活力ある会社を作る 「社内ルール」の作り方 【第2回】 「就業規則を作る時に必要な視点」 特定社会保険労務士 下田 直人 〈就業規則は必要なくなるのか〉 前回は、「権利と義務で統治することの限界」というテーマで、「権利と義務」での統治はどんどん窮屈な会社を作っていくということを述べさせていただいた。 このやり方が進んでいくと という積極前向きな姿勢ではなく、 という消極的な組織が出来上がってしまう。 そんな社員の集まりでは、スピードが要求される現在に対応できない。 これからの世の中では、「権利と義務」による統治ではなく、「価値観」や「理念」をベースにした企業統治によって、 という前向きな組織風土が大切である。 それでは、「権利と義務」が詰まった就業規則は、必要なくなるのであろうか。 私はそのようには考えない。 そこで今回は、就業規則を作成する際に必要な視点について述べてみたい。 〈法律的観点から見た就業規則〉 就業規則は、従業員が会社で働く上で必要な労働条件や服務規律等を定めたものである。 労働基準法の観点からみると、常時10人以上の従業員(法的には「労働者」と言っている)を使用する事業場においては、作成し、従業員に周知し、労働基準監督署へ届け出る義務を負っている。 また、その内容についても、必ず記載しなければならない事項(絶対的記載事項)や社内にそのようなルールが存在するならば、文書化しなければならない事項(相対的記載事項)というものがあり、規則化しなければならないことが決まっている。 しかし、これは反対から解釈すれば、それだけしか書いてはいけないということではない。 つまり上記の項目さえ具備されていれば、それ以外のことを書いてもかまわないのである。 次に、労働契約法の観点からみると、「使用者が合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容は、その就業規則で定める労働条件によるものとする」としており、就業規則に定められた労働条件が会社と従業員の間の労働契約の内容になるとしている。 「労働契約の内容になる」ということは、そこに記載されていることは、会社も従業員も守る義務があるということだ。 つまり、10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を作成し、労働基準監督署に届出し、周知する必要があり、周知すればその内容が労働契約になるということである。また、10人未満のところであっても法律上の義務ではないが、作成し周知すれば、その内容が労働契約になりうる。 まずは、この法的な性質を知っておかなければならない。 〈法律外の観点からみた就業規則〉 次に、法律的なことは抜きにして就業規則を考えてみる。 就業規則とはルールだ。 何のためにルールが必要なのかといえば、組織を効率良く動かし、生産性を上げるためである。そのために必要なルールを就業規則で定めていくという視点が重要だ。 そう考えた場合、必然と始業・終業時刻や休憩時間、休日などのルールが出来上がり、生産性を上げる活動において不合理な事態が生じた場合のために、解雇や懲戒処分のルールが出来上がってくる。 私はこの感覚が非常に重要だと思っている。 多くの会社ではあまり「生産性向上のためのルール」ということに気を配らず、単に「法律で決まっているから」ということで、形だけの規則を作っていることが多いように感じられる。 結果的に出来上がるルールは同じかもしれないが、「生産性向上」という視点があれば、同じことを決めるのにもアウトプットが異なってくることがある。 例えば、休憩時間だ。 多くの会社では「12時から13時」を休憩時間としていることが多い。 なぜ、この時間を休憩時間にしなければならないのだろうか。 特に都会のお昼時は、どこのレストランも混雑する。席に着くまで10分並んで、料理が運ばれてくるまで10分待ってなどということは日常茶飯事だ。すると、これだけで貴重な休憩時間の3分の1が失われてしまうことになり、休憩時間にさらに疲労が増すことになる。 では、この休憩時間を「11時30分から12時30分」に変更した場合どうであろうか。 たった30分の違いでどこのレストランも並ばず席に着くことができ、ストレスなく料理も運ばれてくる。たったこれだけの違いで、心からリフレッシュでき、午後の仕事の生産性が高まると思われる。 単に「法律で決まっているから作る」という視点では、上記のような発想は浮かんでこない。 〈人間は機械ではない〉 そして、ルールを作るうえで忘れがちな視点が、「人間は機械ではない」という視点だ。 生産的に働くためには、効率ばかりを追求した無味乾燥なルールではダメだ。人は感情を持っており、人のパフォーマンスは感情に左右されることを忘れてはならない。 そこで、社員自身や家族に長期療養が必要になった場合の取扱いのルール(休職制度)などがルール化し、その会社に所属することでの安心感を醸成することになる。 また、人が感情を持っているということは、同じことを書くのであってもその表現の仕方で、捉え方が異なってくるということも忘れてはならない。 例えば、 という表現と という表現では、同じことを言っているが、受け取る側の印象は違う。 後者の方が、有給休暇の取得を促進している印象があるのではないだろうか。 実は、このようなところまで気を配って就業規則を作成することが非常に大事なのだ。 そしてそのようなルールを作る際の指標となるのが、「企業文化」や「価値観」「理念」なのである。 つまり、それらと照らし合わせながら、自社のルールのあり方や表現方法などを決めていくことが重要な時代になってきていると思うのだ。 (了)
親族図で学ぶ相続講義 【第9回】 「特別受益」 司法書士 Wセミナー専任講師 山本 浩司 [被相続人甲野一男 相続関係説明図] 上図のような相続事件が発生したとしましょう。被相続人は甲野一男です。 相続人は、配偶者と子供2人、一見、何の変哲もない相続事件です。 さて、甲野一男の相続開始時の財産の価額を金6,000万円としましょう。 相続人3名のうち、乙野花子が嫁入りのときに支度金として父(甲野一男)から金1,000万円の贈与を受けていたら、どうなるでしょうか? これが、特別受益の問題です。 乙野花子は「特別受益者」なのです。 この場合、民法は、乙野花子への贈与を相続分の前渡しと考えます。 そこで、次の計算式で3名の相続分を計算します(民法903条1項参照)。 以上です。 最後の数字が、各人の具体的な相続分となります。 こうして民法は、共同相続人間で相続分の具体的な公平を諮っているのですね。 さて、では、先の事例で、乙野花子の支度金が3,000万円だったらどうなるでしょう。 先の手順で乙野花子の相続分を計算すると、次の式となります。 (6,000万+3,000万)×1/4-3,000万=△750万円 はい。このようにマイナスになってしまいます。 では、この場合は、乙野花子は3,000万円のうち750万円を相続財産にお返ししなければならないのでしょうか? 民法は、これを否定します(民法903条2項) この場合、乙野花子は、相続分を受けることができませんが(相続分0円)、返金の必要はないのです。 では、この場合、甲野一男が残した金6,000万円の分配はどうなるのでしょうか? 以下、甲野一男の相続財産が金6,000万円相当の不動産(甲土地)であったとして、登記実務の考え方をご紹介します。 この場合、登記の申請に必要な相続関係書類の一部として、登記所に乙野花子の「特別受益証明書」を提供します。 次のような様式です。 ここに乙野花子さんが実印をついて印鑑証明書をくっつければできあがりです。 そこで、問題は、この場合に残る相続人である甲野花子と甲野一郎の相続分がどうなるかということです。 みなさん、考えてみましょうね。 ◆ ◆ ◆ では、解答発表です。 実際に登記申請書の冒頭部分を書いてみましょう。 はい。 これが正解です。 もともと、特別受益者がいないときは相続人3名の相続分の割合は次のようになります。 ですから、乙野花子の相続分がゼロのときは、上記の計算式を次のように変形するのです。 (了)
会社を成長させる「会計力」 【第1回】 「事業評価における共通のモノサシ」 島崎 憲明 《総合商社のパフォーマンスと高いROE》 2013年3月期の企業業績は、昨年12月の政権交代と同時に打ち出された安倍新政権の「アベノミクス」効果による円安・株高基調に後押しされた。 東京証券取引所第1部に上場する1193社(金融を除く)の約2割にあたる企業が過去最高益を更新したが、総合商社5社の業績は丸紅を除き、いずれも前年比減益となった。しかしながら、過去10年間のスパンでみた総合商社のパフォーマンスは、ダイナミックな経営改革の実行により持続的成長を示している。 多くの日本企業が苦戦を強いられた成長なき日本経済の下で、総合商社が好業績をあげている背景として、資源・エネルギー関連の収益が大きく寄与していることが指摘されるが、それよりも総合商社のビジネスモデルがこの10年間で大きく変化してきたことに注目すべきであろう。 私は、1993年から5年間は部長として、1998年から2009年までの11年間は取締役として、総合商社の経営改革に直接関与してきた経験がある。具体的な進め方に多少の違いはあっても、経営改革の根本には大きな差は無いように思う。 次の表は、総合商社5社の純利益とROEをまとめたものである。 2003年から2013年までの10年間の変化をみると、5社合計で純利益は8倍、ROEは2倍強と著しい改善がみられる。東証第一部1319社(金融含む)のROEは2013年3期が5.57%、2012年3期が4.79%であるから、2倍を上回る実績である。 《総合商社の経営イノベーション》 過去、総合商社は幾度となく危機に直面し、存在そのものが不要と言われた時もあった。1960年代の商社斜陽論、1980年代の商社冬の時代論、1990年代の商社崩壊論・商社不要論などである。 世界的に見ても類のない、極めてユニークな事業形態である総合商社は、その規模に比して収益性の低さから、幾度となくその存在そのものが問い直されたのである。 私はインサイダーとして、外野からの評論家的意見が必ずしも的を射たものではないと思いながらも、総合商社の収益性が保有する経営資源に比べて高くないことは事実として受け止めざるを得ないものであった。 総合商社は時代とともに環境の変化に対応して、その機能の高度化を図ることによって生き残り発展してきた。1990年代末から2000年代初めに各社が進めてきた経営改革の重要なところは、事業成果を全社共通のモノサシで評価し事業の集中と選択を積極的に進めたことにある。 住友商事は1998年から全社共通の経営指標として「リスク・リターン」の概念を導入した。一定の「リスク」に対して、どの程度の「リターン」をあげているかという収益性をみる指標である。 具体的には、資産額に各資産価値の最大下落率を意味する「リスクウエイト」を掛けて、最大損失可能性額である「リスクアセット」計測し、それから生み出される利益が資本コストを上回るレベルにあるかどうかを事業評価の基準として事業の集中と選択を進めた。 三菱商事は2001年からMCVA(Mitsubishi Corporation Value Added)、伊藤忠は2001年からRRI(Risk Return Index)、丸紅は2004年からPATRAC(Profit After Tax less Risk Asset Cost)、三井物産はPACC(Profit After Cost of Capital)を活用している。 総合商社が取り扱う商品は「ラーメンからミサイルまで」と言われるほど多岐にわたり、ビジネスモデルもトレードから事業まで国際的広がりのなかで展開されているが、それらの様々なビジネスの成果を全社共通のモノサシで測るというのは、商社経営の大転換であり、一種の革命でもあった。 それまでの商社ビジネスは、扱う商品も顧客もマーケットもそれぞれが異なるのであるから、同じ土俵で良し悪しを測ることは難しいと言われていたのである。 ビジネスは「リスクをとってリターンを得ること」が基本という、どのビジネスにも当てはまる普遍的な認識を持つに至ったのであるが、それまでの道のりは長かった。 《リスクを回避する経営から、リスクを取り・リスクを管理する経営へ》 伝統的な総合商社のトレードビジネスは、低マージン高ボリューム型の仲介的取引が中心であった。「取扱量は膨大になるが利益率は低い」「使用している資金のわりには利益が少ない」「バランスシートは大きいが利益は一ケタ低い」と言われる商売を長い間続けてきた。 1980年代に入り「トレード(商取引)から事業へ」「トレードビジネスの高度化」など多様化・高度化の方向を模索し始めた商社であったが、1990年代までは苦労の連続であった。各社ともその間の決算において、事業撤退などによる多額の損失計上を余儀なくされた。 それは「低リスク低リターン」取引から「高リスク高リターン」取引へとビジネスモデルが大きく転換しつつある時期でもあった。従来の伝統的なリスク管理は、できる限りリスクを回避する、貸倒れは発生させないために貸付先を厳選する管理が求められた。 これが、「リスクのないところにリターンはない」、「リスクとリターンはトレードオフの関係にある」という認識に変わってきたのである。 事業で100戦100勝はあり得ない、一定の確率で蒙る失敗事業からの損失を織り込んだトータルでどの程度のリターンを達成できるのかということである。ビジネスが抱えるリスクを定量化してそれをきっちりと管理する、事業の入口審査、モニタリング、出口戦略などを共通のモノサシで定量的に評価する経営である。 事業の集中と選択を積極的に進めた経営の成果が、上述したROEに表れていると思うのである。 次回は「共通のモノサシと会計」という観点で話を進めたい。 (了)
顧問先の経理財務部門の “偏差値”が分かる スコアリングモデル 【第13回】 「売上・売掛債権管理のKPI (その④ 滞留債権対応)」 株式会社スタンダード機構 代表取締役 島 紀彦 はじめに 今回は、売上・売掛債権管理を構成する業務プロセスから、滞留債権対応の基本を問うKPIを取り上げる。 前回まで解説したKPIは、いずれも「日数」や「枚数」を数えて回答する定量指標であったが、今回のKPIは、「はい」又は「いいえ」で回答する定性指標である。 KPIが設定された業務プロセスの確認 まず、経済産業省スタンダードで整理された業務プロセスを引用しながら、このKPIに対応する業務プロセスを押さえておきたい。 今回解説するKPIは、売上・売掛債権管理において、会社が担う「売上業務」、「債権残高管理」、「滞留債権対応」、「値引・割戻」という4つの一般的な機能のうち、債権残高管理と滞留債権対応の2つに関連する業務プロセスにおいて設定されている。 〈経済産業省スタンダード:売上・売掛債権管理で会社が担う機能〉 (経済産業省「経理・財務サービス スキルスタンダード」より) さらに、経済産業省スタンダードでは、債権残高管理と滞留債権対応に関連する業務プロセスを次のようにまとめている。 債権残高管理では、「期日別債権管理」という業務プロセスにおいて、期日を超過している原因を究明する。その原因を吟味し、必要に応じて、滞留債権対応に移る。 滞留債権対応は、「滞留債権報告」と「貸倒引当金計上」という2つの業務プロセスに大きく分かれる。滞留債権として特定した販売先に対して、取引量の見直し、決済条件の変更、取引停止等の対応策を策定した後、滞留債権報告を通じて社内で情報共有を図る。他方、経理財務部門は、適正に、貸倒引当金の計上を行う。 今回のKPIは、このような滞留債権対応という一般的な業務を安定的に運用する重要性に着目し、滞留債権の定義と対応手順を文書化しているか否かを問うものである。 〈経済産業省スタンダード:1.7.1期日別債権残高報告〉 〈経済産業省スタンダード:1.8.1滞留債権報告〉 〈経済産業省スタンダード:1.8.2貸倒引当金計上〉 (経済産業省「経理・財務サービス スキルスタンダード」より) 定義を理解する 調査項目の文言から、KPIの定義を確認しよう。以下、KPIの項目を再掲する。 「滞留債権」とは、形式的には、期日が到来しているのに未だ資金を回収していない債権をさす。もっとも、滞留債権に該当するか否かの判断は、会社とその販売先における具体的事情で異なるはずなので、より実質的に定義すれば、回収にあたり特別な保全行動が求められる債権をさす。 「対応手順」とは、滞留債権であると判断した販売先について、会社が対応すべき手順をさし、具体的には、与信審査で設定した信用リスクの内部格付、与信限度額設定、限度超過額管理、発生原因の特定方法、取引量の変更、回収条件の変更、保全行動の内容、貸倒見積高の算定、貸倒引当金の計上、貸倒引当金の取崩し等に係る手順を想定している。 KPIの背景にある価値判断 スコアリングモデルにおいて、このKPIを設定したのはなぜか。 このKPIは、滞留債権の発生額を認識し、発生原因に応じて適正に対応するため、規程を整備することが望ましいという価値判断に基づいて設定されている。 滞留債権の発生原因は、会計基準の差異、仮単価、クレーム、返品やキャンセル、支払能力の低下等を理由に販売先が売掛債権の全額を支払わないという外的要因が考えられる。保全行動が必要となるのは、このような外的要因によって発生する滞留債権である。 ところが、実質的には滞留債権ではないのに、滞留債権と同じような期日超過が発生することがある。例えば、情報システムが社内で分断されていることによる売掛金元帳と総勘定元帳の乖離、架空売上計上、売掛債権の回収金の横領等、会社が売上・売掛債権管理において整備すべき内部統制に不備があると、見かけ上は滞留債権として現れる。この場合、必要なのは、保全行動ではなく、会社の内部統制の再整備である。 したがって、発生原因が会社の外部の販売先にあるのか、会社の内部にあるのかを見極めて、販売先への確認、保全行動、社内調査等の対応を変える必要がある。 滞留債権の発生原因を特定した後、貸倒れの見積りを行うことになる。貸倒見積高の算定は、一般債権、貸倒懸念債権、破産更生債権の債権区分や、発生日や期日からの経過日数に応じた簡便な債権区分を利用し、その要件と方法を具体的に定めることが必要である。 また、直接減額による貸倒引当金の取崩しに係る承認は、その金額の正確性を担保するという観点だけにとどまらない。期日超過の発生原因が、売掛債権の回収金の横領等の社内の内部統制の不備に起因する場合、貸倒引当金の取崩しが回収金の横領の隠蔽に利用されることがあるため、それを予防するという資産保全の観点も必要である。 顧問先のKPIを測定してみる では、実際にどのような手続でKPIを測定するのか。 まずは、滞留債権に関して定めた文書を特定する必要があるが、どのような文書が考えられるだろうか。 例えば、経理規程を閲覧していただきたい。経理規程に、滞留債権の定義、滞留債権の発生を認識するために使う売掛金年齢管理表等の資料、原因特定の点検項目、与信管理方法、保全行動、債権区分の方法、貸倒引当金の取崩しに対する経理財務部門の承認が定められていることを確認することが考えられる。 さて、読者の顧問先の規程に、滞留債権の定義と対応手順は整備されていただろうか。 * * * 次回からは、「仕入・買掛債務管理」のKPIを取り上げる。 仕入・買掛債務管理を構成する複数のKPIのうち、まず「仕入計上」に関連する業務プロセスを評価するKPIから取り上げる。 (了)
税理士・公認会計士事務所 [ホームページ]再点検のポイント 【第4回】 「ホームページの管理会社は替えられる?」 データライズ株式会社 代表取締役社長 公認会計士・税理士 河村 慎弥 ホームページの管理会社を替えたい。 その理由として多いのは、すでにお話してきました「維持費」や「更新料」が高すぎる、というものです。 ここ10年くらいでホームページの維持費や更新料は劇的に下がりましたので、10年以上前の契約が続いていると、今となっては非常に高額な維持費や更新料を支払っているということもあります。 そこで、ホームページ管理会社を変更できるのかという話になるのですが、結論から言えば、通常は可能です。 ただし、第2回でご説明した「サーバー」や「ドメイン」の移管手続、前回ご説明した「CMS(シー・エム・エス)」で制作されているホームページなどの移管における問題、移管するホームページの著作権の問題などが生じ、事実上不可能と言わざるを得ない場合もあります。 このテーマは少々複雑なので、今回から3回にわたって解説したいと思います。 * * * まず今回説明するのは、サーバーとドメインの移管手続です。 「あなたの事務所のホームページ」を制作した業者(A社とします)は、サーバー管理会社と契約しています。その契約でレンタルしたサーバー(サーバーAとします)には、「あなたの事務所のホームページ」が記録されています。 そして、A社は「ドメイン管理会社」とも契約しており、そこに管理を任せている「あなたの事務所のドメイン」に「ある設定」をしてあります。 その設定とは というものです。 この「設定」があるために、誰かが「あなたの事務所のドメイン」のページを見ると、サーバーAに記録された「あなたの事務所のホームページ」が表示されるわけです。 * * * ホームページ管理会社の変更を「ホームページの移管」と呼びますが、このホームページの移管にあたり、「サーバーの移管」が必要となります。 次の図をご覧ください。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 つまり、現在の管理会社であるA社が契約しているサーバーAから、新たな管理会社であるB社が契約しているサーバーBに、「あなたの事務所のホームページ」を移さなければなりません。 これは、「あなたの事務所のホームページ」のデータを、サーバーAからサーバーBにコピーして、元のサーバーAからは削除するという手続で完了です。 これにより、B社が「あなたの事務所のホームページ」を管理できるようになります。 * * * 次に、「ドメインの設定変更」です。 先ほど述べたように、今まで「あなたの事務所のドメイン」のページを見ようとすると、サーバーAに記録された「あなたの事務所のホームページ」が表示されていたのを、今後は、サーバーBに記録された「あなたの事務所のホームページ」が表示されるように設定変更します。 これらの一連の作業は、B社がA社と連絡をとってやってくれるのが一般的です。B社に支払う移管手数料は、サーバー移管、ドメイン移管とも各々3,000円くらいかと思われます。 この金額は、B社が契約しているサーバー管理会社やドメイン管理会社に支払う移管手数料と、B社に必要な移管手数料の合計額です。そのため、サーバー管理会社やドメイン管理会社の移管手数料によって、大きく変動すると思われます。 * * * 次回は管理会社を変更する際のポイントとして「管理会社を変更する判断基準」についてご説明します。 (了)
酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第4回】 「ホステス報酬事件(その1)」 ~事案の論点~ 国士舘大学法学部教授・法学博士 酒井 克彦 1 ホステス報酬に係る源泉徴収税額が争点となった事例 (最高裁平成22年3月2日第三小法廷判決・民集64巻2号420頁) 租税法律主義の下では、条文に書いてある内容に忠実に従ったところで、租税は賦課徴収されることになる。しかし、条文の内容が十分に明確ではないとか、いくつかの解釈が可能となってしまうというようなケースは少なくない。 例えば、「期間の日数」に一定の数をかけて源泉徴収税額を算出するという規定があるとしよう。そこでは、この「期間の日数」というものをどのように理解すればよいのかという問題が起こり得る。「連続した日数」をいうのか、あるいはある一定の「期間」の中から対象となる「日数」をカウントするのか、というようにである。 租税法の条文解釈の手法には、「文理解釈」と呼ばれるものと、「目的論的解釈」と呼ばれるものがある。ところで、上記の問題を明らかにするためには、この2つの解釈手法のうちいずれが採用されると考えるべきなのであろうか。 そこで、今回から数回にわたって、パブクラブを経営する者が支払ったホステスに対する報酬に係る源泉徴収税額の計算をめぐる訴訟、いわゆる「ホステス報酬事件」を素材にして、租税法の解釈の仕方について考えてみたい。 2 ホステス報酬事件の概観 (1) 事案の概要 本件は、パブクラブを経営するX1及び株式会社X2が支払ったホステスに対する報酬について、源泉徴収税額が過少であるとして納税告知処分及び不納付加算税の賦課決定処分がなされたところ、X1ら(原告・控訴人・上告人)がこれを不服として訴えた事例である。 所得税法204条1項6号は、「キャバレー、ナイトクラブ、バーその他これらに類する施設でフロアにおいて客にダンスをさせ又は客に接待をして遊興若しくは飲食をさせるものにおいて客に侍してその接待をすることを業務とするホステスその他の者(以下この条において「ホステス等」という。)のその業務に関する報酬又は料金」の支払をする者につき、源泉徴収義務を課しているが、その税額計算は次のように行うこととされている(所法205二、所令322)。 以下の数式は、所得税法施行令322条を表したものである。この事件では、この数式内の「当該支払金額の計算期間の日数」の解釈が問題となった。 (2) 争点 所得税法施行令322条に規定する「当該支払金額の計算期間の日数」とは、ホステスが実際に勤務した日数をいうのか、あるいは報酬の支払期間に応じた全日数をいうのか。 (3) 判決の要旨 イ 東京高裁平成18年12月13日判決※(民集64巻2号487頁) ※上記の判旨は最高裁がまとめたものである。 ロ 最高裁平成22年3月2日第三小法廷判決 次回からこの事案について、深く切り込んでみたい。 (続く)
経理担当者のための ベーシック税務Q&A 【第5回】 「消費税率の引上げ」 ─指定日と経過措置の関係─ 仰星税理士法人 公認会計士・税理士 草薙 信久 1 消費税率の引上げ 消費税法の一部が改正され、消費税及び地方消費税を合わせた消費税等の税率が、以下のとおり2段階で引き上げられる予定です。 平成26年4月1日以降に行われる商品や製品の販売やサービスの提供等については、新税率(8%)が適用されます。ただし、契約の時期や内容等によっては、平成26年4月1日以降に行われる取引についても、旧税率(5%)が適用される経過措置が定められています。 2 施行日の前日までに仕入れた商品を施行日以降に販売した場合 経過措置が適用される場合を除き、新税率(8%)は平成26年4月1日以降の取引について適用され、平成26年3月31日以前の取引については旧税率(5%)が適用されます(改正法附則2)。 したがって、平成26年3月31日以前に仕入れた商品を平成26年4月1日以降に販売する場合には、この販売取引には新税率(8%)が適用されます。一方、商品の仕入は平成26年3月31日以前に行われていますので、この仕入取引には旧税率(5%)が適用されます(経過措置通達3)。 3 施行日前の契約に基づいて施行日以後に商品を販売した場合 平成26年3月31日以前に契約を締結している場合でも、経過措置が適用される場合を除き、平成26年4月1日以降の取引については、新税率(8%)が適用されます(経過措置通達2)。 4 工事等の請負契約に関する経過措置 平成25年9月30日以前に締結した工事等の請負契約に基づいて、平成26年4月1日以降に完成・引渡しが行われる場合には、旧税率(5%)が適用されます(改正法附則5③)。 なお、この経過措置は、一定の要件を満たす場合には必ず旧税率(5%)を適用する必要があります。詳しくは、「平成26年4月1日以後に行われる資産の譲渡等に適用される消費税率等に関する経過措置の取扱いQ&A」(国税庁)をご参照ください。 5 損益への影響 消費税は、製造・流通の各段階で商品や製品が販売される都度その販売価格に転嫁され、最終的に消費税を負担するのは消費者です。 消費税率の引上げに伴い、販売取引は経過措置が適用され旧税率(5%)で計算され、仕入取引は新税率(8%)で計算された場合には、この差額(3%)について事業者が負担するようにも思えます。しかし、消費税の納付税額は、売上に対する消費税額から、仕入に含まれる税額等を差し引いて計算します。 したがって、消費税が販売価格に適正に転嫁されている場合には、売上と仕入の消費税率の違いによる事業者の損益への影響はありません。 一方、実際には各段階で取引先との力関係等の理由で消費税の転嫁ができない場合が生じる可能性があります。この場合には、転嫁できなかった分は納税義務者である事業者の負担となりますので、経営に大きな影響を及ぼします。 このため、消費税率の引上げに際して、円滑かつ適正に転嫁ができるように「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」が成立しました。消費税率の引上げに際して、事業者が注意するポイントは、「消費税の転嫁対策特別措置法5つのポイント」(日本商工会議所)をご参照ください。 (了)
「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例5(法人税)】 税理士 齋藤 和助 《事例の概要》 平成24年3月期の法人税につき、代表取締役の退任に伴い支給した退職金1億2,000万円を、退職の事実がないとして税務調査により否認され、役員賞与として修正申告することになった。 また、平成24年分の代表取締役の所得税についても退職所得が給与所得とされ、修正申告となった。 これにより依頼者の法人税額2,200万円及び代表取締役の所得税額3,400万円が過大納付となり、損害賠償請求を受けた。 《賠償請求の経緯》 ・代表取締役である社長より、高齢のため、代表権を返上し、会長に退きたい旨の相談を受け、退職金の試算を依頼された。 ・税理士は社長の最終報酬、勤続年数、功績倍率等を加味し、最大で1億2,000万円と試算した。 ・会社は退職金1億2,000万円を社長に支給し、損金経理により申告した。 ・税理士は退職金として認められるための要件についても説明を行った(会社側は否定)。 ・前社長は代表取締役の退任後も役員報酬(退職前の月額120万円から50万円に減額)を受け、代表印を保管し、週2回ほど出社し以前同様会社業務の決済を行っていた。 ・退任時の議事録もなく、登記簿上も代表取締役のままであった。 ・税務調査が事前の通知により行われたが、当日は担当者のみで、税理士は立ち会わなかった。 ・上記事実を税務調査で指摘され、現社長及び前社長が共に調査官の前で認め、修正申告に応じたため、税理士は何ら反論することができなかった。 ・その後、適正な指導がなかったために修正申告になったとして、依頼者より訴えの提起がされた。 《基礎知識》 ◆役員の分掌変更等の場合の退職給与(法基通9-2-32) 法人が役員の分掌変更に際し退職給与として支給した給与については、その役員としての地位又は職務の内容が激変し、実質的に退職したと同様の事情にあると認められるものである場合には、不相当に高額である場合を除き、これを退職給与として損金算入することができる。 《税理士の落とし穴》 《税理士の責任》 仮に適正な指導がなかったとしても、高齢を理由に引退を決意した社長が、高額な退職金の支払いを受けてなお以前同様会社業務の決済を行うことは想定されない。また、議事録の作成は毎回会社で行っており、税理士が依頼を受けたことはない。 したがって本件は、税理士に責任はないと思われる。 しかし、税務調査が事前の通知により行われたこと、及び調査当日は担当者のみで税理士が立ち会っていないこと等から、税務当局の指摘に対し十分な対応がなされていたかに疑義が残るため、過失相殺の可能性もある。 《予防策》 [ポイント①] 説明した事実を書面に残す 分掌変更等の場合の退職給与として損金算入が認められるためには、少なくとも以下の説明、指導が必要であった。 今回の事例においては、税理士は上記説明を行ったと主張し、依頼者はこれを否定している。このような場合には、上記の説明した内容を書面に残し、署名等をもらい、証拠として残しておくことも必要である。 また、顧問税理士であれば、説明だけでなく、その後の指導も行うべきである。 [ポイント②] 税務調査には税理士が立ち会う 本件事例の場合、税務調査が事前の通知により行われたにもかかわらず、担当者のみの立ち会いで行われている。 本事例の場合、事実認定によるところが大きいことから、税理士が調査に立ち会っていれば、反論の余地もあったであろうことから、税務調査には税理士が立ち会うべきである。 (了)
相続税対策からみた 生前贈与のポイント 【第4回】 「不動産の名義変更と その取消しがあった場合の贈与税」 税理士法人タクトコンサルティング 税理士 山崎 信義 1 対価の支払いがないまま名義変更した場合の贈与税課税の原則 個人間で対価の支払いがないまま不動産の名義を変更した場合は、原則として変更により不動産を取得したとされる人が変更前の所有者から不動産を贈与により取得したものと推定され、贈与税課税の問題が生じる(相続税基本通達9-9)。 例えば、親(57歳)が所有する相続税評価額2,500万円の貸家を、対価の支払いのないまま、子(19歳)の名義に変更する所有権登記をした場合、親から子へ2,500万円相当の贈与があったと推定される。 この場合、親の年齢が65歳未満、子の年齢が20歳未満のため相続時精算課税が選択できず、暦年課税により贈与税が計算されることから、子に970万円の贈与税が課税されるおそれがある。 2 過誤等により名義変更した場合の贈与税の特例 上記1の事例で、「相続時精算課税の適用が受けられるので、贈与税はかからないと思っていた。970万円も贈与税がかかると知っていたら、貸家の名義変更はしなかった」というのが親と子の真意である場合、一律に贈与税を課税するのは酷といえる。 このため、国税庁では通達により、次のような救済措置を設けている。 それは、財産の名義変更や他人名義等により財産を取得する行為が、過誤に基づくものや軽率にされたものであり、かつ、取得者の年齢その他により、このような事実が確認できるときは、その贈与に係る最初の贈与税の申告、決定又は更正の日の前に不動産の所有権登記を変更前に戻す等して名義を元の所有者に変更した場合に限り、税務上は贈与がなかったものとされ、贈与税は課税されない、というものである(「名義変更等が行われた後にその取消し等があった場合の贈与税の取扱いについて」(以下「名義変更通達」)5)。 3 贈与契約の取消し等があった場合の贈与税の取扱い 不動産などの財産の贈与契約を締結し、登記名義も変更したものの、諸事情により当事者が合意して契約の取消しや解除が行われる場合もある。 例えば1の事例において、「多額の贈与税がかかるのであれば、贈与契約を取り消し、贈与がなかったものとする」というような場合である。 このような贈与契約の取消しや解除があった場合であっても、税務上は、その契約に係る財産の移転は贈与とされ、贈与税が課税されるのが原則である(名義変更通達11)。 ただし、次の要件をすべて満たし、かつ、税務署長が贈与契約に係る財産を贈与税の課税対象とすることが著しく負担の公平を害すると認める場合は、特例として贈与がなかったものとされ、贈与税は課税されないこととしている(「『名義変更通達』の運用について」4)。 なお、贈与契約の取消し又は解除により、その贈与に係る財産の名義を贈与者の名義に変更した場合は、その財産の移転は贈与契約の取消し又は解除に基づくものであることから、その贈与がなかったものとされるかどうかにかかわらず、税務上はその名義変更を贈与として取り扱われず、贈与税は課税されない(名義変更通達12)。 4 贈与税以外の注意点 不動産の名義変更とその取消し等については、上記2及び3の要件を満たすことにより、贈与税の課税を避けることができる。 しかし、登録免許税など登記費用の負担は避けられない。 さらに、名義変更とその取消し等が「不動産の取得」に該当すると判断される場合は、それぞれにつき不動産取得税が課税されるおそれもある。 いったん不動産の名義変更を行ってしまうと、たとえそれを取り消したとしても、課税の問題がつきまとう。 親族間で安易に名義変更を行い、あとで思わぬ税負担を発生させないためにも、事前の十分な検討が必要である。 (了)
教育資金の一括贈与に係る 贈与税非課税措置について 【追補②】 「新設された措置法通達のポイント(その2)」 ミレニア綜合会計事務所 代表税理士 甲田 義典 はじめに 【追補】の1回目では、「教育資金の一括贈与に係る非課税措置」(以下「本制度」という)に関して新設された通達(以下「新通達」という)について、それぞれの概要を解説したが、今回から内容を詳しく見ていくこととする。 今回取り上げる新通達の項目は、以下のものである。 【70の2の2-2】 外国国籍を有する者等に係る措置法第70条の2の2の適用 受贈者が外国国籍を有する者や国内に住所がない者であっても、本制度は適用可能であることが明らかにされている。 また、「『租税特別措置法(相続税法の特例関係)の取扱いについて』等の一部改正について(法令解釈通達)のあらまし(情報)」(以下「情報」)では、同じ贈与税の非課税の特例でも、措法70条の2(直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税)では、贈与により国内財産を取得した時に国内に住所がない受贈者は適用対象外であるため、本制度とは要件が異なることが留意的に明らかにされている。 さらに、外国国籍のある受贈者が本制度を適用する場合の取引金融機関への提出書類の取扱いと、国内に住所がない受贈者の「教育資金非課税申告書」の記載例が明らかにされた。 提出書類に関しては、本制度の適用上、取引金融機関へ「教育資金非課税申告書」の提出が必要となるが、その他、受贈者の戸籍謄本や住民票の写し等の書類で、以下の事項を証する書類の添付が求められている(措法70の2の2③、措令40の4の3⑫二)。 外国国籍のある受贈者の場合には、上記①~④を証明する手段として、受贈者の戸籍謄本や住民票の写し等の他に、役所でその受贈者の出生届が受理されていた場合には、役所が発行する我が国の戸籍法に基づく「出生届出受理証明書」や、外国政府が発行する上記①~④を証する書類を添付することも可能であることが明らかにされた。 次に、国内に住所がない受贈者の「教育資金非課税申告書」の記載例は、以下のとおりである(国税庁「情報」P4-6)。 【70の2の2-3】 直系尊属の範囲 措法70条の2(直系尊属から住宅取得資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税)の適用を受ける場合の直系尊属に関する取扱いは、措通70の2-1(直系尊属の範囲)に従うこととされているが、本制度においても措通70の2-1を準用することが明らかにされている(下図は国税庁「情報」P7)。 【70の2の2-4】 追加教育資金非課税申告書を提出することができない取扱金融機関の営業所等に追加教育資金非課税申告書が提出された場合におけるその申告書の効力 非課税枠1,500万円の範囲であれば、過去に「教育資金非課税申告書」を提出して本制度を適用していたとしても、その提出した取扱金融機関の営業所等へ「追加教育資金非課税申告書」を所定の期日までに提出した場合に限り適用可能である(詳細は本連載の【第3回】「適用を受けるために必要な手続とその留意点①(教育資金贈与時)」の「2(2)受贈者が追加で教育資金の贈与を受ける場合」を参照のこと)。 したがって、例えば、「A銀行甲支店」に「教育資金非課税申告書」を提出し、その後、異なる営業所等である「A銀行乙支店」や異なる取扱金融機関である「B銀行甲支店」に「追加教育資金非課税申告書」を提出した場合には、その提出された「追加教育資金非課税申告書」は本制度の効力を有しないことが明らかにされた。 ただし、本制度適用上の教育資金管理契約に基づく事務が他の営業所等へ移管した場合において、移管先の営業所等に「追加教育資金非課税申告書」が提出されたときは、この限りでない。 また、本制度を適用するにあたっては、まず「教育資金非課税申告書」が提出され、その後、「追加教育資金非課税申告書」が提出されるという提出の順序が重要となる。 この先後関係の判定に関しては、それぞれの申告書の取扱金融機関の営業所等における受理日付の早い順で行うことになる。 そして、効力を有しないこととなった「追加教育資金非課税申告書」に本制度の適用を受けるものとして記載された金額は、贈与税の課税対象となることが留意的に明らかにされた(下図は国税庁「情報」P9)。 【70の2の2-5】 教育資金非課税申告書又は追加教育資金非課税申告書に記載された非課税拠出額が1,500万円を超えていた場合等におけるこれらの申告書の効力 「教育資金非課税申告書」は、受贈者が既に取扱金融機関へ提出している場合には、受贈者と取扱金融機関との教育資金管理契約が終了するまでの間は新たに提出することができない。 また、非課税拠出額が1,500万円を超える「教育資金非課税申告書」の提出があった場合(以下②のケース)や、「追加教育資金非課税申告書」に記載された非課税拠出額が過去において既に受理された申告書の記載額と合計すると1,500万円を超えるものとなる場合(以下③のケース)には、取扱金融機関の営業所等はこれらの申告書を受理できないこととされている(措法70の2の2⑥)。 通達では、これらの取扱いに反して提出又は受理された申告書は、いずれもその効力を有しないことが明らかとされた。 なお、これら申告書の提出の先後関係の判定(受理日付の早い順)及び効力を有しないこととなった申告書に本制度の適用を受けるものとして記載された金額の税務上の取扱い(記載金額の贈与税の課税)に関しては、上述の措通70の2の2-4を準用することとなる。 また、情報では以下3つのケース別に、提出又は受理された申告書の効力に関して解説されている(下図は国税庁「情報」P11)。 【70の2の2-6】 郵便等により教育資金非課税申告書等の提出があった場合 この通達では、本制度に係る各種申告書を郵便や信書便で取扱金融機関の営業所等へ提出した場合には、その郵便物又は信書便物の通信日付印により表示された日において取扱金融機関の営業所等に受理されたものとすることが明らかにされた。 また、取扱金融機関の営業所等へ提出すべき領収書等を郵便又は信書便により提出した場合についてもこの通達を準用することとなる(領収証等の提出に関しては、本連載【第4回】「適用を受けるために必要な手続とその留意点②(教育資金支払時及び契約終了時)」の「2 教育資金の支払時」を参照)。 なお、この通達は、措通70の2の2-4又は70の2の2-5の効力を有しない「教育資金非課税申告書」又は「追加教育資金非課税申告書」の判定にも適用される。 * * * 【追補】の最後となる次回は、措通70の2の2-7~70の2の2-12の内容について、詳しく取り上げる。 (了)