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減損会計を学ぶ 【第2回】「減損会計の特徴」

筆者:阿部 光成

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減損会計を学ぶ

【第2回】

「減損会計の特徴」

 

公認会計士 阿部 光成

 

減損会計基準を理解するためには、同会計基準が設定された背景を理解する必要がある。

固定資産に関する会計手法として、減価償却がある(「企業会計原則」第三、五)。

減損会計基準の設定の背景を理解するために、まず、減価償却の考え方を整理し、次に減損会計を必要とした理由を考えてみる。
文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。

 

Ⅰ 減価償却

1 概要

「企業会計原則」は、減価償却について規定しており、固定資産に関する基本的な会計処理は減価償却と考えられる。

貸借対照表に記載する資産の価額は、原則として、取得原価を基礎とし、資産の種類に応じた費用配分の原則によって、取得原価は各事業年度に配分される(「企業会計原則」第三、五)。

有形固定資産は、当該資産の耐用期間にわたり、定額法、定率法等の一定の減価償却の方法によって、その取得原価を各事業年度に配分し、無形固定資産は、当該資産の有効期間にわたり、一定の減価償却の方法によって、その取得原価を各事業年度に配分しなければならないと規定されている(「企業会計原則」第三、五)。

2 減価償却に関する基本的な考え方

「企業会計原則と関係諸法令との調整に関する連続意見書 第三 有形固定資産の減価償却について」は、減価償却の最も重要な目的は、適正な費用配分を行うことによって、毎期の損益計算を正確ならしめることであると述べている。つまり、減価償却の基本的な考え方は、費用配分の原則に基づいて有形固定資産の取得原価をその耐用期間における各事業年度に配分することにある。

減価償却は所定の減価償却方法に従い、計画的、規則的に実施される。利益に及ぼす影響を考慮して減価償却費を任意に増減することは、正規の減価償却に反するとともに、損益計算をゆがめるものであり、認められない。

3 減価償却の方法

「企業会計原則」注解20は、固定資産の減価償却の方法として次の方法をあげている。

① 定額法:固定資産の耐用期間中、毎期均等額の減価償却費を計上する方法

② 定率法:固定資産の耐用期間中、毎期期首未償却残高に一定率を乗じた減価償却費を計上する方法

③ 級数法:固定資産の耐用期間中、毎期一定の額を算術級数的に逓減した減価償却費を計上する方法

④ 生産高比例法:固定資産の耐用期間中、毎期当該資産による生産又は用役の提供の度合に比例した減価償却費を計上する方法

 

Ⅱ 減損会計の必要性

前述のように、減価償却は固定資産の取得原価を、所定の減価償却方法に従って、計画的、規則的に各期間に費用配分するものである。

費用配分の原則に基づいて、固定資産の取得原価の一部を減価償却費として費用処理する一方、費用化されなかった取得原価については資産として貸借対照表に計上されることとなる。

減価償却では、固定資産を直接的に評価することが行われないこともあり、「固定資産の減損に係る会計基準の設定に関する意見書」(以下「減損会計意見書」という)では、次の問題点を指摘している。

 不動産をはじめ固定資産の価格や収益性が著しく低下している昨今の状況において、それらの帳簿価額が価値を過大に表示したまま将来に損失を繰り延べているのではないかという疑念

 のような状況が財務諸表への社会的な信頼を損ねているという指摘

 減損に関する処理基準が整備されていないために、裁量的な固定資産の評価減が行われるおそれがあるという見方

 国際的にも、近年、固定資産の減損に係る会計基準の整備が進められており、会計基準の国際的調和を図るうえでも、減損処理に関する会計基準を整備すべきとの意見

 

Ⅲ 減損会計の基本的な考え方

固定資産の減損とは、資産の収益性の低下により投資額の回収が見込めなくなった状態であり、減損処理とは、そのような場合に、一定の条件の下で回収可能性を反映させるように帳簿価額を減額する会計処理である(減損会計意見書三、3)。

減損会計意見書は、減損会計に関する基本的な考え方として次のことを述べている。

(イ) 事業用の固定資産については、通常、市場平均を超える成果を期待して事業に使われているため、市場の平均的な期待で決まる時価が変動しても、企業にとっての投資の価値がそれに応じて変動するわけではなく、また、投資の価値自体も、投資の成果であるキャッシュ・フローが得られるまでは実現したものではない。

(ロ) 事業用の固定資産であっても、その収益性が当初の予想よりも低下し、資産の回収可能性を帳簿価額に反映させなければならない場合がある。

(ハ) (ロ)のような場合における固定資産の減損処理は、棚卸資産の評価減、固定資産の物理的な滅失による臨時損失や耐用年数の短縮に伴う臨時償却などと同様に、事業用資産の過大な帳簿価額を減額し、将来に損失を繰り延べないために行われる会計処理と考えることが適当である。

(ニ) 金融商品に適用されている時価評価とは異なり、資産価値の変動によって利益を測定することや、決算日における資産価値を貸借対照表に表示することを目的とするものではなく、取得原価基準の下で行われる帳簿価額の臨時的な減額である。

これらの規定に鑑みると、減損会計は、

 収益性の低下による資産の回収可能性を反映するものであること

 金融商品に適用されている時価評価とは異なること

 取得原価基準の下で行われる帳簿価額の臨時的な減額であること

という特徴をもつものと解される。

「固定資産の減損に係る会計基準及び注解」や「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」(企業会計基準適用指針第6号)の規定を解釈する場合には、「Ⅱ 減損会計の必要性」と上記の基本的な考え方を理解することにより、その趣旨が理解しやすくなるものと考えられる。

(了)

「減損会計を学ぶ」は、隔週の掲載となります。

連載目次

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筆者紹介

  • 阿部 光成

    (あべ・みつまさ)

    公認会計士
    中央大学商学部卒業。阿部公認会計士事務所。

    現在、豊富な知識・情報力を活かし、コンサルティング業のほか各種実務セミナー講師を務める。
    企業会計基準委員会会社法対応専門委員会専門委員、日本公認会計士協会連結範囲専門委員会専門委員長、比較情報検討専門委員会専門委員長を歴任。

    主な著書に、『新会計基準の実務』(編著、中央経済社)、『企業会計における時価決定の実務』(共著、清文社)、『新しい事業報告・計算書類―経団連ひな型を参考に―〔全訂版〕』(編著、商事法務)がある。

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