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研究開発税制における平成27年度税制改正のポイント 【第3回】「事業年度ごとの別表6(6)及び新設別表6(8)の記載方法」

研究開発税制における平成27年度税制改正のポイント 【第3回】 (最終回) 「事業年度ごとの別表6(6)及び 新設別表6(8)の記載方法」   税理士法人山田&パートナーズ 税理士 吉澤 大輔   最終回となる今回は、研究開発税制の適用を受ける際に添付する法人税申告書(別表)の記載方法を紹介したい。 申告書の作成に当たっては、研究開発税制の適用を受ける事業年度が、「平成27年4月1日前に開始する事業年度(平成27年4月1日以後終了事業年度に限る)」か「平成27年4月1日以後に開始する事業年度」かによって、使用する別表及び金額の記載欄が異なるため、注意してほしい。 なお、今回紹介する別表は、特に変更点の多い別表6(6)と新たに追加された別表6(8)の2種類の別表とする(別表6(7)については別表6(6)と類似するため本稿では割愛する)。   〈記載例〉 平成27年4月1日前に開始する事業年度 (平成27年4月1日以後終了事業年度に限る)の場合 別表6(6):試験研究費の総額等に係る法人税額の特別控除に関する明細書 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (※) アミカケ部分は記載不要。   〈記載例〉 平成27年4月1日以後に開始する事業年度の場合 別表6(6):試験研究費の総額等に係る法人税額の特別控除に関する明細書 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 (※) アミカケ部分は記載不要。   別表6(8):特別試験研究費の額に係る法人税額の特別控除に関する明細書 ※画像をクリックすると、別ページでPDFファイルが開きます。 * * * 上記のように、事業年度の開始が平成27年4月1日の前後で使用する申告書の様式及び書き方が異なるため、申告実務に当たっては留意しておきたい。 (連載了)

#No. 130(掲載号)
#吉澤 大輔
2015/07/30

貸倒損失における税務上の取扱い 【第48回】「法人税基本通達9-6-1(2)(3)の具体的内容」

貸倒損失における税務上の取扱い 【第48回】 「法人税基本通達9-6-1(2)(3)の具体的内容」   公認会計士 佐藤 信祐   前回では、法人税基本通達9-6-1(1)に規定する「更生計画認可の決定又は再生計画認可の決定」について解説を行った。 本稿においては、同通達9-6-1(2)及び9-6-1(3)について解説を行う。   2 特別清算に係る協定の認可の決定 (1) 基本的な取扱い 特別清算には、協定型と和解型の2つがあり、法人税基本通達9-6-1(2)で直接的に規定しているのは「特別清算に係る協定の認可」とあるので、協定型であることは言うまでもない。 協定型の特別清算は債権者の多数決によって協定を成立させるものであり、本来型と称されることもある。和解型の特別清算は清算会社と債権者の和解契約を締結するものであり、対税型と称されることもある。 実務上、協定型の特別清算が行われるケースはほとんどなく、破産法に規定する破産手続により行われるケースがほとんどである。なお、破産手続を行った場合には、第44回で解説したように、法人税基本通達9-6-1(2)ではなく、同通達9-6-2で処理することになる。 そのため、「特別清算」というと、和解型の特別清算を想定する実務家が多く、その場合における法人税基本通達9-6-1(2)が適用されるのかどうかが問題となるが、前述のように、「対税型」と称されることがあり、この場合の「税」とは、当該通達の規定のことをいうため、貸倒損失を認識するための手法として、和解型の特別清算が利用されているという実態は否定できない。これは、協定型を選択したとしても、和解型を選択したとしても、債権者の損失負担の額が大きく変わらないことが原因であると推定される。 これに対し、通常清算を行った場合の取扱いであるが、法人税基本通達9-6-1(2)ではなく、同通達9-6-1(3)(4)又は9-4-1で処理するというのが一般的な実務のようである。 この点については、あくまでも通達は法令の解釈に過ぎないため、法令の趣旨を考えると、特別清算を選択した場合と損失負担の額が変わらないのであれば、同通達9-6-1(2)に準じて処理を行うべきであると考えられるが、実務上は、硬直的に取り扱われているというのが一般的である。 そのため、法人税基本通達9-6-1(2)の射程は、特別清算に限られると考えた方が無難であると思われる。 (2) 第2会社方式における特別清算の活用 第2会社方式とは、事業譲渡又は会社分割により赤字子会社の資産とそれに相当する負債を受皿会社に対して譲渡し、残った赤字子会社の負債について清算手続により切り捨てさせる手法である。 第38回で解説したように、平成10年度法人税基本通達改正前において第2会社方式が生み出されており、当時の根拠通達は法人税基本通達9-4-1であった。その後、第41回で解説したように、平成10年度法人税基本通達の改正により、根拠通達が同通達9-4-2に移ったものと考えられる。そして、第41回で解説したように、第2会社方式でも通常清算ではなく、特別清算を選択するようになり、現在、行われている第2会社方式のほとんどは特別清算である。 しかしながら、第38回で解説したように、平成10年度法人税基本通達改正前は、赤字子会社と受皿会社との間において、持株関係、商号、所在地、役員構成、従業員、資産内容、事業内容、事業形態などを総合的に勘案して、同一性のない場合について、損金の額に算入することができるとしていたため、この趣旨は尊重すべきであろう。実務的には、商号の変更、名ばかり役員の解任、従業員に対する退職金の打切支給をするとともに、主要な固定資産を親会社に譲渡し、受皿会社は当該資産を賃貸したうえで事業を行う会社に代えることで同一性を薄めていくことになると考えられる。 また、特別清算を行う前の赤字子会社の貸借対照表には、負債サイドには租税債務と親会社からの債務だけを残し、資産サイドには租税債務の支払いと清算費用の支払いに相当するだけの預金だけを残すことにより円滑に清算手続を行うことが一般的であると考えられる。そのため、特別清算を行う前に、他の債務者からの債務については、親会社から借入れを行うことにより、事前に弁済しておく必要がある。   3 法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定 法人税基本通達9-6-1(3)では、「法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定」として、以下のものを定めている。 (イ) 債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの (ロ) 行政機関又は金融機関その他の第三者のあっせんによる当事者間の協議により締結された契約でその内容が(イ)に準ずるもの しかしながら、第45回で解説したように、実務上の射程については、法人税基本通達9-4-2が別途規定されていることから、極めて曖昧である。 かつては、特定調停法が該当するのではないかという見解(※)もあったが、平成26年6月25日に、日本弁護士連合会、日本税理士会連合会が行った事前照会(特定調停スキームに基づき策定された再建計画により債権放棄が行われた場合の税務上の取扱いについて)において、法人税基本通達9-4-2に従って処理することとしているため、今後は、同通達9-6-1(3)に該当するケースは極めて稀であろう。 (※) 稲見誠一・佐藤信祐『ケース別にわかる企業再生の税務』205-206頁(中央経済社、第2版、平成22年) そうなると、どのようなケースについて法人税基本通達9-6-1(3)に該当するのかが興味のあるところであるが、いわゆる任意整理と言われるものが該当すると考えるべきである。 さらに、東日本大震災の影響によって生じているいわゆる「二重債務問題」を解決するために設けられた「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」に基づいて債権放棄を行った場合には、個人債務者の私的整理に関するガイドライン研究会が平成23年8月11日に行った事前照会(「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」に基づき作成された弁済計画に従い債権放棄が行われた場合の課税関係について)において、法人税基本通達9-6-1(3)で処理することが明らかにされている。 しかしながら、「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」はかなり限定的な事案を前提としたものであり、さらに、このような事前照会を行っているということは、そもそも法人税基本通達9-6-1(3)の要件を満たすことのハードルが高いことを意味している。 また、筆者の個人的な経験としても、任意整理を行った場合において、同通達9-6-1(4)で処理したことはあるものの、同通達9-6-1(3)で処理したことはない。しかしながら、「個人債務者の私的整理に関するガイドライン」が法人税基本通達9-6-2ではなく、同通達9-6-1(3)で処理している理由としては、債務者が法人ではなく、個人であることから、「合理的な再建計画」に該当させることに無理があったからであると推定され、今後、個人債務者を対象とした任意整理において、複数の債権者が存在する場合には、同通達が適用される事案が出てくると思われる。 なお、法人税基本通達9-6-1(3)に規定する「合理的な基準」については、同通達9-4-2と同様の考え方を採用することになると思われる。 次回では、法人税基本通達9-6-1(4)の取扱いについて解説を行う予定である。 (了)

#No. 130(掲載号)
#佐藤 信祐
2015/07/30

〔会計不正調査報告書を読む〕【第33回】株式会社東芝「第三者委員会調査報告書(平成27年7月21日付)」(前編)

  〔会計不正調査報告書を読む〕 【第33回】 株式会社東芝 「第三者委員会調査報告書(平成27年7月21日付)」 (前編)   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   株式会社東芝(以下「東芝」という)は、平成27年7月20日に第三者委員会調査報告書を受領した旨、及びその要約版(以下「要約版」という)を公表し、翌21日には約300ページの大部となった調査報告書全文(以下「全文」という)を公表するとともに、取締役代表執行役社長である田中久雄氏以下8名の取締役と相談役で元社長の西田厚聰氏の辞任が伝えられた。 この問題を、東芝が初めて公表したのは4月3日「特別委員会の設置に関するお知らせ」と題するリリースであった。それから3ヶ月半。特に7月に入ってからは、加熱するマスコミ報道、これを打ち消すような会社側のリリースが連日のように出されてきた。 本稿では、公表された調査報告書に基づき、まず前編として、東芝社内で行われてきた会計不正の手口、第三者委員会による原因分析などを概説することとし、後編(8月6日公開)では、再発防止策と調査報告書でも明らかにならなかった問題点について、検討することとしたい。 【第三者委員会調査報告書受領に至るまでの経緯】   【第三者委員会の概要】   【株式会社東芝の概要】 株式会社東芝は、1875(明治8)年創業。日本を代表する総合電機メーカー。売上高6兆5,000億円余。営業利益2,900億円余、総資産額6兆2,400億円、純資産額1兆6,500億円を超える企業規模を誇り、連結子会社は598社に上る。従業員数約20万名(平成27年3月期)。本店所在地は東京都港区。東証、名証1部上場。   【調査報告書により判明した事実】 1 発覚の経緯 東芝は、2015年2月12日、証券取引等監視委員会から金融商品取引法第26条に基づく報告命令を受け、工事進行基準案件等について開示検査を受けた。3月下旬、2013年度の一部インフラ関連の工事進行基準案件に係る会計処理について、調査を必要とする事項が判明し、4月3日、取締役会長を委員長とする特別調査委員会を設置した。 特別調査委員会による調査の過程で、工事進行基準案件の問題以外にも、更なる調査を必要とする事項が判明したため、5月8日、調査結果に対するステークホルダーからの信頼性をさらに高める必要から、東芝と利害関係を有しない中立・公正な外部の専門家から構成される第三者委員会による調査を行うことを決めたものである。 なお、証券取引等監視委員会の開示検査のきっかけは、東芝関係者による告発であったとする一部報道もあったが、調査報告書では触れられていない。   2 連結会計年度別修正額 第三者委員会が認定した連結会計年度別修正額は、次のとおりである(単位:億円。全文p.20、要約版p.15)。 注目すべき点は、2009年度(2010年3月期)の公表されている利益金額と修正すべき金額との関係である。 前期、リーマン・ショックによる大幅な赤字の計上を余儀なくされた東芝であったが、当期も円高と景気低迷の影響から減収となったものの、営業損益は大幅に増益又は改善し、「特に半導体事業がメモリの好調により大幅に改善し黒字化(有価証券報告書より抜粋)」した結果、約250億円の継続事業税引前損益を計上した。 ところが、第三者委員会による調査の結果、約400億円の利益の水増しが判明したことから、東芝は2期連続の赤字決算を回避するため、巨額の粉飾決算をせざるを得なかったのではないかという推測が働くが、当然のことながら、そうした記述は調査報告書には存在しない。   3 主な会計不正の内容 (1) 工事進行基準について(全文p.31以下、要約版p.16以下) 東芝の社内カンパニーである電力システム社、社会インフラシステム社では、工事進行基準適用商談において、各工事の原価総額を過少に見積もることによって、 という不正が繰り返されており、第三者委員会では15の案件について、その不適切な会計処理が進められたプロセスを詳述しており、その分量は調査報告書(全文)の約2分の1に達している。 修正すべき金額は、売上ベースで128億円、利益ベースで477億円と巨額ではあるものの、工事が完成した案件の損失隠しを行っていたわけではなく、工事進行基準を適用する場合の一般的なリスクが顕現化しただけの不正であるといえよう(※)。 (※) 監査・保証実務委員会実務指針第91号「工事進行基準等の適用に関する監査上の取扱い」では、「5.工事進行基準では、一般的に会計上の見積りの不確実性の程度が大きく、会計上の見積りに関する重要な虚偽表示リスクが高くなることが多い。この重要な虚偽表示リスクには、会計上の見積りの判断を誤ることによる誤謬のみならず、意図的に工事原価総額の見積りを調整することや、発生した工事原価を意図的に異なる工事契約に係る認識の単位に計上すること(以下「原価の付替え」という。)による、決算日における工事進捗度の調整を通じた工事収益の操作などの不正によるものも含まれる。」と記されており、監査上も、こうした不正リスクへの対応が求められている。 (2) 映像事業における経費計上等に係る会計処理(全文p.179以下、要約版p.40以下) 東芝、東芝ライフスタイル株式会社の映像事業部門では、損益目標値を達成する前の施策として「キャリーオーバー」と総称する、経費計上の先送り、在庫評価の増額、仕入先からの未実現の仕入値引の計上などを行っていたものである。 (3) パソコン事業における部品取引等に係る会計処理(全文p.206以下、要約版p.47以下) 東芝がPCの設計、開発、製造を委託している海外のODM先に対して有償支給する主要部品の支給価格について調達価格を上回る価格とし、東芝の原価計算においては、調達価格との差額を、製造原価のマイナス、つまり利益計上として会計処理を行うものである。 部品を有償でODM先に支給して完成品を買い戻す取引(Buy-Sell取引)を行うに際して、ODM先に対して実際の調達価格を明らかにしないために、調達価格を上回る一定額(マスキング価格)で支給すること自体に問題があるわけではないが、マスキング価格が調達価格の5倍を超える水準であること、四半期末のたびに、ODM先に対して部品の押し込み販売が行われ、その結果として、2012年9月期以降の四半期決算においては、PC事業において単月の売上高を上回る営業利益が計上されていた(全文p.232、別紙3のグラフ参照)。 (4) 半導体事業の在庫の評価に係る会計処理(全文p.245以下、要約版p.57以下) 社内カンパニーであるセミコンダクター&ストレージ社(S&S社)では、2013年に約80億円の在庫廃却を行っているが、滞留在庫の評価減ルールが不適切なものであったことが認められた。 また、工程別総合原価計算において、前工程の標準原価の改訂が後工程の標準原価に反映されていないことから、発生した原価差額の配賦計算において、後工程における原価差額が前工程期末在庫にも配賦されることとなるため、売上原価に対する原価差額の配賦額が過少になり、利益の嵩上げが行われていた。   4 会計不正の発生原因 第三者委員会は「原因総まとめ」として、直接的な原因7項目、間接的な原因8項目を列挙している(全文p.276以下、要約版p.63以下)。 まず、直接的な原因として 次いで、間接的な原因として 項目は多いものの、原因分析が十分に行われていると評価するには、第三者委員会の記述はあまりにも表層的である。例えば、直接的な原因の筆頭に挙げられている「経営トップらの関与を含めた組織的な関与」には、以下のような記述がある。 確かに粉飾決算を止めることは「事実上不可能であった」かもしれないが、それは「原因」ではなく、「第三者委員会による評価」であろう。「原因」を究明するためには、「なぜそのような経営判断をするに至ったか」を解明することが不可欠であるはずだが、残念ながら、第三者委員会調査報告書にはそこまでの-なぜ解明できなかったということも含めて-記述はない。 *  *  * 以下、「後編」(8月6日公開)に続く。 ◆【再発防止策】 ◆【調査報告書によっても明らかになったと言えない事実】 (了)

#No. 130(掲載号)
#米澤 勝
2015/07/30

『繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)』への対応ポイント 【第5回】「企業の分類ごとの繰延税金資産の回収可能性(その2)」

『繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)』への 対応ポイント 【第5回】 (最終回)  「企業の分類ごとの繰延税金資産の回収可能性(その2)」   公認会計士 阿部 光成   前回に続き、「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針(案)」(企業会計基準適用指針公開草案第54号。以下「公開草案」という)における企業の分類ごとの繰延税金資産の回収可能性について解説する。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅰ 企業の分類と繰延税金資産の回収可能性(分類3~分類5) 公開草案は、要件に基づき企業を分類し、当該分類に応じて、回収が見込まれる繰延税金資産の計上額を決定すると規定している(公開草案15項)。 企業の分類の要件と繰延税金資産の回収可能性をまとめると次のようになる(アンダーラインは、筆者が記載。公開草案22項から31項)。   Ⅱ (分類3)に関する留意点 前述のように、(分類3)の企業については、5年を超える見積可能期間においてスケジューリングされた一時差異等に係る繰延税金資産が回収可能であることを合理的に説明できる場合、繰延税金資産は回収可能性があるものとされている(公開草案24項)。 企業は、この合理的な説明を行うであろうし、監査人においては、その説明の適切性を判断することになるので、次のことが公開草案を実務に適用した際のポイントになると考えられる。 公開草案は、上記事項に関する例として次のものをあげているので、今後の実務への適用に際して、参考になるものと考えられる(80項)。 (連載了)

#No. 130(掲載号)
#阿部 光成
2015/07/30

会計上の『重要性』判断基準を身につける~目指そう!決算効率化~ 【第8回】「連結と個別、「重要性の基準値」は同じ?」

会計上の『重要性』 判断基準を身につける ~目指そう!決算効率化~ 【第8回】 「連結と個別、「重要性の基準値」は同じ?」   公認会計士 石王丸 周夫   今回は、連結決算と個別決算における「重要性の基準値」の関係について解説します。 まず手始めに、以下の問題にチャレンジしてみてください(解答は問題のすぐ下にあります)。 いかがでしたか。正解できたでしょうか。 重要性の判断基準は、連結と個別、期末と四半期で、それぞれ大小関係が決まっています。 以下、この解答について触れながら、解説していきます。   《連結と個別では重要性の金額は異なる》 「連結」は企業グループの決算、「個別」は法人としての単独の決算です。 同じ企業、同じ年度であっても、連結と個別の数字はもちろん違います。一概には言えませんが、多くの場合、同じ財務諸表項目を比べた場合、連結の数字の方が個別の数字より大きくなります。 連結決算における重要性の金額は、個別決算における重要性の金額より大きいのだろうということは、直感的にもわかると思います。イメージとしてはそれで合っています(⇒したがって、問題8のアの記述は誤りです)。 重要性の基準値は、連結であれ個別であれ「指標×割合」によって求めます。 例えば同じ「税引前利益」という指標でも、連結と単体ではもちろん違う数字なので、これらの異なる数字によって重要性の基準値をそれぞれ求めます。当然、異なる重要性の基準値が算定されます。 そしてその数値は、普通、連結の方が個別より大きくなるわけです。   《「連結≧個別」とする理由》 仮に、連結上の重要性の基準値が個別上のそれよりも小さくなってしまった場合のことを考えてみます。 例えば、こんな具合です。 この場合、少々面倒なことが起こります。 個別決算において、何らかの会計処理誤りがあったとします。税引前利益に与えるその影響額が90百万円だったとします。そして、これ以外には何ひとつ誤りはなかったとするなら、個別決算上、この90百万円の会計処理誤りは、金額的には重要性の基準値を下回ります。 つまり、この誤りを修正しないことも許容されます。 では、この誤りを修正せずに済ませたとき、連結ではどんなことが起きるでしょうか。 この会計処理誤りが親子間の取引等ではなく、連結上も消去されることなく同様に誤りとして認識されるならば、連結上においても重要性の判断がなされます。今、連結上の重要性の基準値を80百万円としたわけですから、90百万円の誤りはこれを超えてしまいます。 つまり、この誤りを修正しなければ、連結財務諸表には重要な誤りがあると判定されてしまいます。 これが、連結上の重要性の基準値が個別上のそれよりも小さい場合に起きる問題です。 個別上において修正を見送った誤りが、連結上では見過ごすことができないのです。 その結果、個別決算をやり直すか、もしくは連結仕訳として修正仕訳を入れる必要が生じるのです。 〈【連結上の重要性 < 個別上の重要性】の場合〉 上の例のように会計処理誤りが1つだけなら対応も可能ですが、個別決算で修正を見送った事項がいくつもあるような場合、もはや対応は困難です。 こうした事態を回避するにはどうしたらよいか、もうおわかりだと思います。 重要性の基準値を「連結≧個別」という関係が成立するように決めておくことです。 上の例で言えば、個別上の重要性の基準値を80百万円まで引き下げるのです。 〈個別上の重要性を80百万円まで引き下げた場合〉   《連結と個別で指標が異なってもよいか》 連結と個別の重要性の基準値について、もう1つ触れておくべきことがあります。 同じ企業で同じ年度の決算である場合、重要性の基準値の算定に使用する「指標」は、連結と個別とで同じでなければならないのか、という点です。 【第6回】で述べたとおり、「指標」として最も一般的な財務諸表項目は「税引前利益」です。連結も個別も税引前利益をベンチマークにして重要性の金額を求めていれば、特に問題にはなりません。 しかしながら、連結が赤字で個別が黒字というケースも少なからずあります。あるいは、親会社が持株会社である「〇〇ホールディングス」という会社の場合、個別上の利益は子会社からの配当金収入がほとんどであって、連結上計上されている本業の利益とは内容が異なるということもあります。 そのような場合、連結と個別を「同じ指標」に基づいて重要性の基準値を求めることは、必ずしも適切ではないかもしれません。 例えば、連結は「税引前利益」、個別は「純資産」に基づいて重要性の基準値を算定するといったことも考えられます(⇒したがって、問題8のイの記述は誤りです)。   《期末決算と四半期決算の関係も同じ》 連結と個別の関係はご理解いただけたと思います。 実はこの関係、期末決算と四半期決算にもそっくりそのまま当てはまります。 〈【期末の重要性 < 四半期の重要性】の場合〉 上の図から明らかように、期末における重要性の基準値と四半期における重要性の基準値の関係は、「期末≧四半期」としておく必要があります(⇒したがって、問題8のウの記述は正しいです)。   (了)

#No. 130(掲載号)
#石王丸 周夫
2015/07/30

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第19回】「親会社による子会社の吸収合併~連結財務諸表作成会社の場合~」

フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第19回】 「親会社による子会社の吸収合併 ~連結財務諸表作成会社の場合~」   仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋   【はじめに】 今回は、親会社による子会社の吸収合併(連結財務諸表作成会社の場合)について解説する。 なお、本解説では、孫会社や中間子会社がある場合については、解説していない。 ※各ステップをクリックすると、それぞれのページに移動します。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (次ページ【STEP1】へ進む) (前ページ【はじめに】へ戻る) ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 共通支配下の取引により企業集団内を移転する資産及び負債は、移転直前に付されていた連結財務諸表上の帳簿価額により計上する(企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準(以下「基準」という)」41、注9)。言い換えると、親会社が子会社を吸収合併により引き継ぐ子会社の資産及び負債は、子会社の連結財務諸表上の帳簿価額を引き継ぐ。 したがって、子会社は、合併期日の前日に決算を行い、資産、負債及び純資産の連結財務諸表上の帳簿価額を算定する(企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針(以下、「適用指針」という)」205)。 連結財務諸表上の帳簿価額とは、個別財務諸表上の帳簿価額に以下の(1)から(3)を調整したものをいう(適用指針207)。 (次ページ【STEP2】へ進む) (前ページ【STEP1】へ戻る) ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 非支配株主とは、親会社以外の株主をいう。 非支配株主が存在しない場合と存在する場合、言い換えると、100%子会社の場合とそうでない場合で、会計処理が異なるため、ここでは、非支配株主が存在するかどうかを判断する。 非支配株主が存在する場合は、【STEP3】を検討する。非支配株主が存在しない(100%子会社の)場合は、【STEP4】を検討する。 (次ページ【STEP3】へ進む) (前ページ【STEP2】へ戻る) 非支配株主が存在する子会社を吸収合併する場合、言い換えると100%子会社ではない子会社を吸収合併する場合、個別財務諸表における会計処理、連結財務諸表における会計処理の順に検討する。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。   (1) 個別財務諸表における会計処理 個別財務諸表における会計処理では、以下の①から④を検討する。 ① 子会社の資産及び負債の引き継ぎ 【STEP1】で算定した子会社の資産及び負債を引き継ぐ(適用指針206(1))。 ② 株主資本項目以外の純資産項目の引き継ぎ 【STEP1】で算定した子会社の合併期日の前日の評価・換算差額等(親会社が作成する連結財務諸表において投資と資本の消去の対象とされたものを除く)及び新株予約権の適正な帳簿価額を引き継ぐ。評価・換算差額等を連結財務諸表の帳簿価額で引き継ぐ場合、子会社のその他有価証券評価差額金や土地再評価差額金の適正な帳簿価額のうち、支配獲得後に子会社が計上したものを引き継ぐ(適用指針206(2)②)。 ③ 時価の算定 親会社が100%の株式を保有していない子会社を吸収合併するということは、非支配株主から全ての株式を取得することと同じことである。したがって、非支配株主への対価は、時価で算定する(基準45)。 なお、市場価格のある親会社株式が取得の対価として、非支配株主に交付される場合には、取得の対価となる財の時価は、原則として、企業結合日における親会社株式の株価を基礎として算定する(基準(注11)、24)。 ④ 株主資本項目の会計処理 親会社は、子会社から受け入れた資産と負債との差額のうち株主資本の額を合併期日直前の持分比率に基づき、親会社持分相当額と非支配株主持分相当額に按分し、それぞれ以下のように会計処理する。 (ⅰ) 親会社持分相当額の会計処理 上記①及び②の合計額のうち、親会社持分相当額と親会社が合併直前に保有していた子会社株式(抱合せ株式)の適正な帳簿価額との差額を、「抱合せ株式消滅差益」等の勘定科目で特別損益に計上する(適用指針206(2)①ア)。 この差額は、株主との資本取引ではなく、子会社を通して実現した事業投資の成果であるために、損益として計上する。 (ⅱ) 非支配株主持分相当額の会計処理 非支配株主へ親会社株式を発行した場合、増加する親会社の株主資本の額は、払込資本として処理する。増加する払込資本の内訳項目(資本金、資本準備金、その他資本剰余金)については会社計算規則35条1項により会社が任意に決定することができる。 その上で、上記①及び②の合計額のうち、非支配株主持分相当額と、取得の対価(非支配株主に交付した親会社株式の時価等)の差額を「その他資本剰余金」として計上する(適用指針206(2)①イ)。   (2) 連結財務諸表における会計処理 連結財務諸表における会計処理では、以下の①及び②を検討する。ポイントとしては、他の子会社がないとすれば、吸収合併後の個別貸借対照表と吸収合併後の連結貸借対照表が同様になるように会計処理することである。 ① 開始仕訳及び開始仕訳の振り戻し 連結財務諸表を作成するため、連結財務諸表上での前期までの会計処理を引き継ぐ(開始仕訳を行う)。しかし、子会社を吸収合併したため、吸収合併した子会社に係る前期までの会計処理はもう引き継ぐ必要はない。そのため、開始仕訳の振り戻しを行う(開始仕訳を消去する)。 ② 抱合せ株式消滅差益の相殺消去 抱合せ株式消滅差益は、吸収合併前に子会社が利益を獲得していたことにより発生したものである。 当該利益は、吸収合併前に単純合算を通じて既に連結財務諸表に計上されているため、個別財務諸表上で計上した抱合せ株式消滅差益は、相殺消去する必要がある。 なお、抱合せ株式消滅差益が発生していない場合は、当該会計処理の検討は不要である。 この後は、【STEP5】を検討する。 《設例1》 【前提条件】 【会計処理】 1 親会社持分相当額 (※1) 16,000×80%=12,800 (※2) 3,000×80%=2,400 (※3) 8,000×80%=6,400 (※4) A社保有株式の帳簿価額 (※5) 取得後その他有価証券評価差額金500×80%=400 (※6) 差額 2 非支配株主持分相当額 (※1) 16,000×20%=3,200 (※2) 3,000×20%=600 (※3) 8,000×20%=1,600 (※4) 発行したA社株式の時価 (※5) 取得後その他有価証券評価差額金500×20%=100 (※6) 差額 3 合併後のA社の個別貸借対照表 4 開始仕訳 (※1) 子会社B社の資本金 (※2) 親会社A社が保有していた子会社B社株式 (※3) 子会社B社純資産×20% (※4) 子会社B社 取得後利益剰余金5,500×20%=1,100 (※5) 子会社B社 取得後その他有価証券評価差額金500×20%=100 5 開始仕訳の振り戻し (※1) 上記4の仕訳と反対の仕訳を行う。 6 抱合せ消滅差益の相殺消去 (※1) 上記1で計上した抱合せ消滅差益 7 合併後のA社の連結貸借対照表 3の個別貸借対照表と同じになる。 (次ページ【STEP4】へ進む) (前ページ【STEP3】へ戻る) 非支配株主が存在しない子会社を吸収合併する場合、言い換えると100%子会社を吸収合併する場合、親会社では個別財務諸表における会計処理、連結財務諸表における会計処理の順に検討する。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。   (1) 個別財務諸表における会計処理 個別財務諸表における会計処理では、以下の①から③を検討する。 ① 子会社の資産及び負債の引き継ぎ 【STEP1】で算定した子会社の資産及び負債を引き継ぐ(適用指針206(1))。 ② 株主資本項目以外の純資産項目の引き継ぎ 【STEP1】で算定した子会社の合併期日の前日の評価・換算差額等及び新株予約権の適正な帳簿価額を引き継ぐ。評価・換算差額等を連結財務諸表の帳簿価額で引き継ぐ場合、子会社のその他有価証券評価差額金や土地再評価差額金の適正な帳簿価額のうち、支配獲得後に子会社が計上したものを引き継ぐ(適用指針206(2)②)。 ③ 株主資本項目の会計処理 上記①及び②の合計額と親会社が合併直前に保有していた子会社株式(抱合せ株式)の適正な帳簿価額との差額を、「抱合せ株式消滅差益」等の勘定科目で特別損益に計上する(適用指針206(2)①ア)。 この差額は、株主との資本取引ではなく、子会社を通して実現した事業投資の成果であるために、損益として計上する。   (2) 連結財務諸表における会計処理 連結財務諸表における会計処理では、以下の①及び②を検討する。ポイントとしては、他の子会社がないとすれば、吸収合併後の個別貸借対照表と吸収合併後の連結貸借対照表が同様になるように会計処理することである。 ① 開始仕訳及び開始仕訳の振り戻し 連結財務諸表を作成するため、連結財務諸表上での前期までの会計処理を引き継ぐ(開始仕訳を行う)。しかし、子会社を吸収合併したため、吸収合併した子会社に係る前期までの会計処理はもう引き継ぐ必要はない。そのため、開始仕訳の振り戻しを行う(開始仕訳を消去する)。 ② 抱合せ株式消滅差益の相殺消去 抱合せ株式消滅差益は、吸収合併前に子会社が利益を獲得していたことにより発生したものである。 当該利益は、吸収合併前に単純合算を通じて既に連結財務諸表に計上されているため、個別財務諸表上で計上した抱合せ株式消滅差益は、相殺消去する必要がある。 なお、抱合せ株式消滅差益が発生していない場合は、当該会計処理の検討は不要である。 この後は、【STEP5】を検討する。 《設例2》 【前提条件】 【会計処理】 1 個別財務諸表上の会計処理 (※1) 子会社の帳簿価額 (※2) A社保有株式の帳簿価額 (※3) 差額 2 合併後のA社の個別貸借対照表 3 開始仕訳 (※1) 子会社B社の資本金 (※2) 親会社A社が保有していた子会社B社株式 4 開始仕訳の振り戻し (※1) 上記3の仕訳と反対の仕訳を行う。 5 抱合せ消滅差益の相殺消去 (※1) 上記1で計上した抱合せ消滅差益 6 合併後のA社の連結貸借対照表 2の個別貸借対照表と同じになる。   (次ページ【STEP5】へ進む) (前ページ【STEP4】へ戻る) ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 企業結合年度において、共通支配下の取引等に係る重要な取引がある場合には、以下の(1)から(3)を注記する。なお、個々の共通支配下の取引等については重要性が乏しいが、企業結合年度における複数の共通支配下の取引等全体では重要性がある場合には、当該企業結合全体で注記する(基準52)。 なお、計算書類では、上記のような注記は必ずしも求められていない。 *   *   * 以上、5つのステップをまとめたフロー・チャートを再掲する。 ※画像をクリックすると、別ウィンドウでPDFが開きます。 (了)

#No. 130(掲載号)
#西田 友洋
2015/07/30

社外取締役の教科書 【第4回】「社外取締役の職務・活動内容(その2)」

社外取締役の教科書 【第4回】 「社外取締役の職務・活動内容(その2)」   クレド法律事務所 駒澤大学法科大学院非常勤講師 弁護士 栗田 祐太郎   1 社外取締役としての基本的職務―ガバナンスへの関わり 今回から、社外取締役の実際の職務ないし活動内容について説明していきたい。 既に本連載【第1回】において、社外取締役制度の目的は、①ガバナンスの強化と②社外の知見・ノウハウの取り入れの2点に集約できるとし、その大まかな趣旨につき説明をした。 これを前提に、今回は、社外取締役が「ガバナンス(企業統治)の強化」において果たす役割を説明したい。 *   *   * 社外取締役に期待されている役割の中心が「ガバナンスの強化」にあることは、ほぼ共通の認識となっている。 このことは、たとえば日本取締役協会が2014年3月に公表した「社外取締役・取締役会に期待される役割について」と題する提言において、社外取締役の主たる職務が、経営(業務執行)の意思決定ではなく、経営者(業務執行者)の「監督」にあること、そして、この「監督」の中核は、経営者が策定した経営戦略・計画に照らして、その成果が妥当であったかを検証し、最終的には現在の経営者に経営を委ねることの是非について判断することであると明言されている。 同協会の会長であり、オリックス社のシニア・チェアマンである宮内義彦氏は、以上を端的に、 とコメントしている(2015年7月23日付け日経新聞朝刊)。 このように、社内的な人事ピラミッドの頂点に位置する経営者に対して、しがらみに囚われず“猫に鈴を付け”、必要なときには“引導を渡す”ことができるということが、社外取締役に本来期待された職務・役割なのである。 このような役割は、業務執行を監督・モニターする立場ということで「モニタリング」と呼ばれることがある。   2 モニタリングの対象・内容 それでは、社外取締役がガバナンス強化の一翼を担うために、実際にどのような活動を行うのか。以下では、監査等委員会設置会社ではなく、伝統的な取締役会・監査役設置会社を念頭に置き、概観してみたい。 この点、社内取締役の場合には、各自の出身部門や専門分野との兼ね合いで、特定の担当業務を割り当てられている場合が多い。例えば、「管理担当取締役」や「技術開発担当取締役」といったような具合である。この場合には、各取締役の所掌する部門は比較的わかりやすい。 他方、社外取締役の場合は、社外的な見地から大所高所よりの意見提案をなすことや、第三者的立場から現経営陣の経営能力の評価等を期待されていることもあり、特定の担当部門を持たない場合がほとんどであろう。 そうなると、ある意味、それだけ会社に関わる全般的・一般的事項を幅広くモニタリングする必要があると言え、適切な職務活動を行うことはそう簡単ではない。 ここでは、代表的な3つのフェーズに分け、社外取締役が取り組むべき活動につき列挙してみたい。 「社外」取締役である以上、当該会社の内情はもちろん、当該業界特有の知識すら持ち合わせていない場合も多いであろう。 そこで、モニタリングを実施する大前提として、まずその会社・その業界の実情を十分に理解することに努めなければならない。 社外取締役は、会社風土に縛られない「社外」からの視点や意見が重要であるとはいえ、適切かつ実効的なモニタリングを行うためには、最低限の情報収集の努力は必須である。 社外取締役にとって取締役会等の場は、非常に重要な活躍の舞台である。 経営目標や実績値をはじめとする定例の報告事項に加え、その時々で取締役会等に上程される個々の議題に関し、他の経営陣との議論を通じて、より良い意思決定がなされる一助となるべきことを目指すことになる。 「社内では誰も問題視しなかったが、ただ一人、社外取締役だけが異を唱えた」というシチュエーションは、この制度が効果的に機能している一場面であろう。たとえ結果的にみて「問題がなかった」という結論に至った場合でも、いつもと違った視点・角度からの問題提起がなされることで、議論が深まり、質の良い意思決定がなされるのである。 このようにして、取締役会等の場で、議題につき様々な角度からのメリット・デメリットが出席者により挙げられ、これをもとに真剣な議論が尽くされることで、一定のリスクを取りながら企業としての経営意思が決定されることになる。 このような議論の過程をきちんと経ていたかどうかが、後日に取締役の経営責任が問題とされた場合には、決定的に重要な要素となる。 また、不幸にして一般消費者を巻き込むような企業不祥事が発生した場合(例えば、大規模な食品事故等)に、当該企業の被害者対応や事後処置に全く誠意が見られず、世間の反感を買うというケースはまま見られる。 一度このような事態に陥れば、インターネットやSNSを通じて面白おかしく一方的な情報が流布し、いわゆる「炎上」状態となって歯止めが効かなくなる。こうなっては、業界団体や行政にも理解が得られず、投資家や一般消費者をますます落胆・敬遠させるといった負の連鎖が続き、企業価値・イメージを大きく下落させる結果にもつながりかねない。 社外取締役としては、緊急事態であるからこそ、会社を「外の視点」から眺められる数少ない存在として、冷静な判断・評価が期待されるところである。 *   *   * 以上が、日々の活動における主な活動内容である。 もちろん、社外取締役の活動は上記で全てかつ十分ということはない。 その時々の経営環境に応じて、「ガバナンスという観点から、今、何に注意を払うべきか」、「誰に、何を確認し、どう指示をすべきか」、そして究極的には、「現在の経営陣に経営を任せることが適切であるか」等々につき、常に悩み、決断しながら職務を全うしていくというのが社外取締役としての理想像であろう。 その意味では、上記に解説した活動内容は、あくまでもひとつの典型例を示したものに過ぎない。 なお、日本弁護士連合会は、2015年3月に「社外取締役ガイドライン」を公表しており、そこでは社外取締役がモニタリングを行う際の留意事項等が解説されており(14頁以下)、参考になる。 (了)

#No. 130(掲載号)
#栗田 祐太郎
2015/07/30

従業員等からの『マイナンバー』入手の手順 【第1回】「マイナンバー入手前に準備しておくべきこと」

従業員等からの 『マイナンバー』入手の手順 【第1回】 「マイナンバー入手前に準備しておくべきこと」   仰星監査法人 公認会計士 岡田 健司     1 マイナンバー入手の対象となる『個人』とは 以前本誌に寄稿した下記拙稿、特定個人情報保護委員会のいわゆるガイドラインやそのQ&A、内閣府・内閣官房からの各種説明資料等でも触れられるとおり、マイナンバー法の対応準備にあたっては、まずマイナンバー制度の自社への影響度を計るべく、どのような法定調書、支払調書等を作成し提出しているかを把握する必要がある。 国税庁、厚生労働省から新しくマイナンバーを記載して提出しなければならない平成28年1月以降提出予定の様式案が公表されていることから(下記リンク参照)、これらの確認を通じ、マイナンバーの入手の対象となる個人を特定していくこととなる。 代表的なものを挙げると、次のとおりである。 このように、マイナンバーを入手すべき個人は、従業員(パート、アルバイト含み、外国籍の方でも住民票に登録のある方を含む)だけではなく、従業員の配偶者や扶養家族、弁護士や税理士等、個人の地主や家主、不動産の売主、株主など広範多岐にわたる。 企業からすると、従業員やその家族は比較的距離も近くマイナンバーを入手しやすい環境にあると考えられるが、これら以外の外部の個人については事前の案内も含めできるだけ早く対応策を検討することが必要である。   2 最低限準備しておくべき“6つのこと” マイナンバーの入手にあたっては、最低限、次の6点について準備しておかなければならない。 (※) マイナンバーを入手する個人別に行う。つまり、代表例をまとめた上表の「マイナンバーを入手すべき個人」として記載した相手先ごとに行う。具体的には、「従業員」、「従業員の配偶者」、「従業員の扶養家族」、「個人の地主」、「株主」単位という意味である。  そこで、「従業員」については、「源泉徴収票作成目的」といったように利用目的の洗い出しを行い、当該目的を記載した書類(例:就業規則、入社時提出資料一覧表等)を作成するとともに、従業員からマイナンバーを入手する方法と従業員本人への本人確認の方法を決定する必要がある。 ① 利用目的の洗い出し マイナンバーの入手にあたっては、本人にその利用目的を明示しなければならない(個人情報保護法18)。このため、マイナンバーを入手する個人別、すなわち、代表例をまとめた上表の「マイナンバーを入手すべき個人」として記載した相手先ごとに、その利用目的を洗い出しておく必要がある。 例えば、従業員であれば「源泉徴収票作成目的」、「健康保険・厚生年金保険届出事務」、個人の地主や家主であれば「不動産の使用料等の支払調書作成目的」といったものが利用目的として挙げられる。 ② 書面の作成・交付 実務としては、事前に関係する個人に対しマイナンバーの提供をお願いする書面を交付した後に入手作業を行うことになると考えられることから、マイナンバーを入手する個人別に、①で洗い出した「利用目的」を記載した書面を作成する必要がある。 例えば、従業員について、新入社員であれば入社時に提出が必要な資料の一覧表、既存の社員であれば「就業規則」、その他の個人であれば「個人番号(マイナンバー)のご提供のお願い」といったようなものである。これらの書面のひな形案については、第4回、第5回でお示しすることとしたい。 ③ 入手の仕方・「本人確認」の方法を決定 (イ)マイナンバーの入手の仕方、及び、(ロ)「本人確認」の方法について、マイナンバーを入手する個人別に、企業の経営判断として、決定する必要がある。 (イ)については、例えば、マイナンバーの入手を外部にアウトソーシング(委託)するのか自社で実施するのか、自社で実施するとして従業員であれば社内のイントラネット上に直接従業員がマイナンバーを入力させることとするのか、それとも本社の総務人事部が直接対面の本人確認を経てマイナンバーを入手するのかといった点である。外部の個人については、マイナンバーを契約書や請求書に記載してもらうことが可能なのかどうかといった論点もある。 (ロ)については、マイナンバーを本人から入手するときには「本人確認」(番号確認と身元確認)を行う必要があるが、その方法には対面以外の方法も認められていることから、どのようにして「本人確認」を行うこととするのか決定する必要がある。なお、本人確認については次回第2回、第3回で詳しく解説することとしたい。 ④ 「本人確認マニュアル」の整備 マイナンバー入手時に必要な「本人確認」の手続は、民間の一般企業にとっては新たに経験する実務であり、マイナンバー制度を安全に運用するための生命線であることから、誰が「本人確認」を行っても等しい水準となり、かつ、その実施品質が保たれる必要がある。そこで自社の「本人確認マニュアル」等として整備する必要がある。 ⑤ 「本人確認」の記録保存体制 企業としては「本人確認」を行ったうえで適切にマイナンバーを入手したことを事後でも説明できるようしておく必要があることから、「本人確認」を実施した記録の残し方を決めておく必要がある。 ⑥ 関係部署・担当者への教育研修 関係する個人にマイナンバーの入手目的等を説明し「本人確認」を行うのは自社の従業員であることから、従業員に対する教育研修が極めて重要となる。この点は、ガイドラインでも「人的安全管理措置」として求められている点である。   3 最後に 次稿以降、今回説明した概要の細部についても適宜言及しつつ、全6回(予定)の解説を通じて「マイナンバーの入手」の全体像と実務について明らかにしていきたい。 (了)

#No. 130(掲載号)
#岡田 健司
2015/07/30

コーポレートガバナンス・コードのポイントと企業実務における対応のヒント 【第11回】「投資家との建設的な対話を促進するための開示」~統合報告を活用した攻めと守りのガバナンス力の対話~

コーポレートガバナンス・コードのポイントと 企業実務における対応のヒント 【第11回】 (最終回) 「投資家との建設的な対話を促進するための開示」 ~統合報告を活用した攻めと守りのガバナンス力の対話~   PwCあらた監査法人 パートナー 久禮 由敬 PwCあらた監査法人 マネージャー 公認会計士 三代 英敏   〔適切な情報開示と透明性の確保〕 2015年6月1日よりコーポレートガバナンス・コード(以下「CGコード」)の適用が開始された。 既に新様式の「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」を提出済みの企業もあるが、「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」の記載内容にとどまらず、CGコードへの対応を検討中という企業は多くあると思われる。 本連載の最終回となる本稿では、CGコードの【基本原則3】と【原則3-1.情報開示の充実】について解説し、実務対応のヒントを提供することを目的とする。なお、文中の意見にわたる部分は、筆者の私見であることをお断りしておく。 原則3-1では、以下の事項について開示し、主体的な情報発信を行うべきである、とされている。 原則3-1は、CGコード原則のうち特定の事項を開示すべきとする11原則の1つであるため、「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」の「コーポレートガバナンス・コードの各原則に基づく開示」において記載が求められている(本連載【第8回】参照)。 これらの事項は、会社の意思決定の透明性・公正性を確保し、実効的なコーポレートガバナンスを実現するとの観点から開示が求められている。 また、【基本原則3】では、開示・提供される情報が株主との間で建設的な対話を行う上での基盤となることも踏まえ、そうした情報が、正確で利用者にとって分かりやすく、情報として有用性の高いものとなるようにすべきである、としている。したがって、企業は、ひな型的な記述や具体性を欠く記述は避けなければならず、このことは補充原則3-1①でも要求されている。 また、コーポレートガバナンス・コードとともに、「車の両輪」と呼ばれる日本版スチュワードシップ・コードが公表されてから1年以上が経過し、2015年6月11日時点で191の機関投資家が受入れを表明している。これらの機関投資家からは、企業と建設的な対話を行うために有用な情報の開示がより一層期待されている。   〔有用な情報の開示とは?〕 では、企業が投資家との間で建設的な対話を行うために有用な情報の開示とは、どのような開示であろうか。 CGコードは「日本再興戦略 改訂2014」を受けて策定されたものであり、企業の「稼ぐ力」を強化することを狙いの1つとしている。さらに、2015年6月30日に閣議決定された「日本再興戦略 改訂2015」では、「攻め」のコーポレートガバナンスの更なる強化がうたわれ、経営者による積極果敢な民間投資が期待されている。 つまり、経営者はリスクをいたずらに回避して機会を逃すのではなく、リスクを取りながら、これを適切に管理して、機会を生かしリターンを獲得していくことが望まれている。 このような経営者の意思決定を後押しするのが「攻め」のガバナンスであり、投資家に対しては、企業が中長期的にどのような価値創造を行い、どのようにして「稼ぐ力」を強化していくのか、その方針を明確に指し示し、対話を積極化していく必要がある。 既に、法定開示である事業報告書や有価証券報告書の他、任意開示のアニュアルレポートやサステナビリティレポートなどにより、多くの財務・非財務情報を投資家に提供している企業も少なくない。しかし、投資家からは、企業から開示される情報が多すぎるうえ、整合性の取れていない開示も多いとの指摘がある。 投資家は、企業が中長期の価値創造をどのように行っていくのかの見通しや、事業の先行きに関する経営者の自信の度合いを簡潔に知りたい、確かめたいという期待をもっている。 このような投資家からの期待は、日本に限らず世界各国で見受けられ、この期待に応えるためのツールの1つとして近年関心が高まっているのが「統合報告」である。   〔統合報告による中長期の価値創造の開示〕 統合報告は、国際統合報告評議会(IIRC)が、リーマンショックによる企業報告への信頼の失墜、また、金融市場の短期志向やグローバルな資源・環境問題の顕在化といった環境変化を背景として、国際的に合意された枠組みのもとで、中長期的な視点での企業報告を実現することを目的として検討してきたものである。2013年12月に国際統合報告フレームワーク(以下「フレームワーク」)の第1版が公表されている。 フレームワークでは、統合報告書は、「組織の外部環境を背景として、組織の戦略、ガバナンス、実績、及び見通しが、どのように短、中、長期の価値創造を導くかについての簡潔なコミュニケーション」であると定義しており、統合報告書の全般的な内容を統括する指導原則及び内容要素を以下のように規定している【図1】。 【図1:指導原則と内容要素】 (出所:IIRC「国際統合報告フレームワーク」に基づき筆者作成) ここで、指導原則の1つである「情報の結合性」に注目してみたい。フレームワークでは、「組織の長期にわたる価値創造能力に影響を与える要因の組合せ、相互関連性、及び相互関係の全体像を示す」と説明されている。 情報の結合性には、【図1】に示した内容要素間の結合性の他、過去・現在および将来の情報の結合性や、外部報告とマネジメント上用いられる情報との結合性なども含まれるが、内容要素間の結合性に関して言えば、認識している外部環境を背景として、リスクと機会をどう捉えているか、それらに対応するために、どのような戦略を取り、資源配分を行っているか、市場環境の変化の兆候を察知したり実績を測定したりするための主要業績評価指標(KPI)や主要リスク評価指標は何を、また、なぜ採用しているのか、これらを支えるガバナンス(これには取締役等の選任理由や報酬決定の方針等が含まれる)はどのようになっているか、ということを関連付けて明解なストーリーを説明することが求められている。また、これらは短・中・長期の時間軸に関しても整合していることが必要である【図2】。 【図2:情報の結合性】 (出所:筆者作成) CGコードでは、平成26年改正会社法と相俟って、社外取締役の選任ということが注目されることが多い。また、ダイバーシティの観点から、女性取締役の登用も注目されている。 しかし、重要なことは、社外取締役または女性取締役の人数や比率といった形式面でのCGコードの遵守のみではなく、なぜその人を選任するのか、実態としての効果はあるのか、という実質面でのCGコードの活用である。 つまり、現在および将来の外部環境はこうであり、こういう機会とリスクが存在する、だから、このようなリスク管理能力を有し、リスクを管理しながら成長のための挑戦にリーダーシップを発揮できオーバーサイトができる能力と経験を有する人を取締役に選任している、ということをきちんと説明することが重要である。 報酬に関しても、機会とリスクに対して設定したKPIや主要リスク評価指標を達成したのであるから、「これだけの金額の報酬を、このような形(業績連動比率の在り方やストックオプションの活用等)で支払います」と説明することが望まれる。 PwCが世界の85の投資家を対象に実施した調査でも、【図3】に示すような結果が得られている。 【図3:PwCによる投資家調査結果】  (出所:PwC「コーポレートパフォーマンス:投資家は何を知りたがっているのか?-統合報告を活用して力強いストーリーを語る-」)   〔統合的思考の浸透度合いを通じて攻めと守りのバランスのとれた「ガバナンス力」をアピールする〕 制度開示に比べれば、統合報告を活用した開示と対話は歴史も浅く、世界を見渡しても各企業が試行錯誤を行っている段階である。 実際に、ブラックサン社がIIRCのパイロットプログラム参加組織のうち66組織を対象に、社内の各部門の統合報告への取り組みへの関与度(①積極的な関与、②限定的な関与、③関与なし)を調査した結果では、財務部門、CSR部門といった部門が積極的に関与している一方、内部監査、人事、リスク、戦略といった部門の関与度は低く、役員の関与も約半数は限定的となっている(※)。 (※) 出所:ブラックサン社「Realizing the benefits: The impact of Integrated Reporting」P.21を参考にしている。 日系企業が、統合的思考の浸透度合いを通じて攻めと守りのバランスのとれた「ガバナンス力」をアピールすることで、海外投資家の適切な評価を勝ち得るチャンスは大きい。 改正会社法およびCGコードの影響等で社外取締役の選任が増えているが、社外取締役に存分に価値を提供してもらうには、グループ全体の目線で、かつ、持続的な企業価値創造が可能かどうかという視点から、自社の経営理念、ビジネスモデルおよび戦略等を理解し発言してもらうことが有効である。また、そのためには、統合的な思考に基づき、社内で共通の認識・価値観を共有するとともに、投資家等の社外のステークホルダーに対してもストーリーとして語り、共感を得ることが重要である。 日系企業の中にはこうした視点から、企業の価値創造プロセスに関する開示と対話を積極的に行っている企業もある。たとえば、あるグローバル企業では、統合報告書を利用して、社長選任の過程を文章で説明することで透明化したり、社内役員と社外役員のリスク感度の違いを説明した上で取締役会のダイバーシティの強みを訴求したりする挑戦を行っている。 我が国においては、現時点で統合報告書の作成は義務付けられてはいない。また、統合報告書が唯一・最善の開示ツールであるとは限らない。しかし、攻めと守りのバランスのとれたコーポレートガバナンスの実態を、企業価値の構成要素として社内外に発信・対話していくうえで、CGコード対応として「コンプライ・オア・エクスプレイン」を超えた「コンプライ・アンド・エクスプレイン」の精神のもと、統合報告を活用する余地は非常に大きい。 CGコードへの取り組みは、「コーポレート・ガバナンスに関する報告書」を形式的に開示すれば完了ではなく、対話を通じて得た果実を組織内で咀嚼し、統合的思考による組織全体での日々の取り組みを充実させた上で、企業の中長期にわたる価値創造を加速していくことに本当の意味がある。 (連載了)

#No. 130(掲載号)
#久禮 由敬、三代 英敏
2015/07/30

《速報解説》 国税庁より「財産債務調書の提出制度(FAQ)」が関係通達と合わせて公表~調書の記載方法や見積価額の算定方法などを解説~

《速報解説》 国税庁より「財産債務調書の提出制度(FAQ)」が 関係通達と合わせて公表 ~調書の記載方法や見積価額の算定方法などを解説~   Profession Journal編集部   国税庁は7月21日ホームページにおいて「財産債務調書」の創設に伴う関係通達(「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(国外財産調書及び財産債務調書関係)の取扱いについて」(法令解釈通達))の改正を公表した。また、同日付で創設された「財産債務調書制度に関するお知らせ」ページ(下記リンク参照)には、法令通達を踏まえた「財産債務調書の提出制度(FAQ)」を公表し、制度の概要から財産の価額の算定方法、様々なケースを踏まえた調書の記載方法を、48の設問で解説している。 財産債務調書には、今年の12月31日における価額を記載し、来年3月15日が最初の調書提出期限となるため、税理士はクライアントへの周知と対象者の選定に対応の遅れがないよう、これらの内容について確認しておきたい。 なお、同ページ内において、「財産債務調書の様式(記載要領)及び記載例については、現在作成中」とされている。   〇「財産及び債務の明細書」から「財産債務調書」へ 従前よりその年分の総所得金額及び山林所得金額の合計額が2,000万円を超える者に提出が求められていた「財産及び債務の明細書」が、平成27年度税制改正で整備され、「財産債務調書」として新たに位置づけられることとなった。 これにより、所得税等の確定申告書を提出しなければならない者で、その年分の総所得金額及び山林所得金額の合計額が2,000万円を超え、かつ、その年の 12 月 31 日において、その価額の合計額が3億円以上の財産又はその価額の合計額が1億円以上の国外転出特例対象財産(※)を有する者は、その財産の種類、数量及び価額並びに債務の金額その他必要な事項を記載した「財産債務調書」を提出しなければならない。 (※) 「国外転出特例対象財産」とは、所得税法第 60 条の2第1項に規定する有価証券等並びに同条第2項に規定する未決済信用取引等及び同条第3項に規定する未決済デリバティブ取引に係る権利をいい、いわゆる「国外転出時課税制度」の対象財産がこれに該当する。 なお「財産債務調書」には、各財産の種類、数量及び価額並びに債務の金額その他必要な事項を記載し、それらを財産の区分ごとに集計した「財産債務調書合計表」を合わせて提出しなければならない。   〇「国外財産調書」の提出者も「財産債務調書」の対象に さて、平成26年1月から施行されている「国外財産調書」だが、対象者は非永住者を除く居住者となっており、その年の12月31日に、その価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する者となっている。この国外財産調書を提出する者についても、上記の提出要件に該当する場合には、財産債務調書を提出しなければならない(Q18)。 さらに「財産債務調書」「財産債務調書合計表」には、「国外財産調書に記載した国外財産の価額の合計額」を記入する欄、「国外財産調書の提出の有無のチェック」欄があり、さらに上述の提出要件に関し、国外転出時課税制度に係る「国外転出特例対象財産」の記入欄がある。それぞれの対象財産の判定には時間を要する。 「財産債務調書」と「国外財産調書」の2つの調書を共に提出しなければならないケースでは、提出期限が同じ3月15日ということもあり、確定申告の繁忙期でもありその作成作業が並行して行われることが想定されるため、スケジューリングを考慮する必要があろう。   〇様々な記載方法を例示 FAQでは財産債務調書の記載事項について、例えば財産債務の用途別に「一般用」と「事業用」に分けて書くべきところ、「一般用」「事業用」の兼用財産の場合は事務負担を軽減するために「一般用、事業用」と記載してよい点(Q6)や、「土地」と「建物」の価額に区分することができない避暑用のリゾートマンション(土地付建物)の記載方法(Q7)など、様々ケースについて解説されている。 また財産の所在の判定については、基本的に相続税法第10条の規定によることとされているとの記載に加え、各財産の所在に関する具体的な記載内容についての「財産の所在の記載一覧表」を掲載する(Q12)など、利便性が図られている。   〇財産価額(時価)は見積価額での記載も認められる 上記のとおり財産債務調書に記載する各財産の価額は、その年の12月31日における時価を記載することになっているが、時価の算定が困難な場合等の事務負担軽減の観点から、時価に準ずる「見積価額」による記載が認められている(Q19)。 例えば土地・建物の場合、その年の固定資産税評価額等が見積価額に該当する。その他の財産の見積価額の具体的な算定方法については、Q23(P21~25)において、財産の種類別に例示されており、簡便な方法による算定でよいものついては省力化を検討しておきたい。 その他、有価証券の価額(Q24~26)、生命保険の価額(Q30)、信託に関する権利の価額(Q33)、共有財産の価額(Q36)などの算定方法が、各設問に分かれて解説されている。   〇相続財産に関する調書の提出義務の判定は? 相続により取得した財産における相続人の調書の提出義務の判断は、 こととされている(Q37)。 なお、調書の提出後に遺産分割が行われた場合には、遺産分割による持分で再計算した財産債務調書を再提出(法定相続分であん分した価額により提出義務がないと判断していた場合は、新たに提出)する必要はないが、遺産分割の結果を踏まえ訂正した財産債務調書を再提出(又は提出)しても差し支えない、としている。   〇財産の記載漏れや調書の提出忘れは過少申告加算税の加重措置の対象に 財産債務調書制度については、国外財産調書制度と同様に、期限内に調書を提出した場合に、調書の記載のある財産債務に関する所得税及び復興特別所得税や相続税の申告漏れが生じた場合においても、その財産債務に関する申告漏れに係る部分の過少申告加算税等について5%軽減される措置が設けられている。 ただし、期限内に調書を提出しない場合や、期限内に提出された調書に財産債務の記載漏れがあった場合(重要事項の記載が不十分な場合を含む)、その財産債務に関する所得税及び復興特別所得税の申告漏れが生じた場合は、その財産債務に関する申告漏れに係る部分の過少申告加算税等について、5%加重されることとなる(Q43)。 なお、提出期限後に財産債務調書を提出した場合であっても、その財産債務に関する所得税等又は相続税について、調査があったことにより更正又は決定があるべきことを予知してされたものでないときは、その財産債務調書は提出期限内に提出されたものとみなして、過少申告加算税等の特例を適用することとされている(Q47)。 また提出した財産債務調書の記載内容に誤りや記載漏れがあった場合にも、更正等を予知してされたものでないときは、期限後に再提出することで訂正が可能とされているため(Q48)、提出後の対応についても留意しておきたい。 (了)

#No. 127(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2015/07/29
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