《速報解説》 公取委、消費税転嫁対策特措法ガイドラインの改正案をパブコメに ~軽減税率導入及び価格設定ガイドライン公表等に伴い違反事例を追加~ Profession Journal 編集部 公正取引委員会は2月1日付けで「消費税の転嫁を阻害する行為等に関する消費税転嫁対策特別措置法、独占禁止法及び下請法上の考え方」の改正(案)を公表、パブリックコメントに付した(意見・情報受付締切日は2019年3月4日)。 今回の改正案は10月の消費税率引上げに向けて、消費税転嫁対策特別措置法上の考え方の一層の明確化を図るためとしており、特措法自体を改正するものではない。具体的には以下3点による見直し案が織り込まれている。 1点目は既報のとおり、昨年11月に政府から公表された「消費税率の引上げに伴う価格設定について(ガイドライン)」を受けたもの。この価格設定ガイドラインでは、「消費税還元セール」など消費税と直接関連した形での宣伝・広告は認められないものの、「10月1日以降〇%値下げ」や「10月1日以降〇%ポイント付与」など、事業者の価格設定のタイミングや値引きセールなどの宣伝・広告自体を規制するものではないことを明らかにしている。 今回の改正案では、このような「10月1日以降〇%値下げ」や「10月1日以降〇%ポイント付与」等を表示したセールの実施に当たり、自社の利益を確保するため、取引先にその原資を負担させる行為(値引きや協賛金の提供、セール実施における従業員の派遣要請等)は消費税転嫁対策特措法上の違反行為に当たるとした。 2点目は軽減税率の導入に伴う考え方の明確化によるもので、標準税率が適用される商品の対価を、平成31年10月1日以後、軽減税率が適用された場合の対価まで減額する場合や平成31年10月1日前の対価に据え置く場合、標準税率が適用される商品を納入する取引先に対して、自己の供給する商品が軽減税率の対象品目であることを理由として、消費税率引上げ前の対価に消費税率引上げ分を上乗せした額よりも低い対価を定める場合を違反行為としている。 3点目はこれまで公取委が行ってきた勧告・指導の蓄積から、事業者が問題ないと認識しやすい違反行為として例示されたもので、消費税率引上げ前に税込価格で対価を定めている場合(いわゆる内税取引の場合)に、 ① そのことを理由に、消費税率引上げ後も引上げ前の対価を据え置く行為 ② 取引先から対価引上げの要請や価格交渉の申出がないことを理由として、消費税率引上げ後も引上げ前の対価を据え置く行為 が追加されている。 消費税率の引上げに伴う対応としては、与党大綱においても価格設定の柔軟化を図りつつ効果的な転嫁対策を強力に進めるとしており、公取委も2月に入り「消費税転嫁対策特設ページ」を開設するなど周知を強化している。調査対象となりうる大規模小売事業者等は上記取扱いを踏まえた取引先との折衝等、細やかな対応が求められよう。 (了)
2019年2月7日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.305を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!- - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
monthly TAX views -No.73- 「今年の税制議論を占う」 東京財団政策研究所研究主幹 中央大学法科大学院特任教授 森信 茂樹 昨年の税制改正議論は極めて低調だった。消費増税を控え、それへの対応にエネルギーが注がれたということであろう。元号の変わる今年こそは、わが国経済社会の課題に挑戦する抜本的な税制改革議論の始まりにしたいものである。 そこで、今年、税制の議論となる事項を平成31年度与党税制改正大綱(党大綱)及び政府税制調査会(政府税調)の動向の双方から占ってみたい。 * * * まず個人所得課税の見直しについてである。党大綱は見直しの課題として、①経済社会構造への対応や所得再分配機能の回復の見地からの所得控除の見直しと、②老後の生活等に備える資産形成を支援する公平な制度のあり方を挙げている。 ①は働き方改革を踏まえた税制改正で、給与所得控除の縮減・基礎控除への付け替えという平成30年度改正で行われた方向をさらに進めていこうというものである。 ②は、「人生100年時代」を見据えて、多様なライフコースにおける資産形成を税制で支援するもので、NISAや金融所得税制の見直しが議論となる。 昨年政府税調には、iDeCoなどの私的年金制度、NISAなどの非課税投資制度を一覧にした資料が提出されており、税制支援の在り方をEET型とTEE型の2つに集約・充実させていく方向で議論が進んでいくのであろうか。 金融所得税制については党大綱において「所得階層別の所得税負担率の状況も踏まえ、税負担の垂直的な公平性等を確保する観点から・・・市場への影響も踏まえつつ、総合的に検討する」と記述されており、株式相場をにらみながらの議論となるのだろうか。 * * * 注目されるのは、相続税・贈与税のあり方である。党大綱には、「資産移転の時期の選択に中立的な相続税・贈与税に向けた検討」として、「資産移転の時期の選択に中立的な制度を構築する方向で検討を進める」としている。 現在、子育て、教育、住宅の3分野で租税特別措置として導入されている贈与税の非課税措置が、家族内の非課税での資産承継を対象としていることから、「格差の固定化」につながりかねず、また「老老相続」が進む中、資産移転の時期の選択に中立的な相続税・贈与税、つまり早い段階での資産承継に対する税のあり方について検討していきたいというものであろう。 この点については昨年10月の政府税制調査会の資料で、「シャウプ勧告に基づく制度」として、生涯にわたる累積贈与額と相続財産の額に対して、相続税を一体的に課税する「累積課税制度」が紹介されており、今後の大きな議論が予想される。 * * * わが国の経済社会はめまぐるしく変化をしている。その変化に翻弄されることのないような税・社会保障の議論が望まれる。 (了)
〔平成31年3月期〕 決算・申告にあたっての税務上の留意点 【第1回】 「所得拡大促進税制の見直し(改組)」 公認会計士・税理士 新名 貴則 平成30年度税制改正における改正事項を中心として、平成31年3月期の法人税申告においては、いくつか注意が必要なポイントがある。その中の主なものの概要を、4回に分けて解説する。 【第1回】は、大企業及び中小企業者等それぞれの「所得拡大促進税制の見直し(改組)」について、平成31年3月期決算において留意すべき点を解説する。 1 所得拡大促進税制の見直し(大企業) 所得拡大促進税制とは、青色申告書を提出している法人が給与等支給額を一定以上増加させた場合に、その増加額の一定割合について税額控除が認められる制度である。ただし、当期の法人税額に一定の割合を乗じた金額が、控除限度額となる。 平成30年度税制改正において、この所得拡大促進税制の見直し(改組)が行われた。対象を中小企業者等とそれ以外(大企業)に区分し、それぞれ見直しを行っている。大企業に対しては設備投資の要件を追加し、「賃上げ・投資促進税制」(中小企業者等も選択適用可能)として改組しているので、まずはこちらを解説する。 ① 要件の見直し 次のように要件の見直しが行われている。 給与等支給額 給与等支給額が、基準事業年度と比較して一定率以上増加していなければならないとする要件は廃止。 継続雇用者に対する給与等支給額が、前事業年度と比較して3%以上増加していることが必要。 設備投資額 新たに設備投資額の要件を設定。当事業年度の国内設備投資額が、減価償却費総額の90%以上であることが必要。 ② 控除税額の見直し 次のように控除税額の見直しが行われている。 控除率 給与等支給額の増加額(前事業年度との比較)に15%を乗じた金額を、法人税額から控除。 控除限度額 当事業年度の法人税額の20%(改正前10%)に引上げ。 この改正は平成30年4月1日以後に開始する事業年度から適用されるため、平成31年3月期決算申告には適用されることになる。 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 (※1) 3月決算法人の場合は平成25年3月期が該当する。 (※2) 継続雇用者の範囲が改正され、「当事業年度と前事業年度のすべての月の給与等の支給を受けた国内雇用者」とされた。 (※3) 教育訓練費の額 ≧ 比較教育訓練費(前期及び前々期の教育訓練費の年平均額)× 120% 2 所得拡大促進税制の見直し(中小企業者等) 平成30年度税制改正における所得拡大促進税制の見直しの中でも、中小企業者等を対象とした見直しについて解説する。 なお、中小企業者等であっても、「1 所得拡大促進税制の見直し(大企業)」で解説した「賃上げ・投資促進税制」の方を選択して適用することも可能である。 ① 要件の見直し 次のように要件の見直しが行われている。 給与等支給額 給与等支給額が、基準事業年度と比較して一定率以上増加していなければならないとする要件は廃止。 継続雇用者に対する給与等支給額が、前事業年度と比較して1.5%以上増加していることが必要。 設備投資額 大企業とは異なり、設備投資に関する要件はなし。 ② 控除税額の見直し 次のように控除税額の見直しが行われている。 控除率 給与等支給額の増加額(前事業年度との比較)に15%を乗じた金額を、法人税額から控除。 控除限度額 当事業年度の法人税額の20%から変更なし。 この改正は平成30年4月1日以後に開始する事業年度から適用されるため、平成31年3月期決算申告には適用されることになる。 ※画像をクリックすると別ページで拡大表示されます。 (※1) 3月決算法人の場合は平成25年3月期が該当する。 (※2) 継続雇用者の範囲が改正され、「当事業年度と前事業年度のすべての月の給与等の支給を受けた国内雇用者」とされた。 (※3) 上乗せ要件を満たす場合のみ。 (了)
法人税の損金経理要件をめぐる事例解説 【事例2】 「役員に対する土地建物の現物支給」 国際医療福祉大学大学院准教授 税理士 安部 和彦 【Q】 わが社はある地方都市において建設業を営む株式会社(3月決算)です。わが社は創業者であるB前会長が先日退任した際に、役員退職慰労金規定に基づき、役員退職慰労金を支給しましたが、その全額につき現金を用意することができなかったため、その一部を土地及び建物(B前会長の自宅)で現物支給することとなりました。その際わが社は、土地及び建物は帳簿価額(合計3,000万円)で評価し、その金額と現金支給額(7,000万円)の合計額(1億円)を役員給与として損金経理しました。 ところが、この度受けた税務調査において、課税庁は、他の課税所得が増額となる指摘事項とともに、役員退職慰労金のうち土地及び建物はその時価相当額(合計1億5,000万円)で評価すべきことを指摘しましたが、そうなると時価と簿価との差額部分1億2,000万円相当額については追加で損金算入すべきこととなり、結果として調査による増差所得は大幅に減少することとなります。しかし課税庁は、当該差額部分については損金経理が行われていないとして、損金算入はできないと主張しています。 仮に、現物支給した土地建物部分については時価相当額で評価すべきという課税庁の指摘が正しいとしても、現金ではなく土地建物という現物そのものを全部、役員退職慰労金として支給したことには変わりがないのであり、それを損金経理したのであるから、その意思表示を尊重し、いわば時価相当額を損金経理したものとみなして処理するのが相当であるため、本件については全額の損金算入が認められるべきと考えます。わが社の場合、課税庁の指摘にどのように対処すべきでしょうか、教えてください。 〇役員退職慰労金と現物支給 【A】 法人が役員退職慰労金として現物支給した土地及び建物については、時価評価により損金に算入すべき金額を決定すべきとなりますが、損金経理した金額が時価より低い帳簿価額に過ぎない場合であっても、現行法人税法においては役員退職給与につき損金経理要件は撤廃されたことから、更正の請求により、土地建物の時価と帳簿価額との差額は「不相当に高額」でない限り損金に算入されるものと考えられます。 ■ ■ ■ 解 説 ■ ■ ■ (1) 役員退職慰労金と損金算入 法人税法上、役員退職慰労金は役員給与(役員退職給与)に該当するものとされている。平成18年度の税制改正前は、役員退職給与の額のうち、損金経理しなかった金額及び損金経理した金額のうち不相当に高額な部分の金額は、その法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入されなかったところである(旧法法36)。 しかし、平成18年度の税制改正で、役員退職給与の課税のあり方が見直され、役員の職務執行の対価としての性格を有する点で役員給与と同じであることや、会社法において利益処分による支給ができないこととされたこと等を踏まえ、従来の損金経理要件が廃止された。この点は平成18年度改正前の法人税法の規定につき、後述(2)の東京山手青果事件控訴審(東京高裁平成8年3月26日判決・税資215号1114頁)判決で、「法人税法は、法人の役員に対する退職給与について、それが報酬の後払い的性格のほかに功労報償的なもの、つまり賞与的性格をも併有する点に鑑み、損金経理により報酬の後払いであることを要件に退職金の損金控除性を認めている」と判示されている。改正前の役員退職給与は利益処分である賞与(損金不算入)としての性格をも有していたことから、損金算入を認める要件として、損金経理要件が課されていたというのである。 一方で、役員退職給与のうち、不相当に高額な部分の金額は損金不算入であるという「不相当に高額」要件は、改正後も引き続き存続している(法法34②)。ここでいう「不相当に高額」な部分の金額とは、政令で以下の通り定められている(法令70二)。 すなわち、平成18年度税制改正以降における法人税法上の役員退職給与の取扱いは、以下の図の通りである。 〇役員退職給与の法人税法上の取扱い なお、平成29年度の税制改正で、退職給与で利益その他の指標(功績倍率法によるものを除く)を基礎として算定されるもののうち、業績連動給与(旧利益連動給与)の損金算入要件(法法34①三)を満たさないものは、その全額が損金不算入とされた(法法34①)。これは、平成18年度の改正後、役員退職給与は原則全額損金算入とされたものの、近年、役員退職給与についても業績に連動した指標を基礎として支給されるものが登場し、退職を基因として支給するか否かで損金算入要件が大きく異なるのは制度として不整合といえるため、業績連動給与の損金算入要件を満たさないものは損金不算入とされたものである(※1)。 (※1) 財務省『平成29年度税制改正の解説』307頁。 (2) 現物資産による役員退職金支給と損金経理 上記(1)で見た通り、現行の法人税法においては、役員退職給与には損金経理要件はなく、「不相当に高額」な部分を除き全額損金算入される。 この点につき、平成18年度の税制改正前の法人税法に係る事案で、現物資産による役員退職金の支給と損金経理との関係が争われたものがある(東京山手青果事件)。当該事案においては、原告である法人が、その前代表者に対して退職慰労金の一部として土地建物を現物支給し、当該土地建物を帳簿価額(土地の簿価:2,500万円、建物の簿価:159万6,659円)で損金経理していたが、その後の税務調査において課税庁は、土地の評価額は簿価ではなく時価(1億6,053万4,360円)を用いるべきであるにもかかわらず、時価と簿価との差額部分は法人が損金経理を行っていなかったとして損金算入を否認したことから、法人が更正処分の取消しを求めて提訴した。 一審(東京地裁平成6年11月29日判決・税資206号449頁)において裁判所は、 と判示して、原告の主張を斥けた。当該判断については、もともと法人税法が退職金について損金経理を要求するのは、簿外資産からの支出を認めないという趣旨であり、本件のような含み益があるものの支給についての経理方法まで規制するものではない、という批判がある(※2)。 (※2) 武田昌輔「プロからの税務相談」『T&A master』115号(2005年5月23日号)参照。 また、当該事案の控訴審(東京高裁平成8年3月26日判決・税資215号1114頁)において裁判所は、 と判示して、法人の主張を再度斥けている。 なお、上記高裁の判断は最高裁においても維持されている(最高裁平成10年6月12日判決・集民188号619頁・税資232号600頁)。 (3) 平成18年度税制改正後の現物支給役員退職給与と損金経理 平成18年度税制改正後の法人税法においては、役員退職給与について損金経理要件は撤廃されている。したがって、上記(2)の裁判例の判示は本件の射程外となる。それでは、現行法人税法の下では、本件はどのように解することとなるのであろうか。 法人が役員退職慰労金として現物支給した土地及び建物については、時価評価により損金に算入すべき金額を決定すべきとなるが、当初申告において損金経理した金額が時価より低い帳簿価額に過ぎない場合であっても、現行法人税法においては役員退職給与につき損金経理要件は撤廃されたことから、更正の請求により、土地建物の時価と帳簿価額との差額は「不相当に高額」でない限り損金に算入されるものと考えられる。 現物財産の評価額は客観的に算定可能であり、内部取引とはいえず恣意性の排除(※3)も考慮する必要がないことから、損金経理の問題とはならないのは当然といえるだろう。そう考えると、改正前の規定において損金経理を要求していた理論的根拠(役員退職給与の賞与的要素?)は、必ずしも適切ではないといえる。法人税法における損金経理要件の理論的根拠については、今後も問われていくことになるであろう。 (※3) 酒井克彦『プログレッシブ税務会計論Ⅱ』(中央経済社・2016年)135頁参照。 (了)
租税争訟レポート 【第41回】 「太陽光発電設備の減価償却をめぐる問題 (国税不服審判所平成30年3月27日裁決、同6月19日裁決)」 税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 国の再生可能エネルギー転換政策への後押しもあって、一時期、太陽光発電事業への参入がブームとなっていたこともあり、近時の公表裁決事例でも、太陽光発電設備に関係した裁決が多く取り上げられている。 太陽光発電設備を設置してから、電力会社への供給を開始するためには、発電設備を商用電力系統に接続することを意味する「系統連系」が必要であり、一般的には、系統連系が実施された日である売電が可能となった日をもって、「事業の用に供した日」と判断されている。 本稿では、こうした太陽光発電設備の減価償却をめぐる問題について、2つの公表裁決事例を参考に、検討を行いたい。 〈事案その1〉 【事案の概要】 本件は、審査請求人が、太陽光発電設備等を取得した事業年度において当該設備等に係る償却費の額を損金の額に算入して法人税等の確定申告をしたところ、原処分庁が、当該設備等は当該事業年度において事業の用に供していないから当該設備等に係る償却費の額を損金の額に算入することはできないなどとして、法人税等の更正処分等をしたのに対し、請求人が、原処分の全部の取消しを求めた事案である。 争点のうち、国税不服審判所は、[争点2]に掲げる太陽光発電設備等を囲むフェンス等については、売電事業が行われる前であっても、事業の用に供していたとして、フェンス等に係る減価償却費の損金算入を認めたため、本稿では、この[争点2]に絞って、審判所の判断の過程を検討したい。 【フェンス等は事業年度内に事業の用に供したと認められるか否か[争点2]】 国税不服審判所の事実認定に基づいて、請求人による太陽光発電事業への参入から売電開始までを時系列でまとめておく。 以上の事実認定から、国税不服審判所は、[争点1]においては、発電システム本体に係る系統連系のための工事が完了して系統連系が行われたのは平成28年9月28日であり、減価償却費の損金算入が争点となった事業年度の末日(平成28年3月31日)において、電気事業者へ売電していなかったのであるから、発電システム本体は、当該事業年度内にその属性に従ってその本来の目的のために使用を開始したとは認められないことから、請求人の主張を斥ける判断を行っている。 それでは、発電システムを囲うフェンス等について、事業の用に供した日はいつであると認定したのか、当事者の主張及び審判所の判断を見ておきたい。 1 原処分庁の主張 フェンス等は、平成28年3月28日までに工事を完了し、請求人に引き渡されていると認められるものの、①請求人は、フェンス等を含む発電所が生産性の向上に資する設備であることの確認を受けていること、②フェンス等は、単独では生産活動等の用に直接供される減価償却資産とは認められないことから、請求人は、フェンス等を生産活動等の用に直接供される本件発電システム本体と一体として取得し、一体として事業の用に供したものとみるのが相当であることから、フェンス等は、発電システム本体の事業供用日である平成28年9月28日に事業の用に供したものであるから、平成28年3月31日に終了する事業年度内に事業の用に供したとは認められない。 2 審査請求人の主張 フェンス等は、隣地との境界を画するとともに、発電所に対する不法侵入又は動物などによる侵害を防いで発電設備の財産的価値を維持するために設置されたものであるから、引渡日から、その属性に従って本来の目的のために使用を開始したと認められるため、フェンス等は平成28年3月31日に終了する事業年度内に事業の用に供したものである。 3 国税不服審判所の判断 国税不服審判所は、フェンス等の構造について、最上部に有刺鉄線を有する高さ約2メートルの金属製の構築物であり、本件発電設備が設置されている敷地部分を囲む形で、本件発電所とその隣地及び道路との境界に沿って敷設されており、発電所は、田畑、雑木林及び道路に囲まれて周辺に民家等はなく、本件フェンス等以外に本件発電所内への立入りを遮蔽する構築物はないと事実認定を行った。 そのうえで、平成29年3月に資源エネルギー庁が策定した「太陽光発電に関する事業計画策定ガイドライン」を引用する形で、発電設備によって第三者が感電等により被害を受けるおそれがあることなどから、危険防止のために発電設備の周辺に柵や塀などを設置し、容易に第三者が発電設備に近づくことができないよう適切な措置を講ずる必要があること、太陽光発電所においてケーブルやその他の発電設備の一部が盗難に遭うなどの被害が報告されていることなどを挙げた。 そして、生産等設備が複数の減価償却資産によって構成され、それらの資産がそれぞれ特定生産性向上設備等に該当する場合においても、それぞれの減価償却資産ごとに、事業の用に供した日を判断すべきであるという一般論を述べたうえで、本件フェンス等は、発電システム本体から物理的に独立した構築物であり、発電、変電及び送電といった機能はなく、発電システム本体と一体となって売電のための機能を果たすものでもないこと、外部からの侵入等を防止することにより発電システム本体を保護することをその属性に従ってその目的のために設置され、使用されたことが認められることから、発電システム本体とフェンス等は、物理的にも機能的にも一体とはいえないため、別個の減価償却資産であると認定して、フェンス等は、引渡日から、その属性に従ってその本来の目的のために使用を開始されたと認めるのが相当であると判断し、原処分庁の主張を斥けた。 * * * 〈事案その2〉 【事案の概要】 審査請求人は、太陽光発電設備を取得した事業年度において、同設備に係る償却費の額を損金の額に算入して法人税の確定申告をした後、同設備を当該事業年度内に事業の用に供していなかったことから当該償却費の額を償却超過額として修正申告するとともに、翌事業年度に電力の供給を開始して同設備を事業の用に供したことから、当該翌事業年度の法人税について、同設備に係る償却費の額を損金の額に算入すべきであるとして更正の請求を行った。 これに対して、原処分庁が、同設備を事業の用に供した当該翌事業年度において償却費の損金経理額はないとして当該更正の請求に対する更正をすべき理由がない旨の通知処分及び欠損金の損金算入額が過大であるなどとして各更正処分等を行った。本件は、請求人が、当該翌事業年度において、前期から繰り越した償却超過額の認容額として損金の額に算入すべきであるとして原処分の一部の取消しを求めた事案である。 【請求人の主張する償却額は平成27年3月期の損金の額に算入できるか否か】 本事案でも、はじめに、国税不服審判所による事実認定に基づいて、請求人による、太陽光発電事業への参入から電力会社への売電開始までを、時系列に沿ってまとめておきたい。 1 審査請求人主張 審査請求人は、まず、本件発電設備は、平成27年3月期に事業の用に供したことにより、売電収入が発生しているため、請求人が主張する減価償却額(以下「請求人主張償却額」という)を損金の額に算入しないのは、費用収益対応の原則を法人税法が否定することになるから、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に反すると主張した。 また、平成26年3月期償却費計上額は、請求人が国の再生エネルギー導入拡大に資する趣旨をくみ取り、多額の設備投資を行ったことにより生じたものであることからすれば、平成26年3月期に取得した減価償却資産から生じた償却超過額と認められるべきであるから、請求人主張償却額は、平成27年3月期以後において、前期から繰り越した償却超過額の認容額として損金の額に算入することができるとして、請求人が主張する減価償却額は、平成27年3月期の損金の額に算入できると主張した。 2 原処分庁の主張 これに対して、原処分庁は、本件発電設備は、電力会社に対して電力を供給し、事業の用に供した平成27年3月期において、減価償却資産に該当することになるのであり、平成26年3月期においては減価償却資産には該当しないことから、平成26年3月期償却費計上額は、減価償却資産に該当しない資産について償却費を計上したことになり、平成26年3月期における償却超過額が存在しないことになるから、平成27年3月期において、請求人主張償却額を損金の額に算入することはできないと主張した。 また、特別償却費についても、本件発電設備を事業の用に供した日の属する事業年度に限って適用されることから、請求人は、本件発電設備を事業の用に供した平成27年3月期の確定申告時において、特別償却の適用を受けていないため、平成27年3月期の更正の請求において、請求人主張償却額を所得金額から減算することは認められないとした。 3 国税不服審判所の判断 こうした当事者の主張を受けて、国税不服審判所は、まず、発電設備について、平成26年10月3日以降に、電力会社に対する電力の供給が開始されたことから、本件発電設備を事業の用に供した日は同日以降であると認められ、平成26年3月期終了の時においては事業の用に供されていないから、本件発電設備は、平成26年3月期終了の時において有する法人税法上の減価償却資産に該当しないと認定した。 そうすると、平成26年3月期償却費計上額については、平成26年3月期において償却費として損金経理していたとしても、減価償却資産に該当しない資産に係るものであるから、減価償却資産に係る損金経理額に該当しない。また、平成26年3月期償却費計上額は、平成26年3月期において本件発電設備を事業の用に供していなかったことから、資産として計上すべきところを償却費として損金の額に算入していたため損金不算入額として平成26年3月期の所得金額に加算されたにすぎず、平成26年3月期における法人税法上の減価償却資産に係る償却超過額にも当たらない。 以上の事実認定から、国税不服審判所は、審査請求人の平成26年3月期償却費計上額は、平成27年3月期において、償却超過額には該当せず、平成27年3月期の損金経理額に含まれないことになるため、本件発電設備に係る損金経理額はないことから、請求人主張償却額は、平成27年3月期の損金の額に算入することはできないと判断して、審査請求人の主張を斥けた。 【解説】 どちらの事案も、請負工事の完了予定日が決算期末である3月31日までに設定されているように、こと事業開始初年度に関しては、太陽光発電事業による営利目的というよりは、減価償却費を損金の額に算入することによる節税効果を狙っていることは明らかである。ところが、電力会社との間の系統連系に係る工事が翌事業年度にずれ込み、太陽光発電設備を購入した事業年度では、減価償却費を損金の額に算入することが認められないこととなった。 電力会社への売電事業が始まる前の事業年度において太陽光発電設備に関する減価償却費の計上が認められないことは言うまでもないことである。しかし、その一方で、発電設備に付属する資産の属性によっては、売電事業開始前であっても事業の用に供していることが認められる場合もあること(平成30年6月19日裁決)や事業の用に供していない資産に係る減価償却費の計上は、償却超過額ではなく、資産として計上すべきところを償却費として損金の額に算入していたため損金不算入額となること(平成30年3月27日裁決)など、国税不服審判所の示した判断は、太陽光発電設備を設置してから売電事業を開始するまでの間に、事業年度終了の日が到来する場合の減価償却費の計算について、示唆に富んだものであると評価できよう。 (了)
〈Q&A〉 印紙税の取扱いをめぐる事例解説 【第66回】 「請負に関する契約書⑥(住宅リフォーム工事申込書)」 税理士・行政書士・AFP 山端 美德 当社は住宅リフォーム工事業者です。 住宅リフォーム工事の申込みがあった場合、申込者から申込書を記入してもらいます。申込書は2枚複写で1枚目は当社用、2枚目は申込者控え用となっており、申込者控え用については契約担当者が署名・押印のうえ申込者に交付していますが、課税文書に該当しますか。 (1枚目:会社用) (2枚目:申込者控え) 1枚目の会社用は不課税文書に該当する。2枚目の申込者控えについては記載金額300万円の第2号文書(請負に関する契約書)に該当し、印紙税額は軽減税率適用の500円となる。 [検討1] 申込書は印紙税法上の契約書に該当するか 通常、契約の申込みの事実を証明する目的で作成される単なる申込書については契約書には該当しないが「申込書」等と表示されたものであっても、相手方の申込みに対する承諾の事実を証明する目的で作成されるものは、契約書に該当する。 事例の住宅リフォーム工事申込書の会社用については、住宅リフォーム約定事項第3条において、別途リフォーム工事請負契約書を作成することとされており、申込みにより自動的に契約が成立することとなっていないため、契約書には該当しない。 また、申込者控えについては会社用と同様の状態で渡すこととすれば、会社用と同様に、契約書には該当しない。しかし、事例の場合は、申込者からの申込みに対して、リフォーム会社の担当者が押印して交付しているものであり、相手方の申込みに対する承諾の事実を証明するものとなり、契約書に該当する。 [検討2] 申込金の受領について第17号文書(金銭の受取書)に該当しないか 契約書に記載された金額であっても、契約金額とは認められない内入金額などは記載金額に該当しないが、内入金額であっても、内入金額の受領事実が記載されている場合には、第17号の1文書(売上代金に係る金銭の受取書)に該当することとされている(基通第28条)。 事例の場合は、申込書中に申込着手金5万円の領収済印を押しており、受領事実が記載されていることから、第17号の1文書に該当する。 [検討3] 第2号文書と第17号文書に該当した場合の所属は 第17号文書に該当する申込着手金5万円が第2号文書の記載金額である工事予定額300万円より少ないので、通則3のイの規定により、第2号文書に該当する。 ▷まとめ 事例の申込者控えについては、申込者からの申込みに対して、受注者であるリフォーム会社の担当者が内容を確認のうえ、承諾印を押印し申込者へ交付するものであり、単なる申込書控えではなく、契約の事実を証明する目的で作成されるものと認められることから、印紙税法上の契約書に該当し、第2号文書と第17号文書に該当するが、通則3のイにより第2号文書に該当する。 (了)
「収益認識に関する会計基準」及び 「収益認識に関する会計基準の適用指針」の徹底解説 【第14回】 (最終回) 仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋 26 まとめ ここまで、収益認識基準等及び税務について解説した。収益認識基準等は各社で関係する論点が異なり、自社ではどこまで検討すればよいかということがわかりにくいと考えられる。そして、最初からここの論点は自社では関係ないとある論点については、全く検討しなくてよいと考えている読者もいるのではないだろうか。 しかし、「収益認識が変わる」ということは、経理のみならず、内部統制、システム、人事評価等の変更も検討しなければならず、後になってから、やはりこの論点の検討が必要だったと思っても、その時点においてすでに変更が困難となるケースもあると考えられる。 そのため、収益認識基準等を検討する最初の段階においては、網羅的に論点をつぶすことが欠かせないと考えられる。そこで、最終回となる本稿では、できるだけ網羅的に検討できるように「チェック・リスト」を用意した。 (※) なお、本チェック・リストは、収益認識基準等の論点を全て網羅しているわけではありません。 収益認識基準等を検討する際のチェック・リスト ◆PDF版は[こちら] (連載了)
〈桃太郎で理解する〉 収益認識に関する会計基準 【第6回】 「イヌは一定期間にわたり売上計上していくのか~三要件の検討」 公認会計士 石王丸 周夫 1 一定期間にわたる売上計上 桃太郎が、イヌ・サル・キジのサービスを一定期間にわたり享受していくのであれば、イヌ・サル・キジたちは、一定期間にわたり売上を計上していくことになります。これが、前回の最後に説明した履行義務充足の2パターンのうち、[パターン①]の方です。 ここで、「一定期間にわたり享受する」というのは、3つの要件のいずれかに当てはまる場合を指しています。以下、イヌを例として、順に見ていきましょう。 2 第1の要件 第1の要件は、以下のとおりです。 売り手が買い手との契約事項を履行するにつれて、買い手が便益を享受すること イヌは桃太郎に対し、渡航、戦闘、輸送の各サービスを提供しますが、それらのサービスを順に提供していくことにより、桃太郎の立場はどんどん強化されていきます。イヌのサービスは、この第1の要件に当てはまりそうです。 ただし、この要件に当てはまる典型的な例は、清掃サービスのように、同じサービスが反復的に提供されるケースです。イヌの提供するサービスは、同じサービスの反復ではありませんので、この要件に当てはまるかどうかは、はっきりしません。 したがって、買い手である桃太郎が、一定期間にわたって「便益を享受しているかどうか」という重要なポイントを、後で詳しく考えていきましょう。 3 第2の要件 第2の要件は、以下のとおりです。 売り手が買い手との契約事項を履行することにより、資産が生じ(あるいは資産の価値が増加し)、それにつれて、買い手が当該資産を支配すること この要件は、買い手が自己所有の土地に建物を立ててもらうような契約を念頭に置いたものです。桃太郎とイヌの契約とは少し違いますね。 4 第3の要件 第3の要件は、以下のとおりです。 次の要件のいずれも満たすこと ① 売り手が買い手との契約事項を履行することにより、転用できない資産が生じること ② 売り手が、履行完了した部分について、対価を受け取る強力な権利を有していること この要件は、例えばソフトウェアの制作などで、作業の完了した部分について、対価を受け取ることを契約で確約しているようなケースを想定しています。イヌはそこまで強力な権利を持っていませんので、これも該当しません。 5 イヌは途中で別のイヌに交代可能か ここまでの話を整理してみましょう。 まず、3つの要件のうちいずれかに該当する場合は、一定期間にわたり売上計上するということでした。そして、イヌのサービスについては、もし該当するとすれば、第1の要件が最も可能性が高いということでした。 そこで第1の要件ですが、これに当てはまると判断するにあたっては、重要なポイントがありました。それは、イヌがサービス提供する際に、「桃太郎が一定期間にわたって便益を享受したかどうか」を見極めるということです。 どういうことだか、今ひとつピンとこないと思います。 具体的に説明しましょう。 イヌが途中で桃太郎のもとを離れることになって、別の者に交代した場合でも、そこまでにイヌが提供したサービスについては、やり直す必要がないかどうかということです。やり直す必要がないのであれば、そこまでにイヌが提供したサービスについて、桃太郎は便益を享受したと判断します。 イヌの履行義務について、上記の判定をしてみます。 イヌは、渡航、戦闘、輸送のサービスを桃太郎に提供します。これらのサービスに含まれる履行義務は、1つの履行義務であると判定されましたが、この一連のサービスの途中で、イヌが帰ってしまったとします。その場合、どんなことになるでしょうか。 例えば、鬼ヶ島への渡航(「漕ぎ手」という履行義務)が完了し、いよいよ鬼との戦いが始まるという場面で、イヌが「帰る」と言い出したとします。 桃太郎たちが鬼ヶ島につきました。すると、船をこいできたイヌが、鬼の城門に向かわずに、こう言いました。 「桃太郎さん、大事な用事があることを急に思い出したので、私はここで帰らなければなりません。このあとの鬼との戦いは、どうか別のイヌに頼んでください。」 「それは困るよ。ここで帰るのなら、きびだんごは返してくれ。」 「と言われても、もう食べてしまいましたが・・・」 「ん~、仕方がないな・・・とにかくいったん出直そう。」 桃太郎はそう言って船に乗り、出航してきた海岸まで戻ることにしました。 以上のとおり、イヌが帰ると言い出した場合、イヌがこのあと提供する予定だった戦闘・輸送サービスについては、別のイヌが提供することになりますが、鬼ヶ島では別のイヌを探すことはできないため、いったん引き返します。その時点で「渡航」はやり直しとなるわけですが、もっと本質的な問題があります。 このあとの戦闘では、イヌ・サル・キジの連係プレーが期待されるところであり、その打合せは鬼ヶ島到着前に済んでいたはずです。また、鬼との戦いにはチーム内の信頼関係も必要で、それは鬼ヶ島までの道中で構築されたことでしょう。したがって、戦闘段階から別のイヌに交代することは不可能であり、その意味で鬼退治は大幅にやり直しを迫られるのです。 以上から、桃太郎はここまでの便益を享受できなかったことになります。 このように考えると、イヌの提供するサービスは、第1の要件も満たさないことになります。つまり、一定期間にわたり売上計上するための要件のどれにも当てはまらず、一定期間に売上計上する処理の適用はないということになります。 ▷今回のまとめ 一定期間にわたり売上計上するには、3つの要件のいずれか1つを満たす必要があります。 (了)
企業結合会計を学ぶ 【第10回】 「取得原価の配分方法⑤」 -取得企業の税効果会計- 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 前回に引き続き、取得原価の配分方法に関して解説する。 今回は、取得企業の税効果会計について解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 取得企業の税効果会計 1 基本的な会計処理 組織再編の形式が、事業を直接取得することとなる合併、会社分割等の場合には、取得企業は、企業結合日において、被取得企業又は取得した事業から生じる一時差異等に係る税金の額を、将来の事業年度において回収又は支払が見込まれない額を除いて、繰延税金資産又は繰延税金負債として計上する(結合分離適用指針71項)。 ここでいう一時差異等とは、取得原価の配分額(繰延税金資産及び繰延税金負債を除く)と課税所得計算上の資産及び負債の金額との差額並びに取得企業に引き継がれる被取得企業の税務上の繰越欠損金等である。 次のことに注意する(結合分離適用指針71項、72項、378-3項)。 2 繰延税金資産及び繰延税金負債への取得原価の配分額の確定 企業結合日に認識された繰延税金資産及び繰延税金負債への取得原価の配分額の見直しには、次の場合がある(結合分離適用指針73項、379項)。 ①及び②のいずれの場合も、結合分離適用指針70項(暫定的な会計処理の確定処理)に従って会計処理することになる。 3 将来年度の課税所得の見積りの変更等による繰延税金資産の回収見込額の見直し 結合分離適用指針73項(2)(上記2②)については、その見直し内容が明らかに企業結合年度における繰延税金資産の回収見込額の見直しと考えられる場合や、企業結合日に存在していた事実及び状況に関して、その後追加的に入手した情報等に基づいて繰延税金資産の回収見込額の見直しを行う場合に限られている(結合分離適用指針73項ただし書き)。 企業結合日後に追加的に入手した情報等に基づく繰延税金資産の回収見込額の見直しが、企業結合における取得原価の再配分の対象となるかどうかは、当該情報等が企業結合日に存在していた事実及び状況を示す内容であるかどうかに留意する(結合分離適用指針379-2項)。 次のことに注意する(結合分離適用指針379-2項)。 結合分離適用指針73項(2)(上記2②)の繰延税金資産の回収見込額の修正は、企業結合日と取得企業の事業年度との関係から次のように処理する(結合分離適用指針74項)。 4 繰延税金資産の回収可能性 繰延税金資産の回収可能性は、取得企業の収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得等により判断し(「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第26号)6項)、企業結合による影響は、企業結合年度から反映させる(結合分離適用指針75項)。 将来年度の課税所得の見積額による繰延税金資産の回収可能性を過去の業績等に基づいて判断する場合には、企業結合年度以後、取得した企業又は事業に係る過年度の業績等を取得企業の既存事業に係るものと合算した上で課税所得を見積る(結合分離適用指針75項。[設例32]取得とされた吸収合併の取得企業(吸収合併存続会社)の税効果会計)。 (了)