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過年度遡及会計基準の気になる実務Q&A 【第12回】「初めて作成する連結財務諸表」

過年度遡及会計基準の気になる実務Q&A 【第12回】 (最終回)  「初めて作成する連結財務諸表」   公認会計士 阿部 光成   《解 説》 「比較情報の取扱いに関する研究報告(中間報告)」(会計制度委員会研究報告第14号。以下「研究報告14号」という)のQ3では、「初めて連結財務諸表を作成する場合の会計方針の変更」について述べている。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅰ 会計方針の変更 「会計方針の変更」とは、従来採用していた一般に公正妥当と認められた会計方針から他の一般に公正妥当と認められた会計方針に変更することをいう(「会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(企業会計基準第24号)4項(5))。   Ⅱ 初めて連結財務諸表を作成する場合 1 論点 研究報告14号のQ3では、従来、連結子会社がなかったため、個別財務諸表のみを作成していたが、連結子会社が生じたことから、当連結会計年度に初めて連結財務諸表を作成することになったケースについて述べている。 この場合、前連結会計年度に関する連結財務諸表は作成されていないので、「会計方針の変更」の取扱いがあるのかどうかが論点となる。 2 研究報告14号 研究報告14号は、連結財務諸表を初めて作成する場合には、比較する前連結会計年度に係る連結財務諸表が作成されていないため、連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項に関する変更(会計方針の変更)については、記載を要しないことになると述べている。 3 個別財務諸表における会計方針の変更がある場合 前述のように、連結財務諸表を初めて作成する場合には、会計方針の変更については記載を要しないという取扱いになるが、個別財務諸表は存在するので、例えば、親会社の個別財務諸表において会計方針の変更が行われているときに、連結財務諸表上、どのように開示するのかの論点がある。 これについて、研究報告14号は、連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項には、連結財務諸表作成の基礎となっている各連結会社の財務諸表の作成に係る会計方針(会計処理の原則及び手続)を含むとされていることから(連結財務諸表規則ガイドライン13-1 2)、親会社において会計方針の変更が行われている場合には、連結財務諸表において当該会計方針の変更に関する注記が必要となると述べている。 なお、新規に取得された子会社において会計方針の変更が行われていたとしても、当該会計方針の変更に関する注記は不要となる。 4 四半期の場合 研究報告14号は四半期に関する取扱いについて、次のように述べている。 四半期連結財務諸表については、会計方針そのものを開示するのではなく、会計方針の変更があった場合に開示する(「四半期財務諸表に関する会計基準」(企業会計基準第12号)19項(1)(2)、「四半期連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」10条の2、10条の3)。 このため、四半期連結財務諸表を初めて作成する場合、会計方針の変更については、記載を要しないことになる。 ただし、四半期連結財務諸表作成のための基本となる重要な事項には、四半期連結財務諸表作成の基礎となっている各連結会社の四半期財務諸表の作成に係る会計方針(会計処理の原則及び手続)を含むとされていることから(「「四半期連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則」の取扱いに関する留意事項について」10 1)、親会社において会計方針の変更が行われている場合には、四半期連結財務諸表において当該会計方針の変更に関する注記が必要となる。 なお、新規に取得された子会社において会計方針の変更が行われていたとしても、当該会計方針の変更に関する注記は不要となる。 (連載了)

#No. 66(掲載号)
#阿部 光成
2014/04/24

〔会計不正調査報告書を読む〕【第16回】東テク株式会社・「不適切な会計処理に関する調査委員会調査報告書」

〔会計不正調査報告書を読む〕 【第16回】 東テク株式会社・ 「不適切な会計処理に関する調査委員会調査報告書」   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝 【概要】   【東テク株式会社の概要】 東テク株式会社(以下「東テク」という)は、1955(昭和30)年7月設立。空調・衛生・電気設備機器の販売とアフターサービス、ビルオートメーションを中心とした設備の設計・施工・保守業務を主たる事業とする。連結売上高約665億円、従業員数1,028名(2013年3月期)。本店所在地は東京都中央区。JASDAQ上場。   【報告書のポイント】 1 調査結果により判明した事実 (1) 不適切な会計処理に関する疑義が発覚した経緯 東テクは、平成26年2月上旬、東京国税局による税務調査の過程において、社員の一部が不適切な外注費の処理を行っていた可能性があるとの指摘を受け、これを端緒として社内調査を進めたところ、水増し又は架空の仕入発注、ルームエアコンの無断転売等の不正取引の事実を把握するに至った。 (2) 調査委員会の構成 本件調査を行った委員会は、日弁連のガイドラインに基づく第三者委員会ではなく、委員長を東テク常勤監査役が、委員にも東テク内部監査部長が就任している。 その理由として、「平成26年3月期第3四半期報告書提出期限延長後の提出期限(3月14日)までの時間が短いため、円滑・迅速に調査を行う必要性から社内メンバーに外部の専門家が参加する委員会構成」を採用した旨、説明している。 (3) 発覚した不正の内容 調査の結果、東テク社員により、 が行われていたことが判明した。 ① 水増し仕入発注等 利益が見込まれる現場において、下請業者である外部協力者に対して、営業担当者による水増し仕入発注が行われ、東テクから外部協力者に対する支払いが行われた後、手渡し又は振込により、営業担当者にキックバックがされた。 なお、大阪支店においては、東テクOBが経営する会社を利用して、複数の社員が相互に役割分担を行っていたことも判明している。 ② 取引事実のない販売手数料の支払い 調査の過程で、特定の社員が、空調機の販売手数料や設計料の名目で、取引の事実のない設計事務所に対する支払いに応じていたことが判明しているが、社員はこれを否定している。また、こうした類型の不正が4件36百万円と報告されているが、調査報告書で言及されているのは1件12百万円に過ぎない。 ③ ルームエアコンの無断転売等 現場における仕入を仮装して発注したルームエアコンを、依頼者あるいは現場以外の倉庫に向けて発送し、依頼者に供与(贈与)し、転売して交際費を捻出することが行われていた。 ④ 社員が関係する会社への資金還流を目的とした水増し発注 特定の社員は、妻が代表取締役を務める会社に金銭を還流させることを目的に、仕入業者に対して水増し仕入発注を行い、その下請として妻の会社へ資金を流させていた。 (4) 水増し仕入発注等の方法により交際費等を捻出することになった背景 東テクにおける営業の基本方針は、商品及び技術面での差別化により取引先から受注を受けることであり、取引先との人的関係によって継続受注につなげたり、接待を行って取引先との関係を構築したりという営業担当者等は、主流ではなかった。 また、内部手続として交際費を申請しづらい(事前申請が求められている)こと、交際費の支出に慎重な対応をとっていたこともあり、営業担当者等が交際費申請に消極的になっていた。 その結果、一部営業担当者等の間で、交際費の捻出目的から、不正行為がはじめられたものであるが、資金捻出方法を会得し、不正行為を継続するにつれてコンプライアンス意識が欠如し、営業上必要な交際費の捻出に止まらず、取引先に対する過度の飲食・遊興費、社員同士の私的な飲食等の支出にまで発展したものである。 (5) 不正行為に関与した社員の数及び不正に処理された金額等   2 調査報告書の特徴 (1) 原因分析 調査報告書は、社員が不正行為を実行した原因及び東テクがこれを発見・防止することができなかった原因を、以下の6点にまとめている。 本件の特徴としては、多数の社員と業者が関与した不正が相当期間続き、その不正を見聞きした社員もまた多数いたにもかかわらず、国税局による税務調査で指摘されるまで、問題が発覚しなかった点にある。 その点について、報告書はこのように分析している。 (2) 経営者の関与 経営者の関与について、調査報告書は、「東テクの取締役その他の役員のうち、役員の立場として、本件不正行為を立案・実行したものは確認されていない」こと、「東テクの代表取締役会長及び代表取締役社長が、本件不正行為の存在については、認識していたことを窺わせるような事実は存在ない」としている。 取締役その他の役員について、「役員の立場として」と限定したうえで、立案・実行したものはいないとしている点、役員就任より前に不正行為を実行し、あるいは部下の不正行為を容認・黙認していた者があることを感じさせる表現になっている。 (3) 監査役監査及び内部監査の不十分性 調査報告書は、以下のとおり、監査の不十分性を指摘しているが、問題は、こうした記述をしている調査委員会のトップが常勤監査役であり、内部監査室長も委員に加わっている点にある。 なぜ監査役監査や内部監査が不十分なまま放置されていたのかが解明されなければ、再発防止策に結びつかないのではないだろうか。 (4) 水増し仕入発注等に関与した社員に対する求償 報告書では、社員が関係する会社への資金還流を目的とした水増し仕入発注等については、これを売上原価から除外し、未収入金として計上するよう、修正事項として記載されているが、それ以外の、水増し仕入発注等によるキックバックを私的に費消した社員やルームエアコンを無断転売した社員に対して、これらの不正により得られた金銭の求償については、コメントがない。 (5) 再発防止策 上記(1)の原因との対比で、再発防止策が検討されている。 この中で、購買プロセスの改善については、「購買部門の新設を図り、発注権限を営業部門に集中させないこと」や「申請された外注又は追加仕入の要否」などの問題点が検討できるようにすべきであることなどに加えて、物流プロセスの改善も提言されており、まったく統制がなかった業務プロセスに新たな統制をおいて、牽制機能を高めるという改善は有効であろう。 一方、「健全な倫理観を有する社員による内部通報」すら期待できない形骸化した内部通報システムをはじめとする、「コンプライアンス意識の改善」には、より抜本的な再発防止策が必要ではないだろうかと思料する。 (6) 「原価内交際費処理」ルールについて 調査委員会による再発防止策に関する提言の中で、気になった点がもう1つある。それは、「原価内交際費処理ルールの導入」である。 調査報告書から全文を引用する。 ルールそのものの是非はさておき、交際費を売上原価として処理する方法は、建設業の地元対策費などで見られる方法であるが、法人税においては、勘定科目には関係なく、交際費等は損金の額に算入できないため、原価内交際費の存在や支出された金額が経理部門に伝達されておらず、しばしば税務調査で問題となっている。 支出が必要な交際費等については、適正に申請するという意識を醸成するために、交際費の予算枠から除外するという提言の趣旨は理解できるが、かえって交際費等が適正に申告できず、税務上のペナルティにつながりかねないという懸念を抱く。   3 訂正された決算短信の内容 決算短信の訂正は平成21年3月期の期首残高にまで遡っているが、ここでは、直近である平成25年3月期の連結財務諸表について、訂正内容を検討したい。 貸借対照表科目を見ると、未払法人税等の増額が目につき、ほぼ同額の利益剰余金が減少している。これは、今回の不適切な会計処理の結果、過年度に遡及して交際費等の額が増加することとなることから、その分、法人税、住民税及び事業税の計上額を増額した結果によるものといえる。 損益計算書科目では、売上原価が減額されて、不正関連損失という新たな勘定科目を営業外費用に計上しているが、当期純利益に与える影響については、法人税、住民税及び事業税の増額に止まっており、不正関連損失(損金の額に算入されない交際費等)に対する法人税、住民税及び事業税の計上額は約44%と通常の実効税率を上回る水準になっている。 【平性25年3月期(単位:百万円)】 (了)

#No. 66(掲載号)
#米澤 勝
2014/04/24

パワーハラスメントの実態と対策 【第4回】「パワハラの予防策と解決策」

パワーハラスメントの実態と対策 【第4回】 (最終回)  「パワハラの予防策と解決策」   特定社会保険労務士 大東 恵子   パワハラのリスクを防止するためには、2つの観点から対策を整備する必要がある。 それは、「発生しないようにする予防策」と、「発生してしまったときのために解決策」である。 〈パワハラ予防策〉 まず、予防策としては、 という5つの点が重要であるといわれている。 ① トップのメッセージ まずは「会社全体としてパワハラをなくすべき」という方針を会社のトップから明確に打ち出すことが重要である。 これにより、それぞれの職場環境に「パワハラはダメ」という雰囲気が生まれ、職場の一人ひとりが意識を持つことができる。さらに組織の方針が明確になれば、パワハラを受けた従業員やその周囲の従業員も、問題の指摘や解消に関して発言がしやすくなり、その結果、取組みの効果がより期待できるようになると考えられる。 ② ルールを決める 就業規則その他の職場の服務規律等を定めた文章において、「パワハラ行為を行った者については厳正に対処する」旨の方針及び懲戒規定等の対処方針を定めることが肝要である。 就業規則等に予め定めておかないと、実際にパワハラが起きたときに懲戒処分などの処罰は適用されない。 ③ 実態を把握する パワハラが発生しやすい状況・職場環境には、いくつかの特徴があるといわれている。 そういった実態を予め把握し、早期発見につなげることも重要となる。 パワハラが発生しやすい状況として、「閉鎖的な職場」があげられる。 閉鎖的な職場では外部からの力が及びにくく、ある一定の人物に権限が集中し、固定的な支配関係ができやすくなる。こういった状況ではパワハラが発生しやすく、またエスカレートしやすいといわれている。 次に、「忙しすぎる職場」である。 人は、日々の業務が忙しく、忙殺されてしまうと、部下や周りの人を配慮する余裕がなくなってしまう。そのため、相手のことを考えずに、厳しい言葉が出てしまったり、ストレスをぶつけてしまうことがある。 また、「人や仕事のマネジメントが徹底されていない職場」でもパワハラが起きやすいといわれている。 上司の指示が曖昧であったり、複数の上司から違う指示が出されるなど、指示命令系統に問題があるにもかかわらず、一方的に叱られ、叱られた部下が後からパワハラだと訴えてくるというケースも多くある。 このようなパワハラが起きやすい状況に注目しながら、職場の実態を把握するためには、アンケート調査を実施することが有効である。 アンケート調査では、パワハラの有無の把握だけではなく、パワハラについて職場で話題にしたり、働きやすい職場環境づくりについて考える貴重な機会にもなる。 ④ 教育する 予防対策のもっとも一般的で効果が大きいと考えられる方法が、教育・研修の実施である。 教育・研修は、繰り返し定期的に行うことで、効果があるといわれている。 ⑤ 周知する 職場のパワハラの防止に向けて、組織の方針、ルールなどとともに、相談窓口その他の取組みについて、組織内で共有される情報媒体(情報誌やウェブサイト、ポスターなどの掲示物等)や会合などあらゆる機会を通じて従業員に対し周知・啓蒙を行い、パワハラ防止に向けた意識を従業員全体に浸透させることも重要である。   〈パワハラ解決策〉 一方、実際にパワハラが起こってしまった場合の解決策としては、厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告(平成24年1月)」において、2点の対応が示されている。 ① 相談や解決の場を設置する 会社内・外の相談・苦情を受け付ける窓口を明確にし、従業員が気軽に苦情の申し出や相談ができる体制を整え、適切かつ柔軟に対応することが必要である。事案によっては解決のために専門家の介入が必要な場合もある。 ② 再発防止のための取組み 問題解決後の相談者へのフォロー、職場全体としての再発防止の取組みも重要である。 発生した事案を特別なものとして捉えるのではなく、職場全体の問題として捉え、基本方針の再確認、防止体制の必要な見直し、従業員への周知、研修の実施等再発防止のための対策を行い、職場環境の改善に努めることが重要である。 *  *  * パワハラは、被害者だけでなく加害者の生活、会社経営までも取り返しのつかない状態へ追い込む事態となる。 本連載で述べたとおり、パワハラは誰にでも起こりうる問題と捉え、予め対策を整備することは、すべての労働者を守る上で、重要な会社の役割なのである。 (連載了)

#No. 66(掲載号)
#大東 恵子
2014/04/24

事例でわかる消費税転嫁対策特別措置法のポイントQ&A 【第4回】「当事者間の合意と買いたたき」

事例でわかる消費税転嫁対策特別措置法のポイントQ&A 【第4回】 「当事者間の合意と買いたたき」   のぞみ総合法律事務所 弁護士 大東 泰雄 弁護士 山田 瞳     1 「合理的な理由」が認められる典型例 本連載第3回(「契約書の「〇〇円(税込)」という記載と買いたたき」)で解説したように、「通常支払われる対価」を下回る価格で購入しても買いたたき(消費税転嫁対策特別措置法3条1号)に当たらないのは、「合理的な理由」がある場合に限られる(公正取引委員会「消費税の転嫁を阻害する行為等に関する消費税転嫁対策特別措置法、独占禁止法及び下請法上の考え方」(以下「公取委ガイドライン」という)第1部第1の3(3))。 そして、公取委ガイドラインは、「合理的な理由」が認められるのは、例えば以下の場合であるとしている。   2 当事者間の合意があれば十分か 上記のうち、ウはいわゆるフォーミュラ方式であり、やや特殊であるが、ア及びイの考え方は広く応用することができる。 上記ア及びイに共通するのは、以下の2つの要素である。 すなわち、公取委の考え方によれば、上記①、②の双方が存在する場合には買いたたきに当たらないが、上記①、②のいずれかを欠く場合は、基本的に買いたたきに該当することになると考えられ、当事者間の合意(上記②)があるというだけでは足りないということになる。 そして、当事者間の合意だけでは「合理的な理由」は認められないという公取委の考え方は、以下の公取委公表資料にも具体的に表れている。 上記「消費税の転嫁拒否等の行為に関するよくある質問」Q8に対する回答に表れているように、公取委の考え方によれば、少なくとも、当事者間で合意した(合意書が存在する)という一事をもって、「合理的な理由」が認められることはない。 つまり、当事者間の合意書が存在する場合も、それに加え、原材料価格の低下、コスト削減など特定供給事業者(売手)の納得の基礎となる客観的事情の有無が問われ、その事情次第では、買いたたきと判断される可能性が大いにあるということになる。 もっとも、上記パブコメ考え方27番によれば、特定供給事業者(売手)の納得の基礎となる客観的事情がない場合でも、「当事者間の価格交渉の経緯や取引実態等」によっては、「合理的な理由」が認められる可能性があるようである。 また、上記パブコメ考え方19番は、「納入業者の在庫処分が必要」なことや、「消費税率引上げ後に売上げが急激に減少した」ことなど、特定事業者(売手)側の事情であっても、「合理的な理由」を基礎づける事情となる可能性があることを示唆しているように読める。 そこで、このような事情があって値下げを求めざるを得ない場合には、例えば、低価格でも在庫を処分した方が売手の利益になること、値下げしてでも取引を続けた方が売手・買手双方の利益になることなどを示して、特定供給事業者(売手)と綿密に交渉し、納得を得ることが考えられる。 (了)

#No. 66(掲載号)
#大東 泰雄、山田 瞳
2014/04/24

現代金融用語の基礎知識 【第5回】「日本版スチュワードシップ・コード」

現代金融用語の基礎知識 【第5回】 「日本版スチュワードシップ・コード」   事業創造大学院大学 准教授 鈴木 広樹   1 日本版スチュワードシップ・コードとは? 日本版スチュワードシップ・コードとは、金融庁に設置された「日本版スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会」(以下、「検討会」という)が2014年2月26日に公表した「責任ある機関投資家の諸原則」のことであり、以下の7つの原則によって構成されている。機関投資家の投資先企業への適切な関与の仕方についての指針を示すものといえる。   2 策定の経緯 「日本版」と付されているように、本家は別にある。本家のスチュワードシップ・コードは、世界的金融危機(リーマンショック)が発生した後、英国において検討され、2010年に策定されたものである。 日本では、2013年6月14日に閣議決定された「日本再興戦略」の中に、スチュワードシップ・コードを策定することが盛り込まれ、同年8月から検討会における議論が開始された。そして、2014年2月26日に公表されることとなったのである。   3 スチュワードシップ責任とは? 上記の7つの原則を読むと、まず「スチュワードシップ責任」という用語が出てくるが、それは、 と定義されている。 株主は、株主総会などを通じて、出資した企業の経営が適切に行われているかを監視する(狭い意味での「企業統治」)。スチュワードシップ責任とは、個人投資家などよりも影響力の大きな機関投資家が、投資先企業の経営をきちんと監視して(定義の中では「対話」とされているが)、その成長を促し、最終的には資金を預かっている顧客などに利益をもたらしてあげることであるといえるだろう。   4 規則ではなく原則 上記の7つの原則はすべて「すべきである」で終わっている。これは、「しなければならない」規則ではなく、あくまで「すべきである」原則なのである。しかも、なすべきことが具体的に示されているわけではなく、具体的なことは自分で考えなければならない(プリンシプルベース・アプローチ)。 例えば、①の原則において「スチュワードシップ責任を果たすための明確な方針を策定し、これを公表すべき」とされているが、どのような方針が良いのかは、それぞれの機関投資家により異なるとされている。 そして、日本の上場企業に投資する機関投資家すべてが受け入れなければならないものではない(ただし、金融庁は、受け入れた機関投資家を公表するとしている)。また、受け入れたとしても、すべての原則を実施しなければならないわけでもない。実施しない理由を十分に説明すれば、一部の原則を実施しなくても構わないのである(「コンプライ・オア・エクスプレイン」、すなわち、原則を実施するか、実施しない場合には、その理由を説明する)。   5 その効果は? 日本版スチュワードシップ・コードのねらいは、日本の上場企業の企業統治の質を向上させて、日本の証券市場に資金を流入させようということなのだろう。しかし、果たしてそのねらいどおりにいくだろうか。 こうした原則は、本来、機関投資家自身が自主規制として策定すべき性質のものである。上(金融庁設置の検討会)が策定した原則を示されて(機関投資家関係者が検討会のメンバーに入り、パブリックコメントの結果も反映させたようだが)、考えろといわれても、困惑してしまうだけだろう。 3年ごとの見直しが行われるようだが、本当の日本版スチュワードシップ・コードが日本に定着するには、かなり時間がかかりそうである。  (了)

#No. 66(掲載号)
#鈴木 広樹
2014/04/24

神田ジャズバー夜話 「12.ジャズバーGのできるまで」

初めて訪れた客からの質問はだいたい次の3つになる。 1、「何時までやってるんですか」 2、「いつからやってるんですか」 3、「どうして始めたんですか」 のどれかで、3つとも答は用意してある。 1、の答「お客さんがいなければ11時半、いても12時で閉めます」 2、の答「7年やってます」 3、の答「脱サラです」 いつもはこれぐらい簡単に答えているが、3、の答はもっと長いものもある。 最終回なので、今夜は長い方を語ろう。 2006年3月中旬の日曜日、私は親戚の法事で酒を飲んでいた。7回忌なので故人を偲ぶなどという雰囲気もなく、話し相手もいなかったので、ひたすら食事をし酒を飲み、傍らの老人たちの話に耳を傾けていた。 「町内会の仕事、あれ、ちょっとした小遣いにはなるんだよ」 「そうだねえ、年金だけじゃなくてさ、少しは稼ぎたいね」 なんだか小市民的な話だなあとのんびり聞いていたら、いつの間にか私自身の問題に置き換えて考えていた。 私は50才になったばかりで定年まであと10年。定年後はどうしているだろう。駅前の駐輪場で自転車を並べ替えているじいさんか。それとも嘱託で会社に残り、隅っこで小さくなっているのだろうか。そのふたつぐらいしか思い浮かばない。これからの10年、今までのように仕事をし、最後に待っているのはそんな自分でしかないというのはどうにも遣り切れない。 娘ふたりは社会人になって自立したので、もう私の親としての役目は終わっている。 妻も収入は少ないが仕事を持っているし、借金は無いし少しは貯金もある。のちのち年金も入るだろうし生活に困ることはないだろう。 私が死んでも誰も困らない。それに今の年齢で死ねば高額の保険金も入る。 「なんだ、おれはもう終わっていたんだ」 いささか短絡的な結論ではあるが、そのころの私は何年も前から仕事に限界を感じていて、すっきりしたかったのだと思う。 自分の存在意義を失って一週間後の日曜日、私は家で昼食のスパゲッティを作っていた。誰に迷惑をかけることもなく、ただ家族のために作っていた。 「スパゲティ屋をやろうかな」ふとそう思い、声が出ていた。 「いいんじゃない。作るの上手だから」と妻の声が返ってきた。 そうだ、好きにすればいいんだ。たった一度の人生だし。自分の奥底から声が聞こえた。 今の自分の置かれている状況をもう一度考えてみた。子供はもう自立していて今までほど稼ぐ必要はない。妻もいくらか稼いでいる。貯金は少ないけど借金はない。会社を辞めれば退職金もある。そのうち年金も入ってくるだろう。 「なあんだ」自分で何か始めるにはまあまあの条件が揃っていた。 年内いっぱいで会社を辞めることにして、図書館で飲食店に関わる本を片っ端から読み、事業計画を検討した。 デザインや設計は、勤務していた会社が展示会の会場の設計・施工会社だったので、自分でもなんとかできる。施工費を安くするために仕事仲間の大工さん、電気屋さんなどに協力してもらう段取りもつけた。後の事になるが、実際の造作費用は通常の4分の1ぐらいで済んだ。 早い段階で、場所は御茶ノ水・神保町界隈に決めていたが、賃貸の店鋪物件はなかなか見つからず、一日一度はネットで検索していた。 ある日、検索を手伝ってくれていた仕事の同僚が地下の物件を見つけた。 「地下? そうだ、音楽の店ができる! 」 ここでスパゲッティ屋から「ロックやジャズを聴かせる飲食店」に変わった。その物件は条件が合わないのでやめたが、以後は地下の物件だけを探した。さらに、ロックは自分の嫌いなものは聴きたくないのでジャズだけに絞り、下手な生演奏は客を遠ざけるので諦め、レコードはあまり持っていないのでCDだけを音源とする店にした。 9月、今の場所に決め、予定通り12月に会社を辞めた。12月中から工事を始め、翌年の2月に「jazz bar gugan」は開店した。 そして、7年経ってもまだ続いているのでした。 (連載了)

#No. 66(掲載号)
#山本 博一
2014/04/24

《速報解説》 EDINETで提出する監査報告書及び財務諸表等に関する監査上の留意点などについて

《速報解説》 EDINETで提出する監査報告書及び財務諸表等に関する監査上の留意点などについて   公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成26年4月18日付(掲載日)で、日本公認会計士協会は、次のものを公表した。 ②については、①の公表に伴い、従来の公表物を廃止するものである。 ③については公開草案が公表されていたが、今回確定することになる。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 主な内容 1 審理通達第2号 (1) 監査報告書の欄外の注書き 審理通達第2号でも、EDINETで提出する監査報告書の欄外の注書きの記載について、会社に依頼することが適当であるとされている。 平成26年2月12日に、「EDINETで提出する監査報告書の欄外記載の変更及びXBRLデータが訂正された場合の監査上の取扱い」(自主規制・業務本部 平成26年審理通達第1号)がすでに公表されており、EDINETで提出する監査報告書の欄外の注書きについて、次の記載が述べられている。 (従前の記載例) (見直し後の記載例) (2) 監査報告書の同一性確保 EDINETで提出する監査報告書については、監査報告書の原本との同一性が確保されていることを確かめるために、監査人は、監査報告書の原本の記載事項と監査報告書に記載された事項を電子データ化してEDINETで提出されたものとが同一であることを確かめることが適当であるとされている。 ただし、当該手続は、監査の終了後に行われるため監査手続には含まれないとされている。 (3) 財務諸表等の同一性確保 EDINETで提出する有価証券報告書等についても、監査の対象とした財務諸表等との同一性が確保されていることを確かめるために、監査人は、監査の対象とした財務諸表等の記載事項とEDINETで提出されたものとが重要な点で同一であることを確かめることが望まれるとされている。 ただし、当該手続も監査の終了後に行われるため監査手続には含まれないとされている。 (4) 四半期等の取扱い 上記の監査上の留意点については、中間監査報告書及び中間財務諸表等並びに四半期レビュー報告書及び四半期財務諸表等についても同様の取扱いとするとされている。   2 IT委員会研究報告第44号 (1) EDINETの状況 平成25年9月17日から稼働したEDINET(以下「新EDINET」という)では、XBRLの対象範囲が拡大し、財務諸表本表から、注記を含めた有価証券報告書等全体となっている。 当該XBRLの対象範囲の拡大には独立監査人の監査報告書(中間監査報告書及び四半期レビュー報告書を含む)も含まれている。 (2) 監査人の留意事項 「新EDINETで提出する監査報告書と監査報告書の原本との一致の確認」に関して、「新EDINETで提出した後」について、監査人はこれまでと同様に新EDINETで提出された監査報告書と監査報告書の原本との記載事項が同一であることを確かめることが適当であると述べられている。 また、「新 EDINETで提出する財務諸表等と監査済財務諸表等との一致の確認」として、監査人は従前と同様に提出会社による新EDINETでの提出後の財務諸表等が監査済財務諸表等と重要な点で同一であることを確かめることが望まれると述べられている。 (3) XBRLデータが訂正された場合の監査上の取扱い 前述の審理通達第1号において、XBRL データが訂正された場合の監査上の取扱いが示されている。 従来は、XBRLデータのうちEDINETで表示されない内容について誤りがあった場合には、訂正報告書ではなく、「XBRLの修正」として修正後のXBRLデータとともに提出していた。 平成25年8月に公表されたEDINET概要書では、インラインXBRLで作成された提出書類の訂正報告時には、訂正報告書とともに、訂正後のXBRL形式書類を構成するファイル一式(提出者別タクソノミ、報告書インスタンス及びマニフェストファイル)を再提出することとされている ただし、監査の対象となった財務諸表自体を訂正する必要がないときは、XBRLデータは監査の対象に含まれていないため、当該誤りを原因として提出される訂正報告書等については、その内容に対して監査を実施する必要がないことは従前と変わらないと述べられている。 (4) 適用時期 XBRLで作成された有価証券報告書については、平成25年12月31日以後に終了する事業年度に係るものから適用されている。 四半期報告書又は半期報告書については、平成26年1月1日以後開始する事業年度に属する四半期又は半期に係るものから適用されている。 (了)

#No. 65(掲載号)
#阿部 光成
2014/04/21

《速報解説》 国税通則法第74条の9の改正に係る「国税通則法関係通達の一部改正」等について~税務代理人のみへの事前通知が可能に~

 《速報解説》 国税通則法第74条の9の改正に係る 「国税通則法関係通達の一部改正」等について ~税務代理人のみへの事前通知が可能に~   税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝   1 はじめに 去る3月20日に成立し、同31日に公布された「所得税法の一部を改正する法律」において、国税通則法第74条の9《納税義務者に対する調査の事前通知等》の一部が改正された。 具体的には、平成23年12月の改正国税通則法では、調査の事前通知は納税者と税務代理人の双方に対して通知することとされていたが、平成26年7月1日以後に行う事前通知については、「税務代理権限証書」に納税者の同意が記載されている場合には、税務代理人に対してすれば足りることとされた。 本稿では、この改正に伴って公表された「国税通則法第7章の(国税の調査)関係通達」の改正点、税務代理権限証書の様式変更、「税務調査手続に関するFAQ(税理士向け)」の内容を見ておきたい。   2 国税通則法第74条の9の改正点 具体的には、第5項として、次の規定が挿入されることとなった。 この規定に伴い「税務代理権限証書」の様式が改められ、「調査の通知に関する同意」が記載されていれば、納税義務者と税務代理人の双方に行うこととされていた税務調査の事前通知は、税務代理人にすれば足りることとなった(「国税通則法第2章の2(国税の調査)関係通達7-1」)。 なお、本制度は、平成26年7月1日以後に行う事前通知から適用される。   3 税務代理権限証書の様式変更について 改正された税務代理権限証書には、以下の変更が加えられた。 〈改正後の「税務代理権限証書」〉   なお、改正された税務代理権限証書は、平成26年7月1日以後に提出する場合に使用することとされている。 (1) 過年分に関する税務代理 新たに「過年分に関する税務代理」についてのチェックボックスが設けられ、ここに依頼者がチェックを附すことによって、税務代理を依頼する税目については、過年分に関しても、調査に際して税務代理を委任することができることとされた。 (2) 事前通知に関する同意 上記国税通則法79条の9第5項に対応するため、同じく、「調査の通知に関する同意」についてもチェックボックスが設けられ、税務代理を委任した事項(過年分を含む)に関して調査が行われる場合には、依頼者への通知は、税務代理人に対して行われることに同意することができることとされた。 (3) 税務代理の対象に関する事項の様式変更 旧様式では、税目を書きこむこととなっていたが、新様式では、以下の4税目があらかじめ印刷されており、それ以外の税目について記入することとなっている。   4 「税務調査手続に関するFAQ(税理士向け)」の改正ポイント 国税通則法第74条の9の改正に伴い、追加され又は改訂された「税務調査手続に関するFAQ(税理士向け)」の中から、注意したい項目をいくつかピックアップする。 (1) 平成26年6月30日以前に税務代理権限証書を提出する場合〈問2・問5〉 改訂前の税務代理権限証書に「事前通知に関する同意」を記載することは可能であり、「2 その他の事項」欄に以下の記載を行うことに注意する。 (2) 相続税に関する税務代理権限証書〈問4〉 相続税については、他の税目と異なり、翌年分等の申告がないため、納税者から「事前通知に関する同意」を得た場合には、速やかに「同意を記載した税務代理権限証書」を再提出する必要がある。 (3) 新たに税務代理を委任された場合〈問7〉 納税者が過年分に関しても税務代理を委任し、事前通知に関する同意をしている場合には、提出する税務代理権限証書の「過年分に関する税務代理」及び「調査の通知に関する同意」のチェックボックスにチェックを附することによって、前任の税務代理人が税務代理権限証書を提出していた場合であっても、過年分の調査が行われる場合の税務代理を委任することができる。 平成26年6月30日以前に税務代理権限証書を提出する場合には、改訂前の税務代理権限証書の「2 その他の事項」欄に以下の記載を行うことに注意する。 (了)

#No. 65(掲載号)
#米澤 勝
2014/04/17

Profession Journal No.65が公開されました!~お薦め記事のご紹介~

2014年4月17日(木)AM10:30、Profession Journal  No.65 が公開されました。 Profession Journalの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》については随時公開してまいります。 Web情報誌 Profession Journalは、プロフェッションネットワークのプレミアム会員専用の閲覧サービスです。 Profession Journalについての詳細はこちら。 バックナンバー一覧はこちら。

#Profession Journal 編集部
2014/04/17

日本の企業税制 【第6回】「課税ベース各論」

日本の企業税制 【第6回】 「課税ベース各論」   一般社団法人日本経済団体連合会 経済基盤本部長 阿部 泰久     1 はじめに 政府税制調査会・法人課税ディスカッショングループでは、早くも法人税課税ベースの拡大の議論が進められている。 3月31日に開催された第2回会合では、欠損金繰越控除制度と受取配当等の益金不算入制度につき議論された。4月14日には減価償却、政策税制(租税特別措置法)がテーマに上げられている。 そこで、課税ベースの各論として、これらの問題の概要と、現時点における経団連の見解を明らかにしておきたい。   2 繰越欠損金 法人は継続的に事業を営んでいることから、ある事業年度の欠損金額を他の事業年度の利益金額と通算せずに、利益の生じた事業年度についてだけ課税するならば、税負担が過重となる。 欠損金の繰越控除制度については、どの国にも存在しているが、繰越期間をみると、先進国の中でも欧州主要国の無制限、米国の20年に比べ、日本の現行制度9年は非常に短い。 現行80%である繰越控除額の使用制限の引下げについては、繰越期間延長とセットで考えてはどうかとの主張がなされているが、「8割×9年間=6割×12年間」などという単純な議論はできない。 欠損金の繰越控除に制限を設けているのは、主要国ではドイツのみであるが、ドイツでは繰越期間が無期限であることから、わが国の欠損金の繰越期間について、大幅な延長が必要である。 また、繰延税金資産のある企業への会計上の影響も念頭に置いた議論が必要である。 なお、日本の欠損法人割合が70%という数字が取り沙汰されているが、その原因の一つとみられるのは、米国よりも多い日本の課税対象法人数であり、その主因である法人成りであると考えられる。 政府税調で示された財務省資料では、米国のデータにおいて法人税が課税されない“S法人”が含まれている一方、日本のデータにおいては、法人税が課税される法人のみが対象となっていたが、S法人の欠損は個人の損失として処理されるため、S法人自体には繰越欠損金は生じることはなく、繰越欠損金の損金算入後の欠損法人の数をカウントするにあたっては、S法人を対象にするのは誤解を招く恐れがある。 法人税が課される普通法人のみを見ると、米国も欠損法人割合が70%となり、日本と類似する。 【米国における法人の状況】 さらに、欠損法人が全く税金を払っていないかのごとく認識されがちだが、欠損法人でも、固定資産税、事業所税、住民税均等割など、所得に関わらず負担すべき税が多いことにも留意すべきである。 【所得に関わらず法人が負担する税の国際比較(対税収総額比)】   3 受取配当益金不算入 法人擬制説では、法人段階で課税された法人税相当額を、配当を受けた個人の段階で所得税から控除する必要がある。 内国法人と個人株主の間に他の法人が株主として存在するときは、中間段階にある法人が受け取る配当にそのまま課税すると、個人段階で所得税から控除する法人税相当額を控除する際に、中間段階で法人税が課された回数に応じてその都度配当控除額を定めなければならないが、そのような計算は不可能であることから、法人が受け取る配当は益金の額に算入しないことで解決している。 現行、持株比率25%未満の株式に係る配当については、50%しか益金不算入を認められていないが、株式保有によって一定の支配や影響力を持ちつつ、事業を展開し、配当で回収することは、資本主義下における当然の経営手法であり、25%未満であっても、他企業とのアライアンス確保や、インフラ事業のように当局による持株制限がある場合もあるので、現行25%で益金不算入制限を区切る考え方には、経営感覚として違和感がある。 また、英国、ドイツなどでは出資比率に関わらず益金不算入とされており、イコールフッティングの確保という観点も重要と考える。 経営上の要請ではなく、ポートフォリオとして保有している分であるとすれば、大量保有報告の基準である5%以下がせいぜいである。   4 減価償却制度 法人が事業に使用する固定資産を取得するために支出した費用の額(取得費)は、その固定資産が事業のために使用されることにより年々、減価する部分に相当する金額を費用として計上することが合理的である。 減価償却については、期間差異に過ぎず、現行の200%定率法を廃止し、定額法一本としても全法定耐用年数内で損金とできる額は変わらないとの見方もされているが、投資コストの早期償却は企業の国際競争力の観点からは軽視できない。 また、減価償却制度については、平成19年度改正において、250%定率法導入、残存価額、償却可能限度額廃止などの大改正が行われたのにもかかわらず、平成23年度改正では、200%定率法へと変更されている。 頻繁な制度改正は、企業の投資計画にも悪影響をもたらすものである。   5 政策税制 政策税制については、各税制措置の内容が政策目的に沿ったものか検証が必要である。 特に、国際標準ないし国際的な動向に沿い、国際的イコールフッティングを実現するために不可欠な制度は恒久化すべきである。 (1) 研究開発税制 諸外国では、法人税率の引下げと研究開発税制の継続・深堀りを同時に実施しており、控除上限・繰越期間等日本よりも優遇されている。また、日本のように政策税制としてではなく、本法で恒久化されている例も多い。 日本が科学技術立国を標榜する以上、成長戦略を実行する上で企業の研究開発は生命線であり、研究開発投資を継続していく上で、特に恒久措置となっている総額部分は、不可欠の制度であり、縮減は絶対に行うべきでない。 (2) 原料用途免税 ナフサ等原料用途については免税が国際標準となっている中、各国とも本則化されているにもかかわらず、日本では「期限の定めのない」租税特別措置に留まっている。 (3) 減耗控除 わが国経済が持続的な成長を実現するためには資源・エネルギーの安定供給の確保が重要であるが、近年は探鉱開発費の高騰、資源獲得競争の激化、国際資源メジャーの寡占化、資源国のナショナリズムの高揚などにより、資源の安定供給確保は以前に比べ、格段に困難さを増している。 減耗控除制度、海外減耗控除制度ともに3年間の期限付きで創設され、直近では平成25年度税制改正において延長・拡充が行われたが、エネルギー資源に乏しい我が国において必要不可欠な制度である。 (4) トン数標準税制 主要海運国においては、1996年以降、トン数標準税制の導入が相次ぎ、同税制は海運業界の世界標準となっている。 わが国においても2008年より適用対象を日本船舶に限定したトン数標準税制が導入され、2013年4月からは一定条件を満たした外国船舶(準日本船舶)にも適用対象の拡大が図られたが、一定の条件の下、全運航船(自国船舶・外国船舶)が適用対象となる諸外国と比較すると依然として適用割合が低い状況となっており、徹底した国際競争条件均衡化の観点からの改善が不可欠である。 *  *  * 政策税制の見直しについては、あくまでも政策目的と効果の検証がなされることが前提であり、財源策として考えることは問題であると考える。 (了)  

#No. 65(掲載号)
#阿部 泰久
2014/04/17
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