山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第76回】 「法人税法における3つの誤り」 税理士 山本 守之 1 法人税法のうち損金計上が否認されるもの 通常の営業費のうち損金不算入とされるものが大きく3つあります。①役員給与の損金不算入、②寄附金の損金不算入、③交際費等の損金不算入です。これらの現行法での取扱いに対して、法人は納得いかないものです。 2 役員給与 (1) 役員給与の損金性の判断基準 法人の役員は資本主によって選任され、その委任に基づいて業務を執行する(会社法329)立場にあります。税法では、役員がこのような特殊な地位にあることも配慮して、その給与の損金算入について次のような規制を設けています。 役員給与(①退職給与、②新株予約権によるもの、③使用人兼務役員の使用人分給与は除かれます)のうち次のもの以外は損金の額に算入しません。 (注) 「事前」とは、その給与に係る職務執行の開始の日と会計期間開始の日から3月を経過する日とのいずれか早い日。 国税庁では、「役員給与に関するQ&A」(平成18年6月)の下記Q3の事例について、次のように答えています。 このように、役員給与の損金算入要件が平成18年度から大きく変わったことについて、財務省の説明では、「(平成18年改正前までは)役員に支給する給与が定期のものか臨時的なものかという支給形態によって損金算入の可否を区別していたが、改正後は、役員給与がその職務執行前にあらかじめ支給時期・支給額が定められていたものに基づくものであるか否かによって損金算入の可否を区分することとされた。」(『税務弘報』2006年6月臨時号小崎純弥稿)としていました。 この場合の職務執行前にあらかじめ支給時期が定められている形態を、次の3つに区分しています。 しかし、筆者は、役員給与が職務執行前にあらかじめ支給時期、支給額が定められているか否かで損金性判断の基準とすることは適当ではないと考えています。 役員給与は法律通りだと、企業会計基準委員会の次のような考え方と反します。 そこで、「あらかじめ支給額と支給時期が定められた役員報酬・賞与」と「算定手続等の適正性・透明性が確保された業績連動型報酬・賞与」を損金の額に算入することにしたとされています。 実は、平成18年度改正では、別段の定めとして役員給与を原則損金不算入としました。その理由について恣意性排除だと財務省は説明していますが、これは理論的に問題があります。 役員給与は役員の法人に対する役務提供の対価であるから、原則はあくまで損金の額に算入されるべきで、一定のものを別段の定めとして損金不算入とする立法は認められるでしょう。 しかし、現行法は役務提供の対価である役員給与を原則損金不算入とし、損金の額に算入されるものについてだけ規定するという規定手法をとっており、租税法の立法として認められるものではありません。 法人税法第34条については、財務省に勤務していた者からも次のような批判があります。財務省は反省して見直すべきでしょう。 (朝長英樹「法人税制改革に向けて-取り組むべき課題の概要-」『税経通信』Vol.62、No.10、2007年7月号、118頁) ここでいう「恣意性排除」とは、節税をもくろむ納税者が役員給与を利用して租税回避をはかる事例がありますから、いっそ役員給与を損金不算入とし、一定のもの(定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与)だけを損金算入とすれば租税回避を防止できるという岡引的な発想で書かれていることを意味しているのかもしれません。 理論的に問題があっても法律として制定されてしまえば、訴訟で争っても救済されません。法解釈と異なり、立法上の問題点は「法の支配」の論理で解決できないのでしょう。そのため租税法律主義以前の問題のような気がしてなりません。 (2) 日税連による重点要望事項 平成23年11月9日の第16回税制調査会に日税連が提出した平成24年度税制改正に関する重点要望事項では、次のように書かれています(傍点筆者)。 法人税法第34条の規定について財務省では次のように述べています。 (「平成19年度の法人税関係(含む政省令事項)の改正について」『租税研究』日本租税研究協会、平成19年7月、23頁) また、税の実務雑誌や日税連の機関紙(『税理士界』)でもこれにならって、当時同様の解説を載せていました。 「役員給与を原則損金不算入としたわけではない」という主張が、平成19年ごろ異常な形で急激に増えていました。 しかも、その論理は財務省の説明と全く同じで、論文の中の事例等も同一であり、どうやら「ある力」が働いているようでした。 上記の「役員給与を原則損金不算入としたわけではない」という主張がありますが、役員給与は法人税法第22条第3項からみて損金であり、法人税法第34条により本質的に損金性を有していることは当然です。しかし、法人税法第34条の第1号から第3号以外は損金不算入となってしまうことから「原則損金不算入ではないか」と指摘されているのです。 「立法技術上、このように規定しなければならなかった」というのは、立法者の言い訳に過ぎません。 損金の額に算入すべき役員給与を原則損金不算入とする別段の定めを置くことは、違法といえないまでも立法作法に反すると、多くの実務家が指摘しているのです。 これは筆者の主張と同じです。日税連が筆者の考え方を理解するようになったことを喜ぶべきでしょうか、悲しむべきでしょうか。 3 寄附金 (1) 寄附金課税の趣旨 寄附金の損金算入についての規制措置は昭和17年2月の旧臨時租税措置法の改正によって設けられました。創設の当時は太平洋戦争の最中であり、寄附金が激増し、一方で税率が非常に高率であったことから、法人の支出する寄附金を全額損金算入するとすれば、国の財政収入の確保を阻害するばかりではなく、寄附金の出捐による法人の負担が、法人税の減収を通じて国に転嫁され、課税の公平上適当ではないとする考えから創設されました。 平成に入ってからも寄附金損金不算入の趣旨を次のように述べたものがあります。 (渡辺淑夫著『寄附金課税の知識』1989年、財経詳報社) また、寄附金については、「事業関連性」との関係から次のように処理されています。 (2) 寄附金の額 法人税法37条7項では、「・・・いずれの名義をもってするかを問わず、内国法人が金銭その他の資産又は経済的利益の贈与又は無償の供与をした場合」には寄附金の額が生ずることを規定し、同条8項では低廉譲渡又は低廉供与をした場合の実質的な贈与又は無償の供与部分は寄附金の額に含まれると規定しています。 注意したいのは、「合理的な経済目的その他の事情」が存すれば寄附金課税は行われないことです。 もっとも、法人税基本通達9-4-1~2のように基本通達で寄附金とするものは適当ではないとして、除外しているものもあります。 (3) 親会社の責任 B社はA、C両社の指導の下に余剰人員の整理、諸経費縮減などの経営努力をしています。 親会社A社は部品の供給をB社に依存しているため、B社が倒産すればその供給がストップし、多大な損失を受けます。つまり、B社支援はA社が蒙るであろう、より大きな損失を回避するためであると考えられます。 また、法人は社会的な存在であり、子会社等が倒産すれば親会社の社会的信用に傷がつき、有形、無形の損失を受けます。B社支援はこのような損失を回避するためであると考えられます。 課税庁の公式解説でも、「近年多く発生している子会社等の再建支援事案においては、無利息・低利融資の他に、債権放棄、資金贈与、経費負担等の方法による利益供与も行われているが、これらの方法による利益供与についても、無利息・低利融資と同様に、子会社等の倒産を防止するためにやむを得ず採られた措置と認められる場合には、単純に贈与とみるべきではない。」(『法人税基本通達逐条解説』税務研究会出版局)としています。 もちろん、この場合の再建(整理)計画については経済的合理性が担保されていなければなりません。このため寄附金課税が行われないと判断するには、①支援額の合理性、②支援者による債権管理の有無、③支援者の範囲の相当性、④支援割合の合理性が検討されることになるでしょう。 一般に法人税基本通達9-4-2の適用は、次の要素を主体に判断されます。 課税庁では、子会社の整理又は再建をする場合の損失負担等に経済的合理性を有しているか否かは、次の項目について総合的に検討することにしています。 子会社等の整理の場合は、上記のⒷは倒産の危機に至らないまでも経営成績が悪いなど、放置した場合には今後より大きな損失を蒙ることが社会通念上明らかであるかを検討します。また、Ⓔは子会社等の整理には一般的にその必要はないですが、整理に長期間を要するときは、その整理計画の実施状況等の管理を行うこととしているかを検討することになります。 ちなみに、アメリカでは、親会社が子会社を支援するものは寄附金として課税しません。親会社が子会社を支援するのは当然であるから、寄附金を損金不算入としないのです。日本のように子会社の支援を課税する考え方はないのです。 4 交際費等 (1) 交際費等の課税要件 法人の各事業年度の所得の金額の計算上損金不算入の対象となる交際費等の範囲については、「交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの(専ら従業員の慰安のために行われる運動会、演芸会、旅行等のために通常要する費用その他政令で定める費用を除く。)をいい、〈中略〉」(措法61の4④)と定義されています。 ところで、現実に裁判例で示される交際費等の課税要件(成立要件)は、次のように「旧二要件説」「新二要件説」「三要件説」に区別することができます。 (2) 萬有製薬事件と課税要件 上記のように交際費等の課税要件は3つに区別されており、課税要件を明確に定めることのできない国税の対応は納税者としては困るところです。以下ではこのような状況において、三要件説が必要とされた代表的な事例として、「萬有製薬事件」を紹介します。 製薬会社であるX社は、主として医家向医薬品の製造販売を事業内容としています。その医薬品を購入している大学病院の医師等から、発表する医学論文が海外の雑誌に掲載されるようにするための英訳文につき、英文添削の依頼を受け、これをアメリカの添削業者2社に外注していました。 X社は医師等から国内添削業の平均的な英文添削料金を収受しましたが、X社がアメリカの添削業者に支払った添削料金はその3倍以上で、その差額は次のようになっていました。 結局、上記の差額金額はX社が負担していたことになります。 これに対して国側は、英文添削を依頼した医師等はX社の「事業に関係のある者」に該当し、添削料の差額負担分は、支出の目的が医師等に対する接待等のためであって交際費等に該当するとして更正処分(1994(平成6)年3月期)をしました。 この事件は審査請求から訴訟に発展し、国税不服審判所の裁決及び第一審の判決(東京地裁)ではいずれも国側処分を是としましたが、控訴審(東京高裁)では納税者が逆転勝訴し、国側は上告を断念したため、控訴審判決が確定しました。 交際費等の第3の成立(課税)要件は、行為の態様として「接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為」であることが必要であるとされていますが、判決では、交際行為(接待等に該当する行為)を「一般的に見て、相手方の快楽追求欲、金銭や物品の所有欲などを満足させる行為をいうと解される。」としていることは注目すべきです。 この点は国側の主張である「支出の目的がかかる相手方に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のためであれば足り、接待等が、その相手方において、当該支出によって利益を受けていると認識できるような客観的状況の下に行われることは必要でない。(中略)交際費等に該当する接待等の行為は、相手方の欲望を満たすものである必要はない。」とは大いに異なるところです。 結局、判決では、東京高裁は、行為の態様からみると、 として交際費課税を取り消したのです。 (了)
居住用財産の譲渡損失特例[一問一答] 【第1回】 「居住用財産の譲渡損失特例に係る「措法41の5」と 「措法41の5の2」の主な相違点」 -居住用財産の譲渡損失特例の概要- 税理士 大久保 昭佳 Q 居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除に係る2つの特例のその適用要件に係る類似点及び相違点の概要を説明してください。 A 適用要件ごとに比較すると次のとおりです。 (1) 居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例(措法41の5) (2) 特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例(措法41の5の2) ●○●○解説○●○● 上記(1)の「居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例(措法41の5)」(以下、本連載では「居住用財産買換の譲渡損失特例」という)は、平成10年度税制改正において、地価高騰期に住宅ローンを組んで住宅を取得したものの、バブルがはじけ、地価は大幅に値下がりし、子供の成長等のライフステージに応じた住宅買換えが思うように進まない経済状況を踏まえ、住宅市場の活性化を通じて景気対策にも資するために創設された特例です。 上記表の概要のとおり、一定の要件の下で、居住用財産の譲渡損失の金額がある場合には、その譲渡損失について、その譲渡年と翌年以後3年内の各年分の総所得金額、退職所得金額又は山林所得金額の計算上控除する特例となっています。 そして、上記(2)の「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例(措法41の5の2)」(以下、本連載では「特定居住用財産の譲渡損失特例」という)は、平成16年度税制改正において、新たに住宅を取得しなくとも、住宅ローンが残っている住宅を譲渡した場合の一定の損失については、同様の損益通算及び繰越控除できる特例が追加されました。 従来、土地等建物を譲渡し損失が発生した場合には、別荘等の生活に通常必要でない財産の譲渡損失以外は、その年度の総所得金額等との損益通算が原則可能でしたが、その制度は平成16年度以降廃止されたため、現行税制下、居住用財産の譲渡損失特例は、総所得金額等との損益通算及び繰越控除が唯一可能な特例です。 【第2回】以降から、その適用要件に係る詳細を一問一答形式により解説していきます。 (了)
取引先企業が倒産したときに対応すべき 税務・会計上の留意事項 【第1回】 「貸倒損失及び貸倒引当金の税務処理」 公認会計士・税理士 新名 貴則 新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、世界的に経済が大打撃を受けており、経営状況が悪化する企業が増加している。政府や自治体が様々な給付金等を創設し、企業の救済を図っているが、残念ながら倒産する企業も出ている。 そこで本連載では、このような情勢に応じ、取引先企業が倒産したときに、税務・会計上どのような点に留意すべきかについて解説する。 【第1回】では税務上の留意点について解説する。 1 貸倒損失の計上 取引先企業が倒産し、その企業に対する売掛金等の債権が回収不能となった場合、その損失額を貸倒損失として計上することになる。ただし、税務上貸倒損失として損金算入が認められるためには、厳しい要件が設定されている。 具体的には、税務上、貸倒損失として損金算入が認められるためには、次の3つのいずれかに該当する必要がある。 「① 法律上の貸倒れ」の場合は、損金経理をしているか否かにかかわらず、その事実が発生した事業年度の損金に算入される。 「② 事実上の貸倒れ」の場合は、回収できないことが明らかになった事業年度に、貸倒れとして損金経理をすることで損金算入が認められる。ただし、当該債権について担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ貸倒れとして損金経理をすることはできないことに注意が必要である。 「③ 形式上の貸倒れ」の場合は、売掛債権(売掛金等のことであって、貸付金等は含まない)について、備忘価額を控除した残額を貸倒れとして損金経理することで、損金算入が認められる。 2 貸倒引当金の計上 (1) 税務上の貸倒引当金を計上できる法人 取引先企業が経営破綻に陥った場合、税務上、貸倒損失を損金算入することまでは認められなくても、貸倒引当金を計上することができる場合がある。ただし、平成23年12月の税制改正により、税務上の貸倒引当金の計上は次の法人だけに認められている。 資本金1億円超の法人においては、会計上貸倒引当金を計上したとしても、税務上は認められないため、全額否認する必要がある。 (2) 税務上の貸倒引当金の概要 税務上の貸倒引当金には、次の2種類がある。 取引先が倒産してしまった場合には、個別評価金銭債権として貸倒引当金を算定することになる。 (3) 個別評価金銭債権の貸倒引当金 税務上、個別評価金銭債権に係る貸倒引当金の計上が認められるためには、次の4つのいずれかに該当する必要がある。これらに該当する場合は、繰入限度額を上限として損金算入が認められる。 (※1) 次の金額を控除する。 ・債務者から受け入れた金額があるため、実質的に債権とみられない金額 ・担保権の実行、金融機関又は保証機関による保証債務の履行その他により取立て等の見込みがあると認められる金額 (※2) 債務者から受け入れた金額があるため実質的に債権とみられない部分の金額や、保証債務の履行その他により取立て等の見込みがあると認められる部分の金額を控除する。 一口に倒産と言ってもその意味するところは幅広く、取引先の状況に応じて判断する必要がある。貸倒損失を損金算入できる状況にまで至っている場合は貸倒損失を計上するが、そこまでには至っていなければ、貸倒引当金の計上を検討することになる。 本連載では、取引先が倒産した場合を想定しているので、「④ 外国の回収不能な公的債権」以外のいずれかに該当するか否かを検討することになる。 なお、次回は会計上の留意点について解説する。 (了)
組織再編税制、グループ法人税制及びグループ通算制度の 現行法上の問題点と今後の課題 【第8回】 「適格合併以外の税制適格要件」 公認会計士 佐藤 信祐 2 適格分割 (1) 按分型要件 分割型分割を行った場合において、按分型要件を満たすためには、分割により交付される分割対価資産が分割法人の発行済株式又は出資の総数又は総額のうちに占める当該分割法人の各株主等の有する当該分割法人の株式又は出資の数又は金額の割合に応じて交付されることが必要になる。 このような按分型要件が認められた趣旨として、当時の立案担当者は、「株主間で利益や損失の移転が行われるおそれがあるといった問題や贈与税・相続税対策に利用されるおそれがあるといった問題があることから、課税の特例の対象とはしないこととされています。」としたうえで、「特定の株主にだけ優先株が交付されることになったとしても、旧株が優先株であった株主に対して優先株を交付するとともに、旧株が普通株であった株主に対して普通株を交付し、これが株主を平等に扱うものとなっているような場合には、規定の趣旨に反するものではなく、ご質問の分割は、他の要件を満たす限り、適格分割型分割に該当すると考えられます。しかしながら、旧株が普通株のみである場合に、特定の株主には優先株を交付し、他の株主には普通株を交付することは、規定の趣旨に反すると言わざるを得ませんので、ご質問の分割は、適格分割型分割に該当しないということになるものと考えられます。」(※)と説明されている。 (※) 朝長英樹『企業組織再編成に係る税制についての講演録集』102頁(日本租税研究協会、平成13年)。 これに対し、現行会社法454条2項2号では、剰余金の配当について内容の異なる2以上の種類の株式を発行しているときは、配当財産の割当てについて株式の種類ごとに異なる取扱いを行うことが認められている。すなわち、平成17年改正前商法では想定されていなかったが、現行会社法では、普通株式1株に対して普通株式1株、優先株式1株に対して普通株式2株を交付するような分割型分割も容認されている。現行法人税法は、これに対応した規定となっていないため、このような分割型分割を行った場合には、按分型要件を満たすことができないという問題がある。 これに対し、当時、想定していたような非按分型分割は、現行会社法上、分社型分割を行った後に、全部取得条項付種類株式の取得対価として分割承継法人株式を交付する手続きになっている(会社法758八イ、763十二イ)。そして、全部取得条項付種類株式の取得対価としての分割承継法人株式の交付は分割による株式の交付ではないことから、法人税法上、分割型分割として処理せずに、「分社型分割+現物分配」として取り扱うべきであると解されている。そのため、分割型分割ではないことから、按分型要件を検討することはないということになる。 このように、現行法人税法では、会社法制の変化により、平成13年当時の法人税法に比べると按分型要件がかなり変容したということが言える。そのため、現行法上、按分型要件を残す必要性が乏しく、種類株式制度が充実した現行会社法にはなじまないと思われる。 (2) 分割の手続きによらない剰余金の配当 会社法上、株式会社だけでなく、合同会社も分割法人になることができるが(会社法2二十九・三十)、分割に伴って剰余金の配当を行うことができる分割法人は株式会社に限定されている(会社法758八、760八、763①十二、765①八)。そのため、分割法人が合同会社である場合において、分割型分割を行うためには、分割の日に分割法人が取得した分割承継法人株式を剰余金の配当として株主等に分配する必要がある。 さらに、会社法上、分割法人が株式会社である場合において、分割により分割法人の株主に対して交付することができる資産は、分割承継法人株式に限定されている(会社法758八ロ、760七ロ)。そのため、吸収分割により分割法人が分割対価資産として分割承継親法人株式の交付を受けた場合において、三角吸収分割型分割を行うためには、分割の日に分割法人が取得した分割承継親法人株式を剰余金の配当として株主に分配する必要がある。 このような場合であっても、分割対価資産のすべてが分割の日において分割法人の株主等に交付されている事実は変わらないため、法人税法上、分割型分割として取り扱うべきであると解されている(法法2十二の十一)。 しかしながら、そのように解するのであれば、全部取得条項付種類株式の取得対価としての分割承継法人株式の交付についても、「分社型分割+現物分配」ではなく、分割型分割として取り扱うべきである。そのため、解釈の一貫性の観点からは、会社法上、合同会社を分割法人とする分割型分割及び株式会社を分割法人とする三角分割型分割が認められていないことから、法人税法上も、「分社型分割+現物分配」として取り扱うべきである。すなわち、現行法人税法における三角分割型分割の制度は廃止すべきであると考えられる。 (3) 共同吸収分割 共同新設分割を行った場合において、事業関連性要件を満たすためには、分割法人の分割事業と他の分割法人の分割事業とが相互に関連している必要がある(法令4の3⑧一)。しかし、分割で許認可を移転することができない場合において、共同新設分割を行ったときは、分割を行ってから許認可を取得するまでの間は事業を開始することができない。そのため、実務上、ペーパー会社を設立し、許認可を取得させてから共同吸収分割を行うことが一般的である。 しかしながら、共同新設分割から共同吸収分割にスキームが変更になったことに伴って、分割法人から分割承継法人への吸収分割と他の分割法人から分割承継法人への吸収分割に分けたうえで、税制適格要件の判定を行うことになる。すなわち、分割法人の分割事業と他の分割法人の分割事業との間の事業関連性ではなく、分割法人の分割事業と分割承継法人の分割承継事業、他の分割法人の分割事業と分割承継法人の分割承継事業との事業関連性により事業関連性要件の判定を行うため、分割承継法人に事業そのものが存在しないと判断される場合には、事業関連性要件を満たすことができず、共同事業を行うための適格分割に該当させることができない。 さらに、許認可の申請のような事業の準備段階であっても、事業が存在すると判断することができる場合もあるが、事業の準備行為が分割法人から引き継ぐ事業のために行われている場合には、事業が存在すると判断することができない。 このような問題を解決するためには、分割承継法人がペーパー会社であることが明らかである場合には、分割法人の分割事業と他の分割法人の分割事業との間の事業関連性を検討するような改正が望ましいものの、組織再編税制全体の体系からすると、やや異質なものになってしまうため、そのような改正は難しいかもしれない。 3 適格株式交換等・移転 (1) 親子逆転型の株式交換 当事者間の完全支配関係がある場合において、完全支配関係内の株式交換に該当するためには、株式交換前に当該株式交換に係る株式交換完全子法人と株式交換完全親法人との間に当該株式交換完全親法人による完全支配関係があり、かつ、当該株式交換後に当該株式交換完全子法人と株式交換完全親法人との間に当該株式交換完全親法人による完全支配関係が継続することが見込まれている必要がある(法令4の3⑱一)。 このように、「当該株式交換完全親法人による完全支配関係」と規定されていることから、株式交換前に株式交換完全子法人と株式交換完全親法人との間に当該株式交換完全子法人による完全支配関係がある親子逆転型の株式交換を行った場合には、完全支配関係内の株式交換に該当しないことになる。ただし、非適格株式交換に該当したとしても、株式交換の直前に株式交換完全子法人と株式交換完全親法人との間に完全支配関係があることから、非適格株式交換に係る時価評価課税の対象にはならないことから、適格株式交換に該当した場合と同じ取扱いになる(法法62の9)。 これに対し、当事者間の支配関係がある場合において、支配関係内の株式交換に該当するためには、株式交換等前に当該株式交換等に係る株式交換等完全子法人と株式交換等完全親法人との間にいずれか一方の法人による支配関係があり、かつ、当該株式交換等後に当該株式交換等完全子法人と株式交換等完全親法人との間に当該いずれか一方の法人による支配関係が継続することが見込まれている必要がある(法令4の3⑲一)。 このように、株式交換前に当事者間の支配関係がある場合において、親子逆転型の株式交換を行ったときに、「株式交換等完全親法人による支配関係」と規定されず、「いずれか一方の法人による支配関係」と規定されていることから、どのように解するべきかが問題になる。 この点については、「当該いずれか一方の法人」による支配関係が継続することを要求していることから、株式交換前に支配している側の法人と株式交換後に支配している側の法人が同一であるという考え方もある。この考え方によれば、株式交換後に支配している側の法人が株式交換完全親法人であることから、株式交換前に支配している側の法人も株式交換完全親法人である必要があるため、親子逆転型の株式交換は支配関係内の株式交換に該当しないことになる。さらに、株式交換の直前に株式交換完全子法人と株式交換完全親法人との間に完全支配関係がないことから、非適格株式交換に該当した場合には、時価評価課税の対象になる。 しかしながら、そのように解するのであれば、完全支配関係内の株式交換について「いずれか一方の法人による完全支配関係」と規定するか、支配関係内の株式交換について「株式交換完全親法人による支配関係」と規定すべきであり、法人税法施行令4条の3第18項1号と19項1号で規定を変えるべきではない。そのため、株式交換前に当事者間の支配関係がある場合における親子逆転型の株式交換についても、支配関係内の株式交換に該当すると解すべきであるとする説も有力である。 このように、親子逆転型の株式交換における税制適格要件について、条文上、明確化を図る必要があると考えられる。 (2) スクイーズアウト 法人税法2条12号の17イ、ハに掲げられている完全支配関係内の適格株式交換、共同事業を行うための適格株式交換について、「株式交換」と規定されているのに対し、同号ロに掲げられている支配関係内の適格株式交換等については、「株式交換等」と規定されていることから、スクイーズアウトについては、支配関係内の適格株式交換等のみが認められていると解される。そのため、一部の親族等が保有する株式等を強制的に取得するためにスクイーズアウトを行った場合であっても、支配関係内の適格株式交換等に該当させるために、従業者従事要件及び事業継続要件を満たす必要がある。 スクイーズアウトの対価が金銭等であることから、共同事業を行うためのスクイーズアウトを行うことは考えにくいため、共同事業を行うための適格株式交換等の範囲にスクイーズアウトを含める必要はないと考えられるが、親族等をスクイーズアウトすることは容易に考えられるため、完全支配関係内の適格株式交換等の範囲にスクイーズアウトを含めるべきであると考えられる。 (3) 株式移転 第5回で解説したように、単独株式移転をグループ法人税制の対象に含めることで、税制適格要件を満たさなかったとしても、時価評価課税の対象から除外すべきである。 * * * 次回では、資本金等の額及び利益積立金額について解説を行う予定である。 (了)
「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例91(法人税)】 税理士 齋藤 和助 《基礎知識》 ◆役員給与の損金不算入(法法34①) 内国法人がその役員に対して支給する給与のうち定期同額給与、事前確定届出給与、業績連動給与のいずれにも該当しないものの額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない。ただし、上記のいずれかに該当するものであっても、不相当に高額な部分の金額は、損金の額に算入されない。 ◆事前確定届出給与(法法34①二) その役員の職務につき期限までに、納税地の所轄税務署長に対して、個人別に支給時期と支給金額を記載した「事前確定届出給与に関する届出書」を提出し、その届出どおりに支給をした場合には、その支給した役員給与が損金に算入される。届出書の提出期限は、原則として次のいずれか早い日までとされる(法令69④)。 事前確定届出給与は、「支給時期」、「支給金額」があらかじめ確定しており、実際にその確定していたとおりの支給がなされる場合の当該給与に限定されることから、所轄税務署長に届け出た支給額と実際の支給額が異なる場合には、そもそも事前に確定していたものとはいえないことから、事前確定届出給与には該当しないこととなり、その全額が損金不算入となる。 (了)
Q&Aでわかる 〈判断に迷いやすい〉非上場株式の評価 【第18回】 「〔第4表〕純粋持株会社、医療法人の業種区分の判定」 税理士 柴田 健次 Q A社は純粋持株会社に該当し、100%の株式を保有し支配している子会社のグループ経営企画、財務管理、監督等の業務を行っており、子会社からの受取配当金以外に収入はありません。 また、B社は医療法人(歯科診療所)に該当します。 この場合におけるA社及びB社の類似業種比準価額の計算で使用する業種目は、何に該当するのでしょうか。 A A社及びB社の業種目は、いずれも「その他の産業」に該当することになります。類似業種比準価額の計算で使用する業種目の判定は、本連載【第17回】の「類似業種比準価額の計算で使用する業種目の判定手順」をご確認ください。また、医療法人の出資の評価方法については、【第8回】をご確認ください。 ◆ ◆ ◆ ① 直前期末以前1年間の取引金額を日本標準産業分類に基づき区分 「日本標準産業分類(平成25年10月・第13回改定)」では、純粋持株会社は「細分類番号7282」に、医療法人(歯科診療所)は「細分類番号8331」に該当し、それぞれ下記の通り記載がされています。 7282 純粋持株会社 8331 歯科診療所 ② 対比表を基に業種目を確認 「日本標準産業分類の分類項目と類似業種比準価額計算上の業種目との対比表(平成29年分)」の区分に当てはめると下記の通りとなりますが、純粋持株会社は、「専門サービス業(純粋持株会社を除く)」とされており、医療法人は、「医療、福祉(医療法人を除く)」とされています。したがって、他の業種目においても純粋持株会社及び医療法人に該当する記載がありませんので、分類不能となり、「その他の産業」に該当することになります。 【日本標準産業分類の分類項目と類似業種比準価額計算上の業種目との対比表(平成29年分)(一部抜粋)】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 ※赤色の下線は筆者による。 ☆実務上のポイント☆ 日本標準産業分類と対比表を基に分類することが重要となりますが、純粋持株会社と医療法人については、日本標準産業分類と対比表がそのまま当てはまらない特殊なものとしておさえておきましょう。 (了)
国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第46回】 「外国の不動産の相続税評価額は鑑定評価額か財産税評価額か」 税理士 菅野 真美 - 質 問 - 被相続人が外国に賃貸用不動産を遺して亡くなりました。相続税評価額を算定するに際し、現地の固定資産税評価相当額と遺産税の申告の際に算定した鑑定評価額があります。 固定資産税評価額の方がはるかに低い価額なので、この価額を採用して借家権部分の控除はできますか。 ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ ▷国外不動産の価額はどのように評価するのか 相続税や贈与税の課税標準は相続、贈与時の財産の価額に基づくため、財産の価額をどのように評価するかが重要なポイントとなる。相続税法22条では「財産の取得の時における時価」に基づくとされているが、これではよく分からない。そこで詳細な算定方法が、財産評価基本通達で定められている。 財産評価基本通達では、宅地や建物は路線価や固定資産税評価額に基づいて算定されるとしているが、外国にある宅地や建物には路線価や固定資産税評価額が存在しないため、これらの方法を使った評価額の算定はできない。 この場合、「この通達の定めによって評価することができない財産については、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価するものとする。」(評基通5-2)とされているが、具体的にどのような価額が売買実例価額、精通者意見価格等を参酌した評価となるのか。 今回は、アメリカの賃貸不動産について2つの評価額があり、どちらの価額を採用するのか、また、評価額から借家権部分を控除して評価できるかで争われた裁決事例を紹介する(平成22年3月相続開始に係る相続税の各更正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分・棄却・H28-02-04公表裁決)(TAINSコード:J102-4-13)。 ▷どのような事案か 米国の賃貸不動産事業を営む任意組合契約を締結していた者について、平成22年3月〇日に相続が発生し、賃貸不動産の価額を評価する必要があった。 その賃貸不動産の評価額について、財産税の評価額に基づき、借家権割合を控除して相続税の申告をしたところ、課税庁が州遺産税の申告における鑑定評価額で更正処分を行い、処分に不服な納税者である相続人が審査請求した事案である。本件において、財産税評価額は鑑定評価額と比較して著しく低かった。 ちなみに米国では、遺産は死亡と同時に相続財産は遺産財団に移管され、相続の手続が進行することになるが(前回参照)、米国の相続税(遺産税)は連邦税と州税の2種類があり、当時、連邦税は課税が停止されていた。 ▷争点に対する納税者と課税庁の主張は 幹となる争点は、外国不動産の相続税評価額は鑑定評価額か、財産税評価額かであるが、納税者と課税庁の主張が対立する3つのポイントは次のとおりである。 ① 取引事例3件の合理性 納税者は、鑑定評価額は取引事例が3件程度であり売買事例として不適当であるが、財産税評価額は多くの比較取引事例の売買事例価額を考慮して計算され平準化される形で算出されているから、評価通達5-2による「売買事例価額、精通者意見価格等を参酌して評価するもの」として適切であると主張した。 他方課税庁は、鑑定価額は、近隣の比較取引事例各3件以上の売買事例価額を調整して考慮しているから「売買事例価額、精通者意見価格等を参酌して評価するもの」に該当する。財産税評価額は、売買事例価額と比較して大きく乖離していることから、「売買事例価額、精通者意見価格等を参酌して評価するもの」とは認められないと主張した。 ② 財産税評価額の基準日の合理性 納税者は、財産税評価額の評価基準日が平成21年1月〇日、平成22年1月〇日であるが、不動産取引価格は短期で大きく変動するとは考えにくいから、両日の価額が近似値であるなら、この間の平準化した価額が相続開始日の価額と同額であると推認できると主張した。 他方課税庁は、財産税評価額の基準日は、相続開始日ではないと主張した。 ③ 借家権の控除の合理性 納税者は、財産税評価額は、借家権の負担がない物件をサンプルとして算出したことが予測され、賃借権の設定による評価額の減少が評価されていないから、100分の30の借家権割合を控除すべきと主張した。 他方課税庁は、評価通達5-2に定める「この通達に定める評価方法に準じて」評価することができない財産だから、借家権の価額を控除することはできないと主張した。 ▷審判所の判断は 審判所は以下のように判断して、納税者の請求を棄却した。 ① 取引事例3件の合理性 鑑定価格は米国で申告を行うための適正な市場価格を求めるためのものであり、不合理なところは見当たらず、州当局から是認されていることを考慮すると、客観的な交換価値を表すため適正だ。比較取引事例が3件程度と少数であることをもって鑑定評価額が不適当という納税者の主張は採用できない。 ② 財産税評価額の基準日の合理性 財産税評価額の評価基準時は、相続開始日と異なるし、財産税評価額は収益方式により、必ずしも市場価格や売却価格を志向するということはできない。収益方式により評価された結果、市場価格との相関関係は見出せず、売買価額と比較すると物件によっては5割~6割、あるいは8割~9割程度低くなっている。さらに評価額の不安定性が市監査官より指摘されている。これらのことから、財産税評価額は時価と認めることができない。 ③ 借家権の控除の合理性 この不動産は評価通達に定める方法に準じて評価することができない財産だから、借家割合控除のみ許容すべき理由はない。 * * * このように本事案は、外国の不動産が相続財産になる場合の評価方法の算定にあたって参考になる事例である。 (了)
〈ツボを押さえて理解する〉 仕訳のいらない会計基準 【第5回】 「会計基準のプロフィール紹介(後編)」 -決算開示制度を支える会計基準、決算時や特定事象の出現時などに適用する会計基準- 公認会計士・税理士 荻窪 輝明 3回にわたって見てきた、会計基準のプロフィール紹介も今回がラストとなります。 今回も、第2回「会計基準の世界を俯瞰する」で分けたジャンルを踏まえて、その会計基準がどのジャンルにどの程度の割合で属しているかイメージを付しました。あくまで個人の見解によるものですが、こちらも参考にしてください。 今回は5つに分けたジャンルのうち「」と「」を見ていきます。 〔ジャンル属性の説明〕 * * * 3回にわたって、代表的な会計基準のプロフィールをみてきました。これだけ会計基準が多いことには驚きですが、「いきなりすべてを理解するぞ!」と気負うことなく、理解しやすい会計基準や興味をもった会計基準から触れていくうちに、自然と会計基準への理解も進んでいくはずです。 次回は、第1章の最終回です。会計基準のない世界から、何をきっかけに会計基準を適用していくのか、会計基準を適用する会社の財務諸表は適用しない会社の財務諸表と比べて何が異なるのかといった視点から、会計基準の理解を深めましょう。 (了)
経理担当者のための ベーシック会計Q&A 【第162回】 収益認識基準⑦ 「履行義務の充足による収益の認識」 仰星監査法人 公認会計士 渡邉 徹 〈事例による解説〉 〈会計処理〉(単位:千円) A社のX1年3月31日現在(期末決算)の仕訳は、次のとおりである。 ① 風力発電所新設工事に係る収益の計上 (※1) 発生費用のうち、回収が見込まれる額で収益を認識する。 ② 既存風力発電所の設備保守契約に係る収益の計上 (※2) 400×3/24(※3)=50 (※3) X0年4月1日~X0年12月31日までの9ヶ月の売上高は、第3四半期までに既計上であるものとする。 A社のX1年6月30日現在(第1四半期決算)の仕訳は、次のとおりである。 ③ 風力発電所新設工事に係る収益の計上 (※4) (取引価格5,500-タービンの調達原価1,500)×工事進捗度80%(2,000÷2,500×100%)+タービンの調達原価1,500=4,700 (※5) 4,700(※4)-500(※1)=4,200 ④ 風力発電所新設工事に係る原価の計上 (※6) 発生したその他の原価2,000+タービンの調達原価1,500=3,500 (※7) 3,500(※6)-500(※1)=3,000 ⑤ 既存風力発電所の設備保守契約に係る収益の計上 (※8) 400×3/24=50 〈会計処理の解説〉 1 会計処理 企業は約束した財又はサービスを顧客に移転することにより履行義務を充足した時に又は充足するにつれて、収益を認識します。 資産が移転するのは、顧客が当該資産に対する支配を獲得した時又は獲得するにつれてであるとされています。 次の(A)から(C)の要件のいずれかを満たす場合、資産に対する支配を顧客に一定の期間にわたり移転することにより、一定の期間にわたり履行義務を充足し収益を認識します。 なお、上記のいずれの要件も満たさない場合には、資産に対する支配が顧客に移転した一時点で履行義務を充足し収益を認識します。 【履行義務の充足による収益の認識のイメージ図】 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 2 設例へのあてはめ (1) X1年3月31日(風力発電所新設工事に係る収益の計上) 風力発電所新設工事は、「(C-1) 企業が顧客との契約における義務を履行することにより、別の用途に転用することができない資産が生じること」かつ「(C-2) 企業が顧客との契約における義務の履行を完了した部分について、対価を収受する強制力のある権利を有していること」に該当する契約であると考えられるため、A社は約束した財又はサービスを充足するにつれて、収益を認識します。 X1年3月31日時点では、進捗度を合理的に見積れませんが、発生費用を回収することが見込まれるため、原価回収基準で会計処理します(企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準第45項」参照)。 そのため、発生費用(500千円)に基づいて売上高及び工事原価を計上します。 なお、原価回収基準とは、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができないものの(企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準第45項」参照)、当該履行義務を充足する際に発生する費用を回収することが見込まれる場合に、履行義務を充足する際に発生する費用のうち、回収することが見込まれる費用の金額で収益を認識する方法をいいます(企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準第15項」参照)。 (2) X1年3月31日(既存風力発電所の設備保守契約に係る収益の計上) 既存風力発電所の設備保守契約は、「(A) 企業が顧客との契約における義務を履行するにつれて、顧客が便益を享受すること」に該当する契約であると考えられるため、A社は約束した財又はサービスを充足するにつれて、収益を認識します。 また、サービスの性質から、進捗度を忠実に描写する方法は、アウトプット法が適合すると考えられます。 なお、アウトプット法は、現在までに移転した財又はサービスの顧客にとっての価値を直接的に見積るものであり、現在までに移転した財又はサービスと契約において約束した残りの財又はサービスとの比率に基づき、収益を認識する方法です(企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針第17項」参照)。 アウトプット法による場合、提供したサービスの時間に基づき固定額を請求する契約等、現在までに企業の履行が完了した部分に対する顧客にとっての価値に直接対応する対価の額を顧客から受け取る権利を有している場合には、請求する権利を有している金額で収益を認識することができるとされています(企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針第19項」参照)。 設例の設備保守契約は、契約期間に基づくことで現在までに移転した財又はサービスと契約において約束した残りの財又はサービスとの比率を合理的に見積れると考えられるため、契約期間で収益認識額を計算します。 (3) X1年6月30日(風力発電所新設工事に係る収益の計上) 「(1) X1年3月31日(風力発電所新設工事に係る収益の計上)」の検討のとおり、A社は約束した財又はサービスを充足するにつれて、収益を認識します。 また、財又はサービスの性質から、進捗度を忠実に描写する方法は、インプット法が適合すると考えられます。 なお、インプット法は、履行義務の充足に使用されたインプットが契約における取引開始日から履行義務を完全に充足するまでに予想されるインプット合計に占める割合に基づき、収益を認識する方法です。インプット法に使用される指標には、消費した資源、発生した労働時間、発生したコスト、経過期間、機械使用時間等があります(企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針第20項」参照)。 今回の設例では、発生費用(発生したコスト)が適合すると考えられるため、発生費用に基づいて収益を計算しています。なお、タービンに係る発生費用は設例の前提にあるとおり、進捗度の見積り計算から除いています(企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針第21、22項」参照)。 (4) X1年6月30日( 風力発電所新設工事に係る原価の計上) X1年6月30日までの発生費用3,500千円から、X1年3月期に既に原価計上した500千円を控除した3,000千円を工事原価に計上します。 (5) X1年6月30日(既存風力発電所の設備保守契約に係る収益の計上) 上記の「(2) X1年3月31日(既存風力発電所の設備保守契約に係る収益の計上)」と同様に契約期間で収益認識額を計算します。 * * * (了)
税効果会計を学ぶ 【第15回】 「連結財務諸表固有の一時差異の取扱い③」 -子会社に対する投資を一部売却した場合の取扱いなど- 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 今回は、連結財務諸表固有の一時差異の取扱い(連結財務諸表)のうち、子会社に対する投資に係る一時差異の取扱いとして、次のものについて解説する。 「連結財務諸表固有の一時差異」とは、連結決算手続の結果として生じる一時差異のことをいい、課税所得計算には関係しないものである(税効果適用指針4項(5))。詳細は本シリーズの【第4回】を参照願いたい。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 子会社に対する投資の一部売却後も親会社と子会社の支配関係が継続している場合 1 基本的な考え方 子会社に対する投資を一部売却した後も親会社と子会社の支配関係が継続している場合、連結財務諸表上、当該売却に伴い生じた親会社の持分変動による差額は、資本剰余金として計上し、関連する法人税等相当額は、資本剰余金から控除する(連結会計基準29項及び(注9)(2))。 このため、子会社に対する投資を一部売却した場合、売却に伴い生じた親会社の持分変動による差額に対応する法人税等相当額については、税効果適用指針28項に規定されているとおり、連結財務諸表上、法人税、住民税及び事業税などその内容を示す科目を相手勘定として資本剰余金から控除するとされた(税効果適用指針117項)。 次のことにも注意する(税効果適用指針118項)。 2 会計処理 子会社に対する投資を一部売却した後も親会社と子会社の支配関係が継続している場合、連結財務諸表上、次のように会計処理する(税効果適用指針28項)。 Ⅲ 子会社に対する投資を一部売却したことにより親会社と子会社の支配関係が継続していない場合 1 基本的な考え方 子会社に対する投資を一部売却したことにより当該被投資会社が子会社等に該当しなくなった場合、利益剰余金に計上されていた当該被投資会社の留保利益(又は負の値である場合の留保利益)の親会社持分相当額とのれんの償却累計額又は負ののれんの利益計上額との合計額(差引額)のうち、残存する当該被投資会社に対する投資に相当する部分は、連結株主資本等変動計算書上の利益剰余金の区分に、連結除外に伴う利益剰余金減少高(又は増加高)等その内容を示す適当な名称をもって計上する(資本連結実務指針46項)。 このため、上記の処理に伴い当該投資の帳簿価額への修正により解消した一時差異について税効果適用指針27項に従って計上した繰延税金資産又は繰延税金負債は、売却時に取り崩し、当該取崩額を法人税等調整額に計上するのではなく、利益剰余金から直接控除する(税効果適用指針119項、120項)。 2 会計処理 子会社に対する投資の一部売却により当該被投資会社が子会社等に該当しなくなった場合、連結財務諸表上、残存する当該被投資会社に対する投資は個別貸借対照表上の帳簿価額をもって評価する(連結会計基準29項なお書き)。 この場合、税効果適用指針27項に従って法人税等調整額を相手勘定として計上した当該子会社に対する投資に係る連結財務諸表固有の一時差異に関する繰延税金資産又は繰延税金負債のうち、当該売却に伴い投資の帳簿価額を修正したことにより解消した一時差異に係る繰延税金資産又は繰延税金負債は、利益剰余金を相手勘定として取り崩す(税効果適用指針29項)。 Ⅳ 子会社に対する投資を売却した時の親会社の持分変動による差額に対する繰延税金資産又は繰延税金負債についての取扱い 1 親会社の持分変動による差額に対して繰延税金資産又は繰延税金負債を計上していた場合 連結税効果実務指針では、連結財務諸表上、追加取得や子会社の時価発行増資等により生じた資本剰余金の額について、法人税等調整額に相当する額を控除した後の額で計上し、売却時に繰延税金資産又は繰延税金負債の取崩額を法人税等調整額に計上することにより、適切な額を税金費用として計上すると規定されていた(税効果適用指針123項)。 上記の取扱いを踏襲し、税効果適用指針では、親会社の持分変動による差額に対して繰延税金資産又は繰延税金負債を計上していた場合に、当該子会社に対する投資を売却したときには、次のように会計処理すると規定している(税効果適用指針30項)。 2 親会社の持分変動による差額に対して繰延税金資産又は繰延税金負債を計上していなかった場合 子会社に対する投資の売却の意思決定とその売却時期が同一の事業年度となったことなどにより、資本剰余金を相手勘定として当該親会社の持分変動による差額に係る繰延税金資産又は繰延税金負債を計上していなかった場合、税効果適用指針27項(2)に従った処理をしていないことから、資本剰余金の額が法人税等調整額に相当する額を控除した額とならない(税効果適用指針124項)。 このため、資本剰余金の額が、売却前に繰延税金資産又は繰延税金負債を計上した場合と同じ結果になるように、当該子会社に対する投資を売却したときには、次のように会計処理する(税効果適用指針31項、124項)。 (了)