顧客との面談が“ちょっと”苦手な 税理士のための面談術 【第8回】 (最終回) 「お見送りまで完璧にできれば、“苦手意識”からはもう卒業です」 有限会社コーディアル 代表取締役 坪田 まり子 皆さん、こんにちは。坪田まり子です。 いよいよこの連載も最終回となりました。 書き始める段階ではいつも最後まで完結できるだろうかと不安ですが、書き進めていくうちに、あれも伝えたい、これも伝えたいと、どんどんイメージが膨らんできます。 特にこのようなウェブ上の連載の場合には、皆さんがどれくらいご覧くださっているかがすぐに分かります。嬉しいことにこの原稿を執筆中に、第1回目の週間の閲覧回数が第2位というご一報をご担当者様から伺いました。 実務に関することが第一だとお考えの方が多い中、ソフト面に位置する接客や面談にご興味をお持ちくださることが何よりもありがたく思いました。嬉しくてつい容量が多くなりすぎて、自分をセーブすることもしばしばありました。 この連載の執筆を通して、私なりに改めて感じ入ることもたくさんあり、読者の皆さんに心から感謝しています。ありがとうございます。 さあ、いよいよ最終回。今回は、上手なクロージングと次につなげるお見送りについて、心を込めてお話します。 ◆ ◆ ◆ 前回は論理的で分かりやすい話し方について解説しました。当たり前のことですが、「話す」ということは常に「話し終わり」という場面が必要です。その話し終わりをクロージングと位置付けていますが、ただ終わるだけではもったいないのではないでしょうか。 分かりやすく解説して終わりではなく、次につなげることが士業者に必要な真のクロージングだと私は考えています。 クロージングにたどり着く前のプロセスをイメージしてみましょう。 「提案」を上手にすることが、良いクロージングへとつながっていきます。 では、良い提案をするためのコツとは何でしょうか。 それは前回もお話した、 相談者は予め自分なりの要望を持っている。 ということを忘れないことです。 その要望をどれだけ満足させる提案ができるかどうかが、次のステップである「受任」の可否につながります。 依頼者の要望の中には、士業者である皆さんの立場からは受け入れがたい内容もあろうかと拝察します。それでも相手の気持ちを尊重するなら「それは無理です」と頭ごなしに否定するだけではダメだということもご理解いただけるはずです。 それでもときには、きっぱりと「それはいたしかねる」と正し、それをしっかり理解してもらう努力も必要でしょう。そのためにも、第1回目からお話してきた相手と良好な関係をいち早く築いておくことが重要になってきます。 法律を重んじ、それに基づく提案と解決をしなければならない皆さんにとって、ここが顧客満足の難しさでもあります。 ◆ ◆ ◆ このような難しい場面は、『焦らない提案』をすることで解決できるのではないでしょうか。 新規相談の場合には、早く受任に持ち込みたい気持ちは分かりますが、次の2つのプロセスを踏まれるのはいかがでしょうか。 〔プロセス①〕 「相手が望む方法で解決する手段」と、「税理士である皆さんがベストだと考える手段」の両方を提案する。 前回もお話したように、皆さんの専門的な見地からの提案は重要ですが、相談者の気持ちにそぐわないやり方だけでは、相手の心の中に不満が芽生えてしまいます。 ですから、両方を提案することにより、どちらが相談者にとってより良い解決方法であるのか、相手に選択させることも一案なのです。 相談者は自分なりの要望があるとはいえ、その根底には「今よりも良くしたい」という気持ちがあるはずですから、相手の要望や気持ちを逆なでせず、相手の意向を十分認めた上での、専門的かつ現実的な提案であれば、きっと相手もしっかり悩み、的確な判断を下してくれるはずです。 また、このように両方を提案し、相手に選択させることで、「押しつけられた」というイメージを避けることができます。 “誰に依頼するかを決めるのはお客様である”と、この連載を通して言い続けてきました。どんなに相手のために良いアドバイス、提案であったとしても、依頼するかどうかを決めるのは皆さんではなく、相談者なのです。 選択権は相手にあることを決して見失わないようにしましょう。 〔プロセス②〕 相談者の気持ちを無視しない上手なクロージングをすること。 提案の結果、クロージングの場面が当然必要です。面談はエンドレスではなく、1時間とか2時間とか、互いの時間をやりくりした中で行われるものだからです。 これまでもお話してきましたが、面談では第一印象という最初が肝心であったことと同じくらい、この締めくくりの場面も、皆さんの腕の見せ所です。 相手に敬意を表し、頑張って傾聴をしました。そのうえで、相手の意向を十分に理解した上で、皆さんなりの提案をしました。 その後のクロージングのコツは、 この3つだと考えています。 出逢った以上、話を聞いた以上、受任につなげたいという皆さんのお気持ち、私には分かります。しかしながら、相談者側には、皆さんからの提案に乗りたいけれど、即決できない事情もあるはずです。それは、相談者が必ずしも決裁権をもった立場であるとは言えないからです。 皆さんからのご提案が最もだと思った場合にも、「社長に相談しなければ」「家族の意見も聞かなければ」などという諸事情もあるはずです。ですから、そんな相手の気持ちを無視して受任を急がせることはもってのほか、ということになります。 このような相手の迷いは、言葉にしなくても表情から察することもできるはずです。さりげなく相手の表情を見て、相手の感情を上手に理解できるようにしたいものです。 ◆ ◆ ◆ 留意すべきは、面談の結果、相手の意向にそぐわない方向がベストであると相手も判断し納得したようなときです。 それでも、相手の要望は当初、確かにあったことは事実ですから、クロージングの場面では、相手に敬意を表して、皆さんの方からこんなお言葉をかけてみてはいかがでしょうか。 初めての相談者にとって一番不安なことは、相談した以上、受任を迫られるということではないかと思います。だからこそ、迫ることの反対で、「じっくり考えてみてください」という皆さんのスタンスは、心からありがたいと思ってくださるはずです。 誠実な相談者であれば、「無料でアドバイスをもらえてラッキー!」と思う人は少ないと信じたいものです。当初の相談者の要望とはかけ離れた結果になりそうだとしても、皆さんのこのような声かけにより、「相談者の意向と気持ちをないがしろにしない素晴らしい先生だ」という気持ちを持ってくれるのではないでしょうか。 こんな小さな感動が、きっと次につながるはずです。 まずはスポット案件から始まり、それから先は長いビジネスパートナーになる。長い道筋であるからこそ、手柄を焦らないこと、誠実且つ丁寧に一つひとつお客様と向き合う意識と姿勢が大切だと私は考えていますが、いかがでしょうか。 ◆ ◆ ◆ さあ、いよいよお見送りです。まさか皆さんは、会議室や応接室の中だけで挨拶してお別れしてはいませんよね。エントランスまで結構遠い。。。という広いオフィスで執務していらっしゃる方でも、船に乗り飛行機に乗るほど遠いはずはありません。 ほんのちょっとだけ、相手と並んで歩くことが大切なのです。 受任を迫るためではありませんよ。最後は笑顔で別れるために、です。 エントランスまで歩きながら、たとえば、「雨はやみましたでしょうか」「かなり時間をとっていただきました。この後のお時間は大丈夫ですか」など、労いの言葉をかけることもできるはず。または、相手がゴルフ好きなど、相手の興味や関心事を知っている場合には、「その後、ゴルフはいかがですか」など、雑談を始めることもできるはずです。 自分の話をするのではなく、最後まで相手に関心を寄せること。そしてその際には決して馴れ馴れしい口調ではなく、最後まで爽やかであることが大切です。爽やかではなく、ねちっこくて感じが悪ければ、しつこく迫っている印象しか与えないからです。 ◆ ◆ ◆ さあ、エントランスまで着きました。どんなふうにお見送りをしましょうか。 まずは皆さんがイメージしてくださいませ。 当然、頭を下げお辞儀をなさると思いますが、その際のお辞儀、余韻を残せるように頑張ってみてください。まずはイメージを持っていただくために、次のステップとイラストをご覧ください。 (※) 拙著『士業者が身につけたい顧客をつかむ面談術』(清文社)p79より このセリフの「ありがとうございました」は、飲食店で言われるイメージとは違います。活気あふれるというよりも、丁寧に誠実に、が大切です。 「ありがとう」は相談者が先生方である皆さんに言うべきものであり、相談を受けアドバイスをする士業者は言うべきではないと思う方も中にはいらっしゃるようです。士業者のビジネスシーンこそ、接客力や面談力が重要であると考えている私にとって、極めて残念なことだとつくづく思います。 今や士業者もサービス業という観点を忘れてしまっては、顧客満足とはほど遠い、“してやっている”“教えてやっている”という傲慢で感じが悪いイメージにしかなりえません。 出逢ったことに感謝、相談をするためにわざわざ皆さんの下に尋ねてきてくださったことに対する感謝の気持ちを相手に素直に表現することは、士業者である以前に、人間として当たり前のことなのです。 当たり前のことが普通にできる士業者だからこそ、「士業者はなんだか偉そう」という先入観を持っている一般の方々にとっては、感動を覚えるのかしれませんよ。 ◆ ◆ ◆ どうか皆さん、国家試験で見事に資格を取得され、ようやくお客様の前に立ち皆さんの知識と持てる力を発揮できる面談の場面こそ、皆さんの知識と実力いうハード面だけでなく、感じの良い接客=面談力がいかに大切であるかをご理解いただけましたら嬉しく思います。 この連載を通して、偉そうなこと、失礼なことを随分と申し上げてきました。その最たるものが、「相談者にとって依頼する相手は誰でもいいのです。誰を選ぶかは自由」という言葉ではなかったかと拝察します。 こんな補足をしてもよろしいでしょうか。 現在の皆さんは、たくさんいらっしゃる税理士の中のOne of themなのです。その中から“〇〇先生、あなたにお願いしたい”と言われたときにはじめて、その相談者にとってのOnly oneになることができるはずです。 皆さんの専門性と理想と夢を、これから先、大きく膨らませていただくためにも、ヒューマンスキルに関わる面談力を、ビジネスマナーの魔法を使うことで向上させていただけることを心から願っています。 また機会があれば、さらなるトピックで皆様にご覧いただけるような連載をさせていただきたいと思います。こんな私ですが、心のどこかに覚えておいていただけましたら幸いです。 また、この連載の機会を与えてくださいました株式会社プロフェッションネットワークの皆様、そして連載のきっかけを作っていただいた株式会社清文社の皆様に、改めて心から御礼申し上げます。 皆様との出逢いに心から感謝しています。 継続して、最後までご覧くださり、ありがとうございました。 またきっと再会できますように。 (連載了)
《速報解説》 4月1日スタートの中小企業経営強化税制についてポイントを確認 ~固定資産税の軽減措置特例では対象外のB類型も対象範囲に Profession Journal編集部 平成29年度税制改正で創設される「中小企業経営強化税制」(※1)は、3月末日で廃止される「中小企業投資促進税制の上乗せ措置」(生産性向上設備等に係る即時償却等)(※2)を改組し、対象設備及び指定事業を拡充した設備投資減税だ。 (※1) 税制改正法案では「中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除」(新措法42条の12の4(個人は新措法10条の5の2))として規定されている。 (※2) 上乗せ措置以外の中小企業投資促進税制は対象資産から器具備品を除外した上で適用期限が平成31年3月31日まで2年延長される。 中小企業経営強化税制は平成29年4月1日から平成31年3月31日までの間に取得等し事業供用した後述する対象設備について即時償却又は税額控除(7%又は10%(※3))(※4)が受けられるもので、制度開始は間近となっている。 (※3) 資本金3,000万円以下もしくは個人事業主は10%。 (※4) 控除額の上限は当期法人税額の20%、控除限度超過額は1年間の繰越し可。 そこで、政省令が明らかとなっていない現時点で制度の全容は不明だが、適用開始を前に、法案や大綱及び各公表資料等によりそのポイントを確認してみたい(以下、法人を対象とする)。 * * * まず本制度の対象となるのは、①中小企業投資促進税制(措法42の6)又は②商業等活性化税制(措法42の12の3)に規定された中小企業者等とされており、対象となる業種(指定事業)についても両制度の指定事業の用のいずれかに規定されたものに限るとされていることから、中小企業投資促進税制と商業等活性化税制のいずれかが適用可能な企業は、本制度対象の中小企業者等になるといえよう。 (※5) 中小企業投資促進税制の指定事業は[こちら] (※6) 商業等活性化税制の指定事業は[こちら] ただし、この中小企業者等のうち、後述するように中小企業等経営強化法に定める経営力向上計画の認定を受ける必要があり、昨年度改正で創設された固定資産税の軽減措置特例と同じ制度下に置かれることになる点が、上記①②の制度とは大きく異なる。 なお、今回の改正に対応した「中小企業等経営強化法施行規則」及び経営力向上計画に係る認定申請書の様式などを規定した「経営力向上に関する命令」の改正案は共に2月16日付けでパブコメに付されており、すでに3月1日で意見募集が締め切られている。政省令を含む改正税法と同日の3月31日付け官報での公布、翌4月1日施行が予測される。 (※) 〔2017/3/14追記〕 上記の省令及び命令の一部改正は3月14日付で公布され、翌3月15日の施行となります。 * * * 次に対象となる設備については、税制改正法案(新措法42条の12の4第1項)において次のように規定されている(一部抜粋)。 規定の内容を個別に確認すると次の通り。 (1) 事業の用に直接供される設備(生産等設備)を構成するものであること 例えば事務用器具備品、本店、寄宿舎等に係る建物附属設備等は対象外となる。 (2) 設備の種類が①機械・装置、②工具、③器具・備品、④建物附属設備、⑤ソフトウェアであること 中小企業投資促進税制の上乗せ措置の対象設備に、器具・備品、建物附属設備等が加わっている。なお、大綱では「全ての器具備品及び建物附属設備を対象とする」とあるが、上記の中小企業等経営強化法施行規則の改正案(以下、改正強化省令案)では、「医療保健業を行う事業者が取得又は製作(建設)をするものを除く」といった除外規定が設けられている。 (3) 中小企業等経営強化法に規定する「経営力向上設備等」であること 経営力向上設備等については、税制改正大綱の記述を引用すると次の通り。 冒頭の制度創設趣旨(上乗せ措置の改組)からすると、生産性向上設備投資促進税制におけるA類型・B類型と考えがちだが、この制度は3月末をもって廃止されるため、中小企業等経営強化法におけるA類型(生産性向上設備投資促進税制のA類型のうち最新モデル要件を除外したもの)及びB類型の規定による。現行の上乗せ措置とはこの点が異なる。 また、固定資産税の軽減措置特例は、B類型(投資計画における年平均の投資利益率が5%以上となることが見込まれるもの)が除外されているが(地方税法施行規則附則6条76項)、本制度では適用対象となっている(※7)。この投資計画は経済産業局の確認を必要とするため、生産性向上設備投資促進税制と同様に、事前に投資計画案の確認を公認会計士・税理士に依頼することになると考えられる。 (※7) B類型の場合、固定資産税の軽減措置特例は受けられないが、経営力向上設備等には該当するため、経営力向上計画の認定を受ければ、金融支援等その他の支援措置を受けることができる。 なお、生産性向上設備(A類型)については生産性が旧モデル比年平均1%以上改善することについて工業会等から証明書(上乗せ措置に係る証明書とは様式が異なる)の発行を受ける必要がある。 (4) 「経営力向上設備等」のうち「特定経営力向上設備等」であること 大綱の記述では、上記(3)の「経営力向上設備等」のうち、①経営力向上に著しく資する一定のもので、②その法人の認定を受けた経営力向上計画に記載されたものが「特定経営力向上設備等」とされている。この点からみて、固定資産税の軽減措置特例と本制度は、重複する部分は多いものの、完全に一致するわけではないことが分かる。 (※8) 経営力向上設備等は「経営力向上に特に資するもの」とされており(中小企業等経営強化法13条4項、改正強化省令案8条1項)、特定経営力向上設備等は「経営力向上設備等のうち経営力向上に著しく資する設備等」(改正強化省令案8②)とされている。 (※9) 上記の通り税制改正法案では「経営の向上に著しく資するものとして財務省令で定めるもの」との規定があるが、改正強化省令案8条2項において「経営力向上に著しく資する設備等」が規定されており(上述の医療機器等の除外規定)、この点については今後の租税特別措置法施行規則の改正内容と合わせて確認する必要がある。 (5) 認定を受けた経営力向上計画に記載されたものであること (3)の通り、A類型・B類型の取得等にあたっては ・A類型は工業会等への証明書の発行依頼⇒取得 ・B類型は①公認会計士・税理士への投資計画案の事前確認書の確認依頼⇒発行、②経済産業局への申請書提出⇒確認書の発行 という手続をそれぞれ経る必要があると考えられるが、その後は事業分野別指針に沿って「経営力向上計画」を作成し、各事業分野の主務大臣による認定を受け、設備を取得等し事業供用するという流れになろう。 上乗せ措置と比べて経営力向上計画の作成→申請→認定という手順が増えることとなるため、申告期限までに余裕を持った手続等のスケジュールを立てる必要がある。 なお、経営力向上計画の申請に当たっては、認定を受けた経営革新等支援機関のサポートが求められており、本制度の適用に当たっては税理士が活躍する場面が多くなる。 (6) 一定規模以上のものであること 規模要件は政令規定だが、税制改正大綱の記述は次の通り。 (7) その製作若しくは建設の後事業の用に供されたことのないもの 中古資産・貸付資産でないこと。所有権移転外リースにより取得した特定経営力向上設備等は適用外となる。 * * * このように現行の設備投資減税との接点の多い特例措置ではあるが、その相違点を把握しておかなければ、計画立案や提出書面の準備に手間取ったり気づかなかったりすることで、結果として適用不可となる恐れもある。現行制度との比較を含め慎重に確認・対応したい。 また、①中小企業投資促進税制、②商業等活性化税制及び③中小企業経営強化税制の控除税額については、これらの制度の税額控除における控除税額の合計で、当期の法人税額の20%が上限とされる点にも留意しておきたい。 (了)
2017年3月2日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.208を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!- - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。
monthly TAX views -No.50- 「シムズ論-時代の変わり目に出現するいかがわしい論説」 中央大学法科大学院教授 東京財団上席研究員 森信 茂樹 またぞろ、奇妙奇天烈な論理がマスメディアでもてはやされ始めた。それは、ノーベル賞学者でプリンストン大学教授のシムズ氏の議論(以下、シムズ論)である。 この論がわが国で拡散したのは、リフレ派の代表的学者でアベノミクスの理論的支柱である浜田内閣官房参与が、「通貨供給量を増やせばインフレになるという考え方は間違いであった」と認めた際、このシムズ論を引用しつつ、「今後は減税も含めた財政の拡大が必要、消費税10%の引上げは延期すべきし」という主張を展開したことに始まる(16年11月15日付日経新聞)。 * * * 「シムズ論」を簡単に要約すると、以下のようなものである。 前提にするのは、「名目国債残高を物価水準で割ったものは、将来の財政黒字の累計値の現在価値に等しくなる」という恒等式である。これは「物価水準の財政理論(FTPL=Fiscal Theory of the Price Level)」と呼ばれ、10年ほど前にも学会で話題となったものである。 シムズ論では、これに基づき、「政府が財政責任を放棄して、これまでの借金(国債)を返済する予定はない、と宣言すれば、国債価格が暴落することを恐れて人々は国債を売り民間投資や消費に振り向ける。そして人々はインフレが起きるとの期待を抱くので、デフレから脱却できる。インフレにより政府の借金は実質的に少なくなる」という政策提言が導かれることになる。そのうえで、「物価上昇率が2%に達すれば、段階的に消費税率を引き上げていけばよい」という。なお、シムズ論の詳細については、東京財団 税・社会保障調査会のホームページから入手することが可能。とりわけ、一橋大学佐藤主光教授の論考「物価の財政理論(FTPL)と財政再建」を参照されたい。 * * * しかし誰もが抱く疑問だが、財政責任の放棄が明白になると、国債は投機の対象となり、国家がデフォルトする可能性も出てくる。デフォルトすれば国債の価値はゼロになるので、上述の恒等式は成り立たない。 デフォルトの前に、国債の価値が暴落すれば、大量の国債を保有する金融機関は経営が困難になり、貸し渋りだけでなく、貸しはがしもしなければならず、実体経済は大混乱する。国債を保有する個人は、巨額の損失を被る。 そもそも、いったん財政責任を放棄した国家が、「インフレ率2%を達成した時点で財政規律を取り戻す政策に戻ります」と言っても、マーケットがそれを信じる保証はない。 * * * このように暴論とも言える「シムズ論」だが、安倍政権の思惑は、この論理をうまく活用しようとたくらんでいる(のではないか)。 すでに2020年プライマリーバランスの黒字化という公約を達成するには、8.3兆円のギャップを埋める必要があり、マーケット関係者の多数は、達成できないと認識しつつある。それでも国債マーケットに何ら変化の兆しが見えないのは、日銀の大量国債購入のおかげだ。しかし、2、3年後には、日銀が購入する国債がなくなってくる、という状況が生じる。 これらのことは誰もが認識しているが、そのことの意味を今考える人はいない(考えたくない不都合な事実)。 安倍政権はこれまでノーベル賞学者のアドバイスを政治的に利用し、消費増税を2度延期してきた。今回、浜田参与がこの論を支持し、消費税率10%への引上げの再々延期を主張し始めている。 現下のわが国の最大の問題は、消費が伸びないことだが、背景には、若者を中心とした将来不安がある。長寿化の進む中で、医療・年金・介護・子育て、どれをとっても不安だらけだ。 消費増税を法律通り行い、彼らの不安を払しょくすることこそ、最大の経済対策ではないか。 (了)
特定居住用財産の買換え特例[一問一答] 【第4回】 「「買換えの特例」の譲渡価額要件(1億円以下)の判定④ (店舗兼住宅等の譲渡で居住用部分が90%以上である場合)」 -譲渡価額要件の判定- 税理士 大久保 昭佳 Q Xは、本年の8月に店舗兼住宅及びその土地(いずれも所有期間が10年超で居住期間は10年以上)を、建物1,000万円、土地1億円で譲渡しました。 当該建物及び土地の利用状況が下図のとおりである場合、「特定の居住用財産の買換えの特例(措法36の2)」における譲渡価額要件(1億円以下)を満たすこととなるのでしょうか。 なお、当該譲渡した建物及び土地と一体としてXの居住の用に供されていた他の建物又は土地等の譲渡はありません。 A (1) 居住用部分が90%以上である場合の取扱い(措通31の3-8(店舗等部分の割合が低い家屋))により、居住用部分を100%として特例の適用を受ける場合には、譲渡価額要件を満たさないことになります。 110,000千円 × 100% = 110,000千円 > 100,000千円 (2) 居住用部分が90%以上である場合の取扱い(措通31の3-8(店舗等部分の割合が低い家屋))によらず、居住用部分を90%として特例の適用を受ける場合には、譲渡価額要件を満たすこととになります。 110,000千円 × 90% = 99,000千円 < 100,000千円 ●○●○解説○●○● 「買換えの特例」は、譲渡に係る対価の額が1億円以下であることがその要件の1つとされています(措法36の2①かっこ書)。 ところで、譲渡した資産の居住用部分の判定に関しては、その譲渡資産が店舗兼住宅及びその敷地の場合で、その居住の用に供している部分がそれぞれ当該家屋又は当該土地等のおおむね90%以上である場合には、当該家屋又は土地等の全部がその居住の用に供している部分に該当するものとして取り扱って差し支えないとされています(措通31の3-8(店舗等部分の割合が低い家屋))。 そして、上記通達に準じて当該家屋又は当該土地等の全部をその居住の用に供している部分に該当するものとして取り扱うときは、当該家屋又は当該土地等の全体の譲渡価額により判定することとされています(措通36の2-6の2(譲渡に係る対価の額が1億円を超えるかどうかの判定)(2)ただし書)。 したがって、A(1)のとおり、譲渡資産全体について特例の適用を受ける場合には、譲渡資産の譲渡に係る対価の額が1億円を超えることとなるため、譲渡価額要件を満たさないことになります。 一方、措通31の3-8の取扱いによらず、A(2)のとおり、居住の用に供している部分と居住の用に供していない部分とを区分し、居住の用に供している部分のみについて特例の適用を受ける場合には、居住の用に供している部分に対応する譲渡に係る対価の額は99,000千円となることから、譲渡要件を満たすこととなります。 (了)
~税務争訟における判断の分水嶺~ 課税庁(審理室・訟務官室)の判決情報等掲載事例から 【第13回】 「子会社に対する債権放棄は子会社支援損ではなく寄附金に当たるとされた事例」 税理士 佐藤 善恵 (※) ( )内の青色文字は、略称設定であり、以下その略称を使用する。 〔概要等〕 本件の原告(X社)は、その完全子会社(本件子会社)に対して有する債権を放棄したところ(本件債権放棄)、原処分庁から、本件債権放棄の額は、法人税法37条の「寄附金の額」に該当するため、損金算入限度額を超える部分は損金不算入であるとして法人税の更正処分等を受けた。 これに対して、X社は、債権放棄の額は、寄附金の額に当たらない等として、更正処分等の取消しを求めて争った。 争点は、次の4つであるが、ここでは、②について取り上げる。 〔判断基準〕 親会社から子会社に対する支援であっても、その支援によって親会社が便益を受けていないようなときは、その支出には対価性がないとして「寄附金」となる。この点、実務上は、法人税基本通達9-4-1(子会社等を整理する場合の損失負担等)及び9-4-2(子会社等を再建する場合の無利息貸付け等)の定めにより、その支援に係る損失負担が損金となるか否かを判断することになる。 (参考) 法人税基本通達9-4-2 本件についても裁判所は、同通達9-4-2の定めは、債権放棄に経済合理性があるか否かを判断する基準として相当なものである(※)ことを認めている。その上で、具体的な判断枠組みとして、次の2つの要件を挙げている。 ① 本件債権放棄の必要性(業績不振の子会社等の倒産を防止するためにやむを得ず行われたものか) 及び ② 本件債権放棄の合理性(合理的な債権計画に基づくものか) (※) 裁判所は、この通達の法的根拠として法人税法37条7項を挙げる。すなわち、資産又は経済的な利益の贈与又は無償の供与であっても「広告宣伝費及び見本品の費用その他これらに類する費用並びに交際費、接待費及び福利厚生費とされるべきもの」を寄附金から除くと定めていることに鑑み、支出の費用性が明白なものであれば、寄附金の額に算入しないと解せられるという理由付けをしている。 《コメント》 双方、法人税基本通達9-4-2を判断基準の基礎とすることに関しては争いがなかったが、課税庁の主張は、その具体的検討項目として、国税庁HPの質疑応答事例(※)に挙げられている検討項目を前提としている。 一方、X社の主張は、本通達の本文が挙げる要件(①子会社等の倒産防止のためにやむを得ず行われるものであること。つまり「必要性」、②合理的な再建計画に基づくものであること。つまり「合理性」)は、同通達の「相当な理由」の有無の判断基準としての例示であり、必ずしもこれらの要件を充足しなければならないわけではないとの前提をおいている。 (※) 国税庁(質疑応答事例)「合理的な整理計画又は再建計画とは」 〔裁判所の判断〕 ① 本件債権放棄の必要性について 本件子会社は、帳簿上は債務超過の状態が続いていたが、親会社であるX社と共有で保有している土地に含み益があり、その時価を考慮すると実質的には債務超過の状態にあったとはいえず、また、証拠からみてその資金繰りがひっ迫していたとも認められない。 そして、X社は、貸倒引当金の計上を回避するために本件債権放棄をしたというが、それが客観的な経済合理性を有する判断であったということができない以上、本件債権放棄が業績不振の子会社等の倒産を防止するためにやむを得ず行われたものであるとして、その必要性があったとは認めることができない。 ② 本件債権放棄の合理性 ・・・事実関係からみて、X社が本件子会社に対してした本件債権放棄は、これを決議した時点において支援額を確定し得ないものであったということができ、X社において、本件子会社の再建管理を適切に行うことができる前提を欠くものであったといわざるを得ない。したがって、本件債権放棄は、合理的な再建計画に基づくものであるとして、相当性があると認めることもできない。 ③ まとめ 以上のとおり、原告がその子会社である本件子会社に対してした本件債権放棄について、業績不振の子会社等の倒産を防止するためにやむを得ず行われたものであるかという必要性及び合理的な再建計画に基づくものであるかという相当性をいずれも認めることができない以上、これらを総合的に判断すれば、本件債権放棄に経済合理性(相当な理由)があるということはできない。 したがって、本件債権放棄の額は、法人税法37条1項の「寄附金の額」に当たるものであると認められ、本件法人税における所得金額の算定に当たり、同項の損金算入限度額を超える額について、損金に算入することは認められない。 《コメント》 裁判所は、債権放棄の①必要性及び②合理性に照らして判断したところ、①必要性に関しては、本件子会社が実質的には債務超過状態ではなかったという事実が認定できたこと、②合理性に関しては、本件債権放棄を決議した時点では、具体的な支援額を確定できる状況にはなかったという事実を認定し、判断基準には合致しないと結論づけた。 〔判断の分水嶺〕 X社は通達が掲げる要件を必ずしも充足する必要はないとの立場であったが、裁判所はその枠組みには乗っていないという点が最初の分水嶺である。 そして、通達の解釈「債権放棄の必要性及び合理性」が必要であるとの判断基準を明確にした上で、本件の事実関係がこれらの基準に当たらなかったということが、最終的な判断の分水嶺となったものである。 〔本判決が示唆するもの〕 実務上、子会社支援損については、国税庁の質疑応答事例や本件通達に照らして判断されることが一般的だが、いずれの判断枠組みを採用したとしても、表面的な言葉にのみ捉えられるのではなく、法の趣旨に立ち返って検討することが重要である。 なお、課税庁の判決情報のコメントを一部紹介する。 (了)
金融・投資商品の税務Q&A 【Q34】 「外国のパートナーシップを通じて有価証券投資を行う場合の必要経費」 PwC税理士法人 金融部 パートナー 税理士 箱田 晶子 ●○ 検 討 ○● 1 パートナーシップからの所得区分 【Q33】の通り、個人投資家がパートナーシップを通じて得る所得には、株式等の譲渡に係る所得をはじめとして利子所得や配当所得等の様々な所得があります。このうち、株式等の譲渡に係る所得については、それらが「株式等の譲渡に係る譲渡所得(株譲渡所得)」、「株式等の譲渡に係る雑所得(株雑所得)」又は「株式等の譲渡に係る事業所得(株事業所得)」のいずれに該当するのか、という問題があります。 その点について、租税特別措置法取扱通達37の10・37の11共-2(株式等の譲渡に係る所得区分)では、当該株式等の譲渡が営利を目的として継続的に行われているかどうかにより判定することとされています(【Q21】参照)。 国税庁事前照会事例において、ベンチャー投資等を行う投資組合についての所得区分の考え方が以下の通り記載されています。 2 個人投資家における投資組合の運営経費等の税務上の取扱い 照会事例では、上記の①から⑥の要件を満たし、当該組合から発生した株式等の譲渡に係る所得が株雑所得等に該当する場合における組合で発生する経費について、以下の通り規定しています。 3 本件へのあてはめ 上記の照会事例は投資事業有限責任組合及び民法上の任意組合を通じた株式投資についてのものですが、任意組合等に類似する外国パートナーシップに対しても適用して差し支えないものと考えられます。 したがって、外国パートナーシップが上記①から⑥の要件を満たす場合には、株式等の譲渡により生じる所得は株雑所得又は株事業所得に該当し、パートナーシップで発生する運営経費を必要経費として所得計算上控除することができると考えます。 なお、これにより計算された株雑所得等の適用税率は、20.315%(所得税及び復興特別所得税15.315%、地方税5%)となります。 (了)
被災したクライアント企業への 実務支援のポイント 〔税務面(所得税)のアドバイス〕 【第2回】 「源泉所得税の取扱い①」 公認会計士・税理士 篠藤 敦子 被災時における源泉所得税の取扱いのうち、被災した個人からの徴収猶予又は還付、被災した源泉徴収義務者の納税の猶予及び納付期限の延長について、以下に解説する。 【1】 被災者した個人からの徴収猶予又は還付 (1) 措置の概要 給与、公的年金等、報酬又は料金の支払いを受ける個人が、災害により住宅又は家財に損害を受け、一定の要件に該当することとなった場合には、被災者本人の申請に基づき源泉所得税及び復興特別所得税の徴収猶予又は還付を受けることができる(災免法3②③④⑤、災免法令3の2)。 被災した役員又は従業員が、給与に係る源泉所得税及び復興特別所得税について、徴収猶予又は還付を受ける場合の取扱いは次の通りである。 (2) 徴収猶予又は還付を受けることができる要件 ①又は② (※) 「災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律(所得税関係)の取扱方について(昭和27.7直所1-101)」より (3) 徴収猶予される金額、還付される金額 〈(2)①の場合〉(災免法3②③④、災免法令3の2) (表1) 〈(2)②の場合〉 災害による損害金額について雑損控除の適用を受けることができると認められる場合には、被災者本人の申請に基づき、徴収猶予限度額(※)に達するまでの金額について源泉所得税及び復興特別所得税の徴収猶予を受けることができる(災免法3⑤、災免法令9、10)。 (※) 徴収猶予限度額とは 災害による住宅又は家財の損害金額がその住宅又は家財の価額の50%未満、又はその年分の合計所得金額が1,000万円を超えるときには、上記(表1)の措置を適用することはできない。しかし、雑損控除の適用を受けられる場合であれば、こちらの措置を適用することができる。 (4) 申請の方法 源泉所得税及び復興特別所得税の徴収猶予や還付を受ける場合の手続は、次の通りである(災免法令4、5、6、8、10)。 (5) 年末調整との関係 源泉所得税及び復興特別所得税の徴収猶予や還付を受けた人は、年末調整の対象とならないため確定申告をする必要がある(災免法3⑥)。したがって、徴収猶予や還付を受けた場合には、確定申告で雑損控除や災害減免法による所得税の軽減免除の特例を適用し、税額の精算を行うことになる。 【2】 被災した源泉徴収義務者の納税の猶予、納付期限の延長 (1) 納税の猶予 災害により源泉徴収義務者がその財産につき相当な損失を受けたときには、納付すべき源泉所得税及び復興特別所得税のうち一定の要件に該当するものは、納税が猶予される(通則法46①、通則法令15①)。 なお、上記②の「納税の猶予申請書」を提出すると、所轄税務署長より以下の通知が行われる(通法47①②)。 (2) 納付期限の延長 災害その他やむを得ない理由により、国税に関する法律に基づく申告、申請、請求、届出その他書類の提出、納付等が期限までにできないと認められるときは、災害等の理由のやんだ日から2ヶ月以内の範囲で、その期限が延長される(通法11)。 この延長には、地域指定によるものと個別指定によるものがある。 (了)
包括的租税回避防止規定の 理論と解釈 【第34回】 「ヤフー・IDCF事件最高裁判決②」 公認会計士 佐藤 信祐 前回では、ヤフー・IDCF事件最高裁判決について検討を行った。本稿では、本判決が他の租税回避の否認手法に影響を与える可能性があるか否かについて検討を行うこととする。 1 租税回避の否認手法 【第3回】で解説したように、拙著『組織再編における包括的租税回避防止規定の実務』2-27頁(中央経済社、平成21年)では、租税回避に対する否認手法として、以下の分類に基づいて解説を行った。 このうち、(1)①、③、(2)①は、事実認定と法令解釈が重要になる。そして、(1)②は、包括的租税回避防止規定の解釈が同族会社等の行為計算の否認に影響を与えるかどうかが問題となる。さらに、(2)②についても同様のことが言える。 2 事実認定に対する影響 【第19回】で解説したように、事実認定は、あくまでも真実の事実関係を追及すべきものであって、課税するために都合の良い事実関係を創造するものではない。そのため、制度趣旨を踏まえたうえでの事実関係の解釈には自ずと限界がある。その結果、実質主義を採用したとしても、私法上の法律構成による否認を採用したとしても、ヤフー・IDCF事件の射程は及ぼすべきではない。無論、【第24回】で解説したように、租税回避の意図があれば、表面的な法律構成と真実に意図している法律構成が異なる可能性が高いということは言えるが、それのみをもって否認できるわけではないと考えられる。 3 法令解釈に対する影響 ヤフー・IDCF事件は、制度趣旨を踏まえたうえで法令解釈をすべきであるという点が強調されたという意味で、極めて重要な判決であると言える。制度趣旨を踏まえた法令解釈は当たり前の話ではあるが、法令解釈には、文理解釈のみならず、拡張解釈、縮小解釈、反対解釈などの論理解釈もあり得る。実務上、過剰な文理解釈が強調される実務家もいるが、本来であれば、拡張解釈、縮小解釈、反対解釈などの論理解釈も検討する必要があろう。 4 課税減免規定の限定解釈に対する影響 【第29回】では、課税減免規定の限定解釈について解説を行った。繰り返しになるが、清水一夫教授は、課税減免規定の限定解釈を適用するための要件として、①本件取引に当該税法規定を適用することが、その立法趣旨を著しく逸脱する結果となることの評価根拠事実、②取引自体に経済的実質が認められないこと、③濫用の意図(租税回避目的以外に、本件取引を行った目的が存しないこと)を挙げられていた(※1)。 (※1) 清水一夫「課税減免規定の立法趣旨による『限定解釈』論の研究」税大論叢59号314頁(平成20年) 結果だけ見れば、ヤフー・IDCF事件最高裁判決が示した包括的租税回避防止規定と同様に、制度趣旨に反することや、制度の濫用という点が重視されている。その意味でも、ヤフー・IDCF事件最高裁判決が課税減免規定の限定解釈に影響を与える可能性は否定できない。むしろ、ヤフー・IDCF事件最高裁判決をそのまま課税減免規定の限定解釈に当てはめた方がすっきりと整理することができる。 本来であれば、同族会社や組織再編成に限定せずに、一般的否認規定を定めた方が望ましく、条文に明文規定が存在しない課税減免規定の限定解釈論を持ち出すのはそろそろ限界が来ていると思われる。しかし、当面の間は、ヤフー・IDCF事件最高裁判決が示した包括的租税回避防止規定の射程範囲と同様のことが、課税減免規定を濫用することにより生じる場合には、同様の否認が行われる可能性があるという点は留意する必要があろう。 5 同族会社等の行為計算の否認に対する影響 今村隆教授は、同族会社等の行為計算の否認について、経済合理性基準が確立していることから、今さら、濫用基準に変更することには問題があるとされている(※2)。ヤフー・IDCF事件の東京地裁判決、東京高裁判決を基礎とするならば、今までの同族会社等の行為計算の否認に対して積み重ねられてきた裁判例とは大きく異なることも一因であると考えられる。 (※2) 今村隆『租税回避と濫用法理』217頁(大蔵財務協会、平成27年)242頁 しかし、最高裁判決を見てみると、経済合理性や事業目的等から制度の濫用が行われたか否かを判断しており、同じような解釈が同族会社等の行為計算の否認でも可能ではないかと思われる。なぜなら、同族会社が行う租税回避であったとしても、制度の濫用を意図していることに疑いはない。しかし、具体的な濫用の有無は、①経済合理性がないかどうか、②事業目的がないかどうか等を考慮したうえで行わざるを得ない。そのため、非同族対比説ではなく、経済合理性基準説が用いられていたという事実がある。 そのような背景を考えると、同族会社等の行為計算の否認についても、ヤフー・IDCF事件最高裁判決と同様の解釈をすべきであり、かつ、そのように解しても支障がないと思われる。 次回は本連載の最終回として、租税回避の定義についてまとめることとする。 (了)
平成29年3月期決算における会計処理の留意事項 【第3回】 仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋 Ⅴ マイナス金利 企業会計基準委員会より平成29年1月27日に実務対応報告公開草案第51号「債券の利回りがマイナスとなる場合の退職給付債務等の計算における割引率に関する当面の取扱い(案)(以下、「実務対応報告51号」という)」が公表された。 実務対応報告51号では、退職給付債務、勤務費用及び利息費用(退職給付債務等)の計算において、割引率の基礎とする安全性の高い債券の支払見込期間における利回りがマイナスとなる場合に、割引率の下限をマイナスとするのか、ゼロとするのかについて「当面の取扱い」を示している(実務対応報告51号1)。 1 会計処理 退職給付債務等の計算において、割引率の基礎とする安全性の高い債券の支払見込期間における利回りが期末においてマイナスとなる場合、利回りの下限として、ゼロを利用する方法とマイナスの利回りをそのまま利用する方法のいずれかの方法による(実務対応報告51号2)。実務的には、継続性の観点から、前期に選択した方法と同様の方法を選択することが必要になると考えられる。 2 適用時期 実務対応報告51号は、平成29年3月31日に終了する事業年度から平成30年3月30日に終了する事業年度に限って適用する(実務対応報告51号3、16)。 平成30年3月31日以後に終了する事業年度については、企業会計基準委員会において、引き続き検討が行われる(実務対応報告51号16)。 Ⅵ 在外子会社等の会計処理の改正 企業会計基準委員会より平成28年12月22日に、実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い(以下、「実務対応報告18号」という)」及び実務対応報告第24号「持分法適用関連会社の会計処理に関する当面の取扱い(以下、「実務対応報告24号」という)」の改正案である、実務対応報告公開草案第49号「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い(案)(以下、「改正実務対応報告18号」という)」及び実務対応報告公開草案第50号「持分法適用関連会社の会計処理に関する当面の取扱い(案)(以下、「改正実務対応報告24号」という)」が公表された。 1 改正実務対応報告第18号 (1) 改正点 実務対応報告18号が公表されたときには、国内子会社が国際財務報告基準を適用することは想定されていなかった。また、実務対応報告18号が在外子会社に国際財務報告基準の利用を認めた趣旨を踏まえ、指定国際会計基準に準拠した連結財務諸表を作成して、金融商品取引法に基づく有価証券報告書により開示している国内子会社が改正実務対応報告18号の対象範囲に含められている(改正実務対応報告18号 平成XX年改正)。 同様に、企業会計基準委員会が公表した「修正国際基準」を国内子会社が適用する場合に関しても、改正実務対応報告18号の対象範囲に含める(改正実務対応報告18号 平成XX年改正)。 上記の国内子会社を改正実務対応報告18号の対象範囲に含めたことから、改正実務対応報告18号の表題が、「連結財務諸表作成における在外子会社の会計処理に関する当面の取扱い」から「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」に変更されている(改正実務対応報告18号 平成XX年改正)。 (2) 適用時期 改正実務対応報告18号は、平成29年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用する。ただし、改正実務対応報告18号の公表日以後、適用することができる(改正実務対応報告18号 適用時期等(5))。 なお、改正実務対応報告18号の適用初年度の前から国内子会社が指定国際会計基準又は修正国際基準に準拠した連結財務諸表を作成して金融商品取引法に基づく有価証券報告書により開示している場合において、適用初年度に「連結決算手続における在外子会社等の会計処理の統一」の当面の取扱い(※1)を適用するときは、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う(改正実務対応報告18号 適用時期等(5))。したがって、原則、遡及処理及び注記が必要となる(企業会計基準第24号「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準(以下、「遡及基準」という)」6(1)、7、10)。 2 改正実務対応報告24号 (1) 会計処理 実務対応報告24号が公表されたときには、国内関連会社が国際財務報告基準を適用することは想定されていなかった。また、実務対応報告24号が在外関連会社に国際財務報告基準の利用を認めた趣旨を踏まえ、改正実務対応報告24号では、国内関連会社が指定国際会計基準に準拠した連結財務諸表を作成して金融商品取引法に基づく有価証券報告書により開示している場合、当面の間、改正実務対応報告18号に準じることができる(改正実務対応報告24号 平成XX年改正)。 同様に、「修正国際基準」を国内関連会社が適用する場合に関しても、当面の間、改正実務対応報告18号に準じることができる(改正実務対応報告24号 平成XX年改正)。 (2) 適用時期 改正実務対応報告24号は、平成29年4月1日以後開始する連結会計年度の期首から適用する。ただし、改正実務対応報告24号の公表日以後、適用することができる(改正実務対応報告24号 適用時期等(4)、改正実務対応報告18号 適用時期等(5))。 なお、改正実務対応報告24号の適用初年度の前から国内関連会社が指定国際会計基準又は修正国際基準に準拠した連結財務諸表を作成して金融商品取引法に基づく有価証券報告書により開示している場合において、適用初年度に「持分法適用会社の会計処理の統一」の当面の取扱い(※2)を適用するときは、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う(改正実務対応報告24号 適用時期等(4))。したがって、原則、遡及処理及び注記が必要となる(遡及基準6(1)、7、10)。 Ⅶ リスク分担型企業年金 確定給付企業年金法施行令の一部を改正する政令(平成28年政令第375号)及び確定給付企業年金法施行規則(以下、「施行規則」という)等の一部を改正する省令(平成28年厚生労働省令第175号)が平成29年1月1日に施行されている。 この改正により、給付額の算定に関して、施行規則第25条の2に規定される調整率(積立金の額、掛金額の予想額の現価、通常予測給付額の現価及び財政悪化リスク相当額(通常の予測を超えて財政の安定が損なわれる危険に対応する額。以下同じ)に応じて定まる数値)が規約に定められる企業年金である「リスク分担型企業年金」が創設されている。 リスク分担型企業年金は、確定給付企業年金、確定拠出企業年金に続く「第3の企業年金」とも言われている。 1 リスク分担型企業年金 2 実務対応報告第33号「リスク分担型企業年金の会計処理等に関する実務上の取扱い」 1 リスク分担型企業年金 リスク分担型企業年金は、事業主がリスクへの対応分も含む固定の掛金を拠出することにより、一定のリスクを負い、また、財政バランスが崩れた場合(積立不足が生じた場合)には給付の調整を行うことで加入者も一定のリスクを負うことで、リスクを分担する仕組みである。 確定給付企業年金の場合、今までは、財政バランスが崩れた場合(積立不足が生じた場合)、企業が全ての負担を負い、そして、財政バランスが崩れた(積立不足が生じた)時に負担を負っていた。そのため、企業が一時点で負う負担が大きかった。 リスク分担型企業年金では、企業だけでなく、従業員も負担を負う。また、企業が、財政バランスが崩れた場合(積立不足が生じた場合)に備えて拠出する掛金も一時に負担するのではなく、毎期、負担できるようになる。 具体的な特徴は、以下のとおりである(実務対応報告第33号「リスク分担型企業年金の会計処理等に関する実務上の取扱い(以下、「リスク分担実務」という)」等の公表【参考資料】を一部変更)。 (1) リスク分担型企業年金には、基本的に標準掛金相当額、特別掛金相当額、リスク対応掛金相当額の3つの掛金がある。リスク対応掛金相当額が新たに創設された掛金である。 「標準掛金相当額」とは、給付に要する費用に充てるため、事業主が将来にわたって平準的に拠出する掛に相当する額である。別の表現をすると、算定基礎となる率(予定利率、予定死亡率、予定脱退率等)に基づき計算される掛金の額である。 「特別掛金相当額」とは、年金財政計算における過去勤務債務の額に基づき計算される掛金に相当する額である。言い換えると、過去期間分の積立不足の償却にかかる掛金に相当する。 「リスク対応掛金相当額」とは、財政悪化リスク相当額(下記(2)参照)に対応するために拠出する掛金に相当する額である。 (2) 財政悪化リスク相当額は、事業主が拠出するリスク対応掛金相当額及び毎事業年度における財政状況に応じた加入者等への給付の調整額によって分担され、各々の範囲は労使合意により「あらかじめ」定められる。 (3) 各期のリスク対応掛金相当額は、あらかじめ定めた期間で均等に拠出する方法、一定の幅の範囲内で拠出する方法又は未拠出額に一定の割合を乗じた金額を拠出する方法のうち、いずれかの方法で計算される。 いずれの方法においても、リスク対応掛金相当額の各期における拠出額又は拠出額の算定に用いる一定の割合があらかじめ規約に定められる。 (4) リスク分担型企業年金における各期の掛金額として、リスク分担型企業年金を導入するときの財政計算において、標準掛金相当額、特別掛金相当額及びリスク対応掛金相当額を合算した額が規約に定められる。 (5) 財政計算時(少なくとも5年ごとに行われる)に財政悪化リスク相当額、給付現価及び掛金収入現価は再計算されるが、新たな労使合意に基づく規約の改訂がない限りは、当初に規約に定められた掛金は見直されない。 (6) リスク分担型企業年金における受給者への給付額は、既存の確定給付企業年金と同様に加入者期間又は当該加入者期間における給与の額等に基づいて算定された金額に、財政状況に応じた調整率を乗じて算出される。 例えば、積立金と掛金収入現価の合計が給付現価を下回る(上回る)場合は、一を下回る(上回る)調整率を乗じることで給付額が減額(増額)調整される。当該調整率は、財政計算時及び毎事業年度の財政決算時に見直しが行われる。 リスク分担型企業年金は、毎事業年度における財政状況に応じて定まる調整率による調整を通じて、自動的に給付額が増減して財政の均衡が図られるように制度設計されている。 【リスク分担型企業年金のイメージ図】 2 実務対応報告第33号「リスク分担型企業年金の会計処理等に関する実務上の取扱い」 (1) 会計処理 リスク分担型企業年金では、以下の会計処理等の検討が必要である。 ① 分類 ② 掛金の会計処理 ③ 退職給付制度間の移行に関する会計処理 ④ 注記 ① 分類 退職給付会計上、退職給付は確定給付制度と確定拠出制度に分類される。そのため、リスク分担型企業年金では、まず、確定給付制度と確定拠出制度のいずれに分類されるかを検討する。 リスク分担型企業年金のうち、企業の拠出義務が、給付に充当する各期の掛金として、規約に定められた標準掛金相当額、特別掛金相当額及びリスク対応掛金相当額の拠出に限定され、企業が当該掛金相当額の他に拠出義務を実質的に負っていない(※)ものは、確定拠出制度に分類する(リスク分担実務3)。上記以外のリスク分担型企業年金は、確定給付制度に分類する(リスク分担実務4)。 なお、確定給付制度に分類されるリスク分担型企業年金の会計処理及び開示については、退職給付に関する会計基準等に従うことになるため、リスク分担実務において、当該会計処理及び開示の取扱いを示していない(リスク分担実務21)。 (※) 実際に発生することは稀と想定されるが、ある事業年度において積立金の額が零となることが見込まれる場合に、当該事業年度中における給付に充てるために必要な掛金(施行規則第64条の規定に基づき拠出される掛金で、実務上、特例掛金と称されることがある)の拠出に関する事項を規約にあらかじめ定め、規約に定められた標準掛金相当額、特別掛金相当額及びリスク対応掛金相当額に追加して当該掛金を拠出することがあり得ると考えられる。 この場合、企業は、規約に定められた標準掛金相当額、特別掛金相当額及びリスク対応掛金相当額の他に拠出義務を実質的に負っているか否かを判断することが求められるが、将来拠出する他の掛金を減額することで、掛金の現価相当額の総額が変わらないように拠出する旨を規約にあらかじめ定める場合を除いては、企業は追加的な拠出義務を実質的に負っていると考えられる(リスク分担実務18)。 確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金については、直近の分類に影響を及ぼす事象が新たに生じた場合、リスク分担実務3、4に従い、会計上の退職給付制度の分類を再判定する(リスク分担実務5)。 (注) 確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金が、分類の再判定の結果、確定給付制度に分類されることとなった場合の会計処理が論点としてある。この点について、リスク分担型企業年金を導入している企業がリスク分担実務の公表時には存在しない中、このような場合が実際にどの程度生じるか不明であることや、本論点に係る会計上の取扱いを示すためには、退職給付に関する会計基準における会計処理全般の検討に波及する可能性があることから、当該取扱いについては、今後の運用状況等も勘案し、必要に応じて検討される(リスク分担実務22)。 ② 掛金の会計処理 確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金については、規約に基づきあらかじめ定められた各期の掛金の金額(リスク分担実務10(3)に基づき未払金等として計上した特別掛金相当額を除く(下記、③(ⅲ)参照))を、各期において費用として処理する(リスク分担実務7)。 ③ 退職給付制度間の移行に関する会計処理 確定給付制度に分類される退職給付制度から確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金に移行する場合、退職給付制度の終了に該当する(リスク分担実務9)。この場合、以下の(ⅰ)から(ⅳ)の会計処理等を検討する。 (ⅰ) 退職給付債務 リスク分担型企業年金への移行の時点で、移行した部分に係る退職給付債務と、その減少分相当額に係るリスク分担型企業年金に移行した資産の額(注)との差額を、損益として認識する。移行した部分に係る退職給付債務は、移行前の計算基礎に基づいて数理計算した退職給付債務と、移行後の計算基礎に基づいて数理計算した退職給付債務との差額として算定する(リスク分担実務10(1))。 (注) 既存の退職給付制度に退職給付信託が設定されている場合、確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金への移行は、確定拠出年金への移行と同様に取り扱うと考えられる(実務対応報告公開草案第47号「リスク分担企業年金の会計処理等に関する実務上の取扱い(案)」等に関するコメント 5.主なコメントの概要とその対応(以下、「コメントの概要とその対応」という) No.21)。 したがって、既存の退職給付制度に退職給付信託が設定されている場合、当該退職給付信託は確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金に設定できないことから、当該退職給付信託は取り崩すか、移行されなかった部分があれば、未移行部分の年金資産として残すことになると考えられる。 (ⅱ) 未認識過去勤務費用及び未認識数理計算上の差異 移行した部分に係る未認識過去勤務費用及び未認識数理計算上の差異は、損益として認識する。移行した部分に係る金額は、移行した時点における退職給付債務の比率その他合理的な方法により算定する(リスク分担実務10(2))。 (ⅲ) 特別掛金相当額 上記(ⅰ)及び(ⅱ)で認識される損益の算定において、リスク分担型企業年金への移行の時点で規約に定める各期の掛金に特別掛金相当額が含まれる場合、当該特別掛金相当額の総額を未払金等として計上する(リスク分担実務10(3))。 未払金等として計上される特別掛金相当額が重要な場合は、追加情報に該当するかどうかを検討することになると考えられる(コメントの概要とその対応 No.27)。 (ⅳ) 表示 上記(ⅰ)から(ⅲ)で認識される損益は、原則として、特別損益に純額で表示する(リスク分担実務10(4))。 ④ 注記 確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金では、以下の事項を注記する(リスク分担実務12)。 【1】 「企業の採用するリスク分担型企業年金の概要」 例えば、以下の内容を記載する。 (ⅰ) 標準掛金相当額の他に、リスク対応掛金相当額があらかじめ規約に定められること (ⅱ) 毎事業年度におけるリスク分担型企業年金の財政状況に応じて給付額が増減し、年金に関する財政の均衡が図られること (注) なお、リスク分担型企業年金は新たな企業年金であるため、現時点においては、当該制度の特徴について注記する一定の意義があると考えられるが、将来的に内容が周知された場合は、企業が簡略な記載に見直すことも考えられる(リスク分担実務31)。 【2】 「確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金に係る退職給付費用の額」 リスク分担実務第7項に基づき、費用処理した額(上記②参照)を確定拠出制度に係る退職給付費用の額として注記する。 【3】 「翌期以降に拠出することが要求されるリスク対応掛金相当額及び当該リスク対応掛金相当額の拠出に関する残存年数」 規約に定められる所定の方法によりあらかじめ定められた、翌期以降に拠出することが要求されるリスク対応掛金相当額及び当該リスク対応掛金相当額の拠出に関する残存年数を注記する。 (2) 適用時期 リスク対応実務は、平成29年1月1日以後適用する(リスク分担実務13)。 (了)