公開日: 2013/05/16 (掲載号:No.19)
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企業不正と税務調査 【第8回】「従業員による不正」 (2)営業部門・購買部門社員による横領

筆者: 米澤 勝

企業不正と税務調査

【第8回】

「従業員による不正」

(2) 営業部門・購買部門社員による横領

 

税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝

 

最も不正を行う機会に接している従業員は経理部門の社員であり、しかも出納業務を1人で任されている者であることは前回説明したとおりである。

今回は、「経理部門以外の従業員」のうち、営業部門・購買部門社員による横領事件を取り上げる。

前回の経理部門社員による不正との大きな違いは、単独で不正を行うことはできず、必ず「共犯者」が存在するということである。したがって、不正の発見にあたっては、共犯者の存在をうかがわせるような兆候を見つけることがポイントになる。

 

1 営業部門社員による不正の事例

ここでは、ネットワンシステムズ株式会社(以下、「ネットワン社」と略称する)が去る2013年3月8日に公表した「当社元社員による不正行為に係わる調査結果に関するお知らせ」をもとに、同社の元社員が中心となって行なった不正――架空発注した外注費の横領――について、その手口、不正発覚を回避するための隠蔽工作、不正が長く発見されなかった理由などを検証したい。

なお、本事例の詳細については、拙稿「会計不正調査報告書を読む【第6回】」を参照いただきたい。

(1) 会社による発表(3月8日付リリースより引用)

当社元社員が外部業者らと共謀して、架空の外注費名目で当社に対する不正な請求を行わせる手口で金員を騙取していたことが判明いたしました。なお、当社元社員は平成25年2月28日付で懲戒解雇いたしました。また、特別調査委員会の調査報告書により、元社員の部下1名の関与が判明しましたので、厳正な処分をいたします。
本件不正行為は、平成17年から平成24年にかけて行われ、被害金額は7億8,910万円であることが確定いたしました。

(2) 不正の手口
不正の手口としては、Z社を架空の発注先として使い、ネットワン社の得意先の銀行でシステム部門を担当する元行員Bが横領する金員の原資となる商談を銀行内で確実に実行させるよう手を尽くし、ネットワン社元社員Aがネットワン社社内手続を行わせて、Z社に対して架空発注と支払いを行わせ、別のシステム会社の元社員Cが騙取した金銭を現金化して配分する役目を分担していた。

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企業不正と税務調査

【第8回】

「従業員による不正」

(2) 営業部門・購買部門社員による横領

 

税理士・公認不正検査士(CFE) 米澤 勝

 

最も不正を行う機会に接している従業員は経理部門の社員であり、しかも出納業務を1人で任されている者であることは前回説明したとおりである。

今回は、「経理部門以外の従業員」のうち、営業部門・購買部門社員による横領事件を取り上げる。

前回の経理部門社員による不正との大きな違いは、単独で不正を行うことはできず、必ず「共犯者」が存在するということである。したがって、不正の発見にあたっては、共犯者の存在をうかがわせるような兆候を見つけることがポイントになる。

 

1 営業部門社員による不正の事例

ここでは、ネットワンシステムズ株式会社(以下、「ネットワン社」と略称する)が去る2013年3月8日に公表した「当社元社員による不正行為に係わる調査結果に関するお知らせ」をもとに、同社の元社員が中心となって行なった不正――架空発注した外注費の横領――について、その手口、不正発覚を回避するための隠蔽工作、不正が長く発見されなかった理由などを検証したい。

なお、本事例の詳細については、拙稿「会計不正調査報告書を読む【第6回】」を参照いただきたい。

(1) 会社による発表(3月8日付リリースより引用)

当社元社員が外部業者らと共謀して、架空の外注費名目で当社に対する不正な請求を行わせる手口で金員を騙取していたことが判明いたしました。なお、当社元社員は平成25年2月28日付で懲戒解雇いたしました。また、特別調査委員会の調査報告書により、元社員の部下1名の関与が判明しましたので、厳正な処分をいたします。
本件不正行為は、平成17年から平成24年にかけて行われ、被害金額は7億8,910万円であることが確定いたしました。

(2) 不正の手口
不正の手口としては、Z社を架空の発注先として使い、ネットワン社の得意先の銀行でシステム部門を担当する元行員Bが横領する金員の原資となる商談を銀行内で確実に実行させるよう手を尽くし、ネットワン社元社員Aがネットワン社社内手続を行わせて、Z社に対して架空発注と支払いを行わせ、別のシステム会社の元社員Cが騙取した金銭を現金化して配分する役目を分担していた。

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連載目次

筆者紹介

米澤 勝

(よねざわ・まさる)

税理士・公認不正検査士(CFE)

1997年12月 税理士試験合格
1998年2月 富士通サポートアンドサービス株式会社(現社名:株式会社富士通エフサス)入社。経理部配属(税務、債権管理担当)
1998年6月 税理士登録(東京税理士会)
2007年4月 経理部からビジネスマネジメント本部へ異動。内部統制担当
2010年1月 株式会社富士通エフサス退職。税理士として開業(現在に至る)

【著書】

・『新版 架空循環取引─法務・会計・税務の実務対応』共著(清文社・2019)

・『企業はなぜ、会計不正に手を染めたのか-「会計不正調査報告書」を読む-』(清文社・2014)

・「企業内不正発覚後の税務」『税務弘報』(中央経済社)2011年9月号から2012年4月号まで連載(全6回)

【寄稿】

・(インタビュー)「会計監査クライシスfile.4 不正は指摘できない」『企業会計』(2016年4月号、中央経済社)

・「不正をめぐる会計処理の考え方と実務ポイント」『旬刊経理情報』(2015年4月10日号、中央経済社)

【セミナー・講演等】

一般社団法人日本公認不正検査士協会主催
「会計不正の早期発見
――不正事例における発覚の経緯から考察する効果的な対策」2016年10月

公益財団法人日本監査役協会主催
情報連絡会「不正会計の早期発見手法――監査役の視点から」2016年6月

株式会社プロフェッションネットワーク主催
「企業の会計不正を斬る!――最新事例から学ぶ,その手口と防止策」2015年11月

 

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