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プロフェッションジャーナル No.133が公開されました!~今週のお薦め記事~

2015年8月27日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.133を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -イケプロが実践するPJの活用術、第一線で活躍するプロフェッションからの声を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2015/08/27

山本守之の法人税“一刀両断” 【第14回】「収益・費用の認識基準をどう考えるか」-設計業務の場合-

山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第14回】 「収益・費用の認識基準をどう考えるか」 -設計業務の場合-   税理士 山本 守之   1 認識基準の考え方 収益の認識基準(いつ売上げに計上するか)については、次の4つの基準がありました。 しかし、「所得税法及び法人税法の整備に関する答申」(税制調査会・昭和38年12月)では、上記4つのうち、「法的基準は所有権の移転又は役務の提供があったとしながらも、具体的な運用は引渡し又は同時履行の抗弁権を失ったときとすることに近くなる」としたのです。 所有権の移転は「売りましょう、買いましょう」という意思表示をしたときですが、品物を引き渡す前に代金を払えというと、相手方は品物を引き渡さない限りは代金を払わないという「同時履行の抗弁権」を主張します。そこで、品物の引渡し時に売上げに計上すべきだという考え方もできます。 このような考え方を前提として法人税基本通達等において個別的な認識基準を定め、さらに、昭和55年に企業の取引実体に即応する改正を行って現在に至っているのです。 特に現行通達のなかには、「客観的にみてそこで収益が実現したといえるような状態があり、しかも会計の面からみて、これを会計事実として記帳するに適した状態というのは一体どういった状況のことをいうのか、といった面から考えるべきこと」とする態度が貫かれているように思われます。   2 基本通達の仕組み 現行の法人税基本通達では、収益・費用の認識基準は次のような仕組みから成り立っています。   3 設計事務所の事例 〔事 例〕 当社は建物の設計業務を営んでいますが、このほど税務調査を受けました。 ここで問題になったのは、設計を終了し、設計図を相手方に引き渡したものがあり、その設計内容に相手方から問題を指摘され、比較的大きな点(耐震基準)に変更があり、期末までに変更業務が終了していないので当期の売上に計上していないものについて、調査官は次の通達を基準として当期の売上げに計上するように要求しています。 つまり、設計業務は物の引渡しを要するものではないから業務が終了していれば売上げに計上すべきだというのです。   〔検 討〕 請負契約は、当事者の一方が仕事の完成を約し、相手方がその約した仕事の結果に対して報酬を支払うことを約する契約です。 請負に関する報酬の請求権は、仕事を完成してその目的物を相手方に引き渡した時(物の引渡しを要しないときは、約した仕事を完了した時)に発生することとされています(民法632-633)。 法律的には諾成契約であり、建設請負、運送等が典型的なものですが、他人の委託を受けて行う測量、設計、企画、試験研究等が含まれ、有形であると無形であるとを問いませんが、完成された仕事の結果を目的とする点で雇用・委任の各契約とは異なります。 法人税法では、前述した報酬の請求権という法的基準の影響が強く、収益の計上は次のように取り扱われています(法基通2-1-5)。 これは、いわゆる「完成基準」と呼ばれるものです。   4 技術役務の提供の場合 技術役務の提供も請負の一形態にすぎませんから、これによって受ける報酬も、その約した役務の提供の全部の提供が完了した時点で収益計上するのが原則です。 しかし、人的役務の提供の場合等は、派遣技術者の数や滞在日数等で、いわゆる人月計算や人日計算をしている例も少なくありません。また、設計の請負などについても、基本設計に係る報酬と部分設計や実施設計に係る報酬とがそれぞれ独立して計算し、その都度支払を受けることもあるでしょう。 そこで、次に掲げるように、その提供が部分的に完了した都度その部分について報酬の支払を受けるような事実関係にある場合には、全体の役務提供の完了を待たずに、その部分的に支払が確定した報酬につき、その都度収益計上すべきものとしています(法基通2-1-12)。 上記の(イ)、(ロ)は、民法上の報酬後払いの原則からみれば、やや「きつすぎる」という批判もありましょう。 通達といえども人間が定めたものです。取扱いに「やや、きついな」と思う部分があれば、これを緩和する取扱いも考えるものです。 次に述べる技術役務提供の原価(法基通2-2-9)は、全体として取扱いのバランスを取るために置かれたものです。通達をみていて納得ができない部分があれば、「納得できない!」と叫んでください。バランスを取るための取扱いがあるものです。   5 技術役務提供の原価 技術役務報酬に対応する原価については、その性質からみて個々の報酬ごとにその原価を客体対応させることが困難な場合が多いものです。このため、税務では、継続適用を要件として、次のものについては支出時損金として原価に含めないで計算することを容認しています(法基通2-2-9)。 ここでは、厳密な収益対応計算を要求しないで、変動費のうち一般管理費的要素を持つものを除いた金額だけで原価計算を行い、その他の費用については支出の都度、損金算入するという経理基準の採用を認めているのです。 このような割切りをしたのは、技術役務に係る報酬の収益計上時期(法基通2-1-12)と重要な関わりを持っています。すなわち、収益計上時期については、一種の部分完成的な要素を加味して益金の額に算入することを要求しているので、原価についてもあまり厳密な対応計算を要求しないで、できるだけ期間費用として認めることにしたものです。 つまり、収益計上時期を定めた法人税基本通達2-1-12と原価に算入しないことのできる費用を定めた法人税基本通達2-2-9とは一体として機能するものなのです。もっとも、報酬と直接対応関係にある変動費で、その金額が大きなものは原価外処理することは適当ではないので、これについては原則どおり収益との対応計算を要求しています。 これらの取扱いをまとめると、次の図のようになります。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 手作業で設計をする場合の原価はエンピツと紙と人件費ぐらいのものでしょう。このうち大部分を占める人件費は固定費ですから、原価外処理として「未成製図支出金」として資産に計上しないで、支出の都度損金とすることができます。 一方、売上げはすべての作業が終了してから計上できますから、費用が先、売上げが後から計上できて有利です。 売上げについて「きつい」取扱いを置いているので、原価については「やわらかい」取扱い(中元通達又はお歳暮通達)を置いてバランスを取っているのです。   6 事例はどうなるか 事例のように、物の引渡しを要しない請負契約に分類される調査、設計についても、相手方の検査(検収)という行為が予定されているものがありますが、この場合に引渡しという事実認定基準が適用される余地はないのでしょうか。 この点について注目すべき判示(平成元年9月29日札幌地裁、平成3年2月19日同高裁)があります。 ここでは、法人税基本通達2-1-5を一般論として支持しつつも、測量、設計及び調査における収益計上時期について、測量、設計及び調査等の結果を係争事業年度に引き渡したことが確認できるとして、その日を含む事業年度の収益として更正処分を支持しています。 結果としては原処分を支持しているものの、物の引渡しを要しない請負収益の計上時期を役務完了の時として捉えるのではなく、引渡しという事実を認定して収益計上時期を判定しているところに着目したいものです。 事例の設計のように相手方の検査(検収)が予定されている場合には、「役務提供の完了」という通達上の収益計上基準のなかに、役務提供の成果が相手方に提示され、しかも、検査を受けていることを要するという解釈が入る余地が十分にあるということです。 この意味からすれば、物の引渡しを要しないとされる請負契約においても、一種の検収基準を適用できるといえましょう。 技術役務の提供について通達上は検収基準を置いていませんが、実務上は検収基準を適用することが正しいようです。 (了)

#No. 133(掲載号)
#山本 守之
2015/08/27

消費税の軽減税率を検証する 【第6回】「執行コストの増大と事業者の優遇措置としての効果」

消費税の軽減税率を検証する 【第6回】 「執行コストの増大と事業者の優遇措置としての効果」   税理士 金井 恵美子     【2】 複数の税率の存在は執行コストを増大させる 1 対応に追われる国税庁通達とQ&A 軽減税率の実施に当たっては、膨大な通達が必要になる。近時、国税庁は新しい制度についてQ&Aを公表するのが常となっており、その策定も求められよう。 そしてこれらは、実務からの要請で見直され、複雑化していくことになる。 企業が日々商品開発を行う中、軽減税率が適用されるのか、標準税率が適用されるのか、判断が難しい限界事例は後を絶たず、したがって、法律の改正がなくとも、通達やQ&Aの更新が必要であり、審理事案も増加する。 これが国税庁のランニングコストに加わることとなる。 新しい商品が続々と開発される中、これに即応して法律を改正することが不可能であることは、物品税の経験から明らかである。 しかし、そもそも、法律制定時に想定されていなかった新しい商品について、納税者が納付する税額を決定する「適用税率」の判断を国税庁の通達やQ&Aに委ねることが、租税法律主義において許容されるのかといった本質的な疑問も生じるのである。 2 適用税率と税務調査 売上側が軽減税率を適用し、仕入側が標準税率を適用した場合には、その差額は、国庫の負担となってしまう。 単一税率にはない、新たな国庫負担の危険である。 EUでは、取引当事者の税率はインボイスによって一致させるのであり、インボイス方式は、事業者登録制度によって担保されている。事業者は、登録した事業者番号(VAT-ID)と連番のインボイス番号を付したインボイスによって納税の責任を明らかにしてこれを発行し、発行する側も受領した側も、インボイスに記載された税額を積み上げて申告の基礎とする。 EUの付加価値税は、インボイスによって納税の義務と控除の権利を授受するしくみであり、インボイスは、金券の役割を果たすことになる。しかし、このような事業者登録制度を基礎としていても、インボイスの不正発行、不正入手による脱税が問題となっている。 日本に消費税が導入されるころにはすでに、インボイスを偽造することのみを目的とした会社が次々と設立される(※1)という事態となっていたのである。 (※1) 増田英敏「付加価値税法(Value-Added Tax Law)におけるTax Evasionと税務調査(Ⅱ)-EC諸国の経験を踏まえて-」税経通信45巻10号16頁(1990年) 創設以来、事業者登録制度をもたない日本の消費税がEU型のインボイス方式に転換することは容易ではない。そこで、「検討資料」では、税率一致の方法の1つとして、事業者登録制度がないことを前提にVAT-IDを記載しない税額別記請求書等を納税額の計算基礎とする案が示されている。これは、納税の義務が担保されない金券の発行を認めるものであり、EU諸国の常識からは驚愕の妥協案ということになるが、現在のところ、EU型インボイスよりも実現の可能性は高いといえるだろう。 というのは、平成27年度改正において、国外事業者が行うデジタルコンテンツの提供に課税するため、内外判定の基準を変更しリバースチャージ方式を導入する改正が行われたが、リバースチャージ方式の対象となる取引であるかどうかは、国内事業者についての登録制度がないことを前提としており、提供される役務の性質や取引条件等によって判断することとされている(消法2①八の四)からである。 結局、税率の操作による脱税は、税務調査の機会を増やして抑止するしかない。 事業者に脱税の意図がなかったとしても、複数の税率が存在する場合、適用する税率を誤るケースは必ず発生する。税務調査では、単純なミスにせよ、脱税にせよ、売上側と仕入側との税率が一致して課税のチェーンが正しくつながっているかどうかを確認しなければならない。 矢澤富太郎氏は、1984年当時、アメリカで付加価値税を導入した場合には、立ち上がりの4年間で7億ドルの経費と2万人の人員を要するとの試算があり、ただし、その前提は、調査割合2.2%で、課税事業者1,000件につき税務職員1人を配置するものであり、欧州は課税事業者250人ないし150人につき1人の税務職員の配置で10%ないし15%の調査割合である、と報告している(※2)。 (※2) 矢澤富太郎「付加価値税と税務行政-欧州諸国の経験に学ぶ」税務弘報36巻7号16頁(1988年)。増田英敏「付加価値税法(Value-Added Tax Law)におけるTax Evasionと税務調査(Ⅲ)-EC諸国の経験を踏まえて-」税経通信45巻11号31頁(1990年)は、「大部分の国では登録済の納税義務者の15%から20%が、1年に調査対象となる」としている。 日本では税務調査の手続を法定する国税通則法の改正以後、実調率が低下している。平成24年度の実地調査件数は前年より3割程減少し、実調率は3.1%と過去最低となった(※3)。 (※3) 国税庁「平成24事務年度法人税等の調査事績の概要」    国税庁「税務行政の現状と課題」 3 税務争訟 適用税率に疑義がある場合は、その税率をめぐる税務争訟も生じよう。 EUでは、税率をめぐる訴訟が絶えない。   【3】 事業者に対する優遇措置としての効果がありロビー活動を誘発する 1 事業者に対する優遇措置としての効果 自由競争を基本とする経済においては、商品の種類や販売の方法によって異なる税率を適用することは、極力避けるべきである。軽減税率は、財の公平性を撹乱させ、取引や企業の業績に影響し、産業の自由な発達を阻害する危険がある。軽減税率の導入は、一般消費税の制度の中に、産業間の競争に対して非中立的という個別消費税の欠点を持ち込むものである。 需要と供給の均衡点が税率の引下げによって移動すれば、均衡取引量が増加する分だけ、事業者の利益は大きくなる。 また、軽減税率の適用が販売価額の引下げにつながるかどうかは不明であることは第4回で述べたが、消費者にとって、軽減税率適用という表示は、値引きの表示に等しい。販売価額が同じでも、定価が安く値引きのないものよりも、定価が高く値引きのあるものを購入したときの方が得をしたと感じるものである。 軽減税率は、適用対象となった商品の販売促進力となり、販売額を伸ばしてもそこから計算される事業者の納税額は標準税率のそれよりも小さく、したがって、軽減税率は、それが適用される物品またはサービスを提供する業界への優遇措置となる。 2 ロビー活動を誘発する 平成26年7月から8月にかけて与党税制協議会が行ったヒアリングでは、全国消費者団体連絡会、全国農業協同組合中央会、日本生活協同組合連合会、日本チェーンドラッグストア協会などが軽減税率の導入に賛成の意見を表明し、日本新聞協会は新聞に、住宅生産団体連合会は住宅に、日本薬剤師会は医薬品に、それぞれ軽減税率の適用を求めている。 日本新聞協会の主張は、新聞は、民主主義社会の健全な発展と国民生活の向上に寄与するものであり、知識への課税強化は文化力の低下をもたらすというものである(※4)。 (※4) 「新聞に消費税の軽減税率適用を求める声明」(日本新聞協会、2013年1月15日) 現在、非課税の対象となり、仕入税額控除が制限されている業界も、非課税から軽減税率への転換を求める可能性が高い。 例えば、日本医師会は、「社会保険診療は非課税なので、課税転化したときに、患者さんのことを考えて低い税率に抑える。・・・世の中の軽減税率とは違う議論で進めるよう、党税調に強く要望しています。」(※5)として、社会診療報酬を非課税から課税に転換し、軽減税率を適用することを求めている。 (※5) 今村聡「消費税率アップを目前にして~日本医師会の考え方~」月刊卸薬業37巻9号15頁(2013年) これらは、その分野の特殊性を前面に押し出しての主張である。しかし、どのような業界にも世に貢献しているという自負はあるだろうし、消費者を保護するために我々(が行う提供)に軽減税率が適用されるべきだという主張が存在するだろう。 現在、非課税の適用を受けるものが、こぞって課税への転換と軽減税率の適用を求めたならば、病院に仕入税額控除が認められ、学校に仕入税額控除が認められないといった状況を説明することは困難である。 生活必需品について軽減税率の適用を求める消費者の声は、各業界の「我々に軽減税率を」という要求となって制度の構築に反映されることになる。 軽減税率を獲得した事業者(業界)が、これを放棄することはあり得ない。軽減税率から標準税率への移行は、その業界にピンポイントで重課する決定に等しい変化を生じさせるからである。 軽減税率は業界の既得権となり、ロビー活動によって拡大してゆく恐れがある。平成16年9月の「税制調査会海外調査報告」では、スウェーデン財務省のコメントとして、 と報告されている。 (了)

#No. 133(掲載号)
#金井 恵美子
2015/08/27

これだけ知っておこう!『インド税制』 【第2回】「インドの個人所得税」

これだけ知っておこう! 『インド税制』 【第2回】 「インドの個人所得税」   公認会計士・税理士 野瀬 大樹   前回はインドにおける法人所得税について触れたが、今回より身近な「個人所得税」について解説する。 この個人所得税においても、税金の計算構造は基本的に日本と同じである。 ただし、こちらも法人所得税と同様、細かな点で違いがある。   1 必要経費と各種控除 まず日本においてはサラリーマンであっても「給与所得控除」という形の「経費」が最低65万円認められているが、インドにおいてはこれに該当するものがない。同様に日本においては基礎控除が38万円、結婚して、かつ配偶者が働いていない場合はさらに38万円の配偶者控除が認められているが、これもない。 子どもがいる場合は少しの所得控除が認められているが、その金額も無視してよいほど小さなものなので、あくまでイメージだが「ほぼ額面に税率がかかる」と考えてよいと思われる。 また、数年前に日本でも話題になった「特定支出控除」、これに類似する制度がインドにもあるのだが、仮にインド人の従業員側から、この制度についての依頼を受けたとしても、運用は現実問題としてなかなか難しいと考えらえる。 理由は簡単で、日本の特定支出控除と同様、そのエビデンスとなるインボイスなどが必要になるのだが、従業員側が税金を減らしたい一心で、手書きで修正したり、そもそも架空のインボイスを持ってくるケースが少なくなく、後で税務上のトラブルになるからである。 よほど信頼できる従業員ならよいが、制度上認められているからといってすべてOKとするには問題があるので注意が必要である。   2 税率 次は税率だが、税率は下のように定められている。 最低5%から始まり最大40%、10%の住民税を考慮すると15%~50%の負担である日本と比べるとインドの税率は一見低いよう思われる。 ただし、先ほど述べたように、インドでは日本と異なり給与所得控除や基礎控除、配偶者控除等がなく、少し乱暴だが、ほぼ給与額面そのものにこの税率がかかるとイメージすると、インドの税負担の重さが実感できるかと思われる。 インドに進出している日本企業のほぼ全てが苦しんでいるのがこの「個人所得税」にあると言われる原因もここにある。   3 個人所得税が日本企業の足かせになる理由 日本企業、特に規模の大きな企業には従業員規則があり、インドに駐在する駐在員であっても「日本にいる時の『手取給与』を保証した上で、インドでの給与を決める」という方式を取っているケースがほとんどである。いわゆる「手取保証方式」である。 そういった場合、先述のようなインドの税制を加味すると、グロスアップ計算(注)によりインド法人が負担するべき額面給与が膨大な金額になり、インド法人の利益を圧迫することになる。 特にこの問題はJVの場合顕著で、JV先があまりに高い日本人額面給与に驚き、その負担を拒否するケースも散見される。給与の支払拒否は所得税納税の遅延につながり、駐在員のビザや在留許可にも大きな影響を及ぼすため、事前に入念なシミュレーションが必要となる。 こういった事態を回避するために、日本企業はいくらかの給与を日本本社から払うという対応をとるのだが、その場合にもインドにおけるPEの問題や、日本における寄付金の問題が生じるため、100%全ての問題を解決するのは難しい。   4 対象となる従業員 インドにいるすべての人がインドの個人所得税を納めるということではない。当然だが、たった1週間だけ日本からタージマハル観光に来た人が、インドで確定申告する必要はない。 インドにおいては、個人を3つのカテゴリーに分けて、納税の範囲を定めている。 まず「年182日以上のインド滞在」か「60日以上の滞在かつ、過去4年に合計365日滞在」の人は「居住者」とみなされ、それ以外を「①非居住者」と呼ぶ。 そして居住者のうち「過去10年のうち、9年は非居住者である」または「過去7年において滞在が729日以下」であれば「②非通常の居住者」、そうでなければ「③通常の居住者」となる。 ①から③の所得に対する課税関係は以下のとおりである。   5 計算期間 日本の場合、個人所得税の計算期間は1月~12月で固定されているが、インドの場合は法人と同じ4月~3月で固定である。   6 申告のタイミング 給与については日本と同様、源泉徴収により納税が行われる。 ただし、給与以外の所得を得ている場合は、話は少しややこしくなる。 まず前納制度であるが、年間納付予定額の30%を9月15日までに、60%を12月15日までに、残りを3月15日までに納付する必要がある。 JV先に日本で支払われている給与を隠したい場合は、あえてこの前納制度をとって、納税のみ筆者のような日系会計事務所に依頼しているケースも散見される。 どちらにしても7月31日までには、確定申告書を提出する必要がある点には注意が必要である(ただし、平成27年度は政府から申告書フォームの発表が遅れたため、個人所得税申告期限が8月末に延期されている)。 (了)

#No. 133(掲載号)
#野瀬 大樹
2015/08/27

連結納税適用法人のための平成27年度税制改正 【第10回】「所得拡大促進税制・その他の租税特別措置法上の見直し」

連結納税適用法人のための 平成27年度税制改正 【第10回】 「所得拡大促進税制・その他の租税特別措置法上の見直し」   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト パートナー 足立 好幸   [10] 連結納税適用法人に係る所得拡大促進税制の見直し 連結納税制度に係る所得拡大促進税制は、連結グループ全体で適用要件を満たした場合に、連結グループ全体の給与等増加額の10%を連結税額控除額とし、各連結法人の給与等増加額の割合によって個別帰属額を計算することとなる(措法68の15の5、措令39の46)。 1 改正の内容 (1) 改正の概要 雇用者給与等支給額が増加した場合の税額控除制度における増加促進割合の要件について、次の法人の区分ごとに次の見直しを行う(措法68の15の5①・②五)。 ① 中小連結親法人及びその連結子法人 平成28年4月1日以後に開始する適用年度について、3%以上(改正前5%以上)とする。 ② 上記①以外の法人 平成28年4月1日から平成29 年3月31 日までの間に開始する適用年度について、4%以上(改正前5%以上)とする。 (2) 改正後の所得拡大促進税制 連結親法人及び各連結子法人が、適用年度(注1)において国内雇用者(注2)に対して給与等(注3)を支給する場合において、次の3つの要件を満たすときは、連結法人税額(注4)から雇用者給与等支給増加額(注5)の10%に相当する金額(税額控除限度額)を控除する(措法68の15の5①)。 この場合において、税額控除限度額が、連結法人税額の10%(連結親法人が中小連結親法人(注6)である場合には、20%)に相当する金額を超えるときは、その控除を受ける金額は、10%相当額を限度とする(措法68の15の5①)。 [所得拡大促進税制に係る税額控除額の個別帰属額の計算方法] 上記で計算された連結税額控除額は、次のように各連結法人に配分計算される(措法68の15の5⑥、措令39の46⑱)。 [地方法人税における所得拡大促進税制に係る税額控除額の取扱い] 法人税における所得拡大促進税制の税額控除額は、地方法人税の課税標準となる基準法人税額の計算において連結法人税額から控除される(地方法6三)。 この場合、各連結法人の所得拡大促進税制の税額控除額の個別帰属額に4.4%を乗じた金額が地方法人税個別帰属額の計算において減算される(措法68の15の5⑥、地方法15①)。 [住民税における所得拡大促進税制に係る税額控除額の取扱い] 中小連結親法人又は各連結子法人の各連結事業年度の個別帰属法人税額(道府県民税及び市町村民税の課税標準)の計算において、法人税における所得拡大促進税制に係る税額控除額の個別帰属額は個別帰属法人税額から控除される(連結法人税個別帰属額に加算しない。地方税法附則8⑧、地法23①四の三、292①四の三)。 中小連結親法人に該当しない連結親法人又は各連結子法人については、個別帰属法人税額から控除されない(連結法人税個別帰属額に加算する)。なお、この場合、連結親法人が中小連結親法人に該当するかどうかについては、当連結事業年度終了時の現況によって判定するものとする(「地方税法の施行に関する取扱いについて(道府県税関係)の一部改正について」総税都第22号50の6(3)、「地方税法の施行に関する取扱いについて(市町村税関係)の一部改正について」総税市第22号45の6(3))。 2 適用時期 平成27年4月1日以後に開始する連結事業年度について適用される(平成27年所法等改正法附則72)。   [11] その他の租税特別措置法上の見直し 下記について、単体納税と同様の改正が行われた。 (了)

#No. 133(掲載号)
#足立 好幸
2015/08/27

組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第33回】「非公開裁決事例④」

組織再編・資本等取引に関する最近の裁判例・裁決例について 【第33回】 「非公開裁決事例④」   公認会計士 佐藤 信祐   今回、紹介する事件は、関連会社に対して非上場株式を譲渡した場合において、時価よりも低廉な価額で譲渡したものとして寄附金として否認された事件である。 非上場株式をどのように算定するのかという点は、実務上も頻繁に問題となる点である。なお、平成22年9月1日の裁決事例は、TAINSコードF0-2-401とF0-2-400の2つがあるが、いずれも非上場株式の譲渡価額について争われた事件であり、その内容も似ているため、本稿では、F0-2-401についてのみ解説を行う。   18 平成22年9月1日裁決(TAINSコード:F0-2-401) (1) 事件の概要 本事件は、審査請求人(以下「請求人」という)が保有している株式を関係法人へ譲渡したことに関し、原処分庁が、当該株式の譲渡価額は時価に比して低廉であり、当該譲渡価額と時価との差額は請求人から上記関係法人への寄附金に該当するとして法人税の更正処分をしたのに対し、請求人が、当該株式の譲渡価額は時価であるとして、原処分の全部の取消しを求めた事件である。 なお、本事件は、請求人がM&Aにより取得した株式を、初期投資額からそれまでに受け取った配当を控除した金額で関係法人へ譲渡しているという点に特徴がある。しかしながら、当該関係法人との出資関係、取引関係等については、黒塗りにされているため、詳細な内容は不明である。 (2) 原処分庁の主張 本件株式の譲渡先である■■■■■は、■■■■が代表取締役を務める法人であり、同社の役員等を■■■■■の代表取締役等として派遣していることから、■■■■■及び■■■■は、請求人の意思決定について大きな影響力があると認められる。■■■■■は請求人に■■■■■■の多額の利益配当(資本金への組み入れを含む。)を行っていることから、本件株式の保有期間中に財務状況が悪化した事実はなく、純資産価額を下回る価額で本件株式を売却することは通常考えられない。 本件株式は、非上場株式であることから、証券市場で取引される株式と単純に比較すべきではなく、また、有価証券発行法人の純資産価額等に占める有価証券の譲渡価額の割合を算出し、低廉譲渡か否かを判断する旨の規定はない。 (3) 請求人の主張 請求人は、本件株式の取得後、業界の不安定性、知識不足及び人材不足から本件株式の転売を考えていたが、■■■■■の他に買手は見つからず、他方で請求人は、本件取引当時、様々な理由で多額な資金を必要としていた。本件取引価額は、■■■■から一方的に押し付けられたものではなく、請求人として必要な検討をした後に、譲歩できるぎりぎりの価額かつ公平な価額と確信して申し出た価額であり適正なものである。 通常の株価の形成は、決算書などによる財務情報だけではなく、株式発行法人の将来性、取扱商品の市場動向及び経済状況の変化などの影響も受けるのであり、証券市場では現に株式の帳簿純資産価額を大幅に下回る価額で株価が形成されているケースも多数ある。 (4) 国税不服審判所の判断 請求人及び■■■■■が算定していた本件株式の純資産価額は、請求人が■■■■■に対して購買代行の引受けをさせることが目的であることから、その評価方式に純資産価額方式を採用することが最も合理的である。 本件取引は、■■■■■にとって■■■■■の子会社化による購買代行業務の効率化の効果を併せて考えると、請求人側に一方的に売り急いでいた等の事情があったとは認めがたい。 本件株式の取得の経緯や■■■■■の収益性からしても、特に低い価額で手放さなければならない合理的理由はない。 本件株式の取引に当たって、第三者間の取引と同視できるような価額を算定できる環境にあったとは認め難い。 値引交渉ポイントの4項目として、①売上げ及び利益の不安定性並びに業界の低成長性、②経営トップの引退懸念、③■■■■■の競合企業への年間売上高、④■■■■在庫を理由として、■■■■■■減額した約■■■■■■を最終の交渉価額として算出しているが、これら値引交渉ポイントの個別的事情、具体的金額の記載はなく、値引交渉ポイントの控除後の価額が■■■■■■という大まかなラウンド数字であることをみてもその価額の合理性に疑義が生じるのである。これに併せて、■■■■■の交渉価額の算定過程において、上記(2)のロの(イ)のとおり、■■■■■は同社のコスト削減というメリットを捨象して本件取引価額を算定したことが不自然であることを考えると、これらの値引交渉ポイントは、通常の取引における市場価格の形成要因としてのバランスを欠くものというべきである。 (5) 評釈 このように、国税不服審判所は純資産価額を下回る金額で譲渡をしたことにつき、低廉譲渡として寄附金認定を行っている。 なお、認定事実を見てみると、「■■■■■は、■■■■■の■■■■■■■の確定決算前の決算書案を基に、本件株式の価額を純資産価額で算出した上で、■■■社長に対し、一般に上場有価証券等以外の株式の時価は純資産価額が最低価額になる旨説明をしたところ」という記載があったことから、当事者の間では、純資産価額を下回る価額で譲渡することについては、寄附金として認定される可能性があるというリスクを認識していたものと推定される。 また、黒塗りが多すぎるため、確定的なことは言えないものの、純資産価額の算定につき、財産評価基本通達に規定する営業権を含めたうえで算定を行っているようである。 現行の法人税基本通達2-3-4では、「法人が無償又は低い価額で有価証券を譲渡した場合における法第61条の2第1項第1号《有価証券の譲渡損益の益金算入等》に規定する譲渡に係る対価の額の算定に当たっては、4-1-4《上場有価証券等の価額》並びに4-1-5及び4-1-6《上場有価証券等以外の株式の価額》の取扱いを準用する。」と定めている。 さらに、同通達4-1-5では、売買事例もなく、公開途上にもなく、類似会社も存在しない場合には、「発行法人の事業年度終了の時における1株当たりの純資産価額等を参酌して通常取引されると認められる価額」により評価を行うことを定めており、同通達4-1-6では、同通達4-1-5の算定方法に代えて、小会社に該当するものとしたうえで、財産評価基本通達により評価を行うことを定めることができることが定められている。 そのため、実務上、このような算定方法により評価を行うことが多く、請求人の算定方法はややアグレッシブであったと思われる。 これらの通達に定める評価方法よりも安い評価を行うためには、DCF法や類似上場会社法などによる評価が考えられるが、時価純資産価額よりも安い評価額になる場合には、合理的な説明が求められることは容易に想像できる。 いずれにしても、本事件では、そのような第三者による評価を行わずに、安易に取引価額を引き下げたという意味で、請求人の主張は当然に認められるものではなく、国税不服審判所の判断は妥当なものであったと考えられる。  (了)

#No. 133(掲載号)
#佐藤 信祐
2015/08/27

税務判例を読むための税法の学び方【67】 〔第8章〕判決を読む(その3)

税務判例を読むための税法の学び方【67】 〔第8章〕判決を読む (その3)   立正大学法学部准教授 税理士 長島 弘   (2 判決をみるポイント) ② 結果を左右した要素を見極める (1) 真の「論点」は何か 以前、【第45回】にて記したように、判例は「論点に対する判断」であると、ただし論点とは当事者に論点として取り上げられた部分とは限らない。また、審級により論点は異なる。 そこで、その裁判における判決を左右する真の「論点」が何かを見極めなければならない。 それは判決で「争点」と示されたものとも異なる。 そこで、1つ判決を見てみよう。 この判決は、法律による政省令への委任が租税法律主義に違反しているとされた具体的な事例を提供するものとして、重要な先例的意義を有する(佐藤英明「課税要件法定主義一政令への委任の限界」別冊ジュリスト178号『租税判例百選第4版』10頁(ただしこれは控訴審の評釈である))とされる裁判例である。 この高裁判決は裁判所ホームページにて公開されているが(下記リンク参照)、地裁判決(千葉地裁・平成7年2月22日判決)は公開されていない。 処分取消並びに過誤納金還付請求控訴事件(東京高裁平成7年11月28日判決) (裁判所ホームページ) 有料の会員制による法令検索サイトであるTAINSやLEX/DBでは公開されているが、読者の全員が見られるわけではないため、長くなるが全文を紹介する。 ただし公的判例集として紹介した、行政事件裁判例集(【第59回】参照)46巻10・11号には搭載されている。 なお、この事案のTAINS及びLEX/DBのコードは以下の通りである。 TAINSは、現在、日税連の下、一般社団法人日税連税法データベースとして運用されており、税理士は月会費2,000円、税理士以外の者は特別会員として月会費3,000円となっている。 このサイトでは租税法の裁判例・裁決例を多く収録しており(これらに限らず、行政内部の事務運営指針等も情報公開請求等により入手し、収録している)有益であるため、租税実務を中心に行っている者には、強く推奨したい。 この事案の原告は、通常税率による登録免許税を納付して所有権移転登記を受けたが、これは協同組合の組合員への土地譲渡であり、かかる登記については租税特別措置法(平成4年法律14号による改正前のもの。以下「措置法」という。)第78条の3第1項に規定する中小企業者が集団化等のため取得する土地又は建物の所有権の移転登記についての軽減税率の特例の適用が可能であった。登記後にこの軽減規定を知り登記官に対して差額について還付請求したところ、同施行規則により登記申請書に添付すべきとされる知事証明書を添付していなかったことを理由に還付を拒否された。そこで原告は知事証明書を提出したうえで、登録免許税法第31条第2項に基づき所轄税務署長に還付通知をするように請求した。しかし登記官は過誤納付の事実は認められないため税務署長への還付通知はできない旨の通知をした。そこで原告がこの通知の取消と国に対する不当利得の返還を求めたものである。 この事案においては、知事証明書が登記申請書に添付すべきとされているが、それが手続事項として施行規則である省令において規定されていた。なお法律の委任文言を見れば、措置法第78条の3第1項では、土地等の所有権移転登記について、「これらの登記に係る登録免許税の税率は、政令で定めるところにより、登録免許税法第9条の規定にかかわらず、1000分の25とする。」と定めていた。そして、同法施行令第42条の9第3項においては、「第78条の3第1項の規定は、事業協同組合等が前項各号に掲げる土地又は建物を当該各号に規定する貸付け又は譲渡しの条件に従って譲り渡すことができることとなった日から1年以内に大蔵省令で定めるところにより登記を受ける場合に限り、適用する」と規定されていた。そしてこれを受けた大蔵省令である同法施行規則第29条1項では、「法第78条の3第1項の規定の適用を受けようとする者は、その登記の申請書に・・・都道府県知事の証明書を添付しなければならない。」と規定していた。 地裁では「憲法の定める租税法律主義の原則上、課税要件は法律によりできるだけ一義的明確に定められていなければならない。そして、このことは、本件軽減規定のように、通常の課税要件よりも納税者に有利な特例措置を定める法律についても同様に妥当すると考えられるのであり、このような特例措置を適用するために実体的要件のほかに手続的要件を充足すべきものと定められている(略)と言うためには、法律によりその旨が明らかにされている必要がある」「本件政令委任部分のほかには、手続的要件の充足を必要としているかどうかを判断するための手掛かりはない。」「本件軽減規定が手続的要件を置くことを定めていると解するとすれば、その場合には、本件軽減規定は、この点について「政令で定めるところにより」とだけ定めているのに過ぎないから、手続的要件の内容及び効果の定めをいわば白紙的に政令に委任するものと言わざるを得ない。そして、このような態様による政令への委任は、・・・租税法律主義の原則上、有効なものとは認め難い」と判示した。 したがって、この裁判の結論を左右する真の論点は、登録免許税法施行規則第29条第1項の「法第78条の3第1項の規定の適用を受けようとする者は、その登記の申請書に・・・都道府県知事の証明書を添付しなければならない。」との規定が、租税法律主義の点から有効か否か、すなわち法律の委任がなく課税要件を省令で付加したものとして無効か否かである。 なお、最近の判決は金額や年月日、条文番号等の記載において、ほとんどが横書きに合わせて算用数字を使用しているが、古い判決は下記のように横書きでも漢数字を使用している。本連載の趣旨(税務判例が読めるようになる)ことを勘案し、ここではあえて、漢数字による表記のまま示すこととする(ただしTAINSでは算用数字で公開されている)。 この判決の中では、争点は「1 不当利得の成否、2 本件通知の性格及び適法性」が挙げられていた(なおこの判決では、争点が「二 争点に関する双方の主張」の中に、当事者の主張と共に記されていて分かりにくいが、争点が最初に別に掲げられているものも多い)。 争点では、「本件通知の性格及び適法性」とされているが、真の論点は、「本件通知」を根拠づける登録免許税法施行規則第29条第1項が、法律の委任がなく課税要件を省令で付加したものとして無効となるか否かである。 このように、真の論点が何かを読み解かなければならない。 (続く)

#No. 133(掲載号)
#長島 弘
2015/08/27

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例29(所得税)】 「配当控除を加味して総合課税で申告したところ、配当控除の適用が受けられないものであったため、申告不要制度を選択した方が有利であったとして賠償請求を受けた事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例29(所得税)】   税理士 齋藤 和助   《基礎知識》 ◆上場株式等の配当等を受けた場合の課税関係 平成26年以後に支払を受けるべき上場株式等の配当等(大口株主等を除く。以下同じ。)については、その支払の際に20%(所得税15%、住民税5%)の税率により源泉徴収がされるため、原則として申告不要である。しかし、総合課税又は申告分離課税により申告することを選択できる。 なお、この場合は、申告する上場株式等の配当等の全てについて総合課税又は申告分離課税のいずれかを選択する必要があり、総合課税を選択した場合には配当控除の適用があり、申告分離課税を選択した場合には上場株式等の譲渡損失との損益通算ができる。 ◆配当控除 配当所得につき、その全てを総合課税で申告した場合には、配当控除を受けることができる。配当控除を受けた場合には、配当について源泉徴収された所得税と配当控除額が納付すべき税額の計算上控除される。 ◆配当控除を受けることができる配当所得 日本国内に本店のある法人から受ける剰余金の配当、利益の配当、剰余金の分配、証券投資信託の収益の分配などで、確定申告において総合課税の適用を選択した配当所得に限られる。配当控除は、二重課税されているかどうかが問題であるため、法人税が課されない「外国法人から受ける配当等」や「特定外貨建等証券投資信託の収益の分配に係る配当等」は配当控除の対象にはならない。 《配当控除率》 ◆特定外貨建等証券投資信託 外貨建資産割合及び非株式割合が75%超の株式投資信託で、配当控除の適用はない。 《外貨建資産・非株式割合による配当控除の可否》       (了)

#No. 133(掲載号)
#齋藤 和助
2015/08/27

こんなときどうする?復興特別所得税の実務Q&A 【第33回】「外貨預金の利子に課された所得税、復興特別所得税、住民税の処理」

こんなときどうする? 復興特別所得税の実務Q&A 【第33回】 「外貨預金の利子に課された所得税、復興特別所得税、住民税の処理」   税理士・社会保険労務士 上前 剛   当社は、4月1日にA銀行新宿支店にアメリカドルの外貨普通預金口座を開設しました。8月20日に利子3ドルの入金がありました。外貨預金の利子は、日本円の預金の利子と同様に所得税、復興特別所得税、住民税が源泉徴収されるのでしょうか?また、8月20日の換算レートは次の通りですが、どの換算レートにて換算するのでしょうか? 外貨預金の利子に課された所得税、復興特別所得税、住民税の処理についてご教示ください。   国内の金融機関に預け入れた外貨預金の利子は、日本円の預金の利子と同様に20.315%の税率で所得税、復興特別所得税、住民税が源泉徴収される。また、換算レートは、取引日のTTM(電信仲値相場)による。 ただし、継続適用を条件として売上、その他の収益、資産は取引日のTTB(電信買相場)、仕入その他の費用、負債は取引日のTTS(電信売相場)によることができる(法基通13の2-1-2)。 今回のケースにおいては、継続適用を条件にTTBによる換算もできるが、TTMにより換算する。会計処理は、次の通りである。 【8月20日】 (※1) 3ドル×TTM123円/ドル=369円 (※2) 所得税・・・462円×15%=69円(円未満切捨) (※3) 復興特別所得税・・・462円×0.315%=1円(円未満切捨) (※4) 住民税・・・462円×5%=23円(円未満切捨) (了)

#No. 133(掲載号)
#上前 剛
2015/08/27

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第20回】「無対価での100%子会社同士の合併~個別財務諸表のみ作成会社の場合~」

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第20回】 「無対価での100%子会社同士の合併 ~個別財務諸表のみ作成会社の場合~」   仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋   【はじめに】 今回は、無対価での100%子会社同士の合併(個別財務諸表のみ作成会社の場合)について解説する。 無対価での100%子会社同士の合併とは、例えば、100%子会社A社が100%子会社B社を株主に対して何の対価も交付せずに吸収合併する場合をいう。   また、子会社同士の合併は、「共通支配下の取引(【第18回】参照)」に該当する。 なお、孫会社がある場合については、解説していない。 ※各ステップをクリックすると、それぞれのページに移動します。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (次ページ【STEP1】へ進む) (前ページ【はじめに】へ戻る) 子会社同士の合併は、共通支配下の取引のため、吸収合併存続子会社は、吸収合併消滅子会社の適正な帳簿価額を引き継ぐ(企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準(以下「基準」という)」41)。そのため、吸収合併消滅会社は合併期日の前日に決算を行い、個別財務諸表上の適正な帳簿価額を算定する。 また、個別財務諸表上の適正な帳簿価額とは、吸収合併消滅子会社が継続すると仮定した場合の適正な帳簿価額である(適用指針83、391)。したがって、適正な帳簿価額の算定において、固定資産の減損や繰延税金資産の回収可能性などの会計処理を行う際は、吸収合併が行われないと仮定して会計処理を行う。 なお、【第18回】及び【第19回】と異なり、連結財務諸表上の適正な帳簿価額を算定する必要はない。これは、親会社と子会社の合併のように「垂直的な合併」の場合は、合併前と合併後でグループとして実態は何ら変わらないため、合併前の連結財務諸表(親会社と吸収合併消滅子会社のみで作成した連結財務諸表)と合併後の親会社の個別財務諸表は実態的には同一になるようにするために、連結財務諸表上の適正な帳簿価額を用いる。 一方、子会社同士の合併のように「水平的な合併」の場合は、子会社同士だけで、連結財務諸表を作成するわけではないので、合併前の連結財務諸表(親会社と吸収合併消滅子会社のみで作成した連結財務諸表)と合併後の親会社の個別財務諸表を実態的には同一になるように会計処理する必要はない。そのため、個別財務諸表上の適正な帳簿価額を用いればよい。 (次ページ【STEP2】へ進む) (前ページ【STEP1】へ戻る) 吸収合併存続子会社は、【STEP1】で算定した吸収合併消滅子会社の資産及び負債を引き継ぐ。 また、吸収合併消滅子会社の払込資本(資本金及び資本準備金)はその他資本剰余金として引き継ぐ。利益剰余金は、そのまま引き継ぐ(適用指針203-2、185(1)②、会社計算規則36②)。 (次ページ【STEP3】へ進む) (前ページ【STEP2】へ戻る) 親会社においては、吸収合併消滅子会社株式の帳簿価額を吸収合併存続子会社株式の帳簿価額に加算する(適用指針203-2(1)なお書)。 《設例》 【前提条件】 【会計処理】 1 A社の会計処理 (※1) 子会社B社の帳簿価額 (※2) 子会社B社の資本金 2 P社の会計処理 (※1) B社株式の帳簿価額をA社株式の帳簿価額に加算する。 結果、合併後のA社株式の帳簿価額は8,000である。 (次ページ【STEP4】へ進む) (前ページ【STEP3】へ戻る) 企業結合年度において、共通支配下の取引等に係る重要な取引がある場合には、以下の(1)及び(2)を注記する。なお、個々の共通支配下の取引等については重要性が乏しいが、企業結合年度における複数の共通支配下の取引等全体では重要性がある場合には、当該企業結合全体で注記する(基準52)。 なお、計算書類では、上記のような注記は必ずしも求められていない。 *   *   * 以上、4つのステップをまとめたフロー・チャートを再掲する。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (了)

#No. 133(掲載号)
#西田 友洋
2015/08/27
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