、「名前、性別、生年月日」「住所」「電話番号」などであり、クレジットカード情報は含まれていない(「ベネッセお客様本部『事故の概要』」より抜粋)。 (2) 原審(東京地方裁判所)判決 原審である東京地方裁判所は、2018年6月20日、被告であるベネッセ及びシンフォームの過失を認めたものの、損害賠償請求は棄却した。控訴審判決から、原審の判断について引用する(下線は筆者による)。 (注) 上記引用文中の「MTP」とは「メディア転送プロトコル(Media Transfer Protocol)」の略称で、スマートフォンをPCに接続して、データ転送を行う技術仕様を意味する。 (3) 控訴審判決 これに対し、東京高等裁判所は、原審と同じく、被控訴人であるベネッセ及びシンフォームの過失を認めるとともに、原審とは異なり、控訴人の精神的損害の発生を認め、2,000円の慰謝料の支払いを命じた。 過失を認めた理由として、高等裁判所は、被控訴人らには、MTP対応のスマートフォンを使用した漏えいについて予見可能性があったと認定したうえで、被控訴人シンフォームにおいて、セキュリティソフトの設定の確認を失念ないし怠っていたことから、MTP対応スマートフォンに対する書き出し制御措置を講ずべき注意義務があったにもかかわらず、これを怠った点を挙げている。 また、被控訴人ベネッセについては、シンフォームが、 セキュリティソフトの適切な設定を行っているか否かを監督する注意義務を負っているにもかかわらず、セキュリティソフトについて適切な設定が行われていると誤信していたことにより、 適切な監督を行うことができなかったことは、注意義務に違反した過失があると認定した。 さらに、慰謝料については、以下のように判示した。 (4) 親会社における注意義務 高裁判決では、親会社であるベネッセについて、子会社であるシンフォームにおいて、セキュリティソフトについて適切な設定が行われていると誤信していたことから適切な監督ができなかったことが注意義務違反による過失である認定された。 顧客情報という、企業にとって重要なデータを扱う子会社をどのように管理・監督するのかは、企業グループの態様によって異なることはもちろんであるが、子会社に任せきりにすることは許されず、親会社の情報セキュリティ部門が常に注視して、運営に問題がないかどうかを監視する仕組みが必要であることを判決は示唆しているといえよう。   4 子会社の役員・従業員による不正の防止 事業基盤を譲り受けた形で設立した子会社について、旧経営者による支配に任せてしまった結果、聖域化してしまい、親会社の監督ができない状況になっていたスバル興業の事案は、M&Aにより支配した子会社でもよく見られる状況である。 20年近く代表取締役の地位にあり続けた中で、少なくとも、2013年ころからは延滞債権の回収をめぐり不審な点があることに気づいていながら、放置していた真の原因は何だったのか。特別調査委員会は、スバル興業には、「協立道路については元社長に任せれば良いという安易な特別視」があったことを原因として挙げているが、果たしてそれだけで説明できるのか、という疑問が残る。 業績が低迷している子会社、しかも本業との関係の希薄な子会社の管理をいかにすべきかという問題は、JR九州に限らず、これまでも多くの事案で検討されてきた。確たる結論が出ているわけではないが、内部統制の有効性評価に当たってスコープの対象外とするグループ会社の範囲を絞ること、内部監査を実施すること、適切な人事ローテーションなど、不正防止・抑止のための施策については、概ねコンセンサスが得られているようである。 JR九州の第三者委員会は、九州住宅に派遣されている役員や出向者について、会社の中枢を占める長期出向者について、長い在籍期間の中で、コンプライアンス意識が鈍麻しているとする一方、短期出向者は、短期的な業績に気を取られ、コンプライアンス上の問題については見て見ぬふりをする「事なかれ主義」の発想に陥りがちであると批判している。 そのうえで、「JR九州からの出向者とプロパー社員の協働」を再発防止策の1つとして提言しているが、見出しに掲げられた「協働」というよりは、当該項目の中で言及されている、九州住宅の事業内容に精通した優秀かつ規範意識の高いプロパー従業員を積極的に幹部登用して、プロパー従業員のモチベーションを向上させ、出向者とプロパー社員とのコミュニケーション断絶をなくすという、具体的な施策を取ることの重要性がより強調されるべきであろう。   5 まとめに代えて 本連載【第1回】の「中国子会社による不正」では、中国子会社・合弁会社のガバナンスについて、現地の経営陣をコントロールするためには、派遣駐在員の適切な配置や現地会計監査人による監査の品質確保など、大和ハウス第三者委員会による具体的な提言から、中国子会社の会計監査人を日本の親会社の監査法人の提携先に統一することも、会計不正の防止策の1つとして有用なものであるとの見解を述べた。 本連載【第2回】の「持株会社による事業会社の統制」では、調査報告書を取り上げた持株会社2社を構成する社員が、いずれもグループ全体の従業員に比して極めて少数であり、その結果として、十分な内部監査機能を有していないことは大きな課題であることが判明した。 持株会社形態を採用する目的の1つである「事業会社における事業の遂行を適切に管理・監督するため」に、持株会社の組織がいかにあるべきかについては、さらなる検討が必要であるといえるだろう。 そして、最終回である「子会社役員・従業員による不正」では、子会社の代表取締役人事の固定化が不正を誘引した事案、子会社への出向者とプロパー社員間の断絶が、コンプライアンス意識の低下を招き、とくに「事なかれ主義」に陥りがちな短期出向者により、子会社のガバナンス機能が不全を引き起こした事案から、あらためて、子会社役職員の人事について検討した。 上場会社本体の内部統制システムが有効に機能していたとしても、それがすべてのグループ会社に影響を与えられるものではない以上、今後も、子会社における不正をどのように防止・抑止していくかは、大きな課題であり続けることは間違いない。子会社の管理・監督のあり方については、本誌の連載記事「会計不正調査報告書を読む」の中で、事案をもとに検討を重ねていきたい。 (連載了)

#No. 336(掲載号)
#米澤 勝
2019/09/19

組織再編時に必要な労務基礎知識Q&A 【Q21】「会社分割にあたり、労働者とは協議が必要か」

組織再編時に必要な労務基礎知識 Q&A 【Q21】 会社分割にあたり、労働者とは協議が必要か   特定社会保険労務士 岩楯 めぐみ   【A】 会社分割にあたっては、承継される事業に主として従事する者(【Q15】参照)及びそれ以外の者で分割契約又は分割計画において労働契約を承継会社が承継する旨の定めがある者を対象に、会社分割後に当該労働者が勤務することとなる会社の概要や、当該労働者が承継される事業に主として従事する者に該当するか否かの考え方等を十分説明し、本人の希望を聴取した上で、当該労働者に係る労働契約の承継の有無、会社分割後に当該労働者が従事する予定の業務の内容等について、通知期限日までに、個別に協議しなければならない。 (※) 本稿では、会社分割により事業を分割する会社を「分割会社」、それを承継する会社(新設分割の場合の新設会社も含む)を「承継会社」という。   協議の対象者 平成12年の商法等改正法(附則5条)では、会社分割にあたり、労働者との個別協議を義務付けている。 この協議の対象となる労働者は、次の①又は②のいずれかに該当する者となる。 これは、労働契約承継法(2条)において労働者への通知が義務付けられている対象者と同一となる。 なお、個別協議に関しては、労働契約承継法においてではなく、会社分割制度が創設された際に設けられた商法等改正法(附則5条)に規定されている。   協議する事項など 労働者と個別に協議すべき事項については、指針(※)に例示されており、次の①から③に関する事項などを十分説明し、本人の希望を聴取した上で、④⑤に関する事項などについて協議すべきとされている。 (※) 「分割会社及び承継会社等が講ずべき当該分割会社が締結している労働契約及び労働協約の承継に関する措置の適切な実施を図るための指針」(第2の4の(1)イ) なお、労働契約承継法(7条)では、分割会社で勤務する労働者全体の理解と協力を得るため、当該事業場に労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合(以下、過半数組合)、過半数組合がない場合は労働者の過半数を代表する者との協議を求めているが、商法等改正法(附則5条)の協議は、対象労働者との個別協議であるため、労働契約承継法(7条)の協議とは別に実施する必要がある。   協議の期日 労働者との個別協議は、商法等改正法(附則5条)により、労働契約承継法(2条)に定める労働者へ通知すべき日(=通知期限日)までに実施しなければならないとされている。すなわち、次のそれぞれの日までに実施する必要がある。 なお、労働者との個別協議の期間に関する定めはないが、指針(※)により、通知期限日までに十分な協議ができるよう、時間的余裕をみて協議を開始するものとされている。 (※) 「分割会社及び承継会社等が講ずべき当該分割会社が締結している労働契約及び労働協約の承継に関する措置の適切な実施を図るための指針」(第2の4の(1)ホ)   協議が行われなかった場合 商法等改正法(附則5条)で義務付けられた協議を全く行わなかった場合又は実質的にこれと同視し得る場合には、会社分割の無効の原因となり得るとされており、日本IBM事件(最二小判平成22年7月12日、労判1010-5)では、次の通り判示されている。 上記の通り、商法等改正法(附則5条)に基づく協議は、会社分割の効力にも影響を及ぼし得るものであるため、それを踏まえた適切な対応が求められる。 (了)

#No. 336(掲載号)
#岩楯 めぐみ
2019/09/19

中小企業経営者の[老後資金]を構築するポイント 【第17回】「役員や従業員への親族外承継」

中小企業経営者の [老後資金]を構築するポイント 【第17回】 「役員や従業員への親族外承継」   税理士法人トゥモローズ   前回までの親族内承継に続き、今回は第三者承継として、親族外である自社の役員や従業員に対して事業を引き継ぐケースについて確認をしていく。 従業員や役員に対する事業承継については、中小企業経営者が有する自社株式を役員等が買い取ることにより経営権の移譲を行うことが一般的であり、M&Aの一手法としてMBO(Management Buy Out)やEBO(Employee Buy Out)といわれる手法により実行される。 (※) 大きく分けて、M&Aによる役員への承継をMBO、従業員への承継をEBOという。 親族内承継が見込まれない場合には、老後資金の確保の観点から、中小企業経営者が保有する自社株式を流動化する方法として、次回解説予定の外部M&Aと共に検討をしておく必要がある。   1 背景 中小企業において親族外へ事業を承継するケースは、ひと昔前に比べてその数は大きく増えているが、ここ10年ほどの推移を見たときには、全体の約5~6割といった一定割合で定着している。これは、中小企業における親族外承継がすでに一般的な手法になってきたことを表している。 〔図1〕親族外承継の推移 (出典) 中小企業庁「2017年版「中小企業白書」」P234 また、その割合は、事業の規模が大きくなるにつれ大きくなる傾向にあるが、これは事業規模に応じて「経営」という側面が大きくなるため、より会社の経営を行える者に対し会社を引き継いでいく傾向にあることを示している。 〔図2〕規模別の現経営者の承継形態 (出典) 中小企業庁「2013年版「中小企業白書」」P143 親族以外の役員等が後継者となるメリットとしては、いわゆる“勝手知ったる者”が事業を引き継いでいくということが最大のメリットと言えよう。すなわち、会社の事業内容を把握しており、他の経営陣や従業員からの理解が得やすい点や、親族以外でも後継者となりうることへの士気向上も図られる。 これらの点から、比較的規模が大きく、役員・従業員の経営への関与度が高い中規模企業の場合には、親族外承継のメリットも高くなると考えられる。 なお、親族外承継のデメリットについては、次の2において、その手法と共に解説する。 〔親族外承継の主なメリット・デメリット〕 【メリット】 ◆会社の事業内容を把握している ◆これまでの実績があり、従業員からの納得感が得られやすい ◆雇用継続や取引先との関係継続が期待できる ◆現経営者としては、換金性の低い非上場株(自社株)を相続税の納税資金に変えられる 【デメリット】 ◆後継者は自社株購入のため、借入やファンドを利用した資金調達が必要となる ◆会社の借入に際して、「経営者としての個人保証」も引き継がなければならない ◆現経営者の親族との関係性や、後継者本人の家族の理解が必要となる   2 MBO(EBO)採用時の2つの問題 親族外承継の具体的な承継方法が、冒頭で述べたMBOやEBOといわれる手法である。会社の役員や従業員の中から後継者を選び、その後継者である役員等が自社株式を先代経営者から購入し、会社の経営権・財産権を取得することにより会社を引き継ぐ。 比較的規模の大きなMBOの場合には後継者が新会社を設立し当該新会社に株式譲渡を行う方法が採られるが、小規模なMBOの場合には先代経営者が後継者に直接株式譲渡を行う方法が採られる。その際に問題となるのが 「自社株式の譲渡対価の設定」と「後継者の覚悟」である。 前者については、一般的にはサラリーマンとして給与所得を得てきた者が、自社株式を購入するだけの資金を有していないという点が大きなハードルとなる。 この対価の支払いは、本来であれば自己資金によるべきであるが、後継者がこのハードルを越えるためには金融機関からの借入やファンドを利用した資金調達を行うのが一般的である。しかし、この場合には資金提供者である金融機関やファンド等が比較的高いリスクの見返りとして、高配当や一定の経営関与を求めてくることが想定される。 なお、先代経営者にとっては、株式の譲渡対価は本連載の主題である老後資金の要となるため、ある程度の対価設定を行いたいところではある。しかし、会社の将来や従業員の雇用確保の観点からは、外部M&Aに係る対価設定に満たない価格での売却となることも想定はしておかなければならない。 〔図3〕 後者の「後継者の覚悟」については、後継者が会社経営を行っていくうえで、自らが出資者として様々なリスクをとる覚悟があるか否かである。 中小企業においては、上記のような株式取得に係るリスクの他に、法人借入に係る個人保証としてのリスクがある。中小企業が借入を行う場合には、経営者が連帯保証人となるケースが多々あるので、この個人保証についても、事業を承継した後継者への付替えを検討しなければならない。 後継者がそれまで役員として会社の経営の一角を担ってきたにしろ、出資や借入保証などの金銭的なリスク、また最終責任者として損害賠償や雇用リスク等を負いながらの経営とは、その重圧が大きく異なる。事業承継を担う専門家としては、これらのリスクを負いながら会社経営を行っていくことへの覚悟があるのかについて、後継者候補者に説明する必要がある。 実際のMBO提案事例の中でも、先代経営者の観点からMBOの土台は整っているような優良中小企業においても、事業承継での後継者リスクの説明を行い後継者として事業承継を行っていくことの「覚悟」を確認した結果、最終的には全員がリスクを敬遠しMBOが実行されなかったケースもある。   3 事業承継税制の特例措置適用時の留意点 平成30年度税制改正で創設された(法人版)事業承継税制の特例措置は、親族外後継者に対する自社株式の贈与についても納税猶予の対象とされる制度設計となっている。上述のとおり自社株式の購入資金を持ち合わせていない後継者にとっては、贈与による納税猶予の適用を受け、一旦は無税での引継ぎが可能となる。 しかし、先代経営者の相続の際には当該自社株式に係る納税猶予分が持ち戻されることとなり、先代経営者の相続人と後継者が一緒に相続税申告を行っていくこととなる。この相続においては、後継者は引き継いだ自社株式分の相続税について、改めて相続税の納税猶予に切り替えて申告を行うことは可能となる。しかし、一方で、親族である他の相続人の相続税については、当該自社株式分も相続財産を構成することから、全体での相続税の税率が高く設定されてしまうため、自社株式を引き継いでいないにもかかわらず、結果として納税額が高く計算されてしまうといった弊害が生じることとなる。 したがって、親族外承継を行う場合において、事業承継税制の特例措置の適用を受けるときは、後継者のみならず、先代経営者自身の相続税についても視野に入れた検討が必要となってくる。 (了)

#No. 336(掲載号)
#税理士法人トゥモローズ
2019/09/19

令和時代の幕開けに思い馳せる会計事務所経営 【第6回】「既成概念を覆して未曽有の人材不足を乗り切る」~事業戦略と組織戦略の融合性~(組織論②:採用編)

令和時代の幕開けに思い馳せる 会計事務所経営 【第6回】 「既成概念を覆して未曽有の人材不足を乗り切る」 ~事業戦略と組織戦略の融合性~ (組織論②:採用編)   株式会社アーヌエヌエ 代表取締役 杉山 豊   さて、今回は組織論の2回目、喫緊の経営課題でもある「人材採用」を中心に、会計事務所経営のお話をしたいと思います。   ➤「既成概念を覆す思考」で採用難に立ち向かう ところで、現在、先生の事務所の人手は足りていますか? 間違いなく言えることは、今までの採用戦略ではなかなか人を採用できないということです。 では、どのような戦略を取るべきか。 1つは「事業戦略」を見直すことで「組織戦略」を変更すること。つまり、既存の事業を見直し、人手に左右されないビジネスモデルを構築することです。 私はここ数年、お世話になっている先生方にこんな相談をされます。 「杉山さん、あなたの仕事はいくらでもお手伝いするので、人を紹介して欲しい」 その相談に対して、決して軽々しく「はい」と答えるような無責任なことはできません。 むしろ、このように回答します。 「先生、これを機に景気に左右されない、お客様が増えることで人手を増やさなければならない現状のビジネスモデルの見直しを考えてみませんか」 「事業戦略を見直すことで、今、先生が欲しい人材像を少し見直して採用定義を改めて考えてみませんか」 すなわち、「客数」に依存するモデルでなく、「客単価」を追求するモデルにチェンジすること、同じお客様からのキャッシュポイントを変更することで高単価を目指すことです。 また、いわゆる“製販分離”を進めることで、製造部門の人材を在宅勤務の主婦など外部に委託する、その上で既存社員の職務を販売に変更する。またRPA(自動化・効率化する取り組み)などの人に頼らない組織体制に変更し、既存社員の職務活路を見出す。そして既存社員が販売に向かない傾向であれば、シンプルに営業マンの採用に舵を切ります。 こんな大胆さもなければ、今の採用難には立ち向かえないと私は考えます。 いわば、「既成概念を覆す思考」こそが採用難を打破するポイントになるのではないでしょうか。   ➤「ブランディング」を採用戦略にも活かす 2つ目は、採用にも「ブランディング」を導入することです。 本連載で取り上げてきたブランディングは、何も税理士業務そのものだけではなく、今や人材採用にも取り入れる必要があります。 さて、ここで質問です。 先生の事務所では採用活動において事務所の“らしさ”=“個性”を存分に発揮していますか? “らしさ”とは、本連載でお話してきた、ビジョン、ミッション、バリューなどの企業理念のことを指しています。 そして、これこそ大きな事務所とも競争できる、むしろ競争することすら必要のない独壇場に持ち込める採用戦略なのです。   ➤今の時代に合わせた採用コストのかけ方 今の時代、多くの求職者はホームページはもちろんのこと、SNSなどを駆使して情報を入手するのが当たり前です。 応募の前には、その事務所のホームページがあれば当然確認していることでしょう。 そうなれば、ホームページが存在しない、又はホームページが更新されていないことにより求職者が集まらないことは想像に難くありません。 それどころか、ホームページの体裁や掲載内容から求職者は自身の希望と合う事務所かどうかを判断するとさえ言われています。 先生が笑顔いっぱいの写真で求職者に自社の理念を語りかけている、全スタッフが笑顔で求職者を迎え入れ、それぞれの趣味や特技、将来の夢や他の事務所とここが違うなど事務所のアピールポイントを存分に伝えている。またはある社員の1日の働き方やお客様からの事務所の推薦文を掲載するなど、創意工夫に溢れたホームページを掲載している事務所は数多くあります。 このような工夫をしている事務所としていない事務所では、当然ながら求職者の反応は違います。決して事業規模やネームバリューだけで、求職者は選んでいないといえるでしょう。 これを機に、採用ページ作成などへの採用コストのかけ方も見直してはいかがでしょうか。 採用に苦しんでいる事務所の原因として1つ言えるとすれば、コストが適正にかけられていないということです。 今や採用は「100人のうち1人きてくれればいい」という発想ではなく、「あなただけが必要なんです!」といったメッセージ性をもって、「1人の求職者を離さない」という戦略が必要です。   ➤面接のポイントは「聴く」こと また、採用活動において履歴書の見方や面接の進め方もとても重要な要素です。 せっかく応募してくれた求職者の履歴書を、興味関心を持って見られていますか? わざわざ足を運んでくれた求職者を、感謝の気持ちをもって誠心誠意対応していますか? 面接はとても疲れるものです。その最大の理由は、一生懸命に耳を傾け、相手のことを聴こうとするからです。 人の話を真剣に聴こうとするならば、疲れないわけがありません。 もし疲れがないのならば、それは相手にもきっと伝わっています。 これが求職者に事務所が選ばれない原因の1つといっても過言ではないでしょう。 また「面接をしても相手のことがよくわからない」と相談されることがあります。 それは恐らく聴いていない、もしくは面接官である先生方が、自分の想いだけをぶつける一方的な面接になっている可能性があります。 面接とは相手のことを理解することです。であれば、営業と同じく相手を知るために話を聴く必要があります。聴くことだけに終始するぐらいで良いのです。 面接の時間配分もしっかりして、訪れた求職者を決して離さないという心構えで、最大のチャンスを自ら逃さないようにしてください。 そして面接では「1回で終わらせず2回」、「1人の目だけでなく2人以上の目で見る」ということをしてください。これは実は当たり前のことですが、会計事務所を含めた中小零細企業では行われていない実態があります。 これらの最低限のことができているか、今一度採用実務を見直してください。   ➤「採用定義」の見直しでミスマッチをなくす 次にお話するのが「採用定義」についてです。 多くの会計事務所を含めた中小零細企業において、求職者の要件定義が緩い、甘い、他と変わらないといった実態があります。 実は今や採用定義はしっかりと詳細に定義したほうが採用しやすい、また、採用した人材が退職しないとまで言われています。 それはなぜか? 答えとしては、要件が細かいほど先生方の思考や希望に合致させやすい、応募があれば事務所が求める人材である可能性が高くなるからです。 たくさんの同業種求人があり、今や比較もとてもしやすいので、先生方が得意とする2期比較同業他社比較などの経営分析と同じく、採用においても比較することで戦略を見直してください。 「唯一無二の求人要件を実現すること」そのためのカギとなるのは、先生のすごく身近にいる今のスタッフの方です。 一番長くいる方がその事務所の個性と良さ、そして弱点すら把握していますので求人要件を作るための力強いサポーターになってくれるかもしれません。   ➤「幸せな採用」をするために 最後になりますが、採用したのであれば、社員として「定着してもらう」、「希望するパフォーマンスを出してもらう」ことにこそ意味があります。 せっかく採用した人材が数ヶ月で退職してしまう、その理由はどこにあるのでしょうか。 もしかすると事務所にも、そして入社したスタッフにも将来像が見えていないのかもしれません。 そこで働く意味、将来性を感じるか否か、いわゆる社員との『握り』(期待値のすり合わせ)が甘くなってはいないでしょうか。 事務所として何を採用者に期待しているのか、採用者は事務所に何を期待するのか、そのすり合わせがしっかりできて、お互いに夢をかなえるためのパートナーだと確信した時にこそ、「幸せな採用だった」と言えるのではないでしょうか。 *  *  * うちは「零細だから」「小さい事務所だから」と採用を諦めないでください。 応募者は「先生と働きたいかどうか」を冷静に見ています。 欲しいと思った人材は、決して喰らいついて離さずに渾身のスカウトをしてください。ここぞとばかりの口説き文句を用いて、その応募者を先生の虜にしてください。 そうすれば、必ず採用できます! 大きな事務所も競争相手にはなりません! そのための最大のキラーコンテンツは、まさに「先生」そのものです。 (了)

#No. 336(掲載号)
#杉山 豊
2019/09/19

《速報解説》 金融庁、「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方」(案)を公表~一律の内部管理体制を求めず金融機関の個性・特性に着目した検査・監督へ~

《速報解説》 金融庁、「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・ 監督の考え方と進め方」(案)を公表 ~一律の内部管理体制を求めず金融機関の個性・特性に着目した検査・監督へ~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 令和元(2019)年9月10日、金融庁は、「検査マニュアル廃止後の融資に関する検査・監督の考え方と進め方」(案)を公表し、意見募集を行っている。 「金融検査・監督の考え方と進め方(検査・監督基本方針)」(平成30年6月29日)を踏まえ、融資の観点から「金融システムの安定」と「金融仲介機能の発揮」のバランスの取れた実現を目指す当局の検査・監督の考え方と進め方を整理したものである。 「金融検査・監督の考え方と進め方(検査・監督基本方針)」では、平成31年4月1日以降を目途に検査マニュアルを廃止する予定とされている。 意見募集期間は令和元(2019)年10月11日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 表紙を含めて48ページあるが、概要も公表されている。 以下では、主な内容について解説する。 1 融資に関する検査・監督の基本的な考え方 次の考え方が示されている。 2 融資に関する検査・監督の進め方 次の考え方が示されている。 3 信用リスク情報の引当への反映 金融機関が自らの融資ポートフォリオの信用リスクを引当に反映しようとする取組みについて検査・監督を行うに際しては、以下のような基本的な視点が重要と考えられるとしている。 そのうえで、金融検査マニュアル別表に基づいて定着している現状の実務を否定せず、現在の債務者区分を出発点に、現行の会計基準に沿って、金融機関が自らの融資方針や債務者の実態等を踏まえ、認識している信用リスクをより的確に引当に反映するための見積りの道筋を示すとし、①一般貸倒引当金の見積りにあたっての基本的考え方・見積りにあたっての視点、②個別貸倒引当金の見積りにあたっての基本的考え方・見積りにあたっての視点が記載されている。 4 会計監査人との関係 会計監査は、予想損失が財務諸表上に正確に表現され、出資者(株主等)や預金者といったステークホルダーに対する正確な財務報告となり、有用な意思決定の材料となることを目的とするものであるが、その前提として、経営理念等から出発して、融資ポートフォリオの信用リスクの特定・評価というプロセスを経ることが当該目的にも資するものと考えられるとしている。 そのうえで、当該信用リスクの財務会計上の償却・引当への反映も、第一次的には経営陣の判断によって行われるべきであるが、それが会計上適切になされているか否かに関する監査は会計監査人の職責であり、当局は、これらの経営陣の判断や専門的意見が信用リスクの特定・評価のプロセスを適切に経たものである限り、これらの判断や意見を尊重することが適切であると考えられるとしている。 (了)

#No. 335(掲載号)
#阿部 光成
2019/09/13

プロフェッションジャーナル No.335が公開されました!~今週のお薦め記事~

2019年9月12日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.335を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2019/09/12

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第80回】「シャウプ勧告から読み解く租税法解釈(その2)」

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第80回】 「シャウプ勧告から読み解く租税法解釈(その2)」   中央大学商学部教授・法学博士 酒井 克彦   Ⅲ シャウプ勧告が租税実体法の解釈に及ぼす影響 1 所得税法にみるシャウプ勧告の影響 以下、判決を素材としてシャウプ勧告が租税法上の解釈に如何なる影響を及ぼしているか、具体例を挙げながら考察を加えることとしよう。 (1) 所得税法59条を巡る議論 所得税法59条1項は、次のようにみなし譲渡課税制度を規定する。 これは、一定の贈与等や著しく低い対価による譲渡について、時価による譲渡があったものとみなして課税をする規定であるが、「法人に対するものに限る」として、その範囲が限定されているところに注目する必要があろう(相続の場合は、限定承認に係るものに限る。)。 所得税法にみなし譲渡課税制度が導入されたのは、シャウプ勧告に淵源がある。 すなわち、シャウプ勧告は、次のように述べている。 つまり、シャウプ勧告を要約すれば、次の3段階によって、みなし譲渡所得課税が説明されることになる。 昭和25年の税制改正では、この勧告に従って所得税法にみなし譲渡課税が創設されたのである(もっとも、シャウプ勧告は低額譲渡についてまで言及しているわけではないが、法制的検討の段階で贈与に対する「みなし譲渡課税」の論理的アナロジーとして租税法に規定されたものである(植松守雄「『低額譲渡』をめぐる税法上の諸問題」税務弘報19頁(1975)))。 しかしながら、譲渡による実際の収入がない場合においても課税が生じる制度は、日本の納税者や税務官吏になかなか受け入れられず、税務執行面で抵抗を受け、その後のめまぐるしい改正によって「骨抜き」が進んだ。 すなわち、昭和27年に相続及び相続人に対する遺贈が「みなし譲渡」の対象から除外され、贈与および低額譲渡の場合の「みなし譲渡」も、昭和48年に原則的に廃止され、今日ではシャウプ税制はほとんど痕跡をとどめるだけのものになったとの指摘がある(植松・前掲稿19頁)。 そのような中にあって、シャウプ勧告はみなし譲渡所得課税の解釈適用において何らかの意味を有するのであろうか。 この点に一部言及しているとも思われる事例として、新潟地裁平成14年11月28日判決(訟月53巻9号2703頁)がある。 この事件においては、土地改良区への農地転用決済金及び協力金等の譲渡費用該当性が争われた。 すなわち、土地改良区内にある農地を農地以外に転用して譲渡する場合、土地改良法の規定などにより農地転用決済金等の支払義務が生じることがあるところ、かかる決済金等を譲渡費用に含めることができるか否かが争点とされたものである。 この点、納税者X(原告)は、「現行の所得税法の下においては、譲渡所得の本質は被告が主張するような『その資産にすでに生じている抽象的な増加益』から、『その資産にすでに生じている増加益のうち実際の取引によって実現した増加益』に変更され、これに応じて課税所得も税負担を求めるにふさわしい貨幣財を伴った担税力ある所得として考えなければならない。」と主張している。 すなわち、これは、繰り延べられてきた含み益(「その資産にすでに生じている抽象的な増加益」)に対する課税ではなく、「貨幣財を伴った」、いわば現実の収入がある部分ないしは現実に支出した部分を控除した金額について課税がなされるべきとする主張であると思われる。 これまでの所得税法の改正経緯からかような主張がなされたのであるが、これに対し、新潟地裁平成14年11月28日判決(訟月53巻9号2703頁)は、Xの主張を排斥した。 新潟地裁は、このように原則論を述べた上で、「Xは、所得税法59条の改正の経緯や資産の譲渡の結果譲渡人が取得する金員に着目して、資産の譲渡に係る当事者間の交渉において付された条件を満たすために支出された種々の費用や経費は全て譲渡費用に当たると主張するようである。」として、所得税法59条の改正経緯を整理する。 そして、結論として、かかる改正経緯と譲渡費用の問題とは峻別すべきであるとしている。 要するに、現実の収入に着目した改正がなされてきたとはいっても、そのことが直接、譲渡費用の解釈に影響を及ぼすものではないということであろう。 このように、新潟地裁は、シャウプ勧告を契機に始まったみなし譲渡所得課税の改正経緯の議論を、必ずしも譲渡費用の議論において考慮する必要はないとの立場にいるようであり、シャウプ勧告との切断を論じているものともいえよう。 もっとも、みなし譲渡所得についてのシャウプ勧告の考え方は、上記のとおり「骨抜き」にされてきたところ、現行の所得税法59条の解釈にシャウプ勧告の影響がどのように及ぶかについては、新潟地裁の判示からは明らかではない。 なお、この事件は、控訴審東京高裁平成15年5月15日判決(訟月53巻9号2715頁)において維持されたものの、上告審最高裁平成18年4月20日第一小法廷判決(集民220号141頁)で破棄差戻とされ、東京高裁平成18年9月14日判決(訟月53巻9号2723頁)において原判決取消で確定している(ここでは詳細は割愛するが、その後、国税局は「土地改良区内の農地の転用目的での譲渡に際して土地改良区に支払われた農地転用決済金等がある場合における譲渡費用の取扱いについて(法令解釈通達)」を発遣している。)。 (2) 所得税法56条を巡る事例 所得税法36条《収入金額》1項及び同法37条《必要経費》1項の「別段の定め」である同法56条《事業から対価を受ける親族がある場合の必要経費の特例》は、同一生計内親族間における役務提供があったとしても、そこにいう親族を独立した所得稼得単位としてみることをせず、同一生計内親族に支払った費用は必要経費に算入しない代わりに、対価の支払を受け取った親族の収入金額にもしない等と規定している。 東京地裁平成15年7月16日判決(判時1891号44頁)の事例において、X(原告・控訴人・上告人)は次のように主張している。 このように、シャウプ勧告が、「要領のよい納税者」が家族内で所得分散を行うことによって累進税率の適用を免れようとすることを防止するために、所得税法56条の創設を提言したものである点を強調すれば、かような租税回避の意思を有しない取引において同条の規定の適用を認めることは、法の趣旨を逸脱しているという主張もたびたびなされるところである。 上記事件において、Xは、さらに以下のとおり主張を続けている。 こうしたXの主張にあるように、親族間で異なる独立した事業活動を行っている場合には所得税法56条の適用は否定されるべきか否かが争点とされるなどする事例も少なくない。 そもそも、昭和25年所得税法改正によって、同条が創設されたのであるが、その立法を巡る昭和25年2月24日衆議院委員会で当時の大蔵大臣は、シャウプ勧告の趣旨、すなわち、合算課税の対象を納税者にその親族が雇用されている場合を前提とするとの趣旨をそのまま引き継いだものである旨論じていたのである。 その点もXは主張に盛り込み、同条の規定の適用につき、限定的になされるべき旨を主張した。 これに対して、税務署長Y(被告・被控訴人・被上告人)は、同条は、シャウプ勧告のいう「要領のよい納税者」の行う租税回避的な行為を封ずるという趣旨と、本来必要経費と認めるべき労務の対価等についても、それが家計費、すなわち所得税法45条《家事関連費等の必要経費不算入等》にいう家事関連費との区別が困難であることを理由に、一律に経費に算入しないこととしたものという2つの意義を有すると反論したのである。 これらの主張に対し、東京地裁は次のように判示した。 そして、この判断を東京高裁平成16年6月9日判決(判時1891号18頁)も維持したのである。 その後、この事件は上告審までもつれ込んだが、上告審最高裁平成17年7月5日第三小法廷判決(税資255号順号10070)は原審判断を妥当とした。 シャウプ勧告がいう「要領のよい納税者」に対する租税回避否認規定として、所得税法56条があるのであるから、租税回避事案以外の事案に同条を適用することは法の趣旨に反するものであるとの主張がXの理論構成である。 しかしながら、かかる主張は、そもそも、シャウプ勧告が指摘するとおりに、同条が創設されたものではなく、所得税法45条にいう必要経費に算入することのできない家事費ないし家事関連費が混在することを防止する目的で同法56条が規定されたのであって、同条の創設が必ずしもシャウプ勧告のいう目的でのみなされたものではないとして排斥されたのである。 このように、シャウプ勧告の指摘するとおりに所得税法を解釈すべきとする主張や見解に対しては、現行所得税法が、必ずしもシャウプ勧告どおりに規定されているものとはいえないとして、シャウプ勧告の思考に基づく法解釈が否定されている事例が散見されるのである。 2 相続税法にみるシャウプ勧告の影響 相続税法7条《贈与又は遺贈により取得したものとみなす場合》は、著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合においては、当該財産の譲渡があった時において、当該財産の譲渡を受けた者が、当該対価と当該譲渡があった時における当該財産の時価との差額に相当する金額を当該財産を譲渡した者から贈与により取得したものとみなすとする規定である。 この規定の解釈適用を巡っても、シャウプ勧告の影響が及ぶものか議論されることがある。 例えば、さいたま地裁平成17年1月12日判決(税資255号順号9885)におけるX(原告)の主張は、相続税法7条が本件に適用されるかどうかに関して次のようなものであった。すなわち、Xは、「相続税法7条は、昭和25年シャウプ勧告により、課税の公平を図るため、贈与を売買の形式を用いて免れる者に対して課税する目的で創設された規定である。」とし、相続税法7条創設時の納税義務者が、次のとおり規定されていた点を指摘する。 つまり、シャウプ勧告により創設された相続税法7条のみなし贈与により課税されるのは相続税だったのであり、このことからも、課税の対象は、相続税を免れる行為だったと考えられるというのである。 その後、昭和28年の相続税法改正により、贈与税部分を1条の2(当時)に独立したが、立法趣旨等についての考え方ないし扱い方は従来どおりであったという立法経緯からして、同法7条は、相続税を免れるために行われたと認められる低額譲受にのみ適用されるものと限定解釈されなければならないというのがXの主張であった。 したがって、相続税法7条の射程範囲は、相続予定者等の親族に該当する者を対象とする低額譲受と解すべきであるという。 これに対して、さいたま地裁は、Xの主張を排斥した。 そして、さいたま地裁は、「Xに贈与意思や租税回避の目的がないことをもって本件には相続税法7条が適用される前提を欠くとするXの主張は理由がなく、採用できない。」としてXの主張を排斥した。 このようにみてくると、シャウプ勧告の内容が直截、現行租税法の解釈に影響を及ぼす余地はないと解すべきなのであろうか。 (続く)

#No. 335(掲載号)
#酒井 克彦
2019/09/12

事例でわかる[事業承継対策]解決へのヒント 【第9回】「多額の資本金等となる場合の合同会社の利用」

事例でわかる[事業承継対策] 解決へのヒント 【第9回】 「多額の資本金等となる場合の合同会社の利用」   太陽グラントソントン税理士法人 (事業承継対策研究会) パートナー 税理士 日野 有裕   相談内容 私Xは、父親から引き継いだ建設業を経営してきました。今後は同族による経営を維持していくのは難しいので、利益の出ているうちに現金化した方が良いと考え、先日、私が所有するすべての株式を投資ファンドに40億円で売却しました。この譲渡に係る所得税を支払った後は、約30億円が手元に残る予定です。 私は50代で、今後の人生を考えると引退するには早いし、2人の子もまだ高校生と中学生なので、親が働かない姿を見せるのは教育上良くないと考えています。したがって、今後は手元にある30億円を使って不動産事業を行おうと考えており、将来はその事業を子供に引き継いでいくつもりです。 不動産事業は当面私1人で運営しようと考えていますが、個人名義ではなく法人名義で事業を行いたいと思っています。ただ、私には法人を設立した経験がなく、将来の子どもたちへの事業承継に備えて、どのような点に注意すればよいでしょうか。 ■ □ ■ □  解 説  □ ■ □ ■ [1] 法人への資金注入方法の検討 法人への資金の注入方法としては、主に、(1)Xからの出資と(2)Xからの貸付けの2つの方法が考えられます。どちらを選ぶかの判断基準の1つとして、相続時の財産評価があります。 (1) 「出資」の場合の相続時の財産評価 会社に資本として出資した場合、Xは株式を保有することになり、その株式の評価額は、相続税に係る評価方法を定めた財産評価基本通達によることになります。 不動産の取得時期や会社の収益等にもよりますが、一般的には株式の取得価額(ここでは30億円)よりも相続税評価額の方が低く評価されることが多いため、同じ30億円を現金で持つよりも株式にした方が、財産評価の面では有利となります。 Xは50代とまだ若く、出資後に、その法人の株式評価の引下げ対策や、株式の承継準備、相続税の納税資金対策をじっくり行うことができるので、出資(30億円)による法人設立は検討すべき選択肢です。 (2) 「貸付け」の場合の相続時の財産評価 設立法人へ30億円を貸し付ける場合は、Xの現金が貸付金に代わるのみであり、相続時の評価はそのまま30億円となります。   [2] 合同会社設立の検討 会社設立の形態としては株式会社が一般的ですが、合同会社も検討の1つとして考えるべきです。 近年、合同会社の設立も増加しつつありますが、その内容についてはあまり知られていないところがあります。合同会社は、以下のように、出資者の有限責任が確保されつつ、柔軟な運営が可能となる法人です。 (1) 株式会社と合同会社の主な相違点 (2) 設立コスト 法人の設立費用のうち一番大きいのは、登記される資本金の額に応じて課される登録免許税です。この登録免許税は、資本金の額に0.7%を乗じて計算されます。 ご相談の場合、株式会社と合同会社では、登録免許税はそれぞれ以下の通りとなります。合同会社の資本金を小さくすることにより、登録免許税を1,000万円以上節約できます。 (3) 機関設計等 当面はX1人で運営するということであれば、任期のない合同会社で、Xが代表社員となればよいと考えます。将来、例えば出資者でない子や血縁関係のないビジネスパートナーを役員として受け入れる必要が生じた場合は、その時点で株式会社への転換を検討すべきです(合同会社から株式会社、株式会社から合同会社へは、一定の手続を経て組織変更することができます)。   [3] 結論 ご相談の場合、会社へは30億円出資し、合同会社形態で設立するのも1つの選択肢と考えます。 ところで、不動産投資は、相続税を節税できるかどうかではなく、第一にビジネスとして成り立つかどうかで判断する必要があります。そして、会社の形態については、将来どのような事業展開を行うかを想定して決定すべき事項であり、設立費等のコストについては判断材料の1つとして考えるべきです。 なお、実際の会社設立・出資の際には、司法書士・税理士等の専門家と相談の上、実行されることをお勧めします。 (了)

#No. 335(掲載号)
#太陽グラントソントン税理士法人 事業承継対策研究会
2019/09/12

さっと読める! 実務必須の[重要税務判例] 【第51回】「相続税延滞税事件」~最判平成26年12月12日(集民248号165頁)~

さっと読める! 実務必須の [重要税務判例] 【第51回】 「相続税延滞税事件」 ~最判平成26年12月12日(集民248号165頁)~   弁護士 菊田 雅裕   (了)

#No. 335(掲載号)
#菊田 雅裕
2019/09/12
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