貸倒損失における税務上の取扱い 【第13回】 「子会社支援のための無償取引⑨」 公認会計士 佐藤 信祐 第6回から第12回までにおいて、無利息貸付け、低利貸付けにおける判例分析を行った。 第13回目においては、無利息貸付けにおける貸方側の処理、すなわち、収益認識についての解説を行い、第14回目においては、借方側の処理、すなわち、寄附金認定についての解説を行うことにより、法人税基本通達9-4-2の基本的な考え方について解説を行う。 7 子会社支援のための無償取引における法人税法上の取扱い (1) 借方側の処理 ① 法人税法第22条第2項の考え方 清水惣事件で明らかになったように、無利息貸付けを行った場合には、実際に会計上はこのような仕訳が行われないものの、以下の仕訳が行われたと仮定して、法人税の課税所得の計算を行うことになる。 そもそも無償取引について収益を認識する目的及び根拠に関する学説としては、二段階説(有償取引同視説)、同一価値移転説、キャピタル・ゲイン課税説、適正所得算出説、限定費用対応収益認識説等があるが、学者の中でも統一見解はない。 また、無償取引のうち、どの部分について収益を認識すべきであるかという点についても、寄附金課税がなされる場合に限定すべきであるという限定説と、そのような限定を設けるべきではないという無限定説に分かれている。 清水惣事件の控訴審判決がどの学説に基づくものであるのかは明らかではないが、その後の法人税基本通達9-4-2において、合理的な再建計画がある場合のような一定の要件を満たす場合についてのみ寄附金としないという通達が定められたことを考えると、二段階説(有償取引同視説)及び無限定説を採用したい。 つまり、無償取引を通常の対価で行う取引(第一段階)と、受領した対価を相手方へ贈与する取引(第二段階)の取引に分けて考える学説である。 すなわち、上記の仕訳は以下のように分けられることになる。 そうなると、無利息貸付け以外の役務提供についても同様に解され、すべての無償取引及び非時価取引については、適正な価額で取引を行った場合と同じ金額が益金の額に算入されることになる。 このことは、所得税法や消費税法の考え方と全く異なるものである。所得税法においては、同族会社等の行為計算の否認が適用される場合に限り、収受すべき利息について所得税の課税対象となり、消費税法においては、対価のない取引であることから課税対象にはなり得ない。 これは、法人税法第22条第2項が「無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引」を課税対象としているためであり、他の税目に比べて大きな特徴であるということができる。 ② 法人税法第22条第4項の考え方 なお、「実際に会計上はこのような仕訳が行われないものの」と解説したが、法人税法第22条第4項に定めている「第2項に規定する当該事業年度の収益の額及び前項各号に掲げる額は、一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとする。」という規定との整合性が気になるところではある。 この点につき、岡村忠生教授は、 と解説した上で、 と指摘されている。 すなわち、この考え方を突き進めれば、別段の定めのある法人税法第37条に該当する場合に限り、法人税法第22条により無償取引に対して収益を認識するという限定説が採用されることになる。 これに対し、無償取引を行った場合には、法人税法第22条第4項に規定する「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」が適用されないという考え方も存在するが、岡村忠生教授が指摘されるように、条文形式上はそのように解釈することが難しい。 このように、清水惣事件から30年以上が経過するにもかかわらず、個人的には納得感の得られる見解に出会っていないというのも事実である。 しかしながら、個人的には、法人税法第22条第4項に規定する「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」を広く捉えるのであれば、うまく整理できるのではないかと考えている。 過去の判例や課税実務においては、一般的な公認会計士が想定する「あるべき会計処理」とは異なる税務処理が行われていることも少なくなく、法人税法第22条第4項が一応の指針を示したに過ぎない規定であると思われることも少なくないからである。 もともと、法人税法第22条第4項の規定は、昭和42年において法人税法の簡素化の一環として設けられた規定に過ぎないということを考えれば、別段の規定がないことを理由として、法人税法の制度趣旨を無視してまで、企業会計上の処理が何の調整も行わず、そのまま法人税の課税所得計算に反映されると解釈するのは行き過ぎなのかもしれない。 このように、法人税法第22条第4項の規定内容については、かなり悩ましい問題である。 なお、本連載はあくまでも貸倒損失についての解説をすることを目的としているため、法人税法第22条第4項に対する詳細な分析はいずれ別の機会にさせていただきたい。 ここでは、無限定説に従って、無利息貸付けを行った場合には、すべてのケースにおいて、法人税法第22条第2項を適用することにより、いったん受取利息が計上され、借方側の処理をどのようにするのかという点については、第14回で解説する法人税法第37条の問題であるという点をまずはご理解いただきたい。 (了)
〔税の街.jp「議論の広場」編集会議 連載56〕 平成26年1月1日以後の相続に係る 「2世帯住宅」の特定居住用宅地等の適用要件と事例解釈 税理士 竹内 陽一 1 平成25年度税制改正の背景 平成25年度税制改正において、小規模宅地等の特例における2世帯住宅の取扱いが見直された。 改正前の平成22年から平成25年までは、下記の事例のように、2世帯住宅は「構造上の区分」で判定されたが、この構造上の区分による判定は、納税者にとってわかりにくいものとなっていた。 それが平成25年度改正により、平成26年1月1日以後の相続からは、1棟の建物は「区分所有登記の有無」で判定されることとなった。 【参考事例】 (東京国税局課税第一部 資産課税課 資産評価官 (平成23年8月作成)「資産税審理研修資料」) 〈構造上区分された二世帯住宅の敷地に係る小規模宅地等の特例〉 2 改正後の特定居住用宅地等の適用要件等 上記の改正については、国税庁のパンフレット「相続税及び贈与税の税制改正のあらまし(平成27年1月1日施行)」4ページの表がわかりやすい。 この表でみるように、2世帯住宅の要件についての緩和は、次の2点である。 3 国税庁から公表された事例1~3の検証 この「1棟の建物」についての下記3事例が、「「租税特別措置法(相続税法の特例関係)の取扱いについて」の一部改正について(法令解釈通達)のあらまし(情報)」において公表された。 (1) 【事例1】区分所有建物の登記がされていない1棟の建物の敷地の場合 この【事例1】から【事例3】の特徴は、すべての事例において、根拠規定として、措令40条の2第9項(平成22年改正創設の旧第7項)により、建物の利用区分に対応して、土地について、利用部分を解説に入れているところである。 しかし、【事例1】と【事例3】においては、区分所有建物の登記がない、1棟の建物の敷地の場合であり、上記パンフレット記載のとおり、その敷地全体が特例適用対象地となるので、配偶者、同居親族、事例3の措法69条の4の第3項第2号ロの親族については、【事例1】、【事例3】のいずれにおいても、その敷地の全部を取得しても、その敷地の持分の一部を取得しても、その取得した部分は特定居住用宅地等に該当するので、措令40条の2の第9項に従って、文中のA部分とB部分に応ずる部分を考慮する意味がないのではないか。 【事例1】については、乙と丙の1/2共有となっているが、結論は、いずれかの単独所有でも、1/10と9/10の共有でも同じ結論と考える。 (2) 【事例2】区分所有建物の登記がされている1棟の建物の敷地の場合 【事例2】は、区分所有建物の登記がされている1棟の建物の事例である。 これは平成25年改正前の、構造上区分されている場合と同じで、改正前が構造上の区分、改正後平成26年適用から、区分所有建物の登記の有無に変わった。 このような登記は、丙の住宅ロ-ン控除などのためになされるようであり、結果として、相続において、配偶者乙はかなり不利な取扱いとなるので注意が必要である。 この事例で、配偶者乙は、被相続人の保有であった建物の区分所有登記と、その面積に対応する土地の1/2の共有持分を取得することになる。 この場合、解説においては、措令40条の2第9項を盾に、機械的にというか、算数的に「1/2×1/2=1/4」ということで、取得した土地持分の1/2しか特例宅地の適用がないといわれると、納税者として釈然としないと考える。 ここは、配偶者の取得した土地の持分が1/2である場合、その全部に特例の適用ができるといってよかったと思うが、そうはなっていないので注意が必要だ。 なお、この【事例2】が、敷地も建物と共に区分所有登記の場合は、配偶者の取得土地持分は、すべて特例の適用となる。 (3) 【事例3】区分所有建物の登記がされていない1棟の建物の敷地を措置法69条の4③二ロの親族が取得した場合 【事例3】は 【事例1】と同じ区分所有建物の登記がない1棟の建物であるが、 【事例1】と同じように、家なき子丙、同居親族乙のいずれが取得しても、単独取得でも、任意の持分の取得でも特例の適用となる。 なお、家なき子丙が入居し居住とあるが、家なき子丙には所有要件しかなく、居住要件はないので、この点は混乱させるだけではないか。 【参考】は、当初の解説では不十分として、2月26日付けで追加されたものである。措法69条の4第1項の被相続人の居住用宅地が措令40条の2第4項により拡大されたので、同居親族乙が生計一親族であっても、この居住部分に応ずる部分を家なき子丙が所得したとしても、この部分も特例対象である旨を明示している。 (了)
日本の会計について思う 【第3回】 「世界、アメリカ、そして日本の会計学会」 関西学院大学教授 平松 一夫 世界とアメリカが共催で国際会議 2014年2月20日~22日、アメリカ・テキサス州サンアントニオで、世界会計学会(IAAER)とアメリカ会計学会(AAA)国際会計セクションの共催で国際会議が開催され、日本からも9名が参加した。このことは普通ならありふれたことと受け止められるに違いない。 しかし、いま世界会計学会会長を務める私にとって、今回の共催は「感慨深い」と言っていいほど多くの意味をもっている。 AAAは、9,000名近い会員を擁する世界最大の会計学会である。しかも、そのうち約4分の1が外国の会員である。日本会計研究学会も会員数は1,900名と世界の中では大きい学会であるが、外国人会員はわずかしかいない。これだけからみても、アメリカ会計学会がいかに国際性のある学会であるかが想像できるであろう。 しかし、それが故の問題もある。 それは規模だけでなく、研究水準においてもAAAが世界をリードしているという自負心からか、AAAには時として「一国主義」が目立つのである。とりわけ数年前は、その印象が強かった。私がAAAの国際担当副会長を務めていた時、AAAの理事会ではIAAER無視の姿勢が目立った。AAAこそが世界のリーダーであり、これとは別にIAAERが存在することは必要ないと言わんがばかりであった。 その2つの学会が、共催で、会計学会を開いたのである。 現在、AAA会長はメアリー・バース教授。国際会計基準審議会(IASB)で最初の10年間ボードメンバーを務めた著名な国際派会計学者である。さらに、共催の役割を担った国際会計セクション会長のエリザベス・ゴードン教授は、IAAERで副会長を務めている。 今回よき関係で会議を共催できたのは、「人」と「時」を得たためといってよい。 世界会計学会の存在意義 そのようなわけで、2月21日の昼食会ではAAA会長のバース教授がスピーチを行い、22日の昼食会ではIAAER会長の私がスピーチを行った。 このスピーチで少し悩んだのが、どのような内容で話すのがいいかということであった。AAAとIAAERの以前の関係を知る人間としては、IAAERがAAAとは異なる大切な独自性をもつことを、話の中にうまく盛り込む必要があると考えたのである。 そこでまず、スピーチのテーマを「IAAERの存在意義:多様性と協働」とした。多様性と協働こそがIAAERの特徴であり、AAAとの違いであるという認識からである。 例えば、学会役員の構成を見ると、AAAの場合は当然ほとんどがアメリカ人であるが、IAAERの場合は18ヶ国と「多様性」が際立っている。AAAが国際的であるといっても、個々の会員レベルでは外国に行ったこともないという会員が結構多い。今回の共催によりその人たちも多様な世界と出会う機会を得たわけで、実際、今後もIAAERとの共催を続けてほしいという声が多く寄せられたと、国際会計セクションのゴードン会長から聞かされた。 IAAERのもう一つの特徴は、「協働」である。 裕福な学会として独自に企画を展開できるAAAとは異なり、IAAERの多くの活動は会計士団体や会計事務所などの支援を得て展開されている。IAAERはいくつかのテーマで研究支援を行っているが、その資金はいくつかの会計関係団体からの支援でまかなわれている。また、新興国の5人の有望な会計学者に対して学会参加のための経費を支援するなどの国際貢献を行っているが、これも会計事務所からの寄付によってまかなわれている。 協働は資金面にとどまらない。IAAERは国際財務報告基準(IFRS)財団と協力してIFRS教育の普及に尽力したり、国際会計士連盟の会議に世界の会計学会を代表してオブザーバーを出したり、また今回と同様に各国の学会と共催で会議を開催するなどしている。 IAAERには、世界会計学会だからこその存在意義があるのである。 世界会計学会の設立と日本 IAAERは1984年に設立された。2014年は設立30周年の記念すべき年に当たり、11月にはイタリア・フィレンツで世界会議を開催する予定である。 しかし、その設立のきっかけが日本にあることを知る人は少ない。 1987年、東京武道館で国際会計士連盟の会議が開催された。これに対応して京都国際会議場で世界会計教育者会議が開催された。当時の日本の会計界にとって、これは一大事であった。 日本会計研究学会では早稲田大学の染谷恭次郎先生を中心に、世界会議の開催に向けて全力を投入した。その時に課題となったのが、寄付を集めるために、国際会議として国から公認されることであった。そのためには日本の学会だけではなく、世界の学会が協力して開催する国際会議であることを示す必要があった。そこで染谷先生、中島省吾先生、その他多くの日本の先生方が力を合わせ、世界の協力を呼びかけられた。 こうして誕生したのがIAAERだったのである。 その後、藤田幸男先生もIAAERに貢献された。日本の会計学の先達が世界の会計学会で果たされた役割は、実に大きいものであった。 このことを忘れず先達の先生方に敬意を表し、感謝したい。 (了)
実務対応報告からみた 「従業員等に信託を通じて自社の株式を交付する取引」 (日本版ESOP)の取扱い 【第2回】 「会計処理及び注記の確認」 公認会計士 大矢 昇太 公認会計士 中村 真之 3 会計処理 (1) 従業員持株会に信託を通じて自社の株式を交付する取引(第3項)の会計処理 ① 総額法の適用 第3項の取引について、対象となる信託が、 の2つの要件を満たす場合、企業は期末において総額法を適用し、信託の財産を企業の個別財務諸表に計上することとされている(第5項)。 ② 自己株式処分差額の認識時点 信託による企業の株式の取得が、企業による自己株式の処分により行われる場合に、企業は信託からの対価の払込期日に自己株式処分差額を認識し、自己株式を消滅させることとした(第7項)。 これは、自己株式等会計基準及び同適用指針が、自己株式の処分を株主との間の資本取引であり、資本の払込の性格を有すると位置づけた上で、会社法上も自己株式の処分の効力は払込期日に生じるとされていることとの整合性が図られたものである。 ③ 期末における総額法等の会計処理 総額法とは、信託の資産及び負債を企業の資産及び負債として貸借対照表に計上し、信託の損益を企業の損益として損益計算書に計上することを意味しているが、以下のように総額法を適用することとしている(第8項)。 ④ 連結財務諸表における処理 総額法により個別財務諸表に計上した信託については、子会社または関連会社に該当するか否かの判定は不要であり、個別財務諸表における総額法の処理は、連結財務諸表作成上そのまま引き継がれる(第9項)。 (2) 受給権を付与された従業員に信託を通じて自社の株式を交付する取引(第4項)の会計処理 ① 総額法の適用及び自己株式処分差額の認識について 第4項の取引においても、期末において総額法を適用する点、自己株式処分差額を信託からの対価の払込期日に認識する点、また連結財務諸表における処理については、第3項の取引と同様の取扱いとしている(第10項、第11項、第15項)。 ② 従業員へのポイントへの割当等に関する会計処理 第4項の取引において、従業員へのポイントの付与時及び株式の交付時の会計処理については以下のとおり定めている。 1) ポイントの付与時 企業は、従業員に割り当てられたポイントに応じた株式数に、信託が自社の株式を取得したときの株価を乗じた金額を基礎として、費用及びこれに対応する引当金計上する。信託による自社の株式の取得が複数回にわたって行われる場合、従業員に割り当てられたポイントに関する費用及びこれに対応する引当金は、平均法又は先入先出法により算定する(第12項)。 この従業員へのポイントの付与時に使用する単価については、いつの時点の時価を利用するかについて第45項から第58項において検討されているが、受給権を付与された従業員に信託を通じて自社の株式を交付する取引は、将来自社の株式を従業員に交付することを約束する点でストック・オプションに類似した性質が認められることから、信託への資金拠出時の株価を基礎とすることが適当であると判断した(第55項)うえで、さらに、実務的には信託への資金拠出と信託による株式取得はほぼ同時に行われることが多い点に着目して、最終的には、第12項に定める方法が採用されることになった(第57項)。 2) 株式の交付時 信託から従業員に株式が交付される場合、企業は、信託が自社の株式を取得したときの株価に交付された株式数を乗じた金額をポイントの割当時に計上した引当金から取り崩す(第13項)。 4 開示 本実務対応報告の対象となる取引を行っている場合、以下の事項の注記及び取扱いが求められる。 ① 各期の連結財務諸表及び個別財務諸表における注記(第16項) なお、連結財務諸表における注記と個別財務諸表における注記の内容が同一となる場合には、個別財務諸表の注記は、連結財務諸表に当該注記がある旨の記載をもって代えることができるとされている。 ② 各期の株主資本等変動計算書に係る注記(第18項) ③ 1株当たり情報に関する取扱い及び注記(第17項) 5 適用時期等 本実務対応報告については、平成26年4月1日以降に開始する事業年度の期首から適用となるが、本実務対応報告の公表後最初に終了する事業年度の期首又は四半期会計期間の期首から早期適用することも認められている(第19項)。 なお、本実務対応報告の適用初年度の期首(早期適用した場合は当該適用初年度又は当該四半期会計期間期首)より前に締結された信託契約に係る会計処理については、本実務対応報告の方法によらず、従来採用していた方法を継続することもできるとする経過的な取扱いが定められており、遡及修正は必ずしも求められていない。 この場合、各期の連結財務諸表及び個別財務諸表において、以下を注記することとされている(第20項)。 (連載了)
過年度遡及会計基準の気になる実務Q&A 【第6回】 「過去の財務諸表と遡及適用」 公認会計士 阿部 光成 《解 説》 過年度遡及会計基準では、「遡及適用」、「財務諸表の組替え」、「修正再表示」、「遡及処理」の用語が用いられており、これらの定義を理解する必要がある。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅰ 定義 過年度遡及会計基準では、次のように定義している(過年度遡及会計基準4項)。 「遡及処理」とは、遡及適用、財務諸表の組替え又は修正再表示により、過去の財務諸表を遡及的に処理することをいう(過年度遡及会計基準27項)。 Ⅱ 遡及適用の会計処理 1 遡及適用 前述のとおり、「遡及適用」とは、新たな会計方針を過去の財務諸表に遡って適用していたかのように会計処理することである。 これは、正当な理由により会計方針の変更を行う場合に、過去の財務諸表に遡って、変更後の会計方針を適用することである。 遡及適用により、当事業年度の財務諸表と過去の財務諸表は同一の会計方針に基づいて作成されるため、原則として財務諸表本体のすべての項目(会計処理の変更に伴う注記の変更も含む)に関する情報が「比較情報」として提供されることになり、特定の項目だけではなく、財務諸表全般についての比較可能性が高まるものと考えられる(過年度遡及会計基準46項)。 つまり、遡及適用は、過去の財務諸表が誤っていたことから、それを正すために行うものではなく、財務諸表全般についての比較可能性を高め、情報の有用性を高めるために行うものである。 2 比較情報 連結財務諸表規則などが改正されており、次の「比較情報」の規定が設けられている。 比較情報は、基本的には、以下の2つの手続により作成されることになる。 〈比較情報のイメージ〉 Ⅲ 修正再表示の会計処理 過去の財務諸表が誤っていた場合、過去の財務諸表における「誤謬」の訂正を財務諸表に反映する処理を行うことになる。 これを「修正再表示」という(過年度遡及会計基準4項(11))。 「誤謬」とは、原因となる行為が意図的であるか否かにかかわらず、財務諸表作成時に入手可能な情報を使用しなかったことによる、又はこれを誤用したことによる、次のような誤りをいう(過年度遡及会計基準4項(8))。 つまり、修正再表示は、過去の財務諸表が誤っていた場合に、当該修正を反映し、正しい財務諸表を作成する処理のことである。 一方、遡及適用は、正当な理由による会計方針の変更について、変更後の会計方針を過去の財務諸表に遡って適用することであり、過去の財務諸表が誤っていたものに関する処理ではない。 Ⅳ 修正再表示と訂正報告書 金融商品取引法上、訂正報告書の制度があり、これと前述の修正再表示との関係を整理する必要がある。 これについては、監査基準委員会報告書第63号「過年度の比較情報-対応数値と比較財務諸表」の常務理事前書において次の記載がなされている。 このため、誤謬に関しては、比較情報のみの修正(修正再表示)で対応することは、現状では想定されておらず、訂正報告書の提出が求められることになると考えられる。 (了)
林總の 管理会計[超]入門講座 【第22回】 「病院経営を黒字化する『活動基準原価計算』の考え方」 公認会計士 林 總 病院が提供する付加価値とは何か? 医師の活動すべてにコストがかかっている 患者(=顧客)の満足とは (了)
経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第36回】 消費税に関する会計処理② 「期末決算時の会計処理」 仰星監査法人 公認会計士 大川 泰広 〈事例による解説〉 〈会計処理〉 ① 中間納付時 ② 期末決算時 (*1) 中間納付80,000 (*2) 仮受消費税等250,000-仮払消費税等100,000-仮払消費税等(中間納付)80,000=70,000 〈会計処理の解説〉 消費税の仕組みについて、前回、以下の図を用いて解説しました。 上図のとおり、事業者が消費者に代わって納付すべき消費税額は「預かった消費税」と「支払った消費税」の差額で求められます。 税抜方式を採用している場合、預かった消費税は「仮受消費税等」、支払った消費税は「仮払消費税等」で処理していますので、期末決算時においては、「仮受消費税等」と「仮払消費税等」の差額を求めることにより、納付すべき消費税額を算定することができます。 納付すべき消費税額は、「未払消費税等」として負債に計上します。計上した「未払消費税等」は消費税を納付したときに取り崩します。ちなみに、消費税の納付期限は事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内とされています。 消費税を中間納付している場合には、納付すべき消費税額の一部を既に払っていることになりますので、期末決算時に計上する「未払消費税等」から中間納付額を控除する必要があります。会計処理上は、納付時に中間納付額を「仮払消費税等」として処理しておき(「①中間納付時」の仕訳)、期末決算時にこれを含めて「仮受消費税等」と「仮払消費税等」を相殺することで、納付すべき消費税額が算定されます(「②期末決算時」の仕訳)。 なお、税込方式を採用している場合には、納付すべき消費税額を全額「租税公課」等の費用で処理します。 * * * 次回は、控除対象外消費税額について解説します。 (了)
内定・採用に関する「よくある質問」 【第1回】 「履歴書等の虚偽記載による採用取消しは認められるのか」 社会保険労務士 菅原 由紀 採用内定取消しの法的性格 新規学卒者については「学校を卒業」するという条件や入社日の到来という始期が付いていることから、最高裁(大日本印刷事件 昭和54年7月20日 最高裁二小判決)では採用内定について、就労の「始期付解約権留保付労働契約」が成立したものとその判断を示している。 一般的には、会社が採用選考の結果、学生に対して、内定通知書と誓約書等を交付し、学生が会社に誓約書等を提出した段階等で採用内定となると解されている。 採用内定取消しが認められるのは、上記の最高裁判決においても と判示している。 誓約書の記載事項 採用内定時に学生が会社に提出する誓約書等には、所定の時期に間違いなく入社することのほかに、次のような内定取消事由が列挙され、これに該当する場合には、採用が取り消される旨が記載されているケースがほとんどだと考えられる。 前述の通り、「始期付解約権留保付労働契約」とは、採用内定によって労働契約の効力は発生しているとはいうものの、採用取消事由が生じた場合には、会社はこの労働契約を解消する権利を留保していることになる。 したがって、誓約書等に記載されている採用内定取消事由が発生した場合、会社は留保されていた解約権を行使することができるとされている。 「客観的に合理的と認められる正当な事由」とは しかし、会社側からの内定取消しについては、誓約書等の内定取消事由のすべてが直ちに適用されることが許されるわけではなく、「客観的に合理的な理由が存在し、社会通念上相当と是認される場合」に限られる。 具体的には、卒業予定だった内定者が単位不足で卒業できず、4月1日からの就業が不可能な場合には、内定取消しもやむなしとなるであろう。 つまり、採用内定の取消しは、会社が、採用内定当時には知ることができず、また知ることが期待できないような事実であって、これを理由として採用内定を取り消すことが、留保解約権の趣旨・目的に照らして客観的・合理的と認められ、社会通念上相当と認められるものに限られているのである。 偽りの履歴書の記載への対応 虚偽記載については、事案ごとに判断されるものであるが、例えば、実際には取得していないMBAを取得していると偽ることは経歴詐称であり、一般的には「採用試験時に提出した書類に重大な偽りがあったとき」に該当し、内定取消しの事由に該当するのではないかと考えられる。 (了)
常識としてのビジネス法律 【第9回】 「契約に関する法律知識(その5)」 弁護士 矢野 千秋 1 公正証書 契約によく関係するものに、公正証書がある。 (1) 公正証書の効力 公正証書とは、公証人が当事者の嘱託を受け、契約等について作成した証書である。適法かつ有効な内容で、無能力による取消しのおそれのない契約であれば、いかなる内容の契約でも公正証書にすることは可能であるが、その内容を公正証書にするだけの実益がなければ意味がない。 「実益がある場合」とは公正証書の効力をうまく利用している場合をいうため、まずは公正証書の効力について述べる。 ① 債務名義としての効力 最も重要な効力であり、裁判所の判決なしに強制執行ができるということである。 これには2つ条件がある。 まず、一定の金額の支払い又は他の代替物若しくは有価証券の一定の数量の給付を目的とするものに限られる。公証役場で1時間程度で作成して判決の代わりになるのであるから、シンプルな金銭等に限られる。 次に、債務不履行の場合直ちに強制執行に服する旨の記載、執行認諾文言が必須である。私的自治の例外である公証人の前で認めたのであるから証明力は抜群、しかも「強制執行されてもいい」と言ったわけであるから、私的自治でその通りの効力を与えよう、となるわけである。 ② 証書の信用力を高める効力 作成手続の厳格性から、証書としての信用力が高く、後日紛争が生じても十分な証明力を有することになる。 ③ 第三者に対する効力 公正証書には確定日付の効力が認められているので、外観からは明確でなく、第三者から疑いを受けやすい法律行為の存在を明らかにするために公正証書が利用される。 (2) 公正証書の作成手続 公正証書を作成するには公証役場(全国どこの公証役場でもよい)へ当事者が出頭する必要がある(代理人に依頼することも可能)。 本人が出向く場合は本人の印鑑証明書(発行後3ヶ月以内のもの)、代理人に依頼する場合は、本人の委任状、印鑑証明書と、代理人の印鑑と印鑑証明書が必要である。なお、本人が法人の場合は、法人の代表者の資格証明書(商業登記簿謄本など)と代表者印が必要である。 前もって公証役場と連絡をとり、雛型などを入手して文書にしておき、公証人とアポイントをとって約束の日時に出頭することになる。費用、印紙代なども聞いて用意していく。 公証役場では原本を保管し、正本を交付してくれる。 2 契約書の用語、見出しなど (1) 及び、並びに、かつ、又は、若しくは ① 1段階の場合 「及び」と「並びに」は、英語でいうと一応「and」を意味し、同じ単語や事柄を単純に1段階でつなげるときには「及び」を用いる。「無効及び取消」などである。 3つの場合は、前のほうは読点「、」でつないで、最後に「及び」を使用する。つまり、「A、B及びC」となる。3つ以上あるときで限定しないときは「A、B、C等」と記載する。 ② 2段階の場合 小さなくくりの「無効及び取消」(意思表示に瑕疵がある場合)と「解除及び解約」(意思表示に瑕疵がない場合)を大きなくくりでつなげたいのであるが、ここで再び「及び」を使用すると、「無効及び取消及び解除及び解約」となり、大小の段階的な意味がわからなくなってしまう。 そこで、「並びに」という接続詞を使い、「無効及び取消並びに解除及び解約」とする。これにより前2者は瑕疵のあるくくり、後2者は瑕疵のないくくりであることが表せる。 このように、「並びに」は、大小2段階以上ある場合に大きなグループを結びつける接続詞である。 ③ かつ 「無効及び取消は意思表示に瑕疵がある場合の法効果である」という場合、「無効又は取消」としてもいいようにも感じる。このように「及び」が接続した双方を条件的に充たすのか否か必ずしも明瞭ではないので、連結される語が互いに密接不可分で、双方を充たすことを明瞭にしたいような場合に、「かつ」が用いられる。「東京23区内在住で、かつ、日本人に限る」などである。 ④ 又は、若しくは 「又は」「若しくは」は、英語でいうと「or」を意味する。1段階の場合は、「又は」を使用する。複数の内容を並べるときは、「A、B又はC」となるのは「及び」と同じである。2段階の場合は、大きな段階に「又は」を使用し、小さな段階に「若しくは」を使用する。「無効若しくは取消又は解除若しくは解約」となるわけである。 (2) 直ちに、速やかに、遅滞なく 急迫の程度に応じて、ニュアンスの違いがある。一番急迫性が強いのは、「直ちに」である。逆に一番急迫性が弱いのは、「遅滞なく」で、正当な理由又は合理的な事情による遅延は許されると解される。 「直ちに」と「遅滞なく」の中間の急迫性で使用されるのが、「速やかに」である。特に同一の契約書の中などでは急迫性に応じて使い分けられたい。 (3) 以上、超える、以下、未満 「以上」「以下」では、その数字に該当する場合を含み、「超える」「未満」では、その数字に該当する場合を含まない。「以」という文字が入っていたら、「含む」と考えればよい。 「我が国では20歳以上の者が成年者であり、19歳以下の者が未成年者である」「我が国では19歳を超える者が成年者であり、20歳未満の者が未成年者である」などである。 (4) 以前、以後、前、後 ① 「以前」「以後」と「前」「後」 「以前」「以後」も同じである。例えば、「平成23年3月31日以前は」「平成23年3月31日を含んで、それよりも前」を意味し、「平成23年10月1日以後」は「平成23年10月1日を含んで、それよりも後」を意味する。 そして「前」(まえ)「後」(ご)は、基準となる時点を含まない。 ② 「から」「まで」「より」 「以前・前」「以後・後」に類似した用語に「から」「まで」がある。これらはいずれも、基準となる時点を含む。「我が社の事業年度は、4月1日から(より)翌年の3月31日までである」などである。 「から」は方向を示すこともあり、「より」は方向や比較級を示すことがある。同一の契約書の中などでは使用法を一貫されたい。 (5) 場合、とき、時 ① 条件を表す場合 「~の場合は」「~のときは」という表現は、仮定的な条件を表すときに用いられる(予定外の事態の発生)。 「場合」と「とき」の使い分けについては、仮定的な条件が2つ出てくるときは、大きい方(前提となる条件)に「場合」を、小さい方に「とき」を用いる。 「セミナー申込キャンセルの場合で、セミナー開講日の3日前までにその旨を申し出たときはセミナー料金の半額を返還し、3日前までにその旨を申し出ないときは一切の払い戻しには応じられない」などである。 大小関係がなければ「単独で使うときは」、「単独で使う場合は」、このようにいずれも使われている。ただし、同一の契約書の中などでは使用法を一貫されたい。 ② 時点を表す場合 「とき」に関連して、漢字の「時」(とき)があるが、「時」とした場合は仮定的な条件ではなくて、時点を意味する(予定している事態の発生)。 「乙の倉庫に本件商品を納入した時、甲から乙に本件商品の所有権が移転するものとする」などである。ストレートに「時点」とする例もある。 (6) 同、前、次 ① 同 1つの「条項号」の中で、同じ法令名や同じ条項号が繰り返し出てくることがある。このとき、直前の法令名や条項号を指す場合に、「同」を使用する。「民法105条1項には・・・同法106条には・・・」「民法105条1項には・・・同条2項には・・・」などである。 ② 前 「前」は、直前の条項号を指す。「前条第1項には・・・」などである。第3条で第1条に言及したいときは「前々条」とはいわず、「(本契約)第1条」という。第3条で第1条及び第2条をまとめて指すときは「前2条」という。 ③ 次 「次」は、直後の条項号を指す。「次条第1項には・・・」などである。第1条で第3条について言及したいときは「次々条」とはいわず、「(本契約)第3条」という。第1条で第2条及び第3条をまとめて指すときは「次2条」という。 (7) 数字 一般的な分量の契約書では、「第1章」「第1節」などのグループ分けに使う「章」や「節」は、あまり使われていない。大分量の契約書になる場合には、「第1章 契約の成立」「第2節 当事者」などと章分けや節分けするものもある。 通常の分量の契約書は「条」が最大の単位であり、「第1条」「第2条」と通し番号にして表記する。 条の中で分ける、いわば次の小さい単位が「項」である。これもその条の中で「第1項」「第2項」と通し番号になる。表記は「第1項」と書いてもいいのであるが、単に「1」「2」と算用数字を書くのが通常である。そして第1項、つまり「1」は省略されるのが普通である(法律の条文の記載方法である)。 項の中でさらに細分する単位が「号」である。表記は「(1)(2)」としたり「①②」とするものが多い。 (8) 条文の見出し 見出しは付けても付けなくても構わない。ただ、付けるならすべての条文に付ける、付けないならすべてに付けないと、一貫させる。付ける場合、見出しは条文毎に付けるのが通常である(項や号には付けない)。見出しは、条文の内容がハッキリしているような場合に、その内容を変える力はない。その意味では内容に無関係である。 しかし、条文内容が不明瞭なような場合、内容の解釈判断を補う力(補充的効力という)を持つことはある。 (9) 句読点 まず句点(。)は、文章の終わりに必ず付ける。ただし、号などが名詞で終了する場合には付けない。「①当事者の破産」「②当事者の死亡」などである。 しかし、「こと」や「とき」で終わる場合には、句点を付けるのが原則である。「①当事者が破産したこと。」「②当事者が死亡したとき。」などである。 次に読点(、)はある意味自由度が高く、書き手の個性が反映され、はっきりしたルールはないが、主語の後(「甲は、」などである)、目的語の後(「乙に対して、」などである)、条件や期限を示す場合(「・・・の場合は、」「・・・までに、」などである)などに付けるのが通常である。 (了)
《速報解説》 「リース手法を活用した先端設備等投資支援スキームにおける 借手の会計処理等に関する実務上の取扱い(案)」(公開草案)について 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 平成26年3月7日付で、企業会計基準委員会は、「リース手法を活用した先端設備等投資支援スキームにおける借手の会計処理等に関する実務上の取扱い(案)」(実務対応報告公開草案第40号)を公表した。 これは、経済産業省が制定した「リース手法を活用した先端設備等導入促進補償制度推進事業事務取扱要領」(平成26年3月3日制定)3条7号におけるリース契約に基づくリース取引について、借手の会計処理等に関する実務上の取扱いを示したものである。 公開草案は、基本的に、「リース取引に関する会計基準」(企業会計基準第13号。以下「リース会計基準」という)及び「リース取引に関する会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第16号。以下「リース適用指針」という)に従って会計処理及び開示を行うことを提案している。 意見募集期間は、平成26年5月7日までである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 1 特徴 本スキームでは、リース期間中のリース料総額の現在価値が、リース事業者(貸手)におけるリース対象物件の取得価額の90パーセント未満とされ、当該リース期間は、リース対象物件の経済的耐用年数の75パーセント未満とされる。 リース物件について、事業会社(借手)に移転しないリスク及び便益は、リース事業者(貸手)及び基金設置法人が負担又は享受することとなる。 事業会社(借手)がリース期間終了後にリース対象物件をリース事業者(貸手)に返却し、当該リース期間終了後の翌日から起算して1年以内に、リース事業者(貸手)が当該リース対象物件について、見積残存価額を下回る金額で処分した場合、基金設置法人はその下回った金額の一部をリース事業者(貸手)に対して補塡する。 事業会社(借手)は第三者委員会による審査の結果を入手することを通じて、リース事業者(貸手)の計算利子率等の内容を入手できる立場にある。 2 範囲 経済産業省が制定した「リース手法を活用した先端設備等導入促進補償制度推進事業事務取扱要領」(平成26年3月3日制定)3条7号におけるリース契約に基づくリース取引であり、「リース手法を活用した先端設備等導入促進補償制度推進事業実施要領」(平成26年3月3日制定)第4の4に基づき基金設置法人とリース事業者(貸手)により締結された先端設備等導入支援契約に基づくものに係る借手の会計処理等を対象としている。 3 会計処理 ① ファイナンス・リース取引の判定基準は、他のリース取引と同様に、リース適用指針に基づいて行う。 ② 再リースに係るリース期間又はリース料を解約不能のリース期間又はリース料総額に含めるかどうかについても、他のリース取引と同様に、リース適用指針に従う。 ③ リース取引開始日後にリース取引の契約内容が変更された場合、ファイナンス・リース取引かオペレーティング・リース取引かの判定を再度行う(これ以外の場合、当該判定をリース期間中に再度行うことは要しない)。 ④ 変動リース料については、リース取引開始日において、借手により示されている合理的な想定稼働量を基礎とした金額により、リース会計基準及びリース適用指針に定めるリース料総額に含めて取り扱い、次のような場合に考慮されることになる。 ファイナンス・リース取引の判定 ファイナンス・リース取引と判定された場合の、リース資産及びリース債務として計上する価額の算定 リース料は、以下のいずれかとして設定される。 なお、公開草案に定めのない事項については、リース会計基準及びリース適用指針の定めに従って会計処理する。 4 開示 変動型又はハイブリッド型について、オペレーティング・リース取引と判定された場合、リース会計基準22項に定める解約不能のものに係る未経過リース料の注記に、貸借対照表日における借手による合理的な見積額に基づく変動リース料の未経過分を含める。 なお、公開草案に定めのない事項については、リース会計基準及びリース適用指針の定めに従って開示する。 Ⅲ 適用時期 適用時期は、公表日以後適用の予定である。 (了)