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《速報解説》 中小企業庁、「事業承継補助金(後継者承継支援型~経営者交代タイプ~)」の公募を開始~公募締切は6月8日、5月9日からは各地で説明会を開催~

 《速報解説》 中小企業庁、「事業承継補助金(後継者承継支援型 ~経営者交代タイプ~)」の公募を開始 ~公募締切は6月8日、5月9日からは各地で説明会を開催~   Profession Journal 編集部   平成30年4月27日、中小企業庁は「~平成29年度補正事業承継補助金~後継者承継支援型「経営者交代タイプ」(Ⅰ型)」の公募を開始した。補助上限額は最大500万円、公募の締切は平成30年6月8日となっている。 また、公募の開始とともに特設ページとして、本補助金の詳細や関連情報などを掲載した事業承継補助金事務局のホームページが新たに開設されている。 本補助金は、【1】地域経済に貢献する中小企業者による【2】事業承継をきっかけとした(事業再編・事業統合を除く)【3】後継者による新しい取組(経営革新や事業転換)を支援することが目的だ。 【1】の中小企業者は取引関係やサービスの提供で地域の需要に応えること、及び地域の雇用の維持・創出を支える中小企業であること、また、【3】の後継者は一定程度の知識や経験を有することが求められるため、次の①~③のどれかに該当する必要がある。 また、【3】の新しい取組の内容によって補助上限額が変わる。 具体的には、新規設備導入による生産性向上を伴う経営革新等を行う場合、補助上限額は最大200万円、それに加えて事業所の廃止や事業の集約・廃止を伴う事業転換にも挑戦する場合は廃業費用として最大300万円が上乗せされ、補助上限額は最大500万円となる。 ただし、本補助金の要件となる事業承継を行う期間には注意が必要だ。 本補助金が対象とするのは、平成27年4月1日から平成30年12月31日までに行われた事業承継であるため、公募開始前に事業承継が行われた場合でも応募は可能だ。ただし、公募開始後に事業承継を行う中小企業者は、最長でも今年の年末が期限となるので留意しておきたい。 (※) 中小企業庁ホームページより 中小企業者は上記要件を満たしているかの確認、及び新しい取組の実施期間(補助事業期間)中の円滑な事業化への支援を税理士等の認定支援機関から受け、応募の際には認定支援機関が作成する「確認書」が必要となる。 この「確認書」を含めた申請様式・添付書類については、上述の事業承継補助金サイトにて入手することができる。 (※) 中小企業庁ホームページより *  *  * なお今回、組織再編・事業統合を行う中小企業は本補助金の公募対象外となっているが、7月上旬頃にそれらの中小企業を対象とした新たな補助金の公募開始が予定されているので、今後も注視が必要だ。 また、今回の公募に伴い中小企業庁は全国11箇所で公募説明会を行う(事前予約制)。5月9日(水)の東京での説明会を皮切りに5月21日(月)まで順次開催していく。詳細なスケジュール及び事前予約については、上述の事業承継補助金サイトを確認されたい。 (了)

#No. 266(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2018/05/02

《速報解説》 会計士協会、二度の意見募集を経て「違法行為への対応に関する指針」の制定及び「倫理規則」等の改正を確定~会計事務所等所属の会計士を対象に規定~

《速報解説》 会計士協会、二度の意見募集を経て 「違法行為への対応に関する指針」の制定及び「倫理規則」等の改正を確定 ~会計事務所等所属の会計士を対象に規定~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成30年4月27日(ホームページ掲載日)、日本公認会計士協会は次のものを公表した。 これにより、平成29年10月6日及び平成30年1月26日から意見募集していた公開草案が確定することになる。公開草案に対するコメントの概要及びそれに対する対応も公表されているので、上記の理解に資するものと考えられる。 これは、国際会計士連盟(International Federation of Accountants:IFAC) における国際会計士倫理基準審議会(International Ethics Standards Board for Accountants:IESBA)の倫理規程(Code of Ethics for Professional Accountants)が改正されたことに対応するものである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 「倫理規則」の主な改正 現行の「倫理規則」の「倫理規則の趣旨及び精神」では、「社会の期待に応え得るよう」との表現を用いているが、これを「社会の期待に応え、公共の利益に資することができるよう」と改正している。 ここでは、「公共の利益」の用語がポイントと解される。 主に次の改正が行われている。 2 「違法行為への対応に関する指針」の新設 倫理規則19 条の2における委任規定に基づいて、「違法行為への対応に関する指針」を新設し、会計事務所等所属の会員が違法行為又はその疑いに気付いた場合の対応について規定している。 次のことに留意する。 「職業倫理に関する解釈指針」について主に次の改正が行われている。 3 「保証業務の依頼人に対する非保証業務の提供」に関する「独立性に関する指針」の主な改正 4 「担当者の長期的関与とローテーション」に関する「独立性に関する指針」の主な改正 担当者の長期的関与とローテーションに関して、担当者が長期間にわたって監査業務に関与する場合、当該者の公正性及び職業的懐疑心に影響を与え得る馴れ合い及び自己利益の阻害要因が生じ、その重要性が高くなる可能性について詳細に述べ、セーフガードの適用について規定している(第1部150項~150-5項)。 インターバル期間について次のように見直されている。 (出所:「「倫理規則」、「独立性に関する指針」及び「職業倫理に関する解釈指針」の改正並びに「違法行為への対応に関する指針」の制定に関する概要」の4ページの図表を一部加工) 筆頭業務執行責任者とは、監査業務の業務執行責任者のうち、その事務を統括する者として監査報告書の筆頭に自署し、自己の印を押す者1名をいう(第1部139項。共同監査の場合には、会計事務所ごとに筆頭業務執行責任者1名とする)。 改正前は、同一のインターバル期間が適用されていたが、改正後は、3つの分類に基づいて、異なるインターバル期間が適用されることになる。 また、関与期間については、累積期間でカウントすることになる(第1部151項、151-2項等)。 「職業倫理に関する解釈指針」について主に次の改正が行われている。   Ⅲ 適用時期等 倫理規則については日本公認会計士協会の定期総会(平成30年7月24日開催予定)での承認が必要となり、また、「職業倫理に関する解釈指針」の改正のうち違法行為への対応に関する部分及び「違法行為への対応に関する指針」の制定は、「倫理規則」の改正が定期総会で承認されることを前提として公表している。 (了)

#No. 266(掲載号)
#阿部 光成
2018/05/02

プロフェッションジャーナル No.266が公開されました!~今週のお薦め記事~

2018年4月26日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.266を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2018/04/26

山本守之の法人税“一刀両断” 【第46回】「会計における収益認識基準と税務」

山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第46回】 「会計における収益認識基準と税務」   税理士 山本 守之   1 企業会計における収益認識基準 (1) わが国の基準 企業会計原則は、「売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る」と規定しています。このような実現主義の原則(以下「実現原則」という)の下では、財・サービスの引渡しとその対価としての貨幣性資産の受入れがあった時に収益が実現すると考えられます。実現原則が収益認識基準として採用されるのは、収益の認識の確実性と測定の客観性を確保するとともに、資金的な裏付けのある利益を計算するためといわれています。 しかし、わが国には収益認識に関する包括的な会計基準は存在しておらず、資産の販売又は譲渡あるいはサービスの提供の過程における個別具体的などの時点において、引渡しあるいは提供が行われるのかについての詳細な規定は存在していなかったのです。そのため、売上高は、損益計算書のトップラインすなわち期間利益計算の出発点となる重要な項目であるにもかかわらず、実現概念の解釈あるいは収益実現の時点の判定をめぐって争われることが少なくなかったのです。 (2) 会計基準及び適用指針の公表 国際会計基準審議会と米国財務会計基準審議会は、共同で収益認識に関する包括的な会計基準の開発を行い、2014年5月に「顧客との契約から生じる収益」(IFRS15,SFAS Topic 606)を公表し、IFRS15は2018年1月1日以後開始年度から、SFAS Topic 606は2017年12月15日以後開始年度から適用されることになっています。 このような収益認識に関する会計基準を整備する国際動向を受けて、企業会計基準委員会は、2015年にIFRS15を踏まえたわが国における収益認識に関する包括的な会計基準の開発に向けた検討に着手し、2017年7月20日に企業会計基準公開草案第61号「収益認識に関する会計基準(案)」及び企業会計基準適用指針公開草案第61号「収益認識に関する会計基準の適用指針(案)」を公表しました(会計基準公開草案87項)。 そして、2018年3月30日に、この会計基準(企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」)及び適用指針(企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」)が正式に公表されました。 (3) 会計基準の主な内容 これらの主な内容は次の通りです。   2 法人税法の改正 法人税法では第22条を改正するとともに、第22条の2に新たな規定を定めています。つまり、平成30年度税制改正によって新設された法人税法22条の2は、収益の年度帰属に関する基本原則を明示しています。 同条1項は、資産の販売もしくは譲渡又は役務の提供(以下「資産の販売等」という)に係る収益の額は、別段の定めがあるものを除き、その資産の販売等に係る目的物の引渡し又は役務の提供の日の属する事業年度の益金の額に算入すると規定しています。この規定は、「目的物の引渡し又は役務の提供の日」に収益を認識することから、実現原則の考え方を引き継いでいると解されます。 また、棚卸資産の販売による収益額は、その引渡しがあった日の属する事業年度の益金の額に算入すると規定しています。法人税法22条の2の規定は、収益認識に関する「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」の内容を確認した規定と考えられます。   3 改正条文の内容 (1) 法人税法22条の改正 法人税法22条は次のように改正されました(  部分。  又は  及び(注)は筆者)。 (2) 法人税法22条の2の内容 法人税法22条の2は次のように規定されました。 法人税法22条は、所得の金額の計算について定められている重要な条文です。 しかし、益金の額に算入すべき金額については同条2項で、「内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする」とされているだけです。さらに、収益の額、原価、費用、損失の額については、同条4項で「第2項に規定する当該事業年度の収益の額及び前項各号に掲げる額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする」としているだけで、収益の額の具体的な内容は定められていなかったのです。 しかし、平成30年度改正で定められた法人税法22条の2第1項では、「・・・資産の販売等に係る収益の額は、別段の定め(前条第4項を除く。)があるものを除き、その資産の販売等に係る目的物の引渡し又は役務の提供の日の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入する」として、「引渡基準」又は「役務提供完了基準」が原則であることを明確化しました。 なお、会計基準では「重要性等に関する代替的な取扱い」として、IFRS15号における取扱いとは別個に11項目の代替的な処理が認められています。これは、実務上の配慮から財務諸表間の比較可能性を大きく損なわない範囲での代替処理を会計上認めるものであり、法人税法22条の2第2項もこうした処理を受けています。 法人税法22条の2のポイントは次の通りです。   4 適用指針の返品権付販売と法人税法 適用指針は、返品権付商品・製品を販売したときの会計処理を、次のように定めています(85項)。 このように、適用指針では、将来の返品に係る返金負債の見積りが求められます。 一方、旧法人税法は、特定の事業について、損金経理により返品調整引当金に繰り入れられた金額のうち実績に基づく返品率及び売買利益率に基づいて算定した繰入限度額までが損金算入されました(53条1項)。繰入限度額の計算は実績に基づいており、適用指針のような将来の返金負債の見積りという要素がないのです。 収益認識会計基準適用後も、法人税法が、収益認識会計基準の会計処理を認めず、損金経理を前提とする返品調整引当金制度を維持するならば、返金負債に相当する費用を損金算入できなくなります。   5 改正の内容 ところが驚いたことに、平成30年度税制改正大綱では返品調整引当金を次のよう廃止するとしました。 会計における収益認識基準において、引当金の存在を否定しています。この考え方で安易に引当金を廃止できるのでしょうか。 平成30年度税制改正では返品調整引当金制度が廃止されることになりました。 これは、会計基準によって「収益を見込まない」とすれば返品による損失を引き当てる必要はないという考えでしょう。 しかし、現実に存在する企業取引に配慮して引当金を認めた税法の考え方は取り入れる必要はないのでしょうか。 この制度の廃止に伴う影響が大きいことに配慮して、廃止に併せて経過措置も講じられます。具体的には、改正法が施行される際(平成30年4月1日)現に、返品調整引当金の対象となる事業を営む法人等の場合、平成33年3月31日までに開始する各事業年度については改正前の規定に基づく損金算入限度額による繰入が認められる一方、平成33年4月1日から平成42年3月31日までの間に開始する各事業年度については、改正前の規定に基づく損金算入限度額に対して、1年ごとに10分の1ずつ縮小した額の繰入を、それぞれすることができる等の経過措置が講じられます(改正法附則25、32等)。 このように、返品による損失を引当金として認めるか、収益の認識基準として売上に計上しないこととするかなど、理論的に解明すべきことが本来先決とはされていないのです。このようなことが議論されていないのは、筆者としては寂しい限りです。 2年間は旧法を認め、2年の経過措置後は損金算入限度額を段階的に縮小し、43年3月に完全に廃止というのは、あまりに安易な改正です。   6 会計と税理論とを比較すべき 会計の立場からは、新収益基準等の収益の認識は従来の実現主義とは基本的に異ならないとしていますが、もともと「実現主義」は抽象的、包括的なもので、客観的検証に欠けるものであり、法人税法では実現主義という言葉は使っていません。 判例等では権利確定主義が使われていますが、法人税法との調整が必要でしょう。 例えば「変動対価」については、基準等のうち法的に何らかの手当てがされるべきでしょう。 販売促進に使われる「重要なポイント」の付与等に法人税法における通達の手当てが必要でしょう。 返品調整引当金について基準等では大きく異なっており、原論的解明が必要です。また、法人税の実効税率が29.97%から29.74%と変わることについての手当ても必要です。 もともと返品調整引当金は、現実に行われている取引を基礎として規定しているのですから、安易に廃止すべきものとは考えられません。 (了)

#No. 266(掲載号)
#山本 守之
2018/04/26

仮想通貨の不正送金に係る補償金の課税関係・計算方法と確定申告の留意点

仮想通貨の不正送金に係る補償金の 課税関係・計算方法と確定申告の留意点   税理士 仲宗根 宗聡   仮想通貨の不正送金被害に対し、仮想通貨交換業者から支払われた補償金の課税関係について、平成30年4月16日に、国税当局からタックスアンサーによる見解が公表された。 今回の見解は、不正送金された仮想通貨を、同じ仮想通貨に代えて金銭で支払われた場合を前提としており、その場合は、その補償金と同額で仮想通貨を売却したものとして解釈した課税関係となる。 なお、課税関係のポイントは、次のようになる。 ▷留意点 これらの課税関係は、補償金の支払いが行われた年分に生じたものとされる。 このため、平成30年中に補償金の支払いが行われた場合は、平成30年分の課税関係として、確定申告期限は平成31年3月15日となる。   【1】 雑所得の計算 仮想通貨を売却した場合と同様の計算を行う。 なお、その補償金がそのまま所得の金額とはならない。 補償金 - 補償金の対象となった仮想通貨の取得価額 = 雑所得の金額 仮想通貨を売却した場合の計算方法の詳細は、平成29年12月1日に国税庁より公表された「仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)」の[問1]を参照されたい。   【2】 仮想通貨の取得価額 同一の仮想通貨を2回以上にわたって取得した場合のその仮想通貨の取得価額の算定方法は、移動平均法を用いるのが相当である。ただし、継続して適用することを要件に、総平均法を用いても差し支えない(上記国税庁情報の[問4]を参照)。   【3】 雑所得の確定申告 補償金が仮想通貨の取得価額を上回った場合は、その雑所得の金額を、他の所得と合算して、原則として確定申告が必要となる。   【4】 給与所得者の確定申告の特例 1か所から給与の支払いを受けている人で、給与所得及び退職所得以外の所得の金額が20万円以下の場合は、確定申告を不要とすることができる。 これは、1か所から給与の支払いを受けている人は、その給与所得については、年末調整にて課税関係が完結しているため、その他の所得が少額(20万円以下)の場合は、確定申告を省略し、その他の所得の課税を省略できるという特例である。 そのため、仮想通貨の補償金による雑所得の金額が20万円以下の人は、この特例により確定申告を不要とすることができる場合がある。 しかし、次のような人は、確定申告が必要であり、補償金による雑所得も課税の対象となる。 〔確定申告が必要な人〕 ① 給与の年間収入が2,000万円を超える人 ② 2か所以上から給与の支払いを受けている人で確定申告が必要な人 ③ 給与所得者で医療費控除や寄附金控除の適用を受ける人  など ▷留意点 事業所得や不動産所得を得ている方で確定申告が必要な人は、補償金による雑所得が20万円以下であっても、その雑所得の金額を事業所得等と合算して確定申告をする。 20万円以下の特例は、あくまでも給与所得者の確定申告の特例であって、課税の減免制度ではない。   【5】 雑所得の損益通算 補償金が仮想通貨の取得価額を下回った場合は、その雑所得の損失の金額は、他の所得(給与所得、事業所得、不動産所得など)と損益通算することはできない。 なお、補償金による雑所得の損失とその年中に生じた他の雑所得の金額との雑所得内部での通算はすることができる。 「その年中に生じた他の雑所得」とは、①年金等の雑所得、②他の仮想通貨の売却等の雑所得、③副業による雑所得などがある。 ▷留意点 事業所得や不動産所得から生じた損失がある場合、仮想通貨の補償金による雑所得の金額(黒字)との損益通算はすることができる。 (了)

#No. 266(掲載号)
#仲宗根 宗聡
2018/04/26

国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第16回】「非居住外国人の贈与税」-平成30年度税制改正の影響-

国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第16回】 「非居住外国人の贈与税」 -平成30年度税制改正の影響-   税理士 菅野 真美   - 質 問 - 12年間日本に住んでいた外国籍のXは、平成30年5月1日に出国して、平成30年8月8日に外国株式と日本株式を、外国籍で外国に住んでいるYに贈与する予定です。 この場合、Yはどの株式について、日本の贈与税が課されるのでしょうか。また、いつまでに申告納税しなければならないのでしょうか。   ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ ▷頻繁に改正される贈与税の納税義務者に関する規定 どの税法でも幹となる条文の一つとして、納税義務者が誰かを定めた条文がある。税法の根幹となることから、通常は、創設時の定義が頻繁かつ大幅に改正されることは考えられない。しかし、日本の相続税法においては、この20年の間、頻繁かつ大幅な改正が行われている。 なぜ、このような改正が繰り返されるのかというと、納税義務者の違いにより課税範囲が大きく異なり、また、納税義務者の変更を恣意的に行うことが困難ではなかったからである。 このため、大きな租税回避事件が発生するたびに税制改正が行われ、平成25年度税制改正では、贈与者が贈与時に日本に住所を有している場合は、受贈者が日本に住んだことが一度もなかったとしても、全世界財産に課税されることになった。 しかし、この改正は行き過ぎだという批判が海外からも多くあり、高度専門職の外国人の誘致を考えている政府としてもこれらの批判を無視することができず、外国人については、課税の適用要件を緩和する改正が平成29年度に行われた。   ▷平成30年度税制改正でどう変わったのか? 平成29年度税制改正では、贈与の開始から15年以内に日本に住所を有していた期間が10年以下で、贈与時に日本に住所を有していない外国人(日本国籍のない人)が贈与者で、受贈者が贈与時に日本に住所を有していない外国人(日本国籍ではない人)である場合は、課税範囲が国内財産に限定された(旧相法1の4①二ロ・③三、2の2①)。 しかし、15年以内に10年超日本に住んでいた外国人の場合は全世界財産に課税され、それは不合理であると、またもや批判された。一方で、日本を出国した後の贈与は国内財産に限定されることを利用した節税行為を防止する必要もあった。 そこで平成30年度税制改正では、贈与者が贈与時に国内に住所を有さず、贈与時前15年以内に10年超の期間、国内に住所があったとしても、日本在住期間内に日本国籍を有していなかった者については、原則的には、課税範囲が国内財産に限定されることになった(相法1の4①四・③三イ(2)、2の2②)。 (※) 相続税についても上記の規定が設けられているが、当然ながら下記の再入国に係る規定はない。 ただし、贈与については、贈与者が日本に住所を有しないこととなった日から同日以後2年を経過する日までの間に国外財産を贈与し、2年を経過する日までに再び日本に住所を有することとなった場合は、国外財産についても日本で贈与税課税がなされるような改正がなされることになった(相法1の4①二ロ・③三イ(2)、2の2①)。 これらを踏まえ、本件について、以下検討していく。   ▷期間の計算方法 今回は、まず、ある人が日本に「住所を有しないこととなった日」、「住所を有することとなった日」が一体いつなのかが重要になる。これについては所得税基本通達2-4の3を参考にして「国内に住所又は居所を有していた期間」は、「入国の日の翌日から出国の日まで」となる。 つまり国内に住所を有していない期間は、出国日の翌日から(再)入国日までとなり、本件の場合は平成30年5月1日の出国であるから、平成30年5月2日が住所を有しなくなる期間の始めである。 次に、同日から2年を経過しているもの(相法1の4③三イ(2))、同日から2年を経過していないもの(相法28⑤)、住所を有しなくなった日から2年を経過する日までに再びこの法律の施行地に住所を有することとなった場合(相法28⑥)、短期非居住贈与者がこの法律の施行地に住所を有しなくなった日から2年を経過した場合(相法28⑦)というように、「2年を経過する日」と「2年を経過した場合」という表記がある。 「経過する日」と「経過した日」は異なり、本件の場合、「(住所を有しなくなった日から)2年を経過する日」とは平成32年5月1日であり、「(住所を有しなくなった日から)2年を経過した日」とは平成32年5月2日となる。 さらに、日本に「住所を有することとなる日」は、入国日の翌日となる。これらを踏まえ、以下、条文をあてはめて検証していく。   ▷Yの贈与時における納税義務者の判定 本件では、贈与は平成30年8月8日に行われる。この時点で受贈者Yは外国籍であり、日本に住所を有していない。 他方、贈与者Xは、平成30年8月8日時点では外国に住んでいるが、30年8月8日基準で過去15年以内に10年超日本に住んでいたこと、さらに、出国(平成30年5月1日)の翌日から2年経過していないことから、非居住贈与者には該当しない(相法1の4③三)。 したがって、受贈者Yは、贈与時点で、贈与税の非居住無制限納税義務者(相法1の4①二ロ)に該当し、外国株式及び日本株式について日本の贈与税の課税対象となる(相法2の2①)。ただし、これはあくまでも仮の納税義務という位置づけである。   ▷Yの贈与税の申告書提出義務の判定 贈与税の非居住納税者となった場合、原則的には贈与した年の翌年の2月1日から3月15日までに贈与税の期限内申告書の提出義務が生ずる(相法28①)ことになるが、本件のXのように贈与前15年以内に10年超日本に住所を有していた外国人で、出国から2年経過していない間に贈与をした人を「短期非居住贈与者」と定義し、このような者が行った贈与については、納税義務はあるが、申告書の提出義務はないとしている(相法28⑤)。 つまり、Yは、本来ならば平成31年2月1日から3月15日までに平成30年分の贈与税の申告書を提出する義務があるが、Xが短期非居住贈与者になることから、この時点では、贈与税の申告義務はない。   ▷Xが平成31年4月2日に日本に再入国し、4月3日から日本に住所を有することとなった場合 ここでまず、Yに贈与をした後、Xが平成31年4月2日に日本に再入国し、平成31年4月3日から日本に住所を有することとなった場合について考えてみたい。 Xが出国したのが平成30年5月1日であり、再入国が平成31年4月2日であるため、日本に住所を有していない期間は「平成30年5月2日から平成31年4月2日」であることから、2年を経過していない。この時点で、Xは非居住贈与者ではないということが確定し、Yについても非居住無制限納税義務者として、外国株式及び日本株式について贈与税の申告義務が生ずる。 この場合、申告期限は贈与日基準ではなく、Xが日本に再び住所を有することとなった日(平成31年4月3日)を基準として、平成32年2月1日から3月15日までに贈与税の申告をしなければならない(相法28⑥)。   ▷Xが平成32年5月1日までに日本に再入国せず、5月2日に日本に住所を有しなかった場合 次に、Yに贈与をした後、Xが平成32年5月1日までに日本に再入国せず、平成32年5月2日に日本に住所を有しなかった場合、日本に住所を有しなくなった日(平成30年5月2日)から2年を経過した(平成32年5月2日)ため、短期非居住贈与者は非居住贈与者とみなされることから、Yについては非居住制限納税義務者として、日本株式についてのみ、贈与税の申告義務が生ずる。 この場合、申告期限は贈与日基準ではなく、日本に住所を有しなくなった日から2年を経過した日、すなわち平成32年5月2日を基準として、平成33年2月1日から3月15日までに、贈与税の申告をしなければならない(相法28⑦)。 *  *  * このように2年ルールが設けられたが、条文上、納税義務と申告書の提出義務を分離している。非居住か否かは贈与時点で確定するが、無制限納税義務者か制限納税義務者かの判定は、約2年間の猶予期間が設けられている。このような複雑な制度で本当に適正な運用できるのか、甚だ疑問である。   (了)

#No. 266(掲載号)
#菅野 真美
2018/04/26

〈事例で学ぶ〉法人税申告書の書き方 【第25回】「別表14(3) 譲渡制限付株式に関する明細書」

〈事例で学ぶ〉 法人税申告書の書き方 【第25回】 「別表14(3) 譲渡制限付株式に関する明細書」   公認会計士・税理士 菊地 康夫   Ⅰ はじめに 本稿では、法人税申告書のうち、税制改正により変更もしくは新たに追加となった様式、実務書籍への掲載頻度が低い様式等を中心に、簡素な事例をもとに記載例と書き方のポイントを解説していく。 第25回目は、最近導入されたいわゆるリストリクテッド・ストックに関する「別表14(3) 譲渡制限付株式に関する明細書」を採り上げる。 (※) 平成30年度税制改正を受け法人税申告書の様式が改訂されましたが、この別表14(3)は変更されていません。   Ⅱ 概要 この別表は、個人に法人税法第54条第1項(譲渡制限付株式を対価とする費用の帰属事業年度の特例)に規定する特定譲渡制限付株式が交付されている場合に、同項の役務の提供を受ける法人が記載する。 本制度は、いわゆるリストリクテッド・ストックと呼ばれているものであり、平成28年度税制改正により、特定譲渡制限付株式が交付された場合の法人税法上の規定が設けられ、さらに平成28年6月に経済産業省より公表された『「攻めの経営」を促す役員報酬~新たな株式報酬(いわゆる「リストリクテッド・ストック」)の導入等の手引き~』により、特定譲渡制限付株式報酬の導入に関する実務的な環境整備がなされた。 すなわち、法人からその法人の役員又は従業員等(以下「役員等」という)に、その役員等による役務提供の対価として交付される一定の条件が付されている株式(特定譲渡制限付株式)について、その役員等における所得税の課税時期については、譲渡制限期間中はその特定譲渡制限付株式の処分ができないこと等に鑑み、その特定譲渡制限付株式の交付日ではなく、譲渡制限解除日となることが明確化された。 一定の条件とは、次の①から④までの要件を満たすものとされている。 なお、役員給与として特定譲渡制限付株式が交付された場合には、事前確定届出給与の要件に該当する特定譲渡制限付株式による給与の額については、原則として損金の額に算入されることになる。 この所得税における課税時期の明確化に伴い、その法人においては、その役員等における所得税の課税時期として所得税法等の規定により給与等課税事由が生じた日(その特定譲渡制限付株式の譲渡制限解除日)にその役務提供を受けたものとされ、その役務提供に係る費用の額は、同日の属する事業年度において損金の額に算入することとされたのである。 また、法人が特定譲渡制限付株式を交付した場合の会計処理については、その付与した報酬債権相当額を「前払費用」等の適当な科目で資産計上するとともに、現物出資された報酬債権の額を会社法等の規定に基づき「資本金(及び資本準備金)」として計上することになる。 特定譲渡制限付株式の交付後は、現物出資等をされた報酬債権相当額のうちその役員等が提供する役務として当期に発生したと認められる額を、対象勤務期間(=譲渡制限期間)を基礎とする方法等の合理的な方法により算定し、前払費用等を取り崩して費用計上する。なお、付与した報酬債権相当額のうち譲渡制限解除の条件未達により会社が役員等から株式を無償取得することとなった部分(役員等から役務提供を受けられなかった部分)については、その部分に相当する前払費用等を取り崩し、同額を損失処理することになる。   Ⅲ 「別表14(3)」の書き方と留意点 (1) 設例 (2) 今回の別表が適用される事業年度 平成29年10月1日以後終了する事業年度。 (3) 別表の記載例 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。 (4) 譲渡制限付株式に関する計算と仕訳例 (単位:円) 〔報酬債権の額の計算〕 〔費用配分の計算〕 〔29年3月期の仕訳〕 〔30年3月期の仕訳〕 〔31年3月期の仕訳〕 (5) 別表の各記載欄の説明 「譲渡制限付株式の変動状況の明細」 (了)

#No. 266(掲載号)
#菊地 康夫
2018/04/26

〔平成30年4月1日から適用〕改正外国子会社合算税制の要点解説 【第7回】「部分合算課税①」-概要及び計算構造-

〔平成30年4月1日から適用〕 改正外国子会社合算税制の要点解説 【第7回】 「部分合算課税①」 -概要及び計算構造-   税理士 長谷川 太郎   1 押さえておきたいポイント   2 部分合算課税制度の概要 特定外国関係会社以外の外国関係会社のうち、経済活動基準を全て充足する会社を「部分対象外国関係会社」といい(措法66の6②六)、租税負担割合が20%以上であることや少額免除基準に該当しない場合(措法66の6⑩)には、11種類に区分された各特定所得の金額をベースに計算した「部分適用対象金額」に請求権等勘案合算割合を乗じて計算した「部分課税対象金額」について、合算課税の適用を受けることになる(措法66の6⑥、措令39の17の3①)。 また、銀行業、金融商品取引業、保険業等を行う一定の部分対象外国関係会社については、「外国金融子会社等」として、通常の部分合算課税の対象となる特定所得(11種類)からさらに限定した特定所得(5種類)のみを部分合算課税の対象とする制度が新設されている(措法66の6②七、⑧)。本稿においては、詳細な解説を割愛する。 【判定チャート】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。   3 計算構造について 今回の改正により、これまでの資産性所得から対象となる所得の範囲や計算方法が大きく変わっている。 部分合算課税の計算構造は以下の通りとなっている。 (※) 財務省「平成29年度税制改正の解説」P714より抜粋 部分合算課税の対象となる「部分課税対象金額」は、以下の流れで計算される。 【Step1】 11種類の各特定所得の金額を個別に算出する。 (※) 各特定所得の内容に関しては次回以降、解説を行う。   【Step2】 11種類の各特定所得の金額のうち、「損益通算グループ」(各特定所得について、マイナスとなることがあり得る特定所得)に属する5種類の各特定所得の金額について合算を行い、マイナスの特定所得がある場合にはグループ内で損益通算を行う。   【Step3-1】 〈部分適用対象金額①〉 「損益通算グループ」に属する各特定所得の合計額がマイナスとなる場合、当該金額は7年間の繰越が可能となり、「非損益通算グループ」(各特定所得について、マイナスとなることがない6種類の特定所得)の各特定所得の合計額が「部分適用対象金額」となる。   【Step3-2】 〈部分適用対象金額②〉 「損益通算グループ」に属する各特定所得の合計額がプラスの場合で、前期以前から繰越をしてきた「部分適用対象損失額(過去7年以内に生じた「損益通算グループ」に属する各特定所得の合計額がマイナスとなった場合の金額で、その後の事業年度において控除されていない金額)」がある場合には、「損益通算グループ」に属する各特定所得の合計額の範囲で控除を行う(措法66の6⑦、措令39の17の3㉘)。損益通算後の「損益通算グループ」に属する各特定所得の合計額と「非損益通算グループ」の特定所得の合計額が「部分適用対象金額」となる。 なお、以下の事業年度については「損益通算グループ」に属する各特定所得の合計額がマイナスであったとしても、「部分適用対象損失額」には該当しない点に留意されたい(措令39の17の3㉘)。   【Step4-1】 〈少額判定①〉 「部分適用対象金額」が2,000万円以下(改正前までは1,000万円以下)である場合には、部分合算課税の適用が免除される(措法66の6⑩二)。   【Step4-2】 〈少額判定②〉 各事業年度の決算に基づく所得の金額に相当する金額のうちにその各事業年度における部分適用対象金額の占める割合が5%以下の場合には、部分合算課税の適用が免除される(措法66の6⑩三)。   【Step5】 〈部分課税対象金額〉 少額免除基準を充足しない場合には、部分適用対象金額に請求権等勘案合算割合を乗じた金額が部分合算課税の対象である部分課税対象金額となる。請求権等勘案合算割合については、会社単位の合算課税と同様である(【第4回】「4 課税対象金額」参照)。 なお、部分合算課税の金額が会社単位の合算課税の金額を超過している場合には、改正前の考え方であれば会社単位の合算課税の金額が上限となっていたが、今回の改正では、会社単位の合算課税金額が上限とはならず、部分合算課税の金額で課税される点に留意されたい。   【Step6】 〈申告手続き〉 部分課税対象金額が生じない場合や部分合算課税が免除となる場合には、確定申告書の別表への記載は不要となった。ただし、租税負担割合が20%未満であり、かつ当該外国関係会社に対する持株割合が10%以上等である内国法人については、部分合算課税の有無に関わらず、当該外国関係会社の貸借対照表、損益計算書等の確定申告書への添付が義務となっている(措法66の6⑪一)。   【参考】 ~部分合算課税の適用免除基準について~ 部分合算課税の適用免除基準は租税負担割合基準(下記〈1〉)と少額免除基準(下記〈2-1〉及び〈2-2〉)の2種類があり、租税負担割合基準については各特定所得の計算を行わずに免除判定を行うことが可能であるが、少額免除基準については各特定所得の計算を行い部分適用対象金額を算出したうえで、免除となるか否かの判断を行う必要がある。 (了)

#No. 266(掲載号)
#長谷川 太郎
2018/04/26

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第35回】

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第35回】   公認会計士 佐藤 信祐   (《第5章》 平成18年度税制改正) (2) 有価証券の譲渡損益 ① 取得請求権付株式等の請求権の行使等による株式の譲渡 平成18年度税制改正では、取得請求権付株式、取得条項付株式又は全部取得条項付種類株式が、請求権の行使、取得事由の発生又は取得決議により譲渡された場合において、対価として発行法人の株式のみの交付を受けたときは、譲渡損益を繰り延べることとされた。 これは、平成17年改正前商法における転換株式の転換に足並みを揃えたものであり、 と説明されている(※1)。 (※1) 『平成18年版改正税法のすべて』272頁。 さらに、取得条項付株式又は全部取得条項付種類株式に対する取得事由の発生又は取得決議により、対価として株式だけでなく、新株予約権も交付される場合には、「株式の取得及び株式の交付という取引と新株予約権無償割当てという取引の2つの取引が同時に行われたものと同様とみることができる」(※2)という理由により、同様の取扱いとなっている。 (※2) 前掲(※1)273頁。 その結果、旧株式の帳簿価額が新株式に付け替えられるため、取得した新株予約権の帳簿価額は零となる。ただし、株式が交付されずに、新株予約権のみが交付される場合には、課税の繰延べの対象とはならないという点に留意が必要である。 なお、適用要件として「概ね同額」とされているのは、持分割合を恣意的に移転させることを防ぐためのものであり、通常のオプションプレミアム程度の価額差であれば、「概ね同額」であるとして、課税の繰延べの対象として取り扱われる(※3)。 (※3) 前掲(※1)273頁。 さらに、その後に制定された法人税基本通達2-3-1では、1株に満たない端数に対して金銭等を交付したとしても、課税の繰延べの対象になることが明らかにされた。そして、いずれ本連載で解説するが、株式交換・移転税制の脱法手段として、全部取得条項付種類株式を用いた少数株主の締出しの手法が生み出され、平成26年会社法改正、平成29年度税制改正が行われることになる。 ② 新株予約権付社債に付された新株予約権の行使等による社債の譲渡 新株予約権付社債に付された新株予約権の行使によりその取得の対価として当該取得をする法人の株式が交付される場合にも、課税が繰り延べられることが明確化された。平成17年改正前商法と異なり、会社法では、新株予約権付社債の代用払込みについて、社債部分の現物出資という構成となったが、従前の取扱いと同様に、課税の繰延べの対象とする必要があるためである(※4)。 (※4) 前掲(※1)275頁。 さらに、取得条項付新株予約権、当該新株予約権が付された社債についても、課税の繰延べの対象とされた。 ③ 組織再編成による新株予約権の処理 会社法上、被合併法人、分割法人、株式交換完全子法人又は株式移転完全子法人が新株予約権を発行している場合において、合併法人、分割承継法人、株式交換完全親法人又は株式移転完全親法人の新株予約権を交付するときは、旧新株予約権を消滅させ、新しい新株予約権を交付する手続きとなったものの、株主からすれば投資が継続していることから、課税の繰延べの対象となった(※5)。 (※5) 前掲(※1)277頁。 ④ 有価証券の取得価額 会社法の施行により、法人税法における有価証券の取得価額の規定についても整備された。基本的には、平成17年改正前商法の取扱いを継続するものが多いが、株式交換・移転税制の導入に伴い、適格株式交換・移転を行った場合に、株主の数が50人未満である場合には株主における株式の帳簿価額、株主の数が50人以上である場合には完全子法人の簿価純資産価額を基礎に計算を行うことが定められたという点が大きな改正であると言える。 そして、会社法上、株式無償割当て、新株予約権無償割当て及び株式分割が整備されたことにより、これらにより取得した株式又は新株予約権の帳簿価額を零とすることが明らかにされた。これは、たとえ帳簿価額を零にしたとしても、株主の立場として、株式や新株予約権の交付を受けており、通常の事案においては、旧株式との帳簿価額を合算することにより平準化が行われることから(※6)、事務負担の軽減に配慮したためであると考えられる(※7)。 (※6) 前掲(※1)279頁。 (※7) 前掲(※1)280頁。 さらに、種類株式制度の整備により、有利発行の定義が「他の株主等に損害を及ぼすおそれがある場合」と改められた。そのため、特定の株主に対してのみ有利な条件で募集株式の発行等を行う場合だけでなく、特定の種類の株主に対してのみ有利な条件で募集株式の発行等を行う場合にも、有利発行の対象に該当することになる(※8)。 (※8) 前掲(※1)280頁。 ⑤ 有価証券の譲渡損益の益金又は損金算入時期 平成18年度税制改正では、通常の有価証券の譲渡ではなく、組織再編成や現物分配により有価証券が移転する場合における譲渡損益の計上日が明確化された(平成18年法規27の3の2)。例えば、組織再編成を行った場合には、その組織再編成の日に有価証券の譲渡損益の計算を行うことが明らかにされている。 そして、組織再編成には、吸収型再編と新設型再編があるが、会社法上、吸収型再編を行った場合には、合併等の効力発生日が組織再編成の日とされ、新設型再編を行った場合には、登記の日が組織再編成の日であるとされているため、法人税法上も、同様に取り扱うことになる(法基通1-4-1)。 *   *   * 次回では、分割型分割その他の組織再編税制に係る所要の整備について解説を行う予定である。 (了)

#No. 266(掲載号)
#佐藤 信祐
2018/04/26

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例61(所得税)】 「所得税の確定申告において、パソコンの不具合により電子申告が期限後になってしまい、65万円の青色申告特別控除が受けられなくなってしまった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例61(所得税)】   税理士 齋藤 和助     《基礎知識》 ◆青色申告特別控除(措法25の2) (1) 65万円控除 青色申告者に対しては、青色申告の特典として所得金額から最高65万円控除できる青色申告特別控除がある(※)。この65万円の控除を受けるためには、以下の要件を満たしている必要がある。 (※) 平成30年度税制改正により、平成32年分(2020年分)以後の所得税及び平成33年度分(2021年度分)以後の個人所得税から、控除額が55万円に引き下げられる(電子申告等一定の条件を充たす場合には65万円)。 なお、平成23年以降、65万円の青色申告特別控除について当初申告の確定申告書に記載した金額を上限とする措置が廃止されたため、確定申告書に記載されている不動産所得の金額又は事業所得の金額が、修正申告又は更正(再更正を含む)により異動することとなったため当該確定申告書に記載されている青色申告特別控除額にも異動が生ずることとなった場合には、その異動後の控除額によりこれらの所得の金額を計算する。 (2) 10万円控除 上記要件を満たしていなくても、青色申告者は、不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額から最高10万円の特別控除が受けられる。この10万円の青色申告特別控除は、確定申告書への記載を要件とするものではないから、青色申告者がその控除をしないところで確定申告書を提出している場合であっても、修正申告、更正等によりその控除を受けることができる。 また、確定申告書に記載されている不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額が、修正申告又は更正等により異動することとなったため青色申告特別控除額にも異動が生ずることとなった場合には、その異動後の控除額によりこれらの所得の金額を計算する。       (了)

#No. 266(掲載号)
#齋藤 和助
2018/04/26
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