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山本守之の法人税“一刀両断” 【第60回】「高額役員給与を考える」

山本守之の 法人税 “一刀両断” 【第60回】 「高額役員給与を考える」   税理士 山本 守之   日産のゴーン前会長をめぐる事件以降、役員の高額報酬のあり方が問題となっています。日米欧のCEO報酬の中央値は、日本2億円、米国12億円、欧州6億円です。 欧米では業績の達成度や株価に応じた株式報酬が多いため、日本と比較して差異が生じます。これに比べると、生活を保障する基本報酬は日本と欧米の差はあまりありません。 本来は、役員報酬を役員の生活を保障する基本給と、業績の裏付けとなる成果給、株価を高めた成果給に分ける必要があります。その上で、高額か否かを判断すべきなのです。   1 非上場会社に集中する役員報酬の税務否認 日本では、課税庁が非上場法人のCEOに対して案外気軽に「高額報酬否認」を適用し、それを裁判所が容認するケースが多いですが、裁判所が、他社を比較するだけで損金性を判断するのは誤りです。 内国法人がその役員に対して支給する給与の額のうち不相当に高額な部分の金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しないとされています(法法34②)。 「不相当に高額なもの」には実質基準と形式基準があり、そのいずれにも該当する場合には、そのうちいずれか多い額が損金不算入となります(法令70)。 このうち実質基準は、内国法人が各事業年度においてその役員に対して支給した給与(退職給与以外のもの)の額(利益連動給与を除く)が、①その役員の職務の内容、②その内国法人の収益及びその使用人に対する給与の支給の状況、③その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する給与の支給の状況等に照らし、その役員の職務に対する対価として相当であると認められる金額を超える場合におけるその超える部分の金額(その役員が2人以上ある場合には、これらの役員に係るその超える部分の金額の合計額)です。 税務訴訟等において企業が役員給与の適正額を立証する場合の泣き所は、同業種法人の役員の報酬の支給資料が入手しにくいということです。公表されているのは人事院の「職種別民間給与実態調査」、国税庁の「民間給与実態統計調査」等と株式会社政経研究所の発行した資料などです。 これらの資料と公表されている訴訟資料、審判所裁決例などを参考とし、これにそれぞれの法人の役員の個別事情等を参考として事前検討をするほかありません。この場合は、役員報酬を基本給、成果給、株価成果給などに区分しなければ比較そのものができません。税務否認が非上場会社に集中しており、上場会社は否認できないのが実情です。 役員の退職給与が不相当高額であるか否かを判示した裁判例は少なくありませんが、大別すれば、功績倍率の最高率を適用したもの(1980(昭和55)年6月29日東京地裁判決)、営業規模、業務において優位にある同業法人の功績倍率の平均率を適用したもの(1974(昭和49)年12月13日東京地裁判決、1976(昭和51)年9月29日東京高裁判決、TAINSコード:Z089-3861)、国家公務員等退職手当法の規定を適用したもの(1979(昭和54)年2月28日大阪高裁判決、TAINSコード:Z104-4343)、類似法人の退職給与額を3年間の公表利益との変化関係を示す回帰方程式の2標準偏差内の金額を相当額としたもの(1969(昭和44)年3月27日大阪地裁判決、TAINSコード:Z056-2416)などがあります。 この場合の功績倍率方式とは、次の算式で計算したものです。 1980(昭和55)年5月26日の東京地裁判決(TAINSコード:Z113-4599)において示された全上場会社の実態調査による功績倍率の平均値は、社長3.0、専務2.4、常務2.2、平取締役1.8、監査役1.6というものでした。   2 過大な役員給与と損金不算入 内国法人が各事業年度においてその退職した役員に対して支給した退職給与の額が、その役員のその内国法人の業務に従事した期間、その退職の事情、その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する退職給与の支給の状況等に照らし、その退職した役員に対する退職給与として相当であると認められる金額を超える場合におけるその超える部分の金額は、損金の額に算入されません(令70①二)。 これは、役員の退職給与の中には、多分に益金処分の性格もあるので、益金処分たる性格を持つ不相当高額の退職給与について、損金不算入の規定を置いているのです。 この点については、次のような判示(1971(昭和46)年6月29日東京地裁判決、TAINSコード:Z062-2753)があります。 また、1年当たり平均額法を適正なものとして、功績倍率法を斥けた次のような国税不服審判所の裁決例(1986(昭和61)年9月1日、TAINSコード:J32-3-09)があります。   3 役員給与・否認のあり方 類似法人との比較を否認された例もあります。 縫製加工業を営む同族会社がラックコートの製造販売がヒットして大幅に売上が増加したため、代表取締役の報酬を前年度の960万円から1,800万円に、その妻である取締役の報酬を300万円から960万円にそれぞれ引き上げて支給したものです。 これに対してY税務署長は類似法人を抽出し、その役員報酬の平均値を超える金額を過大報酬とし、代表取締役は620万円、取締役は380万円が役員報酬の相当額であると主張しました。これに対して裁判所では、 と判示しました(1994(平成6)年6月15日名古屋地裁判決、TAINSコード:Z201-7349)。 この判決では、結果として売上増加率(1.43倍)と売上総利益の増加(2.25倍)を加味して1.5倍の範囲の増加が相当であると判断しており、その根拠に合理性はありませんが、実務上当然とされていた「類似法人との比較」を否定したことに意味があるように思われます。 訴訟の中ではさまざまな基準がありますが、平均的な手法を否認されたものに合理性のあるものもあります。 (了)

#No. 324(掲載号)
#山本 守之
2019/06/27

谷口教授と学ぶ「税法の基礎理論」 【第14回】「租税法律主義と実質主義との相克」-税法の目的論的解釈の過形成⑤-

谷口教授と学ぶ 税法の基礎理論 【第14回】 「租税法律主義と実質主義との相克」 -税法の目的論的解釈の過形成⑤-   大阪大学大学院高等司法研究科教授 谷口 勢津夫   Ⅰ はじめに 前回は、競馬事件を素材にして、大阪事件・最判平成27年3月10日刑集69巻2号434頁と、これに対する「面従腹背判決」ともいうべき札幌事件・東京地判平成27年5月14日訟月62巻4号628頁について、それぞれの判断枠組みを比較することによって、後者が示した判断枠組みを、文理解釈の「潜脱」による目的論的解釈の過形成として批判的に検討した。ただ、札幌事件では東京地裁の判断は、控訴審・東京高判平成28年4月21日判時2319号10頁及び上告審・最判平成29年12月15日民集71巻10号2235頁で否定され、馬券払戻金の所得区分に関する判例の判断枠組みは、下記のとおり、「文理に照らし」行う解釈(文理解釈)を「起点」とする判断枠組みとして、確立されることになった(下線筆者)。 前回の検討では、上記の判断枠組みの「起点」を「文理に照らし」行う解釈(文理解釈)として理解し、「終点」に係る判示部分のうち、1つ目の下線部分を「行為の数量的態様」といい、2つ目の下線部分を「行為の客観的利益状況」ということにしたが(前回Ⅱ参照)、今回も前回同様それらの語を用いることにする。 ところで、競馬事件における2つの最高裁判決を受けて、所得税基本通達34-1(2)が2度改正された(税通令6条1項5号も参照)。まず、大阪事件最判を受けて所得税基本通達34-1(2)に平成27年5月改正により注記が追加された(平27課個2-8、課審5-9改正。以下「第一次改正」という)。次に、札幌事件最判を受けて上記注記が平成30年7月に改正された(平30課個2-17、課審5-1改正。以下「第二次改正」という)。 今回は、所得税基本通達34-1(2)に関するこの2度の改正の意味を、税法の目的論的解釈の過形成に関する研究の一環として、検討することにしたい。   Ⅱ 所得税基本通達34-1第一次改正 所得税基本通達34-1(2)に、第一次改正により、下記の注記が追加された(下線筆者)。 追記された(注)1の下線部のうち実線部分は、大阪事件最判がその判断枠組みの「終点」において示した(重要な)間接事実(判決文では「事情」)である、行為の数量的態様及び行為の客観的利益状況に相当するものと解される。したがって、第一次改正は、その限りでは、大阪事件最判に従っているといえる。 では、第一次改正は、大阪事件最判の判断枠組みを正しく理解した上で行われた改正といえるであろうか。確かに、(注)1の下線部のうち破線部分も、大阪事件の事実関係を簡潔に要約したものであるから、そのようにもいえそうである。しかし、大阪事件最判の判断枠組みからすれば、(注)1の下線部のうち実線部分と破線部分にはそれぞれ異なる位置づけが与えられるべきであるが、第一次改正はそのことを正解していないように思われる。 大阪事件最判の判断枠組みによれば、(注)1の下線部のうち実線部分は、間接事実たる行為の数量的態様及び行為の客観的利益状況であるから、破線部分の事実は特に前者を推認させる再間接事実として位置づけられるべきである。しかしながら、第一次改正は、実線部分と破線部分とを並列的に記述していることからすると、実線部分と破線部分につき間接事実と再間接事実という異なる位置づけを行っているとは理解することができない。百歩譲って、仮にそのような異なる位置づけを行っていると理解することができたとしても、再間接事実を破線部分に限定していると考えざるを得ない。 そうすると、いずれにせよ、第一次改正の(注)1の射程は、大阪事件最判が前提にした事実関係と(破線部分に関して)類似する事案に、限定されることになる。換言すれば、第一次改正は、(注)2の定めが原則であって、馬券払戻金は原則として従前どおり一時所得に該当するが、大阪事件のような事案に限って例外的に雑所得に該当することを明らかにしたものにすぎないといえよう。要するに、第一次改正の(注)1は、基本通達の中にありながら、いわば「個別通達」としての意味しかもたなかったといってもよかろう。 しかし、大阪事件最判の判断枠組みによれば、行為の数量的態様及び行為の客観的利益状況という間接事実を推認させる再間接事実は、第一次改正が大阪事件を想定して示した(注)1の破線の下線部分以外にも、考えられ得る。そうすると、大阪事件最判と第一次改正とは射程を異にすることになるが、このことは、次のⅢでみるように、札幌事件によって露顕することになった。   Ⅲ 所得税基本通達34-1第二次改正 札幌事件最判は、前記の判断枠組みを判示した後、続けて次のとおり判示した(下線筆者。下線部のうち直線の実線部分に関する筆者による、要件・要件事実[主要事実]・間接事実の理解については、前回Ⅳの末尾参照)。 この判示の下線部のうち破線部分の事実は、第一次改正後の(注)1に施した破線の下線部分の事実とは明らかに異なる。つまり、札幌事件最判が前提にした事実関係は、明らかにその(注)1の射程外にあるのである。 そこで、札幌事件最判が示された後、第一次改正後の(注)1が、そのような射程外の事実をも射程内に取り込むために、第二次改正によって下記のとおり追記され(下線・太字筆者)、(注)1の適用範囲が拡大されることになった。 第二次改正で追記されたのは、上で引用した(注)1の下線部のうち破線部分及び二重線部分と(注)3である。 (注)1は、破線部分で札幌事件の事案に類似する事実を追記するほか、「など」を追記することによって、大阪事件や札幌事件の事案に類似する事実だけにとどまらず、より広範囲な事実にも、適用範囲を拡大したものと解される。 そのほか、(注)3も、競馬の馬券払戻金に係る所得に関する(注)1の取扱いを、競輪の車券払戻金等に係る所得にも準用する旨を定めることによって、(注)1の適用範囲を拡大したものと解される。 以上により、34-1(2)は(注)も含め、名実ともに「基本通達」としての性格を「回復」したといえよう。 なお、(注)1の下線部のうち二重線部分が、前掲・札幌事件最判に施した二重線の下線部の説示に対応するものであることは明らかであるが、それは、同最判によれば、「客観的にみて営利を目的とするもの[=行為]」と同じ意味内容を示す説示であると解される。すなわち、(注)1の下線部のうち二重線部分は、同最判によれば「利益発生の規模、期間その他の状況」(行為の客観的利益状況)という間接事実によって推認される、「客観的にみて営利を目的とする行為」であることという要件事実(主要事実)、を示す部分であると解される。したがって、(注)1の下線部のうち二重線部分は、これを破線部分と同列に位置づけ、もって(注)1の適用範囲を限定するものとして、理解し取り扱うべきではない。   Ⅳ おわりに 以上において、所得税基本通達34-1(2)の第一次改正及び第二次改正を検討した。その結果、第一次改正は、馬券払戻金の所得区分に関する判例の判断枠組みを限定的に捉え同(注)1の射程を狭く限定し過ぎた点に、決定的な問題があることを明らかにした。 第一次改正のそのような問題は、前回検討した札幌事件東京地判における、文理解釈の「潜脱」による目的論的解釈の過形成の問題と、思考過程ないし論理操作の点は別にして、適用範囲ないし射程の「過形成」という結果の点では、共通するものであると考えるところである。 (了)

#No. 324(掲載号)
#谷口 勢津夫
2019/06/27

平成31年度税制改正における『連結納税制度』改正事項の解説 【第1回】「研究開発税制の見直し(その1:総額型の控除率の見直し)」

平成31年度税制改正における 『連結納税制度』改正事項の解説 【第1回】 「研究開発税制の見直し(その1:総額型の控除率の見直し)」   公認会計士・税理士 税理士法人トラスト 足立 好幸   ~はじめに~ 本連載では、連結納税適用法人を対象に、平成31年度税制改正の概要を解説したい。 連結納税適用法人に関する税制は、次の4種類に分類される。 平成31年度税制改正については、既存の税制の見直しが中心となっており、まず、デフレ脱却・経済再生を後押しするため、イノベーション促進のための研究開発税制の見直しや中小企業による積極的な設備投資等の支援に係る改正が行われている。 次に、都市・地方の持続可能な発展のための地方税体系の構築を目的として事業税の一部を分離して特別法人事業税及び特別事業譲与税を創設することになった。 また、組織再編税制では、親会社が子会社を完全子会社化した後に行う逆さ合併や間接保有の完全親会社の株式を用いた組織再編も適格組織再編成に該当することになり、国際課税では、過大支払利子税制及び移転価格税制について「BEPSプロジェクト」の合意事項等に沿って諸外国において対応が進んでいることを踏まえて必要な制度改正が行われた。 そして、連結納税については、連結納税開始又は加入時の時価評価や連結欠損金など連結納税特有の取扱いに関する改正は行われていないが、加入日の特例規定の適用手続の簡略化や連結子法人の本店等所在地の異動届出の簡略化が図られることになった。 本稿では、連結納税制度に関係する改正項目について、その具体的な取扱いと実務に与える影響を単体納税と比較しながら解説していくこととする。 なお、本稿の意見に関する部分は、筆者の個人的な見解であることをあらかじめお断りする。   [1] 研究開発税制の見直し 連結納税では、連結グループ全体を1つの法人とみなして研究開発税制が適用されるが、平成31年4月1日以後に開始する連結親法人事業年度から、単体納税と同様に次のような改正が行われている(平成31年所法等改正法附則1、48)。 (1) 試験研究費の総額に係る税額控除制度について、増加インセンティブを強化する観点から控除率カーブを見直し、税額控除率及び控除上限の上乗せ措置の適用期限を2年延長する(高水準型は予定どおり廃止される)。 試験研究費の総額に係る税額控除制度(以下、「総額型」という)について、改正前後の取扱いは以下のとおりとなる。 【試験研究費の総額に係る税額控除制度(総額型)】 ▷根拠条文 改正前:旧措法68の9①②⑤ 改正後:措法68の9①②③ ▷対象法人 改正前:連結法人のすべて 改正後:同上 ▷税額控除限度額 ▷控除限度となる法人税額基準額 ▷繰越控除 改正前:限度超過額の繰越制度はない。 改正後:同上。 ▷税額控除額の個別帰属額の計算方法 改正前:下記A参照。 改正後:下記B参照。 ▷地方法人税における税額控除 ▷住民税における税額控除 連結納税における試験研究費の総額に係る税額控除額の個別帰属額の計算方法は、次のとおりとなる。 A 改正前(旧措法68の9⑬二・五、旧措令39の39㉒一・二) [試験研究費の総額に係る税額控除額の個別帰属額の計算方法] [ⅰの額の計算方法] (注1) この場合の特別試験研究費は、分子と異なり、試験研究費の総額に係る税額控除制度の適用対象としたものを含む。 [ⅱの割合] (注2) 個別増減試験研究費割合とは、当該連結法人の個別増減試験研究費/当該連結法人の比較試験研究費となる。個別増減試験研究費とは、当該連結法人の試験研究費から比較試験研究費を減算した金額をいう。 B 改正後(措法68の9⑬二・五、措令39の39㉗一・二・三) [試験研究費の総額に係る税額控除額の個別帰属額の計算方法] [ⅰの額の計算方法] (注1) この場合の特別試験研究費は、分子と異なり、試験研究費の総額に係る税額控除制度の適用対象としたものを含む。 [ⅱの割合] (一) 下記(二)以外の場合 (注2) 個別増減試験研究費割合とは、当該連結法人の個別増減試験研究費/当該連結法人の比較試験研究費となる。個別増減試験研究費とは、当該連結法人の試験研究費から比較試験研究費を減算した金額をいう。 (二) 平成31年(2019年)4月1日から令和3年(2021年)3月31日までの間に開始する連結親法人事業年度で、試験研究費割合が10%を超える場合 (注3) 個別試験研究費割合とは、当該連結法人の試験研究費/当該連結法人の平均売上金額となる。   (了)

#No. 324(掲載号)
#足立 好幸
2019/06/27

「税理士損害賠償請求」頻出事例に見る原因・予防策のポイント【事例75(法人税)】 「渡切交際費の処理を誤回答したため、定期同額給与として認められず、税務調査で否認され、修正申告となった事例」

「税理士損害賠償請求」 頻出事例に見る 原因・予防策のポイント 【事例75(法人税)】   税理士 齋藤 和助       《基礎知識》 ◆渡切交際費(法基通9-2-11) 役員や従業員に前渡しする交際費で、使途や使用金額を問わず、後日の精算も行わないものをいう。渡切交際費は、交際費ではなく、支給した役員や従業員の給与として取り扱う。したがって、役員に支払う渡切交際費を損金算入するためには、定期同額給与として処理する必要がある。 ◆定期同額給与(法法34①一、法令69) (1) その支給時期が1ヶ月以下の一定の期間ごとである給与(以下「定期給与」という)で、その事業年度の各支給時期における支給額又は支給額から源泉税等の額を控除した金額が同額であるもの (注) 源泉税等の額とは、源泉徴収をされる所得税の額、特別徴収をされる地方税の額、定期給与の額から控除される社会保険料の額その他これらに類するものの額の合計額をいう。 (2) 定期給与の額につき、次に掲げる改定(以下「給与改定」という)がされた場合におけるその事業年度開始の日又は給与改定前の最後の支給時期の翌日から給与改定後の最初の支給時期の前日又はその事業年度終了の日までの間の各支給時期における支給額又は支給額から源泉税等の額を控除した金額が同額であるもの ① その事業年度開始の日の属する会計期間開始の日から3ヶ月までに継続して毎年所定の時期にされる定期給与の額の改定 ② その事業年度において臨時改定事由によりされたその役員に係る定期給与の額の改定(①に掲げる改定を除く) ③ その事業年度において業績悪化改定事由によりされた定期給与の額の改定(減額改定に限られ、①及び②に掲げる改定を除く) (3) 継続的に供与される経済的利益のうち、その供与される利益の額が毎月おおむね一定であるもの ◆渡切交際費を定期同額給与として処理する場合 渡切交際費を定期同額給与として損金算入する場合には、以下の処理が必要である。       (了)

#No. 324(掲載号)
#齋藤 和助
2019/06/27

〈事例で学ぶ〉法人税申告書の書き方 【第39回】「別表6(19) 地域経済牽引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書」

〈事例で学ぶ〉 法人税申告書の書き方 【第39回】 「別表6(19) 地域経済牽引事業の促進区域内において 特定事業用機械等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書」   公認会計士・税理士 菊地 康夫   Ⅰ はじめに 本連載では、法人税申告書のうち、税制改正により変更もしくは新たに追加となった様式、実務書籍への掲載頻度が低い様式等を中心に、簡素な事例をもとに記載例と書き方のポイントを解説していく。 今回は、前回解説したいわゆる「地域未来投資促進税制」のうち、特別償却に代えて税額控除制度を適用する場合の「別表6(19) 地域経済牽引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の法人税額の特別控除に関する明細書」(※1)の記載の仕方を採り上げる。 (※1) 平成31年度税制改正を受け法人税申告書の様式が改正され、一部変更の上、この別表は6(17)から6(19)に番号が変更となった。 Ⅱ 概要 この別表は、青色申告法人で地域経済牽引事業の促進による地域の成長発展の基盤強化に関する法律(以下「地域経済促進法」という)第24条に規定する承認地域経済牽引事業者に該当するものが、租税特別措置法(以下「措置法」という)第42条の11の2第2項(地域経済牽引事業の促進区域内において特定事業用機械等を取得した場合の法人税額の特別控除)の規定の適用を受ける場合に作成する。 すなわちこれは、青色申告を提出する法人が、指定期間内(平成29年7月31日から令和3年3月31日までの間(※2))に、地域経済活性化に貢献する一定の事業計画に基づいた承認地域経済牽引事業について、一定の規模の機械装置、器具備品、建物及びその附属設備並びに構築物(以下「特定事業用機械等」という)を取得し、その事業の用に供したときは、その事業の用に供した日を含む事業年度において、その特定事業用機械等の基準取得価額(100億円(又は80億円)を限度とする)の2%又は4%(又は5%)(※3)の税額控除ができる制度である。 (※2、3) 平成31年度の税制改正において、本制度の適用期限が平成31年3月31日から2年延長されるとともに、主務大臣が確認を行う課税特例要件のうち、直近事業年度の付加価値額の増加率が8%以上の上乗せ要件を満たす場合には、機械装置・器具備品の投資について「50%」の特別償却もしくは「5%」の税額控除が新たに受けられることとなり、対象資産の取得価額の合計額は80億円が限度とされる改正が行われている。 本制度において適用される特別償却と税額控除の割合の一覧は次の通りである。 なお本税額控除制度は、中小企業者等以外の法人が平成30年(2018年)4月1日から令和3年(2021年)3月31日までの間に開始する各事業年度において、研究開発税制等の生産性の向上に関する特定の税額控除制度を適用しようとする場合に、以下の(イ)及び(ロ)の要件のいずれにも該当しない場合には、適用ができないことになっている。詳細は、【第35回】の解説を参考にしていただきたい。   Ⅲ 「別表6(19)」の書き方と留意点 (1) 設例 (2) 今回の別表が適用される事業年度 平成31年4月1日以後終了する事業年度。 (3) 別表の記載例 (4) 別表の各記載欄の説明 〔特定税額控除規定の適用可否〕欄 〔法人税額の特別控除額の計算〕欄 〔機械設備等の概要〕欄 (※5) 本稿公開日現在、平成31年度税制改正を踏まえた特別償却の付表(6)の様式は公表されていない。 (了)

#No. 324(掲載号)
#菊地 康夫
2019/06/27

措置法40条(公益法人等へ財産を寄附した場合の譲渡所得の非課税措置)を理解するポイント 【第11回】「有価証券を寄附する場合の注意点」

措置法40条(公益法人等へ財産を寄附した場合の 譲渡所得の非課税措置)を理解するポイント 【第11回】 「有価証券を寄附する場合の注意点」   公認会計士・税理士・社会保険労務士 中村 友理香   - 質 問 - 有価証券を公益法人等に寄附する場合、租税特別措置法40条の適用を受けるために何か注意する点はありますか。   - 回 答 - 有価証券の寄附者が租税特別措置法第40条の適用を受けるためには、寄附財産そのものが当該公益法人等の公益目的事業において直接利用されることが必要とされます。 しかし、有価証券はその性質上、そのもの自体を公益目的事業の用に供することはできません。この場合、有価証券から生ずる果実(配当金)の全部が当該公益目的事業の用に供されるかどうかにより、当該財産が当該公益目的事業の用に直接供されるかどうかを判定することになっています。 したがって、当該有価証券からの配当が見込まれないような場合は、適用を受けられない恐れがあります(措置法40条通達13注書)。 ○●○◆ 解 説 ◆○●○ 財産等が贈与又は遺贈に係る公益目的事業の用に直接供されるかどうかの判定は、原則として、当該財産等そのものが、当該贈与又は遺贈を受けた公益法人等の当該贈与又は遺贈に係る公益目的事業の用に直接供されるかどうかにより行われます。 しかし、有価証券のようにその性質上、そのもの自体を公益目的事業の用に供することができない場合は、当該有価証券から生じる配当金の全部を公益目的事業の用に供することをもって、判断するとされています。 したがって、定期的に配当が行われていない有価証券の場合は、この条件に該当しないため、租税特別措置法第40条の適用が受けられない恐れがあります。 なお、寄附先が行政庁から公益認定を受けた公益社団法人・財団法人であり、 以上全てを満たす場合には、承認特例の条件に該当することとなるため、国税庁長官への承認申請後3ヶ月以内にその申請について国税庁長官の承認がなかったとき、又は承認しないことの決定がなかったときは、譲渡所得税が非課税とされる制度もあります。 ただし、有価証券の寄附者が承認申請後一定の期日までに定められた書類の提出を行わなかった場合や、公益社団法人・財団法人の役員等及び社員並びにこれらの人の親族等に該当していた場合、若しくは該当することが予定されていた事実が後になって判明した場合には、非課税承認が取り消されます。 非課税承認が取り消された場合、書類の提出を怠ったケースでは寄附者に、役員等に該当もしくは該当することが予定されていたケースでは公益社団法人・財団法人に、原則としてその取り消された日の属する年分の譲渡所得等として所得税が課されることになります(措令25の17⑩⑫⑬)。   (了)

#No. 324(掲載号)
#中村 友理香
2019/06/27

国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第30回】「被相続人が外国籍である場合の相続人・相続分の根拠法」

国外財産・非居住者をめぐる税務Q&A 【第30回】 「被相続人が外国籍である場合の相続人・相続分の根拠法」   税理士 菅野 真美   - 質 問 - 私は税理士ですが、このたび被相続人が外国籍である人の相続税の申告業務を依頼されました。未分割遺産の相続税の計算や、相続税の総額を計算する際には、法定相続人・相続分の情報が必要となりますが、この場合の「相続人・相続分」とは、日本の民法に基づくものですか、それとも被相続人の本国法に基づくものでしょうか。   ◆ ◆ 解 説 ◆ ◆ ▷被相続人が外国籍である場合 被相続人が外国籍である場合、その者に関する相続はどこの法律に基づくかについては、日本においては、法の適用に関する通則法36条により、被相続人の本国法によることが定められている。また、その者が遺した財産について日本で相続税が課せられるかどうかは、相続税法に基づく。 ここで、相続税法により相続税の計算をする過程で必要となる相続人・相続分は、被相続人の本国法に基づくものか、日本法に基づくのかによって、その結果が異なる場合がある。 そこで本稿では、被相続人が外国籍である場合において、未分割遺産の相続税の計算をする場合の相続人・相続分及び、相続税の総額を計算する場合の相続人・相続分が、それぞれどの国の法律に基づくものかを検討する。   ▷未分割遺産の相続税計算における相続人・相続分の根拠法 申告期限までに遺産が分割されない場合は、各共同相続人又は包括受遺者が民法(第904条の2(寄与分)を除く)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って財産を取得したものとして、その課税価格を計算するものとされている(相法57①)。 ここで、被相続人が外国籍の場合、相続人・相続分は被相続人の本国法に基づくのか、日本法に基づくのかという論点がある。この点については、国税庁・質疑応答事例「被相続人が外国人である場合の未分割遺産に対する課税」で回答されている。 上記の質疑応答事例では、法の適用に関する通則法第36条により、相続は被相続人の本国法によることとされているから、被相続人の本国法の規定による相続人及び相続分を基として計算するとされている。 なお、この事例の基になったのは、昭和57年8月10日の裁決事例(TAINSコード:F0-3-051)と考えられることから、以下では、この裁決事例について検討する。   ▷裁決事例の概要 中華民国(台湾)国籍の被相続人の三女が被相続人の相続税の申告書を提出しなかったところ、課税庁から決定処分を受けたが、その取消しを求めて三女は審査請求をした。ちなみに三女は、中華民国の国籍を有する者と養子縁組をしており、実親の相続段階では、養子縁組は解消されていない。 三女は、不動産の名義人は被相続人であるが、実際には被相続人の弟が自分で働いて得たお金でその不動産を取得し自己の事業と居住の用に供したものであるから、所有権は弟に帰属しており、相続税の決定処分は不当であると主張した。 これに対して課税庁は、所有権が弟であるとする主張は認められないと主張した。その根拠の1つとして、被相続人名義の不動産の賃料収入が、被相続人の所得税の確定申告の中に含まれていた。 また、被相続人は中華民国国籍を有していることから、相続人については中華民国の民法が適用されるのが相当であり、それによると、妻、長女、次女、三女、長男、次男の6人が土地、建物を均分に取得したと認定するのが相当であると主張した。 審判所は、三女に対する相続税を課した処分が失当であるとして、原処分を全部取り消した。取り消した根拠は、中華民国の民法における養子の取扱いに基づいている。 日本の民法において、普通養子は、養子縁組後も実父母と実子の縁は継続される。他方、中華民国の民法では、日本の特別養子のように、養子縁組期間中は、養子は実親の遺産を相続できないと解されており、養子縁組が終了した時から生父母との関係が回復されると定められている。 この事案において、三女は実親の相続があった時点で、別の中華民国籍の者の養子となっていた。被相続人は中華民国籍であるから、相続は中華民国の民法に従うことになる。中華民国では、養子は実父母の遺産を相続できないと解されるから、他者の養子となっている三女は被相続人の財産について相続権がない。よって、三女に対して実親の相続により財産を取得した者として未分割遺産の課税を行うのは不当であるとして処分を取り消した。   ▷相続税の総額計算における相続人・相続分の根拠法 相続税額の計算過程においては、法定相続人や法定相続分が登場する。例えば、生命保険金や退職金を相続人が取得した場合の非課税金額(法定相続人の数×500万円)や、相続財産の総額から遺産に係る基礎控除額を差し引く場合(法定相続人の数×600万円)等である。 また、上記を含む手順を経て算出された課税遺産総額を法定相続分・代襲相続分に応じて取得したものとして、各取得金額について相続税額を計算したその合計額が、相続税の総額となる(その後は実際の取得財産の比率によって相続税の総額を按分する)。 上記の計算における法定相続人は、被相続人が外国籍の場合であっても、日本の相続法(民法)に基づいて計算するものとされている。なぜならば、これは政策的な非課税金額を算定するためや、遺産課税方式と遺産取得課税方式の折衷である日本の相続税の計算過程の一部であり、相続の問題というよりも、日本の相続税の算定のための技術的な要素である。よって、日本の相続法に基づき画一的に算定するのが合理的だからと考える。   (了)

#No. 324(掲載号)
#菅野 真美
2019/06/27

収益認識会計基準と法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第6回】

収益認識会計基準と 法人税法22条の2及び関係法令通達の論点研究 【第6回】   千葉商科大学商経学部講師 泉 絢也   2 法人税法22条2項の考察 法人税法22条の2の規定内容を理解するために、法人税法22条2項に関するいくつかの論点について、補足的に考察をしておく。 (1) 収益の額と別段の定めによる益金算入額・不算入額との関係 法人税法22条2項にいう益金の額に算入すべき金額を構成する「収益の額」と「別段の定めによる益金算入額・不算入額」の関係について、受取配当金を例に確認しておこう。 法人税法は、法人株主の受取配当について、配当を支払う法人段階とそれを受け取る株主段階とを通じる税負担の調整を行うための仕組みとして、受取配当等の益金不算入制度を用意している(法法23)。 法人税・所得税の負担調整措置の一環として捉えられることもあるが、現在では、配当を支払う法人の段階で既に法人税が課税されていることに着目して、その二重課税(多重課税)を避けるため、内国法人からの配当を受け取る法人の段階でその配当の額を益金不算入としているといわれる。もっとも、現行法は、持株比率を目印として支配目的で所有する株式に係る配当金の益金不算入割合を高く設定している(いわば、持株比率の低い株式は、投資目的など支配目的以外で所有していると判断されることになる)。 持株比率の高い支配目的で所有する株式に係る受取配当金については、他の投資機会との選択に税制がバイアスを与えないように、益金不算入の割合を高くしたものと説明される(国税庁『昭和63年 改正税法のすべて』354~356頁、財務省『平成27年度 税制改正の解説』339~340頁参照)。 あるいは、法人間の配当を同一企業の内部取引と同視する考え方を採用しているという説明もわかりやすい。法人間で配当を繰り返せば、1つの経済的利益が課税によってどんどん目減りする一方で、親子会社形態ではなく本支店形態にしておけば、支店から本店への資金等の移転に法人税は課税されない。これでは、グループ法人の形態で行う事業を課税上不利に扱う結果となってしまう。よって、完全子法人株式からの受取配当はその全額が益金不算入となっている(法法23①一)(渡辺徹也『スタンダード法人税法〔第2版〕』119頁(弘文堂2019))。 例えば、持株比率100%の完全子法人株式等に係る配当等の額の益金不算入割合は高め(配当等の額の100%)である。他方、持株比率が5%以下の非支配目的株式等に係る配当等の額の益金不算入割合は低め(配当等の額の20%)である。 かような受取配当等の益金不算入制度を上記1(2)(本連載【第4回】)の【益金の額の算式】に当てはめるとどうなるか(下記に再掲)。法人税法23条は別段の定めであるから、「収益の額」を考慮することはありえないという見解があるかもしれない。他方で、同条1項は、あくまで一定の配当等の額は「その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入しない」という規定であるから、非支配目的株式等についていえば、当該株式等に係る配当等の額のうち益金不算入以外の部分(80%)を益金に算入する根拠規定とはなりえないという反論も可能である。 【益金の額の算式】(再掲) (※) ただし、上記算式は簡便的に表現したものにすぎない。 かかる反論を採用すると、配当等の額は法人税法22条2項の「収益の額」に含まれるため「益金の額」を増加させるが、一定の配当等の額は法人税法23条による「別段の定めによる益金不算入額」に該当し、「益金の額」に含まれないことになる、と説明されよう。 (※) 益金不算入部分(20%)も一旦は法人税法22条2項の収益の額に含まれるという説明もあるかもしれない。この説明は、法人税申告書別表四の調整計算と整合的に見えるが、別表四は収益そのものではなく、損益計算書に掲げた当期利益の額又は当期欠損の額を法人税の所得計算のスタートとしていることに留意を要する。 (2) 収益の計上時期の問題 商品の販売等に基づくものなど企業における通常の売上額は、「収益の額」に該当し、「益金の額」を増加させると考えてよい。受取配当金と異なり、別段の定めを検討しなければならない機会はそう多くない。もっとも、法人税法22条2項は、単に「益金の額に算入すべき金額」又は「収益の額」と表現しているわけではない。それぞれの頭に「当該事業年度の」という語を付している。このことを考慮して、上記1(2)の【益金の額の算式】に手を加えると次のようになる。 【当該事業年度の益金の額の算式】 (※) ただし、「収益の額」を経由して「益金の額」に算入される別段の定めのパターンもありうる。 ここでいう「当該事業年度の」とは、当該該事業年度に「帰属する」という意味であり、法人税法22条2項は収益の計上時期(帰属時期・年度帰属)を規律する定めとして設けられたものであるといわれている。 法人の収益をどの年度において計上すべきかという収益の計上時期の議論を簡単に確認しておく。法人税法22条2項は、昭和40年の法人税法全文改正で誕生した条文である。その制定に当たって、次のような議論がなされた。 結局、収益の計上時期の規律は、当該事業年度「の」という表現に託された。この「の」は、当該事業年度に「帰属する」という意味であり、それがいかなる基準により帰属するか、例えば商品の販売における引渡基準などを中心に今後の検討を待つこととされた。かような経過からもわかるように、法人税法22条2項は、収益の計上時期について具体的な決定基準を定めていない。 通説は、次のように理解している(金子宏『租税法〔第23版〕』310~313、357~360頁(弘文堂2019))。 ここでは、権利確定主義や管理支配基準というテクニカルな説明もなされているが、他方で、棚卸資産の販売益については引渡時、請負報酬については、物の引渡しを要する場合は仕事の目的物の引渡しと同時に権利が確定し、引渡しを要しない場合は約定の仕事を完成したときに権利が確定する、という実務的観点からの説明もなされている。実際、これまで法人税基本通達も、目的物の引渡しや仕事の完成といった実務的観点から収益の計上時期を定めていたのであり、この点に関する限り、学説と通達(課税実務)との間に隔たりは看取されなかった。 参考として、平成30年度の法人税関係法令等の改正のうち「収益認識に関する会計基準」の導入に伴う改正に対応するための通達改正(平成30年5月30日付課法2-8ほか2課共同「法人税基本通達等の一部改正について」(法令解釈通達))前の通達は、次のとおり、棚卸資産の販売による収益の帰属の時期について、その引渡しがあった日の属する事業年度の益金の額に算入する旨を定め、請負による収益の帰属の時期について、引渡し日又はその約した役務の全部を完了した日の属する事業年度の益金の額に算入する旨を定めていた。 また、上記のとおり、通説は、収益をどの事業年度に計上すべきかという点について、法人税法は権利確定主義を採用していると解した上で、この場合の権利の確定は取引の類型や態様に応じて適切な基準を設定する必要があるとして柔軟な解釈態度を示しており、判例もほぼ同様の立場であったと思われる。すなわち、大竹貿易事件:最高裁平成5年11月25日第一小法廷判決(民集47巻9号5278頁)は、要旨次のとおり判示している。   (了)

#No. 324(掲載号)
#泉 絢也
2019/06/27

M&Aに必要なデューデリジェンスの基本と実務-財務・税務編- 【第28回】「収益性の分析(その2)」

M&Aに必要な デューデリジェンスの基本と実務 -財務・税務編-   【第28回】 「収益性の分析(その2)」   公認会計士・公認不正検査士 松澤 公貴   ←(前回) | (次回)→   ▷売上高や各利益の月次推移分析 対象会社の事業の特性によるが、季節により売上高や売上総利益、資金繰りの変動が生じる場合がある。例えば、 対象会社の内部管理体制によるが、自社の売上高の季節的変動を十分に理解している経営者は、意外と少ない。よって、売上高等の月次推移分析を行うことで季節的変動を把握し、同時に「前年同月比」という比較をすることが重要である。 毎月取締役会を開催し、月次損益を報告事項としている会社もあるが、本執筆が前提としている中小企業では、対象会社が自ら作成した月次損益の分析資料は、まず存在しないであろう。 ◆売上高月次推移の分析イメージ (松澤綜合会計事務所作成) 上記の対象会社は、8月及び9月の売上高が高く、12月の売上高が低いことがわかる。なお、製品ごとや顧客ごとにブレークダウンして分析を実施し、併せてEBITDA、資金繰り、運転資本の分析を実施すると効果的である。   ▷販売単価(Price)と数量(Quantity)推移分析 売上高及び売上総利益は、下図のようにブレークダウンが可能である。 ◆売上高ブレークダウン分析のイメージ (松澤綜合会計事務所作成) 一般的に売上高は、「販売単価」及び「販売数量」にブレークダウンでき、販売数量は、「市場規模」と「マーケットシェア」にブレークダウンができる。なお、販売数量のブレークダウンは、一例であり業種により異なる。 デューデリジェンスにおいては、対象会社の価格戦略の理解、及び市場の概要と競合他社の価格戦略を比較して分析する必要がある。例えば、売上高の前年対比分析を行う場合には、簡易的には下記のように分析が可能である。 そして、数量差異については、業種によってさらに分解することが可能であり、例えば、居酒屋業界においては、売上数量は「客数」を意味し、「レイアウト変更などによる座席数の影響」と、「1人当たり回転率による影響」にブレークダウンが可能である。 対象会社の経営者がどのような戦略をとっているのか、及び目指す予定かを確認し、分析結果と整合性を確認する必要がある。一般的に将来の売上高を増加させるには、「販売単価を上げる」か「販売数量を増やす」の2つの方法があり、単価と数量の両方がアップすることが理想であるものの、対象会社の多くは経営資源が限られていることから戦略が重要となる。デューデリジェンスでは、対象会社は、どちらの戦略に注力しているか、競合他社との戦略と比較しながら分析を行う。   ▷1人当たり売上高や各利益の分析 業種によって異なるが、対象会社の効率性や生産性を測る指標として、1人当たり売上高又は1人当たり営業利益(EBITDAを含む)がある。 なお、会社の生産性とは、会社の資源を有効活用してどれだけの売上高又は営業利益を生み出せるかを測るもので、会社の資源の1つである従業員の生産性を見る指標として、1人当たり売上高や営業利益、人件費などが使用される。売上高は、1年間の経営成績を示すフロー項目であるため、分母である従業員数は一般的に平均値が用いられる。 1人当たり売上高 = 売上高 ÷ 平均従業員数 又は 1人当たり売上高 = 売上高 ÷ 期末従業員数 対象会社が、他社よりも1人当たりの売上高が高いのであれば、それだけ会社としての競争力もあり、生産性を上げる努力が結果として現れたと見ることもできる。よって、1人当たり売上高は対象会社の競争力や努力の状況を判断する指標として活用が可能である。 また、当然のことであるが、1人当たり売上高は業種による差が大きい。そのため、対象会社や対象会社の競合他社が、複数の事業(業種)を営んでいる場合は、事業ごとに比較を行う必要がある。 一方、同一業種であっても経営戦略で差が出る場合もある。例えば、服飾メーカーであれば高級ブランドを主力としているメーカーと、大衆向けメーカーを比較しても、意味のないことは明らかであろう。 競合他社の数値が把握できない場合においては、業界平均値を用いても有用な分析が可能な場合がある。例えば、財務省による法人企業統計調査では流動比率や自己資本比率など主要な財務指標について、主要業界ごとに集計し公表しており、1人当たり売上高については掲載されていないものの、付加価値率と従業員1人当たりの付加価値額が掲載されているので、逆算して求めることができる。   ▷総売上高及び純売上高分析 純売上高は、総売上高から「売上値引」、「売上戻り」、「売上割戻」を差し引いた金額である。 純売上高 = 総売上高 - 売上値引 - 売上戻り - 売上割戻 なお、似たようなもので、「売上割引」があるが、これは上記のものと性質が異なる。売上割引とは、買手が製品等の売買時の掛代金を決済日前に支払ったとき、支払日から決済日までの金利に相当する金額を買主に返却(代金の減額)することをいう。すなわち、掛代金の早期決済による金利の払戻しとして利息の性質があるため、通常は、支払利息同様、営業外費用として取り扱われる。 デューデリジェンスにおいては、売上高値引、戻り、割戻などの発生状況と推移を分析するとともに、発生の原因を確認する必要がある。 また、買収価額に直接影響するため、対象会社によっては、直近期や進行期を良く見せたいとする粉飾決算リスクが存在する。そのため、売上高のカットオフエラー(期間帰属の誤り)の可能性を特に注意して検討する必要がある。 (了)

#No. 324(掲載号)
#松澤 公貴
2019/06/27

〔検証〕適時開示からみた企業実態 【事例36】RIZAPグループ株式会社「通期連結業績と業績予想及び通期個別業績と前期実績値との差異に関するお知らせ」(2019.5.15)

〔検証〕 適時開示からみた企業実態 【事例36】 RIZAPグループ株式会社 「通期連結業績と業績予想及び通期個別業績と前期実績値との差異に関するお知らせ」 (2019.5.15)   事業創造大学院大学 准教授 鈴木 広樹   1 今回の適時開示 今回取り上げる適時開示は、RIZAPグループ株式会社(以下「RIZAP」という)が2019年5月15日に開示した「通期連結業績と業績予想及び通期個別業績と前期実績値との差異に関するお知らせ」である。親会社の所有者に帰属する当期利益(同社はIFRS適用会社)をマイナス7,000百万円と予想していたが、実績はマイナス19,393百万円になったという内容であり、同日に「2019年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」を開示している。   2 なぜ業績予想の修正を開示しなかったのか? 開示していた利益の予想値と新たな予想値又は実績値との間に30%以上の乖離があると、それに関して適時開示が必要になる。開示していた利益の予想値がマイナス7,000百万円であれば、新たな予想値又は実績値がマイナス9,100百万円で開示が必要になる。 RIZAPの場合、実績がマイナス19,393百万円になったのだから、開示が必要になることは、もっと早くに分かっていたはずである。こうした場合、開示の重要性をきちんと認識している会社であれば、決算短信の開示よりも前に、業績予想の修正を開示する。決算短信と同時に予想値と実績値の差異を開示するのは、開示に対する姿勢に問題があると言わざるを得ない。   3 報道されたにもかかわらず 実は、この開示の前、5月7日発売の「週刊現代」が、5月15日のRIZAPの決算発表で10,000百万円を超える赤字が報告されると報道していた。その時点で、開示が必要になることは分かっていたのに、開示をしなかっただけでなく、外部に情報が漏れていたのである。 報道された時点で、速やかに業績予想の修正を開示すべきであったが、それでも同社は開示せず、報道から開示までの1週間以上、投資家の間には憶測が蔓延することになった。同社の情報管理と開示の体制は、上場会社の水準ではない。   4 不安だったことが 本連載の【事例31】では、RIZAPが2018年11月14日に開示した「連結業績予想及び配当予想の修正、当社グループの構造改革に関するお知らせ~持続的成長に向けた抜本的な構造改革に着手へ~」を取り上げたが、その最後で次のように述べた。 しかし、結局、松本晃氏は、同社に来て、わずか1年で取締役を退任することになった(2019年4月24日に「取締役人事および当社グループの新経営体制に関するお知らせ~取締役会議長として中井戸信英氏を招聘し、コーポレートガバナンスの進化へ~」を開示)。 同社代表取締役社長の瀬戸健氏が大人になったから、松本氏は同社を去るのだろうか。そうではないだろう。瀬戸氏が大人になっていたら、今回のような開示はしていないだろう。   5 大人になるために 松本氏はRIZAPの「特別顧問」に就任するとのことだが、責任が伴う「取締役」とは異なる。同氏は、責任が伴う子育てからは距離を置くことにしたのだ。瀬戸氏は、今後、自分で成長していかなければならない。大人になるために何をすべきなのか。 日本経済新聞のインタビューで、決算短信に「継続企業の前提に関する重要事象」が記載されていることについて聞かれた瀬戸氏は、次のように答えている(2019年5月17日付日本経済新聞朝刊)。 瀬戸氏は、「継続企業の前提に関する重要事象」の意味を知らないのだろう。同氏が大人になるためにすべきなのは、「勉強」ではないだろうか。行き詰まることが容易に分かるM&Aを続け、現在の状況を招いてしまったのは、同氏の無知に起因する。 上場会社の経営者は、体力や人柄だけで務まるものではない。しっかり勉強して、適切な判断ができるように成長してほしい。それができないならば、代表を辞めるべきである。   6 黒字達成のプレッシャー なお、「2019年3月期 決算短信〔IFRS〕(連結)」に記載されたRIZAPの2019年3月期連結業績実績値と2020年3月期連結業績予想値は、次のとおりである。 (単位:百万円) 瀬戸氏は、日本経済新聞のインタビューで「今期、営業黒字化できなければ私は辞める覚悟でやっていく」と答えている(2019年5月17日付日本経済新聞朝刊)。自身に黒字達成のプレッシャーをかけて、何としてもそれをやり遂げようとしているのだろう。 しかし、黒字達成のプレッシャーは、それが難しくなったとき、不正会計が生じるリスクへとつながる。そうならないことを願いたい。不正会計は、子供の悪戯では済まない。 (了)

#No. 324(掲載号)
#鈴木 広樹
2019/06/27
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