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《速報解説》 増加型の廃止に伴う総額型の控除率見直し、サービス開発の適用等、研究開発税制の改正事項~平成29年度税制改正大綱~

筆者:安積 健

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 《速報解説》

増加型の廃止に伴う総額型の控除率見直し、

サービス開発の適用等、研究開発税制の改正事項

~平成29年度税制改正大綱~

 

 

辻・本郷税理士法人
税理士 安積 健

 

以下では、平成29年度税制改正大綱(与党大綱)で示された研究開発税制(及び中小企業技術基盤強化税制)の改正内容についてまとめることとする。増額型の廃止に伴う総額型の控除率の見直しや2年間の拡充措置、試験研究費へのサービス開発の追加などが行われている。

 

改正の全体像

改正前
上乗せ措置   :  C増加型         D高水準型 選 択 本体(恒久措置):  A総額型    +    Bオープンイノベーション型 税額控除率8%~10%(中小企業者等は一律12%)

改正後
上乗せ措置   :  C増加型→廃止      D高水準型→延長  本体(恒久措置):  A総額型    +    Bオープンイノベーション型 →控除率の仕組みの変更  →運用改善

 

(1) 総額型

改正前
試験研究費の額×税額控除率(8%~10%)

[税額控除率]

・試験研究費割合≧10% ⇒ 10%

・試験研究費割合<10% ⇒ (試験研究費割合×0.2)+8%

(注) 試験研究費割合=当期試験研究費/当期及び前期以前3期の平均売上金額

改正後
試験研究費の額×税額控除率(6%~10%)

[税額控除率]

・増減割合>5% ⇒ 9%+(増減割合-5%)×0.3

・増減割合≦5% ⇒ 9%-(5%-増減割合)×0.1

・増減割合<-25% ⇒ 6%

(注) 増減割合=試験研究費増減差額(試験研究費の額-比較試験研究費の額)/比較試験研究費の額

《ポイント》

増加型の廃止((2)参照)に伴って、総額型の控除率について、試験研究費の増減に準じてメリハリがつく仕組みを導入

 

(2) 上乗せ措置

改正前

試験研究費の増加額に係る税額控除又は平均売上金額の10%を超える試験研究費に係る税額控除の選択制(~H29.3.31開始各事業年度)

改正後

試験研究費の増加額に係る税額控除
⇒ 廃止(~H29.3.31開始各事業年度)

平均売上金額の10%を超える試験研究費に係る税額控除
⇒ 2年延長(~H31.3.31開始各事業年度)

 

(3) 時限措置(2年間)

① 総額型

税額控除率の上限を14%(原則10%)とする。

② 中小企業技術基盤強化税制

試験研究費の増加割合が5%超の場合、次の通りとする。

(ア) 税額控除率
12%+(増加割合-5%)×0.3・・・上限17%

(注) 増加割合=(試験研究費の額-比較試験研究費の額)/比較試験研究費の額

(イ) 控除税額の上限
法人税額×25%+法人税額×10%
(平均売上金額の10%を超える試験研究費に係る税額控除制度との選択制)

③ 高水準型

試験研究費の額が平均売上金額の10%を超える場合には、平均売上金額の10%を超える試験研究費に係る税額控除制度の適用に代えて、次の措置を適用できる。

(注) 平均売上金額=当期を含む4年間の売上金額の年平均額

(ア) 総額型
[控除税額の上限]
法人税額×25%+法人税額×{(試験研究費割合-10%)×2(10%上限)}

(イ) 中小企業技術基盤強化税制
[控除税額の上限](上記②(イ)との選択制)
法人税額×25%+法人税額×{(試験研究費割合-10%)×2(10%上限)}

(注) 試験研究費割合=試験研究費の額/平均売上金額

 

(4) 試験研究費の範囲

改正前

製品の製造又は技術の改良、考案若しくは発明に係る試験研究に要する費用

改正後

上記に、対価を得て提供する新たな役務の開発に係る試験研究のために要する一定の費用を加える。

(注) 一定の費用
対価を得て提供する新たな役務(新サービス)の開発を目的として行う次の業務に要する原材料費、人件費(※1)及び経費(※2)並びに委託費(※3)

(ア) 大量の情報を収集する機能を有し、その全部又は主要な部分が自動化されている機器又は技術を用いて行われる情報の収集(データの収集)

(イ) その収集により蓄積された情報について、一定の法則を発見するために、情報解析専門家により専ら情報の解析を行う機能を有するソフトウェア(これに準ずるソフトウェアを含む)を用いて行われる分析(データの分析)

(ウ) その分析により発見された法則を利用した新サービスの設計(サービスの設計)

(エ) その発見された法則が予測と結果の一致度が高い等妥当であると認められるものであること及びその発見された法則を利用した新サービスがその目的に照らして適当であると認められるものであることの確認(サービスの適用)

(※1) 人件費
情報解析専門家(その業務に専ら従事する情報の解析に関する専門的な知識を有すると認められる者)に係るものに限る。

(※2) 経費
外注費にあっては、これらの原材料費及び人件費並びに外注費以外の経費に相当する部分に限る。

(※3) 委託費
これらの原材料費、人件費及び経費に相当する部分に限る。

《ポイント》

第4次産業革命を強力に推進するため、AIやビッグデータ等を活用した高付加価値なサービス開発を支援
[研究開発税制の対象に加えるための要件]
→工学的・自然科学的手法を伴う研究開発によって、

 既存サービスを再設計し、既存サービスの提供価値自体を高める。

 新規サービスを設計し、新たな顧客価値を提供する。

〔具体例〕

料理の提供時間の短縮や最適化等、付加価値を高めるための研究開発

熟練農家のノウハウをデータとして収集・分析することで、熟練農家の農作業の判断を見える化し、若者など非熟練農家の農作業にかかる判断を支援するサービスの開発

 

(5) オープンイノベーション型(特別試験研究費の額に係る税額控除制度)

① 共同研究及び委託研究に係る自社外試験研究費の範囲拡充

改正前

共同研究及び委託研究に係る相手方が支出する費用で自己が負担するものについては対象費目が限定されており(原材料費、人件費、旅費、経費及び外注費)、間接経費(光熱費や修繕費等)が含まれない。

改正後

対象範囲を、研究に要した費用の総額とすることにより、研究に必要な間接経費も含むものとする。

② 契約変更の場合の取扱い

改正前

契約変更があった場合には、その契約変更日以後に支出した費用のみが対象。

改正後

契約変更前に支出した費用であっても、その契約に係るものであることが明らかであり、かつ、その支出日と契約変更日が同一の事業年度内にある場合には対象とする。

③ 対象費用の額の確認

改正前

対象費用の額の確認について、費用内訳と領収証等との突合が必要と考えられている。

改正後

対象費用の額の確認について、領収証等との突合までは求めないことを明確化する。

《ポイント》

企業や相手方(大学、他の企業等)の実務に合わない手続の負担により、制度が十分に利用されていないため、手続要件を企業活動の実態に合わせて緩和

(了)

連載目次

 

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筆者紹介

  • 安積 健

    (あづみ・けん)

    辻・本郷税理士法人
    税理士

    平成2年早稲田大学政治経済学部卒業。平成4年税理士試験合格。
    平成8年本郷会計事務所(現辻・本郷税理士法人)入所。
    平成15年税理士登録。

    現在は審理室部長として、税務署に提出する法人税や相続税の申告書等の審査に従事しているとともに、セミナーの講師や原稿の執筆等も行っている。

    【著書】
    『Q&A重要税務事例45』(税務経理協会)
    『交際費・寄附金の実務』(清文社、共著)
    ほか

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