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Profession Journal No.57 公開のお知らせ

2014年2月20日(木)AM10:30、Profession Journal  No.57 が公開されました。 Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開してまいります。 Web情報誌 Profession Journalは、プロフェッションネットワークのプレミアム会員専用の閲覧サービスです。 Profession Journalについての詳細はこちら。 バックナンバー一覧はこちら。

#Profession Journal 編集部
2014/02/20

日本の企業税制 【第4回】「法人税減税-その財源をどうする」

日本の企業税制 【第4回】 「法人税減税-その財源をどうする」   一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 阿部 泰久   1 はじめに 経団連が画策したかどうかは「企業秘密」であるが、法人実効税率引下げが現実味を帯び始めている。 安倍首相は、昨年来、しばしば法人税率引下げに言及してきたが、1月22日、スイスのダボスで開かれた世界経済フォーラム年次会議の冒頭演説の中では、「法人にかかる税金の体系も、国際相場に照らして競争的なものにしなければなりません。」と述べた上で、「本年、さらなる法人税改革に着手いたします。」と明言しており、法人実効税率の引下げは国際公約にも等しくなっている。 さらには、年末の平成27年度税制改正を待たずに、6月に予定されている成長戦略の改定あるいは骨太の基本方針策定をにらんで、法人実効税率引下げの大筋、すなわち、どのようなステップを踏んで国際相場である25%まで引き下げていくのか、そしてそのための財源をどう考えるのかに議論は進んでいる。   2 税収中立でなければいけないのか? 平成26年度与党税制改正大綱では、「税制の中立性や財政の健全化を勘案し、ヨーロッパ諸国でも行われたように政策減税の大幅な見直しなどによる課税ベースの拡大や、他税目での増収策による財源確保を図る必要がある。」としている。ここでは、当然のように、税率引下げにより法人税収が減少し、その分を埋め併せて税収中立とすることが前提とされている。 しかし、経済のパイが拡大し、企業収益が伸びていくのであれば、実効税率を引き下げた分のいくらかはカバーできる。現に、税率を引き下げても税収が増えるという「パラドックス」は、欧州主要国の法人税改正で経験されている。海外を引き合いに出さなくとも、わが国でも平成23年度改正(実際には24年度以降)で税率を下げて以来、法人税収は増え続けている。 景気が良くなれ法人税収が増えるのは当たり前のことでしかないとしても、少なくとも税収中立は単年度ではなく多年度で考えるべきではないのか。 【法人税収の推移】 (注) 平成23年度改正の施行は平成24年度以降。   3 国なのか地方なのか? そもそもの議論の前提として、実効税率引下げを、国税・地方税でどのように振り分けるべきなのかという問題がある。 現状では、国税・地方税を合わせた法人所得課税の税収額は、ほぼ5対2の割合であるが、国税の法人税率だけで(法人住民税への波及はあるとしても)実効税率を10%分引き下げるのは困難である。 一方で、地方法人課税には、景気変動による税収の不安定さとともに偏在性の問題も付きまとっている。平成26年度税制改正では「地方法人税」が創設されたが、これをさらに拡大して、法人所得課税はすべて国税として、地方法人税は法人住民税の均等割分と法人事業税の外形標準分だけとすることも考えてよい。もちろん、地方財源は交付税等での調整が不可欠である。 また、自然増収や後述の他税目による増収策も、地方税を対象に入れるならば、かなり視野が広がってこよう。   4 課税ベース拡大は可能か? 平成23年度税制改正では、財源のおよそ半分を減価償却制度の見直しや、欠損金の繰越控除制度の見直しなどの課税ベース拡大で捻出しているが、これらをさらに深堀りすることになれば、かえって企業活力を損ないかねない。 大まかな試算では、減価償却制度を定額方式に一本化、欠損金の制限を8割から6割に拡大、受取配当益金不算入を現行の8割に縮小、さらに政策税制を全廃すれば、全体で法人税率10%分引下げにほぼ見合う額となるが、そのようなことをしてでも税率を下げてほしいという企業は、特に製造業であれば皆無に近いであろう。 政策税制は期限到来によって廃止していくとしても、全体でも税率2%分程度でしかない。また、日本企業の国際競争力を維持するためには、研究開発税制の根幹部分の廃止などできない。 法人税の課税ベース拡大は避けて通れないとしても、実際には非常に困難である。特に、税率引下げはどの企業にも一律に効くが、課税ベース拡大により増税となる業種・業態、その程度は、やり方次第で千差万別である。平成23年度による法人税改正では、平年度ベースで7,758億円の減収超過とされたが、実はここまでのネット減税を確保して、ようやくすべての業種・業態で少なくとも増税にはならないことができたのである。   5 他税目とは何か? 「他税目での増収策による財源確保」が与党大綱で示されたことは画期的ではあるが、「他税目」として期待できるものがどれほどあるのか。 法人税減税のために単に所得税を増税では政治的には通らない。しかし、実効税率引下げで企業収益が向上し、株価の上昇や配当の増大が期待できるとすれば、株式譲渡益や配当への課税を見直すことはあり得るのかもしれない。しかし、上場株式の譲渡益や配当への課税は20%へ引き上げたばかりであり、すぐに増税ができるであろうか。 資産課税や酒税・たばこ税も考えられるが、税収には限界があるというより、これ以上の増税はむしろ税収減につながりかねない。結局は消費税となるが、8%、10%ヘの引上げ分は社会保障財源とされている。2020年のプライマリーバランス回復を目標とする財政再建とのからみで、2016年度から2020年度のどこかの時点で、さらなる消費税率引上げがあり得るとしても、かなり先のことでしかない。 一方で、地方税を視野に入れるのであれば、他税目の範囲も広がるし、例えば法人住民税の均等割分、事業税の外形標準部分(特に資本割)など法人地方税の中での増収策もあり得る。   6 おわりに 法人実効税率の引下げは、わが国の立地競争力を強化し、国内における生産・開発拠点等を維持するとともに、内外の企業による投資を促進する上で、避けて通ることのできない成長戦略(=アベノミクス第3の矢)の本丸でもある。 安倍総理の国際公約ともなった以上、これ以上の先送りは、ようやく回復してきた日本経済への信認の崩壊へとつながりかねず、平成27年度税制改正において、是非とも実現させなければならない。 そのための議論は実際には既に開始されているが、財源は、自然増収、法人税の課税ベース拡大、他税目での増収策、の3つをどのように組み合わせるかでしかない。 しかし、その前に、まずは「産業構造や事業環境の変化の中で、法人実効税率引下げと企業の具体的な行動との関係や、現在の法人課税による企業の税負担の実態も踏まえ、その政策効果を検証すること(平成26年度与党税制改正大綱)」から始めなければならない。 法人実効税率を引き下げれば、世の中でどのような良いことが起きるのか。まずは、復興法人特別税の廃止が企業の賃上げに確実につながったという結果を示すことが、極めて重要である。 (了)  

#No. 57(掲載号)
#阿部 泰久
2014/02/20

〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載53〕 「生産性向上設備投資促進税制」を利用する上での注意点(前編)

〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載53〕 「生産性向上設備投資促進税制」を利用する上での注意点 (前編)   公認会計士・税理士 有田 賢臣   Q 当社は、生産性向上を図るため工場の機械装置を更新する予定です。新しく購入する機械装置に生産性向上設備投資促進税制を適用して即時償却を行いたいと思うのですが、気をつけるべき点はありますか? A 生産性向上設備には、【A】先端設備と【B】生産ラインやオペレーションの改善に資する設備の2類型がある。 まずは、【A】先端設備に該当するかを設備メーカーに確認する。該当する場合には証明書の発行を設備メーカーに依頼する必要がある。 【A】先端設備には該当しないものの、【B】生産ラインやオペレーションの改善に資する設備に該当する場合には、設備を購入する前に、その設備に係る投資計画について経済産業局から確認書の交付を受ける必要がある。生産性向上設備投資計画申請書、生産性向上の裏づけとなる資料、事業報告書の写し、公認会計士・税理士による事前確認書などを提出する必要があり、提出資料の準備から確認書の交付を受けるまで2ヶ月程度の期間を要する。 解 説 1 制度の内容 (1) 適用対象法人 この制度を適用できる法人は、青色申告書を提出する法人に限られている(新措法42の12の5①)が、資本金の額等の他の要件はないため、法人の選択によって、特別償却か税額控除のいずれかを適用することが可能である。 (2) 適用対象年度 産業競争力強化法の施行の日(平成26年1月20日)から平成29年3月31日までに、生産性向上設備を取得して事業の用に供した場合に、その事業供用日を含む事業年度において、適用可能となっている(新措法42の12の5①)。 ただし、特別償却や税額控除を行える事業年度は、平成26年4月1日以後に終了する事業年度に限られているため、平成26年3月31日までに終了する事業年度において生産性向上設備を取得して事業の用に供した場合には、翌事業年度(平成26年4月1日を含む事業年度)にて特別償却か税額控除のいずれかを適用することが可能となっている(新措法42の12の5③)。 なお、解散(合併による解散を除く)の日を含む事業年度及び清算中の各事業年度においては適用対象年度から除外されている(新措法42の12の5①)。 (3) 適用対象となる資産 この制度の適用対象資産は、生産等設備のうち、【A】先端設備の要件又は【B】生産ラインやオペレーションの改善に資する設備の要件のいずれかを満たす生産性向上設備とされている。 「生産等設備」については、平成25年度税制改正で創設された生産等設備投資促進税制(措法42の12の2)関係の通達が参考になる。 中古設備の取得は適用対象資産に含まれず、建物については増築、改築、修繕、模様替え等による取得又は建設を含むとされている。 また、貸付けの用に供する設備は適用対象資産に含まれないとされている(新措法42の12の5①)が、他の特別償却等と同様に、取得した設備を自己の下請業者に貸与した場合において、当該設備が専ら当該法人のためにする製品の加工等の用に供されるものであるときは、当該特定機械装置等は当該法人の営む事業の用に供したものとして取り扱うものと思われる(措通42の6-8等参照)。 さらに、適用対象資産は法人の国内事業の用に供された設備に限定されている(新措法42の12の5①)。したがって、海外工場に設置される設備は適用対象資産に含まれない。 【A】 先端設備 先端設備については、要件①~③のすべてを満たす以下の設備が対象となる。そのうち、①及び②については、設備メーカーを通じて工業会から証明書の交付を受ける必要がある。 ① 最新モデル要件 最新モデルとは、各設備メーカーの中で、下記のイ又はロのいずれかのモデルをいう。 〈事例〉 それぞれ、2013年に設備を取得したものとする。 ② 生産性向上要件 旧モデル(一代前モデル)と比較して、「生産性」が年平均1%以上向上している必要がある。ただし、ソフトウエアについては、この生産性向上要件の適用はない。 「生産性」の指標については、「単位時間当たりの生産量」「精度」「エネルギー効率」等、メーカーの提案を元に、各工業会がその設備の性能を評価する指標の妥当性を判断する。 また、あくまで比較するのは同メーカー内での新モデル・旧モデルのみであり、他メーカーとの比較や、ユーザーが元々使用していたモデルとの比較は行わない。 なお、特注品であっても、カスタムのベースとなる汎用モデルや中核的構成品がある場合は、そのベースとなる旧モデルとの比較を行う。 〈事例〉 それぞれ、2013年に設備を取得したものとする。 ③ 最低取得価額要件 最低取得価額は、設備種類毎に設定されている。なお、工具、器具備品、建物附属設備及びソフトウエアについては、単品価額での要件に準ずるものとして、年度合計額での要件が設定されている。 〈事例〉 ④ その他Q&A ※経済産業省「ご利用の手引き(A類型)」より   【B】 生産ラインやオペレーションの改善に資する設備 生産ラインやオペレーションの改善に資する設備については、要件①~②をすべて満たす次の設備が対象となる。そのうち、①については、自ら経済産業局に確認を申請し、確認書の交付を受ける必要がある。 ① 投資利益率要件 事業者が策定した投資計画において、投資利益率が年平均15%以上(中小企業者等にあっては5%以上)となることが見込まれている必要がある。 対象となる設備は、その投資計画に記載されている設備で、その事業者にとって投資目的を達成するために必要不可欠なものとされている。 なお、年平均の投資利益率は、次の算式によって算定する。 ② 最低取得価額要件 「【A】 先端設備」の③最低取得価額要件と同じ要件となっている。 ③ その他Q&A ※経済産業省「ご利用の手引き(B類型)」より (後編(次週2/27公開)へつづく)

#No. 57(掲載号)
#有田 賢臣
2014/02/20

平成26年3月期 決算・申告にあたっての留意点 【第3回】「雇用促進税制・所得拡大促進税制」

平成26年3月期 決算・申告にあたっての留意点 【第3回】 「雇用促進税制・所得拡大促進税制」   OAG税理士法人 税理士 中島 加誉子   第3回目となる今回は、雇用促進税制及び所得拡大促進税制について解説する。 いずれも雇用環境を改善するための税制であるが、選択適用となる点には注意が必要である。 【雇用促進税制の拡充】 平成25年度税制改正により、雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除制度(雇用促進税制)について、控除限度額が引き上げられた。また、雇用者の範囲についても見直しが行われているので留意したい。 〈適用対象法人〉 〈適用事業年度〉 〈適用要件〉 〈税額控除限度額〉 〈添付書類〉 【参考】 〈別表6(17) 雇用者の数が増加した場合の法人税額の特別控除に関する明細書〉 〈所得拡大促進税制との関係〉   【参考図】 (財務省「平成25年度税制改正」より)   【所得拡大促進税制】 平成25年度税制改正により、給与支給額が増加した場合に、増加額の10%が法人税額から控除されることとなった。 〈適用対象法人〉 〈適用事業年度〉 〈適用要件〉 〈税額控除限度額〉 〈添付書類〉 【参考】 〈別表6(20) 雇用者給与等支給額が増加した場合の法人税額の特別控除に関する明細書〉 〈雇用促進税制との関係〉 【参考図】 (財務省「平成25年度税制改正」より) (了)

#No. 57(掲載号)
#中島 加誉子
2014/02/20

まだある!消費税率引上げをめぐる実務のギモン 【第4回】「物の引渡しを要しない請負契約」

まだある!消費税率引上げをめぐる実務のギモン 【第4回】 「物の引渡しを要しない請負契約」   アースタックス税理士法人 税理士 島添  浩 (監修) 税理士 寺村 維基(執筆)   第4回である今回は、メンテナンス契約などの「物の引渡しを要しない請負契約」に係る適用税率の取扱いについて、以下の具体的な事例を交えて解説を行うこととする。 【解 説】 消費税率引上げに伴う経過措置において、メンテナンス契約などの「物の引渡しを要しない請負契約」については、目的物の引渡しが行われないことから、工事の請負等の税率に関する経過措置(※1)の適用は受けられない。また、割賦販売法2条6項に規定する前払式特定取引のうちの指定役務の提供に該当しないため、指定役務の提供に関する経過措置(※2)の適用は受けられない。 ゆえに、「物の引渡しを要しない請負契約」の適用税率の判定は、消費税法基本通達9-1-5(※3)を勘案して資産の譲渡等の時期を判断することが要請されるものと考えられる。 しかし、メンテナンス契約にはメンテナンス契約履行のために待機している義務があるものもあり、このような契約については実際に作業等の役務提供の事実がなくとも契約期間の経過に応じて役務提供が行われているものと考えられる。 このような契約については、消費税法基本通達9-1-11(※4)に別途取扱いが定められている。 この通達は、技術に係る役務提供について部分的な収益計上を認めるものであり、役務の内容が区分され、報酬について区分された役務の内容ごとに合理的に算定されていれば、その区分された役務提供が完了した日に収益計上を行うことが相当であることを示している。ゆえに、役務提供が完了した部分については、役務提供完了時に資産の譲渡等を認識すべきであるから、期間の経過に応じて資産の譲渡等の認識を行うこととなる。 したがって、消費税率の適用関係は、収益を計上した日が平成26年3月31日までの期間である場合には5%、平成26年4月1日以後の期間である場合には8%の税率を適用して消費税を計算することとなる(下図)。 なお、契約期間にわたって役務提供が行われるようなメンテナンス契約終了時にすべてのサービスの提供が完了し収益が確定するような取引は、上記基本通達9-1-5により、契約期間満了日をもって収益を計上することが要請される。すなわち、メンテナンス契約に基づく対価の額の全額について8%の新税率が適用される。 【解 説】 契約又は慣行により1年分の対価を一括収受することとしており、「中途解約をした場合は未経過分に係るメンテナンス料を返還しない」など収受した時点において収益計上すべき金額が確定しているようなケースでは、継続適用を要件に収受した時の税率を適用することが認められている(「平成26年4月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いQ&A」問4)。 このようなケースでは、収益の確定が平成26年3月31日までの期間であれば、メンテナンス料の全額について5%の税率を適用して消費税を計算することができることとなる(下図)。 これは、メンテナンス料を収受した時点で収益が確定していると認められるものについて、法人税法と同様に収益の確定した時点で課税売上を認識することが相当であると考えられることによるものである。 (了)

#No. 57(掲載号)
#島添 浩、寺村 維基
2014/02/20

居住用財産の譲渡所得3,000万円特別控除[一問一答] 【第19問】「海外勤務のため空家にしていた住宅を譲渡した場合」-居住用財産の範囲-

居住用財産の譲渡所得 3,000万円特別控除 [一問一答] 【第19問】 「海外勤務のため空家にしていた住宅を譲渡した場合」 -居住用財産の範囲-   税理士 大久保 昭佳   Q 会社員Xは、5年前に会社から海外勤務を命ぜられ、家族と一緒にシンガポールに赴任しました。 シンガポールに赴任するまでは、大阪市にある家屋に家族と共に居住していましたが、海外勤務以後は、近くに住む父親にその留守宅を管理してもらい、他人に貸すこともなく、この家屋の家財道具等は一切そのままにしておきました。 本年、海外勤務が終わり日本に帰って来ましたが、直ちに東京本社勤務となったことから、大阪の家屋はそのままにし、東京の社宅に入居しました。 このほど、その大阪の住居を売却して、東京で新しい家屋を購入することにしました。 この場合、「3,000万円特別控除(措法35)」の特例を受けることができるでしょうか? A 「3,000万円特別控除」の特例の適用を受けることはできない。 〈解説〉 5年前シンガポールへ赴任した後、現在まで居住の用に供していたという事実はなく、居住の用に供されなくなった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日までの譲渡ではないことから、「特例」の適用を受けることはできないこととなる(措法35①)。 (了)

#No. 57(掲載号)
#大久保 昭佳
2014/02/20

租税争訟レポート 【第17回】損害賠償金に対する課税(ライブドア事件による損害賠償金)〔納税者勝訴〕

租税争訟レポート【第17回】 損害賠償金に対する課税(ライブドア事件による損害賠償金) 〔納税者勝訴〕   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   【事案の概要】 原告は、平成18年、保有していた株式会社ライブドア(以下「ライブドア」という)の株式が有価証券報告書虚偽記載の公表により暴落して損害を被ったため、平成21年、ライブドアから損害賠償金、弁護士費用賠償金、遅延損害金の支払いを受けた(別件事件判決)。 本件は、処分行政庁が、原告に対し、損害賠償金等は平成21年分の一時所得又は雑所得に当たるとして、それぞれ更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分を行ったことから、原告が、更正処分及び過少申告加算税賦課決定の取消しを求めた事案である。   【訴訟に至る経緯】 〔確定申告〕 原告は、遅延損害金に係る所得を雑所得に含める一方、損害賠償金、弁護士費用賠償金については、確定申告の対象としなかった。 〔修正申告〕 原告は、平成22年6月1日付で、修正申告書を提出し、翌年以降に繰り越される上場株式等に係る譲渡損失の金額を平成18年分について減額したが、納付すべき税額に異同はなかった。 〔更正の請求〕 原告は、平成22年6月9日付で、処分行政庁に対して、遅延損害金に係る所得は非課税所得であるとして、同所得に係る所得金額を、確定申告書における雑所得の金額から除外する内容の更正の請求を行った。 〔通知処分〕 処分行政庁は、平成22年6月22日付けで、上記更正の請求に対して、更正をすべき理由がない旨の通知処分を行った。 〔更正処分・賦課決定処分〕 処分行政庁は、平成22年6月24日付で、原告の平成21年分所得税について、更正処分及び過少申告加算税賦課決定処分を行った。本件更正処分において、処分行政庁は、遅延損害金を雑所得の金額に含め(必要経費の金額は0円)、損害賠償金、弁護士費用賠償金を、一時所得に係る総収入金額として(弁護士費用実費を、収入を得るために支出した金額として、一時所得の金額の計算上、総収入金額から控除している)認定した。 また、原告が修正申告書において減額した翌年以降に繰り越される平成18年分の上場株式等に係る譲渡損失の金額については、減額前の確定申告書における金額を、当該譲渡損失の金額として認定した。 この後、原告は、異議申立て、審査請求を経て、平成24年1月31日、本件訴えを提起した。   【裁判所の判断】 1  【争点1①】について (1) 本件損害賠償金が補てんする損害の性質について 別件事件判決は、ライブドア株式の取得時における取得価額と虚偽記載がなかったと仮定した場合の同社株式の取得時の想定価額(本来あるべき価額)の差額、すなわち、取得時差額に相当する損害として、損害額を算定したものと解され、また、取得時差額は、虚偽記載による評価の誤りに基づく損害として、公表により同社株式の市場価額が暴落したときに現実の損害に転化し、原告がその譲渡による収入金額を得る以前において、その後の譲渡とは無関係に、同社株式の価値として失われるものであると解される。本件和解合意による損害賠償金等の支払いは、上記の取得時差額に相当する損害を補てんする趣旨のものと認めるのが相当である。 (2) 令30条柱書き括弧書き該当性について 令30条柱書き括弧書きは、同条所定の非課税所得に例外的に課税をする趣旨の規定であるところ、法9条1項16号を受けた令30条2号が、不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害につき支払いを受ける損害賠償金について、非課税と定めているのは、損害賠償金は、納税者が被った損害を回復させるものにすぎず、納税者に担税力のある利得をもたらすものではないことに基づくものと解される。 原告は、虚偽記載という不法行為に起因する取引所市場の評価の誤りに基づいて、ライブドア株式の取得時に、虚偽記載がなかったならば支払う必要のなかった取得時差額を支払っており、これによる損害について、その補てんを受けたものであって、損害賠償金は、同社株式の価値が失われることによって原告が被った損害を回復させたものにすぎず、原告に担税力のある利得をもたらすものではないから、本件損害賠償金については、まさに、所得税法9条1項16号及び令30条が損害賠償金を非課税所得とした趣旨が当てはまるものというべきである。 被告は、損害賠償金が必要経費に算入されると主張するが、その根拠は、損害賠償金がライブドア株式の「取得費」を補てんするものであり、当該「取得費」が原告の同社株式の譲渡による雑所得の金額の計算上、必要経費に算入されるものであるという点にある。しかし、法51条4項は、「雑所得を生ずべき業務の用に供され又はこれらの所得の基因となる資産」の損失の金額で、損害賠償金により補てんされる部分の金額は、その損失の生じた日の属する年分の雑所得の金額の計算上、必要経費に算入しない旨を定めているところ(同項2つ目の括弧書き)、損害賠償金が補てんした取得時差額に相当する損害は、失われた同社株式の価値に係る損失であり、それが損害賠償金により補てんされる以上、別段の定めである法51条4項により、その損害が発生した本件公表の日の属する平成18年分の雑所得の金額の計算上、必要経費には算入されないものとなると解される。よって、損害賠償金によって補てんされる部分の金額は、法37条1項の「別段の定め」である法51条4項(2つ目の括弧書き)に基づき、必要経費から除かれることになるから、損害賠償金は、「必要経費に算入される金額を補てんするための金額」(令30条柱書き括弧書き)に該当するものではない。 以上のとおり、本件損害賠償金が、同社株式の「取得費」を補てんするものであり、原告の雑所得の計算上必要経費に算入される金額を補てんするものであるとの被告の主張は、所得税法上の根拠を見出せず、採用できない。 2  【争点1②】について 被告は、損害賠償金は、株式を売却した場合の収入に代わって得られるものであるとして、令94条1項柱書きに当たると主張するが、本件損害賠償金は、虚偽記載という違法行為がなかったとしたならば得られたであろう収益を補てんするものではなく、虚偽記載の公表によって失われた株式の価値、すなわち資産に加えられた損失を回復させるものであるから、「収入金額に代わる性質を有するもの」とはいえないため、損害賠償金は令94条1項1号に定める非課税所得の除外事由には該当しない。 3  【争点2】について 遅延損害金は、損害賠償金及び弁護士費用賠償金に対する法定利率の割合による履行遅滞に基づく損害賠償金であるところ、このような遅延賠償は、元金の性質いかんにかかわらず元金の使用によって得られたであろう利益の喪失を補てんするものであるから、不法行為その他突発的な事故により資産に加えられた損害に基因して取得した損害賠償金とはいえない。 4  【争点3】について 被告は、損害賠償金が非課税所得であり、遅延損害金が課税所得である場合、弁護士費用実費のうち、課税所得である遅延損害金を得るために要した費用に相当する部分については、令30条柱書き括弧書きに当たると主張する。 弁護士費用賠償金は、別件事件判決が、原告に生じた弁護士費用のうち、損害賠償金の5%相当額を相当因果関係のある損害と認めたものであり、損害賠償金と弁護士費用賠償金の合計額を元本として付される遅延損害金が課税の対象となるとしても、その元本自体の中にその後の遅延損害金を得るための部分が含まれているとは解し難い。よって、弁護士費用賠償金の中に、遅延損害金を得るために直接要した費用が含まれていたと認めることはできないから、これが「各種所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を補てんするための金額」に当たるとはいえず、令30条柱書き括弧書きは適用されない。 5  結論 以上のとおり、本件損害賠償金及び本件弁護士費用賠償金は非課税所得であり、これに対し、本件遅延損害金は非課税所得に該当せず、雑所得以外の所得のいずれにも該当しないから、雑所得の金額の計算上収入金額とすべき金額であり、課税年分については、原告らが遅延損害金を得る権利が確定したのが平成21年7月の和解合意によってであることから、平成21年分とするのが相当である。   【解説】 ライブドア社の虚偽記載が公表されたことにより損害を被った個人投資家が取得した損害賠償金、弁護士費用賠償金及びこれらに対する遅延損害金に対する所得税課税をめぐり、これらに課税したい税務当局と税理士である原告が争った訴訟は、損害賠償金、弁護士費用賠償金は非課税、遅延損害金は雑所得として課税という、ある意味、納得感のある判決が下された。 本判決は、虚偽記載により、実態よりも高い価額で株式を取得した株主にとって、損害賠償金とこれを取得するために要した弁護士費用の一部を補てんする弁護士費用賠償金は、株式という資産に生じた損害を補てんするものに過ぎず、担税力もないため、非課税であるという結論を導き、かつ、税務当局の主張を論駁するために、多くの紙数を費やして、丹念に法律・施行令の規定をたどったものであり、読み応えのあるものとなっている。 それゆえ、本判決は、今後も発生が予想される、有価証券報告書虚偽記載によって株価下落という被害を受けた株主にとって、金融商品取引法21条の2の規定に基づく損害賠償請求事件で勝訴して、賠償金を受領した場合に、税金面の負担を考慮する指針となるものといえる。 本稿をまとめながら、あらためて、ライブドア事件を振り返ると、確かに有価証券報告書に虚偽の記載を行って株価を維持した行為は責められるべきであるが、会社はその後も事業を継続して、株式は紙屑にはなっておらず、損害を与えた個人株主には判決どおりの賠償金を支払い、また、堀江貴文氏自身も個人で和解金の支払いに応じるなど、行為の悪質性について、堀江貴文氏に実刑を命じた判決が妥当であったのかどうか、今更ながら疑問を感じるところである。   (了)

#No. 57(掲載号)
#米澤 勝
2014/02/20

鵜野和夫の不動産税務講座 【連載11】「広大地の評価(3)」

鵜野和夫の不動産税務講座 【連載11】 広大地の評価(3) (最終回)   税理士・不動産鑑定士 鵜野 和夫   (一)広大地の判定基準 ―公共公益的施設用地の負担 【参考資料3】広大地評価フローチャート(平成17年6月17日付資産評価企画官情報第1号「広大地の判定に当たり留意すべき事項」)(再掲)   【参考資料2】面積基準(平成17年6月17日付資産評価企画官情報第1号「広大地の判定に当たり留意すべき事項」)(再掲)   (二)路地状開発をしたら、開発道路の路地は必要でないとして 広大地の適用を否定された例 【参考・事例図1-①】別図1 本件A土地・B土地の概要 ※上図は事例を簡略化したものです。 【参考・事例図1-②】別図2 請求人開発想定図[本件A土地] ※上図は事例を簡略化したものです。 【参考・事例図1-③】別図3 請求人開発想定図[本件B土地] ※上図は事例を簡略化したものです。 【参考・事例図1-④】別図4 原処分庁開発想定図[本件A土地] ※上図は事例を簡略化したものです。 【参考・事例図1-⑤】別図5 原処分庁開発想定図[本件B土地] ※上図は事例を簡略化したものです。   (三)路地状開発を否定して、広大地評価を認めた例 【参考・事例図2-①】別紙3 本件各土地の路線価等の状況 【参考・事例図2-②】別紙8 審判所認定の開発想定図 【参考・事例図2-③】別紙4 原処分庁が主張する開発想定図 *   *   * (連載了)

#No. 57(掲載号)
#鵜野 和夫
2014/02/20

税務判例を読むための税法の学び方【29】 〔第5章〕法令用語(その15)

税務判例を読むための税法の学び方【29】 〔第5章〕法令用語 (その15)   税理士 長島 弘   10 期限や期日を示す表現 (① 「以前」と「前」、「以後」と「後」) 【第27回参照】 (② 「期限」「期日」「期間」、③ 期間計算に関する国税通則法の定めと民法、④ 「・・・から・・・まで」)【前回参照】  ⑤ 時をもって定める期限 次に、前回見た国税通則法第10条第2項において、期限が日曜や休日の場合の例外規定において、括弧書きに「時をもって定める期限その他の政令で定める期限を除く。」とあった、この時をもって定める期限等について説明しよう。 まずこの括弧書きであるが、「「時をもって定める期限」その他の「政令で定める期限」を除く」とあることから、「時をもって定める期限」については「政令で定める期限」に含まれ、例示となっている(第15回参照)。 したがってこの適用が除外される項目は、国税通則法施行令第2条第1項に示されている。 この国税通則法施行令第2条第1項の例として、第1号の「出国の時」について、所得税法第115条(出国をする場合の予定納税額の納期限の特例)を見てみよう。 ただし「出国」とは、一般的なものと異なり、所得税法には「居住者については、国税通則法第117条第2項 (納税管理人)の規定による納税管理人の届出をしないで国内に住所及び居所を有しないこととなることをいい・・・(所得税法第2条第1項第42号)」と定義されている。したがって、離日前に納税管理人の選任・届出がある場合には本来の納期限までに納付すればよい。 ⑥ 期限の特例と各種消費税の届出書 前回見たように、国税通則法第10条第2項においては、期限が日曜や祝日の場合の特例を規定しているが、よく消費税の各種届出書について、なぜ申告書と同一の基準ではないのであろうかという疑問の声を聞く。 例えば、平成25年6月30日が日曜であったため、4月末決算の法人税申告書は7月1日が提出期限である。しかし7月1日が事業年度初日の法人についての消費税課税事業者選択届出書や簡易課税制度選択届出書は、この7月1日に提出した場合は、6月30日までに提出したものとは扱われない。 消費税法第9条第4項には、以下のようにある。 また消費税法第37条第1項には、以下のようにある。 このように、消費税法上の条文においては、各種届出書の効力について、「当該提出をした日の属する課税期間の翌課税期間以後の課税期間」から適用される旨規定しているだけであって、各種届出書の提出期限が規定されているわけではない。 したがって、先の例で7月1日に届出した場合には、届出書を提出した翌課税期間から適用されるのであるから、届出書を提出した7月1日を含む期間に適用がないことになる。 しかし国税庁のホームページや各パンフレット等には、期限として「課税期間の初日の前日まで」とある。 例えば、消費税簡易課税制度選択届出書(第24号様式)については、提出期限として「選択しようとする課税期間の初日の前日まで」とあるが、実は条文としてはこのような規定ではない(なお私見としては、紛らわしい表記であるから、改めるべきと思っている)。 なお条文に、この「初日の前日」までという文言が全くないわけではない。 消費税法第9条第9項では、以下のように「課税期間の初日の前日まで」と規定している。 また消費税法第37条第7項には、以下のようにある。 このように、消費税法上の条文において、各種届出書の提出期限について「課税期間の初日の前日まで」と規定しているように誤解される箇所もある。 これらの規定から、条文として「課税期間の初日の前日まで」を期限として定めていると誤解すれば、「前日」は「日」であるから、これも「日、月又は年をもって定める」ものとなり、特例が適用されると誤解されかねない。 このような誤解を生じかねないため、先に書いたホームページやパンフレット等だけではなく、これらの条文もこの表現を改めるべきであろう。 なおついでに書けば、この届出書提出について、例えば先の例で6月30日の閉庁後にこのことに気が付いた場合には、当日24時前に郵便による郵送(原則、発信主義が適用される。その発信主義適用の範囲については「国税通則法第22条に規定する国税庁長官が定める書類を定める件(平成18年国税庁告示第7号)」等で定められている)、又は翌朝正規勤務時間前に税務署に設置してある時間外文書収受箱に投函すれば6月30日付となるが、年末は特別の扱いとなっている点には注意を要する。〔下記追記参照〕 ⑦ 国税通則法第10条第2項の期限の特例に関するその他注意点 この第2項の特例は、「「国税に関する法律に定める」「申告、申請、請求、届出その他書類の提出、通知、納付又は徴収」に関する期限」であるから、税法の定めによるのではなく行政処分により定められる期限の場合(この場合は指定する際に調査して休日の翌日は指定すべきである)には適用されない。 例えば申請に基づき納期限の延長を承認する場合の指定日等がこれに該当するが、ただし納期限の延長しうる期間が法定されている場合のその最終日である期限は国税に関する法律に定める期限であるから、この特例が適用され、その翌日を指定日とすることができる。 同様にこの特例は、「「国税に関する法律に定める」「申告、申請、請求、届出その他書類の提出、通知、納付又は徴収」に関する期限」であるから、単に計算の基準となっている期間の末日や課税内容を定める際に基準となる期間の末日、一定事実の判断の基準としている期間の末日はこれに該当しない。 また同項には、「日曜日、国民の祝日に関する法律(略)に規定する休日その他一般の休日又は政令で定める日」という文言があった。この「政令で定める日」として、国税通則法施行令第2条第2項において以下のように規定されている。 土曜日や年末年始が日曜や祝日と同様に扱われるのは、この規定があるからである。 (了)

#No. 57(掲載号)
#長島 弘
2014/02/20

設備投資減税を正しく活用して強い企業をつくる~設備投資における管理会計のポイント~ 【第4回】「設備投資における実務上の問題点」―終了・撤退―

設備投資減税を正しく活用して強い企業をつくる ~設備投資における管理会計のポイント~ 【第4回】 「設備投資における実務上の問題点」 ―終了・撤退― 公認会計士・税理士 若松 弘之   〈設備投資に関して実務で見られる問題点〉 前回、設備投資に関して実務でみられる問題や留意点を次の3つの過程に分けて解説を行ってきたが、引き続き、設備投資の終了・撤退局面における実務上の問題と設備投資実務を通してのチェックポイントなどを解説していく。 ③ 設備投資の終了・撤退段階(廃棄・売却時) この段階で考慮すべきポイントは、当初見積もった経済的な耐用年数と実際の使用状況を比較し、対応を修正することである。具体的には以下の2つのケースに分かれる。 A  当初の経済的耐用年数満了よりも早く設備投資効果がなくなったケース このケースで検討すべきことは、何らかの追加的機能増強や追加(資本的支出)によって、当初の効果が回復・増大するかである。もしも、費やすコスト以上の回復・増強効果が見込めないのであれば、適時に設備の除却、売却及び更新を検討すべきである。特に、設備投資額を既に回収済み、または、それに近い状態であればなおさらである。 一般的には、「いまだ償却すべき簿価が残っており、この状態で事業の用から外すと多額の除却損が出てしまう」とか「当初見込んだ程の投資効果ではないが、設備更新による多額なキャッシュ・アウトを回避しながら、細々であってもキャッシュ・インフローがあるのだから、なんとか今の設備を維持していこう」という考え方もあるだろう。しかしながら、これは非常に危険な考えを含んでいる。 まず、会計上の「固定資産除却損」の計上を回避することでは何ら実態は改善しない。課税所得が発生している状況であれば、適時適切な除却を通じて損金算入することで納税負担を減らし、内部留保された資金を取替更新に充てるべきである。 次に、僅かなキャッシュ・インフローを追いかけながらだましだまし生産性の悪い設備を使用し続けることは、製品やサービスの品質低下や故障・トラブルの増加、従業員の士気低下など、様々な部分でマイナス影響を及ぼすため、単なるキャッシュ・アウトの回避では済まなくなることも多い。いずれは設備更新時期がやってくる以上、これは、まさに問題の先送りといえよう。 B  当初の経済的耐用年数満了してもなお設備投資効果が続くケース このケースは、うれしい想定外といえるものであるが、留意すべき点もある。一般的には「追加の資金投下も当面必要なく、減価償却費も計上されないため、営業キャッシュ・フローと営業利益の双方に有利な状況。少しでも営業利益が出ている間は、現在の設備を使い続ける方が得だ。」という考え方になると思われる。しかしながら、いつかは最新設備に取り替える時期が来るのだから、その時期が早いか遅いかの違いともいえる。本来、耐用年数の満了時以降は、「現状使用継続案」と「新規設備取替案」の有利不利を定期的に比較検討すべきといえよう。 経営管理の視点からは、どうしても投資回収や利益優先、原価率改善というコスト面のメリットに目が行きがちである。しかし、企業内部ばかりに目が向いていると、競合他社との相対的な比較において、製品やサービスの質の低下が進んでいる状況に気付くことが遅れる可能性もあり、いつの間にかシェアを奪われていた、ということにもなりかねない。適切な設備更新やテコ入れ時期を逃すと、シェア回復までに相当の時間を費やすことも多い。 ここで大切なことは、耐用年数満了後も引き続きキャッシュ・インフローが出ている状態に満足せず、積極的に設備投資の更新を行うことで、新たな需要を掘り起こし、競合他社からシェアを守り続けながら高い収益力を維持することである。どのタイミングで、「守り」から「攻め」に転じるのかを適切に判断できる企業こそ持続的な成長を実現していけるのではないだろうか。 *   *   * 次回は設備投資の意思決定を具体的に進めていくうえで必須の知識である「設備投資の経済性計算」について解説していく。 (了)

#No. 57(掲載号)
#若松 弘之
2014/02/20
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