経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第30回:2017年3月改訂】 企業結合会計② 「会社分割の会計」 仰星監査法人 公認会計士 許 仁九 〈事例による解説〉 〈会計処理及びその解説〉 1 A社の個別財務諸表上の会計処理 A社にとってB社は新たに子会社となり、移転した甲事業に対する投資はそのまま継続しているものと考えられるため、移転損益は認識されず、B社株式の取得原価は移転された事業に係る資産及び負債の移転直前の適正な帳簿価額による差額から評価・換算差額等及び新株予約権を控除した額(以下、「移転事業に係る株主資本相当額」という)に基づいて算定します(「指針」98項(1))。 ここでは、甲事業資産の帳簿価額3,000がB社株式の取得原価となります。 2 B社の個別財務諸表上の会計処理 B社は、A社の甲事業資産を適正な帳簿価額で引き継ぎ、移転事業に係る株主資本相当額を払込資本(資本金又は資本剰余金)として処理します(「指針」87項(1)①)。 3 A社の連結財務諸表上の会計処理 (1) B社丙事業に対するパーチェス法の適用(丙事業の時価評価) A社はB社の丙事業の80%を取得することとなるため、連結財務諸表上、B社丙事業にパーチェス法を適用します(「指針」98項(2)②、76項)。 (*1) 丙事業資産を時価評価し、評価差額60(丙事業資産の時価900-同簿価840)を計上します。 (*2) 取得した丙事業の取得原価は、取得の対価となる財(B社株式)の時価で算定します(@20×50株×80%=800)。丙事業の時価1,000に増加するA社持分80%を乗じた額とも一致します。 (*3) B社に投資したとみなされる額800(*2)と、B社の会社分割直前の資本720(B社丙事業資産の時価900(=株主資本840+評価差額60)×A社持分比率80%)との差額80をのれんとして資産に計上し、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却します。 (*4) B社丙事業資産の時価900×非支配株主持分比率20% (2) 支配獲得後の資本連結 (*5) 事業分離による取得原価3,000-丙事業の取得に要した額800(上述(*2)) (*6) 移転した甲事業に係る非支配株主持分(甲事業の取得原価3,000×非支配株主持分比率20%) (*7) A社甲事業が移転されたとみなされる額800(=A社甲事業の時価4,000×非支配株主持分20%)と、移転した甲事業に係るA社持分の減少額600(=A社甲事業の株主資本相当額3,000×非支配株主持分比率20%)との差額を資本剰余金として処理します(「指針」98項(2)①)。なお、移転した甲事業資産に係る適正な帳簿価額3,000と、これに対応するA社支配獲得後の持分3,200(=(A社甲事業3,000+B社丙事業の時価1,000)×80%)との差額としても算定することができます。 会社分割により、甲事業はB社に移転したものの支配は継続しているため、A社連結財務諸表上、甲事業資産は帳簿価額で計上されています。一方、新たに支配を獲得した丙事業資産は時価で計上され、丙事業の取得に際してのれんが発生しています。 非支配株主持分は(甲事業資産の帳簿価額3,000+丙事業資産の時価900)×20%=780として算定されます。 (了)
家族信託による 新しい相続・資産承継対策 【第9回】 「よくある質問・留意点④」 -家族信託を設定した場合に遺留分はどのような影響を受けるか- 弁護士 荒木 俊和 - 質 問 - 私(父)には長男と次男の2人の子供がいるが、次男にはこれまで散々迷惑をかけられてきたため、私が死んだときには長男に全財産を渡したい(妻はすでに他界)。 遺言を書いた場合だと、長男に全財産が渡ったとしても、次男から遺留分減殺請求が行われる可能性があると聞いた。一方、家族信託を使った場合には、信託が終わったときの帰属権利者を定めて財産を渡すことができるということも知った。 家族信託を利用した場合、次男からの遺留分減殺請求を回避することはできるのか。 1 問題の所在 ある財産に家族信託を設定した場合で、「委託者の死亡時に信託を終了させる」という条件を定めて帰属権利者を設定しておいたとき、委託者が死亡したことを条件として帰属権利者に信託財産が帰属することとなり、ある財産を持っている者が遺言によって遺贈したことと同様の効果を持つことになる。 また、委託者が死亡したことを信託の終了原因とせず、信託を存続させる場合で、二次受益者を設定しておくことで受益権を別の者に取得させることとするとき(受益者連続型信託)にも、実質的な財産権である受益権が1人の者に帰属するという意味で、同様の問題がある。 このことから、家族信託を通じて長男に全財産を渡した場合にも、次男の遺留分を侵害したものとして、遺留分減殺請求がなされるのかが問題となる。 2 遺留分減殺請求とは まず、遺留分とは、法定相続分のうち、被相続人の遺言等によっても変えることができない相続人が受け取るべき相続財産をいう。 遺留分の割合は、直系尊属のみが相続人である場合は被相続人の財産の3分の1、それ以外の場合には被相続人の財産の2分の1(ただし、被相続人の兄弟姉妹に遺留分はない)である(民法第1028条)。 そして、遺言等によりこの遺留分が侵害された場合、侵害された相続人(遺留分権利者)は、財産を得た者(遺留分侵害者)に対して遺留分減殺請求ができる(同法第1031条)。 すなわち、設例で父が「長男に対して全財産を相続させる」との遺言を遺していた場合、次男は長男に対し遺留分減殺請求を行うことにより、父の全財産の4分の1について権利を主張することができ、これにより各財産の4分の1について次男が共有持分を持つことになる。 3 遺言による遺贈と家族信託による信託財産の承継、受益者連続型信託の違い ①遺言により遺贈を行う場合、②家族信託を設定した上で委託者の死亡時に信託を終了させ帰属権利者を指定しておく場合、③家族信託を設定した上で委託者の死亡時に二次受益者に受益権を取得させる場合の法律関係を以下に図示する。 ここで留意すべきは③の場合、二次受益者は当初受益者から受益権を承継取得するのではなく、二次受益者は当初受益者の受益権が消滅すると同時に、委託者から受益権を取得するものと構成されている。 余談だが、このような法律構成がなされるため、三次以降の受益者もそれぞれ委託者から受益権を取得するものとされ、従前の受益者から承継取得するものではないから、三次以降の受益者については遺留分減殺請求の問題は生じないものとされている。 【図①:遺言により遺贈を行う場合】 【図②:家族信託を設定した上で委託者の死亡時に信託を終了させ帰属権利者を指定しておく場合】 【図③:家族信託を設定した上で委託者の死亡時に二次受益者に受益権を取得させる場合】 (※) 受益者=受託者の状態が1年間継続すると信託が終了する(信託法第163条第2号)。 4 信託による財産承継は遺留分減殺請求の対象となるか 上記②又は③の方法を採った場合、遺留分減殺請求の問題が生じるか。すなわち、設例において、次男が長男に対して遺留分減殺請求が可能となるか。 この点について、民法及び信託法においては明確な規定がなく、判例も存在しないため、次のように「肯定説」と「否定説」が対立している状況にある。 (1) 肯定説 現在のところ遺留分減殺請求が可能とする説が多数説とされており、平成18年の新信託法制定時における法制審議会の信託法部会でも支持されていたとされている。 肯定説の論拠は以下のとおりである。 (2) 否定説 これに対して、遺留分減殺請求を否定すべきとする有力説も存在する。 この否定説の論拠は以下のとおりである。 (3) 検討 現在のところ、多数説は「肯定説」となっているものの、直接的、間接的にこの問題について規範を示したような判例又は裁判例は見当たらない。 私見では、生命保険金を取得した者に対して特別受益として持ち戻すべき判断をした判例が存在するなど実質的な公平性を担保する解釈が取られる傾向があること、脱法信託の禁止(信託法第9条)、詐害信託の取消し(同法第11条)等、信託を利用することのみによって他の法律によっては享受できない特別な利益を得させる目的で信託を設定することに規制がかけられていること等からすると、信託を設定することによって遺留分制度を完全に否定することは難しいように思われる。 いずれにしても結論を求めるには、今後の事例の蓄積を待つ必要があると考えられる。 5 設問事例についての対応 設例に戻ると、父が長男に対して確実に全財産を承継させることはできないものと考えられる。 しかし、遺留分減殺請求を受け共有となると煩雑になる財産(不動産等)がある場合には、家族信託を利用することにより、その財産の共有化を防ぐこと等を防止することができる(遺留分減殺請求を受けたとしても受益権が準共有になる)。 また、確実に長男に引き継ぎたい財産については家族信託を設定しておく一方、遺留分減殺請求を受けた場合には長男が次男に対して現金を支払うことで和解を求められるよう、一定金額の現金を残しておくといったような対応も考えられる。 いずれにしても信託と遺留分の関係が明確になっていない現状では、このような複層的、予備的な対策を施しておくことが求められると考えられる。 (了)
〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例13】 株式会社あみやき亭 「平成29年3月期第3四半期決算短信」 (2017.1.4) 事業創造大学院大学 准教授 鈴木 広樹 1 今回の適時開示 今回取り上げる適時開示は、株式会社あみやき亭(以下「あみやき亭」という)が平成29年1月4日に開示した「平成29年3月期第3四半期決算短信」である。これはすごい開示なのだが、どこがすごいかお分かりだろうか。四半期決算短信なので、業績の伸びがすごいのかと思われるかもしれないが、そうではない。 すごいのは、平成29年3月期第3四半期決算短信を平成29年1月4日に開示している点である。平成29年3月期の第3四半期は平成28年12月31日に終わる。それからわずか4日後(しかも1月4日)に開示している。四半期決算短信の多くは四半期末後30日程度で開示されるため、この4日後の開示というのは、ものすごい早さなのである(しかも午前7時30分に開示)。 2 今回だけでなく ものすごく早いのは今回だけではない。「平成29年3月期第2四半期決算短信」は平成28年10月3日(四半期末の3日後)に、「平成29年3月期第1四半期決算短信」は平成28年7月1日(四半期末の翌日)に、「平成28年3月期決算短信」は平成28年4月1日(決算期末の翌日)に開示している。もちろん3月決算の上場会社の中では最も早い開示である。 3 早ければいいのか? 決算短信と四半期決算短信は、決算情報を投資家に早期に伝えることを目的としているため、可能な限り早く開示できた方がよい。しかし、ただ早ければよいというわけではない。記載される情報が正確であることが大前提である。 有価証券報告書や四半期報告書に掲載される財務諸表と異なり、決算短信と四半期決算短信は、公認会計士による監査やレビューによる保証が必要とされるわけではない。しかし、だからと言って、正確でない情報を開示してもよいというわけではない。正確でない情報が開示されれば、投資家が誤った投資判断をしてしまうことになる。 4 早いだけでなく あみやき亭はものすごく早く決算短信と四半期決算短信を開示しているが、果たしてそこに記載された情報は正確なのだろうか。決算短信と四半期決算短信に記載された情報に誤りがあった場合、それを訂正する開示を行わなければならないのだが、同社は、決算情報を訂正するような開示を行っていないため、早くかつ正確な開示を行えているようである。 それでは、なぜ同社は、正確な決算短信と四半期決算短信をこのようにものすごく早く開示できているのだろうか。 実は同社の場合、日次決算を導入しており、原価率なども毎日計算し、日々のデータを集計しているのである(平成28年1月5日付日本経済新聞「あみやき亭8%増益」)。 5 業績予想に関する適時開示は? 決算短信と四半期決算短信の開示に対するあみやき亭の姿勢は立派なものだと思われる。しかし、そうした同社の開示を見ていて、少し疑問に思われたことがあった。それは業績予想に関する開示についてである。 少し前になるが、同社は、平成27年4月1日、「平成27年3月期決算短信」(これも決算期末の翌日に開示)と同時に「通期業績予想との差異に関するお知らせ」を開示している。【事例5】で取り上げた株式会社小僧寿しと同様に、「業績予想の修正に関するお知らせ」ではなく、同時に開示した決算短信で示された平成27年3月期の業績と、以前開示していたその予想との間の差異に関して開示しているのである。 日次決算を導入し、ものすごい早さで決算短信と四半期決算短信を開示することができている同社ならば、決算短信の開示よりも前に業績予想を修正する必要性が生じたことを認識することができていたのではないだろうか。認識することができていたのならば、その時点で「業績予想の修正に関するお知らせ」を開示すべきである。 しかし、さすがにそこまで求めるのは、酷というものだろうか。 (了)
《速報解説》 「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」が正式公表 ~移管に伴い実務対応報告第12号は廃止、会計方針の変更には該当せず~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成29年3月16日、企業会計基準委員会は、「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(企業会計基準第27号)を公表した。 これにより、平成28年11月9日から意見募集していた公開草案が確定することになる。 これは、日本公認会計士協会の「諸税金に関する会計処理及び表示に係る監査上の取扱い」(監査・保証実務委員会実務指針第63号)などについて、企業会計基準委員会に移管するためのものである。 なお、平成29年3月29日に、「企業会計基準公開草案第59号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準(案)」の主なコメントの概要とそれらに対する対応」(以下「コメント対応」という)がホームページに掲載されている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 次のものについて、基本的にその内容を踏襲した上で表現の見直しや考え方の整理等を行っており、実質的な内容の変更は意図していないとのことである。 1 範囲 次の事項に適用する。 以下のものは適用範囲に含まれていない(会計基準26項~27項)。 公開草案に寄せられたコメントを受けて(コメントNo.20)、確定した企業会計基準第27号3項が追加記載され、「実務対応報告第5号「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その1)」において、連結納税制度を適用する場合の法人税及び地方法人税に係る会計処理及び開示の具体的な取扱いが定められている場合、当該取扱いが適用される」と規定された。 2 会計処理 3 更正等による追徴及び還付 コメント対応では、公開草案32項の「追徴税額について課税を不服として法的手段を取る場合の取扱い」について、「当該取扱いにおいて追徴税額を費用として計上しないケースや納付税額を資産として計上するケースは排除されていないと考えられる。」という表現では、追加徴収された納付税額を費用としないケースや納付税額を資産として計上できるケースが一般的にあり得るとの誤解を与えかねないなどのコメントが寄せられた。 当該コメントに対しては次のように考え方が示されており、確定した企業会計基準第27号の34項の表現が公開草案から修正されている。 4 開示 上記のほか、受取利息及び受取配当金等に課される源泉所得税、外国法人税、更正等による追徴及び還付に関する表示についても規定している。 コメント対応では、事業税(付加価値割及び資本割)の損益計算書の表示に関する実務対応報告第12号の「2.付加価値割及び資本割を販売費及び一般管理費とすることの理由」を追加すべきとのコメント(コメントNo.12)を受けて、確定した企業会計基準第27号の37項が追加記載されている。 住民税(均等割)の損益計算書の表示についてもコメントが寄せられたが、実務対応報告第12号の検討時点の状況と大きく異ならないと考えられるとし、公開草案のままとなっている(コメントNo.14)。 Ⅲ 適用時期等 Ⅳ 日本公認会計士協会の実務指針等について 平成29年3月16日、日本公認会計士協会は、「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(企業会計基準第27 号)に伴って、次の実務指針等の廃止及び改正について公表している。 (了)
《速報解説》 「中小企業の会計に関する指針」が改正(2017.3.9) ~資産除去債務を今後の検討課題から削除し敷金に関する会計処理を規定~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成29 年3月9日付けで(公表日は平成29年3月17日)、日本税理士会連合会、日本公認会計士協会、日本商工会議所、企業会計基準委員会は、「中小企業の会計に関する指針」の改正を公表した。これにより、平成28年10月28日から意見募集されていた公開草案が確定することになる。 公開草案対してのコメントの提出はなかったことから、公開草案から軽微な字句修正だけを行っているとのことである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 1 敷金(39項) 次のように、敷金に関する会計処理を規定している。 2 税効果会計 「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第26号)が公表されているので、従来の「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い(監査委員会報告第66号)」から改正している。 3 資産除去債務 従来、資産除去債務は、「今後の検討事項」として掲げ、今後の我が国における企業会計慣行の成熟を踏まえつつ、引き続き検討すると述べられていたが、今回、当該記述を削除している。 これについては、中小企業へのアンケートを実施し、中小企業における資産除去債務の適用状況の把握を行ったところ、中小企業では、賃貸借契約に基づく原状回復義務について約半数の企業から該当がある旨の回答を得ており、敷金に関する会計処理を明らかにするニーズが高いことが判明したが、そのケースを除くと、資産除去債務による影響を受ける企業の範囲が限定的であることも明らかになったとのことである。 このため、資産除去債務の全面的な適用は馴染まないものと判断し、前述のように、資産除去債務を「各論」の見出し項目としては取り扱わないこととし、また、賃貸借契約における原状回復義務については、中小企業に過大な事務負担をかけないことを前提として、「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第21号)9項に規定される敷金の簡便法を参考に、中小企業の実態に合った取扱いを固定資産の項目に新たに設ける修正(39 項)を行っている。 (了) ↓お勧め連載記事↓
《速報解説》 経済産業省、「CGS(コーポレート・ガバナンス・システム)研究会報告書」を公表 ~取締役会の役割・機能の明確化や社外取締役の活用等、 「稼ぐ力」強化に向けた具体的行動を提言~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成29年3月10日、経済産業省の「コーポレート・ガバナンス・システム研究会」(座長 神田秀樹学習院大学大学院法務研究科教授)は、「CGS研究会報告書-実効的なガバナンス体制の構築・運用の手引-」(CGSレポート)を公表した。 これは、会社がコーポレートガバナンス・コード等の原則を実践するに当たって考えるべき内容を、コーポレートガバナンス・コードと整合性を保ちつつ示すことでこれを補完するとともに、「稼ぐ力」を強化するために有意義と考える具体的な行動を取りまとめたものである。 表紙などを含めて95ページのものであり、また、「コーポレートガバナンスに関する企業アンケート調査結果」も公表されている。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 CGSレポートの前半(本文)では、社長・CEO ら経営陣を主な対象にして、全体に関わる内容についての提言を行い、また、後半(CGSレポートの別紙1から3まで)では、コーポレートガバナンスを担当する企業幹部などを主な対象に、より具体的な指針として、数々の提言が行われている。 以下では主な内容について述べるが、CGSレポートは多岐にわたる事項を取り上げているので、詳細な理解のためには同レポートをお読みいただきたい。 1 取締役会の在り方 取締役会の機能である監督機能と意思決定機能について触れ、それらの前提となる基本的な経営戦略や経営計画を決定することが重要であるとし、その対応のためには、取締役会への付議事項を見直し、取締役会で議論されてきた事項のうち重要性が高くない業務執行案件を縮小するとともに、経営戦略に関する議論や監督機能に関する議論を充実させることが考えられるとしている。 取締役会の運営に関して、社外取締役にも十分な情報を提供する必要性や、取締役会とは別の会議体の活用について述べている。 2 社外取締役の活用の在り方 今後は、経営の仕組みを、社外取締役の知見・経験を活用しやすいものへと変えていく必要があるとする。 ただし、そもそも社外取締役に期待すべき役割は、企業の経営を行わせることではなく、経営を行うのは従前どおり社長・CEO を中心とする社内の経営陣であり、社外者は、特に社外者としての属性に基づいて社内者では適正に判断・評価しにくい事項について関与する際に真価を発揮するものであるとしている。 社外取締役の人材市場の拡充のために、実際に経営に携わっていた経営経験者が社外取締役の有力候補であり、積極的に他社の社外取締役になることにより、社外取締役の人材市場の拡充が期待されるとしている。 3 経営陣の指名・報酬の在り方 社外取締役を中心とする社外者には、社長・CEOの評価や後継者計画について、社内者とは別に客観的な立場から検証する役割が求められるとし、取締役会の意思決定に際して、社外者が独立的・客観的な視点で監督を行うことが期待されている。 業績連動報酬や自社株報酬は業績や株価の変動に応じて経営陣が得られる経済的利益が変化するため、中長期的な企業価値向上への動機付けとなること、また、自社株報酬は経営陣と株主の価値共有に資するというメリットもあることが述べられている。 また、取締役会の在り方を問わず、いずれの企業にとってもコーポレートガバナンスの実効性を高める上で有効と考えられる方策として、法定又は任意の指名委員会を活用することを検討すべきであるとしている。 4 経営陣のリーダーシップ強化の在り方 退任した自社の社長・CEOが相談役・顧問等として存在する場合や、取締役会長の在り方について述べている。 取締役会長については、取締役会議長として監督に集中し、取締役会評価に力を入れることなどにより、現社長・CEOとの役割分担が明確になり、現社長・CEOが迅速・果断な意思決定を行う上で有益である場合もあると考えられると述べている。 ◆ ◆ ◆ 以上の議論を踏まえ、CGSレポートの概要では、「報告書の提言」として、各企業は以下の事項について検討すべきとしている。 (了)
2017年3月16日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.210を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!- - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
日本の企業税制 【第41回】 「100%子会社化に係る税制(スクイーズアウト関連税制)の見直し」 一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 小畑 良晴 ある会社を100%子会社にする場合、その対価として現金、株式が考えられ、方法としては、株式譲渡、株式交換、全部取得条項付種類株式、株式併合などがある。 100%子会社化の中でも、すでに買収対象の発行済株式のマジョリティを確保している場合に、少数株主をいなくすることを称して「スクイーズアウト」という。 少数株主との個別交渉で全ての株式の譲渡を受けることはなかなか容易ではないことから、一定の法制度に基づいて、強制的に少数株主の退出を図る手法として、株式交換、全部取得条項付種類株式や株式併合の活用、平成26年改正会社法(平成27年5月1日施行)により創設された株式等売渡請求がある。 1 平成29年度税制改正前の組織再編税制 現行税制(平成29年度税制改正前)では、これらの手法のうち、組織再編税制が適用されるのは株式交換のみであった。すなわち、株式交換にあっては、適格要件を満たせば、株式交換完全子法人の株式を帳簿価格で譲渡したものとして、株式交換完全子法人の株主において株式譲渡益課税が行われない。 一方、非適格の場合には、株式交換完全子法人の株主において株式譲渡損益に対する課税が生じるとともに、株式交換完全子法人が有する一定の資産につき時価評価課税が行われることとされていた(改正前法法62の9①)。 株式交換以外の手法にあっては、少数株主の株式譲渡損益に対する課税が生じる場合があるが、買収対象会社の資産の時価評価が行われることはなかった(ただし、買収により、連結納税グループに加入することになる場合は、一定の資産につき時価評価課税が行われる)。 2 株式交換以外の手法の組織再編税制への取り込み 今回の改正では、全部取得条項付種類株式の端数処理、株式併合の端数処理及び株式売渡請求によるスクイーズアウトについて、株式交換と同様に組織再編税制の一環として位置づけることとされた。なお、スクイーズアウト関連の改正は、平成29年10月1日以後に行われる組織再編成について適用される。 法案を確認すると、まず定義規定に「株式交換等」(法法2十二の十六)が設けられ、株式交換及び、①全部取得条項付種類株式に係る取得決議によりその取得の対価として当該法人の最大株主等以外の全ての株主等に一に満たない端数の株式以外の当該法人の株式が交付されないこととなる場合、②株式の併合で、その併合をした法人の最大株主等以外の全ての株主等の有することとなる当該法人の株式の数が一に満たない端数となるもの、③株式売渡請求に係る承認により法令の規定に基づき当該法人の発行済株式等の全部が一の株主等に取得されることとなる場合が、「株式交換等」に該当することとされている。 その上で、改正前の「適格株式交換」(改正前法法2十二の十六)が「適格株式交換等」(法法2十二の十七)に置き換えられ、しかも、「株式以外の資産が交付されないもの」という要件に例外を設けている。すなわち、①株式交換の直前において株式交換完全親法人が株式交換完全子法人の発行済株式の総数の3分の2以上に相当する数の株式を有する場合における、少数株主に対して交付される金銭その他の資産、②全部取得条項付種類株式の取得の価格の決定の申立てに基づいて交付される金銭その他の資産、③株式売渡請求の取得の対価として交付される金銭その他の資産は、「株式以外の資産」から除外されている。 つまり、すでに3分の2以上のマジョリティを獲得している場合にあっては、少数株主に対する現金対価の株式交換が適格要件を満たす道が開かれる。また、全部取得条項付種類株式による取得について反対する株主は取得価格決定の申立を裁判所に対して行うことができるが、その決定に基づき支払う金銭等は対価要件に抵触しないこととなる。なお、反対株主以外の株主に対する端数処理の金銭については、従来の合併や株式交換に関する法人税基本通達1-4-2のような取扱いになるのか、今後の通達の改正内容についても確認が必要である。 一方、「適格株式交換等」に該当しない「株式交換等」を行った場合には、改正前の適格株式交換以外の株式交換と同様に、完全子法人となった法人において、その有する一定の資産につき時価評価課税が行われる(法法62の9①)。 なお、平成29年度与党税制改正大綱では、非適格株式交換等に係る完全子法人等の有する資産の時価評価制度(法法62の9①)及び連結納税の開始又は連結グループへの加入に伴う資産の時価評価制度(法法61の11①、61の12①)における時価評価対象資産から帳簿価額が1,000万円未満の資産が除かれることとされている。 時価評価対象資産の定義は政令事項であり、今後確認が必要であるが、この改正がなされれば、帳簿価額がない、いわゆる自己創設のれんの時価評価は今後、不要となるものと考えられる。 (了)
相続税の実務問答 【第9回】 「代償分割により取得した財産への課税」 税理士 梶野 研二 [答] 遺産分割協議により、あなたがお兄様から支払いを受けることとなった現金は、相続により取得したものであり、相続税の課税対象となりますから、贈与税や所得税(譲渡所得)の課税対象とはなりません。 ● ● ● ● ● 説 明 ● ● ● ● ● 1 代償分割 被相続人の財産は、相続開始とともに、共同相続人の共有財産となります。この共有となった相続財産は遺産分割の手続を経て、個別具体的に各相続人に帰属することとなります。 遺産分割は、通常は、被相続人に帰属していた個々の財産そのものを共同相続人のうち特定の者に分属させる方法により行われます。このような方法を『現物分割』といいます。 しかし、現物分割をすることが困難である場合や、現物分割をすることにより相続財産の価値が低下してしまうような場合には、相続財産の全部又は一部を売却して、その売却代金を各相続人に分配する方法により遺産分割が行われることがあります。これを『換価分割』といいます。 また、相続財産の全部又は一部を共同相続人のうちの1人又は数人に相続させるとともに、その者から他の共同相続人に対して一定の金銭等の支払いをさせる方法により遺産の分割を行うこともあります。このような方法を『代償分割』といいます。 例えば、唯一の遺産が被相続人や相続人のうちの一部の者の居住の用に供されていた土地建物であり、被相続人と同居していたその相続人が、その土地建物を単独で相続したいと希望する場合に、その相続人が希望どおりに当該土地建物を単独で相続するのと引き換えに、その相続人から他の相続人に対して一定の金銭を支払うことで、相続人全員の合意が得られることがあるでしょう。 また、事業用の資産や被相続人が経営していた会社の株式を事業の後継者が相続し、他の相続人には、その後継者から金銭の支払いをすることにより相続人全員の納得が得られるようなこともあるでしょう。 このように、代償分割によって、財産の種類及び性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態及び生活の状況その他一切の事情を勘案した柔軟な遺産分割が可能になります。 2 代償分割が行われた場合の課税関係 (1) 贈与税 代償分割が合意されると、共同相続人の1人又は数人から、代償債務の履行として、相続財産を構成しない現金やその他の財産を取得することとなります。代償財産として取得する財産は、代償債務者が従来から保有している固有の財産であったり、金融機関からの借入れ等により自ら調達した金銭等であって、被相続人の有していた財産そのものではありません。 つまり、共同相続人間で、相続財産以外の財産が受け渡しされることとなりますので、これが贈与税の課税対象となるのではないかとの疑問が生じます。 しかし、代償分割により共同相続人のうちの1人又は数人から受ける財産は、被相続人に帰属していた財産の価値の一部を取得するものといえますから、被相続人から相続により取得したものであって、これを贈与と認識する必要はありません。 (2) 所得税(譲渡所得) 代償分割により、土地や建物など譲渡所得の基因となる財産を一部の相続人が取得し、その相続人から他の相続人が現金などの代償財産を取得したとしても、当該土地や建物などの財産はそれを取得した相続人が、遺産分割により被相続人から直接取得するものであって、いったん共同相続人に法定相続分により帰属した財産を対価を支払って取得するものではありません。 したがって、代償分割により代償財産を取得した者に譲渡が発生したとして所得税(譲渡所得)が課税されることはありません。 (3) 相続税の課税 上記(1)及び(2)のとおり、代償財産は、被相続人に帰属していた経済的価値を代償分割という分割の手法を通じて、共同相続人のうちの一部の者に承継させたものです。つまり、代償財産の有する経済的価値は、まさに相続により取得したものとなりますので、代償財産を取得した者については、当該代償財産に相続税が課されることとなります(相基通11の2-9)。 一方、代償財産を交付した相続人については、相続により取得した土地や建物などの現物財産の価額から代償財産の価額を控除した価額を基に相続税を計算することとなります(相基通11の2-9)。 3 ご質問の場合 お父様の主要な遺産が、ご両親がお住まいだったご自宅及びその敷地で、今後はお兄様のご家族がここでお母様と同居されるとのことです。この土地建物以外にまとまった財産がないとのことですが、将来のことを考えると、この自宅建物及び敷地を相続人全員の共有とすることは、権利関係が複雑になってしまうことなどが懸念されることから、現物分割を避けて、相続人全員の合意を得て代償分割の方法がとられたことと思います。 このような遺産分割により、あなたがお兄様から支払いを受けることとなった現金は、代償財産として相続税の課税対象となり、贈与税や所得税(譲渡所得)の課税対象とはなりません。 なお、お兄様の相続税の課税価格の計算においては、あなたに支払うこととなった代償債務の額を控除することとなります。 (了)
特定居住用財産の買換え特例[一問一答] 【第6回】 「買換資産の取得の日の判定(請負契約によるもの)」 -買換資産の取得期間・取得の日- 税理士 大久保 昭佳 Q Xは、買換資産である居住用家屋の建築を建築業者に請け負わせました。 この場合、「特定の居住用財産の買換えの特例(措法36の2)」の適用を受けるにあたり、Xの買換資産の取得の日は、その請負契約を締結した日と判定してよいでしょうか。 A 請負契約の締結日を買換資産の取得の日とすることはできません。 建築業者から建物の引渡しを受けた日が買換資産の取得の日となります。 ●○●○解説○●○● 他に請け負わせて建設、製作又は製造した資産の取得の日は、その建設等が完了して、その資産の引渡しを受けた日により判定することとされています。 また、完成前の売買契約によるもの、例えば、新築に係る分譲マンションを取得する場合も同様に、契約締結日には存在しない資産をもって資産の取得の日とはできないことから、マンションの引渡しを受けた日が買換資産の取得の日となります(所基通33-9(資産の取得の日)、措通36の2-16(やむを得ない事情により買換資産の取得が遅れた場合)(注))。 (了)