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〔まとめて確認〕会計情報の月次速報解説 【2023年12月】

〔まとめて確認〕 会計情報の月次速報解説 【2023年12月】   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2023年12月1日から12月31日までに公開した速報解説のポイントについて、改めて紹介する。 具体的な内容は、該当する速報解説をお読みいただきたい。   Ⅱ 新会計基準関係 企業会計基準委員会は次のものを公表し、意見募集を行っている。 これは、改正後の金融商品取引法上、半期報告書において中間連結財務諸表又は中間個別財務諸表が開示されることから、会計基準等を開発するものである(意見募集期間は2024年1月19日まで)。 〇 企業会計基準公開草案第80号「中間財務諸表に関する会計基準(案)」等の公表   Ⅲ 企業内容等開示関係 次のものが公布・公表されている。 ① 「企業内容等の開示に関する内閣府令」等の改正(案)の公表について(内容:有価証券届出書における個人情報の記載の見直しを行うもの。意見募集期間は2024年1月9日まで) ② 「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則等の一部を改正する内閣府令(案)」等の公表について(内容:「資金決済法における特定の電子決済手段の会計処理及び開示に関する当面の取扱い」(実務対応報告第45号)及び「『連結キャッシュ・フロー計算書等の作成基準』の一部改正」(企業会計基準第32号)を受けたもの。意見募集期間は2024年1月9日まで) ③ 「企業内容等の開示に関する内閣府令及び特定有価証券の内容等の開示に関する内閣府令の一部を改正する内閣府令」(内閣府令第81号)(内容:有価証券報告書、有価証券届出書及び臨時報告書における「重要な契約」の開示について改正するもの) ④ 「企業内容等の開示に関する留意事項について(企業内容等開示ガイドライン)」の改正(内容:株式報酬として交付される株式が譲渡制限付である場合に、有価証券届出書の提出を不要とする特例に関して、取締役等の死亡などの事由の取扱いについて明確化を図るもの)   Ⅳ 四半期決算関係 次のものが公表されている。 ① 令和5年金融商品取引法等改正に係る政令・内閣府令案等の公表について(内容:「金融商品取引法等の一部を改正する法律」(法律第79号)により、四半期報告書制度が廃止となることから、関係政令・内閣府令等を改正するもの。意見募集期間は2024年1月9日まで。金融庁) ② 企業会計基準公開草案第80号「中間財務諸表に関する会計基準(案)」等の公表(内容:改正後の金融商品取引法上、半期報告書において中間連結財務諸表又は中間個別財務諸表が開示されることから、会計基準等を開発するもの。意見募集期間は2024年1月19日まで。企業会計基準委員会) ③ 金融商品取引法改正に伴う四半期開示の見直しに関する上場制度の見直し等について(内容:改正後の金融商品取引法上、四半期報告書(第1・第3四半期)が四半期決算短信に「一本化」されることから、四半期決算短信の取扱いについて見直すもの。意見募集期間は2024年1月17日まで。東京証券取引所) ④ 「四半期レビュー基準の期中レビュー基準への改訂及び監査に関する品質管理基準の改訂について(公開草案)」の公表について(内容:改正後の金融商品取引法に対応し、四半期開示の見直しに伴う監査人のレビューに係る必要な対応を行うもの。意見募集期間は2024年1月24日まで。企業会計審議会監査部会) ⑤ 「四半期レビュー基準報告書第1号「四半期レビュー」の改正及び期中レビュー基準報告書「独立監査人が実施する期中財務諸表に対するレビュー」」(公開草案)の公表について(内容:「四半期レビュー基準の期中レビュー基準への改訂及び監査に関する品質管理基準の改訂について(公開草案)」(企業会計審議会監査部会)を受けたもの。意見募集期間は2024年1月22日まで。日本公認会計士協会)   Ⅴ 監査法人等の監査関係 監査法人及び公認会計士の実施する監査などに関連して、次のものが公表されている。 〇 監査基準報告書600「グループ監査における特別な考慮事項」に伴う監査基準報告書等の改正(公開草案)の公表について(内容:監査基準報告書600「グループ監査における特別な考慮事項」(2023年1月12日改正)に伴って、監査基準報告書580「経営者確認書」などを改正するもの。意見募集期間は2024年1月22日まで)   Ⅵ 監査役等の監査関係 監査役等の実施する監査などに関連して、次のものが公表されている。 ① 「有価証券報告書の作成プロセスに対する監査役等の関与について-実態調査に基づく現状把握と事例紹介-」(内容:有価証券報告書の作成プロセスに対する監査役等の関与に関して、監査役等としての対応を検討する上でのポイントについて述べたもの) ② 改定版「会計監査人の評価及び選定基準策定に関する監査役等の実務指針」(内容:「監査に関する品質管理基準」の改訂、監査上の主要な検討事項(KAM)の導入、倫理規則の改訂などへの対応。日本監査役協会 会計委員会) (了)

#No. 551(掲載号)
#阿部 光成
2024/01/11

〈Q&A〉税理士のための成年後見実務 【第2回】「支援者側からみた後見・保佐・補助の違い」

〈Q&A〉 税理士のための成年後見実務 【第2回】 「支援者側からみた後見・保佐・補助の違い」   司法書士法人F&Partners 司法書士 北詰 健太郎   【Q】 法定後見制度の類型として、後見、保佐、補助の3種類があることは知っていますが、成年後見人等の支援者の立場からはどのような違いがあるのでしょうか。 【A】 ご本人の意思能力の程度に応じて、法定後見制度は、後見、保佐、補助の類型に分けられます。 どの類型を利用するかは本人の状況や医師の診断等を参考にして判断していくことになります。成年後見人等として本人をサポートしていく立場からは、各類型で仕事の内容が異なる点があるため、引き受けるにあたってはイメージを掴んでおくことが必要です。 ● ● ● ● 解 説 ● ● ● ● 成年後見人、保佐人、補助人等はいずれも意思能力の関係でサポートを必要としている人を支援する立場にあり、報道記事などで制度が紹介される場合には一括りにして解説がされがちですが、役割がそれぞれ異なります。また補助の類型が適用される方が、後見の類型が適用される方と比較して、意思能力が残っているからといって、「補助人の仕事が成年後見人よりも簡単」というわけでもありません。筆者の個人的な印象ですが、保佐人や補助人の仕事の方が、成年後見人の仕事よりも実務経験が必要であると感じています。 実際に就任をしてから「イメージしていた仕事と違った」とならないためにも、それぞれの仕事内容をある程度理解しておく必要があります。   1 成年後見人の職務、権限 成年後見人の職務は、本人の財産管理と身上保護です。成年後見人には、本人が意思能力を欠いている関係上、広い代理権が認められています。財産管理の職務としては、本人の預貯金等を成年後見人の管理下に移し、収入の受領や、生活費や医療費などの必要な支出を行います。身上保護の職務としては、本人が必要とする介護サービスに関する契約や施設入所等のために必要な契約を成年後見人が行うことになります。多額の財産を預かることもあるためその意味では責任が重いと言えますが、本人の財産を成年後見人の手元において管理することができるため収支の把握がしやすく、不必要な契約があれば成年後見人において終了させるなど、本人のための活動が機動的にできるという面もあります。   2 保佐人の職務、権限 保佐人は、本人が以下のような一定の重要な契約等を行う場合に、同意権、取消権を行使して本人に不利益が生じないようにしていくことが基本的な職務です(民法13条1項)。 【同意が必要な行為(民法13条1項)】 本人が保佐人の同意を得ずにこれらの行為を行った場合、保佐人としては取消をしたり、追認をしたりすることができます。なお、保佐人の同意が必要となる行為は、家庭裁判所に申立てることにより追加することができます。 このほか、必要と認めるときは、一定の行為(預貯金の解約、不動産の売却など)について代理権の付与を家庭裁判所に求めることで、代理人として本人に代わって契約等を結ぶことができます。ただし、代理権の付与には本人の同意が必要となります。   3 補助人の職務、権限 補助人は、2の【同意が必要な行為(民法13条1項)】に定める事項のうちから、家庭裁判所に認められたものについて、同意権、取消権を行使して、本人のサポートを行っていくことが基本的な職務です。同意権の付与には補助人の同意が必要になります。また保佐人と同様に、補助人も一定の事項について代理権の付与を家庭裁判所に求めることができますが、これにも本人の同意が必要になります。 成年後見人と比較すると、保佐人、補助人には権限の範囲に制限があったり、本人の意向をより細かく確認する必要が生じたりするところがあります(成年後見人は本人の意向を無視してよいというわけではありません)。支援者としては、本人の意向を尊重したいという気持ちがありつつも、客観的にみて本人の行動や意向が適切とは思えず悩んでしまうことも多いようです。こうした職務の違いを踏まえつつ、本人との関係性を考慮して、成年後見人等として職務を引き受けるのかを検討していくとよいでしょう。 (了)

#No. 551(掲載号)
#北詰 健太郎
2024/01/11

〈小説〉『所得課税第三部門にて。』 【第76話】「質問応答記録書」

〈小説〉 『所得課税第三部門にて。』 【第76話】 「質問応答記録書」 公認会計士・税理士 八ッ尾 順一   浅田調査官は、1枚の紙を見ながら、ブツブツと呟いている。 「なかなか・・・書くのは難しいなあ・・・」 その紙には、「質問応答記録書」と表題が書かれている。 回答者の「住所」「氏名」そして「生年月日、年齢」が並び、その下に「本職は、令和5年12月5日、大阪府大阪市中央区○丁目○番地において、上記の回答者から、任意に次のとおり回答を得た」と記載されている。 そして、以下「質問応答の要旨」が問答形式で続いている。 「・・・何を悩んでいるの?」 いつの間にか、傍らに中尾統括官が立っている。 「・・・質問応答記録書の記載なんですが・・・」 浅田調査官は、頭をかきながら答える。 「・・・質問応答記録書か・・・」 中尾統括官が呟く。 「・・・これって、税務の雑誌などで法的な根拠がないといわれているのですが・・・」 浅田調査官は、中尾統括官の顔を見る。 「そうだ、刑事訴訟法198条に基づく『供述調書』と違って、質問応答記録書には法律的な根拠はない・・・」 中尾統括官は、あっさりと答える。 「・・・もっとも、質問応答記録書については、供述調書をモデルにして、国税庁がマニュアル(手引書)を作成している・・・君も持っているだろう」 中尾統括官は、浅田調査官の机の上に置かれている国税庁の職員向けのマニュアルを見る。 「この質問応答記録書を作成する目的は何なのですか?」 浅田調査官が尋ねる。 「・・・それは・・・税務署が納税者と争いになったときに備えて、事前に、証拠を確保する狙いで作成するんだろう・・・もし、争いが生じなければそれを使う必要はない・・・もっとも、税務署内で調査の決済を受けるときに、質問応答記録書があれば、上司を説得しやすいし、決裁もスムーズにいくだろう」 中尾統括官は、ニヤリと笑う。 「ところで、浅田君は、この納税者に対して、重加算税を課そうと考えているの?」 中尾統括官が問う。 「ええ、納税者も重加算税を課されることについて、納得しているようなのですが・・・とりあえず質問応答記録書を作成しておこうと思って・・・」 浅田調査官が答える。 「・・・重加算税の課税要件は、『隠蔽・仮装』ですから・・・それを文章としてどのように記載(表現)するのか・・・なかなか・・・分からなくて・・・」 浅田調査官は、困った顔をする。 「・・・具体的に、何に対して重加算税を課そうとしているの?」 中尾統括官が、再び、尋ねる。 「ええ、棚卸資産の金額なのです・・・当初、納税者は、棚卸資産を集計するときに、桁を間違えたと言っていたのです」 浅田調査官が調査の内容を説明する。 「それじゃ、重加算税は課せられないだろう」 中尾統括官は、憮然と言う。 「はい、しかし、机の中から、もう1枚の集計表を発見し・・・そこには、棚卸資産の合計金額が正しく記載されていたのです・・・したがって、正しい棚卸資産の集計金額を把握しておきながら、それを隠して、記載せずに、過少の金額を申告したのです・・・これについては、納税者も素直に認めています」 浅田調査官の説明を聞きながら、中尾統括官は大きく頷く。 「なるほど・・・そうであれば、当然、重加算税を課せるだろう・・・」 中尾統括官は、満足そうな顔をする。 「棚卸資産の計上漏れで、利益操作をするのは、よく使われる手だが、それに対して、重加算税を課すのはなかなか難しい」 昔、中尾統括官が調査官のときに、調査で、棚卸資産の計上漏れを発見したが、納税者は「たまたま、棚卸資産を集計するときに、老眼鏡をかけずに計算したので、桁を間違えてしまった」と答え、「故意に棚卸資産の金額を過少にしたものではない」と反論されたことがある。 中尾統括官は、納税者の言動から、故意に過少申告をしたと確信していたのであるが、結局、「隠蔽・仮装」の立証をすることができなかったという苦い経験を思い出す。 「・・・調査官が、調査の過程で、何とか重加算税をかけたいという気持ちになると、単純なミスについて、あたかも隠蔽・仮装があったかのように質問応答記録書を使って証拠(エビデンス)を捏造しようとするというケースもあると聞いている・・・しかし、浅田君のケースでは、納税者の作成した正しい棚卸資産の集計表を発見している・・・そして、納税者もそれを認めているのだから・・・質問応答記録書には、『隠蔽仮装によって、棚卸資産を過少に計上しました』・・・とハッキリ書いたらいいんじゃない」 中尾統括官は、ハッキリと言う。 「・・・そして、納税者がその文言に修正を求めたときには、そのとき記載内容を検討したらよいのでは・・・」 中尾統括官は、浅田調査官を見る。 「ええ、ところが、この納税者に、顧問税理士がいまして、この税理士は、何故か、質問応答記録書に対して、ひどく拒否反応を示しているのです」 浅田調査官が言う。 「そうか・・・その場合には、マニュアルでは、『その拒否する理由を確認せよ』となっているが、そういう税理士は、一般的に、法的根拠がないのだから、それに署名・押印をする義務はないし、まして、罰則もない、なんて答えるのだろうな」 中尾統括官は、腕を組んで、天井を見上げる。 「とりあえず、質問応答記録書に署名・押印するように説得を試みなければならないとマニュアルには書いてあるが・・・それでも納税者が署名・押印しなければ、その理由などを記載して、署名・押印の欄は空欄にしておくことになる」 中尾統括官は、マニュアルを見ながら、続けて言う。 「・・・マニュアルでは・・・『署名・押印を強要することはもとより、そのような疑義を生じさせる言動をしないよう留意する』・・・と記載されている・・・したがって、無理強いは駄目だということだ・・・特に、仕事熱心な調査官は、ついつい無理強いをしてしまうケースがあるから・・・」 中尾統括官は、苦笑する。 「もともと、質問応答記録書には、法律上の存在根拠がなく、したがって、署名・押印も任意だから、納税者から拒否されても仕方がないのですね」 そう言いながら、浅田調査官は、頷く。 (つづく)

#No. 551(掲載号)
#八ッ尾 順一
2024/01/11

《速報解説》 金融庁が令和6年能登半島地震に係る有報等の提出期限の取扱いを公表~実務上の支障が生じている場合、財務(支)局への相談を推奨~

《速報解説》 金融庁が令和6年能登半島地震に係る有報等の提出期限の取扱いを公表 ~実務上の支障が生じている場合、財務(支)局への相談を推奨~   公認会計士 阿部 光成     Ⅰ はじめに 2024(令和6)年1月5日、金融庁は、「令和6年能登半島地震に関連する有価証券報告書等の提出期限について」を公表した。 これは、令和6年能登半島地震の発生に伴う対応である。 その後、2024(令和6)年1月12日に、後述するように、追加の措置が公表された。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 金融庁の公表 次のことについて記載している。 ご質問などについては、遠慮なく所管の財務(支)局までご連絡していただきたいとのことである。   Ⅲ 金融庁の追加の措置の公表 2024(令和6)年1月11日、「特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律」に基づく「令和六年能登半島地震による災害についての特定非常災害及びこれに対し適用すべき措置の指定に関する政令」が公布された。 同政令により、特別措置として、今般の地震の影響により、有価証券報告書及び内部統制報告書、四半期報告書等の金融商品取引法に基づく開示書類を本来の提出期限までに提出することができなかった場合であっても、2024(令和6)年4月30日までに提出すれば、行政上及び刑事上の責任を問われないこととなるとのことである。 次のことについても記載している。 *  *  * なお、国税庁からは2024(令和6)年1月9日付で「令和6年能登半島地震に係る国税の申告・納付等の期限の延長について」が公表されている。 (了)

#阿部 光成
2024/01/09

《速報解説》 国税庁、令和6年能登半島地震を受け国税の申告・納付期限延長を決定~対象は石川県及び富山県に納税地のある個人・法人~

 《速報解説》 国税庁、令和6年能登半島地震を受け 国税の申告・納付期限延長を決定 ~対象は石川県及び富山県に納税地のある個人・法人~   Profession Journal編集部   令和6年2月16日(金)から3月15日(金)までとなる令和5年分の所得税の確定申告受付時期が近づくなか、国税庁は1月9日付けで、1月1日に発生した令和6年能登半島地震を受け、国税通則法第11条に基づき、下記の通り、地域指定による国税の申告・納付等の期限延長を公表した。 なお、今般の地域指定による申告・納付等の期限の延長措置は、近日中に官報で告示される予定となっている。 (了)

#Profession Journal 編集部
2024/01/09

《速報解説》 一定の市場暗号資産に関する期末時価評価等からの除外~令和6年度税制改正大綱~

《速報解説》 一定の市場暗号資産に関する期末時価評価等からの除外 ~令和6年度税制改正大綱~   弁護士 下尾 裕   1 市場暗号資産の期末時価評価等に関するこれまでの経緯 現行の法人税法においては、法人(内国法人又は恒久的施設を有する外国法人。以下同様)が各事業年度末時点において活発な市場を有する暗号資産(以下「市場暗号資産」という)を有する場合、当該市場暗号資産の法人税法上の評価額は時価法により評価した金額となり(法人税法61条2項)、かつ、当該法人がかかる市場暗号資産を「自己の計算」(同条3項)において有する場合には、期末時価評価による損益を当該法人の損金又は益金に算入するのが原則である。 この市場暗号資産に関する期末時価評価益等の制度については、日本国内におけるweb3ビジネスを阻害するとの指摘があり、その結果、先立つ令和5年度税制改正においては、法人が発行し、かつ、その発行の時から継続して有する暗号資産であって、その時から継続して譲渡についての制限その他の条件が付されているもの(特定自己発行暗号資産(※))については、期末時価評価の対象から除外するとの改正が実現していた。 (※) 特定自己発行暗号資産とは、法人がその発行時から継続して有している暗号資産のうち、その発行の時から継続して次の(1)又は(2)の要件のいずれかに該当する暗号資産をいう。 しかしながら、上記改正後も、2023年4月に公表された自由民主党のデジタル社会推進本部web3プロジェクトチームの「web3ホワイトペーパー」では、第三者発行の市場暗号資産についても短期売買目的のものを除き、広く期末時価評価(課税)の対象から除外すべきとの提言がなされ、業界団体からも同様の見直しが要望されていた。こうした要望を受けて、金融庁は、経済産業省との共同要望として、ブロックチェーン技術を用いたサービスの普及やこれを活用した事業開発等のために、暗号資産を継続的に保有するような内国法人に対して、キャッシュフローを伴う実現利益がない(=担税力がない)中でも課税がなされる問題を解消すべく、法人が継続保有する第三者発行の暗号資産についても期末時価評価の対象から除外する方向での税制改正要望を提出していた。   2 令和6年度税制改正大綱における改正内容 令和5年12月22日に閣議決定された令和6年度税制改正大綱においては、法人が保有する市場暗号資産のうち以下の条件が付されているものの事業年度末における評価額について、原価法又は時価法のうち、当該法人が暗号資産の種類ごとに選定し、その暗号資産を取得した日の属する事業年度に係る確定申告書の提出期限までに納税地の所轄税務署長に届け出た方法によるものとするとの改正が盛り込まれた。 なお、当該暗号資産が当該法人自ら発行し、その発行の時から継続して保有するもの及び上記届出がない場合については原価法が適用されるものとされている。 【条件】 これら条件の詳細については、今後公表されるであろう具体的な法令案等を待つことになる。   3 適用時期 以上の改正の適用時期については令和6年度税制改正大綱には特段の言及はなく、改正法令の施行日以降事業年度末を迎える法人に適用されるものと想定される。 (了)

#下尾 裕
2024/01/09

《速報解説》 国外事業者に係る事業者免税点制度の特例の適用の見直し等~令和6年度税制改正大綱~

《速報解説》 国外事業者に係る事業者免税点制度の特例の適用の見直し等 ~令和6年度税制改正大綱~   税理士 石川 幸恵   令和5年12月22日に閣議決定された「令和6年度税制改正大綱」では、プラットフォーム課税の導入とあわせて、国外事業者に係る事業者免税点制度の特例の適用の見直し等が図られることとなった。以下に概説する。   1 改正の背景 令和6年度税制改正大綱ではプラットフォーム課税の導入が示されたが、このプラットフォーム課税は、「国境を越えたデジタルサービスに対する消費税の課税のあり方に関する研究会」における検討に基づいている。 この報告書では、プラットフォーム課税導入後の更なる問題点として、国外のサプライヤーがアプリの提供の場をプラットフォームから自身で立ち上げたサイトに移して消費者に直接販売する方式に切り替えた場合も想定している。この場合、次のような問題が生ずる。 このように、国外事業者が事業者免税点制度や簡易課税制度を本来の趣旨に沿わない形で適用することによる「納税なき控除」を防止するための見直しとして、国外事業者に係る事業者免税点制度の特例の適用の見直し等が図られた。 (※) 国外事業者から提供される消費者向け電気通信利用役務提供にも適格請求書等保存方式が適用され、国外事業者については適格請求書発行事業者以外の者からの課税仕入れに関するいわゆる8割・5割控除の経過措置(28年改正法附則52、53)の適用がない(平成30年改正消令附則24)ことから、事業者免税点制度による「納税なき控除」は限定的とも考えられる。 プラットフォーム課税については下記拙稿も参照されたい。   2 制度の内容 (1) 事業者免税点制度の特例の適用の見直し 事業者免税点制度については次の3点の見直しが図られた。 (2) 簡易課税制度(消法37)の適用の見直し その課税期間の初日において恒久的施設を有しない国外事業者については、簡易課税制度の適用及びいわゆる2割特例(28年改正法附則51の2①)を認めないこととする。 (3) 適用時期 令和6年10月1日以後に開始する課税期間から適用する。これはプラットフォーム課税の導入よりも半年早い。 (4) 今後の検討 欧州においては事業者免税点制度の適用を国内事業者のみに認めることとしており、我が国においてもその方向で検討を進めるべきとの指摘が前述の研究会で行われている。国外事業者に対する事業者免税点制度の在り方については今後も検討が続けられる可能性がある。   (了)

#石川 幸恵
2024/01/09

《速報解説》 東証、親子関係にある上場会社等を対象に開示のポイントなどを整理~少数株主保護及びグループ経営に関する情報開示の充実・開示例等を示す~

《速報解説》 東証、親子関係にある上場会社等を対象に開示のポイントなどを整理 ~少数株主保護及びグループ経営に関する情報開示の充実・開示例等を示す~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2023年12月26日、東京証券取引所は、次のものを公表した。 これは、親子関係にある上場会社やその他の関係会社/関連会社の関係にある上場会社を対象に、開示のポイントなどを整理したものである。 2023年11月時点で、親会社を有する上場会社は約310社、その他の関係会社を有する上場会社は約630社あるとのことである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ 少数株主保護及びグループ経営に関する情報開示の充実 投資者から開示が期待される事項として、コーポレート・ガバナンス報告書における少数株主保護やグループ経営に関する開示についての記載上のポイントを整理している。 記載上のポイントや開示が望まれる項目の詳細については、「コーポレート・ガバナンスに関する報告書 記載要領(2023年12月改訂版)」に記載されている。 次の上場会社ごとに、記載上のポイントの概要が記載されている。 1 上場子会社を有する上場会社 次の開示項目について記載している。 2 親会社を有する上場会社 次の開示項目について記載している。 3 上場する関連会社を有する上場会社 開示が望まれる項目として、グループ経営に関する考え方を踏まえた上場関連会社を有する意義、上場関連会社のガバナンス体制の実効性確保に関する方策について示し、自社の状況に応じて開示する際の記載上のポイントの概要が示されている。 4 その他の関係会社を有する上場会社 開示が望まれる項目として、その他の関係会社におけるグループ経営に関する考え方及び方針、少数株主保護の観点から必要なその他の関係会社からの独立性確保に関する考え方・施策等について示し、自社の状況に応じて開示する際の記載上のポイントの概要が示されている。   Ⅲ 少数株主保護及びグループ経営に関する開示例 少数株主保護及びグループ経営に関する事項の開示について、上場会社が開示しているコーポレート・ガバナンス報告書から、参考となると考えられる記載例を紹介している。   Ⅳ 支配株主・支配的な株主を有する上場会社において独立社外取締役に期待される役割 支配株主や支配的な株主を有する上場会社に特有となる独立社外取締役の役割について、具体的な場面も想定しつつ、とりまとめている。 支配株主や支配的な株主を有する上場会社においては(一般の上場会社と異なり)少数株主の利益を保護するという役割が付加されていることを認識し、その役割を意識して職務を行っていただきたいとのことである。 独立社外取締役以外の取締役においては、支配株主からの独立性が必ずしも確保されておらず、支配株主の影響をより受けやすい立場にあるため、少数株主の利益の適切な保護を図る役割・責務は、特に、独立社外取締役に期待されることとなるとしている。 例えば、支配株主と少数株主の間の利益相反リスクを監督する、重要な利益相反リスクを伴う取引・行為ついては独立社外取締役が直接に関与するなどである。 また、事業調整として、取引行為を伴わない形で、支配株主からの指示により新規事業分野への進出の見合わせや既存事業分野からの撤退、事業の棲み分け(顧客の分配など)が行われる場合、上場会社が事業機会・収益機会を喪失するという形で、利益相反が生じることがあり得るとしている。 (了)

#阿部 光成
2024/01/05

《速報解説》 法定調書のe-Tax等による提出義務基準の引下げ~令和6年度税制改正大綱~

 《速報解説》 法定調書のe-Tax等による提出義務基準の引下げ ~令和6年度税制改正大綱~   税理士 齋藤 和助   本稿では、令和5年12月22日に閣議決定された「令和6年度税制改正大綱」に示された、「法定調書のe-Tax等による提出義務基準の引下げ」について解説する。   1 法定調書とは 法定調書とは、「所得税法」、「相続税法」、「租税特別措置法」及び「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」の規定により税務署への提出が義務づけられている資料をいう。   2 現行の提出義務基準 法定調書の種類ごとに、前々年の提出すべきであったその法定調書の枚数が100枚以上である法定調書については、e-Tax、光ディスク等又はクラウド等(以下「e-Tax等」という)による提出が義務づけられている。   3 改正の内容 法定調書のe-Tax等による提出義務基準を「30枚以上」に引き下げる。   4 適用時期 上記改正は、令和9年1月1日以後に提出すべき法定調書について適用する。   5 具体例 (※) 「自由民主党税制調査会資料」(令和5年12月12日)の図を筆者一部加工 (1) 令和9年のe-Tax等による提出義務 ① 配当等の支払調書 令和7年に提出した「配当等の支払調書」が30枚であるためe-Tax等により提出する義務がある。 ② 報酬等の支払調書 令和7年に提出した「報酬等の支払調書」が20枚であるためe-Tax等により提出する義務はない。 (2) 令和10年のe-Tax等による提出義務 ① 配当等の支払調書 令和8年に提出した「配当等の支払調書」が20枚であるためe-Tax等により提出する義務はない。 ② 報酬等の支払調書 令和8年に提出した「報酬等の支払調書」が30枚であるためe-Tax等により提出する義務がある。 【参考】e-Tax等による提出義務基準の変遷 (了)

#齋藤 和助
2024/01/05

《速報解説》 金融庁が「記述情報の開示の好事例集2023」を公表~サステナビリティに関する考え方及び取組に関する開示の好事例を取りまとめ~

《速報解説》 金融庁が「記述情報の開示の好事例集2023」を公表 ~サステナビリティに関する考え方及び取組に関する開示の好事例を取りまとめ~   公認会計士 阿部 光成   Ⅰ はじめに 2023(令和5)年12月27日、金融庁は、「記述情報の開示の好事例集2023」を公表した。 これは、2023年1月31日に改正された「企業内容等の開示に関する内閣府令」において、有価証券報告書等にサステナビリティに関する考え方及び取組の記載欄が新設されたことを踏まえ、当該事項に関する開示の好事例を取りまとめたものである。 今後、「コーポレート・ガバナンスの概要」等の項目を追加して、公表、更新することを予定しているとのことである。 文中、意見に関する部分は、私見であることを申し添える。   Ⅱ サステナビリティに関する考え方及び取組の全般的な開示のポイント 主な開示のポイントとして、次のことが記載されている。   Ⅲ 全般的要求事項の開示例 主な開示のポイントとして、サステナビリティ全般から説明するとサマリーとしてわかりやすく有用であること、全般的なガバナンス体制が開示されていると、サステナビリティをどの程度重要視しているかが読み取れるため有用であることなどが記載されている。 好事例として採り上げた企業の主な取組が記載されている(サステナビリティは、社内で関連する部署が非常に多く、開示する内容や文言の調整に難儀したが、検討の背景や趣旨を粘り強く説明し、最終的に合意を形成したことなど)。 好事例のポイントとして次のことが記載されている。   Ⅳ 気候変動関連等の開示例 主な開示のポイントとして、Scope3の開示も有用であること、生物多様性や水資源等は、TCFDの次の重要なテーマであり、積極的に開示していくことは有用であることなどが記載されている。 好事例として採り上げた企業の主な取組が記載されている(気候関連情報の開示に先立って、まずは、ガバナンスとリスク管理体制の組み立てからスタートしたことなど)。 好事例のポイントとして次のことが記載されている。   Ⅴ 人的資本、多様性等の開示例 主な開示のポイントとして、目標は、財務と非財務の統合の観点から、例えば中期経営計画の最終年と整合させることは有用であること、人的資本への投資の内容について開示することは有用であることなどが記載されている。 好事例として採り上げた企業の主な取組が記載されている(自社グループの企業理念や中期経営計画に沿った人材面における中期課題(ゴール)を先に設定することで、コーポレートストーリーを踏まえたメリハリを利かせた情報になるよう心掛けたことなど)。 好事例のポイントとして次のことが記載されている。   Ⅵ 人権の開示例 主な開示のポイントとして、想定されるリスクを具体的に開示することは有用であることなどが記載されている。 好事例として採り上げた企業の主な取組が記載されている(国連のビジネスと人権に関する指導原則で要請されている人権方針、デュー・ディリジェンス、救済措置といったポイントを明確に伝えることを意識しながら作成したことなど)。 好事例のポイントとして次のことが記載されている。   Ⅶ 個別テーマの開示例 主な開示のポイントとして、自社の企業戦略、サステナビリティの観点から重要と考えられるトピックについて、サステナビリティの記載欄でストーリーを持って開示することなどが記載されている。 好事例として採り上げた企業の主な取組が記載されている(技術的な内容に偏りがちな情報セキュリティに関する説明を、いかに読み手にわかりやすいように記載できるかなど)。 好事例のポイントとして次のことが記載されている。 (了)

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