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プロフェッションジャーナル No.211が公開されました!~今週のお薦め記事~

2017年3月23日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.211を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2017/03/23

山本守之の法人税“一刀両断” 【第33回】「パーティー費用と祝金・会費」

山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第33回】 「パーティー費用と祝金・会費」   税理士 山本 守之   1 パーティー費用とお祝金 裁決例、判決例では祝金控除は否定されていますが、一部の識者の間では祝金を控除すべきであるという主張もあります。 例えば、日税研論集第11号(武田昌輔氏稿)では、「創立何十周年等の祝賀パーティーの費用が交際費等に該当することはいうまでもないが、これに伴い収受した祝金を控除するかどうかである。私見としてはこれを支出交際費等から控除することが妥当であると考えるのである。」として次のような理由を挙げています。 ただ、現実の税務執行では、祝金の支出とパーティーの開催は並列的に行われた2つの交際行為であり、祝金は記念行事の費用の一部に当てられることが予定されていたものではないので、祝金を控除すべきではないと考えられており、裁決例、判決例でもこの考え方は支持されています。   2 技報堂事件 技報堂事件における判決は次のようなものです。 この判決で祝金控除を否定している論拠は次のようなものです。 ① (パーティーという)行事は主催者と祝金を持参した招待客と共同で行われたものではない。 ② パーティーを機会として祝金の支出とパーティーの開催という2つの交際行為があったのだから両者の間に二重課税は存在しない。 ③ 祝金の収受が主催者にとって収益であることを否定する根拠はない。   筆者としては、判決は現行法の解釈としては当然のことを述べていると考えます。   3 嶋根鋼商事件 2と同様に、パーティー費用から祝金を控除できるか否かについて争われた別の事件があります。この事件で裁判所では次のように判示しています。 この事件で裁判所が祝金控除を否定する論拠としたのは次のようなものです。 ① 祝金はパーティー費用の一部に充てられることが予定されていたものではない。 ② 招待客から収受する祝金の有無及びその多寡にかかわらず、パーティー主催者はパーティー費用の全額支出を免れなかったはずである。 ③ 二重課税が生ずるとしても、それは立法政策の問題であり、法解釈上は格別の意義を持つものではない。   二重課税論に対して、国税不服審判所と東京地裁では、パーティーの開催と祝金の支出という2つの交際があったとする考え方であり、浦和地裁は立法方策の問題であるとしているところに興味があります。 この事件は、控訴審(平成3年4月24日東京高裁)でも上告審(平成3年10月11日(※)最高裁第二小法廷)でも祝金控除が否定されています。控訴審では課税の目的、税金と会費の差異等が争われていますが、控訴人と判示とを対比してみると次のようになります。 《課税の目的》 【控訴人主張】 記念行事に要した支出交際費の額から招待者からの祝金を控除した金額をもって交際費等の額としたとしても、招待者側の祝金の支出に課税すれば、措置法62条(現行61条の4)の目的(資本蓄積)を達成できる。 【判 示】 交際費等の損金不算入制度の趣旨・目的は単に資本蓄積の促進に止まらず交際費等の支出自体の抑制にある。 《祝金と会費の差異》 【控訴人主張】 本件記念行事における招待者からの祝金は、慣行上持参することが、義務づけられており、その実質は会費、協賛金と異ならず、両者が費用を分担する関係にあるから、支出交際費の額から控除すべきである。 【判 示】 同祝金は費用分担の同意に基づく会費、協賛金とはその性質を異にし、主催者はその金額の多寡にかかわらず、記念行事の全額の支払いを免れないから、その祝金相当部分のみについて交際費性に欠けるということはできない。   控訴人の主張を検討してみると、交際費課税の目的を制度創設時(昭和29年)の資本蓄積策という古い考え方を基礎にしており、交際費の支出を抑制するという現代的感覚が不足しているように思われます。 また、祝金と会費との差異についても、祝金の持参は慣行となっているものの、会費のようにパーティー費用に充てられることが予定されているものとは異なるという視点が欠落しているようです。   4 会費制の場合 会費制でパーティーを行った場合は、祝金とは事情を異にし、幹事会社が支出した交際費等から受け入れた会費は控除できます。これは、パーティー費用を参加者が負担したということです。その負担額が交際費等となるのです。 これらについては、次のような裁決例があります。 つまり、会費制の場合は、その支出自体が義務的なものであり、費用負担の性格を持っているのですから、幹事となる法人は、参加者から集めた会費と幹事法人が負担した会費を明確に区分でき、パーティー費用を会費等として負担し合ったという実態がありますので、それぞれの実負担額を交際費等とする意味で、幹事法人はホテル等に支払ったパーティー費用から参加者から受け入れた会費を控除して交際費等の計算をしてよいのです。 (了)

#No. 211(掲載号)
#山本 守之
2017/03/23

国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第3回】「海外赴任と国外転出時課税」

国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第3回】 「海外赴任と国外転出時課税」   税理士 菅野 真美   - 質 問 - 私(日本国籍)甲は、同族会社乙社の専務取締役をして日本で長年仕事をしています。平成29年5月10日よりA国の100%子会社に社長として3年間(平成32年5月10日帰国予定)赴任します。役員報酬は乙社から支払われることから、所得税等が源泉分離課税されるということは承知しています(【第2回】参照)。 父(社長)は財産をたくさん持っているようですが、私個人の財産は、ローンで買った自宅(赴任後も家族が居住)と自社株と金融機関から頼まれて保有している投資信託です。 税務上、気をつけておくべくことがありますか。   ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ ▷国外転出時課税とは 平成27年度の税制改正で国外転出課税制度が導入された。これは、居住者が海外に移住して非居住者になった後に有価証券を売却した時に、所得税が国内法で課されないことや租税条約により課されなくなること、さらに現地の法令でも所得税が課されないことを利用して、非課税で有価証券を売却することによる租税回避が散見され問題となったことによる。他の先進国では既に、租税回避防止のための出国税のような制度があり、遅ればせながら日本でも導入に至った。 国外転出時課税制度とは、原則として、国外転出する日前10年以内において国内に5年を超えて住所又は居所を有している人が国外転出時に保有する有価証券や匿名組合出資、信用取引やデリバティブ取引の残高が合計額で1億円以上の場合は、国外転出時にこれらの財産の譲渡があったものとみなして所得税課税がなされるものである(所法60の2①~⑤)。この制度を設けることにより、国外転出による所得税課税逃れが困難となった。 甲の場合、国外転出時の財産の価額(もし、納税管理人を定めずに出国する場合は、国外転出時から3ヶ月前)が1億円以上である場合(所法60の2①⑤)は、国外転出時課税の対象となる。甲の場合、対象財産となるのは、同族会社の株式、投資信託となる。 なお、非上場株式の時価は財産評価基本通達に基づいて原則的には評価するが、会社が保有する土地や上場有価証券は時価評価となり、かつ、評価益に対する法人税額控除は認められない(所基通60の2-7、59-6)。   ▷納税資金がなく困っている場合は 国外転出時課税制度は、有価証券等が換金されない時点で課税されるため、納税資金が不足することも考えられる。また、有価証券を保有して国外転出した人が帰国してその後売却した場合は、日本での課税が可能であることから、あえて国外転出時に課税する必要は生じない。そこで次のような納税猶予制度が設けられている。   ▷納税猶予のための手続 納税猶予のための手続としては、まず、納税管理人の届出書を国外転出前に提出することが必要となる。納税猶予期間は、原則は5年で、10年に延長することができる(なお、納税猶予額の納期限は満了日から4ヶ月以内)(所法137の2①②)。 確定申告期限までに、国外転出時に保有している財産について納税猶予を受ける旨の記載のある書類を添付して申告するとともに、担保の提供を行わなければならない(所法137の2①)。この担保については、非上場株式等の相続税・贈与税の納税猶予制度とは異なり、国税通則法に基づく手続となる(所基通137の2-7)。 もし甲が5年の納税猶予を選択した場合は、平成29年5月10日までに納税管理人の届出書を提出し、平成30年3月15日までに申告と担保提供を行わなければならない。納税猶予の満了日は平成34年5月10日であり、納期限は平成34年9月10日となる。   ▷申告期限後の手続 国外転出時の年分の所得税の申告書を提出後、納税猶予期間内の年の12月31日に国外転出時課税対象財産を保有している場合は、翌年の3月15日までに継続届出書を提出しなければならない(所法137の2⑥)。もし、提出を怠った場合は、納税猶予期間の繰り上げが行われることになるから注意が必要である(所法137の2⑧)。 甲の場合は平成30年12月31日分の継続届出書を平成31年3月15日まで、平成31年12月31日分の継続届出書を平成32年3月15日までに提出しなければならない。   ▷帰国した場合の手続 国外転出時課税は、海外で有価証券等を売却して日本での租税を回避することを防止するための規定であるため、日本に帰国した場合は、この制度を適用させる必要がない。 そこで、納税猶予期間(5年又は10年間)の満了日までに帰国した場合、又は、納税猶予の適用を受けず、5年以内に帰国した場合で、国外転出時課税対象となる財産を引き続き有しているときは、原則的には、国外転出時課税を取り消すことができる(所法60の2⑥⑦)。そのためには、帰国した日から4ヶ月を経過する日までに、更正の請求を行わなければならない(所法153の2①)。 甲がA国から平成32年5月10日に帰国した場合は、平成32年9月10日までに更正の請求を行うと、国外転出時課税は取り消すことができる。もし、更正の請求を失念して、期限までに取り消さない場合には、国外転出時課税分の納税が確定することになる。 国外転出時課税は何をいつまでにしなければならないかを把握していないと、納税負担だけ生ずる怖い制度であるので、潜在的な国外転出時課税の対象者が顧問先等にいる場合は、細心の注意を払って処理する必要がある。 (了)

#No. 211(掲載号)
#菅野 真美
2017/03/23

特定居住用財産の買換え特例[一問一答] 【第7回】「既に有する土地を買換資産として造成をした場合」-買換資産の範囲-

特定居住用財産の買換え特例[一問一答] 【第7回】 「既に有する土地を買換資産として造成をした場合」 -買換資産の範囲-   税理士 大久保 昭佳   Q Xは、居住用の土地家屋(所有期間が10年超で居住期間は10年以上)を売却し、既に有する土地について、居住用家屋の敷地として利用するため、地盛り、地ならし、防壁工事を行いました。 この土地の造成等に要した費用の額についても、買換資産の取得に要した金額として、「特定の居住用財産の買換えの特例(措法36の2)」の適用を受けることができるでしょうか。 A 既に有する土地について、造成等を行った場合のその造成等のために要した費用の額は、買換資産の取得価額になりません。 ただし、その費用の額が相当の金額に上り、実質的に新たに土地を取得したと同様であるものと認められるときは、その造成等の完了の時に新たな土地の取得があったものとし、その費用の額をその取得価額として「買換えの特例」の適用を受けることができます。 ●○●○解説○●○● 以前から所有する土地に造成等を行った場合のその費用の額は、その土地の取得費に算入されることとなり、造成等を行うことは新たな資産の取得費となりません。したがって、特例の適用上、原則として、造成を行ったことをもって新たな土地の取得があったとみることはできません。 しかし、以前から所有する土地を居住の用に供するために、造成等を行った場合において、その費用の額が相当の金額に上り、実質的に新たに土地を取得したことと同様の事情があるものと認められるときは、当該造成についてはその完成の時に新たな土地の取得があったものとし、当該費用の額をその取得価額として、「買換えの特例」の適用を受けることができます(措通36の2-11(宅地の造成))。 なお、この取扱いの適用を受けた場合であっても、造成等が行われた土地を将来譲渡する場合の所有期間の判定上のその取得の日は、造成等の時期にかかわらず、以前から所有するその土地の実際の取得の日となります(措通31・32共-6(改良、改造等があった土地建物等の所有期間の判定))。 (了)

#No. 211(掲載号)
#大久保 昭佳
2017/03/23

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例48(消費税)】 「たまたま土地の譲渡があった事業年度において「課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書」の提出を失念してしまった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例48(消費税)】   税理士 齋藤 和助       《基礎知識》 ◆課税売上割合に準ずる割合(消法30③) 課税事業者が課税売上げに係る消費税の額から控除する仕入控除税額を個別対応方式によって計算する場合には、課税売上げと非課税売上げに共通して要する課税仕入れ等に係る消費税については、原則として、課税売上割合により計算する。しかし、課税売上割合により計算した仕入控除税額がその事業者の事業の実態を反映していないなど、課税売上割合により仕入控除税額を計算するよりも、課税売上割合に準ずる割合によって計算する方が合理的である場合には、課税売上割合に代えて課税売上割合に準ずる割合によって仕入控除税額を計算することができる。 ◆課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書(消法30③) 課税売上割合に準ずる割合を適用するためには、納税地を所轄する税務署に「課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書」を提出して、適用しようとする課税期間の末日までに税務署長の承認を受ける必要がある。 ◆たまたま土地の譲渡があった場合の課税売上割合に準ずる割合の承認 たまたま土地の譲渡があった場合、すなわち土地の譲渡が単発のものであり、かつ、その土地の譲渡がなかった場合には、事業の実態に変動がないと認められるときに限り、次の①又は②の割合のいずれか低い割合により課税売上割合に準ずる割合の承認申請ができる。 ① その土地の譲渡があった課税期間の前3年に含まれる課税期間の通算課税売上割合(消費税法施行令第53条第3項《通算課税売上割合の計算方法》に規定する計算方法により計算した割合をいう) ② その土地の譲渡があった課税期間の前課税期間の課税売上割合 なお、「土地の譲渡がなかったとした場合に、事業の実態に変動がないと認められる場合」とは、事業者の営業の実態に変動がなく、かつ、過去3年間で最も高い課税売上割合と最も低い課税売上割合の差が5%以内である場合をいう。また、この課税売上割合に準ずる割合の承認は、たまたま土地の譲渡があった場合に行うものであることから、その課税期間において適用したときは、翌課税期間において「課税売上割合に準ずる割合の不適用届出書」を提出しなければならない。 ◆通算課税売上割合の計算方法(消令53③) 通算課税売上割合とは、仕入れ等の課税期間から第3年度の課税期間までの各課税期間(以下「通算課税期間」という)中に国内において行った資産の譲渡等の対価の額の合計額のうちに、その通算課税売上割合中に国内において行った課税資産の譲渡等の対価の額の合計額の占める割合を、一定の方法で通算した割合をいう。       (了)

#No. 211(掲載号)
#齋藤 和助
2017/03/23

金融・投資商品の税務Q&A 【Q37】「金取引を行った場合の課税関係」

金融・投資商品の税務Q&A 【Q37】 「金取引を行った場合の課税関係」   PwC税理士法人 金融部 パートナー 税理士 箱田 晶子   ●○ 検 討 ○● 1 所得税の取扱い 給与所得者などの個人が保有している金地金を売却した場合の所得は、営利を目的として継続的に金地金の売買をしているものではない限り、原則、一般の譲渡所得として課税され、給料など他の所得と合わせて総合課税の対象になります。原則として確定申告が必要となります。 譲渡益の額は、以下のように計算されます。 その年の譲渡益(他の総合課税の譲渡益も含む)から、譲渡所得の特別控除(限度額50万円)を控除した金額が一般の譲渡所得として総合課税の対象となり、累進税率にて課税されます。 なお、所有期間が5年超の場合、長期の譲渡所得として、特別控除後の譲渡所得の金額の1/2が課税標準として総合課税の対象となります。 また、長期の譲渡益と短期の譲渡益の両方の譲渡益がある場合には、特別控除額は両方合わせて50万円が限度となり、短期の譲渡益から先に控除します。   2 消費税の取扱い 金地金の売買を国内において行う場合には、消費税8%が課されます。 個人が消費税法上の課税事業者(当該個人の2年前の課税売上高が1,000万円以上や課税事業者選択届を届け出ている場合等一定の場合)に該当しない限り、個人に消費税の納税義務は発生しません。 この場合、上記の所得税法上の譲渡益の計算は、消費税込の売却金額で計算することになります。   (了)

#No. 211(掲載号)
#箱田 晶子
2017/03/23

被災したクライアント企業への実務支援のポイント〔税務面(所得税)のアドバイス〕 【第5回】「被災した個人に対する所得税の減免制度」

被災したクライアント企業への 実務支援のポイント 〔税務面(所得税)のアドバイス〕 【第5回】 「被災した個人に対する所得税の減免制度」   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   個人が災害により住宅や家財等に損害を受けた場合、税務上の救済措置としては、所得税法に基づく『雑損控除』と災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律(以下、災害減免法という)に基づく『所得税の軽減免除』の2つの制度がある。今回は、この2つの制度について解説を行う。 なお、震災特例法等により特例措置が設けられている取扱いもあるが、それらについては次回まとめて取り上げる。   【1】 雑損控除と所得税の軽減免除(概要) 個人が災害により住宅や家財等に損害を受けた場合には、所得税法に基づく雑損控除(以下、雑損控除という)と災害減免法に基づく所得税の軽減免除(以下、所得税の軽減免除という)のうち、いずれか有利な方を選択することができる。   【2】 雑損控除 (1) 制度の概要 資産について災害、盗難、横領による損害が生じた場合には、所得控除の一つである雑損控除の適用を受けることができる。 雑損控除の概要は、次の通りである。 (2) 対象となる資産の具体例 雑損控除の対象になる資産と対象にならない資産について、具体例を挙げると次の通りである。 (3) 差引損失額の計算方法 雑損控除の計算に必要な「差引損失額」を計算する算式は、次の通りである(所法72①)。 差引損失額 = ①損害金額 + ②災害関連支出 - ③保険金等により補てんされる金額 ① 損害金額とは 損害金額は、原則として被災する直前における資産の価額(時価)に基づいて計算する。すなわち、被災前後の時価の差額が損害金額となる(所令206③)。 被災した資産が減価償却資産である場合には、その資産の取得価額から減価償却費の累積額を控除した金額に基づいて損害金額を計算することができる(所令206③カッコ書き)。 なお、各資産について個別に被災前後の時価を計算することが困難な場合には、資産の区分(住宅、家財、車両)ごとに、次の方法で計算することができる(「東日本大震災により損害を受けた場合の所得税の取扱い(情報)」(以下、所得税の取扱い(情報))「第Ⅰ 各種制度の概要」第1~第4)。 具体的には、「被災した住宅、家財等の損失額の計算書」を用いて計算する。 (※1)(※2)(※3) 「被害割合」「1㎡当たりの工事費用」「家族構成別家財評価額」は、国税庁のホームページに公表される。 【参考】 東日本大震災に係る確定申告のために公表された別表(所得税の取扱い(情報)「Ⅲ 参考編」) ② 災害関連支出とは 雑損控除の対象となる「災害関連支出」とは、次のような支出をいう(所法72①一、所令206①②、所基通72-7)。 上記(ア)から(ウ)のうち原状回復費用については、損害金額の計算との関係において注意が必要である。原状回復費用のうち災害関連支出に該当する金額は、損害金額を超える部分の金額となる。その理由は、損害金額と原状回復費用の全額を雑損控除の対象とすると、二重控除される金額が生じるからである。 なお、被災した資産について支出した金額のうち、原状回復のための支出と資本的支出との区分が困難な場合には、支出金額の30%を原状回復費用とすることができる(所基通72-3)。 ③ 保険金等により補てんされる金額とは 「保険金等により補てんされる金額」とは、災害に関して受け取った保険金や損害賠償金等の金額をいう(所法72①)。 大規模災害時には、保険会社の査定が遅れる等の理由により、確定申告書を提出するときに保険金等の金額が確定していない場合も想定される。このような場合には、保険金等の見積額を差し引くことにより雑損控除の額を計算する(所基通72-7、51-7)。 後日、見積額と確定額が異なることとなったときには、遡及して雑損控除の額を訂正する。 (4) 手続 雑損控除の適用を受けるための手続は、次の通りである。 なお、具体的な数値を用いた確定申告書やその他の計算書の記載例は、所得税の扱い(情報)「Ⅲ 参考編」を参考にされたい。   【3】 所得税の軽減免除 災害により住宅又は家財に甚大な被害を受けたときには、災害減免法に基づいて所得税が軽減免除される(災免法2)。 所得税の軽減免除の概要は、次の通りである。   【4】 「雑損控除」と「所得税の軽減免除」有利不利の判断 上述したように、雑損控除と所得税の軽減免除は、納税者がどちらか有利な方を選択することができる。どちらの制度を選択すると有利になるかは、被災者個人の所得金額や被災の状況によって異なる。 判断のポイントとなる点は、次の通りである。 〈雑損控除と所得税の軽減免除の適用判定フローチャート〉 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (出典) 国税庁「平成28年熊本地震により被害をうけられた方へ(所得税及び復興特別所得税関係)」より一部筆者加筆   【5】 計算例 雑損控除と所得税の軽減免除を比較した計算例を示す。 以上の試算から、本計算例では、損害金額が200万円を少し超える額までであれば、所得税の軽減免除の方が有利となる。 一方、所得税の軽減免除では、損害金額に関わりなく軽減又は免除される所得税額が一定となるため、損害金額が多額になると雑損控除の方が有利な結果となる。一般的には、雑損控除の金額が総所得金額等を超える場合には、雑損控除の方が有利となる。   【6】 個人住民税の取扱い (1) 個人住民税の雑損控除 個人住民税においても雑損控除の適用を受けることができる。 前年分の所得税の確定申告書を提出している場合には、当年分の個人住民税の申告書が提出されたものとみなされる。したがって、前年分の所得税の確定申告で雑損控除を適用していれば、自動的に当年分の個人住民税において雑損控除が適用される。ただし、個人住民税の申告を行うことにより、所得税で雑損控除を適用する所得と異なる年分の所得について住民税の雑損控除を適用することもできる。 【参考図】 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (出典) 総務省自治税務局「地方税関係Q&A〈東日本大震災関連〉」p6 一方、所得税において所得税の軽減免除を選択し、個人住民税では雑損控除の適用を受けるには、住民税の申告が必要となる。 (2) 個人住民税の減免措置 各自治体は、条例に基づいて個人住民税を減免することができる(地方税法323)。個人住民税の減免を受けるためには、自治体に減免申請を行う。 所得税では、雑損控除と所得税の軽減免除のどちらかを選択することになるが、個人住民税では、雑損控除と条例に基づく減免措置を併用することが可能である。   (了)

#No. 211(掲載号)
#篠藤 敦子
2017/03/23

計算書類作成に関する“うっかりミス”の事例と防止策 【第20回】「引当金の会計方針に係るうっかりミス」

計算書類作成に関する “うっかりミス”の事例と防止策 【第20回】 「引当金の会計方針に係るうっかりミス」   公認会計士 石王丸 周夫   1 今回の事例 計算書類のドラフトにはうっかりミスがつきものです。 たとえば、こんなミスをよく見かけます。 【事例20-1】 会計方針の記載が貸借対照表と整合していない。 【事例20-1】は、計算書類の個別注記表に記載されている「引当金の計上基準」です。 各引当金の計上基準を一読した限り、特段間違いと思われる点はありませんが、これらの計上基準を貸借対照表と照らし合わせてみると、「おやっ?」と思われる点があります。 貸借対照表は以下のとおりです。 いかがでしょうか。 引当金の計上基準の文章に、どこかおかしな点は見つかりましたか?   2 退職給付引当金が見当たらない? さっそく、答えを見てみましょう。 正しい注記文章は以下のとおりです。 退職給付引当金の計上基準の文章中、赤字の部分が書き漏れていました。 貸借対照表を見るとわかりますが、この会社のこの年度の貸借対照表には、退職給付引当金が計上されていません。退職給付引当金は固定負債に計上されますが、そこにあるのは長期借入金と繰延税金負債だけです。 にもかかわらず、【事例20-1】では、退職給付引当金は と書いてあります。計上されていないにもかかわらず、計上していると記載されているのです。 したがって、正しい注記文章の方では、赤字部分のとおり、「ただし、・・・」以下の記載を加えています。 退職給付引当金というのは、退職給付債務と年金資産の金額のバランスによっては、借方残高となることがあり、その場合は貸借対照表上「前払年金費用」という科目で計上することになります。赤字部分のただし書きは、そのことを述べています。 実際、前掲の貸借対照表においても、前払年金費用の残高が計上されていることが確認できます。   3 会計方針の記載でうっかりミスが発生する仕組み 【事例20-1】のうっかりミスが起きた原因は、注記の文章作成にあたって、前年度の注記文章をそのまま使ってしまったことにあります。この連載を読んでいただいている方ならもうおわかりですね。これは「リサイクル・ミス」です。 もしくは、前払年金費用を計上するという新たな状況に対処できなかったという意味で「ファーストタイム・ミス」ともいえます。 ミスの分類自体はそれほど重要ではありませんが、この手の“うっかりミス”が、会計方針の記載部分で起きやすいということは覚えておいてください。 「会計方針の記載」というのは、決まり文句であることがほとんどです。記載すべき事項を過不足なく正確に記載することが求められるからです。また、会計方針というのは継続して適用されることが原則なので、基本的には毎期同じ文言が記載されます。 したがって、計算書類の作成者は、会計方針の記述部分について、前年度と同じ内容を掲載して済ませてしまうことが多いのです。 【事例20-1】は、まさにそうやって作られたものです。 その結果、引当金の記述について加筆しなければならないにもかかわらず、それを忘れてしまったのです。   4 BSと会計方針を突き合せすればよい 引当金の会計方針の記載では、同じようなミスがよく起こります。 たとえば、以下のような事例です。 【事例20-2】 会計方針に記載されている引当金の中に、貸借対照表に計上されていないものがある。 貸借対照表と引当金の計上基準を突き合せてみてください。 1つだけ対応しないものがありますね。 引当金の計上基準に記載されている投資損失引当金(赤字部分)です。これが貸借対照表にありません。 投資損失引当金がもし計上されているならば、「投資その他の資産」の区分にマイナス計上(数字に△を付す)されているはずです。 これは、前期まで投資損失引当金が計上されていたけれども、当期末には残高が0円となり、引当金の計上基準の記述の方でこれを削除し忘れたことがミスの原因です。 引当金の中には、必ずしも毎期継続的に計上されないものもあります。そのような引当金が発生・消滅した場合は、それに応じて引当金の計上基準の記述も見直していかなければならないのです。   〈今回のまとめ〉 引当金の会計方針の記載については、貸借対照表に計上されている引当金との対応関係を確認することが、うっかりミスを防ぐポイントです。 (了)

#No. 211(掲載号)
#石王丸 周夫
2017/03/23

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第56回】モジュレ株式会社「第三者委員会調査報告書(中間)(平成28年10月21日付)」

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第56回】 モジュレ株式会社 「第三者委員会調査報告書(中間)(平成28年10月21日付)」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   【第三者委員会の概要】   【モジュレ株式会社の概要】 モジュレ株式会社(以下「モジュレ」と略称する)は、1999(平成11)年設立、翌年4月事業開始。企業の情報システム部門業務のアウトソースサービスを主たる事業とする。資本金約304百万円。連結売上高2,115百万円、連結経常利益159百万円(数字は、いずれも訂正前の平成27年3月期)。従業員数62名(平成29年2月末現在)。本店所在地は東京都港区。東京証券取引所JASDAQ上場。   【調査委員会報告書の概要】 1 発覚の経緯 平成28年7月20日付リリース「第三者委員会の設置に関するお知らせ」によれば、外部からの指摘に基づき、監査役主導で行われた調査の結果、過年度の業績の一部に疑義があることが判明した、とのことである。「外部からの指摘」における「外部」とは誰を意味するのか、監査役による社内調査の結果はどのような内容であったのかについては、第三者委員会による調査報告書では明らかにされていない。   2 調査結果の概要 (1) 調査の対象とされた5件の取引(調査報告書p.4以下) 第三者委員会は、社内調査及び第三者委員会による抽出作業の結果として、次の5件の取引を調査対象とした。 第三者委員会は、第三者委員会の委員選任が公表された日に退任を表明した、創業者である元代表取締役の松村明氏(以下「松村氏」と略称する)に対するヒアリングとモジュレから提供を受けた資料の分析を中心とした調査によって、以下のように認定した。 取引1、取引2及び取引3については、売上を増加させるための架空取引又は架空循環取引であり、取引4の金銭の流れの中には、事業用コンピューターの購入にあたってメーカーから値引きを受けた金員を松村氏に収受させるための架空取引が存在している、と認定した。一方、取引5については、ソフトウェアが実在していなかったと認めることはできず、価格も不合理であるとまでは認められない、とした。 (2) 取引1から取引4が行われた主な原因(調査報告書p.18以下) 第三者委員会が松村氏からヒアリングしたところによれば、取引4で、松村氏に還流した303百万円の資金使途は、次の3点である。 ① 営業経費の精算 松村氏は、本来、モジュレが負担する営業活動費である、IT業界のビジネスに影響力のある人物から情報を収集するための支出を、領収書が受領できないという理由から、個人的に負担していた。 ② 借入金の返済 モジュレが大阪証券取引所に上場するに際して、分散していた株式を松村氏が買い取っていたところ、上場後、モジュレの株価が高値で取引されたことから、旧株主から買取額と上場後の取引価格との差額の支払いを求められたが、会社としての対応策が見つからないまま、松村氏が保有株式を担保に融資を受け、旧株主に補填を行ってきた。 ③ 取引1及び取引2を実現するための資金負担 取引1及び取引2を実現するためには、取引参加者に一定の利益を補償する必要があり、そのための資金として、松村氏は、取引1において14百万円、取引2において6百万円を負担したことがわかっている。 *  *  * 上記のうち③の資金負担は別として、①及び②はいずれも、本来であれば、代表取締役一人で抱え込む話ではなく、モジュレとしてどのような方策をとるべきかを検討すべきだった事象であったが、特に②については、「本来会社で対応すべき」と役員の意見が一致していながら、有効な解決策が見つからず、松村氏が個人で対応するほかなかった、というものであり、顧問弁護士や上場時の幹事証券会社など、外部にアドバイスを求めるという意見は出なかったのだろうか、という疑問は残る。   3 損益計算書及び貸借対照表の修正 10月25日、第三者委員会が提出した「参考情報」によれば、損益計算書の主要項目及び純資産額の修正内容は以下のとおりである(単位:百万円)。 【平成26年3月期】 【平成27年3月期】 いずれも、税引前当期純利益の減少幅が大きいことから、何らかの特別損失の計上が行われているものと推測できる。「調査報告書(中間)」に示された会計処理の修正方針では、取得したソフトウェアの減損、架空取引に係る売上・仕入の取消などに伴って増加した金銭債権に対する貸倒引当金の計上などが示されているが、具体的な修正の内容までは公表されていない。   【調査報告書の特徴】 モジュレが第三者委員会による「調査報告書(中間)」を受領したときには、すでに、上場廃止が決まっていたという、かなり特殊な事案である。「調査報告書(中間)」と、あえて最終報告書ではないことを明示したのは、調査の目的「(3)再発防止策の検討・提言」が報告書に織り込まれていないことに理由があるのではないかと推察するが、モジュレのウェブサイト上にあるIRニュースは、平成28年10月28日以降、更新されていないようであり、最終報告書が公表されることはなさそうである。   1 会計監査人の異動 モジュレが第三者委員会の設置を発表した2日後、モジュレの会計監査人であったアスカ監査法人が退任したことが公表される。アスカ監査法人は前年6月18日に就任したばかりで、一度も監査報告書を出さないままの辞任となった。辞任理由について、同リリースでは、 ことを理由に挙げている。 この時期、アスカ監査法人が会計監査人に就任していた三社で、ほぼ同時に調査委員会が設置されるという事態が進行していた。うち一社は、本連載【第55回】で取り上げた株式会社メディビックグループ、モジュレと、もう一社はサイバーステップ株式会社であった。そして、サイバーステップ社以外の二社は、奇しくも、アスカ監査法人が退任⇒上場廃止という道程をたどることとなった。 ただし、上場廃止の理由は、メディビックグループ社が「売上高が所要額未満」であるのに対し、モジュレは「有価証券報告書提出遅延」ということであり、モジュレは、一時会計監査人の選定ができず 、有価証券報告書が提出できなかったことから、上場廃止になったものである 。 「監査難民」という言葉が流行語のように使われたのは、みすず監査法人(旧中央青山監査法人)が解散した2007年であったが、今回、モジュレが一時会計監査人を選定できないまま、上場廃止に至った本件を振り返って、久しぶりに、その言葉を思い出した次第である。   2 全取締役・全監査役の退任 代表取締役であった松村氏が、第三者委員会の委員選任を公表した日に退任を表明したことは前述のとおりだが、このとき、同時に、取締役4名、監査役3名の全員が、8月30日開催予定の定時株主総会の終結をもって退任することが発表されている。新経営体制の目的としては、「今般の疑義を契機として、経営陣を刷新することによって、抜本的にコンプライアンス・ガバナンス体制を見直し、その上で経営管理機能を強化すること」が挙げられている。 なお、退任予定取締役のうち1名は、定時株主総会の終結を待たず、8月24日に、「一身上の都合により」辞任したことが公表された。   3 上場廃止と課徴金納付命令の勧告 モジュレが上場廃止になった経緯はすでに述べたとおり、一時会計監査人を選定できておらず、また、第三者委員会の調査も未了であることから、有価証券報告書を法定提出期限の経過後1ヶ月以内(平成28年9月30日)に提出できなかったため、1ヶ月の整理銘柄指定期間を経て、11月1日に上場が廃止されたものである。 一方、証券取引等監視委員会は、10月28日、モジュレについて、1,956万円の課徴金納付命令を発出するよう、勧告を行った 。法律違反の事実関係は次のとおりである(一部抜粋)。 この課徴金納付命令の勧告を受けて、モジュレは、同日、以下のようなリリース を出した。 10月28日に公表された本リリース「証券取引等監視委員会による課徴金納付命令の勧告について」を最後に、モジュレのIRニュースの更新は停止したままである。 (了)

#No. 211(掲載号)
#米澤 勝
2017/03/23

ストーリーで学ぶIFRS入門 【第14話】「棚卸資産(IAS第2号)は論点が分かりやすい」

ストーリーで学ぶ IFRS入門 【第14話】 「棚卸資産(IAS第2号)は論点が分かりやすい」 仰星監査法人 公認会計士 関根 智美   3月も中旬を過ぎると、経理部内の空気が変わる。 ピリピリしていて、でも少しわくわくするような、まるでお祭り前の雰囲気に似ているな、と桜井はいつも感じていた。この空気の変化は、待ち遠しい春が近づいているからではなく、年度決算という大仕事が来月に控えているためだ。 桜井は経理部と財務部一同が集まったミーティングに出席していた。決算日程や担当割当を確認するためだ。もうすぐ入社してから丸三年になる桜井も、この時期独特の雰囲気に慣れてきた。小一時間ほど、情報共有や作業の確認を終えると、各々自席へ戻るため席を立った。 「あの、すみません、桜井さん。」 会議室から立ち去ろうとした桜井を後輩の山口が呼び止めた。 桜井が振り返ると、山口は少しおどおどした表情を浮かべている。去年の春に入社した山口にとって、今回が実質的に初めての決算だ。桜井には山口の緊張が手に取るように分かった。 「どうしたの?」と、桜井は努めて優しく尋ねた。 「すみません。ちょっと作業内容で分からないところがありまして・・・」 山口は申し訳なさそうな顔をして、ミーティング資料の該当箇所を桜井に見せた。 「ああ、ここね。僕が去年やったんだけど、ちょっと意味が分かりづらいよね。そこはね―。」 桜井が山口に一通り説明を終えた後も、山口の表情は晴れなかった。 「大丈夫?なんだか顔色が良くないようだけど。」 「すみません、何だか不安なんです。数年後にはウチの会社も日本基準からIFRSに変わるんですよね。日本基準でも一杯一杯なのに、やっていけるのかなって・・・」 2人の勤める会社は規模こそ大きくないものの、東証一部に上場しているメーカーだ。昨今のIFRS導入の流れに乗り遅れないために、数年以内にIFRSを導入する予定なのだ。 桜井は思わず笑った。山口はビックリして頭を上げた。 「ごめん、ごめん。決して馬鹿にしているわけじゃなくて、僕と同じ気持ちの人間がいて安心したんだ。」 「桜井さんもですか?」と、意外そうな表情をして山口が訊いた。 「でも、桜井さんは藤原さんからIFRSを教えてもらっていますよね?だったら、大丈夫じゃないんですか?」 そこで、桜井は気まずそうに頭を掻いた。 「いや、僕があまり積極的に勉強しないから、藤原先輩を怒らせちゃったんだ。」 それを聞いた山口は、神妙な顔で頷いた。どう反応していいか分からなかったためだろう。 「今思えば、僕が先輩に甘えすぎていたんだよね。自分から勉強しなくても、先輩が率先して勉強する時間を作ってくれたから。」 「藤原さんって優しいですもんね。」 山口の的を射た言葉に桜井は苦笑して頷いた。 「うん。だから甘えすぎないように、最近は自分でも自主的に勉強しているんだ。」 「そうなんですか。」と相槌を打つと、山口はしばらく黙り込んでから再び口を開いた。 「あの・・・もし良かったら僕にIFRSを教えてもらえないでしょうか。」 「ええっ!?」 突然の山口の依頼に桜井は驚いて声を上げた。 「僕でも分かるところなら教えられるとは思うけど・・・」と自信無げに付け加える。 「では、棚卸資産はどうでしょうか?今度の決算で担当することになったので、IFRSが導入された後、どんなふうに会計処理することになるのか、知りたいです。」 「ああ、そう。えーと・・・棚卸資産なら、大丈夫だよ。」 桜井は内心ホッとした。 「簡単な論点から勉強しているんだ。」と、桜井はニヤリと付け足した。 棚卸資産の学習内容 【今回の学習項目】 棚卸資産の定義 原価の構成要素と測定技法 原価算定方式 棚卸資産の評価 費用認識 開示 2人は早めに昼ご飯を済ますと、空いているミーティングルームに移動することにした。 桜井は、コホンと咳払いをすると、ホッチキス止めをした資料を緊張で震える手で山口に渡した。山口は、「すみません。」と言いながら、資料を受け取る。 「ま、まず、一枚目にある表が棚卸資産(inventories)の基準、IAS第2号に定められている主な項目だよ。」 桜井は、少し緊張気味に言った。いつもは聞く側だったため、きちんと説明できるかまだ不安だ。しかし、山口はそんな桜井の緊張には気づかず、表を眺めている。 「IFRSの棚卸資産会計は、日本基準と比較しても大きな相違はそんなにないから、理解は難しくないと思うよ。」 「そうなんですか。『測定技法』とか『原価算定方式』とか、ちょっと難しそうな言葉があるんですけど・・・」 「確かに難しそうに聞こえるけど、簿記でもお馴染みの内容なんだよ。では、さっそく始めよう!」   棚卸資産の定義 原価の構成要素と測定技法 原価算定方式 棚卸資産の評価 費用認識 開示 「まずは、『棚卸資産の定義』からだね。」 山口が資料のページをめくると、定義についてまとめた表が載っていた。 棚卸資産の定義 通常の事業の過程において販売を目的として保有される資産 そのような販売を目的とする生産の過程にある資産 生産過程又はサービスの提供にあたって消費される原材料又は貯蔵品   ◆棚卸資産の定義は日本基準と大きな相違はない 「えーと、棚卸資産には3つの項目が含まれるんだ。販売するための商品や財貨、企業が製造した製品とその仕掛品、そして、生産過程で使用される予定の原材料や貯蔵品だね。」 「なるほど。日本基準の棚卸資産とそんなに大きな違いはないんですね。」 桜井の説明を受けて、山口は安堵した表情で言った。 「そうなんだ。例えば、製品や仕掛品の他にも、日本基準では事務用消耗品も棚卸資産に含まれるとあるんだけど、IFRSでも定義の3つ目にある、『生産過程又はサービスの提供にあたって消費される原材料又は貯蔵品』に該当すれば、棚卸資産として計上することになるんだよ。」 「へぇ。」と山口は頷いた。 少し調子づいた桜井は、次の項目の説明に移ることにした。   原価の構成要素と測定技法 「では、続いて棚卸資産の原価を構成する要素と測定技法について進もう。」 2人は再び資料に目を戻した。 棚卸資産の定義 原価算定方式 棚卸資産の評価 費用認識 開示 ◆原価の構成要素は主に3つ 「原価の構成要素ということは、棚卸資産の原価に含めるものがいろいろあるんですね。」 「そうなんだ。棚卸資産の原価(cost)には、購入原価、加工費、そして、その他のコストが含まれるんだよ。」 そう言うと、桜井は先ほど見た表の下に書いている式を指した。 【棚卸資産原価の構成要素】 山口は、ぼんやりと式を眺めている。 「では、それぞれの項目を簡単に確認してこう。」 「はい、分かりました。」 ◆購入原価には、購入代価の他に税金、運送費、荷役費等が含まれる 「購入原価は言葉のイメージで想像つくと思うけど、購入代価、輸入関税その他の税金、棚卸資産の取得に直接起因する運送費や荷役費などから構成されるんだ。」 「『構成要素』の構成要素ですね・・・」 山口はボソリと呟いた。その言葉に桜井も苦笑交じりで頷く。 「ややこしいけど、そういうことだね。」 ◆値引き、割戻し及びその他の類似項目は購入原価から控除 「そうそう、仕入値引き、仕入れ割戻し、その他の類似項目があった場合は、購入原価から控除することになるんだ。だから、仕入割引も購入原価から引くことになるんだよ。」 「え、そうなんですか?確か日本基準だと、仕入割引は営業外収益でしたよね。」 山口が資料から顔を上げて確認した。 「そうだよ。よく知っているね。」 「はい。よく簿記の問題で引っかかっていましたから、馴染みの論点です。」 去年から簿記を勉強し始めたばかりの山口は、頭を掻きながら更に言った。 「僕はIFRSの処理の方が分かりやすくて好きです。」 桜井は山口の正直な感想にクスリと笑い、2つ目の構成要素に移った。 ◆加工費には、製造直接費と製造間接費の規則的な配賦額が含まれる 「続いて加工費だけど、これには生産単位に直接関係するコストである製造直接費と製造間接費の規則的な配賦額のことだよ。ウチの会社でもお馴染みの項目だね。」 「そうですね。」と、山口は頷いた。 ◆変動製造間接費は生産設備の実際使用量、固定製造間接費は正常生産能力に基づき配賦 「製造間接費の配賦については、変動か固定かで違いがあるんだ。」 「え?どんな違いですか?」 「まず、変動製造間接費は、生産設備の実際使用量に基づいて、各生産単位に配賦されるんだ。」 「へぇ。では、固定製造間接費は何に基づいて配賦することになるんでしょうか?」 「基本的には、固定製造間接費は生産設備の正常生産能力に基づいて配賦することになるんだ。」 「なるほど。変動か固定かで製造間接費の配賦基準が違うんですね。」 山口は資料の余白にメモを取った。 ◆配賦しなかった固定製造間接費は基本的には発生した期の費用として処理 そこで、山口はメモの手を止め、桜井を見上げた。 「あれ?正常生産能力と実際操業度が違うと、配賦差異が生じることになりますよね。その時の配賦差異はどうするんですか?」 「配賦しなかった固定製造間接費は、発生した期の費用として処理することになるんだ。だから、例えば生産水準が低下した場合や遊休設備が存在した場合でも、配賦しなかった不利差異は発生した期の費用として計上するんだよ。」 「そうなんですね。日本基準だと原価差異が多額の場合は、売上原価と棚卸資産に配賦することになりますよね。差異が多額の場合は、日本基準との違いがあるんですね。」 「不利差異の場合はそうだね。」 「有利差異の場合は日本基準と違わないんですか?」 「まぎらわしいけど、そうなんだ。IFRSでも生産水準が異常に高い期間は、棚卸資産が原価よりも高く測定されないように、配賦額を減少させなければならないんだ。つまり、有利差異が、売上原価と棚卸資産の両方に配賦されることになるんだよ。」 「なるほど。そうなんですね。」 ◆異常な仕損に係る製造コストは原価には含まれない 「それから、IFRSでも異常な仕損に係る製造コストは棚卸資産の原価には含めず、発生した期の費用として処理することになるんだ。」 「わかりました。」 桜井の説明に山口は頷いた。 ◆その他コストとは、棚卸資産が現在の場所及び状態に至るまでに発生したコスト 「3つ目にある『その他コスト』は、棚卸資産が現在の場所及び状態に至るまでに発生したコストのこというんだ。」 「付随費用みたいな感じですね。」 「そうだね。基準では、特定の顧客のために発生する非製造原価又は製品設計のコストが例に挙げられているよ。」 「へぇ。」 ◆その他コストには「借入コスト」も含まれる 「そうそう。もし棚卸資産が『適格資産』に該当する場合は、棚卸資産の取得に係る借入コストも原価に含まれることになるんだ。」 「あのー、すみません。『借入コスト』って何ですか?」 山口の質問を受けて、桜井はまごついた。 「えっ。う、うーんと・・・」 桜井は、内心焦りながら言い訳を考えた。実は、そこまで勉強がまだ追いついていないのだ。 「ひとまず、一定の資産について、その資産を取得するために調達した資金に係る利息を取得原価に含めるって規定がIFRSにはあるってことが分かっておけば、大丈夫だよ。今から『借入コスト』のことを説明すると話が脱線しちゃうから、今度説明するね。」 笑って誤魔化す桜井には気づかず、山口は素直に頷いた。 「はぁ。分かりました。」 ◆棚卸資産の測定技法 桜井は、コホンと咳をして気を取り直すと、説明を再開することにした。 「続いては、測定技法についてだね。」 「はぁ。」 「測定技法って言われると難しそうに聞こえるけど、原価をどうやって測定するのかという方法だよ。ここでは標準原価法と売価還元法についての話なんだ。」 「標準原価法や売価還元法ですか!それなら分かります!」 山口も知っている言葉を聞いて安心したようだ。 ◆標準原価法及び売価還元法は適用結果が原価と近似する場合のみ使える 「IFRSでは、標準原価法(standard cost method)や売価還元法(retail method)で棚卸資産を測定する場合は、その適用結果が原価と近似する場合のみ、簡便法として使用できるんだ。」 「原価というと、さっき勉強した、購入原価と加工費とその他コストの合計で求める方法ですね。」 山口の確認に、「そうだよ。」と桜井は答えた。 「では、IFRSの下で標準原価法や売価還元法を採用する時は、その結果が原価に近い結果になっているかを確認しなくてはいけないですね。」 「うん。その検証をするプロセスが必要になるだろうね。」 原価算定方式 棚卸資産の定義 原価の構成要素と測定技法 棚卸資産の評価 費用認識 開示 山口は再び目次のページに戻って、次の項目のタイトルを確認した。 「次は、原価算定方式ですね。これも何か難しそうに聞こえるんですけど・・・」 桜井は思わず笑った。 「大丈夫だよ。個別法とか、先入先出法とか、聞いたことあるでしょ?」 「あ、そのことですか。はい。分かります。」 山口は再び安心した表情を浮かべて答えた。 ◆ IFRSで認められる原価算定方式は、個別法、先入先出法、加重平均法のみ 「まず、代替性がなく特定のプロジェクトのために製造され、区分されている財又はサービスでは個別法(specific identification)を用いるんだ。」 「はい。」と、山口は相槌を打った。 「そして、前述の財又はサービス以外の棚卸資産の原価は、先入先出法(first-in, first-out (FIFO))又は加重平均法(weighted average)を用いて割り振らなければならないんだ。」 「へぇ。後入先出法はダメなんですね。」 「うん。そこは日本基準と同じだね。それから最終仕入原価法もIFRSでは認められた原価算定方式じゃないんだ。」 「そうなんですか?確か、ウチの会社も貯蔵品は最終仕入原価法を使っていますよね・・・?」 山口は、記憶に自信がないのか弱々しく確認した。 「うん。だからIFRS導入の際には、他の原価算定方式に変更する必要が出てくると思うんだ。」 ◆性質及び使用方法が類似する棚卸資産の原価算定方式は統一させる 山口がメモを取り終えると、桜井は再び説明を続けた。 「それから、企業にとって性質及び使用方法が類似する全ての棚卸資産については、同じ原価算定方式を使用しなければならないんだ。」 「すみません。それって当たり前のことに聞こえるんですが・・・」 山口が首を傾げて尋ねた。 「そうだね。これはね、性質及び使用方法が類似する棚卸資産を、日本では先入先出法で算定して、米国では加重平均法を用いて算定するといったことはできないということを指しているんだ。」 「なるほど。性質及び使用方法が類似の棚卸資産にもかかわらず、それぞれの国で違った算定方式が採られるのはおかしいですね。分かりました。」 山口は納得して頷いた。   棚卸資産の評価と費用認識 棚卸資産の定義 原価の構成要素と測定技法 原価算定方式 費用認識 開示 「では、次のページに移るよ。」 「えーと、次は『棚卸資産の評価』ですね。」 山口は資料を捲って、目次を読み上げた。 ◆棚卸資産は『原価』と『正味実現可能価額』とのいずれか低い価額で評価 「うん。まずは棚卸資産の評価についてだけど、ここは日本基準と大きな違いはないよ。」 それを聞いた山口はほっとした表情を浮かべた。 「棚卸資産は『原価』と『正味実現可能価額(net realisable value) 』とのいずれか低い価額で測定しなければならないんだ。この方法は、資産はそれを販売又は利用することで実現すると見込まれる額を超えて評価すべきではない、という考えと整合しているんだよ。」 「へぇ。『原価』は先ほど桜井さんが教えてくれたものですね。えーと、購入原価と加工費、その他コストの合計ですよね。」 山口は資料を遡って、構成要素を再び確認した。 「そうだね。」と桜井は頷く。 「『正味実現可能価額』の方は聞いたことはあるんですけど・・・。すみません。」 山口が不安そうな顔を見せて言った。 ◆『正味実現可能価額』の構成要素 「え、えーと、『正味実現可能価額』とは―」 定義がぱっと思い浮かばず、桜井は慌てて資料から定義を探し出した。 「しょ、『正味実現可能価額』とは、通常の事業の過程における見積売価から、完成までに要する原価の見積額及び販売に要するコストの見積額を控除した額のことだよ。」 「では、『原価の構成要素』のように式で表すと、こんなふうになるんですか?」 そう言うと、山口は資料の余白に式を書き始めた。 【正味実現可能価額の構成要素】 「その通りだよ。」 「確か、日本基準でも棚卸資産の正味売却価額が取得原価よりも下回っていたら、正味売却価額を貸借対照表価額とするんでしたよね。なるほど、日本基準とIFRSで大きな違いはないですね。」 山口は桜井を見ながら確認した。 「そうだね。もちろん、日本基準と違う部分もあるんだよ。」 「え、そうなんですか?」 桜井は少し得意気に言った。 ◆正味実現可能価額が回復した場合、棚卸資産の評価減の戻入れを行う 「まず、日本基準だと評価替方法には、洗替法と切放法があるよね?」 「はい。継続適用を条件として、どちらかを選択適用することができるんですよね。」 この話がどうIFRSにつながっていくか分からない山口は、首を傾げて聞いていた。 「IFRSでは、『正味実現可能価額』がその後増加したという明確な証拠がある場合には、当初の評価減の金額を限度に戻入れを行うことになるんだ。そして、棚卸資産を『原価』と、改定した『正味実現可能価額』とのいずれか低い金額で評価することになるんだよ。」 桜井はホワイトボードに図を描きながら説明した。 「IFRSでは、『正味実現可能価額』まで評価減した後も、新しい『正味実現可能価額』と『原価』とを比較する必要があるんですね。」 「そうなんだ。日本基準では切放法を選択適用していた場合、評価減の戻入れはしないよね。」 そこで、山口はポンと手を打って言った。 「なるほど。切放法を採用していた場合、日本基準とIFRSとの間で違いが出てくるんですね。」   棚卸資産の費用認識 棚卸資産の定義 原価の構成要素と測定技法 原価算定方式 棚卸資産の評価 開示 「棚卸資産の費用認識については、わざわざ説明するまでもないよね。」 桜井は頭を掻きながら呟いた。 「でも、確認のために簡単に説明していただけると助かります。」 生真面目な性格の山口は一通り確認したいようだったので、桜井も頷いて説明することにした。 ◆棚卸資産は関連する収益に対応する期間に費用認識 「まず、棚卸資産の販売時に、その棚卸資産の帳簿価額を関連する収益に対応する期間に費用として認識することになるんだ。ここは大丈夫だね?」 「はい。収益と対応させて費用計上するんですね。」 ◆棚卸資産に係る評価減や損失も発生した期間に費用認識 「それから、正味実現可能価額への評価減の額や棚卸資産に係る全ての損失は、発生した期間の費用とするんだ。」 山口は黙って頷いた。 ◆評価減の戻入れは棚卸資産の費用の減額として認識 「そして、再調達価額が上昇したことにより戻入れを行った場合は、当該戻入額を、戻入れを行った期間に費用として認識した棚卸資産の金額の減額として認識するんだ。」 「なるほど。戻入れについては、さっき教えてもらったところですね。戻入額は費用のマイナスになるんですね。」 「そうだよ。この3点が分かっていればひとまず問題ないよ。」 「分かりました。」と、山口も納得した様子で頷いた。   開示 棚卸資産の定義 原価の構成要素と測定技法 原価算定方式 棚卸資産の評価 費用認識 「後は開示だけですね。」 「そうだね。棚卸資産に関する主な開示はざっとこんなものだよ。」 そう言うと、桜井は資料の最後のページにまとめた表を山口に見せた。 【棚卸資産 開示事項一覧】 〇 棚卸資産の測定にあたって採用した会計方針(原価算定方式も含む) 〇 棚卸資産の帳簿価額の合計金額及びその企業に適した分類ごとの帳簿価額 〇 売却コスト控除後の公正価値で計上した棚卸資産 〇  〇 期中に認識した棚卸資産の評価減の金額 〇  〇 負債の担保として差し入れた棚卸資産の帳簿価額 「あれ、この黄色いマーカーが塗ってある項目はどういう意味ですか?」 山口は、3つの項目を指差しながら桜井に尋ねた。 「ああ。このマーカーにある、 〇  〇  の2つは、日本基準では開示されない項目なんだ。」 「なるほど、だから分かりやすくするためにマーカーを引いていたんですね。」 山口はポンと手を打って言った。 「うん。こうしておくと、IFRS導入後に追加される開示項目が分かりやすいからね。」 「IFRSが開示項目が多いと聞いていましたけど、棚卸資産に関しては追加の開示項目はこの2つで済むんですね。」 山口の言葉に桜井は頷いた。 「これで、棚卸資産入門の授業は終わりだよ。」 桜井はにっこり笑って山口を見た。初めてのIFRSの授業をやり終えて、ようやく心からの笑顔を見せる。 「だいたい理解できたと思います。わざわざ時間を作ってもらってすみませんでした。」 山口はぺこりと頭を下げた。 「うーん、こういう時は『ありがとう』の方が嬉しいな。」 桜井は苦笑して言った。 「あ、すみませんでした。ありがとうございました。」 「・・・・・・」 どうしたら山口に「すみません」を言わせないようにすることができるのか、未だに分からない桜井であった。   棚卸資産の定義 通常の事業の過程において販売を目的として保有される資産 そのような販売を目的とする生産の過程にある資産 生産過程又はサービスの提供にあたって消費される原材料又は貯蔵品 【棚卸資産原価(cost)の構成要素】 購入原価 購入代価、輸入関税その他の税金、運送費及び荷役費等が含まれる 値引き・割戻し等は購入原価から控除 ※仕入割引も購入原価から控除する! 加工費 製造直接費及び製造間接費の規則的な配賦額が含まれる 変動製造間接費の配賦⇒使用設備の実際使用量 固定製造間接費の配賦⇒使用設備の正常生産能力 配賦差異は発生した期に費用処理(生産水準が異常に高い場合を除く) ※異常な仕損に係る製造コストは原価に含めない! その他コスト 棚卸資産が現在の場所及び状態に至るまでに発生したコストが含まれる 棚卸資産が適格資産に該当する場合、借入コストを原価に含める (注) 原価の測定技法について 標準原価法(standard cost method)及び売価還元法(retail method)は、その適用結果が上記の原価と近似する場合のみ、簡便法として使用可能。   ▷ 原価算定方式 個別法(specific identification)、先入先出法(FIFO)、加重平均法(weighted average)により評価 性質及び用途が類似する全ての棚卸資産→同じ原価算定方式を使用 後入先出法は認められない ▷ 棚卸資産の評価 原価又は正味実現可能価額とのいずれか低い額で測定 (※) 正味実現可能価額(net realizable value) =通常の事業の過程における見積売価-完成までに要する原価の見積額-販売に要する見積額 ▷ 費用認識 棚卸資産販売時に関連する収益を認識する期間の費用として計上 正味実現可能価額への評価減及び棚卸資産に係る全ての損失は発生した期間に費用計上 正味実現可能価額の上昇による評価減の戻入れは、戻入れを行った期間に、費用として認識した棚卸資産の金額の減額として認識   【棚卸資産 開示事項一覧】 〇 棚卸資産の測定にあたって採用した会計方針(原価算定方式も含む) 〇 棚卸資産の帳簿価額の合計金額及びその企業に適した分類ごとの帳簿価額 〇 売却コスト控除後の公正価値で計上した棚卸資産 〇 期中に費用として認識した棚卸資産の額 〇 期中に認識した棚卸資産の評価減の金額 〇 棚卸資産の評価減の戻入額とその原因となった状況及び事象 〇 負債の担保として差し入れた棚卸資産の帳簿価額   (了)

#No. 211(掲載号)
#関根 智美
2017/03/23
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