改正「退職給付会計」の要点と 実務上のポイント 【第1回】 「主要な改正ポイント(その1)」 有限責任監査法人トーマツ 堀田 晃裕 2012年5月17日に企業会計基準委員会より、企業会計基準第26号「退職給付に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第25号「退職給付に関する会計基準の適用指針」が公表された。これらにより、これまでいくつもの基準などに分かれて定められていた「退職給付会計」が整理・統合されたことになる。 以下では、改正後基準(前述の会計基準及び適用指針を総称してこう呼ぶことにする)の改正前基準からの変更点を見ていく。なお、企業会計基準適用指針第1号「退職給付制度間の移行等に関する会計処理」は改正後基準に統合されず引き続き存続する。 主な変更点は5点あり、以下のとおりである。 このうち、特に重要と思われるのは、会計処理に関する(1)、開示に関する(2)、年金数理計算に関する(3)である。本稿では(1)と(2)を取り上げ、(3)以降については次回述べる。 なお、本記事は執筆者の私見であり、有限責任監査法人トーマツの公式見解ではないことを、あらかじめお断りしておく。 未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用の処理方法 〈貸借対照表上での取扱い〉 改正前基準では、未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用については貸借対照表に計上せず、これに対応する部分を除いた、退職給付債務と年金資産の差額を負債または資産として計上することとしていた。 改正後基準では、未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用を、税効果を調整の上で貸借対照表の純資産の部(その他の包括利益累計額)で認識することとし、積立状況を示す額(退職給付債務と年金資産の差額)をそのまま負債又は資産として計上する。 下図のような退職給付の状況を考えよう。 この例では、退職給付債務が10,000、年金資産が8,000であるが、未認識項目(未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用)が1,500ある。 改正前基準では10,000と8,000の差額2,000から、1,500を除いた額500を貸借対照表に「退職給付引当金」の科目で負債に計上していた。 改正後基準では、10,000と8,000の差額2,000をそのまま、積立状況を示す額として貸借対照表に「退職給付に係る負債」の科目で負債に計上する。 なお、未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用について、改正前基準では貸借対照表にこれを直接反映させることはなかったが、改正後基準においては、純資産の部のその他の包括利益累計額に「退職給付に係る調整累計額」の科目で計上する必要がある。したがって、マイナス1,500を純資産の部に計上することとなるが、実際には税効果を考慮する必要がある。 そこで、法定実効税率が40%、繰延税金資産については回収可能性があると判断される場合を考えよう。 上図は改正後基準において「退職給付に係る負債」が2,000、「繰延税金資産」が2,000×40%=800計上されている状況であるが、このとき「退職給付に係る調整累計額」に計上する金額はマイナス900(1,500-1,500×40%=900として計算)である。 〈損益計算書及び包括利益計算書上での取扱い〉 未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用の費用処理方法については変更されていないので、損益計算書上、改正後基準でも改正前基準と同様に平均残存勤務期間以内の一定の年数で規則的に費用処理する(従来の費用処理方法を継続する必要がある)。 ただし改正後基準では、当期に発生した数理計算上の差異及び過去勤務費用のうち、当期に費用処理されない部分についてはその他の包括利益に「退職給付に係る調整額」として計上する。また、その他の包括利益累計額に「退職給付に係る調整累計額」として計上されている未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用のうち、当期に費用処理された部分についてはその他の包括利益の調整(組替調整)を行うこととなる。 たとえば、発生した数理計算上の差異を翌期から費用処理する会計方針の会社では、当期に発生した数理計算上の差異を、その他の包括利益に「退職給付に係る調整額」として計上する。翌期以降、未認識数理計算上の差異を費用処理するにあたり、その他の包括利益累計額に計上されている「退職給付に係る調整累計額」を調整することとなる。 以上の取扱いの変更に伴い、「退職給付引当金」は「退職給付に係る負債」に、「前払年金費用」は「退職給付に係る資産」に、それぞれ勘定科目が変更される。ただし、「未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用の処理方法」の変更は、個別財務諸表には適用されず、当面の間、改正前基準の取扱いを継続する。したがって個別財務諸表では引き続き、「退職給付引当金」、「前払年金費用」の勘定科目を使用する。 また、改正前基準における「過去勤務債務」の用語は、改正後基準では「過去勤務費用」に変更されているが、その内容には差異はない。 開示の拡充 改正後基準では、退職給付債務や年金資産の増減の内訳など、国際的な会計基準で採用されているものを中心に開示項目を拡充している。 〈会計方針に係る注記〉 「退職給付の会計処理基準に関する事項」として、以下の注記が求められている。 ・退職給付見込額の期間帰属方法 ・数理計算上の差異及び過去勤務費用の費用処理方法(並びに会計基準変更時差異の費用処理方法) 〈退職給付に係る注記〉 まず、 ・企業の採用する退職給付制度の概要 の注記が求められている。また財務諸表に計上された金額の説明として、以下の注記が求められている。 ・退職給付債務の期首残高と期末残高の調整表 ・年金資産の期首残高と期末残高の調整表 ・退職給付債務及び年金資産と貸借対照表に計上された退職給付に係る負債及び資産の調整表 ・退職給付に関連する損益 ・その他の包括利益に計上された数理計算上の差異及び過去勤務費用の内訳 ・貸借対照表のその他の包括利益累計額に計上された未認識数理計算上の差異及び未認識過去勤務費用の内訳 「年金資産に関する事項」として、以下の注記が求められている。 ・年金資産の主な内訳として、株式、債券などの種類ごとの割合又は金額 (なお、退職給付信託が設定された企業年金制度について、年金資産の合計額に対する退職給付信託の額の割合が重要である場合には、その割合又は金額を別に付記する) ・長期期待運用収益率の設定方法に関する記載(年金資産の主要な種類との関連) 「数理計算上の計算基礎に関する事項」として、以下の注記が求められている。 ・割引率 ・長期期待運用収益率 ・その他の重要な計算基礎(予想昇給率等) (了)
一体改革で 企業労務はこう変わる 社会保険労務士 平澤 貞三 1 一体改革の概要 社会保障と税の一体改革関連法案が、2012年8月10日の参院本会議で可決・成立した。 将来の社会保障費の増大が見込まれる中、安定財源確保を目的として、消費税率を現在の5%から2014年4月に8%、15年10月に10%へ引き上げ、その増収分すべてを社会保障4経費(年金、医療、介護、少子化)に充てることが明言されている。 本稿では、この一体改革のうち企業労務に影響を与えるであろう年金と就労促進に関する法律について、その改正内容と実務上の注意点について解説していきたい。 2 受給資格期間の短縮(平成27年10月施行) 【改正内容】 老齢基礎年金の支給を受けるためには、受給資格期間(保険料納付済期間+保険料免除期間+合算対象期間)が最低25年必要であるが、平成27年10月以後は10年に短縮することとなる。 平成19年の(旧)社保庁の調べによれば、65歳以上の無年金者のうち、約40%の人が10年以上の保険料納付済み実績があり、今回の改正により無年金者が大幅に減少することが期待されている。 【実務上の注意点】 無年金者が減るのはいいが、「10年さえ払えばいい」という誤解が拡がり、低年金者が増える恐れもある。 そもそも老齢基礎年金を満額で受け取るためには40年(480ヶ月)の納付が必要であり、10年ほどの納付実績では、単純計算で満額の4分の1しか受給できないことになる。 したがって、従業員から「10年さえ保険料を払っていれば老齢年金を受給できるのか?」という問い合わせを受けた場合には、「受給はできるが、当然ながら受給額は非常に少なくなる」という点についても合わせて補足しておきたいところである。 3 短時間労働者に対する厚生年金・健康保険の適用拡大(平成28年10月施行) 【改正内容】 パートタイマーなどの短時間労働者の厚生年金・健康保険の適用基準が、以下のように変更される。 【実務上の注意点】 現在、被扶養者として認定されるための収入要件は、所得税において103万円、健康保険において130万円である。したがって、103万円超130万円未満の収入をもつパートタイマーについては、所得税の扶養控除対象にはならないが、健康保険は配偶者の被扶養者として保険料の支払いを免除されていた層が存在した。 今回の改正により、ほぼ所得税の扶養認定基準をパスしない限り、パートタイマーであっても保険加入を求められるケースが多くなることが予想される。 501人以上の企業担当者にあっては、まず、年収103万円超130万円未満の収入をもつパートタイマーの洗い出しを行い、労働時間を下げて働いてもらうか、あるいは、どうせならもっと多くの時間を働いてもらうか、事前に検討しておく必要がある。 4 産休期間中の保険料免除(2年以内の政令で定める日から施行) 【改正内容】 次世代育成支援の観点から、育児休業同様に、産前産後休業期間中の厚生年金保険料や健康保険料などの負担が免除される。 【実務上の注意点】 育児休業終了時の扱いと同様に、産前産後休業終了後に育児等を理由に報酬が低下した場合に、次の定時決定まで保険料負担が従前のものとならないよう、復帰後3ヶ月間の報酬月額を基に標準報酬月額の見直しを行うことが可能である。したがって、復帰後3ヶ月の給与支給状況に応じて、産前産後休業終了時報酬月額変更届の作成・提出の有無を確認し、適宜、給与計算で控除する保険料の変更を行う必要がある。 5 労働契約法の一部改正(有期労働契約/雇止め法理の法定化) 【改正内容】 【実務上の注意点】 今回の〔改正1〕により、同一の使用者との間で締結された有期労働契約が、更新の結果5年を超える場合に、労働者が無期労働契約の締結の申込みをしたときは、使用者はその申込みを承諾したものとみなされ、無期労働契約が成立することとなる。あらかじめ、有期契約の労働者に対して、無期契約への転換申込みをしないことを更新の条件とするなどの取扱いは、公序良俗に反し無効とされるため、短期雇用予定者の採用・契約更新では、十分な注意が必要となる。なお、通算5年の計算では、労働契約が6ヶ月以上の間(クーリング期間)をおいて再度締結された場合には、通算期間に算入しないとされる。 〔改正2〕では、有期労働契約を更新しないことが一般の正社員を解雇することと同視できると認められる有期労働契約であって、その労働者が更新の申込みをした場合には、使用者による申込みの拒絶が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上からも相当と認められないときは、有期労働契約が同一の条件で成立するとされる。前提となる有期労働契約が、上記①又は②の要件に該当するかどうかは、その雇用の臨時性・常用性、更新の回数、雇用の通算期間、契約更新管理の状況や、雇用継続の期待を持たせる使用者の言動の有無などを勘案して、個々の事案ごとに判断される。 本改正は8月10日から施行されており、今後、有期契約社員の雇止めの際には、一般社員への解雇と同じく慎重な対応が必要となる。 〔改正3〕では、有期労働契約による労働者について、無期労働契約を締結している労働者と比較して、労働条件が相違する場合、その相違が有期契約労働者にとって不合理と認められるものであってはならないことが明らかにされた。たとえば、通勤手当、食堂の利用、安全衛生等について、有期契約労働者の労働条件を相違させることは、特段の理由がない限り合理的とは認められないとされる。 6 65歳までの継続雇用(平成25年4月1日から施行) 【改正内容】 主な改正点は次のとおりである。 【実務上の注意点】 現在、大多数の企業は定年者の再雇用制度を導入し、労使協定で一定の基準を定めて対象者を限定している。しかし、この仕組みの廃止により、最終的には、希望者が全員65歳まで雇用されることとなる。一定の経過措置が設けられているが、実質的な定年延長に向けて、企業は、今後の要員計画、人員の配置、職務設定の再検討と共に、人件費の配分も考慮する必要がある。 (了)
〔緊急掲載〕 雇用調整助成金等の 支給要件変更について 社会保険労務士 佐藤 信 1 支給要件の変更は10月1日以降 平成24年10月1日より、雇用調整助成金(中小企業事業主は助成内容が拡充された「中小企業緊急雇用安定助成金」)の支給要件等が変更された。 具体的には、生産量等の要件を厳しく、支給日数の上限を低くすることとされている。 これは、平成20年9月のリーマン・ショック後、支給要件が緩和されていた同制度について、経済状況の回復に応じ見直されたものである。 従来の支給日数を基に事業再生のスケジュール、休業期間や教育訓練のプログラムを検討していた事業主については、支給日数変更に伴いスケジュールの見直しを要する。 2 助成金の概要 雇用調整助成金は、景気の変動、産業構造の変化などに伴う経済上の理由によって事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、一時的に休業、教育訓練または出向を行って労働者の雇用の維持を図る場合に、休業手当、賃金などの一部を助成するものである。 なお、支給額・手続の詳細は、当記事の最後にリンクを示したリーフレット等を参照していただきたい。 3 支給要件変更の概要 (1)生産量要件の見直し ※なお、中小企業事業主で直近の経常損益が赤字であれば、5%未満の減少でも助成対象とする要件は撤廃された。 (2)支給限度日数の見直し ※岩手、宮城、福島の事業所は半年遅れて実施。上記の「H24.10.1」を「H25.4.1」、「H25.10.1」を「H26.4.1」と読み替える。 (3)教育訓練費(事業所内訓練)の見直し ※H24.10.1以降の判定基礎期間から変更となるが、岩手、宮城、福島の事業所は半年遅れのH25.4.1からとなる。 4 教育訓練を実施する事業主の提出書類変更 従来は「事業所内訓練」のみ、受講者本人が作成した受講レポートなどの提出を要したが、平成24年10月以降に判定基礎期間の初日がある支給申請からは、「事業所外訓練」を行った場合も提出が必要になる。 5 東日本大震災の影響を受けた事業主の特例 (1)特例内容 生産量又は売上高の減少の確認について、最近3ヶ月の平均値と前年同期との比較のほか、「最近3ヶ月の平均値と前々年同期との比較」も可能とされた。 ※平成25年3月10日までに特例を利用開始する場合に適用される。「前々年同期との比較」とは、すなわち震災前と比べ10%以上の生産量等が低下している事業主を対象とする措置である。 (2)対象事業主 ① 被災地事業主 青森、岩手、宮城、福島、茨城、栃木、千葉、新潟、長野の災害救助法適用地域に所在する事業主 ② 被災地関連事業主 上記①の事業主と一定規模以上(助成金を受けようとする事業所の総事業量の3分の1以上)の経済的関係を有する事業主 ③ 2次下請負等事業主 上記②の事業主と一定規模以上(助成金を受けようとする事業所の総事業量の2分の1以上)の経済的関係を有する事業主 (了) 【参考①】厚生労働省ホームページ 「雇用調整を行わざるを得ない事業主の方へ」 【参考②】厚生労働省ホームページ 「雇用調整助成金等リーフレット」※PDFファイル
改正労働契約法 【① 改正のポイント】 社会保険労務士 桑野 真浩 「労働契約法の一部を改正する法律」(以下、改正法)が平成24年8月10日に公布された。今回の改正では、有期労働契約について、下記の3つのルールを規定している。 なお、有期労働契約とは、1年契約、6ヶ月契約など期間の定めのある労働契約のことをいう。パート、アルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託など職場での呼称にかかわらず、有期労働契約で働く人であれば、新しいルールの対象となる。 改正法の3つのルール Ⅰ 無期労働契約への転換(労働契約法18条(改正法2条)) 有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるルールである。 ※5年のカウントは、このルールの施行日以後に開始する有期労働契約が対象である。施行日前に既に開始している有期労働契約は5年のカウントに含めない。 Ⅱ 「雇止め法理」の法定化(労働契約法19条(改正法1条)) 最高裁判例で確立した「雇止め法理」が、そのままの内容で法律に規定された。一定の場合には、使用者による雇止めが認められないことになるルールである。 Ⅲ 不合理な労働条件の禁止(労働契約法20条(改正法2条)) 有期契約労働者と無期契約労働者との間で、期間の定めがあることによる不合理な労働条件の相違を設けることを禁止するルールである。 施行期日 Ⅱ……平成24年8月10日(公布日) Ⅰ及びⅢ……公布日から起算して1年を超えない範囲内で、政令で定める日 (平成24年10月1日時点では、政令が公布されていない。) 罰則等の有無 違反した場合の罰則は設けられていない。労働審判や民事訴訟の対象となる。 対象となる企業 対象となる企業は、パート、アルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託など有期労働契約で働く人がいる企業・職場である。 いわゆる正社員だけの企業・職場においては、今回の労働契約法の改正部分は、気にかける必要はないと思われる。 まとめ 労働契約法においては、有期労働契約はあくまで「臨時的・一時的」なものとして扱われており、本来は不安定な有期労働契約を長期間継続、更新を重ねることは好ましくないとされる。 企業としては、一度、パート、アルバイト、派遣社員、契約社員、嘱託などの仕事の在り方を見つめ直す良い機会にしたいものである。 次回は、これらの改正を受けた企業対応策について解説する。 (了) 【参考】厚生労働省ホームページ 「労働契約法が改正されました」
《速報解説》 「租税特別措置法(山林所得・譲渡所得関係)の取扱いについて」 の一部改正について 税理士法人タクトコンサルティング 税理士 山崎 信義 1 事業用資産の買換え特例の見直し 平成24年度税制改正により、個人が国内にある10年超所有の土地又は建物等を譲渡し、国内にある土地等、建物等又は機械装置等に買換えをした場合の譲渡所得の課税の特例(租税特別措置法37条1項9号。以下「9号買換え」という。)の適用対象となる買換資産たる「国内にある土地等」の範囲について、次のように見直しをされた。 2 面積要件の判定に関する通達(措置法通達37‐11の13)のポイント 上記1のとおり、土地等を買換資産として9号買換えの適用を受けようとする場合、300㎡以上という面積要件を満たしていなければならない。平成24年9月12日に発遣された租税特別措置法通達の一部改正では、37‐11の13を新設し、上記改正の趣旨に基づき面積要件を満たすかどうかを判定する場合の具体的な取扱いを示している。 この新通達の基本的部分は、次のとおりである。 なお、法人税における「10年超所有土地等の買換えの場合等の課税の特例(租税特別措置法65条の7)」についても、平成24年9月12日に発遣された租税特別措置法通達の一部改正で、上記と同趣旨の65の7(1)-30の3及び65の7(1)-30の4が新設されている。 (了) 【国税庁】ホームページ ・ 「租税特別措置法(山林所得・譲渡所得関係)の取扱いについて」の一部改正について(法令解釈通達)
改正労働者派遣法のポイントと 企業対策 社会保険労務士 佐藤 信 1 改正された労働者派遣法のポイント 近年の労働者派遣事業をめぐる情勢にかんがみ、派遣労働者の保護のため、常時雇用する労働者以外の労働者派遣及び製造業務への労働者派遣を原則として禁止(注)するとともに、派遣労働者の保護及び雇用の安定のための措置の充実を図る等、労働者派遣事業に係る制度の抜本的見直しを行う必要があるとされ、「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律」が平成24年10月1日(一部は平成27年)から施行された。 (注)製造業派遣の禁止は審議の過程で改正内容から削除。 Point1 事業規制の強化 ◎ 日雇派遣(日々又は30日以内の期間を定めて雇用する労働者派遣)の原則禁止 ※適正な雇用管理に支障を及ぼすおそれがないと認められる業務や、雇用機会の確保が特に困難な場合等は例外が設けられている。 ◎ グループ企業内派遣の8割規制 ◎ 離職した労働者を離職後1年以内に派遣労働者として受け入れることを禁止 Point2 派遣労働者の無期化や待遇の改善 ◎ 派遣会社に対し、有期雇用の派遣労働者から無期雇用に転換推進することを努力義務化 ◎ 派遣労働者の賃金等の決定にあたり、同種の業務に従事する派遣労働者受入企業の労働者との均衡を考慮 ◎ 派遣料金と派遣労働者の賃金の差額の派遣料金に占める割合(いわゆるマージン率)などの情報公開を義務化 ◎ 雇入れ等の際に、派遣労働者に対して、1人当たりの派遣料金の額を明示 ◎ 労働者派遣契約の解除の際の、派遣会社及び受入企業における派遣労働者の新たな就業機会の確保、休業手当等の支払いに要する費用負担等の措置を義務化 Point3 違法派遣に対する迅速・的確な対処 ◎ 違法派遣の場合、受入企業が違法であることを知りながら派遣労働者を受け入れている場合には、受入企業が派遣労働者に対して労働契約を申し込んだものとみなす。 ◎ 処分逃れを防止するため、労働者派遣事業の許可等の欠格事由を整備 施行日 平成24年10月1日施行。 ただし、Point3のうち労働契約申込みなし制度は3年経過後の平成27年10月1日から施行される。 2 改正内容 以下、今回の改正内容のうち、派遣労働者を受け入れる企業(派遣先)に関連のあるものを重点的に触れていくこととする。 Point1 事業規制の強化 ●離職した労働者の労働者派遣禁止 派遣会社は、離職後1年以内の労働者を以前勤務していた会社に派遣してはならないこととされた。 また、受入企業は、離職後1年以内の退職者を派遣労働者として受け入れてはならないこととされている。 なお、60歳以上の定年退職者は、この禁止規定の対象から除かれている。 (注)受入企業は、派遣会社から派遣労働者名等の通知を受けた場合に、その派遣労働者が以前勤務していた労働者で、離職後1年以内のものであるときは、その旨を派遣会社に通知しなければならない。 ※厚生労働省ホームページより Point2 派遣労働者の無期化や待遇の改善 (1)業務内容に係る情報提供義務の創設 派遣労働者や受入企業が、より適切な派遣会社を選択できるようインターネットなどにより情報を提供することが義務づけられた。 派遣会社が情報提供を行わなければならないとされるものは、以下のとおりである。 (2)労働者派遣契約の解除に当たって講ずべき措置 労働者派遣契約の当事者(派遣会社と受入企業)は、派遣契約の解除にあたって講ずる派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置に関する事項を定めなければならないこととされた。この規定は、従来は告示で定められていたものを法令にて定めたものである。 なお、労働者派遣の役務の提供を受ける者(受入企業)は、都合により派遣契約を解除するときは派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置を講じなければならない。 Point3 違法派遣に対する迅速・的確な対処 (1)派遣事業の許可取消し(又は事業廃止)事由等の追加 関係派遣先への労働者派遣の制限に違反した派遣会社が、厚生労働大臣からの指導又は助言を受けた場合であって、必要な措置をとるべきことの指示を受けたにもかかわらず、なお違反をしているものについて、一般労働者の許可取消し又は特定労働者派遣事業の事業廃止命令に係る事由に追加された。 (2)労働契約申込みなし制度等の創設 法令違反(違法行為であることを知らず、かつ、知らなかったことに過失がないときを除く)を行った受入企業は、派遣労働者に対し、労働契約の申込みをしたものとみなされる。 (注)労働契約申込みなし制度は、平成27年10月1日から施行される。 その他 (1)受入企業への通知 派遣会社は、受入企業に、派遣労働者が「期間を定めないで雇用する労働者であるか否かの別」を通知しなければならない。また、変更があったときには遅滞なくその旨を受入企業に通知しなければならない。 (2)派遣先の協力 派遣労働者を受け入れる企業は、派遣労働者と受入企業の労働者の均衡を考慮した待遇の確保が適切に講じられるようにするため、派遣会社の求めに応じ、受入企業の労働者に関する情報提供等の必要な協力をするように努めなければならない。 (注)受入企業は、派遣会社の求めに応じ、派遣労働者と同種の業務に従事する受入企業の労働者の賃金水準、教育訓練等に関する情報を提供するよう努め、また、派遣会社が派遣労働者の職務の成果等に応じた適切な賃金を決定できるよう、派遣会社からの求めに応じ、派遣労働者の職務の評価等に協力するよう努めることとされている。 (3)期間を定めないで雇用される労働者に係る労働契約申込義務 受入企業は、派遣期間の制限のない業務(いわゆる26業務)に3年を超える期間継続して派遣労働者を受け入れている場合、派遣労働者に対し、労働契約の申込みをしなければならないとされるが、派遣労働者が「期間を定めないで雇用される労働者」である旨を派遣会社から通知されている場合は、労働契約申込み義務の適用されない。(法45条の5) (4)法違反の是正に係る勧告 受入企業に対する法に違反した場合の是正の勧告について、指導又は助言の前置を要しないものとされた。 3 改正点のまとめ 派遣会社(派遣元)と受入企業(派遣先)に新たに課される事項のまとめ。 ※厚生労働省ホームページより (了) 【参考】厚生労働省ホームページ 「労働者派遣法が改正されました」
《速報解説》 財務諸表等規則等(退職給付会計) の改正ポイント 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ 改正された規則等 平成24年9月21日、金融庁は次の財務諸表等規則などを改正した。 これは、平成24年5月17日に、企業会計基準委員会から公表された「退職給付に関する会計基準」及び「退職給付に関する会計基準の適用指針」等を踏まえた改正である。 Ⅱ 主な改正内容等 退職給付会計基準などにおいて次の規定が設けられたことに対応して、財務諸表等規則などを改正している。 Ⅲ 適用時期 平成25年4月1日以後に開始する事業年度及び連結会計年度に係る財務諸表及び連結財務諸表について適用する。 平成26年4月1日以後に開始する中間連結会計期間に係る中間連結財務諸表並びに同日以後に開始する連結会計年度に属する四半期連結累計期間及び四半期連結会計期間(以下「四半期連結累計期間等」という)に係る四半期連結財務諸表について適用する。 平成25年4月1日以後に開始する中間連結会計期間に係る中間連結財務諸表並びに同日以後に開始する連結会計年度に属する四半期連結累計期間等に係る四半期連結財務諸表について適用できる。 (了) 【参考】金融庁ホームページ 「「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則に規定する金融庁長官が定める企業会計の基準を指定する件」等の一部を改正する件について」
《速報解説》 「平成25年分以後の 所得税に適用される 給与所得者の特定支出の控除の特例 の概要等」について アクタス税理士法人 代表社員 税理士 加藤 幸人 1 概要 平成24年9月19日、国税庁は、「平成25年分以後の所得税に適用される給与所得者の特定支出の控除の特例の概要等について(情報)」をHP上に公表した。 これは、平成24年税制改正で見直された「給与所得者の特定支出控除の特例」について執務の参考となるよう取りまとめられた別冊である。 内容は、「解説編」と「質疑応答編」に分かれている。解説編では、特定支出控除の改正後の内容と特定支出(通勤費、転居費、研修費、資格取得費、帰宅旅費、勤務必要経費)の説明と留意点を記載している。質疑応答編は16問からなり、改正項目についての取扱いをQ&A方式で説明している。 2 特定支出控除の改正内容 特定支出控除の改正は、給与所得者の実額控除の機会を拡大する観点から、適用範囲の拡大が行われた。具体的には、次の2点となる。 (出典:財務省 平成24年度税制改正パンフレット) 特定支出控除の適用判定の基準は、改正前では、例えば年収400万円であれば134万円、年収700万円であれば190万円となり、特定支出がこの額を超えるのは極めて稀で、本制度の利用者はこれまでほとんどいなかった。 【参考】内閣府ホームページ 平成22年度 第8回 税制調査会(11月9日)個人所得課税(所得税)〔資料〕11P ※PDFファイル 今回の改正により、その基準が年収400万円であれば67万円、年収700万円であれば95万円となり、制度の利用者が増えることが想定される。 ■特定支出控除が適用できるために最低限必要となる特定支出額 3 別冊において注目すべき点 公表された別冊において注目すべき点は、新たに拡充された勤務必要経費になろう。 特定支出となる衣服費では、職務の遂行に直接必要なものとして給与等の支払者により証明がされた場合、背広を購入するための支出でも該当することになる。社内規定で明確に背広着用を定めていない場合でも、勤務場所において着用することが慣行であれば、よいとされている(質疑応答編 10)。 特定支出となる交際費では、接待等の相手方が給与等の支払者の得意先、仕入先その他職務上関係のある者となり、職場における同僚との親睦会や慶弔のための支出は、該当しないことになる(質疑応答編 14)。 なお、特定支出控除の対象となる勤務必要経費は、あくまで65万円までとされ、これ以上の支出は控除の対象とならないので注意が必要である。 (了) 【参考】国税庁ホームページ ・平成25年分以後の所得税に適用される給与所得者の特定支出の控除の特例の概要等について(情報)
《速報解説》 所得税関連通達の 一部改正について 弁護士 木村 浩之 平成24年9月12日付けで、以下の所得税に関連する3件の通達につき、一部改正がなされた。 今回の通達改正は、平成23年から平成24年にかけての税制改正(下記経緯参照)を受けて、所得税の取扱いについて一定の整備がなされたものである。 まず、所得税については、東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源を確保することを目的とした、いわゆる復興財確法(平成23年法律第117号)の制定により、平成25年分以降、従来の所得税に加えて、新たに復興特別所得税が課されることになっている。 そこで、今般、復興特別所得税の申告納付に関する細則(確定申告書の記載事項)につき、従来の所得税と同様に取り扱われることを明らかにするため、①所得税基本通達の一部改正がなされたものである。 次に、租税特別措置法(所得税関係)については、平成23年12月改正(平成23年法律第114号)及び平成24年3月改正(平成24年法律第16号)により、事業所得等の課税の特例、住宅・土地税制等に関する規定の改廃・創設がなされている。 そこで、今般、改正された規定に関する用語・引用条文等の整理、廃止された規定に関する定めの廃止、新たに創設された規定に関する定め(既存の通達と同様の定め)の新設等を行うため、②措置法通達(所得税関係)の一部改正がなされたものである。 最後に、震災特例法については、東日本大震災による被災者を支援するため、税制上の緊急対応(第1弾)として平成23年4月に制定され、その後、第2弾の対応として平成23年12月に一部改正がなされている。 さらに、平成24年3月に福島復興再生特別措置法が制定されたことに伴い、所得税に関しては、平成24年3月改正により、事業所得等の課税の特例(特別償却・特別控除)に関する規定の創設等がなされている。 そこで、今般、平成24年3月改正によって創設等された規定につき、同様の制度(特別償却・特別控除)に関する規定についての既存の通達と同様に取り扱われることを明らかにするため、③震災特例法通達(所得税編)の一部改正がなされたものである。 (了) 【参考】国税庁ホームページ ・「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達) ・「租税特別措置法に係る所得税の取扱いについて」の一部改正について(法令解釈通達) ・「東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律関係通達(所得税編)の制定について」の一部改正について
《速報解説》 法人税基本通達等の 一部改正について OAG税理士法人 税理士 三原 万里子 国税庁は、9月14日、平成23年12月及び平成24年度の税制改正に対応し、『法人税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)』(平成24.9.12課法2‐17,課審6‐15)を公表した。 主な改正点は、次のとおりである。 1 法人税基本通達関係 平成23年12月の税制改正により、貸倒引当金繰入額の損金算入できる法人の範囲が限定されたが、 本通達では、貸倒引当金の設定対象となる「リース資産の対価の額に係る金銭債権」について、リース契約が中途で解除された場合に発生することとなるいわゆる規定損害金に係る金銭債権が含まれることを留意的に明らかにしている。(法基通11‐2‐1の3新設) 2 租税特別措置法関係通達(法人税編)関係 ① 租税特別措置法における適用額の制限措置 平成23年12月の税制改正により、試験研究を行った場合の法人税額の特別控除制度における特別控除税額について、確定申告書等に添付された書類に記載された試験研究費の額及び特別試験研究費の額以外の金額(法人税額や平均売上金額を計算する上での売上金額など)に変更がある場合には、変更後の金額により修正申告や更正の請求をもって特別控除税額を増加させることができる旨の改正が行われたことから、控除額を制限する従来の通達は廃止された。(措通42の4(3)‐4廃止) ② 特定資産の買換えに係る課税の特例関係 平成24年度の税制改正により、特定資産のいわゆる9号買換えについて買換資産の見直しが行われ、土地等の範囲が、①特定施設の敷地の用に供される土地等及び②駐車場の用に供される土地等で建物又は構築物の敷地の用に供されていないことにやむを得ない事情があるもので、その面積が300㎡以上のものに限定された。 本通達では、特定施設の敷地の用に供される土地等とは、取得時において特定施設の敷地の用に供されるのが確実であると認められるものを含むことを明らかにしている。 また、特定施設の敷地の用に供されることが確実であると認められるものに該当するものとは、例えば、具体的な計画があるものが該当する旨を明らかにしている。 このほか、長期所有の土地等の買換えに係る面積の判定、特定施設と特定施設以外の施設から成る一の施設の敷地の用に供される土地等の面積の判定などを明らかにしている。(措通65の7(1)‐30の2~4新設) ③ 過大支払利子税制 平成24年度の税制改正により、関連者等への一定の純支払利子等の額が調整所得金額の50%を超える場合は、一定の金額を損金の額に算入しないこととする制度(いわゆる「過大支払利子税制」)が創設された。 本通達では、利子に準ずるものに、金銭債権を債権金額を超える又は満たない価額で取得した場合における金利調整差額が含まれることを明らかにしている。 このほか、除外対象特定債券現先取引等に係る平均負債残高の計算方法等が創設された。(措通66の5の2‐1~16新設) 3 その他 その他には、「耐用年数の適用等に関する取扱通達関係」(以下、耐通)で200%定率法に係る未償却残額表が追加され(耐通付表7(3))、「東日本大震災の被災者等に係る国税関係法律の臨時特例に関する法律関係通達(法人税編)関係」(以下、震災特例通達)では、 避難解除区域において機械等を取得した場合の特別償却又は法人税額の特別控除(震災特例通達17の2の2‐1~3)、避難解除区域において避難対象雇用者等を雇用した場合の法人税額の特別控除(震災特例通達17の3の2‐1)等が創設されている。 (了) 【参考】国税庁ホームページ ・法人税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)