山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第30回】 「取引別にみた収益の認識基準②」 税理士 山本 守之 4 有価証券の譲渡による収益 (収益計上時期の原則) 平成12年度の法人税法改正前は、有価証券の譲渡損益の計上時期は有価証券の引渡日の益金又は損金の額に算入することとされていました。しかし、有価証券の価格変動に伴って生ずる利益を享受する権利及び損失を負担する義務は売買等の約定をもって移転すると考えられるため、売却等の約定が済んでいる有価証券について生じた含み損益を自己の損益とするのは適当ではないと考えられること、また、企業会計においても、約定時に有価証券の譲渡損益を計上すべきものとされたこと等から、平成12年度改正により、有価証券の譲渡損益は、売却等の約定日の属する事業年度に計上すべきこととされました。 なお、売買目的外有価証券の譲渡損益の計上時期については、平成14年3月31日までの間に開始する事業年度について、引渡日の属する事業年度とすることを認める経過措置が講じられています(平12改正法附則3②)。 5 利子、配当、使用料に係る収益 (1) 貸付金の利子等 ① 一般的な取扱い 貸付金、預金又は有価証券から生ずる利子(以下「貸付金等の利子」という)は、期間の経過によって収益の計上をするのが原則です。 いわゆる発生主義を認識基準とするというものです。 ただ、この原則は、金融・保険業のように利子収入を主たる事業収入とする法人はともかく、一般事業法人まで一律に適用し例外を認めないというのは必ずしも妥当とはいえません。 そこで、金融・保険業を営む法人以外の法人における貸付金等の利子で利払期が1年以内の一定期間ごとに到来するものについては、厳重な期間対応計算ではなく、継続して利払期の到来するごとに収益計上することを認めているのです(法基通2-1-24)。 もともと、金融及び保険業を営む法人は、利子が主たる事業収入ですから、利払期基準を適用することは適当ではありませんが、営業外の収益として利子を収受する一般事業法人にまで厳密な期間計算(期間の経過に応じて収益計上する)を要求することは、必ずしも妥当ではないという考え方から設けられた取扱いなのです。 したがって、次に掲げる法人は、金融・保険業に該当せず、一般の事業法人として取り扱うべきです。 (イ) 証券業を営む法人のうち、主として他の証券業者に対して有価証券の売買に係る注文の取り次ぎ(いわゆるツナギ取引)を行っているもの (ロ) 主として商品取引業を営んでいる法人 (ハ) 主として保険代理業を営んでいる法人 また、『法人税関係質疑応答事例集』(国税庁課税部審理室・法人課税課)では、 として、保険代理業に利払期基準を適用することを容認しています。 なお、借入金とその運用資産としての貸付金、預金、貯金又は有価証券(信託財産に組み込まれたこれらの資産を含む)とがヒモ付関係になっているときは、借入金に対する支払利子と運用資産に対する受取利子等を対応させるという「費用収益対応の原則」を適用しないとすれば、不適正な所得計算がなされてしまいます。 そのため、借入金と運用資産とがヒモ付関係にあるときは、利払期計上を認めることなく、原則どおり期間計算を行うこととしています。 資産の販売などに伴い発生する売上債権(受取手形を含む)又はその他の金銭債権について、その現在価値と当該債権に含まれる金利要素とを区分経理している場合の当該金利要素に相当する部分の金額は、当該債権の発生の基となる資産の販売等に係る売上の額等に含まれます(法基通2―1―24(注2))。 ② 相当期間未収が継続した場合等の特例 貸付金の利子の額は、発生基準又は利払期基準によって益金の額に算入することになっています。しかし、次の場合には、債務者の状況等からみて現実に利子を回収することがきわめて困難であるため、未収利子の計上を要求することは実状に即しません。そこで、実際に利子を回収するまで収益計上を見合わせることができます(法基通2―1―25)。 このうち最も多く適用されるのは(イ)であり、焦付き利子に対する実体的な取扱いといえます。 ここでいう「最近発生利子」というのは、期末前6ヶ月以内に支払期日が到来する利子ですから、1年決算法人では、当期後半に支払期日の到来する利子と考えてもよいでしょう。したがって、未収計上を省略できるための要件をまとめてみると、次のようになります。 つまり、債務者が債務超過の状態にあることその他相当の理由があることによって、当期後半に支払期日が到来する利子が全額未収で、それ以前に支払期日の到来する利子について当期後半に全く支払を受けていない場合をいうのです。 実務上トラブルが多いのは、「債務超過その他相当の理由」です。例えば、「債務超過」についても、債務者の財務諸表上の数値によるのか、それとも、土地等の含み益を加味したところで判断するべきかという問題です。 土地等の含み益を加味したいわゆる清算価値によって債務超過か否かを判断すべきだとすれば、債務者が子会社等であればともかく、一般の場合には、債権者サイドで正確に測定することはできないでしょう。 しかし、「債務者の債務超過」は、利子収入が6ヶ月以上にわたって焦げ付いた状態になった動機のひとつを示したものに過ぎず、債務超過自体が未収利子計上見合わせの直接的事由となっているわけではありません。 すなわち、利子が6ヶ月以上にわたって焦げ付くのは、よくよくの事情があるのでしょうが、その事実に恣意的なものはないか、客観的にみてやむを得ない事情があるのかを総合的に判断する要素のひとつとして「債務者の債務超過」が挙げられているのです。 したがって、外形的に認識できる財務諸表上の数値によって債務超過を判定して差し支えありません。 ③ 利子制限法の制限超過利子 法人が利子制限法に定める制限利子を超える利子によって金銭の貸付を行っている場合には、その利子の額の収益計上については、次のような取扱いを置いています(法基通2―1-26)。 このような取扱いは、最高裁判例(昭和46年11月9日第三小法廷、昭和48年6月21日第一小法廷)の趣旨を踏まえて税務執行を行う必要から定めたもので、同判決においては、現実に支払を受けた利子は別として、未収部分については、あくまで制限利率で計算すべきであり、未収利子を計算する基礎となる貸付金の元本の額は、過去に収入した利子のうち制限利率超過分を元本に充当したものとして再計算するとしています。 (2) 受取配当等 ① 原則 会社法では、株主への利益の配当のみならず、資本金の減少に伴い生じた剰余金を原資とした金銭等の資産の交付も剰余金の配当とされるため、通常の利益の配当に限らず資本の払戻しに伴う分配や、分割型分割により分割法人が株主に資産等を交付する行為も余剰金の配当となります。余剰金の配当には株主総会の決議を要しますが、余剰金の分配可能額を有している場合には、剰余金の配当はいつでも可能です。 また、株式の消却は、一度自己株式として取得した株式を消却することとなり、旧商法に規定されていた株式の強制消却は廃止となりました。 税法では、配当を「剰余金の配当(株式等に係るものに限るとし、資本剰余金の額の減少に伴うもの及び分割型分割によるものを除く。)若しくは利益の配当(分割型分割によるものを除く。)又は剰余金の分配(出資に係るものに限る。)の額」(法23①一)とされ、資本剰余金の減少に伴う分配は本来の配当から除くこととなっています。 ② みなし配当 みなし配当は、発行法人が次に掲げる事由により金銭その他の資産の交付を受けた場合において、その金銭の額及び金銭以外の資産の価額(適格現物分配に係る資産にあっては、その法人のその交付の直前のその資産の帳簿価額に相当する金額)の合計額がその法人の資本金等の額のうちその交付の起因となったその法人の株式又は出資に対応する部分の金額を超える時は、その超える部分の金額がみなし配当となります(法24①)。 ① 合併(適格合併を除く) ② 分割型分割(適格分割型分割を除く) ③ 資本の払戻し ④ 自己の株式又は出資の取得 ⑤ 出資の消却 ⑥ 組織変更 (3) 賃貸借契約に基づく使用料 ① 一般的な取扱い 賃貸借契約に基づいて支払を受ける家賃、地代その他の使用料の額については、前受けに係る分を除いて、その契約又は習慣によってその支払を受けるべき日、つまり、支払期日に収益の計上をするのが原則です(法基通2-1-29)。 ところで、貸付金利子等については期間の経過によって収益計上をし、家賃、地代等については支払期日にこれを行うのはどのような理由かと疑問視する向きもあります。 しかし、貸付金等については、そのサービスが常時均質なものとして提供されているのに反し、貸家、貸地等の賃貸借契約においては、資産の状況その他の事情によって必ずしも均質のサービスを保証できないという差異があります。 しかも、賃貸借契約は貸主の暇疵担保責任を踏まえながら結ばれるもので、取引慣行上必ずしも日割計算で収益が確定していくとは考えられないことから、このような取扱いになったものと思われます。 (注) 所得税における不動産所得の取扱いも同様です。 ただ、この取扱いは、日本では通常1月ごとに賃料の授受が行われることを踏まえたものですから、同族会社等で非常に長い期間を定めて適当に収益計上するということがあれば、税務当局が介入することになるでしょう。 ② 紛争がある場合 賃貸借契約について、当事者間に紛争がある場合の家賃、地代その他の使用料の収益計上時期が問題となります。 この点は契約の存在自体についての紛争のある場合と、使用料の増減に関する紛争のある場合とでは、その取扱いが異なります。 まず、契約の存否をめぐって紛争がある場合には、使用料等を収入すること自体が不安定な状態にあるということですから、紛争が解決して具体的にその支払を受けることができるようになるまで、その収益計上を見合わせることができるものとされています(法基通2-1-29ただし書)。 この取扱いは、相手方が使用料を供託しているか否かにかかわらず適用されます。 したがって、契約の存在をめぐって紛争がある場合に、未収金の計上をしない処理は是認されます。 次に、使用料の増減をめぐる紛争の場合は、使用料等を収入することが未確定であるとはいえず、単に収益すべき額について未確定な要素があるに過ぎません。 そこで、使用料の増減に関する紛争に基因して使用料が未収になっている場合には、契約内容や供託金額等から勘案して収入すべき金額を見積もり、その収益計上をしなければなりません。 (了)
〈平成29年1月1日施行〉 加算税見直しの再確認と留意点 【前編】 税理士 佐藤 善恵 〈1〉 更正予知に係る加算税減免措置の見直し (1) 改正前の制度概観 加算税は、過少申告加算税(通法65)、無申告加算税(通法66)、不納付加算税(通法67)及び重加算税(通法68)の4種類である。 このうち、更正を予知しない加算税の減免規定は、重加算税を除く3つの加算税について置かれている。 〈参考〉 〈要件の図解(通法65⑤)〉 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 表内(下線部分)のとおり、いずれの条項も、①その国税についての調査があったことにより、②その国税について更正(又は決定、あるいは納税告知)があるべきことを予知(※)してされたものでない、ということが要件である。 なお、今回の改正で影響を受けたのは、過少申告加算税と無申告加算税の2つである。 (※) 本稿ではこれを「更正予知」という。 つまり、条文の文言に忠実に照らすと、要件判定の第一段階は、①調査が開始されたことであるから、調査開始がなければ②更正予知の前提を欠くこととになって、結果的に過少申告加算税は免除されるということになる。 また、改正前の条文に基づく加算税通達は「臨場のための日時の連絡を行った段階で修正申告書が提出された場合には、原則として『更正があるべきことを予知してされたもの』に該当しない」と定めているから、実務上は、事前通知前であれば原則として加算税が減免されることになる。 (2) 改正の趣旨と改正内容 改正前の取扱いは、上記(1)のとおり、調査の事前通知から臨場調査開始まで(上図★の期間)に修正申告等をすると加算税が減免されるのが原則的取扱いである。しかし、それを逆手にとり加算税の賦課が回避されている事例が顕著にあったために、当初申告のコンプライアンスを高める観点から、今回の改正が行われた。 具体的には、★の期間、つまり、調査の事前通知後は、調査開始前であっても、通常の加算税よりも一段階低い税率で課税されることとなった。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 (※) 税率の( )部分は、加算税が加重される部分(申告漏れが大きい部分等)に係る税率。 (3) 改正法施行後の留意点 加算税が改正前のように減免されるかどうか(上図の黄色部分)は、「調査の事前通知」前という形式で判断される。 ここでいう「調査」は「その申告に係る国税についての調査に係る第74条の9第1項第4号及び第5号(納税義務者等に対する調査の事前通知等)」、いわゆる法定通知のことであるから、単なる「お尋ね」や「行政指導」はこれに当たらない。 一方、①調査があったことにより、②更正予知をしたかどうかという二段階の要件における「調査」には、机上調査や署内調査も含む点に留意が必要である。 (了)
〔平成29年度税制改正大綱からみた〕 組織再編税制の改正内容と実務への影響 【後編】 公認会計士 佐藤 信祐 (2) 全部取得条項付種類株式、株式併合及び株式等売渡請求 現行法上は、現金交付型株式交換を行うと非適格株式交換として時価評価課税の対象になっていたことから、その代替的手法として、全部取得条項付種類株式、株式併合又は株式等売渡請求が利用されてきた。しかしながら、そもそも租税回避ではないかという批判があったことは事実である。 平成29年度税制改正では、全部取得条項付種類株式の端数処理、株式併合の端数処理及び株式等売渡請求による完全子法人化について、株式交換と同様に、組織再編税制の一環として位置づけ、次の措置を講じられた。 なお、前回解説したように、発行済株式の3分の2以上を支配している場合の現金交付型株式交換については、金銭等不交付要件に抵触しないこととされた。全部取得条項付種類株式、株式併合及び株式等売渡請求による完全子法人化についても同様の取扱いとなるため、非適格再編となることは稀であろう。 さらに、現行税法では、買収会社が連結納税制度を導入している場合には、全部取得条項付種類株式、株式併合又は株式等売渡請求を利用しても、連結納税グループへの加入に伴う時価評価課税は避けられなかったが、平成29年度税制改正により、時価評価課税を回避することができるようになったため、連結納税制度を導入するハードルは低くなったと思われる。 (3) 営業権の時価評価課税 平成29年度税制改正大綱では、 と書かれている(p71)。すなわち、時価評価を行う前の営業権や知的財産権の帳簿価額が0円であることが多いため、「帳簿価額が1,000万円未満の資産」として時価評価課税の対象から除外することができる。 本改正の影響は、株式交換よりも、連結納税の開始又は連結納税グループへの加入に伴う資産の時価評価制度への影響が大きいと思われる。例えば、買収会社が連結納税制度を導入している場合に、株式購入により100%子会社化を行うことは少なくないが、このような場合における時価評価課税の問題は、実務でも問題になっていたからである。 平成29年度税制改正後は、時価評価課税の対象となる資産が限定されることから、連結納税制度を導入するハードルはかなり低くなると思われる。結果として、連結納税制度を導入する企業が増える可能性はあると考えられる。 4 その他の改正事項 上記以外にも、以下の改正が予定されている。 実際には政省令を確認してみないと分からないが、実務上の影響が大きいと予想されるのは、「支配関係継続要件の見直し」である。 すなわち、平成29年度税制改正大綱では、 と記載されている(p71)。 この結果、分割型分割を行った後に、分割法人株式を譲渡したとしても、支配株主と分割承継法人の支配関係が継続していれば、適格分割型分割に該当することができることになる。 現行税法では、共同事業を営むための適格分割型分割に該当させる必要があるが、事業関連性要件などの要件を満たすことができないため、実際には、適格分割型分割に該当させることを断念した事案も少なくない。本改正により、適格分割型分割に該当する事案がかなり増えることから、M&Aの実務においても活発に利用されることが予想される。 なお、企業再生の実務において行われるとすれば、既存株主を残したうえで分割型分割を行う場合であろうか。しかし、bad事業を清算する必要があることから、分割法人にbad事業が残ることになる。そして、good事業が継続する必要があることから、分割承継法人にgood事業が移転することになる。この場合に、既存株主及びその親族等が分割承継法人を支配し続ける必要があることから、かなり限られた場合についてのみ適用される手法であるということが言える。 5 総括 このように、平成29年度税制改正大綱だけではすべて読み切れないが、読み取れるだけでもかなりの大改正であることが分かる。 本稿が、皆様のお役に立つことができれば幸いである。 (連載了)
高額特定資産を取得した場合の 納税義務の免除の特例及び簡易課税制度の特例 【第3回】 (最終回) 「自己建設高額特定資産を建設等した場合」 アースタックス税理士法人 税理士 島添 浩 ① 自己建設高額特定資産を建築等した場合の納税義務の免除の特例 事業者(免税事業者を除く)が、簡易課税の適用を受けない課税期間中に自己建設高額特定資産(注1)の仕入れ等を行った場合には、自己建設高額特定資産の仕入れを行った場合に該当することとなった日(注2)の属する課税期間の翌課税期間からの建設等が完了した日の属する課税期間の初日以後3年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間における課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについては、納税義務は免除されない。 (注1) 自己建設高額特定資産とは、他の者との契約に基づき、又はその事業者の棚卸資産若しくは調整対象固定資産として、自ら建設等をした高額特定資産をいう。 (注2) 自己建設高額特定資産の建設等に要した一定の費用の額(原材料及び経費に係るもので消費税等を除く)が1,000万円以上となった日。 (注3) 上記の課税資産の譲渡等からは、特定資産の譲渡等を除く。 ② 自己建設高額特定資産を建築等した場合の簡易課税制度選択届出書の提出の制限 簡易課税の適用を受けようとする事業者が、自己建設高額特定資産を建築等した場合には、その建設等が完了した日の属する課税期間の初日からその初日以後3年を経過する日の属する課税期間の初日の前日までの期間は、簡易課税制度選択届出書を提出することができない。 ③ 留意事項 (イ) 適用開始時期 平成28年4月1日以後に自己建設高額特定資産を建築等した場合に適用される。 (ロ) 経過措置 平成27年12月31日までに締結した契約に基づき、平成28年4月1日以後に自己建設高額特定資産を建築等した場合には、上記①及び②の規定は適用されない。 (ハ) 高額特定資産を売却等した場合の取扱い 上記①及び②の規定は、事業者免税点制度及び簡易課税制度の適用を受けない課税期間中に自己建設高額特定資産を建築等した場合に適用されるのであるから、その後に自己建設高額特定資産を廃棄、売却等により処分したとしても、適用されることに留意する。 (ニ) 自己建設資産が調整対象固定資産である場合の高額特定資産の判定 高額特定資産に該当するかどうかは、自己建設資産が調整対象固定資産(※)である場合には、その資産ごとに、その建設等に要した仕入れ等に係る支払対価の額の合計額を基礎として判定することに留意する。 (※) 調整対象固定資産とは、棚卸資産以外の資産で、建物、建物附属設備、構築物、機械及び装置、車両運搬具、工具器具備品その他の資産で、一の取引単位の価額(税抜)が100万円以上のものをいう。 (ホ) 自己建設資産が棚卸資産である場合の高額特定資産の判定 棚卸資産の原材料として仕入れるものは、調整対象固定資産に該当しないのであるから、当該原材料を自ら建設等する棚卸資産の原材料として使用した場合には、その原材料の仕入れに係る支払対価の額についても、当該棚卸資産の建設等に要した仕入れ等に係る支払対価の額の合計額に含まれることに留意する。 (へ) 保有する棚卸資産を自己建設資産の原材料として使用した場合 自己が保有する建設資材等の棚卸資産を自己建設資産の原材料として使用した場合には、その棚卸資産の仕入れに係る支払対価の額は、当該自己建設資産の建設等に要した仕入れ等に係る支払対価の額に含まれることに留意する。 -具体例- 平成28年度の税制改正により、自己建設高額特定資産を建設した場合には、その費用の累計額が1,000万円以上となった課税期間の翌課税期間からその資産の建設等が完了した日の属する課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間までは「課税事業者、かつ、原則課税」となる。なお、この期間内で資産を売却しても継続して適用される。 ※ 建設に要した費用の累計が1,000万円以上となった課税期間の翌課税期間からその資産の建設等が完了した日の属する課税期間の初日から3年を経過する日の属する課税期間までの期間 (連載了)
マイナンバーの会社実務 Q&A 【第25回】 (最終回) 「所得税の確定申告書へのマイナンバーの記載」 税理士・社会保険労務士 上前 剛 〈Q〉 所得税の確定申告書へのマイナンバーの記載について教えてください。 〈A〉 第一表には、提出者のマイナンバーを記載する。 【図表1】 確定申告書Aの第一表 【図表2】 確定申告書Bの第一表 第二表には、以下の者のマイナンバーを記載する。 【図表3】 確定申告書Aの第二表 【図表4】 確定申告書Bの第二表 確定申告書を提出する際、本人確認書類の提示又は写しの添付が必要である。ただし、e-TAXで送信する場合、本人確認書類の提示又は写しの添付は不要である。本人確認書類の写しとは、次の書類をいう。 【図表5】 添付書類台紙 (連載了)
「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例45(法人税)】 税理士 齋藤 和助 《基礎知識》 ◆エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の特別償却(措法42の5) 青色申告法人が新品のエネルギー環境負荷低減推進設備等の取得等をして、その取得等をした日から1年以内に国内において事業の用に供した場合には、その事業の用に供した事業年度において、特別償却(取得価額の30%)が認められる。また、平成24年7月1日から平成27年3月31日までの期間内に取得等をした太陽光発電設備については、取得価額の全額を償却(即時償却)できる。 ◆エネルギー環境負荷低減推進設備等を取得した場合の法人税額の特別控除(措法42の5) 青色申告法人のうち、中小企業者等が、新品のエネルギー環境負荷低減推進設備等の取得等をして、その取得等をした日から1年以内に国内において事業の用に供した場合において、特別償却の適用を受けないときは、一定の金額(基準取得価額の7%。ただし法人税額の20%相当額を限度とする)を法人税額から控除することができる。 ◆中小企業者等(措法42の4) 資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人(ただし、常時使用する従業員の数が1,000人を超える法人及び同一の大規模法人に発行済株式又は出資の総数又は総額の2分の1以上を所有されている法人及び2以上の大規模法人に発行済株式又は出資の総数又は総額の3分の2以上を所有されている法人を除く)又は、資本又は出資を有しない法人のうち、常時使用する従業員の数が1,000人以下の法人をいう。 (了)
金融・投資商品の税務Q&A 【Q25】 「外国法人発行の株式の配当に外国源泉税が課される場合の 外国税額控除の適用」 PwC税理士法人 金融部 パートナー 税理士 箱田 晶子 ●○ 検 討 ○● 1 配当の課税方法による外国税額控除の適用の有無 所得税法上、居住者たる個人が、国外において発行された上場株式の配当で国外において支払われるものを、国内の支払の取扱者を通じて支払を受ける場合は、配当に対しては、20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)の税率による源泉徴収が日本で行われます(水際源泉徴収)。 日本の源泉徴収の対象となる金額は、配当に外国所得税が課されている上場株式の場合にはその外国所得税を控除した後の配当金額とされます。 個人投資家は、受け取った配当について、以下のいずれかの処理が可能です。 ① 申告不要制度 源泉徴収のみで課税関係を終了することができます。 この場合、配当について課された外国所得税について外国税額控除の適用をすることはできません。 ② 申告分離課税 配当については、上場株式等に係る配当所得に含まれ、上場株式等に係る配当所得の合計額について申告分離課税を選択することができます。申告分離課税を選択した場合、上場株式等に係る配当所得の金額に対し20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、住民税5%)の税率が適用されます。 個人投資家が申告分離課税を選択する場合には、配当について課されている外国所得税は、外国税額控除の対象とすることができます。 ③ 総合課税 上場株式等に係る配当所得の合計額について、申告分離課税に代えて、総合課税を選択することができます。総合課税を選択した場合、上場株式等に係る配当所得の金額に対し累進課税が適用されます。この場合、配当について課されている外国所得税は、外国税額控除の対象とすることができます。 * * * なお、その年の1月1日から12月31日までの1年間における上場株式の配当等のうち、①の申告不要を選択したもの以外については、②の総合課税か③の申告分離課税かのいずれかを選択しなければなりません(すなわち、配当毎に選択することはできません)。 2 外国税額控除の方法 具体的な外国税額控除の方法は、【Q24】と同様です。 (了)
被災したクライアント企業への 実務支援のポイント 〔税務面(法人税・消費税)のアドバイス〕 【第6回】 「大規模災害時の特例措置(その1)」 ~災害損失特別勘定~ 公認会計士・税理士 新名 貴則 阪神・淡路大震災や東日本大震災のように、災害の被害状況が甚大である場合には、特例法や国税庁の個別通達による特例措置がとられることがある。【第6回】から【第8回】においては、これらの大規模災害時の特例措置について解説する。 これらの特例措置は、大規模災害の都度設定されるものであり、今後も必ず同様の内容となるとは限らない。しかし、平成28年4月に発生した熊本地震における特例措置(個別通達)は、東日本大震災時の特例措置を参考として概ね同様の内容となっていることから、今後特例措置が設定される際も同様であると考えられる。 【第6回】では、原則として平成28年6月に公表された「平成28年熊本地震に関する諸費用の法人税の取扱いについて(法令解釈通達)」を基礎として解説していく。 1 災害損失特別勘定の繰入 ① 災害損失特別勘定とは 法人が、災害が発生した日の属する事業年度等(被災事業年度等)において、被災資産の修繕等にかかる費用の見積額を災害損失特別勘定として経理した場合、その金額を被災事業年度等の損金に算入する。損金経理が要件であり、原則として申告調整による損金算入はできない(通達の公表までに決算が終わってしまった法人などは、特例的に申告調整が認められる場合がある)。 この適用を受ける場合には、確定申告書等に災害損失特別勘定の損金算入に関する明細書を添付する必要がある。 災害損失特別勘定は、個々の被災資産ごとに次の①又は②のいずれか多い方の金額(被災資産に係る保険金、損害賠償金又は補助金等による補填額を控除した残額)を把握し、その合計額以下である必要がある。ただし、〇〇工場建物一式、××製造設備一式といった単位で計算することも認められる。 (※1) 法令や地方公共団体の復興計画等により、一定期間修繕等に着手できない場合は、「修繕等の工事に着手できることとなる日から1年を経過する日」と読み替えることができる。ただし、この場合であっても、災害損失特別勘定の繰入は被災事業年度等において行うことに変わりはない。 (※2) 対象となるのは、次の期間に支出すると見込まれる修繕費用等である。 【計算例】 災害損失特別勘定は180,000千円以下である必要がある。 ② 対象となる被災資産 災害損失特別勘定の対象となる被災資産とは、災害により被害を受けた次の資産をいう。 ③ 被災資産の時価 一般的に資産の時価とは、当該資産が使用収益されるものとして、その時点で譲渡されるとした場合に通常付される価額をいう。しかし、大規模災害時の被害の甚大さを考慮すると、被災資産の構造検査等により厳格に時価を評価することが困難な場合も考えられる。 このような場合には、建築業者など一定の専門知識を有する者が行った見積りによるなど、合理性がある金額であれば、被災資産の時価として取り扱われる。 ④ 修繕費用等の見積り 修繕等を行うことが確実な被災資産につき、次のような金額によるなど合理的に見積もることが必要である。 外部者による見積りが必要とされるわけではなく、法人内部の技術者等の専門家が見積りを行った場合であっても、合理的と認められる場合は当該金額を基礎として災害損失特別勘定へ繰り入れることができる。 ⑤ 保険金の控除 災害損失特別勘定を繰り入れる際に、被災資産に係る保険金によって補填される場合は、当該保険金額を控除する必要がある。 しかし、大規模災害時には保険金の額が確定するまでに長期間を要する場合も考えられる。したがって、被災事業年度等の末日までに保険会社の査定が終わらないなど、保険金額の見積りが困難な場合には、保険金の金額を控除しなくても差し支えない。 また、被災事業年度等において既に受領して益金に算入している保険金等については、災害損失特別勘定の繰入額の算定において考慮しない。 ⑥ 仮決算による中間申告書での繰入 被災事業年度等において仮決算による中間申告を行う場合に、対象となる中間期間において災害が発生している場合は、当該中間申告において災害損失特別勘定を繰り入れることができる。このときも、損金経理が必要となる。 その際の修繕費用等の見積りの対象期間は、次のとおりである。 2 災害損失特別勘定の取崩 ① 確定申告において繰入を行った場合 被災事業年度等の確定申告において災害損失特別勘定の繰入を行った場合、災害のあった日から1年を経過する日の属する事業年度(1年経過事業年度等)の末日において、原則として全額を取り崩すことになる。つまり、通常であれば災害のあった事業年度の翌事業年度において、全額を取り崩して益金算入することになる。 ◆被災事業年度等 【災害損失特別勘定の繰入】 ◆1年経過事業年度等 【実際の修繕費の支出】 【災害損失特別勘定の取崩】 ② 仮決算による中間申告において繰入を行った場合 被災事業年度等の中間期間(被災中間期間等)について仮決算による中間申告を行い、災害損失特別勘定を繰り入れた場合、被災事業年度の末日において一部の取崩が発生する。つまり、被災事業年度等の下半期において、被災資産について損金算入した修繕費等の合計額と同額を取り崩すことになる。 また、被災事業年度等の末日の翌日から災害発生日から1年を経過する日までに支出すると見込まれる修繕費用等の見積額が、上記の取崩後の災害損失特別勘定の残高を超える場合、その超える部分の金額を災害損失特別勘定の繰入対象にできる。 ◆被災中間期間等 【災害損失特別勘定の繰入】 ◆被災事業年度等(下半期) 【実際の修繕費の支出】 【災害損失特別勘定の取崩】 【災害損失特別勘定の追加繰入】 (※) 被災事業年度等の終了時の災害損失特別勘定の残高は6,000 ◆1年経過事業年度等 【実際の修繕費の支出】 【災害損失特別勘定の取崩】 ③ 繰入額が過大であった場合 合理的に見積もった金額に基づいて災害損失特別勘定を繰り入れたにもかかわらず、結果的にこれが過大であったことが判明したとしても、繰り入れた事業年度等に遡って修正をする必要はない。 3 災害損失特別勘定の延長 ① 益金算入時期の延長 災害損失特別勘定は、被災事業年度等において繰り入れ、1年経過事業年度等において取り崩すのが原則である。 しかし、やむを得ない事情により被災資産の修繕等が1年経過事業年度等の末日までに完了しない場合には、申請により取崩を延長することができる。つまり、「災害損失特別勘定の益金算入時期の延長確認申請書」を所轄税務署長(又は所轄国税局長)に提出して確認を受けることにより、修繕等が完了すると見込まれる日の属する事業年度等(修繕完了事業年度等)まで、取崩による益金算入を延長することができる。なお、当該申請書は1年経過事業年度等の末日までに提出する必要がある。 ② 延長申請を行った場合の取崩 やむを得ない事情により益金算入時期の延長申請を行った場合、1年経過事業年度等の末日においては、次の(ⅰ)、(ⅱ)の合計額に相当する災害損失特別損失の取崩を行う。 (ⅰ) 修繕済額 被災事業年度等の末日の翌日から、1年経過事業年度等の末日までに、被災資産について損金算入した修繕費等の合計額(保険金等による補填額を控除した残額) (ⅱ) 災害損失特別勘定の繰入額から(ⅰ)修繕済額を控除した残額から、1年経過事業年度等の末日の翌日から修繕完了事業年度等の末日までに支出が見込まれる修繕費用等の合計額を控除した金額 (※) 修繕済額5,000+1,000(繰入額8,000-修繕済額5,000-修繕費用等の見込額2,000) ③ 益金算入時期の再延長 益金算入時期の延長を行ったものの、更にやむを得ない事情によって修繕等が遅れ、修繕完了事業年度等の末日までに修繕等が完了しない場合には、再延長を申請することができる。この申請は、当初の延長申請に基づく修繕完了事業年度等の末日までに行う必要がある。 (了)
裁判例・裁決例からみた 非上場株式の評価 【第22回】 「租税法上の評価⑥」 公認会計士 佐藤 信祐 前回では、東京地裁平成19年1月31日判決について解説を行った。 本稿では、最高裁平成7年12月19日判決について解説を行う。本事件は、低廉譲渡により、法人税法22条が適用された事件である。 6 最高裁平成7年12月19日判決・TAINSコード:Z214-7633 (1) 事実の概要 原告会社は、保有していた株式会社宮崎太陽銀行の株式(以下「本件株式」という)につき、昭和63年及び平成元年に、いずれも1株当たり225円で原告岡に対し譲渡した。被告は、本件株式の各譲渡は、時価よりも、低廉な価格でなされたものであるから、原告会社については、法人税法22条2項により、時価との差額に相当する金額を益金に算入すべきであり、原告岡については、原告会社から、時価との差額に相当する金額の経済的利益の供与を受けたものであるから、その経済的利益を原告会社からの賞与と認定すべきであるとして課税処分を行った。 なお、被告は、昭和63年の譲渡当時の時価につき、宮崎太陽銀行の従業員持株会と一般株主との間で行われた取引事例である1株当たり280円とし、平成元年の譲渡当時の時価につき、宮崎太陽銀行が、単位未満株式の買取価格と従業員持株会での売買事例を参考に1株当たり430円としている。 (2) 第一審(宮崎地裁平成5年9月17日判決・TAINSコード:Z198-7194) (3) 控訴審(福岡高裁平成6年2月28日判決・TAINSコード:Z200-7294) 控訴審は、第一審の判断をそのまま踏襲しているため、詳細な解説は省略する。 (4) 裁判所の判断 (5) 評釈 このように、本事件では、取引事例を参考に時価が算定されている。従業員持株会の売買事例を用いてよいのかという点については、第一審では、当該持株会が会員以外からも買い取っている透明性の高い団体であり、取引事例も第三者間取引と考えることができると判断したように思える。そのため、法人税基本通達9-1-13(1)が適用され、売買事例を時価とする取扱いとなっている。すなわち、ここでは財産評価基本通達の議論は出てこない。 さらに、法人税法22条2項の内容についても争われている。現在では当たり前のことであるし、第一審当時である平成5年でもそれほど違和感がないとは思うが、無償譲渡や低廉譲渡において譲渡側で課税されるというのは、利益を得ていない者が課税されるということで、法律家からは違和感がある話であると言われている。そのため、昭和の時代では、争われた事件はいくつかあるものの、現在では争いになり得ない内容であると思われる。 次回では、東京高裁平成22年12月15日判決について解説を行う予定である。 (了)
税務判例を読むための税法の学び方【98】 〔第9章〕代表的な税務判例を読む (その26:「政令委任と租税法律主義③」) 立正大学法学部准教授 税理士 長島 弘 ④ 木更津木材事件 (この事案は、かつて別件で紹介している。) 第一審 千葉地裁平成7年2月22日(行集46巻10・11号1057頁、税務訴訟資料208号358頁、判例時報1553号64頁、判例タイムズ894号131頁) 控訴審 東京高裁平成7年11月28日(行集46巻10・11号1046頁) 法律による政省令への委任が租税法律主義に違反しているとされた具体的な事例を提供するものとして、重要な先例的意義を有する(佐藤英明「課税要件法定主義一政令への委任の限界」租税判例百選第4版(別冊ジュリスト178号)10頁(ただしこれは控訴審の評釈である))とされる裁判例である。 原告は、通常税率による登録免許税を納付して所有権移転登記を受けたが、これは協同組合の組合員への土地譲渡であり、かかる登記については租税特別措置法(平成4年法律14号による改正前のもの。以下「措置法」という)78条の3第1項に規定する中小企業者が集団化等のため取得する土地又は建物の所有権の移転登記についての軽減税率の特例の適用が可能であった。登記後にこの軽減規定を知り登記官に対して差額について還付請求したところ、同施行規則により登記申請書に添付すべきとされる知事証明書を添付していなかったことを理由に還付を拒否された。そこで原告は知事証明書を提出したうえで、登録免許税法31条2項に基づき所轄税務署長に還付通知をするように請求したが、登記官は過誤納付の事実は認められないため税務署長への還付通知はできない旨の通知をした。そこで原告がこの通知の取消と国に対する不当利得の返還を求めたものである。 関係法令は以下のとおりである。 (A) 第一審の判断 このように、判決は、手続規定であっても、それが軽減既定の適用のための要件とされる以上、手続的要件として課税要件の定めと解し、手続的要件を白紙的に政令に委任するものは、租税法律主義の原則上、有効なものではない旨判示した。 (B) 控訴審の判断 地裁の判断に加え以下を付加する。 このように抽象的な委任文言は、限定的に解釈すべきものであり、追加的な課税要件として手続的な事項を定めることの委任や、解釈により課税要件を追加しその細目を決定することの委任を含むものでではない旨判示した。 なおこの事案も、この控訴審で確定している。 ⑤ 阪神淡路大震災登録免許税事件 第一審 神戸地裁平成12年3月28日(民集59巻3号546頁、訟務月報48巻6号1519頁。税務訴訟資料247号81頁) 控訴審 大阪高裁平成12年10月24日(民集59巻3号558頁、訟務月報48巻6号1534頁。判例タイムズ1068号171頁、税務訴訟資料249号217頁) 上告審 最高裁一小平成17年4月14日(民集59巻3号491頁、訟務月報52巻4号1256頁。判例時報1897号5頁、判例タイムズ1181号176頁、税務訴訟資料255号順号9996) この事案は、裁判所HPで紹介されている。是非、入手の上、ご一読頂きたい。また類似の事案として、神戸地裁尼崎支部平成12年3月23日判決があるが、争点が異なっているため、ここに紹介するに留める。また、上告審はこの命令への委任に関する点について判断を示していないため、ここに紹介するに留める。 阪神・淡路大震災の被災者が建物を新築した場合、阪神・淡路大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律(以下「特例法」という)37条1項により、その建物の保存登記に係る登録免許税は非課税とされていたところ、建物を新築した被災者が、このことを知らずに通常税率の登録免許税を納付した後に非課税であることを知り過誤納金還付請求した事案である。原告が、前事案同様に登記官に還付通知を請求したところ、被災証明書を添付して登記申請のあった事実が認められず、登録免許税の過誤納がないので、還付の通知はできない旨を通知した。そこで原告がこの通知の取消と国に対する不当利得の返還を求めたものである。 関係法令は以下のとおりである。 (A) 第一審の判断 このように、前事案と同様、法律による白紙的委任に基づく省令規定であるとして、「租税法律主義に反して無効」と判示した。 (B) 控訴審の判断 前記事案と異なり、白紙委任ではなく、委任内容を限定しているとして、省令の規定が有効である旨判示した。 その差として大きな点は、「・・・に限る(り)」という限定が法律上明記されていて(④事案には、これがない)、政令による手続要件付加の手掛かりが明示されていたか否かにあるといえる。また④事案においては、「政令の定めるところにより」とありながら、政令から省令へ再委任されている。この点、判決では特に判断要素とはされていないが、大きな問題点といえる。 (続く)