基礎から身につく組織再編税制 【第5回】 「合併の概要」 太陽グラントソントン税理士法人 ディレクター 税理士 川瀬 裕太 今回は組織再編税制における「合併」の基本的な考え方について解説します。 1 合併とは 合併とは、会社同士が契約によって1つの会社になることをいい、「吸収合併」と「新設合併」があります。 ① 吸収合併 吸収合併とは、会社が他の会社とする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後存続する会社に承継させるものをいいます(会社法2二十七)。 (※1) 「合併法人」とは、合併により被合併法人から資産及び負債の移転を受けた法人をいいます(法法2十二)。 (※2) 「被合併法人」とは、合併によりその有する資産及び負債の移転を行った法人をいいます(法法2十一)。 被合併法人は合併によって消滅するため、被合併法人の資産及び負債の移転の対価として合併法人から交付される新株等(合併法人株式等)は、被合併法人を経由せずに合併法人から被合併法人の株主に直接交付されます。 法人税法上は、被合併法人から合併法人に資産及び負債が移転し、合併法人から被合併法人に新株等がいったん交付され、直ちに被合併法人から被合併法人の株主に新株等が交付されたものとして考えます。 ② 新設合併 新設合併とは、2以上の会社がする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併により設立する会社に承継させるものをいいます(会社法2二十八)。 2 合併の課税関係 合併に係る課税関係を非適格・適格ごとに表にまとめると、次のようになります。なお、今回は合併の課税関係のイメージをつかんでいただくことを目的としているため、現時点で下記の表をすべて理解する必要はありません。 合併法人、被合併法人、被合併法人の株主の課税上の取扱いの詳細については、次回以降で説明していきます。 《適格合併の課税関係》 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。 《合併法人の処理イメージ》 ① 非適格合併 ② 適格合併 ◆合併の基本的な考え方のポイント◆ 合併には、「吸収合併」と「新設合併」の2種類があります。 合併は、被合併法人から合併法人へ資産等が原則時価で譲渡されたものとして取り扱います。 被合併法人の最後事業年度で移転資産等の譲渡損益を原則認識し、株主においても旧株の譲渡損益、みなし配当を原則認識することになります。 特例として適格合併の場合には、被合併法人から合併法人へ資産等を簿価で引き継ぐこととされ、課税は生じず、合併法人は被合併法人の利益積立金額を引き継ぎ、株主においても旧株の譲渡損益、みなし配当を原則計上する必要はありません。 (了)
企業経営と メンタルアカウンティング ~管理会計で紐解く“ココロの会計”~ 【第15回】 「選択は提案方法で変わる」 公認会計士 石王丸 香菜子 ・・・(店内)・・・ *資料* ● 第1事業部で利用している設備は、まもなく買い替え時期になる。新しい設備として、以下の2つが候補にあがっている。 ● どちらの設備も残存価額をゼロとする定額法で減価償却し、耐用年数経過後の売却価値はない。耐用年数を経過した後は、同じ設備を再購入する可能性が高い。 ● PN社の資本コストは税引後10%、法人税率は30%として計算する。 * * * 1 「ナッジ」・・・そっと後押し パソコンにソフトをインストールするときやパソコンの設定を変更する時など、『通常の設定(推奨)』と『カスタム設定』を選べるシーンがよくありますね。たいていの場合、『通常の設定(推奨)』にすでにチェックが入っているので、それをそのまま選ぶ方が多いはずです。 【第10回】でも取り上げましたが、人の判断は、デフォルト(初期設定)に非常に大きな影響を受けます。パソコンのユーザーは、インストールする項目や設定する項目の内容を個々に細かく理解しているとは限りません。そのため、カスタム設定しか選べないとすると、思いがけず不都合な設定になってしまったり、設定にとても時間がかかったりする可能性が高くなります。 そのような状況を回避するために、カスタム設定という選択肢を残しつつも、推奨の設定をデフォルトにしておくことで、ユーザーが適切な判断をできるように誘導してくれているというわけです。 このようなことを、法学者キャス・サンスティーンと経済学者リチャード・セイラーは『』と呼んだことで知られています。『ナッジ』とは、注意や合図のために、軽くひじでつついたり、そっと押したりするという意味の単語で、人がより良い意思決定を自然にできるような仕組みや制度のことを指します。先ほどのデフォルト設定はナッジの一例です。 他にも、例えば、車のシートベルトを締めていない場合に自動で警報音が鳴るシステムなど、人が間違うことを予測して設計された仕組みもナッジの1つです。ナッジの活用は広い分野で模索されており、アメリカでは、401k(確定拠出年金制度)への加入に関し、デフォルト設定を「加入」に変更して加入率を高めることができたことが知られています。 PN社の社長も、デフォルトとして「店長オススメのトッピング」を提示することで、第1事業部長が野菜中心の望ましいトッピングを選べるように、うまく『ナッジ』したようですね。 それでは、社長と第1事業部長が、購入予定の設備に関して正しい意思決定をできるようにするためには、カズノ君はどんな資料を作成して『ナッジ』すればよいでしょうか。 2 意思決定しやすいように変換して資料を作る 今回のように、耐用年数の異なる投資案を比較する場合には、「仮に耐用年数が同じならどちらが得か」を考えると意思決定しやすくなります。それぞれの設備の耐用年数経過後は同じ設備に再び投資すると考え、2年と3年の最小公倍数である6年を想定すると、同じ土俵で2つの案を比較することができます。 また、設備から得られる収入については、どちらのタイプを採用しても年間300万円で同じなので、どちらのタイプを選ぶかという意思決定上は考慮する必要がありません。このように意思決定に全く関連しない項目を、「」と呼ぶことがあります。無関連項目については、データがあるとしても資料から省いてしまうことで、着目すべき点が明確になります。 それでは、具体的に資料を作ってみましょう。 《2年タイプ》 2年タイプについては、2年ごとに再投資して6年間利用すると考えます。すなわち、2年おきに合計3回投資するとして計算します。 ランニングコスト年間70万円は、税引後ベースで49万円のキャッシュ・アウト・フローとなります。また、各年度の減価償却費300万円÷2年=150万円は、法人税を減らす効果を持つので、減価償却費150万円×30%=45万円をキャッシュ・イン・フローと考えます。 各年度のキャッシュ・フローを集計し、これを経過した期間で割引計算すると、以下のようになります。 《3年タイプ》 3年タイプについては、3年目に再投資して6年間利用すると考えます。それ以外は、2年タイプと同じように考えます。 以上より、「設備を再購入して6年間使う」という仮定を置くと、《2年タイプ》よりも《3年タイプ》のほうが、6年間で16万円有利であることがわかります。 このように、入手したデータをそのまま使うのではなく、データを比較できるように条件をそろえたり、不要なデータを省いたりすることで、意思決定しやすい資料を提供することができます。 ◆◇◆今回のキーワード◆◇◆ ▷ 人がより良い意思決定を自然にできるような仕組みや制度のこと。 ▷ ある意思決定をする上で、どちらの案を選んでも変わらない項目のこと。意思決定上は考慮する必要がない。 (了)
企業結合会計を学ぶ 【第19回】 「共同支配企業の形成の判定」 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 【第1回】で解説したように、企業結合の分類には、①取得、②共同支配企業の形成、③共通支配下の取引があるが、今回は、共同支配企業の形成の判定について解説する。 結合分離適用指針では、付録として、「〔フローチャート〕 共同支配企業の形成の判定(第175項関係)」があるので、判定に際して利用することが考えられる。 なお、文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 共同支配企業に関連する定義 次のように定義されている(企業結合会計基準8項、11項、12項)。 共同支配企業は、共同支配投資企業の関連会社となる(財務諸表等規則8条6項4号、会社計算規則2条4項4号)。 〔共同支配〕 ⇒ 複数の独立した企業が契約等に基づき、ある企業を共同で支配することをいう。 〔共同支配企業〕 ⇒ 複数の独立した企業により共同で支配される企業をいい、「共同支配企業の形成」とは、複数の独立した企業が契約等に基づき、当該共同支配企業を形成する企業結合をいう。 〔共同支配投資企業〕 ⇒ 共同支配企業を共同で支配する企業をいう。 Ⅲ 共同支配企業の形成の判定規準 企業結合のうち、次の要件のすべてを満たすものは共同支配企業の形成と判定する(結合分離適用指針175項。一般投資企業に関する結合分離適用指針176項にも注意する)。 企業結合会計基準により、共同支配企業に対する議決権比率は、共同支配企業の形成の判定の対象外とされていることから、結合分離適用指針175項の要件を満たしている場合には、共同支配企業に対する各企業の議決権比率が相違しても、当該企業結合を共同支配企業の形成と判定することになる(結合分離適用指針421項)。 つまり、共同支配企業の形成の判定に際して、議決権比率は要件とされていないので(結合分離適用指針421項)、次に述べる4つの要件を満たすかどうかが重要となる。特に、「共同支配」とは、複数の独立した企業が契約等に基づき、ある企業を共同で支配することと定義されていることから、共同支配となる契約等を締結していることがポイントと解される。 1 独立企業要件 共同支配企業の形成の判定にあたり、共同支配企業へ投資する企業とその子会社、緊密な者及び同意している者は単一企業とみなすことになる(結合分離適用指針177項、423項。「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」(企業会計基準適用指針第22号)8項)。 このため、共同支配企業へ投資する企業がこれらの者のみから構成されている場合には、共同支配企業の形成には該当しない。 2 契約要件 「共同支配企業の形成か否かの判定については、共同支配となる契約等を締結していることが必要」(企業結合会計基準76 項)とされ、議決権比率による判定の代わりに共同支配となる契約等の有無により判定することとされている。 このため、契約要件は共同支配企業の形成の判定にあたり本質的な要件と考えられ、契約書等の記載を踏まえ、実質的な判定を行う必要がある(結合分離適用指針424項)。 共同支配企業の形成の判定にあたり、契約要件を満たすためには、契約等は文書化されており、次のすべてが規定されていなければならない(結合分離適用指針178項、424項、428項)。 次のことに注意する(結合分離適用指針178項、179項)。 3 対価要件① 共同支配企業の形成の判定にあたり、「議決権のある株式」(企業結合会計基準37項(1)、結合分離適用指針175項(3))とは、株主総会において、結合分離適用指針178項(2)に規定されている重要な経営事項に関する議決権が制限されていない株式をいう(結合分離適用指針180項)。 このため、一般に、共同支配企業となる結合後企業が、企業結合の対価として、共同支配投資企業となるすべての企業に対し、議決権に関して同一の権利内容を有する株式を交付していない場合には、共同支配企業の形成には該当しないことになる(結合分離適用指針180項)。 また、共同支配投資企業に交付する共同支配企業の株式の議決権の内容について、差異(優劣)を設けることは共同支配の趣旨に反すると考えられるため、共同支配企業の形成に該当するためには、共同支配投資企業となるすべての企業に対し、議決権に関して同一の権利内容を有する株式を交付しなければならないことになる(結合分離適用指針429項)。 次のことに注意する(結合分離適用指針180項)。 4 対価要件② 企業結合に際して支払われた対価のすべてが、原則として、議決権のある株式であると認められるためには、同時に次の要件のすべてが満たされていなければならないとされている(企業結合会計基準(注7)、結合分離適用指針180-2項、429-2項)。 5 その他の支配要件 共同支配企業の形成の判定にあたり、次のいずれにも該当しない場合には、その他の支配要件を満たしたものとされる(企業結合会計基準(注8)、結合分離適用指針181項、430項)。 (了)
組織再編時に必要な労務基礎知識 Q&A 【Q18】 会社分割にあたり、労働者にはどのような通知が必要か 特定社会保険労務士 岩楯 めぐみ 【A】 承継される事業に主として従事する者及びそれ以外の者で分割契約又は分割計画において労働契約を承継会社が承継する旨の定めがある者に対して、労働者の労働契約を承継会社が承継する旨の分割契約又は分割計画における定めの有無や、労働者が異議を申し出る期限日等の一定の事項を、書面で、通知期限日までに通知しなければならない。 (※) 本稿では、会社分割により事業を分割する会社を「分割会社」、それを承継する会社(新設分割の場合の新設会社も含む)を「承継会社」という。 通知対象 労働契約承継法(2条)では、会社分割にあたり、労働者に対して通知を義務付けている。 この通知の対象となる労働者は、次の①又は②のいずれかに該当する者となる。 つまり、承継される事業に主として従事する者(【Q15】参照)については、分割契約又は分割計画において労働契約を承継会社が承継する旨の定めの有無にかかわらず通知対象となり、承継される事業に主として従事する者以外の者については、分割契約又は分割計画において労働契約を承継会社が承継する旨の定めがある場合にのみ通知対象となる。 なお、正社員だけでなく、パートアルバイト等の非正社員も、上記①又は②に該当すれば通知対象となる。 通知事項 労働者に通知すべき事項は、労働契約承継法(2条)及び労働契約承継法施行規則(1条)の定めにより、次の項目となる。 通知方法 労働者に法定の事項を通知する方法は、書面によらなければならない。したがって、電子メール等で行うことはできない。 なお、厚生労働省より、以下の通り、通知書の例が示されている。 ※画像をクリックすると、別ページでPDFが開きます。 通知期限日 労働者への通知は、労働契約承継法(2条)により、遅くとも、下記のいずれかの日までに実施しなければならない。 なお、上記の通知期限日までに労働者へ通知すればよいが、指針(※)により、株式会社については、会社法に定める分割契約等の本店備置き日又は株主総会を招集するための通知を発する日のうちいずれか早い日に、合同会社については、債権者の全部又は一部が会社分割について異議を述べることができる場合に、当該分割会社が、会社法に定める事項を官報に公告し又は知れている債権者に催告する日と同じ日に行われることが望ましいとされている。 (※) 「分割会社及び承継会社等が講ずべき当該分割会社が締結している労働契約及び労働協約の承継に関する措置の適切な実施を図るための指針(平成12年労働省告示第127号)」(第2の1の(1)) (了)
中小企業経営者の [老後資金]を構築するポイント 【第14回】 「膨らみやすい社長借入金(会社貸付金)の解消法」 税理士法人トゥモローズ 中小企業の場合、社長が会社に対して資金を提供しているケースは多い。会社の資金繰りの影響や社長が立て替えた会社経費が精算されずに蓄積されたことなどが主な理由であるが、この社長借入金も月日の経過とともに膨れ上がり、事業承継や相続において大きな障壁となるケースがある。 これらの借入金は社長自身の老後資金確保という観点からも、また、後継者に負の遺産を承継しないためにも、事業承継前に適切に精算しておくべきことが肝要である。今回はこの社長借入金について、その発生原因と解消方法等について解説したい。 1 社長借入金の発生原因 (1) 金融機関からの借入れの代替え 一般に会社経営を資本の部に係る資金だけで遂行することは難しく、負債の部からも資金調達をするのが通例である。負債の部からの資金調達の調達先は主に銀行等の金融機関であるが、下記のような理由から、金融機関からの借入れではなく、社長個人の資金を会社に貸し付けるケースも多い。 (2) 経費の立替え 小さい会社や設立当初の会社でありがちなのが、会社経費を社長個人が立て替え、その精算が適切に実施されなかったケースである。経理担当者もいないような会社では、会社のお金と社長個人のお金を区別できていないところも多く、精算されないまま何年も放置されると、その借入金額が多額になることもあり得る。 (3) 役員給与の未払い 会社の資金繰りの影響で、社長に対し給与を支払うことができず、未払金としてしまう会社も多いであろう。将来資金が回るようになった後に支払えばいいと考えていたものの、そこまで好転しないまま未払給与が増殖してしまったケースである。 2 社長借入金の解消方法 (1) 債権放棄 会社に対する貸付金について、社長が債権放棄を行う方法である。債権放棄は民法519条に定められており、債務者に対して債務を免除する意思表示のみで足り、債務者、すなわち会社の同意は必要とされていない。 なお、実務上は税務当局等とのトラブルを回避する意味でも、債権放棄の事実を証する書類(債権放棄通知書や株主総会議事録等)を作成すべきであろう。 (2) DES 会社に対する貸付金を、その会社に対して現物出資する方法である。この方法による場合、その貸付金を時価評価する必要があり、その算定が難しいことが多く、実務上ハードルが高くなる傾向がある。 (※) 東京都主税局ホームページより (3) 擬似DES 資本の部に社長から資金を出資した後、その資金で社長借入金を返済する方法である。この方法の場合には実際に増資資金を用意する必要があるという点が、資金繰りに困窮している社長の場合、困難を伴うことになる。 (4) 返済 会社が不動産を売却したり、金融機関から新規に借入れをしたりして、社長に対する借入金を返済する方法である。 また、社長に対する毎月の支払額の一部を借入金の返済とする方法もある。ただしこの場合、役員給与が減額されることとなるので、将来支給すべき役員退職金の額に影響を及ぼす(すなわち、最終報酬月額が低くなるため、支給できる役員退職金が減少する)ことになるので注意が必要である。 (5) 債権贈与 社長が有する貸付債権を、その後継者に相続時精算課税制度を活用して贈与する方法である。債権自体は残ってしまうため抜本的な解決にはなっていないが、債権者を後継者にすることで、事業承継の弊害を少なくする効果はある。 * * * 本連載では【第6回】から今回にかけて、事業承継前(現経営者として活躍している時期)に準備できる老後資金確保の方法について解説してきたが、次回からは事業承継時の対応について解説を行っていく。 (了)
令和時代の幕開けに思い馳せる 会計事務所経営 【第3回】 「あなたはそれでも事業承継をビジネスにしますか」 ~大廃業時代とどう向き合うか~ (前編:顧客志向マーケティング) 株式会社アーヌエヌエ 代表取締役 杉山 豊 辛辣なタイトルですが、まず最初に一言お断りをさせてください。 私は事業承継をビジネスにしている先生方を揶揄しているわけではありません。 すでに事業承継をビジネスにされている先生方が数多くいらっしゃる中で、「時代は事業承継だ! 我々もその分野を強みに会計業界で勝ち残って行こう!!」と新たにこの分野に参入しようとする先生方の方向性は間違ってはいません。 しかし、レッドオーシャン(競争の激しい市場)に準備もなしに入るのは、疲弊するだけではないでしょうか。 もし参入するならば、しっかりとセグメンテーション(市場の細分化)、ターゲティング(ターゲットを絞ったマーケティング)、そしてポジショニング(市場での位置付け)を確立することが大切です。 特にポジショニングにおいては、どの軸を選択しても誰とも被らない、そんな強さが必要ですね! ➤廃業もビジネスになる時代 さて、近年は「大廃業時代」と言われ、高度成長期を戦ってきた多くの中小企業は後継者がいないことで廃業を選択せざるを得ない状況にあります。また、理由はそれだけに留まらず、黒字経営にもかかわらず人材不足が理由で事業を畳む選択をされる会社も数多く存在しています。 「顧問先が廃業するのは時代の流れだし、仕方ない・・・」 そう考える先生方もいらっしゃるかもしれません。 しかし、廃業を選択する前に何か手は打てなかったのでしょうか。 ご存知かもしれませんが、今や「廃業」も先生方のビジネスになる時代です。 もちろん本来の先生方のお仕事は税務申告の支援に始まり、経営支援などといった、どちらかといえば会社を成長させることに貢献をすべきであろうと思いますし、私も同感です。 しかし、実際問題として、前述した理由から廃業する会社が数多く存在するのです。 ところで、先生方は「廃業」という言葉を聞いて、どのような印象を受けるでしょうか。 例えば、再生の余地がなく疲労困憊、疲弊をして、やむを得ず事業を畳まざるを得ないというのが廃業のイメージではありませんか。又は、生きていくために、収入を得るために会社をしている、そんな経営者の皆さんから生きていく術を奪うといったマイナスのイメージが強いのではないでしょうか。 もちろん事業がしっかりと承継できれば、それは素晴らしいことです。でも一方で、事業承継せずに事業をどのように畳むかを選択した会社を応援する先生がいても良いと思いませんか? ただし、事務的に廃業手続きをすること、それは全く支援とは思えません。むしろ、廃業の意思決定を促し、しっかり時間を味方につけて段取りよく整理することで、「債務超過廃業」ではなく、「資産超過廃業」を目指すようなサポートが先生方にできませんか? もっと言えば、例えば「経営に明るい」、「マーケティングに明るい」、「SWOT分析に明るい」、そんな先生方が廃業に向かう危機的な会社を再生することに立ち上がっていただく可能性はないでしょうか。 これがタイトルに込めた私のマーケティングのお話の始まりです。 マーケティング論をお話させていただくにあたり、机上の空論やアカデミックさはここでは封印して進めさせていただきます。 ➤「不」を取り除くお手伝い マーケティングの根幹を成すもの、それはズバリ「顧客志向」です。 顧客が今どのような状況にあり、どのような課題があり、どうすれば解決できるか、それがマーケティングを展開する最初の一歩です。 実はここが弱い、もしくは考えられていないことで、「顧客志向」より「自社志向」によったマーケティング戦略を重視している会社が多く見受けられます。 その一例に、マーケティングの会議と言えば、商品設計や価格設定、販売経路やメディア戦略に重きを置いている兆候があり、事態が変化したときに、再度メンバーを招集して行う議題は上記の項目になりがちです。これらは「自社志向」のマーケティング戦略です。 確かに重要な要素ではありますが、その前にもっと大切なのは、「顧客は誰なのか」ということです。 マーケティングとは、すなわち顧客の「不」を取り除くお手伝いをすることです。 「不安」「不満」「不便」「不信」を「安心」「満足」「便利」「信頼」に変えていくことで喜んでいただき、その喜びの対価が、先生方であれば顧問料やコンサル料に値すると考えます。 先生方はお客様の経営課題に耳を傾け、寄り添っていらっしゃいますか。 「税務以外のことは自分の仕事ではない」と右から左に流していませんか。 「中小企業経営者が経営相談するなら誰か?」という問いがあれば、真っ先に名前があがるのが、まさに先生方、税理士です。 例えば、中小企業が直面している喫緊の経営課題であり、先生方においても同様に悩まれている「人材採用」の課題があります。 この課題に対して「大切な顧問先のために誰もやらないなら私が」と考え、立ち上がる先生がいらっしゃれば、恐らくポジショニングの確立ができると思います。 さらに「採用しても定着率が悪いとよく耳にするし、自分の事務所も同様だ。採用に併せて人事評価制度の構築支援ができれば、お客様は喜んでくれるのではないか」、そうお考えになる先生がいれば、今後の先行メリットも享受しつつ、唯一無二の会計事務所を目指せるのではないでしょうか。 事実、私はとある経営団体で昨年から採用ノウハウ講座を実施し、中小企業の課題解決に取り組んでいく中で、採用が難しいのは「中小企業のブランディングが脆弱だからだ」という結論に至りました。 今年からは採用講座をリメイクして、「ブランディング」と「採用」をミックスした講座を展開していますが、参加者の皆様は真剣に耳を傾けていらっしゃいます。まさに「不」を取り払おうと、お客様自身が必死だという現れです。 「税務×人材採用」、「会計×人事評価」、こんな会計事務所経営も今の時代では、全く違和感はありません。 ➤顧問先のM&A、その先にある可能性 「M&Aは顧問先を失う手段だからどうも受け入れられない」という先生方もいらっしゃるかもしれませんが、長くお世話になった顧問先が悩んだ末に選んだ幸せへの航路に、エールと拍手を送ってあげてください。 雇用を守ろうと必死に選んだ道、経営者が愛した商品や顧客、目に見えない数多くの資産を守るための苦渋の選択なのですから、温かく受け入れてあげることも必要です。 しかも、顧問先のM&Aを受け入れることで、先生方にも見えてくることもあります。 M&A後に行われる、新しい組織体制の構築を目指した統合プロセスのことを「PMI(「Post Merger Integration」の略)」と言いますが、このPMIを考えれば、むしろM&Aは顧問先を失うのではなく、買収先をも新たな顧客として迎え入れるマーケティングになり得ないでしょうか。 時代の潮流であるM&Aの中で仲介業者が踏み入れない領域、言うなれば「結婚後の生活」を見守る方が必要とされています。 PMIを進めるにあたり先生の本来業務である財務会計などに近い部分、今多くの先生方が事業として取り入れていらっしゃる「経理代行業務」なども選択肢の可能性はないでしょうか。 また、統合には効率化が欠かせませんので、IT構築支援なども先生方のお仕事になる可能性は十分に秘めていますし、まさにここはまだまだブルーオーシャン(競争の少ない市場)ではないでしょうか。 このように、マーケティングの第一歩は外部環境をしっかりと把握することに尽きます。その上で外部環境から機会を見いだし、自社の強みとかけ算することで差別化を図り競合を凌駕し、競合を意識することなく独自性を発揮していくことにあります。 * * * ここまで前編として、マーケティングとは外部環境を絶好の機会とする、また顧客を知り顧客の「不」を取り払うことで成立するとお話してきました。今回は、ここまでとさせていただき、次回の後編では、独自性を発揮するための方法をお伝えしたいと思います。 (了)
《速報解説》 会計士協会、「監査報告書に係るQ&A」の公開草案を公表 ~KAM記載の新実務へ対応~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2019年6月14日、日本公認会計士協会は、「監査報告書に係るQ&A」(公開草案)を公表し、意見募集を行っている。 これは、「監査基準の改訂に関する意見書」(2018年7月5日、企業会計審議会)において、監査人の監査報告書に「監査上の主要な検討事項」(国際監査基準のKey Audit Matters(KAM)に相当する)を記載するという新しい実務が行われることに対応するためのものであり、監査報告書全般に関するQ&Aも記載されている。 意見募集期間は2019年7月5日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 公開草案の主な項目は次のとおりである。 公開草案は、目次を含めて59ページに及ぶものなので、以下では主な内容について解説する。 【監査報告書全般】 【監査上の主要な検討事項関係】 1 背景 背景として次のことが述べられている。 2 監査上の主要な検討事項の個数及び記載量(Q2-7) 監査上の主要な検討事項は、監査役等にコミュニケーションを行った項目の中の相対的な重要性によって決定されることになるため、個数についての目安は設けられていない。 その記載に当たっては、記載量に関する制限はないものの、想定される財務諸表の利用者が理解できるように、詳細さと簡潔さのバランスを保つことが重要となるとのことである。 重要であると判断した事項の決定は、その数も含め、職業的専門家の判断によるものであり、特に重要であると判断した事項は、個々の監査業務における相対的な重要性を考慮して決定され、同業他社等との比較において重要であるかどうか考慮する必要はないとのことである(Q2-2の解説の(2))。 3 監査上の主要な検討事項と内部統制の重要な不備(Q2-4) 監査上の主要な検討事項は、監査人が当年度の財務諸表の監査において特に重要であると判断した事項であり、監査の過程で監査役等と協議した事項の中から選定されるものである。 このため、内部統制の重要な不備は、監査役等にコミュニケーションを行うことが求められているので、監査上の主要な検討事項を選定する際の母集団に含まれることになるが、監査上の主要な検討事項は、内部統制の重要な不備を報告することを目的とするものではないので、内部統制の重要な不備の存在そのものが監査上の主要な検討事項となるわけではない。 ただし、監査上の主要な検討事項として選定した理由又は監査上の対応の記述において、内部統制に関する記述に触れることがあるとのことである。 4 監査上の主要な検討事項と未修正の虚偽表示(Q2-5) 監査上の主要な検討事項は、監査役等とコミュニケーションを行った事項から決定するものであるので、未修正の虚偽表示は監査上の主要な検討事項を検討する母集団に含まれる。 未修正の虚偽表示が監査上の主要な検討事項に該当するかどうかの検討に際しては、監査人は、監査の過程で虚偽表示が識別され、修正されたかどうかの事実に着目するのではなく、虚偽表示の内容や発生状況が当期の監査において特に注意を払った事項に該当するかどうかを検討し、他に識別している事項との相対的重要性に基づき監査上の主要な検討事項の決定を行うことになる。 したがって、監査の過程で識別された未修正の虚偽表示が監査上の主要な検討事項に関連することもあるが、すべての未修正の虚偽表示が、必ず監査上の主要な検討事項になるというものではない。 5 会社に対する財務諸表における注記の拡充の要請(Q2-14) 企業に関する情報を開示する責任は経営者にあるため、監査人による監査上の主要な検討事項の記載は、経営者による開示を代替するものではない。 経営者は、適用される財務報告の枠組みにより求められる財務諸表の表示及び注記事項、又は適正表示を達成するために必要な財務諸表の追加的な注記事項を開示する責任を有している。 経営者が財務諸表に追加情報の注記は必要ないと判断した場合、監査人は財務報告の枠組みに照らして、追加情報の注記がなくとも財務諸表が適正表示を達成しているかどうかを判断しなければならないが、適正表示を達成していると判断したときは、経営者に対して、監査上の主要な検討事項を監査報告書に記載することを理由として注記の拡充を強要することはできない。 6 監査スケジュールや監査役等とのコミュニケーションにおける留意点(Q2-18) 監査上の主要な検討事項は監査報告書の記載事項であるが、監査の最終段階を待って、監査の過程で監査役等とコミュニケーションを行った事項から監査上の主要な検討事項の決定に着手することが想定されているわけではない。 監査の早い段階で、監査上の主要な検討事項の候補の提示及び協議、草案の検討等を行うおおよその時期について、経営者及び監査役等と協議しておくことが重要となる。 7 株主総会における対応(Q2-19) 株主総会において、株主から、監査上の主要な検討事項に関する質問が出ることが想定される場合、想定される質問の内容について事前に会社との間で、監査人が回答すべき事項と会社側が回答すべき事項の区分について十分に協議しておくことが適切であるとのことである。 会社法の規定に従って株主総会において監査人の出席の決議があった場合は、監査人は株主総会に出席し、株主からの質問の趣旨を踏まえて議長から指名を受けて監査人は回答することとなる。 8 監査上の主要な検討事項の監査人の法的責任に及ぼす影響(Q2-20) 監査人が、監査契約に基づいて、一般に公正妥当と認められる監査の基準に準拠して監査上の主要な検討事項を選定し監査報告書に記載している限り、監査上の主要な検討事項の記載が、会社又は第三者に対する監査人の法的責任(損害賠償責任)の帰結に大きな変更をもたらすものではないと考えられる。 監査人は監査基準に準拠して正当な注意義務を払って監査を実施していた場合には責任を負わないという点は、監査上の主要な検討事項が適用される以前からも同じであり、この意味で、監査上の主要な検討事項は、監査人の法的責任(損害賠償責任)の帰結に大きな違いをもたらすものではないと考えられる。 監査人の法的責任は、最終的には個々の事案ごとに裁判所が判断することになる(法規委員会研究報告第1号「公認会計士等の法的責任について」(最終改正2016年7月25日)も参照)。 (了)
《速報解説》 IAASBの内部監査プロジェクト等を踏まえ 監査基準委員会報告書610「内部監査の利用」等が改正される ~原則2020年4月1日以後開始する事業年度に係る監査等から適用~ 公認会計士 阿部 光成 Ⅰ はじめに 2019年6月12日、日本公認会計士協会は、監査基準委員会報告書610「内部監査の利用」など多くの監査基準委員会報告書を改正した。これにより、2019年2月26日から意見募集していた公開草案が確定することになる。 これは、国際監査・保証基準審議会(IAASB)において検討された内部監査プロジェクト及び財務諸表の注記事項の監査を強化するプロジェクトに対応するものである。公開草案に対する「コメントの概要及びコメントについて」も公表されている。 改正する監査基準委員会報告書は次のとおりである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。 Ⅱ 主な内容 改正する監査基準委員会報告書が多いので、以下では主な内容について解説する。 1 内部監査人の作業の利用 本報告書は、監査人が監査証拠を入手するために内部監査人の作業を利用する際の、監査人の責任に関する実務上の指針を提供するものである(1項)。 監査証拠の入手に当たって、監査人自らが実施する監査手続の種類もしくは時期を変更するか、又は範囲を縮小するために、監査人に内部監査人の作業を利用することを要求するものではない(3項)。 企業が内部監査機能を有し、監査人自らが実施する監査手続の種類もしくは時期を変更するか、又は範囲を縮小するために内部監査人の作業の利用を想定する場合に、以下の事項について判断することについて規定している(9項)。 監査人は表明する監査意見に対して単独で責任を負うことから、計画された範囲で内部監査人の作業を利用した場合でも、監査人が監査に十分に関与したかどうかを総合的に評価しなければならない(15項)。 また、監査人は、監査基準委員会報告書260「監査役等とのコミュニケーション」13項に従って、監査役もしくは監査役会、監査等委員会又は監査委員会と、計画した監査の範囲とその実施時期に関するコミュニケーションを行う際に、内部監査人の作業の利用をどのように計画したかについてコミュニケーションを行わなければならないとされている(16項)。 監査人は、以下の事項を評価した上で、内部監査人の作業が監査の目的に照らして利用できるかどうかを判断しなければならないとされている(11項)。 内部監査人の作業に対して実施する監査人の手続の種類及び範囲について規定されている(20項)。 2 企業及び企業環境の理解を通じた重要な虚偽表示リスクの識別と評価 リスク評価手続において、内部監査に従事する適切な者(内部監査機能がある場合)への質問が要求されている(5項(1))。 また、企業が内部監査機能を有している場合、監査人は、内部監査機能の責任、組織上の位置付け、及び実施された又は実施される予定の業務を理解しなければならないとされている(22項)。 監査人が理解すべき財務報告に関連する情報システムには、総勘定元帳や補助元帳だけでなく、それ以外の情報システムの注記事項に関連する部分を含めなければならず、また、取引種類、勘定残高及び注記事項(定性的及び定量的な情報を含む)を検討することにより、虚偽表示リスクを識別することとされている(17項、25項)。 3 財務諸表監査における総括的な目的 「虚偽表示」とは、報告される財務諸表項目の金額、分類、表示又は注記事項と、適用される財務報告の枠組みに準拠した場合に要求される財務諸表項目の金額、分類、表示又は注記事項との間の差異をいい、注記事項についても明記されている(12項(6))。 注記事項は、適用される財務報告の枠組みにより求められている、又は明示的か否かにかかわらず記載が認められている説明的もしくは記述的な情報から構成され、注記事項は、財務諸表本表において、又は脚注方式で記載されるが、財務諸表から他の文書に参照をすることによって財務諸表に組み込まれることもある(12項(9))。 監査基準委員会報告書は、会計上の見積り及び関連する注記事項が適用される財務報告の枠組みに照らして合理的又は妥当であるかどうか、並びに企業の会計実務の質的側面(経営者の判断に偏向が存在する兆候を含む)について、特定の検討を行うことを監査人に要求している(A45項)。 4 財務諸表監査における不正 不正な財務報告を行う方法として、適用される財務報告の枠組みで要求される注記事項又は適正表示を達成するために必要な注記事項を省略したり、不明瞭に記載したり、又は誤った表示をしたりすることが規定されている(A4項)。 監査チーム内の討議事項として、経営者が注記事項を、適切な理解を妨げるような方法(例えば、あまり重要でない情報を多く含めたり、不明瞭で曖昧な表現を使用したりするなど)で記述しようとするリスクの検討を含むとしている(A10項)。 5 監査計画 注記事項には広範囲かつ詳細な情報が含まれることから、注記事項に関連するリスク評価手続及びリスク対応手続の種類、時期及び範囲の決定は重要であるとし、監査の初期段階における注記事項の検討により、以下の事項に関する判断への役立ちが規定されている(A13項、A14項)。 6 監査の計画及び実施における重要性 定性的な注記事項が重要であるかどうかを判断する際に、監査人が考慮する要因には、例えば以下がある(A2項)。 7 評価したリスクに対応する監査人の手続 財務諸表の表示及び注記事項の妥当性の検討に際して、次の事項を検討する(23項)。 監査人が監査手続の実施の時期を検討する際に考慮する要因として、財務諸表、特に貸借対照表、損益計算書、包括利益計算書、株主持分変動計算書又はキャッシュ・フロー計算書に計上された金額についての詳細な説明を提供する注記事項の作成時期がある(A14項)。 8 監査の過程で識別した虚偽表示の評価 監査人が、財務諸表がすべての重要な点において適正に表示されているかどうかに関して意見表明する場合、虚偽表示には、監査人の判断において、財務諸表がすべての重要な点において適正に表示されるために必要となる、金額、分類、表示又は注記事項の修正も含まれる(3項)。 注記事項に関する虚偽表示も、個別にも集計しても、又は金額、内容もしくは状況を考慮しても「明らかに僅少」である場合があるが、監査人は、「明らかに僅少」ではない注記事項の虚偽表示については、当該虚偽表示に関連する注記事項及び財務諸表全体に与える影響を評価するために集計する(A4項)。 A16項は、定性的な注記事項に関する虚偽表示に重要性があると判断される場合の例を示している。例えば、減損損失の認識に至った事象又は状況について注記していない場合、会計方針の記述が不正確な場合があげられている(A16項)。 9 財務諸表監査における法令の検討 監査人が違法行為又はその疑いを監査報告書において報告することがある例として、監査人が、違法行為又はその疑いは監査上の主要な検討事項であると判断し、監査基準委員会報告書701「独立監査人の監査報告書における監査上の主要な検討事項の報告」に従って、当該事項を報告する場合があげられている(A25項。監基報701第13項が適用される場合を除く)。 Ⅲ 適用時期等 (了)
《速報解説》 キャッシュレス・消費者還元事業における 各事業者の登録・申請までの全貌 ~キャッシュレス対応推進フェアが全国各地で開催~ Profession Journal編集部 経済産業省・中小企業庁による「軽減税率・キャッシュレス対応推進フェア」が、東京での開催を皮切りに全国各地で順次開催されている(本稿公開時点では東京、広島、大阪で開催済み)。 本フェアでは、2019年10月1日の消費税率引上げ後の消費の落ち込みを防ぐ対策の1つである「キャッシュレス・消費者還元事業」への参加を検討する事業者向けに、本事業の説明、キャッシュレス決済の体験コーナー、特別講演など、様々なコンテンツが用意されている。 消費税率引上げがいよいよ現実味を増す中で、キャッシュレス決済の導入を真剣に検討する事業者も増加すると思われるが、一定の業種・取引については対象外となるなど、参加に際しては注意すべきポイントも多い。税理士としては、クライアントからの本事業に関する相談にも対応できるよう、登録・申請の手続き等含め、改めて全貌を確認しておきたい。 〇 キャッシュレス・消費者還元事業の仕組み 政府が推進するキャッシュレス・消費者還元事業(以下「ポイント還元事業」)とは、2019年10月1日に予定されている消費税率引上げに伴い、需要平準化対策として、キャッシュレス決済による生産性向上及び消費者の利便性向上の観点から消費税率引上げ後の一定期間に限り、中小・小規模事業者によるキャッシュレス手段を用いたポイント還元・割引の支援を行うというもの。 消費者への還元として、消費税率引上げ後の9ヶ月間(2019年10月1日~2020年6月30日)にわたり、消費者がキャッシュレス決済手段を用いて中小・小規模の小売店・サービス業者・飲食店等に対して支払いを行った場合、個別店舗については5%、フランチャイズチェーン加盟店については2%を消費者に還元する。 消費者還元の仕組みは、まず、キャッシュレス決済事業者を公募し、登録された決済事業者が中小・小規模事業者を募集・加盟店として登録したのち、キャッシュレス手段を中小・小規模事業者(加盟店)に提供する。そして、その提供された決済手段を用いて消費者が商品を購入することで、決済事業者から消費者にポイントが発行等される仕組み。 《消費者還元の仕組み》 (出所) 経済産業省「キャッシュレス・消費者還元事業サイト」より。以下、図表同様。 〇 公募対象となるキャッシュレス決済事業者の要件 ポイント還元事業で公募対象となっているキャッシュレス決済事業者は、一般的な購買に繰り返し利用できる電子的な決済手段(クレジットカード、電子マネー、QRコードなど)を対象となる決済手段としていることに加え、次の要件を満たす必要がある。 〇 キャッシュレス決済事業者の登録 上記の要件を満たした上で、キャッシュレス決済事業者の登録までの大まかな流れは、以下の通りとなっている。 (※) 2019年4月12日(金)~2020年2月28日(金)17時必着(厳守) なお、決済事業者向けに全116問(本稿公開時点)のFAQも公表されており、端末補助や加盟店登録、決済事業者登録などについて幅広い事項が掲載されている。 〇 中小・小規模事業者に対する補助 1 決済端末及び加盟店手数料補助 ポイント還元事業では、中小・小規模事業者がキャッシュレス決済を導入する際に必要となる端末等導入費用の1/3を決済事業者が負担し、残りの2/3を国が補助する。また、中小・小規模事業者がキャッシュレス決済を行う際に、決済事業者に支払う加盟店手数料(3.25%以下)の1/3についても国が補助を行う(※)。 (※) 加盟店登録要領に規定するフランチャイズチェーン等に属する中小・小規模事業者を除く。 2 補助の対象となる中小・小規模事業者の範囲 補助の対象となる中小・小規模事業者は、次の定義に該当している必要がある。 (※1) 旅館業は資本金5千万円以下又は従業員200人以下、ソフトウェア業・情報処理サービス業は資本金3億円以下又は従業員300人以下とする。 (※2) 資本金又は出資金が5億円以上の法人に直接又は間接に100%の株式を保有される中小・小規模事業者は補助の対象外とする。 (※3) 事業協同組合、商工組合等の中小企業団体、農業協同組合、消費生活協同組合等の各種組合は補助の対象とする。 (※4) 一般社団法人・財団法人、公益社団法人・財団法人、特定非営利活動法人は、その主たる業種に記載の中小・小規模事業者と同一の従業員規模以下である場合、補助の対象とする。 しかし、上記の中小・小規模事業者の定義に該当する場合であっても、登録申請時点において、確定している(申告済みの)直近過去3年分の各年又は各事業年度の課税所得の年平均額が15億円を超える中小・小規模事業者、いわゆる「過小資本企業」は補助の対象外となる。 なお、補助の対象外となる業種・取引については、キャッシュレス・消費者還元事業サイトで詳細が公表されている。 〇 中小・小規模事業者の加盟店登録 上記の定義に当てはまることを前提に、中小・小規模事業者(加盟店)の登録は、ポイント還元事業の登録を受けた決済事業者を通じて行う。 キャッシュレス・消費者還元事業サイトでは、仮登録を受けた決済事業者が提供するそれぞれのプランが公表されており、そこでは提供可能な決済手段、加盟店手数料、提供端末、問い合わせ先などの情報が掲載されている。 加盟店登録までのステップは下記の通り。 * * * ちなみに、前述したとおり「軽減税率・キャッシュレス対応推進フェア」が各地で開催されているほか、中小・小規模事業者向けに5月中旬から全国でポイント還元事業の説明会が行われているので、本事業の参加を検討する際は参考とされたい。 (了)
2019年6月13日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル No.322を公開! - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。