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《速報解説》「国際観光旅客税法」が4月18日付で公布、平成31年1月7日以後の出国旅客に適用~同法の政省令も同日公布~

 《速報解説》 「国際観光旅客税法」が4月18日付で公布、 平成31年1月7日以後の出国旅客に適用 ~同法の政省令も同日公布~   Profession Journal 編集部 平成30年度税制改正関連法の公布後も国会での審議が続いていた国際観光旅客税法案が、4月11日に参議院本会議で可決・成立し、このたび4月18日の官報号外第87号にて公布された(法律第16号)。 これに合わせて同法の政令及び省令も同日に公布され、当初の予定通り原則平成31年1月7日の施行、施行日以後の出国旅客に定額・一律1,000円の負担が求められることとなる。 なお、その他本制度の概要については、本誌掲載の下記《速報解説》をご覧いただきたい。 なお、今回明らかになった同法の政省令ではより細かな定義規定や国外事業者の納税地の特例に係る承認申請等の手続が定められており、例えば同政令3条1項では、本税制が課税されない乗継旅客のうち日本への入国直前と出国直後の空港が同一の場合(いわゆる往復利用の場合)は除外される(課税対象となる)旨の規定が設けられている。 その他、日本に派遣された外交官等の一定の出国については国際観光旅客税を課さないこととされているが、この免除規定については、国際観光旅客税法の附則第9条において租税特別措置法の一部改正が織り込まれ、同法第90条の16(国際観光旅客税の特例)が新設されている(政省令も同様)。 (了)

#No. 264(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2018/04/18

《速報解説》国税庁、「農業経営収入保険に係る税務上の取扱いについて(情報)」を公表~2019年の制度開始を前に保険料や事務費、積立金の取扱い等を示す~

 《速報解説》 国税庁、「農業経営収入保険に係る税務上の取扱いについて(情報)」を公表 ~2019年の制度開始を前に保険料や事務費、積立金の取扱い等を示す~   税理士 島田 晃一   国税庁は2018年4月6日付けで、農林水産省との協議結果として「農業経営収入保険に係る税務上の取扱いについて(情報)」を公表した。 今後はここで公表された取扱いに基づき税務上の処理が行われることになる。   1 農業経営収入保険とは 2017年6月農業災害補償法について、その一部が改正され「農業経営収入保険制度」が創設された(制度開始は2019年1月から)。従来からある農業共済制度は自然災害による収穫量の減少のみが補償対象になっており、需給要因による価格低下や農業者の疾病等による減収は補償の対象にならない。 また、対象品目は収穫量を確認できるものに限定されており、農業経営全体の悪化には対応していないという問題点があった。 今回、創設された「農業経営収入保険制度」は農業経営全体を対象としたもので、自然災害だけでなく前述した価格低下などによる収入悪化が認められた場合、保険金の支払対象になる。 農業経営収入保険の加入要件等の概要は以下のとおりである。 なお、農業共済などの従来の類似制度に加入しているときは、この農業経営収入保険と重複加入はできない。   2 今回公表された税務上の取扱い 今回公表された税務上の取扱いは以下のとおりである。 上記の取扱いによれば、例えば、個人の農業者が2019年を保険期間とする農業経営収入保険の保険料を2018年10月に支払った場合、一旦「前払金」として資産計上し、2019年に「保険料」として必要経費又は損金に振り替えなければならない。 一方、保険期間の収入金額が減少し補填金額を受け取ったときは、「保険金部分」、「国庫補助部分」、「積立金部分」に区分し、「保険金部分」、「国庫補助部分」のみ収入金額として計上する必要がある。また、申告期限までに補填金額が確定しなかったときは概算金額をもって収入(益金)計上しなければならない。 ただし、概算金額と実際の金額が異なった場合、その差額が少額であるときは、修正申告や更正の請求を行うのではなく、その差額を翌年(翌期)において加減算する。 以上、簡単ではあるが農業経営収入保険の概要と税務上の取扱いについて述べてきた。本稿が、農業経営収入保険に関する知識を深める一助になれば幸いである。 (了)

#No. 264(掲載号)
#島田 晃一
2018/04/17

《速報解説》 国税庁、タックスアンサーで「仮想通貨交換業者から仮想通貨に代えて金銭の補償を受けた場合」の取扱いを公表~NEM流出事件に係るコインチェックからの補償金は雑所得として課税対象に~

《速報解説》 国税庁、タックスアンサーで「仮想通貨交換業者から仮想通貨に代えて金銭の補償を受けた場合」の取扱いを公表 ~NEM流出事件に係るコインチェックからの補償金は雑所得として課税対象に~   Profession Journal編集部   仮想通貨NEMの流出事件について、取引所運営者のコインチェックは本年1月28日のリリースにおいて、対象となるNEM保有者約26万人に対し総額約460億円の補償金を日本円で支払う方針を示していたが、その補償金の税務上の取扱いについて、損害賠償金として非課税となるのか雑所得とされるのかが争点となっていた。 このほど国税庁は4月16日にタックスアンサー「仮想通貨交換業者から仮想通貨に代えて金銭の補償を受けた場合(No.1525)」を公表、後掲のとおり、支払を受けた補償金は非課税となる損害賠償金には該当せず、雑所得として課税の対象となることを明らかにした。 この公表を受けコインチェックのホームページにも同日この取扱いに関するリリース(仮想通貨NEM保有者に対する補償金の課税関係について)を行っている。なお、今回の補償についてはすでに3月12日付けのリリースで同日中に補償を行うことが公表されている。 なお、コインチェックのリリースにも示されているが、今回支払われた補償金は平成30年に発生した事実に基づいて支払われたものであるため、この所得については原則として平成30年分の確定申告が必要となる(本誌では4月26日(木)公開のNo.266において、より詳しい解説を掲載する予定)。 また、今後も他の仮想通貨において同様の事件が発生した場合、基本的には今回の取扱いが適用されると考えられるため、投資家にとっては留意すべき点といえよう。 (了)

#No. 264(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2018/04/17

《速報解説》 金融庁、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等を公表~「収益認識に関する会計基準」の適用に対応した規定等の整備を進める~

《速報解説》 金融庁、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等を公表 ~「収益認識に関する会計基準」の適用に対応した規定等の整備を進める~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 平成30年4月13日、金融庁は、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則の一部改正」(案)、「連結財務諸表の用語、様式及び作成方法に関する規則の一部改正」(案)、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」の取扱いに関する留意事項について(財務諸表等規則ガイドライン)の一部改正(案)などを公表し、意見募集を行っている。 これは、平成30年3月30日に、企業会計基準委員会が公表した「収益認識に関する会計基準」(企業会計基準第29号)等に対応するものである。 意見募集期間は平成30年5月12日までである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 公開草案の主な内容 1 収益認識に関する注記など 財務諸表等規則8条の32(収益認識に関する注記)として次の規定を設ける。 連結財務諸表規則、中間連結財務諸表規則などの改正は、財務諸表等規則の改正に伴う準用規定の改正である。 上記のほか、たな卸資産及び工事損失引当金の表示の改正(財規54条の4)、売上高の表示方法の改正(財規72条)、割賦販売売上高の表示方法の削除(財規73条)がある。 2 財規ガイドラインの改正 改正後の主な財規ガイドラインは次のとおりである。 《8の2-7》 規則第8条の2第7号に規定する収益及び費用の計上基準には、ファイナンス・リース取引に係る収益及び費用の計上基準等、財務諸表について適正な判断を行うために必要があると認められる事項を記載するものとする。また、財務諸表提出会社が「収益認識に関する会計基準」を適用している場合には、その旨を記載するものとする。 (※) 現行の財規ガイドライン8の2-7では、工事契約に関する工事進捗度を見積るために用いた方法の記載が求められている。 《8の32》 規則第8条の32に規定する注記とは、「収益認識に関する会計基準」が適用される場合の注記とし、同条に規定する顧客、契約及び履行義務とは、「収益認識に関する会計基準」にいう顧客、契約及び履行義務をいうものとする。 《72-1》 規則第72条第1項に規定する売上高については、各企業の実態に応じ、適切な名称を付すことに留意する。 (※) 現行では、作業くず、手持原材料又は貯蔵品の売却に関する取扱いが規定されている。 《72-1-2》 削除する。 (※) 現行では、売上値引、売上割引、売上割戻について規定している。  なお、売上割引については、改正後の財規ガイドライン93において、「売上割引(代金支払期日前の支払に対する売掛金の一部免除等をいう。)」と規定する予定である。 《79》 規則第79条の仕入値引とは、仕入品の量目不足、品質不良、破損等の理由により代価から控除される額をいい、代金支払期日前の支払に対する買掛金の一部免除等の仕入割引と区別するものとする。なお、一定期間に多額又は多量の取引をした得意先に対する仕入代金の返戻額等の仕入割戻は、仕入値引に準じて取扱うものとする。 連結財規ガイドライン、中間連結財規ガイドラインなどの改正は、財規ガイドラインの改正に伴う準用規定の改正である。   Ⅲ 適用時期等 公布の日から施行する予定である。 (了)

#No. 264(掲載号)
#阿部 光成
2018/04/16

《速報解説》 改正省令により「相続税の申告書の添付書類」の見直し内容が明らかに~戸籍謄本はコピーも可に、「法定相続情報一覧図」は図形式かつ実子・養子の区別が記載されたものに限る~

 《速報解説》 改正省令により「相続税の申告書の添付書類」の見直し内容が明らかに ~戸籍謄本はコピーも可に、「法定相続情報一覧図」は図形式かつ 実子・養子の区別が記載されたものに限る~   Profession Journal 編集部   3月31日に公布された相続税法施行規則の一部を改正する省令により、大綱で示されていた相続税の申告書の添付書類に関する改正内容が明らかとなった。 平成30年度税制改正大綱では相続税の申告書の添付書類の見直しについて、次のように示されていた。 上記大綱の記述からは、新たに戸籍謄本の複写による提出が認められることが確認できていたが、申告書の添付書類について規定した相続税法施行規則第16条第3項は次のように改正されている。 改正省令のポイント及び留意点は次の通り。 ① 戸籍謄本はコピー機による複写も可に まず、改正後の第一号のイは改正前の第一号と同じ記述内容だが、第一号の「(当該書類を複写機により複写したものを含む。)」との規定により、戸籍謄本をコピー機で複写したもの(改正前は原本による)が添付書類として認められることとなる。なお、改正前と同様、原本による提出も可。 ② 法定相続情報一覧図は図形式のみ、列挙形式は認められない 次に、第一号のロにより、昨年5月に制度が始まった法定相続情報証明制度における「法定相続情報一覧図の写し」(コピー機で複写したものを含む)が戸籍謄本に代わる添付書類として認められることになった。 法定相続情報証明制度は、土地の未登記問題を解決するため利用者の負担を減らすべく創設された制度で、一定の手続により作成・入手可能な法務局の認証文が付された法定相続情報一覧図の写しを戸籍謄本に代わり各相続手続に利用できるようにしたもの。ただし今回の改正前は、相続税の申告書の添付書類としては認められていなかった。 本制度については本誌掲載の下記解説記事を参照されたい。 ここで確認したいのが、上記第一号ロの「被相続人と相続人との関係を系統的に図示したもの」という規定だ。 4月11日に国税庁ホームページで公表された本改正に関するパンフレットでは、『図形式の「法定相続情報一覧図の写し」』が添付書類として認められるとしたうえで、「列挙形式では相続人の法定相続分が確認できない場合もあるため、相続税の申告書の添付書類として利用するときには、図形式のものであることが必要となります」と説明されている。 法定相続情報一覧図の列挙形式とは次のように、被相続人及び相続人を単に列挙したもので、一般的な図形式の一覧図と異なり被相続人と相続人との関係を系統的に図示していないことから、添付書類として認められないことになる。 〈列挙形式の「法定相続情報一覧図」の記載例〉 (※) 法務局ホームページにてエクセルデータによるダウンロードが可能。 列挙形式の方が作成の手間がかからず法務局への申出・交付を受けることは可能であり他の相続手続にも使用できるものの、相続税の申告手続を考えた場合は図形式による作成が望ましいところだ。 ③ 「子」とのみの記載は添付書類として不可 次に注意したいのが、同じく第一号ロの「当該被相続人の子が実子又は養子のいずれであるかの別が記載されたもの」という規定だ。 制度開始後の法定相続情報一覧図は上記【関連記事】①にあるとおり、相続人は「(子)」とのみの記載であって実子・養子の区別がされておらず、この規定に該当しないこととなる。 この点、本年2月から「法定相続情報証明制度の利用範囲の拡大に係る法定相続情報一覧図の記載内容等の見直しについて」と題するパブコメが行われており、「長男」、「長女」、「養子」など、原則として戸籍に記載される続柄を記載することとする見直しが行われ、改正省令の施行に合わせ平成30年4月1日から取扱いが変更されている。 ここで注意したいのが、今回の制度の見直し後も、見直し前と同様に「子」として記載する方法も選択することができるという点だ。 プライバシーの観点から選択が認められているものと考えられるが、この場合は相続税の申告書の添付書類としては認められないため、上記②とともに、作成に当たってはクライアント(もしくは作成を委託する司法書士や弁護士等)へ十分に確認する必要がある。 〈図形式の「法定相続情報一覧図の写し」のイメージ〉 (※) 国税庁ホームページより なお、法定相続情報証明制度の利用拡大により、他に次の点も見直しが行われているのでおさえておきたい。 (了)

#No. 264(掲載号)
#Profession Journal 編集部
2018/04/12

プロフェッションジャーナル No.264が公開されました!~今週のお薦め記事~

2018年4月12日(木)AM10:30、 プロフェッションジャーナル  No.264を公開! プロフェッションジャーナルのリーフレットは 全国のTAC校舎で配布しています! -「イケプロが実践するPJの活用術」「第一線で活躍するプロフェッションからPJに寄せられた声」を掲載!-   - ご 案 内 - プロフェッションジャーナルの解説記事は毎週木曜日(AM10:30)に公開し、《速報解説》は随時公開します。

#Profession Journal 編集部
2018/04/12

酒井克彦の〈深読み◆租税法〉 【第63回】「条文の『見出し』から租税法条文を読み解く(その3)」

酒井克彦の 〈深読み◆租税法〉 【第63回】 「条文の『見出し』から租税法条文を読み解く(その3)」   中央大学商学部教授・法学博士 酒井 克彦     Ⅲ 租税条約の解釈と見出し 法律の解釈に当たって、見出しが1つの参考情報になり得ることは上記のとおりである。 裁判所の判断や、訴訟における当事者の主張の中でもそうした点が散見される。 次に、租税条約の解釈に見出しが与える影響について、東京地裁平成22年12月3日判決(訟月57巻6号1972頁)を基に確認しておこう。 本件は、原告が、米国法人であるB社に対して平成16年7月23日に支払った同年1月ないし5月分の特許等使用料について、支払の際に所得税の源泉徴収義務があるとして、処分行政庁から源泉所得税に係る納税告知処分等を受けたことに対し、本件特許等使用料については「所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国政府とアメリカ合衆国政府との間の条約」(平成16年条約第2号。同年3月20日発効。以下「新日米租税条約」という。)12条1項が適用され、原告は源泉徴収義務を負わないにもかかわらず本件各処分がされたのは違法であるとして、その取消しを求める事案である。 ここで、前提として、簡潔に当時の日米租税条約の要約を確認しておきたい。 本件の争点は、新日米租税条約30条2項(以下「本件規定」という。)にいう「7月1日以後に租税を課される額」の意義である。 かかる意義について、課税庁側は、外国法人の課税要件が充足される時点、すなわち、所得税法178条《外国法人に係る所得税の課税標準》の「支払を受けるべき」時点が7月1日以後である金額をいうと主張したのに対し、原告は、「現実の支払時」が7月1日以後である金額をいうと反論した。 これら両者の主張について、東京地裁は次のように述べ、原告の主張を排斥し、本件各処分を適法なものと判断した。 つまり、東京地裁は、本件規定の「租税を課される」とは、源泉徴収義務を負担することではなく、所得税の納税義務を負担させられることを意味するものというべきとし、「7月1日以後に租税を課される額」の意義について次のように示す。 要するに、東京地裁は、実際の特許権等使用料の支払時を基準にして、「7月1日以後に租税を課される額」を判断するのは妥当でないとして、納税者の主張を排斥したのである。 ところで、このような原告の主張の根拠は、所得税法212条《源泉徴収義務》が、非居住者又は外国法人に対し国内源泉所得の支払をする者に対し、その「支払の際」に、源泉徴収義務を課しているところにある。 これに対して、課税庁側の主張の根拠は、所得税法178条が、外国法人に対して課する所得税の課税標準について、その外国法人が「支払を受けるべき」国内源泉所得の金額としているところにある。 この両者の主張の対立について、東京地裁は次のように述べている。 このように、被告が主張の根拠とする所得税法178条の「外国法人に係る所得税の課税標準」という見出しや、原告主張の根拠である同法212条の置かれた章が「非居住者及び外国法人の所得に係る源泉徴収」であることなども勘案し判断が下されていることに着目しておきたい。   Ⅳ 通達の解釈と通達見出し 続いて、法律の見出しではないが、通達の見出しも確認しておこう。 東京地裁平成29年1月19日判決(裁判所ウェブサイト)は、通達の見出しに関心を寄せている。 債権放棄の寄附金該当性が争点とされた同事件において、東京地裁は、法人税基本通達9-4-1《子会社等を整理する場合の損失負担等》について、次のように説示している。 本件の判断結果の妥当性についてはひとまず措くとして、本件東京地裁が、法人税基本通達9-4-1及び9-4-2を法律のごとく扱っているように見受けられる点については議論のあるところであろう(例えば、東京地裁は、「本件債権放棄額については、基本通達9-4-1の適用を受けるものではなく、同通達9-4-1所定の基準により又はこれに準じて法人税法37条1項所定の寄附金の額に該当しないものとして損金算入を認めることはできないというべきである。〔下線筆者〕」などとしているが、本来、法律に準ずるのが通達であることに鑑みれば、どこかその位置付けが逆転しているように見えなくもない。)。 東京地裁は、法人税基本通達9-4-1がその見出しで「整理」としており、同9-4-2の見出しが「再建」としていることに着目し、既に解散し整理された本件子会社については、法人税基本通達9-4-2の対象たり得ないとする。 このような通達の見出しに着目した判断は果たして妥当といえるであろうか。 最後に、それに対する答えとして法人税基本通達前文「法人税基本通達の制定について」を引用しておきたい。   結びに代えて 条文見出しは、単なる「インデックス」であろうか。 条文見出しの改正も国会審議の対象とされている点を踏まえれば、条文見出しを軽視することは到底できないように思われる。 また、実質所得者課税の原則の改正経緯に照らして検討したように、法律が採用している考え方を端的に表しているものこそ条文見出しであるともいい得るのであって、条文見出しが租税法条文の解釈に与える影響は無視できないものであろう。 それを裏付けるように、多くの裁判例において、判断の1つの材料として条文見出しが用いられていることも本稿で確認したとおりであり、条文見出しを単なる便宜にすぎないインデックスと位置付けることは誤りであるといえよう。 ところで、金子宏教授がその著書の中で、「著者は、本書の古い版では、ストック・オプションの行使益は雑所得にあたる旨を述べたことがあるが、租特第2章第3節のタイトルにかんがみ、現在は給与所得にあたると考えている。」と説明される箇所がある(金子『租税法〔第22版〕』237頁(弘文堂2017))。 ここにいう租税特別措置法第2章第3節の見出しは「給与所得及び退職所得」であるが、金子教授は、こうした見出しなどから、「法の考え方」を探られているのかもしれない。 もっとも、条文見出しを法解釈に利用するに当たって気を付けなければならない点として、その見出しが「正式な見出し」であるか否かの確認が必要なことを最後に指摘しておこう。 六法全書では、利用者の立場や便宜を考えて、正式には見出しの付いていない法令にも出版社(編集者)の方で見出しを付けている例がある。一番分かりやすい例が憲法である(憲法の条文に見出しは無い。)。 条文の解釈においては、このような見出しと、本来法令に付されている見出しとを混同しないようにしなければならない(林修三『法令用語の常識〔第3版〕』157頁(日本評論社2007))。 以下は、憲法第7章「財政」に関する各六法全書の出版社別の見出しの例である(平野敏彦「憲法の条文見出し」広島法科大学院論集10号92頁)。 なお、憲法30条はすべての六法全書において「納税の義務」とされている(平野・前掲稿82頁)。 さて、編集者が条文見出しをすべての収録法令に付け、そのことを当該六法の特色として主張した最初は、有斐閣『六法全書』昭和23年版といわれている(平野・前掲稿71頁)。この六法は戦後初の六法であるが、編集責任者である我妻栄博士らの「はしがき」によると、ここでは検索の便宜が意識されていたという(平野・前掲稿71頁)。 最後に余談ではあるが、有斐閣が現在発行する六法の凡例によると、正式な条文見出しは「(〇〇〇)」とされ、編集者が便宜上付けたものは「【〇〇〇】」で表記されている旨が説明されている。 法令を調べるときには、「正式な条文見出し」と「便宜上の条文見出し」を混同しないように気を付けなければならないが、正式な条文見出は、法令の解釈に当たって重要な参考情報と位置付けるべきであろう。 (了)

#No. 264(掲載号)
#酒井 克彦
2018/04/12

平成30年度税制改正における『組織再編税制・M&A税制』改正事項の確認

平成30年度税制改正における 『組織再編税制・M&A税制』改正事項の確認   公認会計士 佐藤 信祐   1 概要 昨年(平成29年)12月14日に公表された与党税制改正大綱で示された組織再編税制及びM&A税制の改正概要は以下の通りである。 税制改正大綱のみから読み取れる内容については、既に本誌掲載の下記拙稿において解説を行った。本稿では、改正後の法律、政令から読み取れる内容を確認したうえで、実務上の留意事項について解説を行う。なお、上記のうち(1)(3)については、税制改正大綱に記載されている以上の情報はなかったため、本稿では、(2)について解説を行うこととする。 また、平成29年度税制改正における組織再編税制の改正事項については、下記拙稿を参照されたい。   2 税制適格要件の見直し 与党税制改正大綱75頁では、組織再編税制の見直しとして、以下のものが列挙されている。 このうち、①については、平成29年度税制改正により、単独新設分社型分割又は単独新設現物出資後に、分割承継法人株式又は被現物出資法人株式の適格株式分配を行うことが見込まれている場合には、完全支配関係継続要件を当該適格株式分配の直前までとする改正が行われていたが、平成30年度税制改正では、完全支配関係がある法人間で行われる組織再編成の後に適格株式分配を行うことが見込まれている場合についても、特例が定められた。 例えば、同一の者による完全支配関係がある法人間の合併に対しては、合併後に合併法人株式を対象とする適格現物分配が行われた場合の取扱いが定められている(法令4の3②二)。しかしながら、スピンオフ税制の適用はかなり限定的であり、実務上、利用される事案はほとんどないと思われる。 次に、②については、50%超100%未満グループ内の組織再編成、共同事業を営むための組織再編成を行った場合において、合併法人等に移転した従業者、事業を当該合併法人等の100%グループ内の法人に移転したとしても、従業者引継要件、事業継続要件を満たすこととされた。さらに、改正法人税法、同法施行令を見ていると、二段階組織再編成により合併法人に移転した従業者、事業を当該合併法人の100%グループ内の法人に移転した場合についても同様に取り扱われている。 そして、③については、現行法上、無対価組織再編成は、原則として非適格組織再編成として位置付けながらも、対価の交付を省略した場合として、法人税法施行令に列挙されたもののみを適格組織再編成として認めている。しかしながら、法人税法施行令に列挙されたものは、対価の交付を省略した場合のすべてを想定したものとは言い難く、株式交付型組織再編成を選択しないと非適格組織再編成に該当してしまうものも少なくない。 そのため、合併を例に挙げると、被合併法人の株主と合併法人の株主が等しい場合には、適格合併として認める改正が行われている(法令4の3②二)。なお、法人税法施行令4条の3第2項2号ハ及びニに規定されていた「合併法人及び当該合併法人の発行済株式等の全部を保有する者が被合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係」「被合併法人及び当該被合併法人の発行済株式等の全部を保有する者が合併法人の発行済株式等の全部を保有する関係」はそれぞれ文言が削除されたため、適格合併の対象から除外されているようにも思える。しかしながら、同号ロにおける被合併法人の株主と合併法人の株主が等しいかどうかの判定上、被合併法人及び合併法人を除外して判定することとされており、結果的に、上記の2つを包括した内容となっているため、今まで認められていた無対価組織再編成が認められなくなったという不都合はない。 なお、実務上、適用される場面は稀であると思われるが、被合併法人の株主と合併法人の株主が等しい場合において、グループ内の適格合併の要件を満たさないときであっても、事業関連性要件やその他の要件を満たせば、共同事業を営むための適格合併の要件を満たすことができるように改正がなされている(法令4の3④柱書)。 そのほか、対価の交付を省略したと認められる非適格の無対価組織再編成についても、その取扱いが明確化された。以下では、合併を例に挙げたうえで改正事項を列挙することとする。 このように、無対価の非適格組織再編成の計算では、第三者による資産評定に委ねられる部分が多く、やや奇異な印象を受ける。資産評定の結果、株式を交付する非適格組織再編成と異なる数値になり得るからである。この点については、夏頃に公表される『改正税法のすべて』を確認する必要があると思われる。 そのほか、④に記載されている通り、上記以外にも、全部取得条項付種類株式又は株式併合によるスクイーズアウトについて、1株未満の端数の代り金として交付した金銭について、金銭等不交付要件に抵触しないことが明確化されている(法法2十二の十七)。   3 むすび 今回の組織再編税制の改正は、単なる平成29年度税制改正の追加的な修正に留まらず、今までの実務で問題とされていたことを、なるべく解決しようとする財務省主税局の意図が感じられる。 しかし、依然として、現行組織再編税制は問題が多く、修正すべき点も少なくない。そのため、今後も、組織再編税制の見直しが行われることが予想される。例えば、省略型以外の無対価組織再編成についても適格組織再編成として位置付ける余地はあり得るし、二段階組織再編成についても、さらなる整備が必要であると思われる。 本稿が、組織再編税制に携わる方々のお役に立つことができれば幸いである。 (了)

#No. 264(掲載号)
#佐藤 信祐
2018/04/12

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第33回】

組織再編税制の歴史的変遷と制度趣旨 【第33回】   公認会計士 佐藤 信祐   《第5章》 平成18年度税制改正 1 概要 平成18年度税制改正では、①会社法の制定に伴う整備、②株式交換等に係る税制、③新株予約権を対価とする費用等、④欠損等法人、⑤資産調整勘定が、組織再編・資本等取引に関する税制の主要な改正事項として挙げられる。さらに、会社法改正における合併等対価の柔軟化の施行が1年遅れたため、平成19年度税制改正において、合併等対価の柔軟化に対応した改正がなされている。 後述するように、平成18年度税制改正は、組織再編税制を大きく変えた改正であったということが言える。その後、組織再編税制を大きく変えた改正は、グループ法人税制が導入された平成22年度税制改正である。そのため、本連載では以後、①平成18年度税制改正から平成21年度税制改正、②平成18年度から平成21年度までに公表された財務省及び国税庁の解説、③平成18年度から平成21年度までに公表された実務家の解説という順番で解説を行うこととする。   2 会社法の制定に伴う整備 (1) 資本の部の整備 ① 資本の部の構成 平成18年度から施行された会社法に対応し、平成18年度税制改正では、組織再編・資本等取引について大幅な改正がなされている。 まず、資本の部の取扱いについて、資本金等の額は法人が株主等から出資を受けた金額と、利益積立金額は法人の所得の金額で留保している金額と法律でそれぞれ概念が明確化されるとともに、資本金等の額及び利益積立金額の細目について、政令に委任されることになった(※1)。そして、「資本等の金額」という表現が「資本金等の額」に改められている。 (※1) 『平成18年版改正税法のすべて』241頁。 これに対し、企業会計では、「資本の部」に代え、「純資産の部」と表現するとともに、新株予約権、繰延ヘッジ損益等が含まれるようになったが、法人税法では、新株予約権も繰延ヘッジ損益も、資産又は負債の帳簿価額に含まれることになった(※2)。 (※2) 前掲(※1)245-246頁。 ② 自己株式 平成18年度税制改正では、自己株式の取得等をした段階で、資産には計上せずに、資本金等の額及び利益積立金額の減算要因として処理することになった。そのため、自己株式の交付を行った場合には、新株を発行した場合と同様に、資本金等の額の増加として処理されることになる。 なお、自己株式の交付をした場合には、法人税法施行令8条1項1号の適用を受けることになるが、例外事由がいくつか設けられている。これは、(ⅰ)増加資本金等の額の規定が別に設けられていることを理由とするものと、(ⅱ)増加資本金等の額を零とすることを理由とするものに分けられる(※3)。 (※3) 前掲(※1)247頁。 前者には、(イ)新株予約権の行使によりその行使をした者に自己の株式を交付した場合、(ロ)取得条項付新株予約権又は取得条項付新株予約権が付された新株予約権付社債の取得の対価として自己の株式を交付した場合(譲渡損益が計上されない場合に限る)、(ハ)合併、分割、適格現物出資、株式交換又は株式移転により被合併法人の株主等、分割法人(又は分割法人の株主等)、現物出資法人、株式交換完全子法人の株主又は株式移転完全子法人の株主に自己の株式を交付した場合、(ニ)適格現物出資に該当しない現物出資(法人税法62条の8の適用を受けるものに限る)により現物出資法人に自己の株式を交付した場合が挙げられる。 そして、後者には、(ホ)適格分社型分割又は適格現物出資により分割承継法人又は被現物出資法人に自己が有していた自己の株式を移転した場合、(ヘ)株式交換又は株式移転により自己が有していた自己の株式を株式交換完全親法人又は株式移転完全親法人に取得された場合(金銭等が交付されないものに限る)、(ト)組織変更により株式を発行した場合、(チ)取得請求権付株式、取得条項付株式又は全部取得条項付種類株式の請求権の行使、取得事由の発生又は取得決議による取得の対価として自己の株式を交付した場合(譲渡損益が計上されない場合に限る)、(リ)株主等に対して新たに金銭の払込み又は金銭以外の資産の給付をさせないで自己の株式を交付した場合(ex.株式分割又は株式無償割当て)が挙げられる。 これに対し、前述のように、自己株式の取得等をした場合には、資本金等の額及び利益積立金額の減算要因として処理することになった。この改正により、自己株式の取得のために要した付随費用は、損金の額に算入されることになった(※4)。しかしながら、自己株式の存在自体が否定されるものではないため、「発行済株式」という文言は、自己株式を除く旨の規定がない場合には、自己株式を含めた概念となる(※5)。 (※4) 前掲(※1)248頁。 (※5) 前掲(※1)248-249頁。 なお、減少する資本金等の額の計算方法であるが、以下のように行うことになる。 (a) みなし配当が生じる場合 株主サイドでは、自己株式の取得により金銭及び金銭以外の資産の交付を受けた場合において、その金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額が発行法人の資本金等の額のうちその交付の基因となった自己株式に対応する部分の金額を超えるときは、その超える部分の金額については、みなし配当として取り扱われることになった。 すなわち、資本金等の額が50,000千円の内国法人が10%の自己株式の取得をした場合には、当該自己株式に対応する資本金等の額は5,000千円(=50,000千円×10%)であるため、その金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額が200,000千円であるときは、195,000千円がみなし配当として取り扱われる。その結果、発行法人サイドでも、5,000千円が減少資本金等の額として取り扱われ、195,000千円が減少利益積立金額として取り扱われることになる(平成18年法令8①二十、9①七)。 (b) みなし配当が生じない場合 例えば、金融商品取引所が開設する市場内で自己株式を取得した場合には、みなし配当が生じないこととされている(法令23③一)。このような場合には、取得の対価として交付した金銭の額及び金銭以外の資産の価額の合計額がそのまま資本金等の額の減算要因として取り扱われることになる(平成18年法令8①二十一柱書)。 (c) その他 そのほか、法人税法施行令8条1項21号では、(ⅰ)適格合併、適格分割又は適格現物出資による被合併法人、分割法人又は現物出資法人からの移転、(ⅱ)剰余金の配当若しくは利益の配当若しくは剰余金の分配、解散による残余財産の分配又は合併による合併法人からの交付、(ⅲ)合併法人が合併の直前に有していた被合併法人株式又は合併により被合併法人から移転を受けた資産に含まれていた被合併法人又は他の被合併法人の株式、(ⅳ)分割承継法人が分割型分割の直前に有していた分割法人の株式又は分割型分割により分割法人から移転を受けた資産に含まれていた分割法人若しくは他の分割法人の株式、(ⅴ)組織変更により当該組織変更をした法人の株式に代えて自己の株式の交付を受けた場合についてそれぞれ規定された。 このうち、(ⅱ)については、対価性のない行為であることから、みなし配当の額が生じないため、平成22年度税制改正により導入された適格現物分配に該当する場合を除き、その取得の時の価額が資本金等の額の減算要因として処理されることになる(※6)。 (※6) 前掲(※1)249-250頁。 *   *   * 次回では、引き続き資本の部の改正について解説を行う予定である。 (了)

#No. 264(掲載号)
#佐藤 信祐
2018/04/12

〔平成30年4月1日から適用〕改正外国子会社合算税制の要点解説 【第5回】「経済活動基準①」-事業基準・実体基準・管理支配基準-

〔平成30年4月1日から適用〕 改正外国子会社合算税制の要点解説 【第5回】 「経済活動基準①」 -事業基準・実体基準・管理支配基準-   税理士 長谷川 太郎   1 押さえておきたいポイント   2 概要 経済活動基準は、ペーパー・カンパニー等の特定外国関係会社以外の外国関係会社で、租税負担割合が20%未満の場合に、会社単位の合算課税が適用されるか、部分合算課税が適用されるかどうかを判断する際の基準となっている。 条文上の構成は、経済活動基準 ⇒ 租税負担割合という順に規定されているが、租税負担割合 ⇒ 経済活動基準の順で判断を行った方が、事務負担が軽減されるケースが多いので、おそらく実務上はそのような順序で対応をすることになると考えられる。 また、条文上、経済活動基準の規定は、対象外国関係会社の定義の中で規定されており、経済活動基準のいずれかに該当しない外国関係会社(特定外国関係会社に該当するものを除く)が、対象外国関係会社と定義されている(措法66の6②三)。 ※画像をクリックすると、別ページで拡大表示されます。 経済活動基準は、改正前の適用除外基準と基本的に同様の構成(①事業基準、②実体基準、③管理支配基準、④非関連者基準または所在地国基準)となっている。各基準の改正の概要は以下の通りである。 なお、経済活動基準は改正前と同様に、外国関係会社の事業年度末ではなく、事業年度を通じた状況で総合的に判断を行うことになる。 【経済活動基準の基準ごとの改正の概要】 上記の各基準の改正の他、決算書については改正前と同様に確定申告書への添付が必要となるが、別表添付要件は廃止され、ペーパー・カンパニーと同様に推定規定が設けられている(次回参照)。   3 事業基準 事業基準は、外国関係会社で事業を行うことについて積極的な経済合理性を見出すことが困難とされる業種を限定列挙し、事業基準を充足しない事業として規定しているものである。 今回の改正により、航空機の貸付けを主たる事業とする外国関係会社のうち、以下の要件を満たすものは事業基準を充足する(措法66の6②三イ、措令39の14の3⑪)とされている。 なお、上記①の「通常必要業務従事基準」における「通常必要と認められる業務の全てに従事している」ことについては、今回の改正により新設された通達(措通66の6-16)において、業務委託(補助業務以外の業務の委託にあっては、外国関係会社が仕様書等を作成し、又は指揮命令している場合に限る)をしている場合も含まれることが明らかにされている。 また、本年1月に国税庁より公表されている「平成29年度改正に係る外国子会社合算税制に関するQ&A」のQ9「事業基準から除外される航空機リース会社における「通常必要と認められる業務」の範囲」及びQ10「通常必要と認められる業務の全てに従事しているかどうかの判定」も併せて参照されたい。   4 実体基準及び管理支配基準 「実体基準」は、独立した企業としての活動の実体を有しているかどうかを判断するための基準であり、その本店所在地国においてその主たる事業を行うに必要と認められる事務所等の固定施設を有していることが求められている。また、「管理支配基準」は、会社の機能面から独立した企業としての実体があるかを判定する基準であり、その本店所在地国において、その事業の管理、支配及び運営を自ら行っていることが求められている。 【第3回】で解説をしている特定外国関係会社の1つであるペーパー・カンパニーについては、「実体基準」及び「管理支配基準」のいずれも充足しない場合に該当するとされている(措法66の6②イ)。ペーパー・カンパニーの判定における「実体基準」及び「管理支配基準」は経済活動基準における「実体基準」及び「管理支配基準」と基本的に同じ内容となっているが、ペーパー・カンパニーの判定における「実体基準」については、固定施設の所在地が本店所在地国に限定されていないことに留意されたい。 ① 実体基準 実体基準の改正については、保険業の特例規定(「③保険業に係る特例」参照)があるが、その他に通達に「主たる事業を行うに必要と認められる事務所等の意義(措通66の6-6)」が新設されている。その中で、「実体基準の判定におけるその主たる事業を行うに必要と認められる事務所等を有していること」とは、「外国関係会社がその主たる事業に係る活動を行うために必要となる固定施設を有していることをいい、実体基準の適用に当たっては、次のことに留意する」と規定されている。 また、「平成29年度改正に係る外国子会社合算税制に関するQ&A」において、実体基準に関連して以下のQ&Aが公表されているため、併せて参照されたい。 上記通達及びQ&Aを踏まえると、事務所等は「主たる事業」を行うに必要な固定施設を有しているかどうかで判断され、必要となる固定施設は各外国関係会社の主たる事業の内容によって個別に判断をされることになる。また、固定施設は関係会社の一室を賃借していても、それが「主たる事業」の内容等に照らして十分な固定施設であれば認められる一方で、「主たる事業」が本来は固定施設を要しないような事業であれば、形式的に事務所等を賃借していたり、従たる事業の目的で事務所を賃借していたとしても実体基準は充足しないこととなる。 ② 管理支配基準 実体基準と同様に管理支配基準の改正については、保険業の特例規定(「③保険業に係る特例」)があるが、その他に、通達に「自ら事業の管理、支配等を行っていることの意義(措通66の6-7)」が新設されている。 その中で、管理支配基準の判定における「その事業の管理、支配及び運営を自ら行っていること」とは、「外国関係会社が事業計画の策定等を行い、その事業計画等に従い裁量をもって事業を執行することであり、これらの行為に係る結果及び責任がその外国関係会社に帰属していることをいうが、次の事実があるとしてもそのことだけでこの要件(管理支配基準)を満たさないことにはならない」としている。 また、「平成29年度改正に係る外国子会社合算税制に関するQ&A」において、管理支配基準に関連して以下のQ&Aが公表されているため、併せて参照されたい。 上記通達及びQ&Aを踏まえると、以下のように整理される。   ③ 保険業に係る特例 保険業を営む一定の外国関係会社(特定保険外国子会社等または特定保険委託者)の実体基準及び管理支配基準の判定について、その保険委託者の保険業に関する業務を受託する者で一定の要件を満たすもの(特定保険協議者または特定保険受託者)が実体基準及び管理支配基準を満たしている場合には、当該保険業を営む一定の外国関係会社は、実体基準及び管理支配基準を満たすこととされた。 改正前は、英国ロイズ市場において保険引受子会社と管理運営会社を別会社とした上で、これらを一体として保険業を営む場合には、一体として判断を行うこととされていたが(旧措令39の17⑤⑥)、今回の改正により適用範囲が拡大され、英国ロイズ市場以外でも同様の事業実体であれば、同様の判断をするとされている(措令39の14の3⑫⑬)。 (了)

#No. 264(掲載号)
#長谷川 太郎
2018/04/12
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