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〔税理士・会計士が知っておくべき〕情報システムと情報セキュリティ【第1回】「最近の会計システム事情」

〔税理士・会計士が知っておくべき〕 情報システムと情報セキュリティ 【第1回】 「最近の会計システム事情」   公認会計士・税理士 小田 恭彦   会計システムとは 『最近の会計システム事情』というテーマであるが、そもそも「会計システム」とは何であろうか。 人によって思い浮かべるものは違うと思う。会計事務所のスタッフの方々は顧客の記帳代行に使用しているソフト、大企業の経理担当者の方々は自社で利用しているソフト、ソフトウエアベンダーのSEの方々は自社で販売しているソフトなど、それぞれの「会計システム」を思い浮かべるだろう。   狭義の会計システム まず簡単に「会計システム」を定義しておきたい。 「会計システム」という言葉に明確な定義はなく、機能範囲や規模の異なるさまざまなシステムを「会計システム」と呼んでいる。 ただ、共通しているのは、「仕訳を入力して、総勘定元帳、試算表、決算書を作成するためのシステム」という機能は必ず含んでいる点である。これが狭い意味での会計システムといえるだろう。 この機能だけであれば、わざわざ高価なシステムを購入する必要はなく、表計算ソフト程度でも実現できるかもしれない。ご存知のとおり、会計システムにはそれ以外にもさまざまな機能が用意されている。 以下、いくつかの切り口で分類してみる。   機能充実度による違い 会計システム(ここでは、上記のいわゆる「総勘定元帳作成機能」をイメージしていただきたい)には、街の家電量販店にて数万円ほどで販売している「○○会計」のようなシステムから、数千万円~数億円もするような会計システムまである。この違いは何だろうか。 これらの大きな違いとしては、以下のような機能の充実度による違いがある。   対象業務範囲による機能の違い 会計システムと呼ばれているシステムには、総勘定元帳機能以外にもさまざまな機能が実装されている場合がある。 製品毎に機能範囲は異なるが、一般的には以下のような機能が付いている。 実務的には、上記の機能までを「会計システム」を呼んでいる感覚がある。 管理会計とは、仕訳の中に勘定科目以外の情報、例えば、部門コード、事業セグメント、プロジェクトコードなど入力して、財務会計(制度会計)以外の管理帳票が出せるようにする仕組みや、予算情報との比較や配賦機能などを指す。 債権管理(得意先元帳)は得意先別の売掛金の計上から入金消込み及び滞留売掛金を管理する機能である。 債務管理(仕入先元帳)は仕入先別の買掛金の計上から支払いまでを管理する。 そして、資金管理は、債権管理、債務管理が持っている入金予定情報や支払予定情報から、将来の資金増減を計画したり、借入金の残高や利息を管理する機能などのことである。 なお、法人税等の確定申告書作成システムについては、会計システムの中に機能として準備されているというよりは別製品という感覚であり(個人の確定申告書作成機能が付いた会計ソフトもあるが)、製品原価計算、プロジェクト管理、在庫、生産管理などの機能まで統合されたシステムは会計システムとは呼ばず、ERP(イーアールピー)システムや統合型パッケージと呼ぶ(会計システムの部分だけでも、統合型、ERPなどと呼ぶ製品もある)。 このように、会計システムには機能範囲や機能充実度による違いあり、それぞれ自社のニーズに合ったシステムを使っている。   最近の会計システムの動向 さて、今回のテーマである『最近の会計システム事情』として、ここ数年で大きく変化したのは、まず、監査等の現場における、生データの利用である。 以前は、総勘定元帳や試算表などを紙で入手していたが、最近では監査人などが会計システムを直接操作して、会計システムに保管されている仕訳データを直接参照したり、会計システムから仕訳データなどを一括抽出して分析ツールなどで分析する手法が採用されている。後者を一般的にCAATという。 また、内部統制制度(いわゆるJ-SOX)の施行を機に、会計伝票の変更履歴管理、ユーザ権限管理などいわゆるIT全般統制に対応する機能の充実が図られた。 これは比較的大規模な会計システムには以前から具備されていた機能であるが、これを機に、それまで比較的緩かった中小企業向けの会計ソフトにも付けられるようになった。 最後にクラウド化である。 クラウドとは簡単に言うと、自分ではデータを保持せず、パッケージベンダやサーバベンダーが用意するサーバーにデータを保管する方式をいう。これにより、自分のパソコンや自社のサーバーに破損等が起きた場合でも、データを保全することができる。また、このクラウド化に伴い、会計ソフトを購入するのではなく、会計システムの利用料を払って使用するというSAASという形式も増えた(ASPという呼び方をするものもある)。 このように、ITインフラの進化や税務や会計に関する諸制度の変更などを受けて、会計システムとそれを利用する環境は常に変化している。 (了)

#No. 11(掲載号)
#小田 恭彦
2013/03/21

会計事務所の事業承継~事務所を売るという選択肢~ 【第3回】「税理士法人の事業承継」

会計事務所の事業承継 ~事務所を売るという選択肢~ 【第3回】 「税理士法人の事業承継」   公認会計士・税理士 岸田 康雄    1 税理士法人の事業価値源泉 税理士法人による税理士業務の特徴は、その権利義務が税理士個人ではなく法人に帰属するところにある。 例えば、顧客との顧問契約の締結主体は、代表社員の税理士ではなく、法的主体としての税理士法人である。 つまり、税理士法人の事業価値源泉は、オーナーの立場にある代表社員が法人の持分の保有を通じて間接的に所有しているのである。 それゆえ、税理士業務の事業価値源泉は法人に帰属することとなり、たとえ法人の社員である税理士(オーナー)が引退しても、その税理士業務の提供が途切れてしまうことはない。 代表社員が引退するためには、そのオーナーとしての地位(社員の地位)を後継者へ法的に移転することが必要となる。 したがって、税理士法人の事業承継は、社員が有する法人持分の相続、贈与又は譲渡によって行われることになる。 税理士法人の社員の地位が株式会社の株主と異なる点は、税理士法人が合名会社に準じた人的会社の性質を有していることから、債権者に対して直接・連帯・無限責任を負うことである。 しかし、一般事業会社の株主の場合であっても、銀行借入金に連帯保証を入れるなど人的会社に近い責任を負わされることが一般的であり、税理士法人の社員の責任の重さが、持分の移転において問題となることはあまりない。 それでは、税理士法人の経営資源はどうであろうか。つまり、税理士業務の事業価値源泉である顧客関係、職員の雇用の維持をどう考えるべきか。 そもそも、税理士業務の提供のために有形固定資産をほとんど必要としない会計事務所の経営資源は、既存顧客との顧問契約と、職員との雇用契約の2つが中核になる。 また、長年経営されている税理士法人であれば、その知名度、ブランド、提携する金融機関との関係などの無形資産も貴重な経営資源といえよう。 さらに、大規模な組織を有する税理士法人であれば、組織的経営のノウハウ、税理士業務の専門知識を共有できる体制(ナレッジ・マネジメント・システム)なども重要な経営資源となっていることであろう。 これらの経営資源は、税理士法人の事業価値源泉となり、一体となって税理士業務を提供しているのである。   2 税理士法人の社員の投下資本回収 一般的に、税理士法人の事業承継は、社員の退社と入社によって行われていると考えられる。 社員は2人以上必要であるから、個人事務所の場合とは異なり、所長税理士の引退が廃業につながるというわけではない。社員の入替えによって事業承継はスムーズに行われることになる。 すなわち、引退する社員に対して退職金を支払うとともに、その持分を入社する後継者に買い取ってもらうという方法がとられている。 ただし、個人事務所の場合とは異なり、子供を後継者とする親族内承継よりも、職員を後継者とするケースのほうが多いようである。 それでは、税理士資格を有する後継者が不在の場合はどうであろうか。 あるいは、職員に若い補助税理士しかおらず、税理士法人を経営する能力や経験に乏しい場合はどうであろうか。 この場合、税理士法人の社員が退社する際に、税理士の当初出資金を回収する手段が必要となる。そこで、税理士法では、持分譲渡、合併、事業譲渡の3つの規定を設けている。 〈税理士法人のM&Aスキーム〉   3 税理士法人の持分譲渡 税理士法人の持分は、他の社員全員の承諾があれば譲渡することができる(税理士法48条の21第1項、会社法585条)。 ただし、税理士法人の社員は(自然人たる)税理士でなければならないとされているため(税理士法48条の4第1項)、税理士法人の持分は個人税理士に対してのみ譲渡することができる。 つまり、他の税理士法人に対して譲渡することはできない。 また、社員1人の法人となってしまった場合には、税理士法人の解散事由となっているため(社団性、税理士法48条の18)、社員が全員退社して持分譲渡するような場合には、2名以上の税理士が持分を譲り受け、社員に就任しなければならない。 しかしながら、税理士法人の持分の評価額は高くなることから、それを個人で譲り受けることができるほどの資金力を持つ税理士を見付けることは困難であろう。   4 税理士法人の合併 税理士法人を個人の税理士が引き継ぐことは、既述のように容易ではない。 そこで、税理士法人が引き継ぐことが考えられる。 この場合、持分譲渡は使えないため、合併(税理士法48条の19)によって行われることになる。 合併によって引退する被合併法人の社員が受け取る対価には、現金の場合(現金交付型合併)と、出資持分の場合(持分交付型合併)があるが、引退する税理士に新たな持分を交付されても意味がないため、事業承継においては現金交付型合併が適用されることが一般的である。 現金交付型合併は、社員の出資持分の回収手段となるが、税務上、プラスの効果が生じる。 すなわち、合併が非適格組織再編となることから、支払対価が純資産額を上回る部分が合併法人において資産調整勘定として計上されることとなり、合併法人はその償却によって税負担を軽減することができる。   5 税理士法人の事業譲渡 実務上でほとんど見ることがない取引方法ではあるが、税理士法人の事業譲渡も可能であると考えらる(税理士法施行規則22条の2第8項)。 つまり、個人税理士とは異なり、税理士法人の営業権が認められる可能性がある。 この場合、支払対価のほとんどが資産調整勘定として計上されることとなり、税理士業務を譲り受けた税理士法人は、その償却によって税負担を軽減することができる。   6 所長の営業力という経営資源 顧客との顧問契約を引き継ぐことができれば事業価値源泉が維持され、事業承継が成功するというのは既述の通りであるが、1点だけ注意すべきことがある。 それは、個人事務所の場合も同様であるが、所長又は社員の営業力をいかに引き継ぐかということである。 税理士法人の場合、職員へ持分を移転するケースが多い。しかし、所長が営業活動に専念し、実務遂行を職員に任せているような組織においては、職員に営業力が全く養われていない状況が多く見られる。 所長又は社員の営業力は顧客関係を維持するために不可欠のものであるから、後継者に営業力が無ければ事業価値源泉が維持できないということになる。 所長又は社員の「営業力」は、会計事務所の経営資源として非常に大きな価値を生んでいる。例えば、「所長先生との毎月のゴルフ、宴席などのお付合いがあったから、これまで顧問をお願いしていたのだ」といった顧客との人的な信頼関係である。 後継者に営業力が備わっていること、これは事業承継の大前提となる。 〈会計事務所の経営資源〉 (了)

#No. 11(掲載号)
#岸田 康雄
2013/03/21

〔知っておきたいプロの視点〕病院・医院の経営改善─ポイントはここだ!─ 【第4回】「DPC/PDPSへの参加は必須か」

〔知っておきたいプロの視点〕 病院・医院の経営改善 ─ポイントはここだ!─ 【第4回】 「DPC/PDPSへの参加は必須か」   東京医科歯科大学医学部附属病院 特任講師 井上 貴裕   連載の第3回では、多くの急性期病院が参加するDPC/PDPSの概要を解説した。 本稿では、DPC/PDPSへの参加条件及び参加することの意義について言及する。   1 DPC/PDPSへの参加 DPCは、その支払いを受けるDPC対象病院と、データ提出だけを行い支払いは出来高で算定する病院の2つに分けることができる。 多くの病院は前者のDPC対象病院であり、参加のためには7対1入院基本料、あるいは10対1入院基本料を算定していることに加え、「データ/病床」比という基準が存在し、2年間のデータ提出を行い提出データ(退院患者数)/病床数が0.875以上(月)であることが求められる。 これは、急性期病院は病床数に対して一定の退院患者がいることを意味しており、在院日数が短く新入院患者がある水準に達していれば容易にクリアできる。それに対して、DPC/PDPSでの支払いは受けない病院は、要求されるデータを提出することによってデータ提出加算という診療報酬を受け取ることができる。 データ提出加算は2012年度診療報酬改定で新設されたものであり、DPC対象病院とそれ以外の急性期病院の診療状況の違いを把握するために評価が行われた。 DPC対象病院が1,500以上に増加した要因として、経済的なメリットをあげることができる。 DPC/PDPSでは暫定調整係数という前年度並みの収入が保証される仕組みがあり(当該係数は、2018年までに廃止される予定)、出来高から包括払いへ移行しても損をしないような配慮が行われている。 実際には、多くの病院が診療単価の向上という経済的な便益を受けている。   2 DPCに参加しない病院の特徴 このような経済的利益があるにもかかわらず、DPC対象病院にもならず、データ提出も行わない病院も存在する。 200床以上の病院で、DPC参加の要件である7対1入院基本料あるいは10対1入院基本料を算定している病院は、約100病院であると予想される。これらの病院のうち、国立病院機構の旧療養所など筋ジストロフィーや重症心身障害などを扱う急性期的な機能を有しない一般病院もあり、10対1入院基本料以上を算定する病院が急性期病院であると考えるならば、実質的には相当な割合の急性期病院がDPCに参加(データ提出を含む)している。   3 DPC/PDPSへの参加は必須か 特殊な機能を持つ専門病院や小規模の急性期病院を除いて、以下の理由からDPC/PDPSへの参加は必須であると筆者は考えている。 まず1つ目の理由は、DPCには標準化・効率化を促すインセンティブが仕掛けられており、出来高算定のような過剰な検査や投薬など無駄を誘発しやすい仕組みが制度として残ることは医療費抑制という環境下を前提とすると考えづらいからである。 2012年度診療報酬改定で、データ提出加算が新設され、DPCに参加しない病院であっても、データを提出することの経済的なインセンティブが設けられた。これにより、DPC対象病院とそれ以外の病院の診療プロセス等が明らかにされ、その実態が明らかにされる日も遠くない。 そうなると、DPC対象病院が、少ない医療資源の投入量で、より効率的で効果的な医療を提供していることが明らかになるであろう。 例えば、急性心筋梗塞の院内死亡率が、DPC対象病院が出来高算定病院よりも低いにもかかわらず、検査などの医療資源の投入量は少ない、という結果が出てくることが予想される。また、外来データの提出も行われるため、入院前後の外来における診療実態も何らかの形で制度に反映されていくことであろう。 2つ目の理由は、現行の制度では、急性期病院の診療報酬には2体系が存在し、二重価格であるという矛盾が生じており、中長期的には是正されることが予想されるからである。 同一のサービスには同一の価格がつけられるのが、経済学でいう一物一価の法則である。しかし、出来高算定を選ぶことにより、本来必要のない検査や投薬を行うことにより診療収入を稼ぎ出すインセンティブが生じることは矛盾があると予想される。 3つ目の理由は、高い精度の診療データを持つことこそ、急性期病院だと言えるからである。 医療は質が重要であり、質の高い病院には高い診療報酬を支払うという仕掛けも重要であろう(Pay for Performanceという)。その際に、他院と比較可能な適切なデータを保有することは極めて重要な意義を有する(ただし、データを作成することと、DPC/PDPSにおいて支払いを受けることは別問題であるともいえる)。 (了)

#No. 11(掲載号)
#井上 貴裕
2013/03/21

事例で学ぶ内部統制【第15回】「平成23年度に取り組んだ内部統制の簡素化事例」

事例で学ぶ内部統制 【第15回】 「平成23年度に取り組んだ 内部統制の簡素化事例」   株式会社スタンダード機構 代表取締役 島 紀彦   はじめに 本連載の最終回となる今回は、平成23年度に取り組んだ内部統制の簡素化事例を紹介する。 制度4年目を迎えた平成23年3月、金融庁は内部統制の基準・実施基準の更なる簡素化・明確化を促す改訂実施基準を公表した。 筆者(株式会社スタンダード機構)主催の実務家交流会では、改訂実施基準が最初に適用される平成23年4月以降に、企業が新たに導入した簡素化の対応、その効果や課題、監査法人とのコミュニケーションのあり方について意見交換を行った。 各社が取り組んだ創意工夫を見てみよう。   平成23年度に導入した簡素化事例 改訂実施基準は、企業において可能となる簡素化・明確化として、ELCの評価範囲の明確化や評価方法の簡素化、PLCの評価範囲の更なる絞込みと評価手続の簡素化、サンプリングの簡素化などを挙げ、併せて、事業規模が小規模で比較的簡素な構造を有している中堅・中小上場企業における効率化事例を紹介している。 いずれの参加企業においてもその内容を熟知し、社内で相応の検討を経て簡素化に踏み出していた。 ① 評価範囲の絞込み 参加企業Aは、「以前は、評価対象拠点が毎年の業績変動によって入れ替わっていたので、制度運用の負担が大きいと感じていた。そこで、評価範囲の選定に使う金額的指標を連結売上高のみとし、その金額的基準が一定年数で連続達成していることを条件とし、さらにセグメントの重要性という質的基準を追加することにより、評価対象拠点を原則として固定化した」(精密機器メーカー)と、評価拠点の絞込みを進めた。 ② ELCの簡素化 参加企業Bは、「従来は、すべての子会社を個別にELCの評価対象としていたが、社内改定後は、前年度の内部監査・外部監査結果において問題がなければ、その子会社を評価範囲には含めつつも、個別に評価対象とせず、むしろ親組織の支店として扱い、親組織のELCの評価のみで対応することとした」(食品流通会社)と、一定の条件を満たす子会社のELCの評価を親会社のELCの評価の一環に取り込んでいた。 ③ PLCの簡素化 PLCの簡素化は、評価対象となる勘定科目や評価対象となる業務プロセスの絞込み、整備評価の簡素化、前年度の運用評価の結果を継続して利用する運用評価のローテーション、監査法人との評価対象サンプルの共有など、多くの領域にわたっていた。 前出の参加企業Aは、「まず、各拠点の決算財務報告プロセスの評価対象勘定科目が12科目だったが、社内改定後は、未払法人税を税効果会計に、投資有価証券や関係会社株式は期末時価評価に集約することで相互の重複を解消し、9科目に削減した。また、販売、購買、棚卸のコントロールのうち、改定前は、現業部門における評価と経理部門における評価の重複が発生していたが、改定後は、決算財務報告プロセスとしてまとめて評価することとした」と、評価対象勘定科目と勘定科目に紐付けられた業務プロセスの絞込みの両方を行っていた。 整備評価について、参加企業Cは、「従来は、内部統制を統括する部署が指定した証憑類について、ウォークスルーによる評価を必須としていたが、今後は、整備状況に重要な変更がない場合は任意とした」(情報通信)と、整備評価の効率化を行った。 運用評価について、前出の参加企業Bは、「前年度の内部監査及び外部監査結果で問題のなかった業務プロセスについては、前年度の運用評価結果を継続して利用し、3年に1回の運用評価に変更した」と、早速、運用評価のローテーションを取り入れていた。 他方、前出の参加企業Cも「B社さんと同じだが、ローテーションの間隔は、2年に1回とした」と話した。 評価対象のサンプルについて、前出の参加企業Aは、「社内改定前は、監査法人と経営者がそれぞれ別個にサンプリングして評価していたが、改訂実施基準を踏まえ内部統制の評価方法を社内で改定した後は、監査法人と経営者との間でサンプルを共有し評価することとした。例えば、25件のサンプルを評価する場合、10件のサンプルについて監査法人は経営者が評価した結果をそのまま採用することとした。また、経営者は監査法人が選んだサンプルをそのまま経営者のサンプルとしても使用できることにした」と、監査法人とサンプルを共有し、かつ共有したサンプルに対して監査法人は経営者が行った評価結果に依拠することとした。 参加企業Dは、「改訂実施基準が公開される前から、監査法人と経営者評価で半数未満を共用していたが、社内での対応を改めて、サンプルの3分の2程度を共用することにした」(建設会社)と、監査法人との間でサンプルの更なる共用化を図った。   簡素化によって得られた効果 多くの参加企業は、「評価を受ける側も評価する側も、運用評価のローテーションに加え、監査法人との間でサンプルを共有し、全体のサンプル件数が減少したことにより、サンプル資料収集工数、対応工数の削減が図られ、負担が減少した」と、簡素化がもたらす所期の効果について間然するところがない。 さらに、前出の参加企業Dは、「モニタリングの関係者を絞ったことにより、関係者間のスケジュール調整が容易になった。その副次的効果として、監査部が金融商品取引法の内部統制評価から解放され、業務監査に集中することができるようになった」と加えた。 もっとも、効果の中身は代わり映えしないものだったので、議論は盛り上がらなかった。   簡素化による更なる改善や課題 これに対して、簡素化による更なる改善や課題については、 「依然として、同一監査証憑や調書の重複保存の問題、拠点や各組織内の内部統制部門と本社所属の内部監査部門による内部監査との重複の問題、他の諸監査(システム監査・購買監査・棚卸監査等)との重複の問題が残っている」 「改訂実施基準によれば簡素化が許容されない財務報告の信頼性に特に重要な影響を及ぼす評価項目とは何であろうか。結局、負荷が大きい決算財務報告プロセスなどの評価は、簡素化が許容されないのではないか」 などと、様々な声が上がった。 それどころか、比較的多くの参加企業が、「PLCの運用評価のローテーションで省力化は達成できるだろうが、各部門の内部統制に対する意識低下を招くと思う。むしろモニタリング頻度を上げるべきだ」と、簡素化一辺倒の流れに慎重であった。   監査法人とのコミュニケーションのあり方 改訂実施基準は、企業の創意工夫を監査法人が理解し尊重することや開示すべき重要な不備の判断基準の明確化を謳っているため、監査法人とのコミュニケーションのあり方に議論が及んだ。 参加企業Eは、「内部統制報告制度が導入される以前ではブラックボックスだった監査法人による重要性の判断基準が共有されることで、企業にとっては不意打ち防止や法的安定性が期待され、監査法人にとっても企業が行った内部統制の経営者評価の結果を活用して重要な不備の発見を効率的に行うことが可能になるはずだ」(資材メーカー)と、コミュニケーションの改善が双方にもたらす効果を巨細(こさい)に話した。 参加企業Fも、「簡素化よりも基準の明確化によって財務諸表監査のポイントが分かるようになり、監査対応がスムーズになると同時に、監査対象の部門に対しても、リスクとコントロールの重要性の意味を伝えることができるようになった」(食品メーカー)と話した。 他方、参加企業Gは、「内部統制を通じて監査法人とコミュニケーションを図り、監査の負担が減ったはずなのに、監査報酬の減額にはつながっていない」(商社)と、冗談を交えて苦笑していた。 読者に向けて 実務家交流会で意見交換したいずれの参加企業も、制度運用に手間隙をかけ悩みを抱えつつも、この4年間で制度がもたらした便益を享受していることを自覚している。 だからこそ、改訂実施基準が公表されても、それを適用するにあたっては、簡素化や効率化の視点だけでなく、有効化の視点を持ち合わせ、自分の頭で腑に落ちるまで検討を重ねていた。 そのとき、事例に裏付けられた真剣な意見交換は、巷で情報を転売する有識者の大言壮語と違い、その企業に正しい解を示してくれる可能性がある。 筆者は、意見交換された言葉自体に接してほしいと考え、紙面の制約の中、対話型による実例紹介を行ってきた。パラフレーズした瞬間に、言葉は力を失うからである。 本稿で紹介してきたわずかばかりの事例と意見交換が、読者各位を有効かつ効率的な制度運用にいざなう道標となれば望外の喜である。 (連載了)

#No. 11(掲載号)
#島 紀彦
2013/03/21

《速報解説》 サービス付き高齢者向け賃貸住宅に係る平成25年度税制改正事項

《速報解説》 サービス付き高齢者向け 賃貸住宅に係る 平成25年度税制改正事項   公認会計士・税理士 篠藤 敦子   高齢化が急速に進む中、介護・医療と連携して高齢者支援サービスを提供できる住宅の確保が重要となっており、こうした住宅の供給を促進するために、建築費や改修費の補助、税制面、融資面における支援が実施されている。 このうち税制面での支援については、平成25年度税制改正において、次の措置が講じられることとなっている。   【1】 割増償却制度の適用期限の延長・制度の縮減(所得税・法人税) (1) 現行の制度の概要(平成25年3月31日まで) 「サービス付き高齢者向け賃貸住宅」を新築後取得し、又は新築して、これを賃貸の用に供した場合には、賃貸の用に供した日から5年間にわたり通常の償却費の1.28倍(耐用年数が35年以上であるものは1.4倍)の割増償却が認められている(措法14、47)。 「サービス付き高齢者向け賃貸住宅」とは、高齢者の居住の安定確保に関する法律5条1項に規定するサービス付き高齢者向け住宅のうち、賃貸借契約に基づいて供給されるもので、戸数が10戸以上あり、1戸当たりの床面積が25㎡以上(専用部分のみ)のものをいう(措令7、29の4)。 (2) 改正の内容 適用期限が平成28年3月31日まで3年延長される。 また、平成27年4月1日から平成28年3月31日までの間に取得等をした住宅については、割増償却率が次の通り引き下げられる。   【2】 固定資産税の減額措置に係る適用期限の延長 (1) 現行の減額措置の概要(平成25年3月31日まで) 次の要件をすべて満たすサービス付き高齢者向け住宅は、新築後5年間にわたって固定資産税額が3分の1に減額される(1戸当たりの共用部分を含む延床面積120㎡の部分まで)(地法附則15の6②、15の8④)。 (2) 改正の内容 適用期限が平成27年3月31日まで2年延長される。軽減の割合や対象となる住宅の要件に変更はない。   【3】 不動産取得税の特例措置に係る適用期限の延長 (1) 現行の特例措置の概要(平成25年3月31日まで) 次の要件をすべて満たすサービス付き高齢者向け住宅を新築したときは、家屋と土地に係る不動産取得税が次の通り軽減される(地法73の14①、73の24①、地法附則11⑭、11の4③)。 (2) 改正の内容 適用期限が平成27年3月31日まで2年延長される。特例措置の内容や対象となる住宅の要件に変更はない。 (了)

#No. 10(掲載号)
#篠藤 敦子
2013/03/19

《速報解説》 平成25年度税制改正による相続税等の納税義務者と課税範囲の見直し

《速報解説》 平成25年度税制改正による 相続税等の納税義務者と 課税範囲の見直し   税理士 齋藤 和助   Ⅰ 改正内容 「平成25年度税制改正大綱」の「資産課税」「その他」の事項に、相続税等の納税義務者と課税範囲の見直しについて次のように記載されている。 現行法では、相続人等が外国に居住している場合、日本国籍を有していれば相続等により取得した国外財産に課税されるが、日本国籍を有していなければ課税されない。 これに対し、改正案では、日本国籍の有無に関係なく課税しようというもので、現行法での分類における下図の網掛け部分の「対象外」を「課税」にしようというものである。   2 納税義務者の意義 現行法における納税義務者の意義は、次のとおりである。 ただし、②において、当事者の双方が相続開始等前5年以内に日本国内に住所を有したことがない場合には③となる。 しかし、上記改正案が実現した場合には、もはや納税義務者の区分は意味がなく、日本国内に住所を有する者から相続等により財産を取得した場合には、上記区分に関係なく、すべての財産に課税されることになる。   3 改正の背景 現行法においては、例えば外国で出生した孫に外国籍を取得させれば、祖父から子への国外財産の贈与については課税されるが、孫への贈与には課税されない。 このように子や孫に外国籍を取得させることで、国外財産への課税を免れるような租税回避事例が生じていることから、今回の改正が行われることになった。   4 今後の動向 外国籍を取得した孫へ信託受益権の贈与があったとして贈与税の決定処分がなされ、税務訴訟となり、一審の名古屋地方裁判所において、決定処分を取り消す判決があり、国側が控訴している事件がある(事件番号:平成20年(行ウ)第114号)。 この判決は、信託設定時に利益を受ける者は存在しないという理由での取消しであり、納税義務の有無が問題となるものではなかった。しかし、控訴審で、納税義務や財産の所在等が問題となれば、今回の改正への影響も考えられることから、訴訟の経過とともに今回の改正の行方に注目したい。 (了)

#No. 10(掲載号)
#齋藤 和助
2013/03/15

《速報解説》 IFRS財団 会計基準アドバイザリー・フォーラム(ASAF)を設置 ~日本から企業会計基準委員会が立候補~

《速報解説》 IFRS財団 会計基準アドバイザリー・フォーラム(ASAF)を設置 ~日本から企業会計基準委員会が立候補~   Profession Journal 編集部   IFRS財団は、国際会計基準審議会(IASB)が国際財務報告基準(IFRS)を開発するに当たって、世界の幅広い国や地域の意見を聞き、協議する場として、「会計基準アドバイザリー・フォーラム」(ASAF)を創設する。 ASAFは、各国の会計基準設定主体及び会計基準の設定に関与している地域団体(以下「地域団体」)※で構成される。4月8日もしくは9日に、第1回会議をロンドンで開催する。 国際会計基準審議会(IASB)と各国の会計基準設定主体や地域団体とが協力しIFRSの開発を進める正式な協議体として、ASAFでは、現在IASBが検討しているIFRS概念フレームワークの見直し、あるいは、個々の会計基準の開発において、専門的、技術的な議論を行う。 ASAFのメンバーは、会計基準設定主体や地域団体の12人のメンバーで構成される。IASB議長又は副議長が議長を務め、会議は通常、ロンドンで開催される。 メンバー構成は、経済地域のバランスを確保するため、以下の地域・議席に振り分けている。 メンバーは現在(2013年3月12日)、選考中である。日本からは、アジア・オセアニア代表として、企業会計基準委員会(ASBJ)が立候補している。 従来日本は、IFRSの基準づくりにあたり、IASBが作成した公開草案に意見を表明することにより、日本の立場を反映させてきた。ASAFに参加することにより、日本の市場関係者等の意見を踏まえて深く議論に関与できるため、日本の立場が、よりIFRSに反映されることが期待される。 ただ、ASAFは、あくまで諮問機関として議論する場であり、会計基準に関し、結論を出す場ではないとしている。 ※アジア・オセアニア基準設定主体グループ(AOSSG)  欧州財務報告諮問グループ(EFREG)  ラテンアメリカ基準設定主体グループ(GLASS)  全アフリカ会計士連盟(PAFA)  (了)

#No. 10(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2013/03/14

《速報解説》 「会社計算規則の一部を改正する省令案」(公開草案)について

《速報解説》 「会社計算規則の一部を改正する省令案」 (公開草案)について   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成25年3月8日付けで、法務省は、「会社計算規則の一部を改正する省令案」(以下「省令案」という)を公表し、意見募集を行っている。 意見募集期間は平成25年4月8日までである。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 省令案の主な改正点 省令案は、企業会計基準委員会の「退職給付に関する会計基準」(企業会計基準第26号)の公表等を踏まえて、会社計算規則を改正するものである。 改正内容は次のとおりである。 ① 負債の評価(改正) 退職給付引当金の規定に、「第75条第2項第2号において同じ」を追加する。   【省令案6②一イ】 ② 資産の部(新設) 前払年金費用(連結貸借対照表にあっては、退職給付に係る資産)   【省令案74③四ニ】 ③ 負債の部(改正) 引当金(資産に係る引当金、前号ニに掲げる引当金及びニに掲げる退職給付引当金を除く)   【省令案75②二ハ】 ④ 負債の部(新設) 退職給付引当金(連結貸借対照表にあっては、退職給付に係る負債)   【省令案75②二ニ】 ⑤ 純資産の部(新設) 退職給付に係る調整累計額 省令案76条7項5号の退職給付に係る調整累計額については、次に掲げる項目の額の合計額   【省令案76⑦五、⑨三】 ⑥ 株主資本等変動計算書等(新設) 退職給付に係る調整累計額 省令案96条5項5号の退職給付に係る調整累計額については、次に掲げる項目の額の合計額   【省令案96⑤五、⑨三】   Ⅲ 適用時期等 改正後の会社計算規則については、公布の日(未定)から施行することが予定されている。 ただし、経過措置として、平成25年4月1日前に開始する事業年度に係る計算関係書類については、なお従前の例によることとする予定である。 (了)

#No. 10(掲載号)
#阿部 光成
2013/03/14

『日米租税条約 改定議定書』改正のポイントと実務への影響 【第1回】「改正の概要及び利子所得免税」

『日米租税条約 改定議定書』 改正のポイントと実務への影響 【第1回】 「改正の概要及び利子所得免税」   税理士法人トーマツ パートナー 税理士 小林 正彦   1 概要 日米租税条約の改正については、昨年6月に基本合意に達したことが公表されていたが、その後、2013年1月24日に改正議定書に署名されるとともに、改正内容の詳細が明らかになった。同条約の改正は2003年以来となる。 改正の主な項目は4に掲載した表のとおりであるが、中でも重要な改正点は以下の3点である。   2 発効時期 今後それぞれの国内手続(日本は国会の承認)を経て、両国間で批准書が交換されることにより効力を生ずる。 2003年の新条約締結時には、2003年11月6日に新条約に署名され、翌年3月30日に批准書が交換された。   3 適用対象・適用時期 この議定書に盛り込まれた新条約の内容は、次のものについて適用される(議定書15②)。 上記にかかわらず、相互協議中の事案については、仲裁に移行する基準となる期間の2年の起算日は、この議定書が効力を生ずる日となる(議定書15③)。 また、情報交換、徴収共助の規定は議定書の発効日から適用する。 なお、教授免税の特典を受ける権利を有する個人は、議定書が効力を生じた後においても、それまで有している権利を失うときまで特典を受ける権利を引き続き有する。   4 改正の概要 〈日米租税条約の改正内容(平成25年1月24日署名)〉 ※画像をクリックすると、PDFファイルが開きます。   5 利子所得に関する改正 (1) 原則として源泉地国免税となった 利子所得は、従来は、金融機関の得るものを除いて、利子の発生した国(源泉地国)において10%を限度税率として課税できるとされていたが、改正後は原則として源泉地国では免税となる。 例えば、日本親会社の米国子会社に対する貸付金の利子については、従来は居住地国である日本で全世界課税の中で利子所得も課税され、加えて源泉地国である米国でも10%の源泉徴収が行われ、日本における確定申告書上、外国税額控除により二重課税の一部排除を行うという仕組みをとっていた。 改正後は、米国での源泉地国課税は行われないことになるので、企業にとっては外国税額控除の申告に要する手間が省け、親会社側の外国税額控除の枠が足りないことにより二重課税が完全には排除できないという問題もなくなる。 日米双方の企業にとっては、資金のやり取りがしやすくなるという点で朗報である。 (2) 源泉地国免税の例外 次のものは、源泉地国課税の適用対象とされる(議定書4、新条約11②)。 このうち(a)は新設の規定であるが、それ以外は現行条約に同様の規定がある。 【参考】 財務省ホームページ ・「アメリカ合衆国との租税条約を改正する議定書が署名されました」 ・「アメリカ合衆国との租税条約を改正する議定書のポイント」 (了)

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#小林 正彦
2013/03/14

税制改正を学ぶ ~税制改正を理解するためには過去の改正の背景・経緯を理解することが必要

税制改正を学ぶ ~税制改正を理解するためには 過去の改正の背景・経緯を理解することが必要   税理士 朝長 英樹   1 近年の法人税に関する疑問点や争点のほとんどが平成12年度改正以後の改正部分 法人税に関しては、近年、大きな改正が続いています。 この法人税に関する大きな改正が始まったのは、平成12年度の金融取引に関する取扱いの抜本改正(有価証券の取引に関する取扱いの抜本改正、デリバティブ取引・ヘッジ取引に関する規定の創設、外国為替取引等に関する取扱いの抜本改正)からですが、この平成12年度改正前の法人税関係法令の規定の量は、同改正から近年の改正の基礎を作った平成15年度改正までの改正により約2倍となり、その後、現在までの改正により約3倍となっています。 このような近年の改正には、従前の改正とは大きく異なる特徴があります。 それは、改正内容が時代の要請に合うように制度を根幹から改めるものとなっていること、そして、改正規定が取扱いを非常に詳細に定めていることです。 現在の法人税法は、昭和40年度改正によって制定されましたが、その後、30数年の長きにわたって本格的な改正が行われてこなかったと言えます。 平成12年度改正以後の改正は、この30数年間の遅れを取り戻す改正という性格のものであるため、連年のように、制度の根幹を改めるような改正が行われることとなったわけです。 また、平成12年度改正以後の改正は、改正規定が非常に詳細に定められているという特徴がありますが、これは、従来、「通達行政」という批判を受けるような状態があったことに対する反省として、「租税法律主義」という原則に立ち返って税制度を設けることとしたことによるものです。 「デリバティブ・ヘッジを境に法人税の条文が全く変わった!」と言われることがよくありましたが、仮に、平成12年度改正以後の改正を従来のように大幅に通達等に委ねていたら、かなりの混乱が生ずることとなったと考えられます。 このように、平成12年度改正以後の改正には、制度の根幹を改め、取扱いを詳細に定めるという特徴があり、これらは基本的にはプラスに評価できると考えますが、その反面、改正が非常に複雑で難解であるというマイナス面も生ずることとなりました。 平成12年度の金融取引に関する取扱いの抜本改正、平成13年度の資本等取引の取扱いの抜本改正と組織再編成税制の創設、平成14年度・15年度の連結納税制度の創設などから始まる近年の改正は、従前の改正とは大きく異なっています。平成18年度の会社法創設に伴う改正や平成22年度のグループ法人税制に係る改正なども、非常に複雑で難解な改正となっています。 このような事情のため、近年の法人税に関する疑問点や争点のほとんどが平成12年度改正以後の改正部分に関して生じているのです。   2 近年は『平成○年度税制改正の解説』の解説がよく分からない 上記1で述べたような複雑で難解な大規模な改正が行われると、自ずと、その改正の解説が非常に重要となります。 法人税法の過去の改正に関する解説がどの程度のものであったのかということを推測する材料として、『改正税法のすべて』(大蔵財務協会)又は『税制改正の解説』(財務省)の法人税法の改正に関する部分の頁数を確認してみると、次のとおりです。 昭和40年度改正は現在の法人税法を制定した改正で全項目にわたる改正となっているわけですが、その解説の頁数が77頁となっているのに対して、平成12年度改正等は個別項目の改正でありながら、その解説に非常に多くの頁数を割いており、近年の改正の解説が詳細に行われていることを、この数字から容易に読み取ることができます。 改正の内容を詳しく解説するということは、非常に大事なことであり、積極的に評価することができます。 しかし、その反面、「昔は、『改正税法のすべて』の解説を読めば改正の意味や内容がよく分かったが、最近は、読んでも、よく分からない」、「『税制改正の解説』の解説に書いてあることに疑問を感ずる」というような声が少なくありません。特に、平成18年度改正と22年度改正に関しては、『税制改正の解説』に記載されていることに対する疑問の声が多く寄せられました。 近年の改正は、詳しく丁寧に解説が行われてはいるものの、一般には、その改正内容が必ずしも十分に咀嚼されて理解されているとは言えず、また、改正内容に課題を残す部分も存在する、という状態になっているように思われます。   3 改正を正しく理解するためにはその改正前の取扱いを定めた改正を正しく理解する必要がある 今後、平成25年度以後の改正内容は、現時点では、まだよく分かりませんが、改正は常に過去の改正によって改められたものを改正するということになりますので、平成25年度以後の改正も、それ以前の改正内容を理解していなければ、正しく理解することはできません。平成25年度改正以後の改正を正しく理解するためには、その改正前の取扱いを正しく理解しておくことが必要であり、その改正前の取扱いを定めた改正の正しい理解を避けて通ることはできない、ということです。 これに関して、具体的な例で確認してみましょう。 平成25年度改正においては、連結納税制度における投資簿価修正に関する改正が予定されています。 これは、連結法人が他の連結法人の株式を当該他の連結法人の自己株式取得に応じて譲渡した際に当該他の連結法人の株式について投資簿価修正が行われず、その後、当該他の連結法人の株式を譲渡することとなった場合に投資簿価修正を行って譲渡損益を計上するということにしたままでは譲渡益が過大に生じてしまう、という問題点を是正するための改正であると説明されています(政府税制調査会(平成24年11月14日)の資料「連結子法人の個別利益積立金額がマイナスである場合の投資簿価修正とみなし配当」を参照)。 このような説明からすると、この改正は、過大な課税が生じないように技術的なところに関して規定の整備を行うもの、というように受け取られる可能性があります。 しかし、この改正は、本来は、そのような規定の整備というような性格のものではない、と考えられます。 この改正で是正しようとされている過大な課税という状態は、平成22年度改正における投資簿価修正の改正及び100%グループ法人間の自己株式等の取引について譲渡損益を計上せず資本金等の額の増減で処理することとされた改正に伴って生じているものです。 すなわち、平成22年度において、100%グループ法人間の自己株式等の取引について譲渡損益を計上せずに資本金等の額の増減で処理するという改正を行わず、株式のキャピタルゲインとキャピタルロスを正しく譲渡益と譲渡損とすることとしていれば、そもそも上記のような過大な課税という状態が生ずることにはならないわけです。 この過大な課税に関しては、そもそも平成22年度改正において本来は譲渡損益を計上するべきであるところを資本金等の額の増減としたところに問題があるわけであり、その根本的な問題に目を向けず、対処療法的に、連結子法人の個別利益積立金額がマイナスの場合における投資簿価修正の改正、すなわち、課税が生ずる場面だけについて改正によって課税を生じさせないようにするという対応には、疑問がある、と言わざるを得ません。 このように、小さな部分の小さな改正であっても元がよく分かっていなければ本当の正しい理解はできないという例は、決して珍しいものではなく、今後、法人税法改正においては、数多く出てくることになるものと思われます。   4 税制改正の『解説』を解説するものが必要となっている 近年、我が国の法人税制は、改正を重ねることにより、先進諸外国と比較して遜色のないものになってきたものの、制度の解説が改正に追いつかず、これが我が国の大きな課題となっています。 財務省から『平成○年度税制改正の解説』として公表される毎年度の税制改正の解説についても、改正前の取扱いを詳しく説明したり、改正の内容を分かりやすく説明したり、実務上の留意点や疑問点を詳しく説明したり、また、理論的な問題点を解説するなど、「『解説』の解説」とも言うべきものが、新しく求められていると言えます。 (了) Digital book 『法人税制改正詳解 2011-2012』 編  集:税の街.jp 「議論の広場」編集会議 ページ数:528頁 定  価:2,100円(税込) 発 行 日:2013年1月31日 発  行:清文社 ※本書はデジタルブックです。専用画面より、ID・パスワードを入力し、ログインして閲覧するものです。 本書(デジタルブック)は、新制度の導入や多岐に亘る税制改正により複雑化する法人税の取扱いについて、財務省公表の『税制改正の解説』のうち法人税関連の内容のみに着目し、実践的な解説を行ったものです。初年度版においては平成23年度・平成24年度税制改正及び通達等を織り込み、実務において留意すべき事項や疑問点について詳細な解説を加えています。 過去の改正の背景・経緯を踏まえ、取扱い上の解釈や具体的な事例とともに、経験豊かな税理士・会計士がポイントをまとめた法人税実務の指針書です。 お問い合わせ・ご購入については、こちら(清文社ホームページ)から(試し読みもできます)。

#No. 10(掲載号)
#朝長 英樹
2013/03/14
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