TAC八重洲校にて7月12日(土)開催。 税理士 笹岡 宏保氏による【1日で理解する】セミナーシリーズ。 今回は、皆様からご要望の多かった「小規模宅地等の課税特例」をテーマに、課税特例の基本的な内容を確認するとともに、税法改正項目の確認とその実務的な影響、そして誤りやすい事例の検証まで、実務に必要なこの規定に関する知識を包括的に網羅、確認します。
2014年4月24日(木)AM10:30、Profession Journal No.66 が公開されました。 Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開してまいります。 Web情報誌 Profession Journalは、プロフェッションネットワークのプレミアム会員専用の閲覧サービスです。
「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例13(消費税)】 税理士 齋藤 和助 《事例の概要》 依頼者は不動産の証券化における特定目的会社であり、不動産を購入して投資家に分配金を支払う業務のみを行うものである。 税理士は、依頼者の設立から関与し、不動産購入に係る消費税の還付を受けるべく課税事業者を選択した。特定目的会社の場合、不動産購入後は不動産収入に対して課税仕入れがほとんどないことから、簡易課税が有利となる。 税理士は対象不動産購入後、「課税期間特例選択届出書」で課税期間を区切り、「簡易課税制度選択届出書」を提出して簡易課税を選択すべきところ、これを失念してしまった。 これにより、有利な簡易課税と不利な原則課税との差額2,100万円につき損害が発生し、賠償請求を受けた。 《賠償請求の経緯》 税理士は複数の特定目的会社の顧問税理士を兼任していた。 特定目的会社の消費税は設立時、対象不動産購入時、配当時によって有利選択が異なり、それぞれに期限があることから、たまたま本事例の会社の届出書の提出を失念してしまった。 《基礎知識》 ◆簡易課税制度(消法37) 基準期間における課税売上高が5,000万円以下である課税期間について「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出した場合には、翌課税期間から簡易課税の適用がある。 簡易課税には2年間の継続適用要件がある。 ◆課税期間の特例選択(消法19②) 「課税期間特例選択届出書」の効力は、その提出日の属する課税期間の翌課税期間から適用される。したがって、本事例の場合には、「課税期間特例選択届出書」で課税期間を区切り、「簡易課税制度選択届出書」を提出すれば、原則課税の期間を短くすることができる。 課税期間の特例選択には2年間の継続適用要件がある。 ◆特定目的会社の消費税選択 特定目的会社の消費税選択は、以下のスキームで行われるのが一般的である。 《税理士の落とし穴》 《税理士の責任》 税理士は不動産購入後、「課税期間特例選択届出書」で課税期間を区切り、「簡易課税制度選択届出書」を提出すべきところこれを失念してしまい、申告時点で自らこれに気づいている。 不動産購入後に各届出書を提出していれば、原則課税の期間を短縮し、簡易課税を選択できたことから、税理士に責任がある。 《予防策》 [ポイント①] 時系列で管理 特定目的会社の消費税選択は設立時、対象不動産購入時、配当時によって有利選択が異なり、それぞれに期限があることから、複数の特定目的会社に関与している場合には、会社ごとに時系列で管理する。 [ポイント②] チェック体制の構築 特定目的会社の消費税選択は、対象不動産の金額が高額であり、届出書の提出失念が多額の損害賠償請求につながることから、チームを組む等複数人で担当し、所内でのチェック体制を構築することが必要である。 [ポイント③] 税賠保険の加入契約タイプの見直し どんなに気をつけて業務を行っていても、ミスは起こるものである。したがって、特定目的会社の税務業務を請け負う場合には、消費税選択ミスによる損害賠償請求に備え、より保障額の大きなタイプの税賠保険への加入見直しも必要である。 (了)
〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載59〕 ヤフー事件(東京地裁判決)からみた 買収後の合併により被合併法人の欠損金を引き継ぐ場合の 「みなし共同事業要件」に関する考察 税理士 竹内 陽一 はじめに ヤフー事件の判決が平成26年3月18日に東京地裁で出された。 この判決文がTAINSデータベースに収録されたことから、以下、この判決文によりその概要をまとめ、欠損金のある法人の買収事案のうち、特定役員引継要件によって「みなし共同事業要件」をクリアしようとする場合の注意点について述べたい。 なお本件の教訓としては、欠損金のある法人の合併による買収事案においては、欠損金を引き継ぐために、買収による支配関係成立前に、規模要件や特定役員引継要件を満たすか否かを判断し、速やかに合併するか、あるいは、支配関係発生から5年超経過要件を満たしてから合併をするか、という2つの選択肢しかない、と言っても過言ではない。 1 事件の概要 判決文では、原告を「A株式会社」、その株式の42%を保有している法人を「B社」としているが、これらは既知であるため、本稿では、「B社」をソフトバンク=S社とし、「A株式会社」をヤフー日本法人=Y社と表示する。 そして、被合併法人は「C社」、C社の非適格分割によって設立された法人を「F社」と表示する。また、S社社長兼Y社会長を乙、S社取締役兼Y社社長を丙と表示する。 ヤフー事件においては、買収及び合併の直前に丙が被合併法人となるC社の副社長に就任した後に合併を行い、特定役員引継要件を充足したものとして、合併によりC社の繰越欠損金543億円(平成14年3月期から平成18年3月期まで)をY社に引き継いだことが問題とされた。 2 事件の事実関係 平成20年10月27日に、乙から丙に対し、S社の100%子会社であるC社をY社の100%子会社とする提案があり、同年11月21日には、この提案に沿う組織再編成計画書が作成されていた。 同計画書によると、その手順は、下記4段階で構成されていた。 以上のうちF社の件については、同日判決のIDCS事件の判決文に記載されているはずであるが、本稿執筆時点において、この判決文は確認できていない。 C社の繰越欠損金は、平成15年3月期から平成18年3月期までで、合計543億円である。 仮に、5年超経過要件を充足させて合併を行うということになれば、平成21年3月期が特定資本関係発生事業年度であるため、平成18年3月期以前の繰越欠損金はすべて控除できないこととなり、上記の543億円は、その全額が控除できないことになる。 Y社は、3月決算法人である。 実際には、本件合併は次のように行われている。 C社は、F社の分割まではデータセンター事業を行っていた。C社の代表取締役は乙であり、平成20年3月末のC社の従業員数は123名(ヤフー社IR情報平成21年2月19日)であったが、従業員は上記②の分割と同時にF社に出向した。 3 本件の争点に関する裁判所の判断 本件の争点のうち次に掲げるものについて、裁判所がどのように判断を下したのかを確認する。 (1) 合併法人の社長による被合併法人の副社長就任 本件裁判の焦点は、みなし共同事業要件を満たすために、買収直前に買収法人の社長が被合併法人の副社長に就任したというケースに対して、法人税法132条の2の規定を適用できるのか、という点にある。 (2) 132条(同族会社等の行為又は計算の否認)と132条の2の相違点 本件裁判のもう一つの焦点は、132条の2と132条には解釈の同一性があるのか否かということであり、原告側の鑑定意見書は、いずれも同一性があると主張した。 つまり、租税回避防止規定として従来から存在する同族会社等の行為又は計算の否認の規定と同様の解釈を求めた。 これに対して、裁判所の判断は、事業上の理由や事業目的がない事案に適用されることが多い132条とは違って、事業上の理由や事業目的があって行った組織再編成であっても、個別規定の趣旨・目的に明らかに反する状態となっているものには、132条の2の規定が適用される、ということを示した。 なお、法人税法132条の2については、下記の解説がある。 (大蔵財務協会『平成13年版改正税法のすべて』243・244頁) ここでは、個別の租税回避防止規定で否認されなかったものも含めて、租税回避となるものを否認するために132条の2を創設したことが明らかにされている。 (3) みなし共同事業要件における特定役員引継要件の趣旨 この法人税法施行令112条7項のみなし共同事業要件については、従来、同令4条の3第4項の適格判定の共同事業要件と同じものという程度の表面的な理解しかされていなかった。 一般には、事業規模要件については、特定資本関係発生時から合併までの期間において2倍以内の変化がないという要件と理解され、特定役員引継要件については、特定資本関係発生日前から特定役員であることを求める要件と理解されていたものの、これらの2つの要件を比較して特定役員引継要件の趣旨を深く理解するといったことまでは行われていなかった。 本件判決のように、特定資本関係の発生の前後の特定役員をどのように捉えて特定役員引継要件が設けられているのかということを深く考えるといったことは行われてこなかったと言ってよい。 本件判決により、適格判定の共同事業要件とは別に、繰越欠損金の引継ぎ要件であるみなし共同事業要件を厳しい基準として捉え、特に、特定資本関係(現在の支配関係)の発生の前後の状態に十分に注意しなければならない、ということが明確になった。 重要な点は、下記図の通り、特定資本関係発生の直前期以前の繰越欠損金を引き継ぐことから、特定資本関係発生の直前の期間における特定役員要件の充足が鋭く問われるということである。 法人税法施行令112条7項については、次の解説がある。 (大蔵財務協会『平成13年版 改正税法のすべて』199頁) 上記の解説においては、合併直前ではなく、特定資本関係発生時の要件が重要であることが端的に述べられている。 〈合併の場合の「共同事業要件」における検討期間の概要図〉 〈合併の場合の「みなし共同事業要件」における検討期間の概要図〉 (平成26年4月4日 日本税制研究所・一般社団法人FIC共催セミナー「組織再編成と行為計算否認」日本税制研究所代表理事 朝長英樹作成のレジュメ 論点7(副社長就任が租税回避行為となるのか否かの判断基準p8より引用) (4) 特定役員引継要件において考慮されるべき具体的事情 以上のように、特定資本関係発生以前の時期におけるその役員の任期、その職務内容が問われることとなる。 つまり、特定役員要件については、特定資本関係発生前の期間、特定資本関係から合併までの期間、合併以後の期間の3つの期間において、過去の事業の状態の継続性を考える必要があり、特定資本関係発生前の期間の事業の状態が継続することが求められているわけである。 繰越欠損金の引継ぎの制限があるのは、特定資本関係発生前の事業年度の欠損金であり、特定資本関係発生事業年度から最後事業年度までの欠損金は適格要件を満たすことのみで引き継がせることから、本来は、当然にそのように理解する必要があったのである。 なお、本件においては、適格要件を満たすことのみで繰越欠損金の引継ぎが可能な特定資本関係発生後の事業年度が1期だけあるが、その事業年度においては、欠損金が生じていない。 (5) 本件事案での特定役員引継要件の事情 本件の場合、C社副社長の業務は、特定資本関係発生前において、被合併法人に固有の事業であるデータセンター事業に関与したとは認められないということと、関与した職務が特定資本関係発生以後合併までの期間における本件スキ-ムに係る職務であり、後者は、特定役員引継要件からいえば、特段、考慮される事情ではない、とされている。 すなわち、第1に、特定資本関係発生以前に、特定役員として被合併法人において経営に従事していた事実はなく、第2に、法人税法施行令112条7項5号の要件を満たすためにのみ特定役員への就任時期が買収直前とされていること、第3に、特定役員の在任期間について、特段、3年というような要件はないが、同号の要件を満たすことが目的で不自然に短期となっていること、この3点により、租税回避とされているわけである。 なお、特定役員の在任期間が短期間である場合の問題点については、分割の例で、次のように指摘されていたが、当然、合併においても、同様となる。 (大蔵省主税局税制第一課(法人税制企画室)課長補佐 朝長英樹『企業組織再編成に係る税制についての講演録集』(社団法人日本租税研究協会発行)90頁 平成13年8月10日) (了)
貸倒損失における税務上の取扱い 【第16回】 「判例分析②」 公認会計士 佐藤 信祐 第15回目においては、日本興業銀行事件に係る第1審における当事者の主張についてそれぞれ解説を行った。 本稿においては、これに対する裁判所の判断について解説を行うこととする。 ③ 裁判所の判断 (ⅰ) 争点の整理 (ⅱ) 本件債権を全額回収不能と評価することの可否(争点1) (ⅲ) 本件債権放棄と損金算入の当否(争点2) (ⅳ) 総括 このように、争点1については、法人税基本通達9-6-2に近い考え方により判断し、争点2については、「債権放棄の有無にかかわらず、その全額を損金に算入できるものというべきであるから、争点2についてはもはや判断を示す必要はない」としながらも、法人税基本通達9-4-1に近い考え方により判断していると考えられる。なお、法人税基本通達9-4-1の根拠については、法人税法37条7項括弧書により寄附金から除外するのではなく、経済合理性があるという理由により、「無償による経済的利益の供与」に該当しないとしているのも注目に値する点である。 なお、争点1については法人税基本通達9-6-2に近い考え方により判断しているものの、債権放棄の効力が生じており、かつ、全額回収不能であるということであれば、法人税基本通達9-6-1(4)で判断する余地もあるため、全額回収不能ということが立証されれば、債権放棄の効力が生じていれば法人税基本通達9-6-1(4)、債権放棄の効力が生じていなければ法人税基本通達9-6-2で判断すると整理することになるのかもしれない。また、全額回収不能と評価し得ない前提で争点2の検討をしていることから、争点2のみで判断するとなれば、法人税基本通達9-4-1で判断するという整理になるのかもしれない。このような法人税基本通達の当てはめについては判決文においてはほとんど触れられていない。法人税基本通達は解釈に過ぎず、法令ではないことから、判決文ではほとんど触れられていなかったことについてはやむを得ないが、税務実務の現場感覚と、税務訴訟における感覚との差異という点で興味深い判決文であるとも言える。 また、第1審における裁判官の中に藤山雅行氏が含まれていたことについても注目に値する点である。藤山雅行氏は納税者に有利な判決を下すことが多く、東京地方裁判所民事第三部に所属されていたことから、「国破れて三部あり」と揶揄されることもあったが、判決文における理論構成は、オウブンシャホールディングス事件(東京地裁平成13年11月9日判決)、日本スリーエス事件(東京高裁平成12年11月30日判決)にあるように、一考に値するものであり、とりわけ日本スリーエス事件では納税者が敗訴しているように、必ずしも納税者に有利な判決を下しているわけでもないことが分かる。 次回以降は、控訴審判決、上告審判決についてそれぞれ触れた上で、さらなる詳細な分析を行う予定である。 (了)
居住用財産の譲渡所得 3,000万円特別控除 [一問一答] 【第28問】 「家屋の建築途中に転勤し、妻子の住む家屋を譲渡した場合」 -配偶者等の居住用家屋- 税理士 大久保 昭佳 Q 会社員Xは、5年前に東京都に土地を取得し、4年前に居住用家屋の建築に着工しましたが、その完成前に転勤により名古屋市へ単身赴任しアパート住まいをしていました。 転勤後にその家屋は完成し、その家屋にはXの妻子が約3年半居住していました。 このほど、その家屋と敷地を売却しました。 この場合、「3,000万円特別控除(措法35)」の特例を受けることができるでしょうか? A 「3,000万円特別控除」の特例の適用を受けることができる。 〈解説〉 Xは、その家屋の建築途中に転勤し、その家屋に居住したことはないが、その譲渡直前までXと生計を一にする妻子が居住していたものであり、かつ、転勤という事情が解消したときは、妻子と起居を共にすることとなると認められる事情があるため、その家屋は、Xにとっても、その居住の用に供している家屋に該当する(措通31の3-2(居住用家屋の範囲)(1))。 (了)
経理担当者のための ベーシック税務Q&A 【第14回】 「給与計算と源泉徴収」 仰星税理士法人 公認会計士・税理士 草薙 信久 1 源泉徴収制度 (1) 源泉徴収制度の概要 源泉徴収制度とは、給与等を支払う者(源泉徴収義務者)が、支払いの都度、支払金額に応じて定められている所得税及び復興特別所得税(以下、「源泉所得税」という)を計算し、支払金額からその源泉所得税を差し引き、原則として、実際に給与等を支払った月の翌月10日までに国に納付する制度です(所法6、復興財確法8②)。 (2) 復興特別所得税 平成25年1月1日から平成49年12月31日までに生じる所得については、所得税を徴収する際に復興特別所得税を併せて徴収し、その合計額を国に納付する必要があります。また、源泉徴収する復興特別所得税の税率は、源泉徴収する所得税の額の2.1%です(復興財確法27、28)。 (3) 源泉徴収の時期 源泉所得税を源泉徴収する時期は、実際に源泉徴収の対象となる所得を支払う時です。したがって、給与を後払いする場合のように、給与を支払うことが確定していても、実際に支払われなければ、原則として源泉徴収する必要はありません。 (4) 源泉所得税の納税地 源泉徴収義務者が源泉徴収した給与等に対する源泉所得税は、その納税地の所轄税務署に納付します。この場合の納税地は、原則として、給与等の支払事務を取り扱う事務所の所在地です(所法17等)。 (5) 源泉所得税の納付 源泉徴収した源泉所得税は、原則として、実際に支払った月の翌月10日までに納付する必要があります(所法181等)。 また、給与の支給人員が常時10人未満である源泉徴収義務者は、源泉所得税を、半年分まとめて納めることができる特例があり、これを納期の特例といいます(所法216、217)。なお、この特例の対象となるのは、給与や退職金から源泉徴収をした源泉所得税と、税理士、社会保険労務士等の一定の報酬から源泉徴収をした源泉所得税に限られます(所法216)。 (6) 給与所得と確定申告 源泉徴収された源泉所得税の額は、源泉徴収だけで課税関係が終了する源泉分離課税の利子所得等を除き、最終的にはその年の年末調整により所得税の額が精算され、一定の事由を除き、確定申告をする必要はありません。 2 給与所得における源泉徴収事務 (1) 給与所得における源泉徴収事務の流れ (2) 給与所得の範囲 「給与所得」とは、役員や使用人に支払う給料、賃金、賞与等をいいます。また、役員や使用人に支給する残業手当、休日出勤手当、職務手当等は、原則として給与所得に含まれますが、例えば次のような手当は非課税給与となり、給与所得には含まれません。 なお、給与は、金銭で支給されるのが普通ですが、食事の現物支給や商品の値引販売のような経済的利益は現物給与といい、原則として給与等に含まれます。 現物給与には、①職務の性質上欠くことのできないもので主として使用者側の業務遂行上の必要から支給されるもの、②換金性に欠けるもの、③その評価が困難なもの、④受給者側に物品等の選択の余地がないもの等、金銭給与と異なる性質があるため、特定の現物給与については、課税上、金銭給与とは異なった取扱いが定められており、例えば次のようなものは非課税給与となり、給与所得には含まれません(所法9、28)。 (3) 税額表 給与等を支払う際に源泉徴収する税額は、「給与所得の源泉徴収税額表」を使って求めます。この税額表には、「月額表」「日額表」「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」の3種類があります。 (4) 源泉徴収する税額の計算例(平成26年分) 〈税額の計算〉 社会保険料等控除後の給与等の金額は、412,384円-6,500円-48,115円=357,769円となります。 「別表第二 月額表」の「その月の社会保険料控除後の給与等の金額」欄で、357,769円が含まれる「356,000円以上359,000円未満」の行を探し、「甲欄」の「扶養親族3人」の欄と交わる欄に記載されている金額5,840円が、その給与等の金額から源泉徴収する税額です。 ※画像をクリックすると大きい画像が開きます。 (了)
〔しっかり身に付けたい!〕 はじめての相続税申告業務 【第20回】 「遺言の確認方法とその効力」 税理士法人ネクスト 公認会計士・税理士 根岸 二良 相続税申告業務を行う際には、相続人・相続財産の確定後、(1)遺言の有無、(2)遺言がない場合には遺産分割協議、という流れになる。 今回は、この遺言について学ぶこととする。 1 遺言の確認方法 遺言(普通方式)には、「公正証書」「自筆証書」「秘密証書」の3つがある(民法967条)。 〈公正証書遺言〉 公正証書遺言とは、公証人(公証役場)により作成された、一定の要件を満たしている遺言である(民法969条)。 遺言作成者が他界後、相続人は公証役場に、戸籍、身分証明書等などを持参すれば、公正証書遺言の有無、及び有る場合にはその内容を確認することができる。 平成元年以降に作成された公正証書遺言であれば、作成された公証役場だけでなく、全国のどこの公証役場でも確認することができる。 公証役場がどこにあるかは、日本公証人連合会のウェブサイトで確認することができる。 〈自筆証書遺言〉 自筆証書遺言とは、遺言者が、全文、日付及び氏名を自署し、押印することで作成される遺言である(民法968条)。遺言者の他界後、家庭裁判所で検認が必要である(民法1004条)。 自筆証書遺言は、公証役場にあるわけではなく、自宅金庫、銀行貸金庫などを探して有無を確認する必要がある。発見された場合には、遺言書の保存を確実にし、後日の変造・隠匿を防ぐために、家庭裁判所の検認が必要とされている。 〈秘密証書遺言〉 秘密証書遺言とは、遺言書に遺言者が署名押印しその証書を封じ、証書に用いた印章で封印し、公証人等へ提出して公証人・証人が署名押印する遺言である(民法970条)。遺言者の他界後、家庭裁判所で検認が必要である(民法1004条)。 自筆証書遺言と同様に、公証役場に保管されているわけではないため、自宅金庫などを探し、有無を確認する必要がある。家庭裁判所の検認が必要であることも、自筆証書遺言と同様である。 2 遺言の効力 法律的に有効な遺言がある場合、その内容に従い、相続財産の取得者が決まる。 ただし、遺留分、遺言の取消しが実務上、問題となることが多い。 〈遺留分〉 遺言は作成者(被相続人)の意思のみで作成されるものであるため、極端な例で言えば、相続人が全く財産を相続できない可能性もある。 民法においては、相続は遺族の生活保障などの役割を有していると考えられ、一定の被相続人については、相続財産の一定割合を留保する制度が設けられている。これが「遺留分」というものである(民法1028条)。 具体的な例として、被相続人Aが、自己の財産のすべてを長男に相続させる遺言を作成した場合を考える。 この場合、遺言に従い、長男がすべての財産を相続するが、他の相続人(次男など)は全く相続できないことになってしまうため、法律上は、遺留分について、他の相続人は権利を主張することができる(「遺留分減殺請求」という)。 なお、あくまで権利を主張した場合(遺留分減殺請求をした場合)にのみ認められるものであり、これを行わない場合には遺留分は認められない(*1)。 遺留分が認められるのは、兄弟姉妹以外の相続人であり、原則的には、法定相続分の2分の1が遺留分となる(*2)。 〈遺贈の放棄〉 遺言により財産を取得する者は、遺贈を放棄することが可能である(民法986条)。その場合には、遺言者の死亡時に遡って効力が生じることとなる(つまり、最初から遺言がなかったことに法律上取り扱われる)。 この場合には、「遺言がない状態」ということになり、相続人全員で遺産分割協議を行い、合意を得る必要が生じる。 実務的には、遺言に従わず、相続人全員で、遺言と異なる内容で遺産分割協議書を作成する場合があるが、この場合、法律的には、遺贈の放棄が行われ、遺言がない状態に法律上なるため、相続人全員で遺産分割協議を行った、という構成になると考えられる。 (了)
企業結合会計基準に対応した 改正連結実務指針等の解説 【第1回】 「追加取得の会計処理」 -子会社株式から子会社株式 公認会計士 布施 伸章 ◆ 解説 ◆ 1 子会社株式の追加取得の連結上の基本的な会計処理 子会社株式を追加取得した場合には、上記のように、追加取得した株式に対応する持分を非支配株主持分から減額(②240)(※)し、追加取得により増加した親会社の持分(追加取得持分(※))を追加投資額(①300)と相殺消去したうえで、追加取得持分と追加投資額との間に生じた差額(③△60)は、資本剰余金とすることになる(連結会計基準28項)。 (※) 追加取得持分及び減額する非支配株主持分は、追加取得日における非支配株主持分の額により計算する(連結会計基準(注8))。 また、連結会計基準に従い、上記の差額を資本剰余金から控除した結果、資本剰余金が負の値となる場合には、連結会計年度末において、資本剰余金をゼロとし、当該負の値を利益剰余金から減額することになる(連結会計基準30-2項)。 この会計処理は、自己株式等会計基準40項と同様に行うため、負の値となった資本剰余金は、連結会計年度末において、利益剰余金で補てんし、その残高を確定することになり(資本連結実務指針39-2項)、四半期での会計処理は洗い替えることになる。 2 取得関連費用(付随費用を含む)の会計処理 支配獲得後において、子会社株式を追加取得した際に発生した取得関連費用(付随費用を含む)は、連結上、発生した連結会計年度の費用として処理されるが、個別上は、取得関連費用のうち付随費用を取得価額に含めることとなる(資本連結実務指針46-2項)。 3 連結上の税効果の会計処理 1のとおり、連結会社が子会社株式を追加取得した場合、追加取得により増加した親会社の持分と追加投資額との間に生じた差額(親会社の持分変動による差額)は(のれんではなく)資本剰余金として処理することとされたため、子会社への投資の個別貸借対照表上の価額と連結貸借対照表上の価額との間に差額が生じることになる。 また、2のとおり、追加取得に係る子会社株式の取得関連費用の会計処理は、連結上と個別上とで異なることとなったため、子会社への投資の個別貸借対照表上の価額と連結貸借対照表上の価額との間に差額が生じることになる。 これらの差額は、連結財務諸表固有の一時差異に該当し、連結税効果実務指針32項又は37項に従って税効果の会計処理を行うことになる。 (了)
フロー・チャートを使って学ぶ会計実務 【第4回】 「個別財務諸表における税効果会計」 仰星監査法人 公認会計士 西田 友洋 「税効果会計」とは、将来の税金を減少させる効果を繰延税金資産として計上し、将来の税金を増加させる効果を繰延税金負債として計上する会計処理である。 例えば、会計上は当期に費用計上するが、税務上は翌期以降に損金算入する場合、将来に損金算入されることにより将来の課税所得が減少し、将来の税金が減少する。この減少の原因は当期に発生しているため、当期に繰延税金資産(回収可能性ありの場合、詳細は【STEP4】参照)として計上する。 反対に、税務上は当期に損金算入するが、会計上は翌期以降に費用計上する場合、将来の当該費用計上額は税務上加算され、将来の課税所得は増加し、将来の税金が増加する。この増加の原因は当期に発生しているため、当期に繰延税金負債として計上する。 また、税効果会計は大きく「個別財務諸表における税効果会計」、「連結財務諸表における税効果会計」、「連結納税における税効果会計」に分けることができる。今回は「個別財務諸表における税効果会計」について解説し、「連結財務諸表における税効果会計」は第5回で、「連結納税における税効果会計」は第6回で取り上げたい。 個別財務諸表における税効果会計は、以下の5つのステップに分けることができる。 この5つのステップをフロー・チャートにすると、以下のようになる。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。 税効果会計は、将来の課税所得(税金)を増減させる効果を財務諸表に反映する会計処理である。そのため、【STEP1】では会計上と税務上の差異のうち、将来の課税所得(税金)を増減させる差異である一時差異等を集計する。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 (1) 一時差異等と永久差異の分類 会計上と税務上の差異には、一時差異等と永久差異がある。 一時差異等には、会計上の資産及び負債と税務上の資産及び負債の差額が将来、解消することにより、将来の課税所得(税金)が増減する一時差異と、一時差異ではないが将来の税金を減少させるものである繰越欠損金等の一時差異に準ずるものがある。 永久差異とは、会計上と税務上の差異であるが、将来の課税所得(税金)を増減させる効果がないものである。 まず、会計上と税務上の差異で、将来の課税所得を増減させる効果がある一時差異等と効果がない永久差異に分類する。 次に、繰越欠損金等に該当するか否かで、一時差異に準ずるものと一時差異に分類する。 (2) 一時差異 一時差異とは、会計上の資産及び負債の金額と税務上の資産及び負債の金額との差額をいう(税効果会計に係る会計基準(以下、「基準」という) 第二 一2)。 以下のものが該当する。 また、一時差異はその差異解消時に将来の課税所得(税金)を減少させるか、増加させるかで、将来減算一時差異と将来加算一時差異に分けることができる(個別財務諸表における税効果会計に関する実務指針(以下、「実務指針」という)6)。 一時差異は、法人税申告書の別表5(1)から集計することができる。 ① 将来減算一時差異 将来減算一時差異とは、会計上と税務上で資産又は負債の差異が生じたときに課税所得の計算上(税務上)加算され、将来、当該差異が解消するときに課税所得の計算上(税務上)減算されるものである(実務指針7)。言い換えると、会計上と税務上の資産又は負債の差異の将来解消時に課税所得が減少し、税金が減少するものである。 将来減算一時差異には、未払事業税、貸倒引当金繰入限度超過額、棚卸資産評価損否認額、賞与引当金、退職給付引当金等がある。 ② 将来加算一時差異 将来加算一時差異とは、会計上と税務上で差異が生じたときに課税所得の計算上(税務上)減算され、将来、当該差異が解消するときに課税所得の計算上(税務上)加算されるものである(実務指針9)。言い換えると、会計上と税務上の資産又は負債の差異の将来解消時に課税所得が増加し、税金が増加するものである。 例えば、積立金方式による特別償却・圧縮記帳等が該当する。 (3) 一時差異に準ずるもの 一時差異に準ずるものとは、一時差異ではないが、将来の税金を減少させるものであるため一時差異と同様に扱うものである。 これには以下のものが該当する(実務指針11)。 繰越欠損金は法人税申告書の別表7(1)から集計することができる。また繰越外国税額控除は法人税申告書の別表6(3)から集計することができる。 (4) 永久差異 永久差異とは、会計上、費用又は収益として計上されるが、税務上は永久に損金又は益金に算入されないもの(社外流出項目)である。将来の課税所得(税金)を増減させる効果がないため、一時差異等には該当せず税効果会計の対象とはならない。 例えば、交際費や寄附金の損金算入限度超過額、損金算入できない役員賞与、損金不算入の罰科金、受取配当金の益金不算入額が該当する(実務指針14)。 (次ページ【STEP2】へ進む) (前ページ【STEP1】へ戻る) 繰延税金資産及び繰延税金負債は、一時差異等に法定実効税率を乗じて算定する。 【STEP2】では、この法定実効税率を算定する。 (1) 法定実効税率とは 法定実効税率とは、法律で定められている税率により計算された税額の課税標準(課税所得)に対する割合(負担率)のことである。 税金にはいろいろあるが、税効果会計の対象となるのは、利益(課税所得)に対する税金である(実務指針36)。そのため、法定実効税率の算定に使用する税率は利益(課税所得)に係る税金の税率である。 具体的には、以下の表の「税効果会計の対象」欄に「〇」を付した税金を法定実効税率の算定に使用する。 (2) 法定実効税率の算定 具体的には、法定実効税率は以下のように算定する(実務指針17)。 税率は決算日現在の税法規定に従った税率を使用する。したがって、決算日までに改正税法が公布されている(施行ではない)場合、改正税法の規定に従った税率を使用する(実務指針18)。 《設例1》 (次ページ【STEP3】へ進む) (前ページ【STEP2】へ戻る) 【STEP3】では、回収可能性考慮前・繰延税金資産及び繰延税金負債を算定する。 (1) 回収可能性考慮前・繰延税金資産の算定 回収可能性考慮前・繰延税金資産は以下のとおり算定する。 (2) 繰延税金負債の算定 繰延税金負債は以下のとおり算定する。 (次ページ【STEP4】(1)へ進む) (前ページ【STEP3】へ戻る) 【STEP3】で算定した繰延税金資産は、その全額を貸借対照表に計上できるわけではなく、将来の課税所得(税金)を減少させる部分しか貸借対照表に計上できない。 そこで【STEP4】では、貸借対照表に計上できる繰延税金資産を算定するために「繰延税金資産の回収可能性」を検討する。また、繰延税金負債も例外的な場合に支払可能性の検討が必要な場合がある。 具体的には、以下の(1)~(3)の検討が必要である。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 (1) 会社区分の決定 ① 会社区分の決定 日本の税効果会計は、監査委員会報告第66号「繰延税金資産の回収可能性の判断に関する監査上の取扱い」(以下、「66号」という)に定められている以下の6つの区分に会社を区分して、その区分ごとの一定の判断指針をもとに繰延税金資産の回収可能性を検討する(66号5)。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 そのため、繰延税金資産の回収可能性の検討では、まず会社区分を決定する。 会社区分は、以下の順に判断する(66号5(1))。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 ② 会社区分ごとの判断指針 66号では、会社区分ごとに繰延税金資産の判断指針が設けられている。 会社区分によっては、【STEP4】(2)の全部又は一部の検討が不要である。 ※画像をクリックすると、大きい画像が開きます。 (注) 「回収可能性あり」とは、将来の課税所得(税金)を減少させることから繰延税金資産を計上できるということである。「回収可能性なし」とは、将来の課税所得(税金)を減少させることができないため、繰延税金資産を計上できないということである。 (※1) スケジューリングとは、将来減算一時差異の解消時期を合理的に決めることをいう(【STEP4】(2)①参照)。 (※2) その他有価証券評価差額金に係る税効果については、原則、個々の銘柄ごとに判断するが、スケジューリング可能なものと不能なものに分類した上で、評価差額の純額で判断する容認処理が認められている。本解説では実務上よく使う容認処理の場合で解説している。 (※3) 解消時期が長期にわたる将来減算一時差異とは、スケジューリングの結果、一時差異の発生から解消までの期間が長期であるものをいう。例えば、退職給付引当金や建物の減価償却超過額が該当する(66号5(2))。なお、償却資産を減損し、税務上加算した場合、「会計上の簿価<税務上の簿価」となり、減損後の減価償却の際には、「会計上の減価償却費<税務上の減価償却費」となるが、この減価償却費の差額は「通常の」将来減算一時差異に該当する(監査委員会報告第70号「その他有価証券の評価差額及び固定資産の減損損失に係る税効果会計の適用における監査上の取扱い」(以下、「70号」という)Ⅱ 2(1))。 (次ページ【STEP4】(2)へ進む) (前ページ【STEP4】(1)へ戻る) (2) 回収可能性の検討 ① 一時差異等の解消のスケジューリング 会社区分の決定の後は、一時差異等の解消のスケジューリングを行う。 一時差異等の解消のスケジューリングとは、一時差異等の解消時期が「いつになるか」を検討することをいう(66号3①②)。 解消時期がわかるものをスケジューリング可能な一時差異等といい、解消時期がわからないものをスケジューリング不能な一時差異等という。 スケジューリング不能な将来減算一時差異は、いつ解消するかが不明であるため、当該一時差異に係る繰延税金資産については回収可能性の判定ができない。そのため、貸借対照表に計上できない(会社区分「1」の場合は除く)。 したがって、スケジューリング不能な将来減算一時差異については、②以降の検討は不要である。 具体的には、スケジューリングは以下のように判断する。 ◆一時差異◆ 【将来減算一時差異】 【将来加算一時差異】 ◆一時差異に準ずるもの◆ なお、スケジューリング不能な将来加算一時差異(例えば、スケジューリング不能なその他有価証券評価差額金(純額)に係る繰延税金負債)は以下の②、③で行う将来減算一時差異の解消見込年度と対応させることができないため、②、③において将来減算一時差異、一時差異に準ずるものと相殺しない(66号4)。 ② 将来減算一時差異(一時差異に準ずるものを含む。以下、同様)と将来加算一時差異の解消年度ごとの相殺 上記①のスケジューリングをもとに、解消年度ごとに将来減算一時差異、将来加算一時差異を相殺する(66号3③)。 将来減算一時差異と将来加算一時差異は将来の課税所得(税金)に対して反対方向の影響であるため、将来加算一時差異と相殺できた将来減算一時差異は、将来の課税所得(税金)を減少させる効果がある。そのため、相殺できた将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性ありと判断する。 ③ 将来減算一時差異とその繰越期間内の将来加算一時差異との相殺 上記②で相殺できなかった将来減算一時差異は、税務上認められている繰越欠損金の繰越期間内の(上記②相殺後の残額の)将来加算一時差異と相殺する(66号3④)。相殺できた将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性ありと判断する。 これは、相殺できなかった将来減算一時差異は課税所得の水準次第(上記②では課税所得は考慮していない)では、将来の欠損金になる可能性もある。そのため、相殺できなかった将来減算一時差異を欠損金と考えて、税務上認められている繰越欠損金の繰越期間内の(上記②相殺後の残額の)将来加算一時差異と相殺する。 ④ 将来の課税所得の見積額の算定 上記③でも相殺できなかった将来減算一時差異は、下記⑤で将来の課税所得の見積額と解消年度ごとに相殺する。そのため、ここでは合理的な課税所得を見積もる。ここでいう課税所得とは、一時差異解消前の課税所得(交際費の損金算入限度超過額、受取配当金の益金不算入額等の永久差異や一時差異の発生は考慮する)である。 見積もる際には、収益力による課税所得及びタックス・プランニング(固定資産又は有価証券の売却等)による課税所得を考慮して検討する。 収益力に基づく課税所得は、原則として、取締役会や常務会等の承認を得た事業計画や予算等に合理的な修正を考慮して算定する必要がある(66号5(3))。 また、タックス・プランニングによる課税所得は、区分ごとに、以下の2つを満たす場合、課税所得の見積りに含めることができる(66号6(1)③④)。 ⑤ 将来減算一時差異と課税所得の解消年度ごとの相殺 上記③でも相殺できなかった将来減算一時差異は、上記④で算定した将来の課税所得の見積額と解消年度ごとに相殺する。相殺できた将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性ありと判断する(66号3⑤)。 ⑥ 将来減算一時差異とその繰越期間内の課税所得との相殺 上記⑤でも相殺できなかった将来減算一時差異は、税務上認められている繰越欠損金の繰越期間内の(上記⑤相殺後の残額の)課税所得と相殺する。相殺できた将来減算一時差異に係る繰延税金資産は回収可能性ありと判断する(66号3⑥)。このような相殺を行うのは、上記③と同じ理由である。 ここまでで相殺できなかった将来減算一時差異に係る繰延税金資産は、回収可能性なしと判断する。 ⑦ 回収可能性のある繰延税金資産及び回収可能性のない繰延税金資産(評価性引当額)の算定 【STEP3】で算定した回収可能性考慮前・繰延税金資産及び繰延税金負債から上記⑥までで回収可能性なしと判断した繰延税金資産(評価性引当額)を控除した金額のみが回収可能性のある繰延税金資産として貸借対照表に計上することができる(実務指針22、66号3⑦)。 (次ページ【STEP4】(3)へ進む) (前ページ【STEP4】(2)へ戻る) (3) 支払可能性の検討 将来加算一時差異は、将来の課税所得(税金)を増加させるものである。したがって、理論上は将来の税金の支払が見込まれる(支払可能性のある)将来加算一時差異に係る繰延税金負債のみを貸借対照表に計上するために、繰延税金負債について支払可能性の検討が必要である。 しかし、実務指針では、事業休止等により、会社が清算するまでに明らかに将来加算一時差異を上回る損失が発生し、課税所得が発生しないことが合理的に見込まれる場合のみ支払可能性がないと判断することになっている(実務指針24)。 そのため、事業休止等の状況でない限り、支払可能性はあるとし、会社が事業を行っている状況では支払可能性を検討せずに、(スケジューリング不能な将来加算一時差異も含む(ただし、将来加算一時差異についてスケジューリングが常に不要なわけではない。【STEP4】(2)①なお書き参照))すべての将来加算一時差異に係る繰延税金負債を貸借対照表に計上する。 ここまでをまとめた設例は下記のとおりである。 《設例2》 (前提条件) 会社区分は「3」である。 法定実効税率は35%である。 毎期の課税所得(将来減算一時差異及び将来加算一時差異の減算及び加算前)は300である。 X1年度末の将来減算一時差異は以下のとおりである。 X1年度末の将来加算一時差異は以下のとおりである。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。 (次ページ【STEP5】へ進む) (前ページ【STEP4】(3)へ戻る) 【STEP5】では、税効果会計の会計処理について検討する。 (1) 繰延税金資産及び繰延税金負債(その他有価証券評価差額金等の純資産の部に直接計上され、課税所得の計算に含まれないものに係る税効果を除く)の計上 繰延税金資産及び繰延税金負債(その他有価証券評価差額金等の純資産の部に直接計上され、課税所得の計算に含まれないものに係る税効果を除く)の増減額を「法人税等調整額」を相手勘定科目として計上する(実務指針2)。 会計処理の例は以下のとおりである。 【会計処理】 (*1) 当期末の繰延税金資産-前期末の繰延税金資産 (*2) 当期末の繰延税金負債-前期末の繰延税金負債 (2) 直接純資産の部に計上され、課税所得の計算に含まれないものに係る税効果-その他有価証券評価差額金の場合 その他有価証券評価差額に係る税効果会計の会計処理(時価>取得価額の場合)は、以下のとおりである。 【会計処理】 (*1) (時価-取得価額)× 法定実効税率 (3) 繰延税金資産と繰延税金負債の相殺 流動資産の繰延税金資産と流動負債の繰延税金負債は、相殺して表示する。また、投資その他の資産の繰延税金資産と固定負債の繰延税金負債も相殺して表示する(実務指針30)。 また、税効果会計においては、以下の注記が必要である(基準第四、財務諸表等規則8の12)。 なお、計算書類では、「繰延税金資産及び繰延税金負債(重要でないものを除く)の発生の主な原因」の注記をすれば足り(会社計算規則107)、上記のような注記は必ずしも求められていない。 《設例3》 (前提条件) 前期末と当期末の繰延税金資産及び繰延税金負債は以下のとおりである。 法定実効税率は35%である。 ① 繰延税金資産及び繰延税金負債の計上 ② その他有価証券評価差額金に係る繰延税金負債の前期末の仕訳の洗い替え (*1) 35÷35%=100 (*2) 差額 ③ その他有価証券評価差額金に係る繰延税金負債の計上 (*3) 70÷35%=200 (*4) 差額 ④ 繰延税金資産と繰延税金負債の相殺 (*5) 固定繰延税金資産 > 固定繰延税金負債のため、固定繰延税金負債の全額を固定繰延税金資産と相殺する。 (了)