公開日: 2015/05/14 (掲載号:No.119)
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〔会計不正調査報告書を読む〕【第31回】ジャパンベストレスキューシステム株式会社・「内部調査委員会調査報告書(平成27年4月28日付)」

筆者: 米澤 勝

〔会計不正調査報告書を読む〕

【第31回】

ジャパンベストレスキューシステム株式会社・

「内部調査委員会調査報告書(平成27年4月28日付)」

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

平成26年、3次にわたり第三者委員会を設置して子会社の不正売上の調査を行い、調査報告書を公表したジャパンベストレスキューシステム株式会社は、平成27年3月12日、東京証券取引所に「改善状況報告書」を提出した。しかし、同時に、「内部調査委員会の設置に関するお知らせ」を公表し、再度、社外取締役、社外監査役を委員とする調査を行うこととなった。本稿では、一連の経緯を確認するとともに、調査結果を検証することとしたい。

 

【ジャパンベストレスキューシステム株式会社の概要(再掲)

ジャパンベストレスキューシステム株式会社(以下「JBR」という)は、1997(平成9)年創業。創業時の社名は、日本二輪車ロードサービス株式会社。その後、平成11年8月に現社名に変更。
JBRホームページには、以下のような事業目的が記載されている。

24時間365日対応の総合生活トラブル解決サービス「生活救急車」を全国展開し、ガラス・水まわり・カギ・パソコンのトラブル解決サービスなど様々なお困りごとに対応。

連結売上高10,405百万円、連結経常利益141百万円(数字はいずれも平成25年9月期)。従業員数196名。本店所在地、愛知県名古屋市。東証1部、名証1部上場。

 

【2014(平成26)年5月以降の適時開示】

平成26年 5月2日	第三者委員会の設置及び平成26年9月期第2四半期決算短信の発表日の変更に関するお知らせ 6月3日	第三者委員会の調査報告書受領に関するお知らせ 6月13日	2014年9月期第2四半期報告書 6月14日	第三者委員会の再設置に関するお知らせ 7月28日	第三者委員会の調査報告書受領に関するお知らせ 8月8日	東京証券取引所による公表措置及び改善報告書の提出要求並びに名古屋証券取引所による改善報告書の提出要求について 8月11日	「特別損失の計上に関するお知らせ 8月22日	東京証券取引所及び名古屋証券取引所への改善報告書の提出に関するお知らせ 8月22日	連結子会社の役員の異動及び選任に関するお知らせ 10月29日	第三者委員会の設置に関するお知らせ 	役員退職慰労金の廃止及び特別利益の計上等並びに貸倒引当金繰入額の減額に関するお知らせ 11月11日	第三者委員会の調査報告書受領に関するお知らせ 11月28日	会計監査人の異動に関するお知らせ 平成27年 3月12日	東京証券取引所及び名古屋証券取引所への改善状況報告書の提出に関するお知らせ 	内部調査委員会の設置に関するお知らせ 4月28日	内部調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ

 

【内部調査委員会の概要】

〔適時開示〕

〔第三者委員会〕

  • 委員長:社外取締役 宇澤 亜弓(公認会計士)
  • 委 員:社外取締役 熊谷 真喜(弁護士)
  • 委 員:社外監査役 吉岡 徹郎(元静岡県庁職員)

〔調査期間〕

2015(平成27)年3月12日から4月27日まで

〔調査委員会の目的〕

(1) JBR元取締役管理部長B氏による本件不正行為に関する指示の有無及び関与の程度並びにJBRの監査体制及びJBRの監査対応における問題点等の調査

(2) 過去に設置された第三者委員会が認定した事実に誤りがある場合には、その原因の解明

(3) 再発防止策の提言

〔適時開示(調査結果)〕

 

内部調査委員会による報告書のポイント

1 内部調査委員会の設置に至った経緯

調査報告書によれば、証券取引等監視委員会開示検査課による開示検査の対応の過程において、JBRの連結子会社である株式会社バイノス(以下「バイノス」と略称する)における不適正な売上計上(以下「本件不正行為」という)に関して、B氏(平成26年12月の株主総会で退任した元取締役管理部長鈴木良夫氏。以下、本稿では、「鈴木元取締役」と略称する)が関与していたことを疑わせる事実が確認され、また、JBRの監査体制及び監査対応にも問題があったことを窺わせる事実が確認されたため、本件不正行為について再度徹底的な調査を行い、事実関係を明らかにするとともに、原因たる事実に即した改善措置を立案することを目的として、JBRの社外役員3名(全員、本件不正行為が発覚した後に役員に選任された者である)から構成される内部調査委員会を設置したというものである。

 

2  内部調査委員会による調査の結果判明した事実

(1) D氏メモ

第1次第三者委員会によって、バイノス元代表取締役とともに「売上計画未達の発覚を回避するため、不適切な売上計上を行った」と認定された、バイノス元取締役でJBR管理部経理グループの元シニアマネージャーでバイノス元取締役のD氏は、第2次第三者委員会調査後の鈴木元取締役の「自己保身のみを図る態度」に不信感と憤りを覚え、後日、真実を話す必要が生じた際のことを考え、第1次調査報告書及び第2次調査報告書に朱書きでメモを加筆していき、「D氏メモ」を作成し、保管していた。

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〔会計不正調査報告書を読む〕

【第31回】

ジャパンベストレスキューシステム株式会社・

「内部調査委員会調査報告書(平成27年4月28日付)」

 

税理士・公認不正検査士(CFE)
米澤 勝

 

平成26年、3次にわたり第三者委員会を設置して子会社の不正売上の調査を行い、調査報告書を公表したジャパンベストレスキューシステム株式会社は、平成27年3月12日、東京証券取引所に「改善状況報告書」を提出した。しかし、同時に、「内部調査委員会の設置に関するお知らせ」を公表し、再度、社外取締役、社外監査役を委員とする調査を行うこととなった。本稿では、一連の経緯を確認するとともに、調査結果を検証することとしたい。

 

【ジャパンベストレスキューシステム株式会社の概要(再掲)

ジャパンベストレスキューシステム株式会社(以下「JBR」という)は、1997(平成9)年創業。創業時の社名は、日本二輪車ロードサービス株式会社。その後、平成11年8月に現社名に変更。
JBRホームページには、以下のような事業目的が記載されている。

24時間365日対応の総合生活トラブル解決サービス「生活救急車」を全国展開し、ガラス・水まわり・カギ・パソコンのトラブル解決サービスなど様々なお困りごとに対応。

連結売上高10,405百万円、連結経常利益141百万円(数字はいずれも平成25年9月期)。従業員数196名。本店所在地、愛知県名古屋市。東証1部、名証1部上場。

 

【2014(平成26)年5月以降の適時開示】

平成26年 5月2日	第三者委員会の設置及び平成26年9月期第2四半期決算短信の発表日の変更に関するお知らせ 6月3日	第三者委員会の調査報告書受領に関するお知らせ 6月13日	2014年9月期第2四半期報告書 6月14日	第三者委員会の再設置に関するお知らせ 7月28日	第三者委員会の調査報告書受領に関するお知らせ 8月8日	東京証券取引所による公表措置及び改善報告書の提出要求並びに名古屋証券取引所による改善報告書の提出要求について 8月11日	「特別損失の計上に関するお知らせ 8月22日	東京証券取引所及び名古屋証券取引所への改善報告書の提出に関するお知らせ 8月22日	連結子会社の役員の異動及び選任に関するお知らせ 10月29日	第三者委員会の設置に関するお知らせ 	役員退職慰労金の廃止及び特別利益の計上等並びに貸倒引当金繰入額の減額に関するお知らせ 11月11日	第三者委員会の調査報告書受領に関するお知らせ 11月28日	会計監査人の異動に関するお知らせ 平成27年 3月12日	東京証券取引所及び名古屋証券取引所への改善状況報告書の提出に関するお知らせ 	内部調査委員会の設置に関するお知らせ 4月28日	内部調査委員会の調査報告書受領に関するお知らせ

 

【内部調査委員会の概要】

〔適時開示〕

〔第三者委員会〕

  • 委員長:社外取締役 宇澤 亜弓(公認会計士)
  • 委 員:社外取締役 熊谷 真喜(弁護士)
  • 委 員:社外監査役 吉岡 徹郎(元静岡県庁職員)

〔調査期間〕

2015(平成27)年3月12日から4月27日まで

〔調査委員会の目的〕

(1) JBR元取締役管理部長B氏による本件不正行為に関する指示の有無及び関与の程度並びにJBRの監査体制及びJBRの監査対応における問題点等の調査

(2) 過去に設置された第三者委員会が認定した事実に誤りがある場合には、その原因の解明

(3) 再発防止策の提言

〔適時開示(調査結果)〕

 

内部調査委員会による報告書のポイント

1 内部調査委員会の設置に至った経緯

調査報告書によれば、証券取引等監視委員会開示検査課による開示検査の対応の過程において、JBRの連結子会社である株式会社バイノス(以下「バイノス」と略称する)における不適正な売上計上(以下「本件不正行為」という)に関して、B氏(平成26年12月の株主総会で退任した元取締役管理部長鈴木良夫氏。以下、本稿では、「鈴木元取締役」と略称する)が関与していたことを疑わせる事実が確認され、また、JBRの監査体制及び監査対応にも問題があったことを窺わせる事実が確認されたため、本件不正行為について再度徹底的な調査を行い、事実関係を明らかにするとともに、原因たる事実に即した改善措置を立案することを目的として、JBRの社外役員3名(全員、本件不正行為が発覚した後に役員に選任された者である)から構成される内部調査委員会を設置したというものである。

 

2  内部調査委員会による調査の結果判明した事実

(1) D氏メモ

第1次第三者委員会によって、バイノス元代表取締役とともに「売上計画未達の発覚を回避するため、不適切な売上計上を行った」と認定された、バイノス元取締役でJBR管理部経理グループの元シニアマネージャーでバイノス元取締役のD氏は、第2次第三者委員会調査後の鈴木元取締役の「自己保身のみを図る態度」に不信感と憤りを覚え、後日、真実を話す必要が生じた際のことを考え、第1次調査報告書及び第2次調査報告書に朱書きでメモを加筆していき、「D氏メモ」を作成し、保管していた。

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連載目次

会計不正調査報告書を読む

第1回~第100回 ※クリックするとご覧いただけます。

第101回~

筆者紹介

米澤 勝

(よねざわ・まさる)

税理士・公認不正検査士(CFE)

1997年12月 税理士試験合格
1998年2月 富士通サポートアンドサービス株式会社(現社名:株式会社富士通エフサス)入社。経理部配属(税務、債権管理担当)
1998年6月 税理士登録(東京税理士会)
2007年4月 経理部からビジネスマネジメント本部へ異動。内部統制担当
2010年1月 株式会社富士通エフサス退職。税理士として開業(現在に至る)

【著書】

・『新版 架空循環取引─法務・会計・税務の実務対応』共著(清文社・2019)

・『企業はなぜ、会計不正に手を染めたのか-「会計不正調査報告書」を読む-』(清文社・2014)

・「企業内不正発覚後の税務」『税務弘報』(中央経済社)2011年9月号から2012年4月号まで連載(全6回)

【寄稿】

・(インタビュー)「会計監査クライシスfile.4 不正は指摘できない」『企業会計』(2016年4月号、中央経済社)

・「不正をめぐる会計処理の考え方と実務ポイント」『旬刊経理情報』(2015年4月10日号、中央経済社)

【セミナー・講演等】

一般社団法人日本公認不正検査士協会主催
「会計不正の早期発見
――不正事例における発覚の経緯から考察する効果的な対策」2016年10月

公益財団法人日本監査役協会主催
情報連絡会「不正会計の早期発見手法――監査役の視点から」2016年6月

株式会社プロフェッションネットワーク主催
「企業の会計不正を斬る!――最新事例から学ぶ,その手口と防止策」2015年11月

 

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